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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】内視鏡の折り畳み機構
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61B1/008 511
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023577396
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022066401
(87)【国際公開番号】W WO2022263561
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】102021115475.8
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521270269
【氏名又は名称】コンスタンティン ボブ
【氏名又は名称原語表記】Konstantin BOB
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 17, 69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン ボブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス グリュンドル
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-068070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0137354(US,A1)
【文献】国際公開第2018/130978(WO,A1)
【文献】特表2007-511247(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡シャフトを含む内視鏡であって、
遠位で手動作動可能な折り畳み機構を備え、
前記折り畳み機構は
前記折り畳み機構の近位上流側の内視鏡部に対して内視鏡ヘッドまたは遠位ヘッド部を折り畳み可能または角度調節可能に制御して保持するためのものであり、
少なくとも1つの共通の作動要素によって互いに対して能動的に角度調節可能であり、軸方向に連続する複数の実質的に円筒形のセグメントを有し、
前記セグメントのそれぞれは、実質的に形となるように互いに対して配置された2つの軸方向端面と、シリンダジャケットと、を有し、
前記シリンダジャケットは、最大の軸方向長さを有する前記シリンダジャケットの部分にバック部を画定し、
前記セグメントのそれぞれは、前記セグメントが共同して作業チャンネルを形成するように、前記内視鏡の長手方向における少なくとも1つの貫通開口を有し、
前記セグメントそれぞれの前記貫通開口が、前記バック部において前記内視鏡の半径方向に前記シリンダジャケットを貫通していることによって、長手方向スロットが形成されており、
前記セグメントの前記バック部は、可撓性を有する連結プレートによって、前記内視鏡の前記長手方向で互いに連結されており、
前記連結プレートは
前記長手方向スロットのそれぞれを覆いながら、前記セグメントそれぞれの外側に固定されており、
一方では、それによって画定された前記作業チャンネル内を連続的に延びる、挿入される医療器具のための摺動面を形成し、
他方では、互いに接続されたセグメント間において、2つの隣接するセグメントを折り畳むためのヒンジ部を形成していることを特徴とする、
内視鏡。
【請求項2】
前記連結プレートは、前記バック部において前記作業チャンネルを少なくとも部分的に覆っている、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記連結プレートは、保持部を形成しており、
前記保持部のそれぞれは、前記セグメントのうちの1つへの取付けおよび前記内視鏡部の遠位端への取付けのために機能する、
請求項1及び2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項4】
前記連結プレートは、少なくとも前記ヒンジ部において弾力性を有するように形成されている、先行する請求項1から2の1つに記載の内視鏡。
【請求項5】
前記連結プレートは、前記折り畳み機構を折り畳み位置から実質的に前方へ一直線となる位置または伸長位置へ戻すための戻し要素として機能する、請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記ヒンジ部は、各ヒンジ部が、特定の、一定の、または様々な溝半径を有し、前記内視鏡の前記長手方向に延びる溝を形成するように、周方向において半径方向外側へ湾曲または屈曲している、請求項4に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記連結プレートは、前記ヒンジ部において周方向で細くなっている、請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項8】
前記連結プレートは、前記内視鏡の前記長手方向に連続し、前記摺動面を形成する滑らかな中央部を形成しており、
前記中央部から、タブ状の取付領域が両側へ対称に突出しており、
前記中央部から両側へ対称に突出した一対の前記取付領域は、前記セグメントを取り付けるよう機能し、前記中央部に対して互いに向かって曲げられている、
先行する請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項9】
前記連結プレートは、第1の、半径方向外側の連結プレートであり、
前記折り畳み機構は、第2の、半径方向内側の連結プレートをさらに備え、
前記第2の、半径方向内側の連結プレートは、前記内視鏡の前記長手方向に延びる第2の中央部と、前記第2の中央部から横方向に突出するタブと、を有し、
前記第2の、半径方向内側の連結プレートは、前記第2の、半径方向内側の連結プレートの前記タブが前記第1の、半径方向外側の連結プレートの前記取付領域間の中間スペースを覆うように、前記第1の、半径方向外側の連結プレートに対して前記内視鏡の前記長手方向にオフセットされている、
請求項8に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記折り畳み機構は、内視鏡デフレクタの遠位端において前記内視鏡ヘッドを保持するように機能し、
前記内視鏡デフレクタは、前記折り畳み機構と前記内視鏡シャフトとの間に位置するとともに、内視鏡デフレクタ独自の別個の作動要素によって屈曲可能である、
先行する請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項11】
前記折り畳み機構が完全に折り畳まれたときの前記折り畳み機構の曲げ半径は、前記内視鏡デフレクタが完全に折り畳まれたときの前記内視鏡デフレクタの曲げ半径よりも小さい、請求項10に記載の内視鏡。
【請求項12】
チャンネル調整機構が設けられており、
前記チャンネル調整機構は、作業チャンネルの直径を大きくするおよび/または小さくするように構成されており、
前記セグメントの前記バック部ならびに前記連結プレートは、前記内視鏡の前記長手方向に対して半径方向内側および/または半径方向外側へ曲げ開き可能および/または曲げ閉じ可能なように構成されている、
先行する請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項13】
前記連結プレートは、前記連結プレートが前記内視鏡の前記長手方向に対して半径方向内側および/または半径方向外側へ曲げ開き可能および/または曲げ閉じ可能であるように構成されるように、前記連結プレートの曲げ剛性を局所的に減少させるチャンネル調整構造を備える、請求項12に記載の内視鏡。
【請求項14】
各セグメントは、2つの部分セグメントを備え、
前記部分セグメントは、前記連結プレートを介して、互いに接続されており、
前記連結プレートは、拡張ばねとして構成されるとともに、追加の作業チャンネルのための空間が前記部分セグメントの間に提供されるように前記部分セグメン間のギャップを選択的に広げるように設計されている、
先行する請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項15】
偏向バンド装置をさらに備え、
前記偏向バンド装置は、可撓性を有し、いくつかのセグメントに沿って、前記内視鏡の前記長手方向に延びるとともに、前記連結プレートおよび/または前記セグメントそれぞれの前記バック部を少なくとも部分的に覆うように、前記作業チャンネル内に設けられる、
先行する請求項1から2のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項16】
内視鏡シャフトを有する内視鏡であって、
遠位で手動作動可能な折り畳み機構を備え、
前記折り畳み機構は
前記折り畳み機構近位上流側の内視鏡部に対して内視鏡ヘッドまたは遠位ヘッド部を折り畳み可能または角度調節可能に制御して保持するためのものであり、
少なくとも1つの共通の作動要素によって互いに対して能動的に角度調節可能であり、軸方向に連続する複数の実質的に円筒形のセグメントを有し、
前記セグメントのそれぞれは、実質的に形になるように互いに対して配置された2つの軸方向端面と、シリンダジャケットと、を有し、
前記シリンダジャケットは、最大の軸方向長さを有する前記シリンダジャケットの部分にバック部を画定し、
前記バック部では、前記セグメントが、互いにヒンジ結合されており、
前記セグメントのそれぞれは、前記セグメントが共同して作業チャンネル壁を有する作業チャンネルを形成するように、前記内視鏡の長手方向に少なくとも1つの貫通開口を有し、
いくつかのセグメントに沿って、前記内視鏡の前記長手方向に延びる可撓性の偏向バンド装置が、前記セグメントそれぞれの前記作業チャンネル壁のバック部を覆い、前記作業チャンネルに挿入される医療器具のための連続した滑らかな摺動面を形成するように、前記作業チャンネル内に設けられていることを特徴とする、
内視鏡。
【請求項17】
前記偏向バンド装置は、前記偏向バンド装置の前記内視鏡の前記長手方向での伸長または圧縮を実質的に回避するために、前記折り畳み機構が折り曲げられたときに前記偏向バンド装置が前記作業チャンネル内を摺動できるように、前記折り畳み機構の遠位端領域に固定されているとともに、より近位側に位置する複数のセグメントの前記貫通開口内で前記内視鏡の前記長手方向に変位可能に配置されている、請求項16に記載の内視鏡。
【請求項18】
前記偏向バンド装置の近位端は、前記内視鏡の前記長手方向に変位可能に、前記折り畳み機構の近位上流側の前記内視鏡部内へ突出する、請求項16または17のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項19】
前記偏向バンド装置は
弾性を有するとともに、静止位置において実質的に真っ直ぐに延びており、
前記折り畳み機構が折り畳み位置から実質的に前方へ一直線となる位置または伸長位置にリセットされたときに、真っ直ぐで屈曲していない前記静止位置に付勢される、
請求項16から17のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項20】
前記偏向バンド装置は、前記内視鏡の前記長手方向において実質的に伸長不能である、請求項16から17のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項21】
前記偏向バンド装置は、前記内視鏡の前記長手方向に延びる複数の長手方向要素を備える、請求項16から17のいずれかに記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本開示は、折り畳み機構、及び、特に、内視鏡ヘッドを内視鏡の遠位端(患者の身体側の端)で折り畳み可能又は屈曲可能に保持するための折り畳み機構を備える内視鏡に関する。折り畳み機構/内視鏡は、軸方向に連続した実質的に円筒形(又は楕円形)の複数のセグメントであって、少なくとも1つの作動要素によって互いに対して能動的に角度調節可能な、複数のセグメントを有する。複数のセグメントは、側面視において、実質的に状になるように互いに配置された2つの端面と、最大の軸方向長さを有する円筒ジャケット部においてバック部を画定する円筒ジャケットとを有し、外科器具の挿入/通過のために内視鏡の長手方向で少なくとも1つの作業チャンネルを形成する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、患者の体内腔を視覚的に検査するための医療器具である。内視鏡は、基本的に、その遠位端、すなわちユーザとは反対側の端または患者の体に面する端に光学装置(内視鏡ヘッドとも呼ばれる)を有する。加えて、内視鏡は、任意で、近位側の(ユーザに面する)内視鏡部または体外内視鏡部または体外内視鏡ハンドルから可撓性または硬性の(特に硬い)内視鏡シャフト(近位の内視鏡部に接続されている)を通って内視鏡ヘッドまで延び、鉗子、ハサミ、針、スネア、ナイフなどといった医療器具の体外挿入および使用を可能にする作業チャンネルを有する。
【0003】
このような内視鏡は任意で、例えば、内視鏡/内視鏡ヘッドの遠位端において、特定の機能/機能要素を備える又は有するキャップ又はスリーブを内視鏡ヘッドの半径方向外側に配置することによって、付加的な機能を備えることができる。これにより、内視鏡を検査目的及び/又は治療適用のための接近手段として使用するだけでなく、それ自体を外科処置を行うための低侵襲器具として使用することができる。あるいは、非常に特殊な医療用途のための特殊な内視鏡はこのような機能を一体的に備えることができるとも考えられるが、このような特殊な設計はその特定の用途にのみ適する。
【0004】
様々な診断および/または治療処置では、患者の胆管および/または膵管および肝管に関して、画像診断および/または必要に応じて治療手技が必要である。胆管と膵管の十二指腸への共通の出口を形成するファーター乳頭は、十二指腸内へ外側方向に突出しているので、従来の順行性(内視鏡の長手方向で見る)内視鏡は、胆管へのアプローチや外科器具の挿入には適さない。というのも、狭い十二指腸(直径3~4cm)では、通常の曲げ半径が約6cmの順行性内視鏡の光学系と作業チャンネルを横方向に見る位置に配置するのに十分な旋回スペースがないからである。従来の順行性内視鏡では、この曲げ半径または旋回は、いわゆる「デフレクタ」(内視鏡ヘッドの直前で近位方向に能動的に屈曲可能な内視鏡シャフトの部分)によってもたらされることが多い。
【0005】
先行技術
先行技術(例えば、US 2010/228086 A)から、この目的のために特別に製造された十二指腸内視鏡が知られている。この十二指腸内視鏡は、側方(横方向を向く)光学系または逆行性(後方を向く)光学系(「側方光学系」とも呼ばれる)、ならびに側方を向くまたは側方に開口した作業チャンネルを有する。あるいは、このような十二指腸内視鏡の作業チャンネルの順行(軸方向に開口する)出口には、手動旋回によって作業チャンネル内を案内される器具を狙ったように案内/偏向させることができるいわゆるアルバランレバーを設けることができる。内視鏡ヘッドにおいて、機能ユニット、特に光学系と照明を横方向に配置することにより、利用可能なスペースを最適に利用しながら、十二指腸領域での撮像と処置が可能になる。
【0006】
