(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20241108BHJP
A61M 16/12 20060101ALI20241108BHJP
C25B 1/044 20210101ALI20241108BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241108BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
A61M16/10 Z
A61M16/12
C25B1/044
C25B9/00 A
C25B9/19
(21)【出願番号】P 2024014594
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524046870
【氏名又は名称】旺北科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NORTH-VISION TECH. INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼林祥
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼柏捷
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-542981(JP,A)
【文献】特表2023-538279(JP,A)
【文献】特開2019-083888(JP,A)
【文献】特開2023-144547(JP,A)
【文献】特表2007-507310(JP,A)
【文献】特開2014-095115(JP,A)
【文献】特開2005-087257(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
C25B 1/044
C25B 9/00
C25B 9/19
A61M 16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって吸入されるガスの濃度を少なくとも変更するように構成された濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムであって、
ユーザによって吸入されるガスの一部を供給するように構成された供給水素-酸素混合ガス補助デバイスと、
純水を水素及び酸素に分離して出力するように構成された純水電解水素-酸素発生器であって、
イオンを通過させる少なくとも1枚のイオン交換膜並びに該イオン交換膜の2つの対向面にそれぞれコーティングされた1層の酸化触媒層及び1層の還元触媒層と、
前記酸化触媒層に近接して配置された一方のアノード金属層及び前記還元触媒層に近接して配置された他方のカソード金属層を含む、複数の細孔を有する一対の拡散金属層と、
前記アノード金属層に導電接続されたアノード及び前記カソード金属層に導電接続されたカソードを含む少なくとも一対の電極と、
前記イオン交換膜、前記拡散金属層及び前記電極を収容するための封止収容本体であって、該封止収容本体には吸水口、水素孔及び酸素孔が設けられ、前記吸水口を介して前記封止収容本体に注入される脱イオン水が前記封止収容本体に封入されて前記酸素孔及び前記水素孔に接続される、封止収容本体と、
を備える純水電解水素-酸素発生器と、
前記酸素孔に接続された酸素送給管、前記水素孔に接続された水素送給管、前記供給水素-酸素混合ガス補助デバイスに接続された加湿混合ガス出力管、及び清浄水を保持するボトル本体を備える加湿器ボトルであって、前記酸素孔から遠位の前記酸素送給管の一端及び前記水素孔から遠位の前記水素送給管の一端がそれぞれ前記ボトル本体に挿入されて前記清浄水に浸漬され、前記供給水素-酸素混合ガス補助デバイスから遠位の前記加湿混合ガス出力管の端部が前記ボトル本体内の前記清浄水よりも高く位置決めされた、加湿器ボトルと、
水素送給管の管内圧力変化を検出することで前記水素送給管に水素漏出が発生しているか否かを検出し、それにより、外部環境に漏出した水素が所定限度を超える場合に警報信号が出力されるように構成された水素漏出検出器と、
を備え、
空気から窒素をフィルタ除去することによってより多くの酸素を提供するように構成されたモレキュラーシーブをさらに備え、該モレキュラーシーブは酸素分子を前記ボトル本体の清浄水に導入するように構成された酸素比率調節管にさらに接続され、それにより前記加湿混合ガス出力管内の酸素割合が調整可能に増加される、呼吸器システム。
【請求項2】
