(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】通信確立システム
(51)【国際特許分類】
H04L 65/1069 20220101AFI20241108BHJP
【FI】
H04L65/1069
(21)【出願番号】P 2024508085
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2022038986
(87)【国際公開番号】W WO2024084633
(87)【国際公開日】2024-04-25
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】395023613
【氏名又は名称】株式会社システムデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 光浩
(72)【発明者】
【氏名】福城 茂生
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-188358(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145522(WO,A1)
【文献】特開2017-76974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信の開始要求をするホスト端末(100)と、該通信の開始要求を承諾するクライアント端末(200)と、前記ホスト端末と前記クライアント端末との通信の確立を仲介するサーバ(300)と、からなる、インターネットを経由したホスト端末とクライアント端末との間の双方向通信を確立するための通信確立システム(1)において、
前記ホスト端末(100)は、前記サーバ(300)に対してホスト端末情報(102)を送信するホスト側通信要求手段(110)と、各クライアント端末(200)のクライアント端末情報(202)を管理するホスト側管理手段(120)とを備えるとともに、前記クライアント端末(200)は、ホスト端末(100)に対してクライアント端末情報(202)を送信するクライアント側通信要求手段(210)と、ホスト端末情報(102)を管理するクライアント側管理手段(220)とを備え、
前記通信確立システム(1)は、前記ホスト端末(100)が、前記クライアント端末(200)から受信した前記クライアント端末情報(202)を基にクライアント端末(200)に対して直接セッション開始要求を行った上で、前記ホスト端末(100)と前記クライアント端末(200)との通信の確立を行うコネクト手段(400)を備えたことを特徴とする通信確立システム。
【請求項2】
前記コネクト手段(400)は、通信確立までの時間短縮を可能とするとともに、前記ホスト端末(100)の通信確立に用いる前記ホスト端末情報(102)の変更時に、前記ホスト端末(100)が前記サーバ(300)を介して前記クライアント端末(200)に変更後のホスト端末情報(102)を再送信することで、前記サーバ(300)の負荷を軽減することを可能とするため、
前記ホスト側通信要求手段(110)が、通信を要求するクライアント端末(200)を前記ホスト側管理手段(120)から抽出して指定するとともに、前記サーバ(300)に対してホスト端末情報(102)を送信し、前記サーバ(300)が、前記ホスト側通信要求手段(110)によって指定されたクライアント端末(200)を特定した上で、該クライアント端末(200)に前記ホスト端末情報(102)を送信して前記ホスト端末(100)との通信の確立要求を行うよう通知し、
前記クライアント側通信要求手段(210)は、受信した前記ホスト端末情報(102)を基に、前記クライアント側管理手段(220)から抽出して指定した前記ホスト端末(100)にクライアント端末情報(202)を送信して前記ホスト端末(100)に対して通信の確立要求をするものであり、
前記コネクト手段(400)は、更に、前記ホスト端末(100)が前記クライアント端末(200)を認証するためのクライアント端末認証手段(410)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信確立システム。
【請求項3】
前記クライアント端末認証手段(410)は、前記ホスト端末(100)が生成する乱数キーをもとに、前記クライアント端末(200)が端末固有IDを暗号化するとともに、前記ホスト端末(100)に送信し、該暗号化された端末固有IDを前記ホスト端末(100)が復号化することにより認証を行うことを特徴とする請求項2に記載の通信確立システム。
【請求項4】
前記ホスト端末(100)は、ホスト側通信切断検出手段(130)を備え、該ホスト側通信切断検出手段が通信切断を検出した際に、前記ホスト側通信要求手段(110)が、通信を要求するクライアント端末(200)を前記ホスト側管理手段(120)から抽出して指定するとともに、前記サーバ(300)に対してホスト端末情報(102)を送信することにより、指定したクライアント端末(200)との通信を再確立する事を特徴とする請求項1に記載の通信確立システム。
【請求項5】
前記クライアント端末(200)は、クライアント側通信切断検出手段(230)を備え、該クライアント側通信切断検出手段(230)が通信切断を検出した際に、前記クライアント側通信要求手段(210)は、ホスト端末情報(102)を基に、前記クライアント側管理手段(220)から抽出して指定したホスト端末(100)にクライアント端末情報(202)を送信して該ホスト端末に対して通信の確立要求を行うことにより、指定したホスト端末(100)との通信を再確立する事を特徴とする請求項1に記載の通信確立システム。
【請求項6】