しかしながら、側方光学系を有するこのような内視鏡は、製造が非常に複雑で製造費も高いので、これまでは再利用可能な装置として開発製造されてきた。また、このような内視鏡の湾曲した作業チャンネルや複雑でアンダーカット設計のアルバランレバーは、実際のところ滅菌が困難であることが分かっており、滅菌工程は繊細な装置にとっては材料疲労が大きすぎるので、このような十二指腸内視鏡を用いた処置の後には消毒しかできないことが分かっている。その結果、処置後に、内視鏡の作業チャンネルおよび/または水、エネルギーなどのための平行補助チャンネルに細菌芝生(バイオフィルム)が残ってしまうことがある。このバイオフィルムがその後の処置中に、例えば、器具が作業チャンネル内を押し通されることによって分解してしまうと、その後、患者の胆管および/または膵管に入り込んで、患者に深刻な炎症や敗血症までをも引き起こしてしまう可能性がある。
【0007】
このような装置の別の欠点は、光学系と作業チャンネルのどちらも順行方向に向けることができないので、十二指腸領域でのごく限られた特定の処置にしか使用できないということである。さらに、横方向を向く内視鏡による体内でのナビゲーションは、一般的にかなり困難である。なぜなら、前方を見るためには、常に内視鏡ヘッドの直前にあるデフレクタを約90°曲げておく必要があるので、内視鏡の横方向に大きいスペースが必要となり、これは胃でしか得られないからである。
【0008】
さらに、DE 10 2018 110 620 A1には、内視鏡ヘッドを折り畳み可能または折り曲げ可能に保持するための折り畳み機構が開示されている。この折り畳み機構は、軸方向に連続する複数のセグメントを備え、これらのセグメントは、作動要素によって互いに対して能動的に、すなわち手動制御で角度調節可能であり、軸方向に作業チャンネルを画定する。セグメントは、互いに整列した状の端面を有する楕円形部または円筒形部として設計されてており、それによって、直接隣接する2つのセグメントは、最大軸方向長さのそれぞれの円筒ジャケット部において互いに軸方向に支持し合うまたは当接するように互いに並べられ、支持点または当接点でヒンジまたはジョイント接触が生じる。この設計により、内視鏡ヘッドの遠位端面が内視鏡シャフトの外周から半径方向に突出しないかまたは僅かしか突出しないように、遠位内視鏡ヘッドを非常に狭い半径内で半径方向に旋回させることが可能になる。このように構成された折り畳み機構は、機能的に内視鏡ヘッドのコンポーネントと見なすこともでき、従って、内視鏡ヘッドを遠位ヘッド部と近位ヘッド部とに分割し、近位ヘッド部(近位最終セグメント)は、(場合によっては、折り畳み機構の曲げ半径とは異なる能動的な曲げ半径を有する付加的なデフレクタを介して)内視鏡シャフトにしっかりと接続され、遠位ヘッド部(遠位最終セグメント)は、近位ヘッド部に向かって能動的に(手動制御で)旋回可能/折り畳み可能であることに留意すべきである。
【0009】
しかし、この機構の欠点は、特に非常に狭い折り畳み半径/偏向半径のせいで、作業チャンネルに挿入された器具がセグメントにぶつかったり、引っかかったり、ひいては動きを妨げられたりする可能性があるので、作業チャンネルに挿入するためには、しばしば器具を数回前後に動かさなければならないということである。このため、内視鏡の使用が困難になってしまう。
【0010】
本開示の根底にある課題は、従来技術の欠点を回避または低減することである。特に、内視鏡ヘッドの内視鏡光学系を、前方にも、ほとんどスペースを必要とせずに側方にも、または場合によっては後方にも向けることができ、医療器具と共に容易に使用できることを保証する、内視鏡のための折り畳み機構を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示が基礎とする問題は、折り畳み機構によって、特に、独立請求項1および1の特徴を含む(医療用)内視鏡によって解決される。
【0012】
独立請求項1および14による折り畳み機構は、以下でさらに詳細に説明されるように、共通の発明思想に基づいている。提供される折り畳み機構は、複数の、少なくとも1つの、好ましくは数個の、状セグメント(折り畳み機構の椎体)を有しており、セグメントは、内視鏡に関して互いに長手方向に配置され、折り畳み機構を通って延びる作業チャンネルを共に形成し、一方側でヒンジのように内視鏡シャフトの遠位端面におよび/または互いに接続されており、折り畳み機構を折り畳む/折り曲げるために、複数の(特に数個の)セグメントが、対応するジョイントを介して、遠位端面に対しておよび/または互いに対して傾斜可能である(人間の手の指に匹敵する)。折り畳み機構が折り畳まれる/折り曲げられる場合には、セグメント間のジョイント及び/又は内視鏡シャフトの遠位端面とのジョイントは、折り畳み機構の外側曲率半径に位置する、すなわち、作業チャンネルを通って前進する器具が作業チャンネルの壁に当たって偏向する(slide-off)/偏向する面(内視鏡の周方向部)に位置する。器具は、隣接するセグメント間の接触点に存在する作業チャンネルの壁のエッジや隙間に引っ掛かって詰まってしまったり、少なくとも均等に(均一な力/速度で)押し込まれないので、器具が偏向する面(周方向部)には、特に0°より大きい傾斜の場合(すなわち、ジョイントの範囲において)、偏向プレート/偏向バンド装置が設けられる。偏向プレート/偏向バンド装置は、作業チャンネルの外側曲率半径側(周方向部)に配置され(セグメントによって形成される作業チャンネルの境界/壁部を形成し)、器具のために折り畳み機構に沿って(内視鏡の長手方向に)連続した滑らかな作業チャンネル摺動面を提供するために、ジョイントを置換し/形成し又は覆い、さらに、折り畳み機構の外側曲率半径において隣接するセグメント間の(作業チャンネル側の)エッジ及び/又は間隙を最小化する又は覆う。
【0013】
ここで、当該タイプの内視鏡(本開示による内視鏡を含む)は、能動的に作動可能/傾斜可能な遠位シャフト部、いわゆるデフレクタを任意で備えてよい。遠位シャフト部/デフレクタは、通常、内視鏡ヘッド(すなわち、折り畳み機構の近位側)と通常は受動的に傾斜可能な(可撓性の)内視鏡シャフト部との間に配置される。互いに別々に能動的に作動される2つの機構の主な違いは、所望の、機能に依存する曲げ半径である。デフレクタは、基本的に、内視鏡を患者の中空臓器内に挿入したときに、中空臓器または臓器腔(例えば、腸、食道/気管など)によりよく追従し、必要であれば、処置目的で中空臓器壁に接近するが、折り畳み機構は、中空臓器を過度に広げることなく、中空臓器壁に対してほぼ垂直に内視鏡ヘッドまたはその遠位部を中空臓器内で折り畳むことを可能にするように構成されている。
【0014】
デフレクタと比較して、後者では曲げ/撓み半径を(かなり)小さくする必要があり、その結果、撓みの外側のセグメント間の隙間が大きくなるなどの設計上の影響が生じ、それを除去するために設計上の追加対策が必要になる場合がある。このような対策は、デフレクタでは必要なく、またデフレクタによって誘導されることもない。言い換えれば、本開示による内視鏡は、第1の最大曲げ/撓み半径を有する折り畳み機構と、第1の最大曲げ/撓み半径よりも大きい第2の最大曲げ/撓み半径を有し、折り畳み機構の近位側に設けられたデフレクタとを有してよい。
【0015】
任意で(特に、セグメントの相互連結およびその間に生じる隙間に関して)、内視鏡ヘッド又はヘッド部は、(必ずしも状ではない)セグメントとして考えられてよく、及び/又は、折り畳み機構の近位上流にある内視鏡部の遠位端は、最も近位側に配置された(必ずしも状ではない)セグメントとして考えられてよい。この場合、折り畳み機構は、単一の状セグメントを有してもよいが、複数の状セグメントが設けられていることが好ましい。
【0016】
以下ではまず、請求項1による問題の解決策をより詳細に説明する。
【0017】
より正確には、問題は、内視鏡ヘッドを折り畳み可能または折り曲げ可能に内視鏡(シャフト部)の遠位端/遠位端部(ユーザと反対側の/患者の身体側の端/端部)に保持するための折り畳み機構によって解決される。折り畳み機構は、軸方向に連続する実質的に円筒形(卵形/楕円形を含む)の複数のセグメントを有する。複数のセグメントは、少なくとも1つの作動要素によって互いに対して能動的に(手動制御で)角度調節可能であり/折り畳み可能である。各セグメントは、互いに対して実質的に状に配置された2つの端面と、最大の軸方向長さを有する円筒ジャケットの部分においてバック部/バック部領域を画定する円筒ジャケットとを有する。複数のセグメントは、内視鏡の長手方向に少なくとも1つの(内側)作業チャンネルを形成する。作業チャンネルは、各セグメントのバック部において内視鏡の半径方向に円筒ジャケットを貫通しており、および/または、各セグメントのバック部において半径方向外側に開口している(円筒ジャケットは、バック部において、軸方向で作業チャンネルまで破断して開口しているか、または、作業チャンネルまで延びる長手方向のスリットを有している)。複数のセグメントのバック部は、可撓性を有する、好ましくは弾性を有する1つの/共通の連結プレートによって、内視鏡の長手方向で互いに接続されている。この連結プレートは、各セグメントの作業チャンネルを半径方向外側から閉じるために、周方向で部分的に(バック部のスリット幅よりもわずかに大きく)複数のセグメントに接続される。一方では、連結プレートは、作業チャンネル内を連続的に延びる、挿入される医療器具のための摺動面を形成し(セグメント同士を橋渡しし)、他方では、隣接する2つのセグメントの角度調節のためのヒンジ部を形成する。
【0018】
本開示は、先行技術から知られているセグメントが、隣接するセグメント間で作業チャンネルに対して横方向に延びるエッジおよびギャップを形成するという認識に基づく。作業チャンネルが曲がると、作業チャンネルを押し通される器具は、作業チャンネル内で偏向し、セグメントの内面(より正確には、接合接触を形成するセグメントの面)で向きを変えるので、器具がこれらのエッジやギャップに接触しやすく、引っかかってしまう可能性がある。特に折り畳まれた状態では、作業チャンネルの内部で案内され得る追加のチューブによってこの問題を解決することはできない。つまり、本発明は、器具が主に向きを変える領域、特にセグメント間の接合接触領域において、折り畳み機構の隣接するセグメント間の(特にすべての)ギャップを覆うように延在し、作業チャンネルを通って前進する器具のために、少なくとも内視鏡の長手方向で連続的な偏向面を形成する、連続的で可撓性を有する偏向プレート(連結要素)または偏向バンド装置が設けられるという事実に基づいている。これにより、器具が作業チャンネル内を前進する際にセグメント間で引っかかってしまうことを防止することができる。
【0019】
器具が主に向きを変える領域またはセグメント間の接合接触領域では、セグメントによって形成された作業チャンネル壁がなく、その結果生じた開口が、偏向バンド装置/プレート/連結プレートによって(好ましくは完全に)覆われる。これにより、さらなる驚くべき効果も得られる。一方では、セグメントの開口によって作業チャンネルの直径を大きくすることができるので、必要な器具のためにより広いスペースを創出することができるか、あるいは(作業チャンネルの直径を変えずに)セグメントの断面に、内視鏡内を通るさらなるチャンネルまたは部品のためのスペースを提供することができる。他方では、個々のセグメント間のヒンジ機構が構造および製造/組立ての両方において特にシンプルなので、コスト効率が高い。
【0020】
換言すれば、遠位内視鏡先端部のための折り畳み機構または遠位内視鏡先端部(内視鏡端部)の一部である折り畳み機構は、内視鏡の長手方向で互いに並んだ実質的に円筒形から楕円形の複数のセグメント(椎体)を有し、複数のセグメントは、セグメントの外側に取り付けられた/固定された(共通の)可撓性の連結プレート/バック要素によって、ヒンジ部として機能する連結プレートを介してセグメントが互いに対して旋回できるように、周方向の一部(バック部)で互いに接続されている。対応するヒンジ軸は各々、2つのセグメント間に配置されている。特に、可撓性の連結プレートは、ヒンジ部において、すなわち2つのセグメント間において、フィルムヒンジとして機能する。さらに、複数のセグメント間において旋回スペース/旋回ギャップが設けられるように、セグメントは、連結プレートと半径方向で対向する別の周方向の一部(先端部)に向かって先細りになっており、これによって、旋回スペースの最大軸方向長さだけ、セグメントを連結プレート上で旋回させる/連結プレートにより形成されるヒンジ軸を中心に枢動させることによって、この対向側で折り畳み機構の長さを能動的に短縮することが可能である。折り畳みが最大となるのは、好ましくは、(全ての)セグメントが隣接するセグメント(または、隣接する近位側および/または遠位側の内視鏡部)に当接するとき/セグメントの端面が互いに接触するときである。作業チャンネルは、セグメントを長手方向に貫通しており、作業チャンネルの外周とセグメントの外周とがバック部において互いに重なるようにセグメント断面に対して偏心して配置されているので、内視鏡の長手方向でセグメント全体に沿って、バック部のこの重なる部分に開口が形成されている。この開口は、セグメントの半径方向外側から取り付けられる連結プレートによって閉じられる。このように、連結プレートは、折り畳み機構(全体)に沿って延びる、連続し、滑らかで、エッジおよびギャップのない表面(即ち、偏向面)を表し、作業チャンネル内を押し通される器具は、特に折り畳み機構が折り畳み状態にあるとき、この面で均等に偏向し、均等に方向を変えることができる。
【0021】
例えば、セグメントは、円筒形や楕円形の断面を有してよい。端面は、平坦であることが好ましいが、例えば、凹状であってもよいし、凸状であってもよい。さらに、作業チャンネルがバック部に向かってシリンダジャケット(ジャケット表面)を半径方向に貫通していること、すなわち作業チャンネルが側面で開口していることにより、作業チャンネルの断面を大きくすることができ、器具の挿入が容易になる。任意で、壁の薄い内管を設けてもよく、この内管は、セグメントによって形成された作業チャンネル内を延びて、特に作業チャンネルを(特にセグメント間において)密閉する。
【0022】
バック部において作業チャンネルの境界を定める連続摺動面は、特に、折り畳み機構が折り畳まれる/折り曲げられるときに器具が向きを変える領域ならびに器具の送り方向において、連続的で(破断していない)平坦な(エッジやねじれがない)表面である。これにより、挿入された器具が偏向しやすくなるので、作業チャンネルへの器具の挿入が容易になる。
【0023】
具体的には、本開示による内視鏡は、好ましくは、手動で作動可能/折り曲げ可能な(内視鏡)デフレクタを介して、好ましくは可撓性を有する(受動的/自動的に折り曲げ可能な)内視鏡シャフトに接続される内視鏡ヘッドを有し、シャフトの近位端(ユーザ側の端/患者の身体と反対側の端)には、ハンドルが配置される/接続可能である。内視鏡ヘッド又は内視鏡ヘッドの遠位側(ユーザと反対側/患者の身体側)の軸方向端部と内視鏡シャフトとの間、又は好ましくは、内視鏡ヘッド又は内視鏡ヘッドの遠位側軸方向端部と内視鏡シャフト又はデフレクタとの間には、(追加的な)折り畳み機構(設けられている場合には、デフレクタとは異なる/デフレクタより小さい折り畳み半径を有する)が介在しており、この折り畳み機構は、側方から見たときに状である少なくとも1つ以上の渦巻き状のセグメントを備える。各セグメントは、(共通の)作業チャンネルの軸方向部を形成する少なくとも1つの長手方向貫通開口(または長手方向貫通穴)を備える。長手方向貫通開口は、貫通開口の直径がセグメントの外周領域において、形状に起因して最大の軸方向セグメント長さを有するセグメントの外周を超えて延びるように、セグメントの中心軸に対して半径方向外側へオフセットされており、それによって長手方向スリットまたは長手方向ギャップが形成される。これにより、好ましくは、平面視したときにセグメントが三日月状の輪郭を有する。そして、連結プレート/バック要素が設けられており、この連結プレート/バック要素は、セグメントの外側に取り付けられたときに、最大の軸方向セグメント長さを有する側方円周領域のみを覆い(すなわち、完全には覆わない)、長手方向スロットを外側で閉じるように、側方円周領域に適合される。さらに、連結プレートは、少なくとも内視鏡ヘッドまたは遠位ヘッド部の外側に取り付けられ、好ましくは、(設けられている場合には)同じ構造のさらなる近位セグメントに取り付けられて、これらの要素を互いに連結する。それに連結された要素間の軸方向部において、連結プレートは、円周方向に狭窄した部分を備え、これによって(折り畳み)ヒンジが形成され、連結された要素はこのヒンジを中心に旋回することができる/折り畳まれる。