前記酸素比率調節管のガススループットを調整するように構成されたガス調節弁をさらに備え、前記供給水素-酸素混合ガス補助デバイスは、鼻腔カニューレ並びに該鼻腔カニューレに対応して配置された水素及び酸素濃度検出要素を備える、請求項1に記載の呼吸器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調整可能な呼吸器システムに関し、より具体的には、人工呼吸器としての濃度変調可能な水素-酸素混合ガス発生器の呼吸器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、地球上において基本的には水及び有機材料などの化合物に存在する。水素は、無色、無臭、無味の非金属ガスである。非毒性であること、放射線がゼロであること、回収が容易であること、及び酸素と反応して高いエネルギーを放出することなどのその特性に起因して、水素は、化学、物理、工学及び生理学の分野において広範な用途を有する。特に、医学では、「Hydrogen/oxygen therapy for the treatment of an acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease(COPD):results of a multicenter,randomized,double-blind,parallel-group controlled trial」(Zhang他,2021,22:149,Respiratory Research)において公開(非特許文献1)されるように、AECOPD(慢性閉塞性肺疾患の急性増悪)患者には、現在のところ、通常治療として比較的高濃度の酸素が吸入されている。しかし、継続的には改善可能でないプラトー期にその後に入る酸素のみを受けたコントロール群と比較して、水素+酸素治療を受けた実験群では、プラトー期が確認されることなく、患者に経時的に(1日目から7日目まで)BCSSスコアのより大幅な改善があるという知見を得た。
【0003】
さらに、Ji-Bing Chen,You-Yong Lu及びKe-Cheng Xuは「A narrative review of hydrogen oncology:from real world survey to real world evidence」をMedical Gas Research(2020)において出版(非特許文献2)し、水素腫瘍学における以前の実世界の研究を報告し、多くの癌患者について、一定量の水素を吸入ガスに添加することによって、呼吸困難が有効に改善され、患者の40%超が生活の大幅な改善を示し、一部の患者には腫瘍マーカーの減少が確認され、鼻咽頭癌の患者の分泌物は落ち着いていたという知見を得た。科学者達は、水素を吸入ガスに添加することによって、水素の抗酸化活性が水酸基のフリーラジカルと反応して身体の損傷を予防するのではないかと推定した。同様の知見をOncology Letters(2020,20:258)(非特許文献3)に見ることができる。
【0004】
呼吸器治療に対する研究は、水素を比較的高濃度の酸素に添加することが現在の医療研究においては処置の非常に重要な方向性となることを明らかにした。水素は、例えば、熱化学、水性ガスシフト反応、水電気分解、水蒸気改質などの手法によって取得可能である。特に、天然ガスの水蒸気改質器は、水素を生成するための大量生成方法となる。水蒸気及びメタンが1000~1400°K程度の高温で反応すると、一酸化炭素とともに水素が生成可能となる。この反応では、反応プロセスに付与される圧力が低いほど、水素の生成率の効率は高くなる。さらに、水素の精製システムには、より高い圧力が好適である。生成時間を犠牲にして短縮するために、最後に高圧が反応システムに付与される。したがって、このシステムは、水素の生成効率を制限し得る。それでも、生成プロセスは、高圧及び高温の双方を必要とする。しかし、このような条件では、水素分子は、高いポテンシャルエネルギーの水素原子に容易に分解されて他の元素と反応し得る。その場合、これは、この生成を通じて水素の純度を大幅に低下させ得る。さらに、この高い活性に起因して、大量の水素を保存することは、常に安全性についての大きな懸念となる。
【0005】
他の典型的な水素生成プロセスは水電気分解であり、電解質が純水に添加されてイオン溶解が行われる。一対の電極に直流を通電することで、水電気分解反応が起こり、ここで水は酸化還元反応によって水素及び酸素に電気分解される。なお、添加される電解質は通常は強酸又は強塩基であるため、この方法には医療用途において大きな安全性の懸念がある。しかし、純水は、この電解質なしには電気分解不可能である。
【0006】
プロトン交換膜を用いることによって開発されている新たな技術では、電解質が反応に関与することなく、純水が電解可能である。水電解機器では、純水がアノード側から反応チャンバに入る。電極の他に、金属メッシュ形状のアノード拡散層及びアノード触媒層が、反応チャンバにさらに設けられる。電気分解することによって、純水はアノード拡散層及び触媒層を介して酸素イオン及び水素イオンに分離され、酸素イオンはアノード金属メッシュに伝導されて電子を放出し、酸素として排出される。一方で、水素イオンは、プロトン交換膜を通じてカソード触媒層及びカソード拡散層まで通過する。カソード拡散層の導電性及び透過性に起因して、カソードから供給される電子は、プロトン(水素イオン)によって受容されて、排出される水素に還元される。