【0024】
本開示の有利な実施形態は、サブクレームの主題であり、以下により詳細に説明される。これらの実施形態は、任意の組合せで特許請求されてよいし、場合によっては別々で、すなわち、別個に特許請求されてもよい。
【0025】
連結プレートは、バック部の作業チャンネルを少なくとも部分的に(即ち、長手方向スロットの領域において)覆い、特に湾曲して覆っていることが好ましい。
【0026】
ヒンジ部は、有利には、特に、連結プレートに配置された又は取り付けられたセグメントが離間するように、内視鏡の長手方向に長さを有する。これにより、ヒンジ部の曲げ半径が大きくなり、折り畳みセグメント間の移行部がより良好に丸められる、すなわち、器具を偏向するのにより適している。特に、各ヒンジ部の内視鏡の長手方向の長さは、(隣接する)セグメントの領域(すなわち、セグメントが保持または取り付けられている連結プレートの保持部)における連結プレートの長さの30~100%(好ましくは40~70%)に相当してよい。
【0027】
あるいは又は加えて、内視鏡の長手方向に沿う保持部の領域で連結プレートによって形成される偏向面は、半径方向外側へ湾曲/凹状に丸められてもよい。換言すれば、偏向面は、(好ましくは)保持部の領域において(のみ)、長手方向において半径方向に丸みを帯びた樋または(内側)円弧を形成する。連結プレートの厚さが湾曲領域でも一定である場合、対応する領域における連結プレートの半径方向外側の面(アーチ状/バンプ状)は、折り畳み機構の非折り畳み状態/伸長状態において、内視鏡の長手方向に沿って外側に湾曲する。これにより、折り畳み機構の折り畳み状態において、すなわち、器具が特に強く偏向されて、偏向面に特に強い半径方向の力を及ぼすときに、内視鏡の長手方向、すなわち、アライメント方向において、その長さ(全体)に沿って湾曲する偏向面を提供することができるので、特に均一で安定した偏向が可能となる。
【0028】
あるいは又は加えて、保持部は、バック部の作業チャンネル開口上において、内視鏡の半径方向外側、またはセグメントの周方向に湾曲してよい。特に、各保持部の湾曲は、セグメントそれぞれの外周に実質的に沿うか、または(例えば、多角形的に)近似している。従って、作業チャンネルは、連結プレートによって狭められることがなく、器具を挿入するための十分なスペースを有している。さらに、周方向の湾曲によってガイドチャンネルが形成され、ガイドチャンネルは、挿入された器具を内視鏡の長手方向に案内し、器具が前後に滑るのを防止する。
【0029】
器具が偏向面で偏向することによって偏向面が損傷し、消毒が困難になってしまうことを防止するために、連結プレートは、少なくとも偏向面の領域において、耐傷性を有することが好ましい。例えば、偏向面が処理されてよく、例えば、硬化される又はコーティングされてよく、あるいは、連結プレートが全体的あるいは偏向面の領域において、耐傷性材料、好ましくは金属でできていてよい。
【0030】
好ましい実施形態によれば、連結プレートは、好ましくは、タブ状または耳状の保持部を形成しており、各保持部は、セグメントのうちの1つおよび/または内視鏡シャフト/デフレクタの遠位端への取り付けまたは保持のために機能する。特に、保持部とヒンジ部は交互に配置される。セグメントまたは内視鏡シャフト/デフレクタの遠位端は、保持部にしっかりと保持される。例えば、セグメントは、接着、溶接、または形状嵌合で保持部に取り付けられてよい。さらに、特に強固な保持を可能にするために、保持部の形状をセグメントに適合させてよい。連結プレートの近位端に位置する保持部の少なくとも1つは、内視鏡シャフトまたは内視鏡デフレクタの遠位端を取り付ける/保持するように設計されている。より遠位側の保持部は、好ましくは、折り畳み機構のセグメントに適合される。
【0031】
連結プレートが、少なくともヒンジ部において、任意でその全長に亘って、弾性を有するように設計されていると特に有利である。こうすることで、連結プレート(特にヒンジ部)は、折り畳み位置から実質的に前方位置/伸長位置(内視鏡の長手方向に真っ直ぐに延びるか、または長手方向に対して鈍角をなす)へ折り畳み機構を戻すように設計された戻し要素として機能することができる。
【0032】
換言すれば、連結プレートは、少なくともヒンジ部の領域において、折り畳み機構を実質的に前方位置/伸長位置へ付勢する曲げばねまたは板ばねとして形成されてよい。前方位置/伸長位置は、内視鏡ヘッド/折り畳み機構の最も遠位側に配置されたセクションが、内視鏡の長手方向又は内視鏡前進方向(内視鏡デフレクタが設けられている場合には、デフレクタによって予め決められ得る内視鏡前進方向)で、実質的に前方へ向けられる位置であり、そこに設けられた光学系が前方を見ることができる位置である。このようなばね弾性を有する連結プレートを使うと、折り畳み位置からの戻しが連結プレートによって行われるので、ユーザによる作動が必要なのは折り畳み機構を折り畳むときにのみである。従って、例えば、作動のための引っ張り回数を減らすことができ、ユーザが簡単に使用できる。
【0033】
連結プレートのばね弾性がその長手方向の長さに沿って異なっている、特に連続的に小さくなっている又は大きくなっていると、特に好ましい効果を得ることができる。ばね弾性は、例えば、材料の厚さを変えるなどによる構造の弱体化または強化する処理を連結プレートに施すことによって得ることができる。以下の例では、連結プレートのばね弾性をその軸方向長さに沿って任意に調整可能な連結プレートの具体的な設計について説明する。
【0034】
また、各ヒンジ部が、特定の一定または様々な溝半径(曲率半径/曲率/曲率度)を有し、内視鏡の長手方向に延びる溝を形成するように、ヒンジ部が周方向(特に半径方向外側)に湾曲していると特に有利である。溝半径/曲率半径または曲率/曲率度は、所望の復元力に応じて適合/選択されることが好ましい。換言すれば、復元要素として機能する(ばね弾性を有する)ヒンジ部の復元力は、とりわけ、周方向に沿ったヒンジ部の曲率に応じて調整可能である/設定される。復元力とは、ヒンジ部が(そのばね弾性により)折り畳み機構を展開位置または伸長位置へ戻すように促す力である。つまり、復元力は、折り畳みに使用される作動要素に抗して作用し、さらに任意で、作動要素がユーザによって作動されなくなると、作動要素を初期位置へ戻す。チャンネル半径が小さいほど、あるいはヒンジ部の曲率が大きいほど/きついほど、復元力は強い。
【0035】
機能的に言えば、ヒンジ部が曲げられる又は折り畳まれると、ヒンジ部は、溝エッジ/溝エッジ領域において(弾性的に、場合によっては塑性的に)圧縮され、および/または(周方向の)中央領域/溝中央領域で引き伸ばされる。しかし、溝エッジ/湾曲したヒンジ部のエッジがこの圧縮に対抗する(大部分を阻止する)ので、半径方向外側へ(特に弾性的に)変形される、より正確には押圧される。つまり、ヒンジ部がヒンジ軸に沿って実質的に平坦または直線(すなわち、湾曲していない又は曲がっていない)形状に近づく(平らになる)ように、ヒンジ部が変形されるということである。より具体的には、折り畳み機構が僅かに折り畳まれると、ヒンジ部の曲げを可能にするために、ヒンジ部はまず溝中央部で平らになる、すなわち、ヒンジ部は曲率に逆らって曲げられる。折り畳み機構がより強く/折り畳み位置の方向に折り畳まれると、ヒンジ部がより強く曲げられるようにするために、実質的に平らになった領域が周方向に、すなわち溝エッジへ向かって大きくなる/広がる。材料の変形抵抗/弾性は、曲げ/折り畳みに対抗する。折り畳み機構がスムーズに折り畳まれるためには、湾曲/溝が、溝中心を通って、内視鏡の長手方向軸に沿って延びるミラー平面に対して鏡面対称であると有利である。換言すれば、溝中心から両溝エッジに向かう湾曲/溝/曲げは、両側で同じコースをたどる
【0036】
(溝中心と溝エッジの間)の溝半径/曲率が様々である場合、特に、折り畳み機構の折り畳み半径/偏向半径(作動の程度)に応じて様々な復元力を設定することができる。言い換えれば、溝の曲がり/溝の半径/曲率によって復元力を変化させることができる。特に、復元力は、内視鏡/セグメントの周方向に沿う溝/曲率半径によっておよび/または曲率曲線(すなわち、溝/曲率半径の変化)によって設定され、溝/曲率半径が小さいほど復元力が大きく、または内視鏡/セグメントの周方向に沿って設定された曲率半径の位置が折り畳み機構の折り畳み角度/折り畳み度合いに対応する。ここで、最大折り畳み角度/折り畳み度合いは、溝エッジにおける湾曲の位置に対応し、最小折り畳み角度/折り畳み度合いは、溝中央における湾曲の位置に対応する。
【0037】
例えば、溝半径は、周方向でヒンジ部の外側エッジ又は溝エッジに向かって小さくなる。つまり、折り畳み機構が強く折り曲げられた状態において、あまり折り曲げられていない状態よりも高い復元力が作用するようにするために、溝中央領域では溝半径/曲率半径が大きいか、あるいは全く曲げられておらず(すなわち直線状であり)、溝エッジ領域では小さい(すなわち強く湾曲している)ということである。このことは、例えば、折り畳み機構がどの程度折り畳まれているかについてのより良い感覚的フィードバックをユーザに提供することができるので有利であり得る。換言すれば、周方向に沿って見たときの溝半径/曲率半径は、ヒンジ部の中央では比較的大きく、ヒンジ部の(側方/自由)エッジに向かって小さくなってよく、あるいは、曲率/曲率度は、中央では比較的小さく、エッジに向かって大きくなる/狭くなってよい。溝半径がエッジに向かって小さくなる場合、または曲率がエッジに向かって大きくなる場合、折り畳み機構が大きく折り畳まれる/曲げられるほど、復元力は大きくなる。
【0038】
あるいは又は加えて、溝中央領域および/または溝中心と溝エッジとの間の中間領域における溝/曲率半径は、溝断面の残りの部分よりも大きく湾曲されていてよい。つまり、わずかにだけ(特に最小限に)折り畳まれた状態および/または中程度に折り畳まれた状態において、大きな復元力が提供されるということである。溝/ヒンジ部が比較的僅かしか湾曲していない場合、または溝/ヒンジ部のエッジ領域が全く湾曲していない場合、最大に折り畳まれた状態での復元力は小さい。
【0039】
この場合、折り畳み機構の最大折り畳み状態/最大作動状態において、ユーザはより小さい作動力を加えるだけでよいので有利である。したがって、最大折り畳み状態において、ユーザが折り畳み機構を簡単に(小さな操作力しか必要としない)保持することができる。
【0040】
要約すると、溝半径がエッジ領域で直接的に(最も)小さくなる場合、復元力は、折り畳み機構の最大折り畳み状態/折り曲げ状態で大きくなって(最大となって)もよい。および/または、溝半径が中間領域(溝の中心とエッジの間)で(最も)小さくなる場合、復元力は、中間領域で大きくなって(最大となって)もよい。および/または、溝半径が溝中央領域で(最も)小さくなる場合、復元力は、折り畳み機構のわずかに(最小に)折り畳まれた状態/折り曲げられた状態(伸長状態)で大きくなって(最大となって)もよい。
【0041】
連結プレートは、各ヒンジ部が同一であるように形成されてもよいし、複数の異なる、特に湾曲の異なるヒンジ部を有するように形成されてもよい。例えば、ヒンジ/溝エッジ領域で最も近位側に位置する最初のヒンジ部は、残りのヒンジ/溝領域およびヒンジ/溝中央領域で最も遠位側に位置する最後のヒンジ部よりも大きく湾曲してよい。内視鏡の長手方向軸に沿う中間ヒンジ部の各々は、最初のヒンジ部から最後のヒンジ部に向かって、僅かに中央部に位置する、より強く湾曲した領域を有してよい。換言すれば、湾曲は、内視鏡の長手方向軸に沿って、溝中央領域に向かってさらに徐々に移動されるか、または、溝エッジ領域において強い湾曲を有する最初のヒンジ部から溝中央領域において強い湾曲を有する最後のヒンジ部まで、強い湾曲の位置が徐々に移行する。これにより、折り畳み機構は、最初に、その近位端/最も近位側に位置するヒンジ部で折り畳まれ、次に、他のセグメント/他のヒンジ部が内視鏡の長手方向で次々と折り畳まれ、最後に、最も遠位側に位置するセグメント/そこに配置された内視鏡ヘッドまたは折り畳み機構の遠位端で折り畳まれる。ヒンジ部は異なる順序で配置されてもよく、例えば、上述の順序とは逆に配置されてもよく、この場合、折り畳み機構の遠位端で最初に折り畳まれ、近位端で最後に折り畳まれる。
【0042】
連結プレート(特に連結プレートのヒンジ部)が、近位領域(特に、折り畳み機構またはデフレクタの最も近位側に位置するセグメントの領域、またはデフレクタ領域、またはデフレクタの最も近位側に位置するセグメントの領域)よりも遠位領域において低いばね弾性を有すると特に有利である。こうすることにより、内視鏡がその遠位端から丸まることができる。有利なことに、これによって、屈曲中に遠位内視鏡ヘッドの横方向の回動を減少させることができる。従って、本発明の内視鏡は、折り畳み機構を使って、場合によってはデフレクタを使って内視鏡ヘッドを折り畳む際に、必要とするスペースが小さい。連結要素は、折り畳み機構のセグメントとデフレクタのセグメントの両方を連結することが好ましい。連結要素の剛性は、遠位方向でその軸方向長さに沿って、好ましくは連続的または均一に小さくなることがさらに好ましい。
【0043】
さらに、連結プレートがヒンジ部で細くなっている(前述の狭窄部を形成している)と有効であることが証明されている。こうすることで、ヒンジ部の可撓性/曲げ性が向上する。任意で、ヒンジ部はそれでも十分なねじり剛性を有してよい。さらに、ヒンジ部は摺動面の一部として機能するのに十分な幅を有するべきである。
【0044】
連結プレートは、内視鏡の長手方向に連続し、摺動面を形成する滑らかな中央部を形成してよく、タブ状の取付領域又はタブが、中央部から両側へ、内視鏡の長手方向に対して横方向又は斜め方向に又は内視鏡の周方向に対称的に(保持部において)突出し、このタブ状の取付領域又はタブは、セグメントを取り付けるように機能し、中央部に対して互いに向かって折り曲げられることが好ましい。
【0045】
取付領域は、隣接する取付領域の間のスロットまたはスペースよりも内視鏡の長手方向に幅広い(特に、4倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上)ことが好ましい。好ましくは、取付領域は、実質的に内視鏡の長手方向で幅を有し、この幅は、セグメントのうちの1つの内視鏡の長手方向における最大長さに少なくとも対応し、さらに好ましくは、セグメントのうちの1つの内視鏡の長手方向における最大長さおよび隣接する2つのセグメント間の距離に対応する。スリットは、好ましくは、実質的に直線状/一次元状であってよい。換言すれば、連結プレートは、両側に(平行な)スリットを備えてよく、これらのスリットによって、隣接する2つの取付領域が互いに分離されている。これにより、折り畳み機構が折り曲げられたときに、隣接する(シート状の)取付領域が、瓦状/うろこ状に互いに乗り上げることができる。こうすることで、連結プレートの中央領域が狭くても、折り畳み機構の湾曲に関係なく、(少なくともバック領域において)セグメント/傾斜体間のギャップが確実に覆われる。これによって、器具が作業チャンネルを前進する際に器具が引っかかるのをより確実に防ぐことができる。
【0046】
上述した(第1の)連結プレートの代わりに、第2の連結プレートを設けてよく、この第2の連結プレートは、内視鏡の長手方向に延びる第2の中央部と、中央部から中央部に対して横方向に(内視鏡の周方向に)対称に突出するタブとを有する。第2の連結プレートは、特に、内視鏡、第1の(半径方向外側の)連結プレートに対して(折り畳み機構の装着状態に対して)半径方向内側に配置されている。これら2つの(第1および第2の)連結プレートは、内視鏡の長手方向において互いに対して可動/摺動可能であるように配置されてよく、特に、2つの連結プレートのうちの一方は、連結プレートのうちの他方に対して内視鏡の長手方向の一点でのみ固定され、それ以外では自由に可動である。
【0047】
さらに、2つの連結プレートは、一方の連結プレートのタブが他方の連結プレートのタブ間のスペースを少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うように、長手方向にオフセットして配置されてよい/重ねて配置されてよい。一方の連結プレートのタブは、内視鏡の長手方向において、他方の連結プレートのタブ間のスペースと少なくとも同じ幅、特に他方の連結プレートのタブ間のスペースよりも幅広いことが好ましい。第1の連結プレートの中央部と第2の連結プレートの中央部は、好ましくは、重なって配置され、また好ましくは、周方向で同じ位置又は一致するように重なって配置される。こうすることで、折り畳み機構の湾曲とは無関係に、(少なくともバック領域において)セグメント/傾斜体間のギャップが確実に覆われる。これにより、器具が作業チャンネルを前進する際に器具が引っかかるのをさらに防止することができる。
【0048】
セグメント(特にすべてのセグメント)が、上述された半径方向外側の第1の連結プレートに取り付けられることがさらに好ましい。この場合、第2の半径方向内側の連結プレートのタブは、半径方向内側の連結プレートのタブ間のスペースを覆い、カバー領域を形成する。言い換えれば、第1のプレートの開口を覆う第2の半径方向内側の連結プレート/カバープレート内側連結プレート/カバープレート(略称:プレート)は、第1の半径方向外側のプレートとセグメント/傾斜要素との間に位置すべきである。特に、第2のプレートは、第1のプレートに対して内視鏡の長手方向の1点でのみ位置が固定されている(すなわち、セグメントのうちの(厳密に)1つ、またはデフレクタの椎体のうちの(厳密に)1つ、または内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部、および/または第1のプレートに取り付けられている)。特に、したがって、第2のプレートは、第1のプレートに対して動くことができるにもかかわらず、中立状態および折り畳み状態/折り曲げ状態の両方において、折り畳み機構内で内視鏡の長手方向に沿って(セグメントを越えて半径方向外側へ突出することができないように)ロック、すなわち案内される。従って、折り畳み機構が折り曲げられると、半径方向外側の第2の連結プレートのタブが、うろこのように、半径方向内側の第1の連結プレートのタブ上に乗り上げることができる。
【0049】
半径方向外側の連結プレートのタブは、半径方向内側の連結プレートのタブよりも内視鏡の長手方向に幅広いことが好ましい。第2の内側プレートのタブは、内視鏡の長手方向において、隣接する2つのセグメント間の距離よりも狭くなっており、折り畳み機構が折り畳まれたときにタブがセグメントと衝突しないことがさらに好ましい。
【0050】
あるいは、セグメントが、第1の半径方向内側の連結プレートと第2の半径方向外側の連結プレートに交互に取り付けられてもよい。
【0051】
特に、単一の連結プレートが設けられる構成と比較して、第1および第2の連結プレートの各々のプレート厚さ/シート厚さ(すなわち、組立て状態で内視鏡の半径方向で見たとき)は半分である。
【0052】
特に、本開示による折り畳み機構は、(内視鏡)デフレクタの遠位端で内視鏡ヘッドを保持するために設けられ、構成されている。これにより、一方では、患者の非常に狭い体腔を検査する場合であっても後方または側方を見ることができるように、折り畳み機構によって内視鏡ヘッドを強く/きつく折り畳むことが可能であり、他方では、大きな体腔内であっても安全なナビゲーションが提供されるように、デフレクタによって内視鏡ヘッドを広く屈曲することが可能である。換言すれば、折り畳み機構が完全に折り畳まれたときの折り畳み機構の曲げ半径は、内視鏡デフレクタが完全に折り畳まれたときの内視鏡デフレクタの曲げ半径よりも小さいことが好ましい。内視鏡は、好ましくは、十二指腸内視鏡に適しているか、または十二指腸内視鏡として構成されており、折り畳み機構によって、内視鏡ヘッドの光学系が後方または側方に向けられる。
【0053】
さらに、本開示による内視鏡が、シースチューブまたは内視鏡チューブ(いわゆる「オーバーチューブ」/チューブスリーブ/シース;略称はチューブ)を有し、このシースチューブまたは内視鏡チューブが、折り畳み機構とは別体として設けられ、特に、周方向で(実質的に完全に)折り畳み機構を囲む/取り囲むと有利である。内視鏡チューブは、内視鏡の使用時に、患者の組織が、折り畳み機構によって、例えば挟まれるなどして傷つけられてしまうことから保護するように機能する。さらに、内視鏡チューブは、セグメント(および場合によっては内視鏡ヘッド)がヒンジ部を中心として互いに対して滑ったりねじれたりしてしまうことを防止する、すなわち、チューブは、セグメント(および場合によっては内視鏡ヘッド)を整列した状態で保持する。類似のシステムでは、通常、テンションワイヤが使用されるが、これは省かれてもよいので、製造コスト、特に組立コストを低減することができる。換言すれば、チューブは、折り畳み機構の周りで包囲体、特に、少なくとも周方向で閉じられた包囲体を形成する。さらに、チューブは、遠位端(患者側の端)で閉じていてよく、内視鏡ヘッドまたは折り畳み機構の最後のセグメント上に配置されてよい。あるいは又は加えて、チューブは内視鏡ヘッドに固定されてよい。
【0054】
作業チャンネルの直径を大きくする及び/又は小さくすることができるチャンネル調整機構が設けられることが好ましい。こうであると、追加の工具を必要とせずに、またはサイズの異なるセグメントを製造する必要なく、より大きいまたはより小さい器具を使用するために作業チャンネルを迅速かつ容易に適合させることができるので有利である。つまり、所望の作業チャンネル直径の可変性を犠牲にすることなく、製造されるセグメントの数が増加し、それに応じて製造コストが削減されるということである。換言すれば、作業チャンネルの直径を大きくする及び/又は小さくするように構成されたチャンネル調整機構が提供され、セグメントのバック部及び連結プレートが内視鏡の長手方向に対して半径方向内側及び/又は外側へ折り曲げ可能であるように構成されている。
【0055】
作業チャンネルを少なくとも部分的に囲むセグメントのセグメント翼部(バック部を形成するセグメント/セグメント部の三日月形状の端部)が、弾性的および/または塑性的に、半径方向外側へ開くように折り曲げ可能である、および/または半径方向内側へ閉じるように折り曲げ可能であるように形成されているということによって、チャンネル調整機構が提供される。言い換えれば、セグメント翼部は、それらの先端が互いから離れるように又は互いに近づくように折り曲げ可能である。
【0056】
さらに、連結プレート(バック要素)は、好ましくは、チャンネル調整構造を有し、このチャンネル調整構造は、連結プレートが内視鏡の長手方向に対して定められた半径方向内方及び/又は外方に曲げ開き可能及び/又は曲げ閉じ可能となるように、連結プレートの曲げ剛性を局所的に低下させる。換言すれば、連結プレート(バック要素とも称される)は、少なくとも保持部(特に、取付領域とカバー領域との間の移行部、又はカバー領域側の取付領域の一部)にチャンネル調整構造を有し、任意で、カバー領域及び/又はヒンジ部にもチャンネル調整構造を有する。チャンネル調整構造は、取付領域にのみ、特にカバー領域への移行部のみに設けられることが好ましい。連結プレートの各保持部には、少なくとも1つのチャンネル調整構造が設けられている。チャンネル調整構造は、保持部および場合によっては(中央部の)カバー部およびヒンジ部が内視鏡の長手方向軸に対して半径方向外側または内側へ曲げ開くおよび曲げ閉じることができるようにする、またはそれを容易にする。つまり、チャンネル調整構造は、内視鏡の円周方向における連結プレートの湾曲を調整するために、カバー領域/中央部に対する定められたシンプルな連結要素の屈曲、特に取付領域の屈曲を可能にする目標屈曲点を表している。
【0057】
チャンネル調整構造は、バック要素の曲げ剛性を規定し、局所的に減少させるものであればどんな構造でもよい。連結プレートに沿って(のみ)、同一のチャンネル調整構造が設けられることが好ましい。しかしながら、異なる保持部および/またはカバー部および/またはヒンジ部に異なるチャンネル調整構造を設けることも考えられる。特に、内視鏡シャフトまたはデフレクタまたはヘッドへの取り付けに使用される最も近位側の保持部および/または最も遠位側の保持部に異なるチャンネル調整構造を設けることが有利である。また、中央部と取付領域とで異なるチャンネル調整構造を設けることも考えられる。
【0058】
チャンネル調整構造(その全部または一部)は、連結プレートのスロットによって設けられており、スロットは、カバー領域およびヒンジ部にスロットが設けられている場合であっても、外科器具のバックシェル上での摺動を妨げないほど細いことが好ましい。スロットは、連結プレートを貫通し、連結プレートの半径方向外側面と半径方向内側面の両方で開口している。連結プレートの各保持部または各取付領域には、チャンネル調整構造として少なくとも1つのスロットが設けられてよい。チャンネル調整構造としてスロットの格子が設けられることが好ましい。スロットは、V字形状であり、V字形状の先端が内視鏡の周方向の外側又は内側を向くように配向されていることが好ましい。あるいは、スロットは、内視鏡の長手方向に直線状に延びてよく、ミシン目のように連続して配置されてよく、この場合、連結プレートの曲げ剛性がミシン目に沿って低下し、ミシン目の長手方向長さが曲げ軸を画定する。あるいは、スリットは内視鏡の周方向に延びてもよく、この場合、保持部/取付領域の少なくとも一部が薄層状または格子状となる。さらに、斜めのスリットが設けられてもよい。
【0059】
あるいは又は加えて、チャンネル調整構造(その全部または一部)は、連結プレートの断面形状の違いによって設けられてもよい。例えば、連結プレートの材料厚さを、1つまたは複数の溝が設けられるように、特に、溝が各保持部/各取付領域上で内視鏡の長手方向に延びるように、折り畳み式に小さくしてよい。それぞれの溝は、連結プレートの半径方向外面にのみ設けられてもよいし、連結プレートの半径方向内面にのみ設けられてもよい。あるいは、それぞれの溝は、互いに対向するように又は互いに(特に内視鏡の周方向に)オフセットするように、半径方向内面と半径方向外面の両方に設けられてもよい。スロットと同様に、溝は、内視鏡の長手方向に延びてもよいし、内視鏡の周方向に延びてもよいし、または斜めに延びてもよい。あるいは又は加えて、チャンネル挿入構造を提供するために、保持部のうちの1つの断面形状、特に取付領域とカバー領域との間の移行部の断面形状は、波形であってよい。少なくとも1つの波形は保持部/取付領域全体にわたって内視鏡の長手方向に延び、これによって、保持部/取付領域の曲げ剛性が波形に沿って小さくなり、波形の長手方向長さが曲げ軸を画定する。
【0060】
あるいは又は加えて、チャンネル調整構造は、連結プレートの残りの部分と比べて材料強度が低い部分であってよく、この場合、この領域で曲げ剛性が小さくなる。例えば、この部分は、取付領域とカバー領域との間の移行部に設けられる。各保持部/各取付領域に、内視鏡の長手方向に延び、材料強度が低い1つまたは複数の部分が設けられることが好ましい。これらの部分は、例えば、異なる材料で作られていてもよいし、材料処理によって設けられてもよい。必要に応じて、取付領域全体が、ヒンジ部または連結プレートの中央部全体よりも曲げ剛性の低い材料で作られていてもよい。例えば、取付領域がプラスチックでできていてもよく、少なくともヒンジ部、好ましくはジャケット領域も(すなわち中央部全体が)、ばね鋼で作られていてもよい。
【0061】
本開示のさらに有利な実施形態によれば、セグメントは、2つの(好ましくは分離した)部分セグメントに分割され、これらの部分セグメントは、連結プレートに取り付けられ、連結プレートのタブ状の取付領域を介して互いに接続される。セグメントのシリンダジャケットの作業チャンネル側(特に先端部)とは反対側の面において、部分セグメントの間に(半径方向の)ギャップが形成される。ギャップを広げて(部分セグメント間に角度ができるように)、広がったギャップ内に追加の作業チャンネルのためのスペースを提供するために、連結プレート/取付領域は、2つの部分セグメントを拡げる拡張ばねとして機能する。取付領域は、少なくとも部分的に部分セグメントを囲んでおり、内視鏡の送達時に、ロック要素によって弾性的に内側へ変形した状態で保持され、この状態において、部分セグメントは、互いに近接している、特に、実質的に互いに当接している(以下でさらに詳細に説明されるように、場合によっては、中間ライニングまたは中間追加チューブを伴って)。この状態では、拡張ばねは付勢されており、ギャップは実質的に閉じている。ロック要素が取り外されると、ギャップは拡張ばねの付勢によって開かれる。ラッチ要素は、ラッチワイヤなどの紐状の要素であってよく、ラッチ要素は、取付領域のアイレットに通されており、追加の作業チャンネルが必要な場合に近位方向に引き抜かれる。ラッチ要素の代替として、取り外し可能な圧縮チューブやそれに類似するものなどが考えられる。
【0062】
追加の作業チャンネル又はギャップは、好ましくは、管状フィルムで裏打ちされており、この管状フィルムは、空間/追加の作業チャンネルが閉じている時にはギャップ内で折り畳まれており、ギャップを封止するために内視鏡の長手方向に折り畳み機構内を延びる。ライニングは、好ましくは、薄いEPTFEまたはTPU材料でできている。ギャップが開くと、ライニングが開き、先端部のギャップを橋渡しする/閉じる。あるいは又は加えて、弾性を有する追加のチューブが設けられてよく、この追加のチューブは、部分セグメントを広げることによって展開されるように、部分セグメント間でスロット内に配置されており(好ましくは、部分セグメントの両側に接着されており)、追加の作業チャンネルとして機能する。好ましくは、閉じたときにチューブまたはライニングがくっついてしまうのを防ぐために、取り外し可能なフィルムなどを追加のチューブ内またはライニング内に設けてよい。
【0063】
各セグメントは、作業チャンネルおよび内視鏡の長手方向軸を通る平面に対して鏡面対称な2つの分離した半分部に分割されており、したがって、各セグメントは、2つの(本質的に半円筒形の)部分セグメントによって形成されており、各部分セグメントが部分シリンダジャケットを形成することが好ましい。この場合、各部分セグメントは、バック部に凹部を有し、隣に並んだ2つの部分セグメントの凹部が互いに向かい合って、共に作業チャンネルを形成する(すなわち、各部分セグメントが作業チャンネルの周壁の一部を形成する)。凹部の半径方向外側の部分は互いから離間しているので、バック部の領域では、凹部またはこれらの凹部によって形成された作業チャンネルがシリンダジャケットを貫通している。
【0064】
あるいは、本開示の基礎となる課題は、折り畳み機構によって、特に請求項1の特徴を含む(医療用)内視鏡によって解決される。
【0065】