【0007】
上述した電気分解から得られる水素及び酸素は、通常の環境では潜在的に危険である。4%~94%の範囲内の濃度でかつ287℃以上の温度において、水素は発火及び爆発し得る。呼吸器治療は患者に直接適用されるので、患者及び医療施設に対する完全な安全性を確保する必要がある。したがって、医療目的の用途は、工業目的よりも慎重かつ保守的である必要があり、使用の全体的な安全性をどのようにして高めるかが、本開示の最重要ポイントとなる。
【0008】
第2に、継続的な実世界での研究によると、個々の治療を受ける患者は、水素及び酸素の混合比について異なる要求を有し得る。したがって、呼吸器システムによって水素及び酸素の濃度をどのようにして好都合に調整するのかが、本開示によって取り組むべき第2のポイントである。
【0009】
本開示の詳細な構成及び有利な効果は以下の実施形態に記載され、その内容は当業者が本開示の技術的内容を理解及び実施するのに充分なものとなる。当業者は、本明細書、後続の特許請求の範囲及び図面の本開示に基づいて、本開示の課題及び有利な効果を容易に理解することになる。
【発明の概要】
【0010】
本開示の主な課題は、純水電解水素-酸素発生器を加湿器ボトル及び水素濃度検出器と統合した濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムを提供することである。加湿器ボトルの清浄水は、水素-酸素混合ガスを室温付近の温度に維持し、燃焼又は爆発の危険をもたらす温度の急激な上昇を効果的に防止する。さらに水素濃度検出器の設計において、安全上の危険が効果的に低減される。
【0011】
本開示の他の課題は、周囲環境における水素漏出を室内に埋め込まれ又は設けられた水素濃度検出器によって慎重に検出することによって、純水電解水素-酸素発生器の電力を遮断することができる濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムを提供することであり、それにより、水素及び酸素の連続的な発生を中断していずれのアクシデントも防止する。
【0012】
本開示のさらなる課題は、電流を変調して純水電解水素-酸素生成の出力効率を制御することによって、ユーザによって吸入されるガスの濃度を本システムに変更可能とする濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムを提供することである。
【0013】
本開示のさらなる課題は、濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムを提供することであり、空気中の窒素ガスがモレキュラーシーブによってフィルタ除去され、加湿器内の清浄水へのフィルタ処理済み酸素の出力効率を制御するのに圧縮機が採用され、それにより、混合ガス出力中の酸素比率が調整され、水素及び酸素の比率を調節して調節管内のガススループットを制御するのにガス調節弁がさらに採用される。
【0014】
上記の課題を達成するために、本開示は、少なくともユーザによって吸入されるガスの濃度を変更するように構成された、濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムに関する。呼吸器システムは、ユーザによって吸入されるガスの一部を供給するように構成された供給水素-酸素混合ガス補助デバイスと、純水を水素及び酸素出力に分離する純水電解水素-酸素発生器であって、イオンを通過させる少なくとも1枚のイオン交換膜並びに当該イオン交換膜の2つの対向面にそれぞれコーティングされた1層の酸化触媒層及び1層の還元触媒層、酸化触媒層に近接する一方のアノード金属層及び還元触媒層に近接する他方のカソード金属層を含む、複数の細孔を有する一対の拡散金属層、アノード金属層に導電接続されたアノード及びカソード金属層に導電接続されたカソードを含む少なくとも一対の電極、並びにイオン交換膜、拡散金属層及び電極を収容するための封止収容本体であって、封止収容本体には吸水口、水素孔及び酸素孔が設けられ、脱イオン水が吸水口を通じて封止収容本体に注入可能である、封止収容本体を備える純水電解水素-酸素発生器と、酸素孔に接続された酸素送給管、水素孔に接続された水素送給管、供給水素-酸素混合ガス補助デバイスに接続された加湿混合ガスを備え、清浄水を保持する加湿器ボトルであって、それぞれ収容本体からの、酸素孔から遠位の酸素送給管の一端及び水素孔から遠位の水素送給管の他端並びに清浄水よりも高く位置決めされた加湿混合ガス出力管の他端が水素-酸素混合ガスを補助デバイスに供給する、加湿器ボトルと、水素濃度を検出して、水素濃度が所定の標準又は限度を超える場合に警報信号を出力するように構成された水素濃度検出器と、を備える。
【0015】