より具体的には、内視鏡部に遠位の手動操作可能な折り畳み機構を有する内視鏡シャフトを備える内視鏡が提供され、折り畳み機構は、制御されて折り畳まれ得るか又は折り曲げられる内視鏡ヘッド又は遠位ヘッド部を保持するためのものであり、内視鏡部は、折り畳み機構の近位上流に位置する。折り畳み機構は、互いに軸方向に並び、少なくとも1つの共通の作動要素によって互いに対して能動的に角度調節され得る複数の本質的に円筒状のセグメントを有しており、これらのセグメントの各々は、互いに対して本質的に形に配置された2つの軸方向端面と、最大軸方向長さを有するシリンダジャケットの部分においてバック部を画定するシリンダジャケットとを有しており、バック部において、複数のセグメントは互いに(または、内視鏡ヘッド/ヘッド部に、および/または、近位上流の内視鏡部に)ヒンジ結合されており、複数のセグメントが一緒になって作業チャンネルを形成するように、各セグメントが内視鏡の長手方向に少なくとも1つの貫通開口を有する(各セグメントは、特に周方向に連続または閉じた作業チャンネル壁部を有する)。複数の(特にいくつかの)セグメントに沿って、好ましくは折り畳み機構全体に沿って内視鏡の長手方向に延びる可撓性の偏向バンド/偏向バンド装置/偏向プレートが、作業チャンネルに挿入され、偏向バンド/偏向バンド装置/偏向プレートは(少なくとも部分的に)作業チャンネルの作業チャンネル壁のバック部(すなわち、それぞれのセグメントの作業チャンネル壁部)(およびセグメント間の領域、例えば、ギャップ、エッジ、角度)を覆って、作業チャンネル内に挿入される(すなわち、を(少なくとも部分的に)覆い、作業チャンネルに挿入される医療器具のために連続的で滑らかな摺動面を形成する。
【0066】
換言すれば、折り畳み機構は、その基本的な構造に関して、請求項1に係る上記解決手段による折り畳み機構に対応しており、内視鏡の長手方向に沿って配置された円筒状のセグメントを備え、これらのセグメントは、側面視したときに形状をしており、作動要素の操作によって互いに対して角度調節可能/折り畳み可能であるように、バック部において互いにヒンジ結合され、折り畳まれたときにセグメントの先端部間のギャップが閉じられるようになっている。請求項1とは対照的に、請求項14による解決策では、各セグメントが、連続的な/周方向の/閉じた周壁(作業チャンネル壁部)を有する貫通開口/孔を有しており、セグメントの貫通開口は共に作業チャンネルを画定している。可撓性を有する、好ましくは弾性を有する、細長い矩形の偏向プレート/バンド装置は、作業チャンネルのバック側(バック部に面する側/セグメントが互いにヒンジ結合される側)に挿入され、偏向機構のいくつかのセグメント、特にすべてのセグメントにわたって、ならびにセグメント間のギャップまたはエッジ/角にわたって延びる。要約すると、セグメントは偏向プレート/バンド装置とは別に形成されたジョイントによって互いに接続され、偏向プレート/バンド装置はジョイントを覆う。
【0067】
折り畳み機構が曲げられると、セグメントは互いに向かって折り畳まれ、先端部が互いに向かって近づき、場合によっては互いに接触する。つまり、隣接するセグメントの作業チャンネル壁部も互いに角度をなし、特に完全に折り畳まれていない状態では、セグメント間にさらなるギャップが生じる可能性がある。偏向プレート/バンド装置は、角やあらゆるギャップを橋渡しし、それらの上で湾曲することで、曲率半径の外側で(互いに対して折り畳まれたセグメントのバック部に沿って)滑らかで丸みを帯びた摺動面を提供する。(摺動面が実質的に損傷を受けずに、すなわち長手方向の表面的な傷程度で)器具が均一で滑らかに摺動できるように、偏向プレート/バンド装置は硬度を有するか、摺動面が硬化されている。
【0068】
換言すれば、偏向プレート/偏向バンド装置は、作業チャンネル内(特に、作業チャンネルの内管とセグメント/傾斜体の内壁との間)でバック側に挿入される補強要素を形成している。
【0069】
好ましくは、偏向バンド装置は、例えば、接着/溶着/はんだ付けによって、折り畳み機構の遠位端領域、特に内視鏡ヘッドもしくは遠位ヘッド部(のみ)に固定されるか、または最も遠位側に配置された(1つの)セグメント(任意で、代わりに、他の任意の(1つの)セグメント、特に遠位ヘッド部もしくは内視鏡ヘッドから数えて1つ目、2つ目もしくは3つ目のセグメント)に固定される(回転的におよび軸方向に固定される/自由度なし)。
【0070】
さらに好ましくは、偏向バンド装置が内視鏡の長手方向で伸長または圧縮することを実質的に回避するために、偏向バンド装置は、折り畳み機構の折り曲げ時に偏向バンド装置が作業チャンネル内を滑動することができるように、より近位側に配置された(または、別のセグメントに取り付けられる場合には、遠位側および/または近位側に配置された)複数のセグメント(好ましくは、他のすべて)の貫通開口内で内視鏡の長手方向にスライド可能に配置される。換言すれば、偏向バンド装置は、折り畳み機構の(1つの)要素(セグメントおよび遠位ヘッド部または内視鏡ヘッドからなる)に取り付けられ、他の要素内で緩く延びているので、偏向プレート/バンド装置は、折り畳み機構が折り畳まれることによって作業チャンネルの長さが変化しても、長手方向に長さを補償するように動き、しわにならない、すなわち、真っ直ぐで滑らかなままである。
【0071】
偏向バンド装置/偏向プレートが固定点で位置固定され、そこ以外では作業チャンネル内で緩く横たわっていると、偏向プレート/偏向バンド装置は、折り畳み機構の折り畳み時に、単に(いくつか又はすべての)貫通開口の壁(すなわち、個々のセグメントによって形成される作業チャンネル壁部)に接触するように湾曲し、実質的に折り畳み機構の湾曲に追従する。従って、折り畳み機構の折り畳み状態では、角度差及び/又はギャップは、偏向プレート/バンド装置によって橋渡しされ、その結果、器具が作業チャンネルを通って前進する際に、器具のために、滑らかで(本質的に均一に)湾曲した摺動面を提供する。
【0072】
さらに、偏向プレート/バンド装置の近位端(自由端/非固定端)が、内視鏡の長手方向で、折り畳み機構の近位上流の内視鏡部内へスライドするように突出していると有利である。これにより、偏向バンド装置/偏向プレートの自由端がセグメントの間に挟まって、例えば、折り畳み機構を妨害したり、損傷してしまうことがない。つまり、自由端は作業チャンネル内に確実に挿入される。
【0073】
さらに、偏向バンド装置が、弾性を有し、静止位置で実質的に真っ直ぐに延びており、それによって、折り畳み機構が折り畳み位置から実質的に前向きの位置または伸長位置へリセットされたときに、偏向バンド装置が真っ直ぐの曲がっていない静止位置へ戻ると好ましい。特に、折り畳み機構の使用中に偏向プレート/偏向バンド装置に作用する力によって偏向プレートが常に大きく半径湾曲し、例えば、作業チャンネル内で偏向バンド装置が局所的に波打ってしまうこと又は変位してしまうこと又はねじれてしまうことが回避されるように、偏向バンド装置/偏向プレートが内視鏡の長手方向に剛性を有すると有利である。さらに、偏向バンド装置が、内視鏡の長手方向において本質的に伸長不能であることが好ましい。
【0074】
偏向バンド装置の全形は、バンド/プレート(すなわち偏向プレート)の形状をしており、開口のない(特に矩形の)閉じた表面を形成していることが好ましい。
【0075】
あるいは、偏向バンド装置は複数の長手方向要素を有してよく、長手方向要素は内視鏡の長手方向に、特に互いに平行に延びることが好ましい。長手方向要素は長手方向ストリップの形態であってよく、長手方向ストリップの間には長手方向スロットが設けられている。特に、長手方向ストリップは互いに対して可動である。従って、折り畳み機構はセグメントのバック側(ジョイントの領域)では長さが縮まず、先端側で長さが大きく縮むということを有利に補償するために、偏向バンド装置の幅にわたって、長手方向ストリップが(長手方向で)(すなわち、セグメント間のジョイントに対する折り畳み機構上の長手方向ストリップの周方向位置に応じて)様々に変位することができる。例えば、偏向バンド装置は、フォーク形状であってよい、すなわち、クロスウェブによって遠位端が接続された複数の細長状の長手方向ストリップを有してよい。偏向バンド装置のクロスウェブは、長手方向ストリップが折り畳み機構を通って近位方向に延びるように、折り畳み機構の遠位領域または内視鏡ヘッドに取り付けられてよい。この場合、長手方向ストリップは、折り畳み機構に沿って作業チャンネル内(セグメント内壁/セグメントの作業チャンネル壁と作業チャンネルの内管との間)に配置されるので、セグメントに対して自由に/長手方向にスライドできる。
【0076】
あるいは又は加えて、偏向バンド装置が、長手方向要素として内視鏡の長手方向に延びる複数のワイヤを有してよいことが好ましい。ワイヤは、作業チャンネル内(内管とセグメント内壁/セグメントの作業チャンネル壁との間)に挿入され、任意で、作業チャンネル壁の溝内で案内される。ワイヤの遠位端領域、特に遠位端は、折り畳み機構の遠位領域または内視鏡ヘッドに取り付けられ、そこ以外は、作業チャンネル内を自由にスライドしてよい。こうすることで、偏向バンド装置の幅にわたって偏向バンド装置を様々に変位させることが特に容易になる。
【0077】
特に、請求項1に係る上述の解決策は、連結プレート/バック要素に加えて、上述の偏向バンド装置を内視鏡に設けることによって変更されてよい。つまり、一方では、セグメントのバック部は、可撓性を有する、好ましくは弾性を有する連結プレート/バック要素によって内視鏡の長手方向で互いに連結され、連結プレート/バック要素は、長手方向スロットそれぞれを覆いながら、セグメントの外側に固定される。他方では、いくつかのセグメントに沿って、好ましくは折り畳み機構全体に沿って、内視鏡の長手方向に延びる可撓性の偏向バンド装置(追加的なバック要素と見なすこともできる)が、作業チャンネルに挿入され、連結プレートおよび/またはセグメントのバック部領域を少なくとも部分的に覆う。
【0078】
特に、偏向バンド装置は、セグメントと連結プレートとの間の移行部に配置され、好ましくは移行部を覆う。有利には、偏向バンド装置は、セグメントのバック側から最も遠い(すなわち、セグメントの三日月形輪郭/鎌の先端の延長線上にある)セグメントの端(円周方向で見て)に直接配置されてよい。換言すれば、偏向バンド装置は、1つまたは複数の弾性補強プロファイルとして作業チャンネルに挿入されてよい。特に、偏向バンド装置は、(閉じた作業チャンネルの場合には)作業チャンネルの内管と傾斜体/セグメントのバック部との間または(作業チャンネルがバック側でセグメントの円筒壁を貫通している場合には)作業チャンネルの内管と連結プレートとの間の少なくとも1つの自由空間/スペースに挿入されてよい。
【0079】
以下に、独立して特許請求され得る本開示のさらに好ましい実施形態が説明される。この実施形態は、(特に上述のように)傾動可能に互いにヒンジ結合された複数の(特に菱形または形の)椎体を含むデフレクタと、デフレクタの近位側に配置された内視鏡シャフトとを有する内視鏡に関する。この内視鏡は、作動ばね/コイルばね(略称:ばね)を有する作動機構を有し、作動ばね/コイルばねの遠位端は、デフレクタの遠位領域、特に最も遠位側に配置されたデフレクタの椎体に固定され、デフレクタおよび内視鏡シャフトを通って延び、デフレクタの屈曲を制御するために内視鏡の長手方向で作動される。
【0080】
作動ばねの遠位ばね領域は、コイルが好ましくは互いに接する近位ばね領域よりも大きなピッチ(ばねの2つのコイル間の距離)を有する。特に、近位ばね領域と遠位ばね領域との間の移行領域は、内視鏡の長さに沿って見たときに、デフレクタの領域に位置する。ばねの遠位端または遠位ばね領域の遠位端には、ロックワイヤが取り付けられており、ロックワイヤは、デフレクタおよび内視鏡シャフトを通って延び、内視鏡の長手方向で作動される。ロックワイヤはばね内を案内されることが好ましい。遠位ばね領域は、内視鏡遠位領域(少なくともデフレクタを含む)の中立位置(作動機構によって作動されていない/曲げられていない)において、ロックワイヤによって付勢されることが好ましく、これにより、作動機構/内視鏡遠位端の安定性が有利に向上する。
【0081】
第1の作動領域においてロックワイヤが近位方向に作動される(引っ張られる)と、遠位ばね領域はまず、ばねが止まる(遠位ばね領域のばねのコイルが接触する)まで圧縮される。その結果、特に近位ばね領域と遠位ばね領域との間の移行領域の遠位側に位置する最も遠位に配置されたデフレクタの椎体が、互いに対して曲げられる/折り畳まれる。第1の作動領域において、ロックワイヤは近位方向に作動させることができる。作動ばねは、好ましくは、所定の剛性を有する支持ばね(圧縮ばね)によって近位端で支持され、支持ばねは、ロックワイヤの第1の作動領域での作動時に、近位方向の作動移動を最小にするか又は防止するように構成されている。
【0082】
第1の作動領域での作動後に、ロックワイヤおよび/または(止まった)作動ばねがさらに近位方向に作動されると/引っ張られると、第2の作動領域で作動が起こる。この場合、ロックワイヤは、作動ばねとともに(場合によっては、支持ばねに抗して/支持ばねを圧縮して)近位方向へ動き、特に移行領域の近位側に位置する近位に配置されたデフレクタの椎体も曲げる。こうすることで、患者の腔内で内視鏡を制御/ナビゲートするために使用されるデフレクタを多段階の作動範囲で曲げることができ、特に繊細な制御が可能になる。
【0083】
さらに、内視鏡は、互いに傾動可能にヒンジ結合された複数の形セグメントを有する遠位折り畳み機構/傾斜ヘッド(特に、上述したもの)を備えてよく、この折り畳み機構/傾斜ヘッドは、デフレクタの遠位側に配置され、デフレクタよりも小さい角度で屈曲可能である。作動機構は、制御ワイヤ(プッシュプルワイヤ/ボーデンケーブル)を有してよく、制御ワイヤは、折り畳み機構の遠位領域又はその遠位側に配置された要素(例えば、内視鏡ヘッド)に固定され、折り畳み機構、デフレクタ及び内視鏡シャフトを通って延び、折り畳み機構の屈曲を制御するために、内視鏡の長手方向に作動される。特に、制御ワイヤは、作動ばね内を案内される。従って、制御ワイヤと作動ばねは、好ましくは、互いに対して付勢され/互いに対して働くことができ、作動機構/遠位内視鏡(少なくともデフレクタと折り畳み機構を含む)の安定性を向上させる。
【0084】
遠位内視鏡領域の中立位置では、デフレクタは、好ましくは、作動機構によって作動されておらず/曲げられておらず、作動ばねは、上述したように、ロックワイヤによって付勢されている。制御ワイヤが遠位内視鏡領域の中立位置から近位方向に作動される(引っ張られる)と、折り畳み機構のセグメントは互いに対して曲げられる。これにより、例えば、内視鏡の長手方向軸に対して/折り畳み機構のすぐ近位側の内視鏡部(デフレクタ)に対して、折り畳み機構が120°折り曲がる。特に、折り畳み機構は、特に小さな曲率半径をもたらすので、狭いスペース内で内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部を側方または後方へ向けるのに特に適している。
【0085】
作動ばねの遠位ばね領域の付勢、および必要であれば、支持ばねの付勢は、好ましくは、制御ワイヤの作動によってデフレクタの屈曲が最小に抑えられるか、または防止されるように、構成/調整される。従って、折り畳み機構の作動を、デフレクタの作動から確実に切り離すことができる。
【0086】
制御ワイヤおよびロックワイヤ、さらに場合によっては作動ばねは、長手方向に互いに独立して作動されるようにモータ駆動されることが好ましい。デフレクタが第1または第2の作動範囲で作動されると、折りたたみ機構の位置を維持するために、デフレクタの屈曲によって生じる制御ワイヤの長さ変化を補償するように折り畳み機構を作動するために、制御ワイヤは、好ましくは、同時に作動させられる。あるいは、制御ワイヤは、遠位内視鏡領域全体(すなわち、折り畳み機構およびデフレクタ)の所望の湾曲、例えば最大180°の湾曲を得るために作動されてよい。従って、患者腔内での内視鏡の制御/ナビゲーションのために、折り畳み機構/傾斜ヘッドとデフレクタとが一緒に使用されてよく、折り畳み機構は、例えば、カーブを曲がる際に、扱いにくい突出した障害物とはならない。
【0087】
モータ制御/モータ駆動により、例えば、傾斜ヘッド要素(すなわち、折り畳み機構のセグメント)を、最も遠位側に配置されたデフレクタ要素(すなわち、デフレクタの対応する椎体)の屈曲と並行して曲げることも可能である。適切に制御することにより、デフレクタ要素と同じ曲げ半径となるように傾斜ヘッド要素を制御することができ、その結果、均一な曲げ半径がもたらされる。
【0088】