本開示において、加湿器ボトル及び水素濃度検出器を統合することによって、純水電解水素-酸素発生器は、一方では、出力された水素及び酸素混合ガスを室温付近の一定温度に維持することを可能とし、それは、潜在的なガス爆発又は燃焼リスクをもたらす高すぎる動作温度を効果的に防止し、ユーザに対する安全上の危険を防止し、水素が漏出して周囲の異常な変化をもたらすか否かを水素濃度検出器によって検出することも可能とする。警報信号によって、システムは、純水電解水素-酸素発生器への電力を遮断して水素及び酸素の連続的な発生を中断することができる。さらに、モレキュラーシーブを組み込むことによって、より多くの酸素が提供可能となり、モレキュラーシーブからの酸素が加湿器ボトルの清浄水に導入され、それにより、酸素比率がモレキュラーシーブの圧縮機によって調整可能となり、水素-酸素の配分及びガススループットがガス調節弁を用いることによって調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示に係る供給水素-酸素混合ガス補助デバイス、加湿器ボトル及び水素濃度検出器に統合された純水電解水素-酸素発生器の構造模式図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る純水電解水素-酸素発生器の内部構造の分解図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す封止収容本体の内部構造構成の断面図である。
【
図4】
図4は、本開示に係るガススループットの調整能力を与えるモレキュラーシーブを有する純水電解水素-酸素発生器の構造模式図である。
【
図5】
図5は、封止収容本体内部に設けられた2組の純水電解水素-酸素発生器のメカニズムの構造模式図である。
【
図6】
図6は、部屋の天井に取り付けられた水素濃度検出器の適用状態模式図である。
【
図7】
図7は、アニオン交換膜を介した純水電気分解の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態を具体的実施例によって説明する。当業者は本明細書における説明によって本開示の他の利点及び効果を容易に理解し得る。
【0018】
図面に示す構造、比率及びサイズは、当業者が本説明又は明細書を理解して読み取ることを容易化することが意図されているにすぎず、本開示を限定することが意図されるものではなく、したがって、それらは実質的な技術的意味を有さず、いずれの構造的変形、比率関係の変更又はサイズ調整は本開示によって生成される効果又は達成される課題に影響を与えることなく本開示の範囲内のものとなる。また、ここに記載される「1」、「2」又は「上」などの用語は、説明を容易とする役割を果たすのみであり、本開示によって実施可能な範囲を限定するものではない。さらに、対応する相対関係の変更又は調整は、実質的な技術的内容の変更なく、本開示の範囲内のものとみなされるものである。
【0019】
図1、2及び3は、本開示の第1の例示実施形態に係る純水電解水素-酸素発生器1を示す。純水電解水素-酸素発生器1は封止収容本体2に収容され、封止収容本体2には吸水口20、水素孔22及び酸素孔24が設けられる。吸水口20を介して封止収容本体2内に注入される脱イオン水は、封止収容本体2に封入され、酸素孔24及び水素孔22に接続される。
【0020】
図2を参照すると、純水電解水素-酸素発生器1におけるイオン交換膜10が、対称中心線として設定される。酸化触媒層100及び還元触媒層102が、イオン交換膜10の2つの対向面上にそれぞれコーティングされる。拡散金属層11が、酸化触媒層100に近接するアノード金属層110及び還元触媒層102に近接するカソード金属層112によって構成される。各拡散金属層には、水素イオン又は酸素イオンがそれぞれ酸化又は還元された後に発生水素分子又は酸素分子が容易に水から分離されて排出可能となるように複数の細孔114が設けられ、それにより、ガス発生効率が高まる。電極12は、アノード金属層110に導電接続されたアノード電極120及びカソード金属層112に導電接続されたカソード電極122から構成される。
【0021】
また、加湿器ボトル3が、さらに設けられ、水素孔22に挿入された水素送給管30、酸素孔24に挿入された酸素送給管32、及び供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13(例えば、鼻腔カニューレ)に配管された加湿混合ガス出力管34を備える。酸素孔24から遠位の酸素送給管32の一端及び水素孔22から遠位の水素送給管30の他端は、それぞれ、ボトル本体36に挿入され、ボトル本体36に充填された清浄水内に浸漬される。供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13から遠位の加湿混合ガス出力管34の他端部はまた、ボトル本体36内に挿入されるが、清浄水よりも高く位置決めされる。
【0022】