好ましくは、デフレクタの椎体は、さらなるデフレクタ連結要素/バック要素(バックアーマ/連結プレート)によって互いに連結されており、この連結要素/バック要素は、折り畳み機構のセグメントを互いに連結する連結要素/バック要素(バックアーマ/連結プレート)と実質的に同じ設計であり、デフレクタ連結要素/バック要素の寸法(特に、内視鏡の長手方向および/または周方向での保持部または取付部の長さ、および/または保持部間または取付部間の距離)は、デフレクタの椎体に適合されている。デフレクタ連結要素/バック要素は、折り畳み機構のセグメントを連結する連結要素/バック要素と一体的に形成されてよい。換言すれば、デフレクタも、バックばね/連結要素/バック要素を有してよい。両方の領域(すなわち、折り畳み機構とデフレクタ)が、(特に1つの/共通の)ばね(バックばね/連結要素/バック要素)で覆われてよく(すなわち、バック領域で)、このばねは、傾斜ヘッド領域と偏向領域において(特に、保持領域とヒンジ領域の間で)異なるピッチを有する。
【0089】
特に、デフレクタの椎体は、側面視で状をしており、平面視で円筒状をしているが、折り畳み機構のセグメントよりも長手方向に長い。デフレクタのバック部は、折り畳み機構のセグメントのバック部と周方向で同じ位置に配置されてよい。デフレクタのバック部(椎体側)は、デフレクタ連結要素/バック要素によって互いに連結/ヒンジ結合されてよい。必要に応じて、既に上述したような第2の連結要素/バック要素を設けてよく、この第2の連結要素/バック要素は、デフレクタ連結要素/バック要素に対して長手方向にオフセットし、折り畳み機構の連結要素/バック要素および/またはデフレクタに対して半径方向内側にオフセットして配置される。
【0090】
独立して請求され得る本願発明の一態様によれば、内視鏡を制御するための制御方法、特に上述した内視鏡を制御するための制御方法であって、この内視鏡は、遠位内視鏡ヘッドと、内視鏡ヘッドの近位側に配置された内視鏡ヘッドを折り畳むための折り畳み機構と、折り畳み機構の近位側に配置されたデフレクタとを備え、少なくとも折り畳み機構がデフレクタとは独立して駆動可能である制御方法が提供される。
【0091】
制御方法は、好ましくは、折り畳み機構のみを折り畳むことができる又は折り畳み機構をデフレクタとは独立して折り畳む第1のモードへ内視鏡を切り替えてよい。さらに好ましくは、制御方法は、例えば、第1のモードでの制御によって、折り畳み機構が特定の位置、特に完全に折り畳まれた位置に達した後に、デフレクタを折り畳むことができる又はデフレクタが折り畳まれる第2のモードへ内視鏡を切り替えてよい。
【0092】
さらに好ましくは、制御方法は、折り畳み機構およびデフレクタが、特に実質的に同時に、さらに特に折り畳み機構およびデフレクタに沿って実質的に一定の曲率半径で湾曲されるか、または湾曲することができるか、または折り畳むことができる第3のモードへ内視鏡を切り替えてよい。
【0093】
さらに好ましくは、制御方法は、例えば、第3のモードでの制御によってデフレクタが特定の湾曲、特に最大湾曲に達した後に、折り畳み機構をさらに折り畳むことができる、または折り畳む第4のモードへ内視鏡を切り替えてよい。しかしながら、結局は、S字形状または逆S字形状を実現するために、デフレクタおよび/または折り畳み機構が、それぞれの幾何学的に可能な範囲内で、好ましくは交互に反対方向へ曲げられてもよい(すなわち、デフレクタおよび/または折り畳み機構が、バック要素が取り付けられている周方向側に向かって、半径方向で過度に伸ばされたり曲げたりしてよい)。
【0094】
制御方法は、患者の体内における内視鏡ヘッドの位置に関するデータを取得してよいまたは受信してよいことが好ましい。このデータの出処は、内視鏡ヘッド上のセンサ、記憶された治療計画、センサシステム等の位置検出手段であってよく、位置検出手段は、好ましくは内視鏡を備える治療システムの一部である。制御方法は、患者の体内における内視鏡の位置に関するデータに応じて、第1のモード、第2のモード、第3のモードまたは第4のモードへ内視鏡を切り替えてよいことがさらに好ましい。例えば、制御方法は、内視鏡ヘッドが乳頭近傍の小腸に位置している場合または内視鏡が大腸に位置している場合には、内視鏡を第1のモードで動作させてよい。こうすることで、乳頭や腸ポリープ等を見つけるために、的を絞って簡単に後方を見ることができる。さらに、例えば、制御方法は、内視鏡ヘッドが胃の中にあるときには内視鏡を第3のモードで動作させてよい。胃の中には十分なナビゲーションスペースがあるので、内視鏡の操舵を最適化することができる。内視鏡ヘッドが胃の末端領域に到達したと判断されると、制御方法は、例えば、内視鏡を第4のモードに切り替えてよい。これにより、胃の出口が見つけやすくなり、内視鏡をより正確に操舵して、胃の出口まで/胃の出口を通過するように動かすことができる。
【0095】
さらに、内視鏡は、デフレクタを駆動するための少なくとも1つの駆動装置と、折り畳み機構を駆動するための1つの駆動装置とを有してよい。制御装置は、モードに応じて、異なる速度で、駆動装置を互いに独立して駆動するように構成されてよい。換言すれば、制御方法は、特に、駆動装置、例えば電気モータまたはステッピングモータを異なるように制御することによって、すなわち、モードに応じて駆動装置を異なる速度で動作させることによって、異なるモードを制御する。こうすることで、デフレクタと折り畳み機構の一方の位置/動きが他方の制御に及ぼす影響を補正することができる。
【0096】
さらに、独立して特許請求され得る本出願のさらなる態様は、(特に制御方法に関して)上述された内視鏡と、上記制御方法を実行するように構成されたコンピュータユニットまたは制御装置とを備える処置システムに関し、コンピュータユニットまたは制御装置は、特に、内視鏡ヘッドの位置に関するデータを取得して処理するように設定されている、および/または、制御ワイヤを介してデフレクタおよび折り畳み機構を駆動するための駆動装置を制御するように設定されている。
【0097】
以下では、好ましい実施形態によって本開示を説明する。しかしながら、好ましい実施形態は例示なものに過ぎず、本開示の保護範囲を限定することを意図するものではない。さらに、様々な実施形態の説明において、同一のコンポーネントには同一の参照符号を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】屈曲状態および直線状態にある、好ましい実施形態による開示の内視鏡の内視鏡ヘッドの斜視図である。
図2】好ましい実施形態の内視鏡ヘッドの平面図である。
図3】第1の好ましい実施形態による内視鏡のバック要素およびバック要素の変形例を示す。
図4】第1の実施形態のバック要素の斜視図を示す。
図5】第1の実施形態の変形形態による、溝状に湾曲したヒンジ部を通るバック要素の断面図を示す。
図6】第1の実施形態のチャンネル調整機構の機能原理を説明するための内視鏡ヘッドの平面図である。
図7】いくつかの変形例による、チャンネル調整機構のチャンネル調整構造を備える好ましい実施形態のバック要素を示す。
図8】いくつかの変形例による、チャンネル調整機構のチャンネル調整構造を備える好ましい実施形態のバック要素を示す。
図9】さらなる実施形態による折り畳み機構を通る断面を示す。
図10】さらなる実施形態による折り畳み機構を通る断面を示す。
図11】伸長された非折り畳み状態における、本開示の代替設計による折り畳み機構の側面図を示す。
図12】代替設計の2つの好ましい実施形態を示す。
図13】代替設計の2つの好ましい実施形態を示す。
図14】本開示による折り畳み機構のさらに好ましい実施形態を概略的に示す。
図15図1から図8のいずれかに係る実施形態の変形例の一態様を示す。
図16A図1から図15の実施形態のうちの1つに係る内視鏡を作動させるための作動機構の作動シーケンスを示す。
図16B図1から図15の実施形態のうちの1つに係る内視鏡を作動させるための作動機構の作動シーケンスを示す。
図16C図1から図15の実施形態のうちの1つに係る内視鏡を作動させるための作動機構の作動シーケンスを示す。
図17図1による内視鏡の変形例を概略的に示す。
図18】特に上記の図の1つに係る、様々な調整可能動作状態の内視鏡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、好ましい実施形態による本開示の内視鏡の内視鏡ヘッド1の斜視図である。内視鏡ヘッド1は、(内視鏡ヘッド1自体のコンポーネントとして、または別個のユニットとして)折り畳み機構2を有し、折り畳み機構2は、図1の左側では屈曲した状態/折り畳まれた状態で示されており、図1の右側では伸長された状態で示されている。特に、内視鏡は十二指腸内視鏡であり、折り畳み機構2は、好ましくは(必ずしもそうではないが)、内視鏡のデフレクタ部3の遠位端に取り付けられている。デフレクタ部3は、折り畳み機構2とは無関係に手動で(制御される)作動される/偏向される可撓性部であり、デフレクタ部3によって、内視鏡ヘッド1は、好ましくは、内視鏡をナビゲーションするために旋回可能である(すなわち、折り畳み機構2に対して大きな曲げ半径で傾斜可能である)。デフレクタ部3は、設けられている場合、好ましくは屈曲可能な内視鏡シャフト20の遠位端に固定されている。この場合、内視鏡シャフト20は受動的に屈曲可能である、すなわち、例えば結腸の屈曲に沿うように、内視鏡シャフト20を手動で作動/制御することはできない。さらに、破線で示されている内視鏡チューブまたはオーバーチューブ19が設けられており、この内視鏡チューブまたはオーバーチューブ19は、内視鏡の使用時に、患者の組織を折り畳み機構2および/または内視鏡の構造による損傷から(例えば、挟まれてしまうことから)保護するために、折り畳み機構2を覆うように被せられており、特に内視鏡ヘッド1に固定されている。内視鏡チューブまたはオーバーチューブ19は、折り畳み機構2とは別体として設けられており、周方向で折り畳み機構2を(完全に)包囲している。
【0100】
内視鏡ヘッド1の少なくとも遠位端部(光学系および作業チャンネルの出口を含む)又は内視鏡ヘッド1全体を半径方向に傾けるために、つまり折り畳み機構2の先端の内視鏡ヘッドに配置された光学系を側方(半径方向)又は後方へ向けるために、折り畳み機構2は、デフレクタ部3とは別に、(デフレクタ部3に対して小さい折り畳み機構2の曲げ半径で)折り畳み可能である。
【0101】
この目的のために、折り畳み機構2は、複数の(椎体状の)セグメント4(少なくとも1つのセグメント)を有しており、これらのセグメント4は、実質的に円筒形から楕円形の形状をしており、円形または楕円形の軸方向端面を有しており、これらの端面は、内視鏡の長手方向で隣接するセグメント4の端面に面しているか、または、折り畳み機構の遠位側に配置されている内視鏡ヘッドまたは遠位ヘッド部および折り畳み機構の近位側に配置されているデフレクタ/内視鏡シャフトに面している。内視鏡の長手方向に沿う縦断面において、各セグメント4は状(状ディスク)である、すなわち、各セグメント4の端面は鋭角を成すように互いに対して配置されている。周方向に関して、状のセグメント4は、セグメント4の先端部5(すなわち、形状であることに起因して内視鏡の長手方向に最小の範囲/長さを有する側面)の各々が周方向の同じ位置/同じ周方向位置に配置されるように、互いに対して配置されている。従って、セグメント4のうち最大軸方向長さを有する周方向の部分(以下、バック部/領域6と称する)も周方向の同じ位置で互いに軸方向に近接しており、折り畳み機構2が非作動状態(設計位置における順行アライメント)のときには、状セグメント4は、歯付きラックの歯のように、内視鏡軸に対して実質的に直角となっている。
【0102】
このように構成された折り畳み機構2が(例えば、先端部5に位置する不図示のプルロープによって)作動されると、セグメント4の先端部5が互いに向かって(軸方向に)動かされ、その結果、内視鏡ヘッド1の長さが先端部5側で短くなり、反対側のバック部6ではセグメントが(直接的または間接的に)互いに支持し合って、折り畳みが生じる。
【0103】
セグメント4は、先端部5と反対側のセグメント4のバック部6(すなわち、形状であることに起因して内視鏡の長手方向に最大軸方向長さを有する側面)において連結要素/バック要素7(バックアーマ/連結プレート)によって互いに接続されている。バック要素7は、セグメント4とは別に形成された、好ましくは金属製の、可撓性を有する、特に弾性を有する(薄肉の)連結プレートである。図2は、内視鏡ヘッド1または折り畳み機構2の先端部の平面図を示す。内視鏡または各セグメント4は作業チャンネル部8を有しており、セグメント4の作業チャンネル部8の全てによって、バック部6側でスロットの形態で長手方向に開口する作業チャンネルが形成されている。換言すれば、各セグメント4の側面は、バック部6の周方向位置において半径方向のスリットまたはギャップ状の開口を有しており、この開口はセグメントの軸方向全長にわたって延びている。バック要素7は、孔を覆うように延びており又は湾曲しており、セグメント4を完全に包囲せずに、孔の周方向両側でセグメント4の外周に固定されている。したがって、セグメント4によって形成される作業チャンネル部8は、バック部6側で少なくとも部分的に、好ましくは完全に、バック要素7によって制限されている/閉じられている。任意で、内管Sが、作業チャンネル内に配置され、すなわち、内視鏡の長手方向で(全ての)作業チャンネル部8を通るように配置され、内管Sは、特に、隣接するセグメント4の間および隣接するさらなる要素の間を密閉する。
【0104】
図2におけるこのようなセグメント4の平面図には、このセグメント4の作業チャンネル部8を形成する軸方向貫通穴/貫通孔が示されている。この貫通穴は、孔/開口の直径がセグメント4の外周を越えてセグメントの側面を貫通するように、バック部6の方へ偏心してオフセットされている。これにより、セグメント4の形状が、一種の三日月形となり、実質的に馬蹄形の膨らみを有する作業チャンネル部が形成される。連結プレート7は、バック部6においてセグメント4の周方向領域の一部のみを外側から覆い、周方向で見たときに、ギャップ状開口の両側でセグメント4の外側に固定されている。その結果、連結プレート7の半径方向内面は、作業チャンネル部8の内壁の一部を形成している。
【0105】
さらに、例えばボーデンケーブル、フラッシングライン等を案内するための、作業チャンネル8よりも小さな直径を有する二次/供給チャンネル9が、内視鏡/各セグメント4に設けられている、特に、貫通開口が半径方向に変位していることによって形成された三日月領域に設けられている。二次チャンネル9と作業チャンネル8は、互いに平行に延びるように各セグメント4に設けられている。
【0106】
図3(左側、「A」で示される)および図4を参照してより詳細に説明されるバック要素/連結プレート7は、軸方向に離間した複数の保持部10であって、各保持部10にはセグメント4が配置されるか又は配置されるであろう保持部10と、保持部10の間で軸方向に配置されるヒンジ部11であって、2つのセグメント4の間に対応して配置され、折り畳み機構2によって内視鏡ヘッド1を折り畳むためのヒンジとして機能するために屈曲可能に/撓むことが可能に設計されているヒンジ部11と、を有する。これは、図3においてヒンジ軸12で示されている。バック要素/連結プレート7は、ヒンジ部11の領域で周方向に細くなっている/狭窄していることが好ましい。バック要素/連結プレート7の少なくともヒンジ部11の領域は、例えばばね鋼などの弾性材料で作られていることがさらに好ましい。
【0107】
さらに、保持部10の各々は、特に、周方向に突出する2つの翼状の取付領域13を有ており、これらの取付領域13は、横方向/周方向に逆方向に(タブ状に)延び、バック要素7を(長手方向スロットの両側で)セグメント4に取り付けるように設計されている。2つの取付領域13の間にはカバー領域14が形成されており、カバー領域14は、作業チャンネル8によってセグメント4の側面に形成されたセグメント4の上述した孔/長手方向スロットに配置される/配置されてよい。特に、折り畳み機構2が折り畳まれた状態(図1の左図参照)で作業チャンネル8に挿入された医療器具を案内してスライドさせるために、カバー領域14とヒンジ部11は一緒になって、バック要素7の連続的な(連続的に滑らかな)半径方向内側の摺動面36を形成している。さらに、保持部10のうちの1つは、内視鏡シャフト20に取り付けられるように、特に、デフレクタ部3が設けられている場合には(オプションの)デフレクタ部3に取り付けられるように、バック要素7の第1の(近位)端に形成されており、この目的のために、他の(セグメント)保持部10と比べて、例えば内視鏡の長手方向および/または周方向で幅広くなっていてもよい。
【0108】
さらに、バック要素7は、図3から分かるように、例えば1枚のプレートまたはシートから打ち抜きで製造されることが好ましく、保持部10が曲げられて、セグメント4の外周に実質的に対応するかまたは多角形に近似するバック要素7の湾曲がもたらされる。特に、セグメント4に適合されるチャンネル状湾曲を形成するために、取付領域13がカバー領域14に対して曲げ軸15に沿って曲げられる。完成したバック要素7の斜視図が図4に示されている。
【0109】
好ましくは、バック要素7は、図17により詳細に示されるように、折り畳み機構2とデフレクタ3の両方に沿って延び、内視鏡ヘッド又は遠位ヘッド部1と、折り畳み機構2のセグメント4と、デフレクタ3の椎体44と、(受動)内視鏡シャフト20とを、対応する保持部10によって互いに接続してよい。すなわち、バック要素7は、デフレクタ3の椎体44を接続するデフレクタ部(デフレクタ連結要素/バック要素)を有してよい。さらに、図1に示されるように、デフレクタ3の椎体44の各々は、折り畳み機構2のバック部6とバック要素7の周方向位置に対応する内視鏡シャフトに対する周方向位置に半径方向のスリット又はギャップ状開口を有してよく、このスリット又はギャップ状開口は、各椎体44の全長にわたって延び、好ましくは、椎体44を通って延びる作業チャンネルを椎体44の外部と接続する。バック要素7のデフレクタ部は、デフレクタの椎体44のスリットまたはギャップ状開口を覆ってよい。
【0110】
バック要素/連結プレート7の変形例が図3の右側(「B」と示される)に示されているが、参照符号の明瞭性のために図「A」を参照する。この変形例によれば、タブ状の取付領域13が、取付領域13間のスペースまたはヒンジ部11と比べて幅広い。特に、当該スペースは細いスロットまたは切り込みである。この変形例によれば、取付領域13は、内視鏡の長手方向においてセグメント4を超えて突出し、折り畳み機構2が曲げられたときに互いに重なり合う。
【0111】
このような折り畳み機構4の機能は、次のように要約できる。
【0112】
まず、上述のように、内視鏡ヘッド1または遠位内視鏡ヘッド部は、少なくとも1つまたは複数のセグメント4を介して、内視鏡シャフト20または内視鏡シャフト20の遠位端にあるオプションのデフレクタ3に接続される。このために、バック要素/連結プレート7は、その軸方向に離間した保持部10において、内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部と、少なくとも1つのセグメント4と、内視鏡シャフト20またはデフレクタ3とに固定されており、これらの少なくとも3つの要素をまとめて軸方向で保持している。同時に、バック要素7は、少なくとも1つのセグメント4の長手方向ギャップを覆っており、このセグメント4によって部分的に囲まれた作業チャンネル部8の内部に対して摺動面を形成している。
【0113】
折り畳み機構に特有の作動要素(プルロープ)が手動で作動されるとすぐに、少なくとも1つのセグメント4の形状に応じて、内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部は、ヘッドとそのすぐ近位側のセグメント4との間にあるバック要素7のフィルムヒンジと、セグメント4とそのすぐ近位側のデフレクタ/内視鏡シャフト20との間にあるバック要素7のフィルムヒンジとにおいて、セグメント4それぞれの端面が隣接する面または端面と接触するまで折り畳まれ、その結果、上述した3つの要素によって共同で形成されている作業チャンネル8が湾曲する。
【0114】
この折り畳み状態において、低侵襲器具を内視鏡シャフト20の近位端から作業チャンネル8を通して遠位方向に前進させると、上述の3つの折り畳み要素の領域において、器具の先端は、少なくとも1つのセグメント4とも接触せずに前進を妨げられることなく、必然的にバック要素7の連続的に滑らかな(段差のない)内面と接触する。つまり、折り畳み機構の領域での折り畳み角度が非常に小さくても、問題なく送り動作を行うことができるということである。ここでの決定的な要因は、少なくとも1つのセグメント4に長手方向のスロット状切欠きが設けられているということと、折り畳み機構の要素間で折り畳みヒンジを形成するバック要素7によってその切欠きが覆われているということである。
【0115】
図5は、連結プレート/バック要素7のいくつかのオプション変形例をヒンジ部11を通る断面で示している。ヒンジ部11は、内視鏡/セグメントの周方向に沿って半径方向外側へ湾曲しており、(半径方向内側で)溝を形成している。この溝は、特に、様々な溝半径または曲率半径を有する。バック要素7は、内視鏡の長手方向軸に沿って、同一のヒンジ部を有してもよいし、様々に変形されたヒンジ部を有してもよい。後者の場合、図5は、1つのバック要素7の複数の異なるヒンジ部11を示すものとして理解されるべきである。
【0116】
第1の変形例(図5の上図)では、溝/曲率半径は、溝中央部17(周方向の溝中央)の領域では狭いか又は小さく(曲率は大きい)、溝縁部18に向かって大きくなる。したがって、溝縁部18の領域では溝半径が大きい(比較的僅かに湾曲している/曲率が小さい)。この変形例では、折り畳み機構2が強く(特に最大に)曲げられた/折り畳まれた状態でヒンジ部11によってもたらされる、折り畳み機構の伸長位置における復元力は小さく、折り畳み機構2がわずかに(特に最小に)折り畳まれた状態での復元力は(強く曲げられた状態における小さな復元力に比べて)大きい。
【0117】
第2の変形例(図5の中央図)では、溝/曲率半径は、溝中央部17の領域と溝縁部18の領域では大きく、溝中央部17と溝縁部18の間の中間領域では狭いか又は小さい。この変形例では、折り畳み機構2が強く(特に最大に)曲げられた/折り曲げられた/折り畳まれた状態および僅かに(特に最小に)曲げられた/折り曲げられた/折り畳まれた状態においてヒンジ部11によってもたらされる伸長位置における復元力は小さく、折り畳み機構2が中程度/中間程度折り畳まれた状態における復元力は(小さい復元力に比べて)大きい。
【0118】
第3の変形例(図5の下図)では、溝/曲率半径は、溝中央部17の領域では大きく、溝縁部18の領域では狭いか又は小さい。この変形例では、折り畳み機構2が強く(特に最大に)曲げられた/折り曲げられた/折り畳まれた状態においてヒンジ部11によってもたらされる伸長位置での復元力は大きく、折り畳み機構2が僅かに(特に最小に)曲げられた/折り曲げられた/折り畳まれた状態における復元力は(大きな復元力に比べて)小さい。
【0119】
図6は、好ましい実施形態のオプションのチャンネル調整機構の動作モードを説明するための内視鏡ヘッド1の平面図である。分かりやすくするために、図2の図示と比較して、内視鏡ヘッド1は簡略化されており、チャンネル調整機構に関連する要素のみが示されている。上述したように、セグメント4は三日月形の断面を有しており、その中に作業チャンネル8が形成されている。三日月の両端はセグメント翼部21を形成しており、これらのセグメント翼部21は、互いに向かって湾曲しており、作業チャンネル8の側壁を形成している、すなわち、作業チャンネル8を少なくとも部分的に囲んでいる。連結プレート7は、保持部10を介して、より正確には取付領域13を介して、半径方向外側からセグメント翼部21に取り付けられている。セグメント翼部21は、作業チャンネル8の直径を大きくするまたは小さくするために、弾性的および/または塑性的に曲げられてよい/伸ばされてよい、または半径方向外側または内側へ曲げられてよい/縮められてよい。図6では、広げられたセグメント翼部21aが破線で示されている。
【0120】
2つのセグメント翼部21間のギャップを覆うように湾曲し(橋渡し)て作業チャンネル8の側壁を形成するバック要素7も、弾性的および/または塑性的に曲げられてよい/伸ばされてよい、または半径方向外側または内側へ曲げられてよい/縮められてよい。特に、保持部10は適切に曲げられてよい。図6では、広げられた保持部10aまたは広げられた取付領域13aが破線で示されている。このように、バック要素7の湾曲は、作業チャンネル8が狭くなったり広くなったりした場合でもセグメント翼部間のギャップを安全に橋渡しできるように、好ましくは作業チャンネル8の直径に対応することができるように、セグメント翼部21または作業チャンネル8の直径に適合されてよい。
【0121】
図7および図8は、折り曲げ可能なセグメント翼部21と共にチャンネル調整機構を形成するか又はチャンネル調整機構の一部である、バック要素7(連結プレート)のチャンネル調整構造22a~22dの変形例を示している。図7は、チャンネル調整構造として機能する、例えばV字形スロット22a、22b、22cのグリッドが設けられたバック要素7の部分を示す。V字形スロット22a、22b、22cは、バック要素7がセグメント4に取り付けられたときに、V字の先端がセグメント4の周方向外側を向く(カバー領域14から離れる方向を向く)ように、バック要素7に配置されている。あるいは、V字の先端は、セグメント4の周方向内側、すなわち、カバー領域14の方を向いていてもよい。あるいは、スリット22a、22b、22cは、内視鏡軸に対してバック要素7が半径方向内側および/または外側に弾性的および/または塑性的に曲がることを可能にする/容易にするのものであれば、どんな形状をとってもよい。
【0122】
第1の変形例によると、チャンネル調整構造22aは、バック要素7の取付領域13(のみ)に設けられており、この例では、図7の上側の保持部10に例示されているV字形スロットである。あるいは又は加えて、第2の変形例によると、チャンネル調整構造22b(例えばV字形スロット)は、カバー領域14に設けられており、図7の下側の保持部10に例示されている。あるいは又は加えて、第3の変形例によると、チャンネル調整構造22cが、図7の中央に例示されているように、ヒンジ部11に設けられてもよい。
【0123】
あるいは又は加えて、図8に示すように、バック要素7の横断面、特に保持部10の横断面、好ましくは取付領域13の横断面を変化させて、チャンネル調整構造22d、22eを設けてもよい。横断面は、好ましくは、保持部10全体または取付領域13全体にわたって変化しており、この変化に沿って、保持部10の湾曲を大きくする/小さくするための曲げ軸が画定される。例えば、保持部10が、図8の上図に示されるように、特に、取付領域13からカバー領域14への移行部又はカバー領域14近傍の取付領域13において波状となっていることによって、第4の変形例によるチャンネル調整構造22dが提供されてよい。あるいは又は加えて、図8の下図に示されるように、特に、取付領域からカバー領域14への移行部又はカバー領域14近傍の取付領域において保持部10の材料厚(プレート厚/シート厚)を1箇所または複数箇所で薄くする(折り目状)ことによって、第5の変形例によるチャンネル調整構造22eを提供してよい。材料厚が薄い箇所は、内視鏡の長手方向に延びる溝によって形成される。そのような溝が複数本、互いに平行に延びることが好ましい(図8の下図左側を参照)。しかしながら、保持部10または取付領域13のうちの1つに1本の溝22eがあるだけでも、チャンネル調整構造を設けるには十分である(図8の下図右側を参照)。溝22eは、ここでは、例えば、半径方向内側面と半径方向外側面とに設けられ、半径方向外側の溝と半径方向内側の溝とが対向するように配置される。あるいは、溝22eは互いにオフセットして配置されてもよい。あるいは、半径方向内側にのみ又は半径方向外側にのみ、溝を設けてもよい。
【0124】
図9および図10は、さらなる実施形態による折り畳み機構を通る断面を示す。この実施形態によると、バック要素7(連結プレート)の保持部10の領域(すなわち、セグメント4が取り付けられるバック要素の領域)は、セグメント4を包囲する弾性の中空プロファイルとして形成されている。各セグメントは、好ましくは2つの別個の部分セグメント4a、4bによって形成されており、これらは、鏡面対称となるように設計されており、保持部10の取付領域13に取り付けられる(例えば、接着される、溶接されるなど)。部分セグメントは、ギャップによって互いに(好ましくは完全に)分離されている。任意で、少なくとも折り畳み機構2(全体)に沿って、セグメント4とバック要素7との間に包囲層23が設けられる。部分セグメント4a、4bのバック部6は半径凹部24を形成しており、これらは、バック部6で開口する作業チャンネル8を形成するように互いに向かい合って配置されている。内管8aが作業チャンネル内を延びている。
【0125】
バック要素の取付領域13は部分セグメント4a、4bそれぞれを包囲し、各々が、作業チャンネル8とは半径方向反対側または先端部5側でアイレット25を形成している。図9に示される送達状態では、内視鏡の長手方向で見たときに、取付領域13のアイレット25は一方が他方の上に重なって(重なり合って)、保持領域10の取付領域13のアイレット25の間にラッチチャンネル26が形成されている。取付領域13は、送達状態において半径方向内側に圧縮されるばね要素として設計されており、したがって付勢されている。送達状態では、ラッチワイヤ27または別の可撓性の紐状要素が、個々のアイレット25内、すなわちラッチチャンネル26内を案内されるので、取付領域13の付勢に抗して、取付領域13が先端部5で互いに対向するように保持される。
【0126】
任意で、取付領域13は、内側脚部28を形成しており、これらの内側脚部28は、ギャップ内で半径方向内側へ互いに実質的に平行に延びており、セグメント4の内側または部分セグメント4a、4b間の中央で互いに接続されて、受容スペース29を形成している。内側脚部28の対向する面および受容スペース29には、折り畳み機構2(全体)を通って内視鏡の長手方向に延びるホイル状の(場合によっては接着された)ライニング30が設けられており、このライニング30は、先端部5において内側脚部28の間で折り畳まれている。さらに、内視鏡長手方向の追加管31が、内側脚部28の対向する面またはライニング30の対応する領域に挿入されており(内側脚部28に接着されており)、内側脚部28の間で折り畳まれて、受容スペース29に受容されている。任意で、追加管31またはライニング30を省略してもよい。
【0127】
治療の過程で、例えば、別の器具やフラッシュチューブを挿入できるように追加の作業チャンネルが必要な場合には、ラッチワイヤ27がアイレット25から近位方向に引き抜かれ、取付領域13aが、その付勢によって、図10に示すように、内側脚部28が互いに対して角度をなすように半径方向外側へ(パックマンのように)開く/広がる。先端側のライニング30の折り畳まれた領域が、内側脚部28の間で展開するか又は広がる。あるいは又は加えて、追加管31が、内側脚部28が開いたことおよび/またはそれ自体の弾性に起因して展開し、追加の作業チャンネル32を形成する。オーバーチューブ19は、追加の作業チャンネル32が開くことができるように伸縮可能である。
【0128】
図11は、伸長状態(図11の上図又は「A」)および折り畳み状態(図11の下図又は「B」)における、本開示の代替実施形態による折り畳み機構の原理図を側面図で示す。内視鏡の長手方向でのセグメント4の円筒形の設計、側面視でのセグメント4の形設計、ならびにデフレクタ部3(または内視鏡シャフト20)と内視鏡ヘッド(または遠位ヘッド部)1との間におけるセグメント4の配置は、本質的に、図1図10による本開示の実施形態に対応する。また、図11には示されていないが、対応する作動要素を介した作動も図1図10に対応する。さらに、両実施形態に共通するオーバーチューブ等の要素は、明瞭性の理由から図示されていない。