動作において、脱イオン水が、液面が酸素孔24又は水素孔22付近となるまで封止収容本体2の吸水口20を介して注入され、その後、電極12を通電するようにスイッチがオンされて電気分解プロセスが開始する。循環する脱イオン水のための空間が、酸化触媒層100への拡散金属層110の複数の細孔及び還元触媒層102への拡散金属層112の複数の細孔を介して、それぞれ確保される。アノード120に接続された金属層110に脱イオン水が接触すると、正に帯電した水素イオン又は負に帯電した水酸化物イオンが触媒層100の側から触媒層102の反対側にイオン交換膜10を通じて放出される。本例では、イオン交換膜はプロトン交換膜であり、それは水素イオンがプロトン交換膜10を通過可能とすることで電流通電及び酸化還元反応を生じさせる。
【0023】
また、水素イオンがイオン交換膜10及び還元触媒層102を通過してカソード金属層112の複数の細孔114を構成する拡散金属層11に接触し、それにより、カソード122は広範囲に電子を放出し、それらは水素イオンと結合して水素分子を形成する。プロトン交換膜の代わりに、イオン交換膜がアニオン交換膜である場合、
図7を参照すると、水酸化物イオンはイオン交換膜10を通過して、アノード120に接続されたアノード金属層110に接触して電子を放出し、酸素分子を形成し得る。電気分解プロセスは脱イオンした純水を用いるため、強酸又は強塩基がなく、より高純度の水素が効果的に取得され得る。その後、水素は水素送給管30を介して清浄水中に排出され、一方で、酸素は酸素送給管32を介して清浄水中に排出され、水素及び酸素が所望の水素-酸素混合ガス中に混合される。清浄水の温度が人体に適切な固定の常温に維持されるので、水素及び酸素は可燃温度よりもはるかに低い安全な温度範囲に制限可能となり、それにより、急激な温度上昇がユーザ又は医療施設を爆発又は燃焼の危険に晒すリスクが防止可能となる。水素-酸素混合ガスは、ボトル本体36内の清浄水よりも高く位置決めされた加湿混合ガス出力管34を介して排出され、供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13を介して吸入のためにユーザに供給される。
【0024】
本例は混合ガスを供給するのにマスクを採用しないため、室内にドープされてユーザに適用されるガスの濃度は、概ね約22%の酸素及び約4%の水素を含み、残余は窒素である。もちろん、患者に特殊な必要性がある場合、ここでは開放タイプの鼻腔カニューレは採用されなくてもよい。その代わりに、より厳密な室内空調でガスが供給され、水素-酸素比率の体積及び精度が上昇する。
【0025】
水素が封止収容本体から漏出しないように制御するため、水素濃度検出器14(SnO2抵抗器)が封止収容本体の水素孔22に近い側に配置され、水素の濃度が所定の基準又は限度を超えている間に警報信号を出力するように構成される。
【0026】
さらに、
図4を併せて参照する。
図4は本開示に係るガススループット調整能力を有する純水電解水素-酸素発生器の構造模式図であり、純水電解水素-酸素発生器1は放熱効果並びに調整可能な水素及び酸素の比率の観点でさらに最適化される。放熱効果を最適化するために、排水口26が封止収容本体2から設けられ、循環水タンク4も設けられる。循環水タンク4は吸水口20及び排水口26に接続され、それにより、封止収容本体2と循環水タンク4の間の熱平衡に達する。循環水タンク4が安定温度状態を維持することを可能とするために、循環水タンク4は、伝導放熱して循環水タンク4及び封止収容本体2内の水の温度を安定化するように構成されたヒートシンク5にさらに熱的に接続可能である。
【0027】
さらに、調整可能な水素及び酸素の比率のために、モレキュラーシーブ6が採用されて酸素比率を高めてもよい。一部の特定の実施例では、モレキュラーシーブ6は、窒素をフィルタ除去することで空気を圧縮することによって酸素を受容するように構成される。モレキュラーシーブ6による酸素は、ボトル本体36内の清浄水中に導入される酸素比率調節管60を通じて送給され、それにより、加湿混合ガス出力管34内の酸素比率を調整する。酸素比率調節管60のガススループットは、ガス調節弁62を介して調整される。特定の動作では、供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13は、ユーザに装着される。清浄水を通過する元の水素-酸素混合ガスは加湿されることになり、その後に加湿水素-酸素混合ガスは、ユーザに供給されるように、供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13に加湿混合ガス出力管34を介して送給される。ユーザが酸素含量を増加させる必要がある場合、清浄水中に出力された酸素の量はガス調節弁62を介して調整され得る。この時点において、元の水素-酸素混合ガス内の酸素含量はガス調節弁62による調節に等しい比率で増加する。さらに、純水電解発生器部分について、純水電気分解からの水素及び酸素の生成効率は、電解電流を制御することによって高められ得る。モレキュラーシーブからの酸素生成の量は純水電解水素-酸素発生器からの酸素生成の量よりも一般に多いため、純水電解水素-酸素発生器の電解電流を制御することは、主に水素生成の比率を変調することとして作用する。このように、加湿混合ガス出力管34から供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13に送給される変調水素-酸素混合ガスは、水素及び酸素の比率をそれぞれ調整可能である。一方、供給水素-酸素混合ガス補助デバイス13(すなわち、鼻腔カニューレ)内に配置されたガス濃度検出器130によって、水素及び酸素の比率の真値が即座に取得可能であり、上記のように適時に調整動作されて水素及び酸素の所定比率を様々な目的の医療用途に対して合わせることができる。これにより、ユーザが不快に感じること又は有害反応を有することも防止可能となる。
【0028】
図5を併せて参照する。
図5は、本開示の第2の例示実施形態に係る封止収容本体内部に設けられた2組の純水電解水素-酸素発生器の構造模式図である。イオン交換膜が中心となる2組の純水電解水素-酸素発生器1´が、封止収容本体2´に収容される。酸化触媒層100´及び還元触媒層102´は、各個々の純水電解水素-酸素発生器1´においてイオン交換膜10´の2面にそれぞれコーティングされる。拡散金属層11´は酸化触媒層100´に近接するアノード金属層110´及び還元触媒層102´に近接するカソード金属層112´によって構成される。アノード電極120´はアノード金属層110´に導電接続され、カソード電極122´はカソード金属層112´に導電接続される。個々の純水電解水素-酸素発生器1´は、それぞれのイオン交換膜が共通の水タンク15´を保持するように鏡像の組において構成される。また、共通の酸素孔24´は封止収容本体2´の水タンク15´の上部に位置し、水素孔22´は封止収容本体2´の2面の上部に別個に位置する。
【0029】
上記のように、水素及び酸素の生成効率は、封止収容本体2´の増加とともに変化する。電解電流を制御することによって、水素及び酸素の生成効率が制御可能となる。一方で、モレキュラーシーブを設けることで、酸素含量が効果的に高まり得る。
【0030】
図6を併せて参照する。
図6は、部屋の天井に設けられた水素濃度検出器の適用状態模式図である。上述した実施例のパターンの別にかかわらず、室内に適用された場合、水素濃度検出器14の代わりに、検知要素がさらに天井位置に設けられ得る。水素は通常大気圧下において大気密度よりもはるかに低い密度の無色、無臭及び高可燃性物質であるので、漏出した水素は上側の空気に蓄積されることになる。部屋の換気が悪い場合、水素濃度は上昇することになり、それは外部要因によって容易に発火及び爆発する。したがって、天井に取り付けられた検知要素140は最初に水素濃度状態を検出し、水素濃度が閾値を超えた場合に警報信号を呼吸器システムに対して生成して純水電解水素-酸素発生器及びモレキュラーシーブへの両電力を遮断して水素及び酸素の連続的な発生を停止し得る。もちろん、水素濃度検出器は天井に配置されるものだけに限られず、呼吸器システム内部に配置されて水素が漏出しているか否かを検出し、警報を発してシステムをシャットダウンしてもよい。また、当業者は、水素漏出の警報システムは水素濃度検出器に限られないことを容易に理解するはずである。圧力検出器も、水素送給管又は酸素送給管においてそれぞれ接続して、管内圧力変化を検出して水素送給管又は酸素送給管に漏出があるか否かを警告するように適合されてもよく、これも安全を提供し得る。
【0031】
図7は、本開示の第3の例示実施形態を示す。イオン交換膜は、水素イオンを通過可能とするプロトン交換膜のみに限られないため、水酸化物イオンを通過可能とするアニオン交換膜であってもよい。したがって、水酸化物イオンは、交換膜を通過して、それにより本例では帯電されることになる。
【0032】
上述した例示実施形態は本開示の原理及び効果を例示的に説明するのみであり、本開示を限定するものではない。当業者は、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく例示実施形態を変形し得る。したがって、本開示による保護とみなされる範囲は、以降の特許請求の範囲において限定される。
【要約】 (修正有)
【課題】濃度変調可能な水素-酸素人工呼吸器の調整可能な呼吸器システムを提供する。
【解決手段】呼吸器システムは、供給水素-酸素混合ガス補助デバイスと、イオン交換膜、酸化触媒層及び還元触媒層を含む純水電解水素-酸素発生器と、一対の拡散金属層と、アノード金属層に導電接続されたアノード及びカソード金属層に導電接続されたカソードと、吸水口、水素孔及び酸素孔が設けられた封止収容本体と、加湿器内の清浄水にそれぞれ挿入された、酸素孔から遠位の酸素送給管及び水素孔から遠位の水素送給管並びに水素-酸素混合ガス出力管を含む加湿器ボトルと、を含む。人工呼吸器の内部又は外部の水素濃度検出器は、ユーザ及び施設に警告及び安全を与える。
【選択図】
図1