【0129】
しかし対照的に、セグメント4のバック部6は、スロット/穴を有さず、セグメントジョイント32によって旋回可能/折り畳み可能に互いに接続されている。つまり、作業チャンネル8を共に形成する貫通開口は、各貫通開口の壁が全周にわたって閉じられた状態でセグメント4に設けられているということである。換言すれば、図1図10に示す実施形態とは異なり、貫通開口は側方開口もスロットも有していない。連結プレートとして設計されたバック要素の代わりに、バック部6に面する位置で作業チャンネル8内に挿入される可撓性の偏向プレートまたは可撓性の偏向バンド装置7bが設けられている。折り畳み機構2の遠位領域において、好ましくは内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部1において、偏向プレート/偏向バンド装置7bは、作業チャンネル8内で/作業チャンネル8において(すなわち、貫通開口内で/貫通開口において)、固定点33、例えば、接合点、溶接点、または、はんだ付け点33で位置固定されている。偏向プレート/偏向バンド装置7bは、固定点33から近位方向に、セグメント4の貫通開口を通って又は作業チャンネル8を通って、緩く/長手方向に変位可能に延びており、図11の上図(A)に見られるように、折り畳み機構2の伸長状態において、隣接するセグメント4の間に形成されるギャップ34を橋渡ししている。偏向プレート/偏向バンド装置7bの近位端35は、内視鏡シャフト20またはデフレクタ部3(どちらにしてもその遠位端領域)に位置している。任意で、偏向プレート/偏向バンド装置7bは、デフレクタ部3を通って延び、近位端35は、デフレクタ部3の近位上流で内視鏡シャフト20内に位置する。
【0130】
図11の下図(B)に示されるように、折り畳み機構2が折り畳まれる/曲げられるときには、セグメント4が隣接するセグメント4と接触し、ギャップ34が(部分的に又は完全に)閉じる。偏向プレート/偏向バンド装置7bは、固定点33において遠位で位置固定されているので、折り畳み機構2の湾曲に実質的に追従するように曲がる(湾曲する)。偏向プレート/偏向バンド装置7bは、内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部1の近位側に配置されたセグメント内およびデフレクタ3/内視鏡シャフト20内で緩く配置されており、偏向プレート/偏向バンド装置7bの剛性または弾性に起因して、折り畳み状態においてセグメント4と完全に当接せず、せいぜいセグメント4に触れる程度である。その結果、偏向プレート/偏向バンド装置7bは、隣接するセグメント4の間の移行部に生じる角度および/またはギャップ34を形成せず、その代わりに、作業チャンネル8内を押し通される器具が均一にスライドできる(均一に)湾曲した摺動面36を形成する。
【0131】
さらに、折り畳み機構2は、ギャップ34が部分的に又は完全に閉じられることに伴って、偏向プレート/偏向バンド装置7bの領域で折り畳まれることによって短くなる。したがって、折り畳み機構2が折り畳まれる際に、偏向プレート/偏向バンド装置7bの近位端35は、挿入距離ΔSだけ内視鏡シャフト20内/デフレクタ3内へ押し込まれる。挿入距離ΔSは、実質的に、折り畳み機構2の伸長状態におけるバック部6に面する作業チャンネル壁の領域におけるセグメント4間のギャップ34の幅と、セグメント4の直線状(内視鏡の長手方向)の作業チャンネル壁に対する偏向プレート/偏向バンド装置7bの湾曲に起因するセグメント4を通る偏向プレート/偏向バンド装置7bの部分の短縮幅との合計に対応する。
【0132】
折り畳み機構2が再び伸長されると、偏向プレート/偏向バンド装置7bは、特にその弾性力/復元力によって伸長する。
【0133】
図12は、図11の偏向バンド装置7bの好ましい実施形態(左図)と、折り畳み機構2の断面における作業チャンネル8の内管8aとセグメント4のバック部6側の作業チャンネル8の内壁との間の偏向バンド装置7bの位置(右図)と、を示す。偏向バンド装置7bは、フォーク状であり、長手方向要素37として複数の平行な長手方向ストリップを有しており、これらのストリップは、それらの遠位端で横方向ウェブ38によって互いに接続されている。偏向バンド装置7bは、横方向ウェブ38の固定点33において、折り畳み機構2の遠位領域に接続されている。長手方向要素37の作業チャンネル8に面する面は、作業チャンネル8を押し通される器具のための摺動面36を形成する。
【0134】
図13は、図11の偏向バンド装置7bのさらに好ましい実施形態(左図)と、折り畳み機構2の断面における作業チャンネル8の内管8aとセグメント4のバック部6側の作業チャンネル8の内壁との間における偏向バンド装置7bの位置(右図)と、を示す。偏向バンド装置7bは、長手方向要素である複数の平行なワイヤ37によって形成されており、各ワイヤ37は、その遠位端に固定点33を形成しており、この固定点33によって、偏向バンド装置7bが折り畳み機構2の遠位領域に接続される。特に、ワイヤ37は、少なくとも部分的に、作業チャンネル8の内壁に設けられた溝内を案内される。ワイヤ37は、長方形状/リボン形状またはフォーク形状の偏向バンド装置(ここでは、ワイヤ37の2つのグループの間に概略的に配置されている)に加えて、任意で設けられてよい。ワイヤ37の作業チャンネル8に面する面は、作業チャンネル8を押し通される器具のための摺動面または摺動ライン36を形成する。
【0135】
図14は、本開示の折り畳み機構2のさらに好ましい実施形態を示しており、この実施形態は、以下に説明する相違点を除き、図2による実施形態に本質的に対応している。セグメント4のバック部6に設けられたスロットの幅は、作業チャンネル8の直径に対応する(右側の断面図を参照)。作業チャンネル8の内管8aによって画定される半径方向内側の境界と、連結要素/バック要素7によって画定される半径方向外側の境界と、セグメント4によって画定されるバック部6と周方向で対抗する境界と、によって空間が形成される。偏向バンド装置7bは、この空間内で折り畳み機構2に沿って延びるよう設けられている(図11の偏向バンド装置7bと同様)。左図では、偏向バンド装置7bが平面図で示されている。偏向バンド装置7bは2つの平行な長手方向要素37を形成しており、これらの長手方向要素37は遠位固定点33を有しており、この遠位固定点33によって、長手方向要素37または偏向バンド装置7bが、折り畳み機構2の遠位領域に接続される。長手方向要素37の作業チャンネル8に面する面は、作業チャンネル8を押し通される器具のための摺動面36を形成する。
【0136】
図15は、図1から図8による実施形態、特に図1による実施形態の変形例の態様を示している。より正確には、この態様によると、図3(左図、A)のバック要素/連結プレート7が第1のバック要素/第1の連結プレート7として設けられている。第2のバック要素/第2の連結プレート7aが設けられており(第1の連結プレート7によって覆われている部分は破線で示されている)、この第2の連結プレート7aは、第2の連結プレート7aのタブ13bが第1の連結プレート7のタブまたは取付部13の間のスペースと重なるように、第1の連結プレート7に対して内視鏡の長手方向にオフセットして配置される。セグメント4は、組立てられた状態において、第1の半径方向外側の連結プレート7のタブまたは取付部13にのみ取り付けられているか、あるいは、第1の連結プレート7のタブまたは取付部13と第2の連結プレート7のタブ13bに交互に取り付けられていることが好ましい。
【0137】
図16A図16Cは、図1図15の実施形態のうちの1つによる内視鏡を作動させるための作動機構の作動シーケンスを概略的に示しており、明瞭性の理由から、参照符号は図16Aにのみ示されている。明瞭性の理由から、折り畳み機構2は、単に概略的に図示されており、上述された他の実施形態のうちの1つによる連結プレート7および/または偏向バンド装置7bを有する。連結プレート7の場合、連結プレート7は、本質的に、セグメント4の直線状のバック部6または椎体44に沿っており、その間のヒンジ部においてのみ曲げられる。
【0138】
図16Aでは、上記実施形態のうちの1つによる内視鏡が、中立/非作動(伸長)位置で示されている。折り畳み機構2およびデフレクタ3を作動/偏向させるための作動機構39が、内視鏡と平行に示されている。作動機構39は制御ワイヤ40を有しており、制御ワイヤ40の遠位端は、第1の基準点41で遠位ヘッド部/内視鏡ヘッド1に接続されている(直接取り付けられている)。
【0139】
さらに、作動機構39は作動ばね42を有しており、作動ばねの遠位端は、第2の基準点43でデフレクタ3の最遠位側の椎体44に接続されている(直接取り付けられている)。作動機構39のロックワイヤ45の遠位端は、作動ばね42の遠位端に接続されている(直接取り付けられている)。作動ばね42は、大きなピッチ/コイル間隔を有する遠位ばね部46と、小さなピッチ/コイル間隔を有する近位ばね部47とを有する。特に、近位ばね部47のコイル間隔はゼロである、すなわち、作動ばね42のコイルは互いに接触している。ロックワイヤ45は、作動ばね42の伸長、特に遠位ばね部46の伸長をロック/制限し、作動ばねを圧縮位置に保持する。支持ばね/圧縮ばね48(図16のA~Cでは遠位方向を指す力矢印で象徴的に示されている)は、作動ばね42を近位方向から支持する。
【0140】
中立/非作動位置において、制御ワイヤ40が近位方向(図16Aでは制御ワイヤ40上で近位方向を指す矢印で示されている)に引っ張られる/作動されると、図16Bに示すように、折り畳み機構2が折り畳まれる/折り曲げられる。デフレクタ3の最遠位側の椎体44に作用するロックワイヤ45及び/又は支持ばね/圧縮ばね48による付勢力により、制御ワイヤ40の作動によってデフレクタ3が折り曲げられることが防止される。
【0141】
その後、図16Bでブロックワイヤ45上に近位方向を指す矢印で示されるように、ブロックワイヤ45が第1の作動範囲内で近位方向に引っ張られると(近位方向に作動されると)、図16Cに示されるように、まず遠位ばね領域46がさらに圧縮され、それによって、デフレクタ3のより遠位側に配置された椎体44が曲げられる。特に、近位ばね領域47と遠位エラー領域46の間の移行領域49より遠位側に位置するデフレクタ3の椎体44が曲げられる。本例では、デフレクタ3の巻き戻しによる制御ワイヤ40の長さ/長さ変位の変化を補償し、折り畳み機構2の屈曲を維持するために、制御ワイヤ40は、ロックワイヤ45が第1の作動領域で作動されるのと同時に、近位方向に引っ張られる(図16Bにおいて、制御ワイヤ40上に近位方向を指す矢印によって示されている)。
【0142】
あるいは、第1の作動領域でロックワイヤ45が作動される際に、制御ワイヤ40が近位方向に引っ張られないか又は少ししか引っ張られない場合、折り畳み機構2の湾曲は、完全に又は部分的に開く。このようにして、例えば、デフレクタ3の遠位椎体44と連動した折り畳み機構2の180°の湾曲を得ることができる。
【0143】
図16Cにおいて、ロックワイヤ45が近位方向へさらに引っ張られる/作動されると、遠位ばね領域46のコイル同士が接触する。これにより、ロックワイヤ45の第1の作動範囲が制限される。その後、ロックワイヤ45/作動ばね42がさらに近位方向へ引っ張られる/作動されると(第2の作動範囲)、デフレクタ3の最も近位側の椎体44も曲げられる(図示せず)。
【0144】
図18は、様々な調節可能モード又は動作状態における、遠位内視鏡ヘッド又はヘッド部1と、その近位側に配置された折り畳み機構2と、その近位側に配置されたデフレクタ部(略してデフレクタ)3とを有する内視鏡を示す。各モードまたは動作状態について、内視鏡の側面図と、伸長状態で内視鏡が延びる方向からの内視鏡の平面図とが示されている。特に、この内視鏡は、先の図のうちの1つによる内視鏡である。
【0145】
左端に示される(A)が付された中立モードでは、内視鏡は、図示されているように、折り畳み機構2とデフレクタ3が伸長するように制御されてよい。任意で、折り畳み機構2とデフレクタ3は、わずかに過伸長させられてもよい、すなわち、設けられている任意のバック要素7の方へわずかに後方へ曲げられてもよい(上記の説明を参照)。
【0146】
(B)で示される第のモードでは、内視鏡は、折り畳み機構2のみが曲げられるように制御可能であり、デフレクタ3は伸長されたままであるか又は作動されていない。対応する平面図に見られるように、このモードにおける内視鏡の横方向長さは、比較的小さい。
【0147】
(C)および(D)によって特徴付けられる第3のモードでは、内視鏡は、折り畳み機構2とデフレクタ3が同期して折り曲げられるように、すなわち、一定の/等しい/連続した湾曲度で実質的に同時に曲げられるように制御可能である。対応する平面図では、このモードにおける内視鏡の横方向長さが比較的大きいことが分かる。このように、内視鏡は、例えば、その遠位領域において90°の湾曲(図(C)参照)又は180°の湾曲(図(D)参照)を達成することができる。後者の場合、例えば、デフレクタ3が最大に曲げられてよい。
【0148】
右端に示される(E)が付された第4のモードでは、デフレクタ3は、例えば、第3のモードでの制御によって完全に曲げられており、内視鏡は、折り畳み機構2がさらに偏向されて、デフレクタ3と折り畳み機構2の両方が最大に曲げられた図示の位置となるように、制御されてよい。
【0149】
内視鏡は、処置システム50の一部であってよく、この処置システム50は、上述のモードのうちの1つで選択的に内視鏡を制御するように構成されている制御ユニット/制御装置51をさらに備える。
【0150】
内視鏡はさらに、デフレクタ3を駆動するための少なくとも1つの駆動装置M1と、折り畳み機構2を駆動するための駆動装置M2とを有しており、これらはここでは概略的に示されているに過ぎない。制御装置51は、モードに応じて、駆動装置M1及びM2を異なる速度で、互いに独立して制御するように構成されている。
【符号の説明】
【0151】
参照符号一覧
1 内視鏡ヘッド/遠位ヘッド部
2 折り畳み機構
3 デフレクタ部
4 セグメント
4a、4b 部分セグメント
先端部
バック部
7 連結プレート/バック要素
7a 第2の連結プレート/バック要素
7b 可撓性の偏向プレート/偏向バンド装置
8 作業チャンネル
8a 内管
9 二次チャンネル
10 保持部
10a 広げられた保持部
11 ヒンジ部
12 ヒンジ軸
13 取付領域/タブ
13a 広げられた取付領域
13b 第2のバック要素/連結プレートのタブ
14 カバー領域
15 曲げ軸
16 作動要素
17 溝中央部
18 溝縁部
19 内視鏡シェル/オーバーチューブ
20 (受動)内視鏡シャフト
21 セグメント翼部
21a 広げられたセグメント翼部
22a~e チャンネル調整構造
23 シェル層
24 凹部
25 アイレット
26 ラッチチャンネル
27 ラッチワイヤ
28 内側脚部
29 受容スペース
30 ライニング
31 追加管
32 セグメントジョイント
33 接着ポイント、溶接ポイントまたははんだ付けポイント/固定ポイント
34 セグメント間のギャップ
35 バック要素の近位端/近位端領域
36 摺動面
37 長手方向ストリップ
38 横方向ウェブ
39 作動メカニズム
40 制御ワイヤ
41 第1の基準点
42 作動スプリング
43 第2の基準点
44 椎体
45 ロックワイヤ
46 遠位ばね領域
47 近位ばね領域
48 支持ばね/圧縮ばね
49 移行領域
50 処置システム
51 制御装置
ΔS 挿入距離
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A-16C】
図17
図18