前記ホスト端末情報(102)は、該ホスト端末(100)のIPアドレスとポート番号とからなるとともに、前記クライアント端末情報(202)は、該クライアント端末(200)のIPアドレスとポート番号とからなることを特徴とする請求項1に記載の通信確立システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト端末とクライアント端末との間で通信を確立するためのシステムに関し、特に、各端末間の通信が確立されるまでの時間短縮を可能とするとともに、ホスト端末とクライアント端末との通信の確立処理においてサーバへの負荷を軽減し、サーバダウン等の障害時でも通信を継続することを可能とした、通信確立システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な工夫が施された通信を確立するためのシステムが数多く使用されており、通信の安定性や安全性を確保した様々なシステムが開発されて使用されている。特にインターネット等のネットワークを用いた通信システムでは、例えば、通信の意図せぬ切断等によって再接続を行うことが必要となるが、これを迅速に行うことを可能とした技術などの技術が存在している。
【0003】
通信を確立するためのシステムに係る技術として、特開2020-129207号公報が存在する。ここでは、安定して遅延の少ないチャット環境を実現するための技術として、クライアント端末がチャットルームの開設要求を発行すると、ゲートウェイがクライアント端末の地域を取得し、中継ポイント割り当てサーバが、地域や通信速度の観点で適切なチャットサーバまたはその地域を選択し、チャットルームを開設させ、チャットサーバは、クライアント端末間のチャットデータを中継する技術が開示されている。
【0004】
この技術によれば、複数のサーバを選択的に用いる構成としているため、確かに遅延の少ない安定したネットワーク環境を構築することが可能となると考えられるが、必ずサーバを介して双方向の通信を行う必要があることから、サーバへの負荷がかかるという問題点があった。特に、通信中に再接続を行う必要が生じた場合に、通信の確立にサーバの介在を要する為、負荷が増大するという問題点があった。また、複数のサーバを構築する必要があるため、システム全体のコストが増大するという問題点もあった。
【0005】
また、特開2018-160874号公報では、光通信装置に障害が発生した際に通信を復旧するためのシステムに関する技術が開示されている。ここでは、復旧装置が、ノードの制御プレーンローカルネットワークに接続し、緊急接続サーバから、制御プレーンローカルネットワークに存在するノードが含まれるサブネット内のノードのアドレス情報を取得し、さらにノードのアドレス情報を用いて、サブネット内のノードがサブネット内の他のノードと接続可能か確認し、ノードが接続可能なサブネット内のノードに関する情報を、緊急接続サーバに通知し、緊急接続サーバが、制御プレーンローカルネットワークにおける制御プレーンの応急復旧を行う構成が開示されている。
【0006】
この技術によれば、確かに、障害を受けた光通信ネットワークを容易に復旧させることが可能になると考えられるが、ネットワークの復旧手順が複雑で回復に時間がかかってしまうという問題点が内在するものであった。
【0007】
端末間の通信を行う上で、サーバへの常時接続を行う通常の構成では、サーバに負荷がかかるとともに、ネットワークトラフィックの増大にもつながる。そこで、端末間の通信の確立処理および通信中にサーバへの負荷を軽減するとともに、サーバダウン等の障害時でも通信を継続することを可能とした通信確立システムの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-129207号公報
【文献】特開2018-160874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題を解決するために、ホスト端末とクライアント端末との間で通信を確立するためのシステムであって、特に、各端末間の通信が確立されるまでの時間短縮を可能とするとともに、ホスト端末とクライアント端末との通信の確立処理や確立後の端末間通信、再接続処理においてサーバへの負荷を軽減し、サーバダウン等の障害時でも通信を継続することを可能とした、通信確立システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明に係る通信確立システムは、通信の開始要求をするホスト端末と、該通信の開始要求を承諾するクライアント端末と、前記ホスト端末と前記クライアント端末との通信の確立を仲介するサーバと、からなる、インターネットを経由したホスト端末とクライアント端末との間の双方向通信を確立するための通信確立システムであって、前記ホスト端末は、前記サーバに対してホスト端末情報を送信するホスト側通信要求手段と、各クライアント端末のクライアント端末情報を管理するホスト側管理手段とを備えるとともに、前記クライアント端末は、ホスト端末に対してクライアント端末情報を送信するクライアント側通信要求手段と、ホスト端末情報を管理するクライアント側管理手段とを備え、前記通信確立システムは、前記ホスト端末が、前記クライアント端末から受信した前記クライアント端末情報を基にクライアント端末に対して直接セッション開始要求を行った上で、前記ホスト端末と前記クライアント端末との通信の確立を行うコネクト手段を備えた構成である。
【0011】
また、前記コネクト手段は、通信確立までの時間短縮を可能とするとともに、前記ホスト端末の通信確立に用いる前記ホスト端末情報の変更時に、前記ホスト端末が前記サーバを介して前記クライアント端末に変更後のホスト端末情報を再送信することで、前記サーバの負荷を軽減することを可能とするため、前記ホスト側通信要求手段が、通信を要求するクライアント端末を前記ホスト側管理手段から抽出して指定するとともに、前記サーバに対してホスト端末情報を送信し、前記サーバが、前記ホスト側通信要求手段によって指定されたクライアント端末を特定した上で、該クライアント端末に前記ホスト端末情報を送信して前記ホスト端末との通信の確立要求を行うよう通知し、前記クライアント側通信要求手段は、受信した前記ホスト端末情報を基に、前記クライアント側管理手段から抽出して指定した前記ホスト端末にクライアント端末情報を送信して前記ホスト端末に対して通信の確立要求をするものであり、前記コネクト手段は、更に、前記ホスト端末が前記クライアント端末を認証するためのクライアント端末認証手段を備えた構成である。
【0012】
また、前記クライアント端末認証手段は、前記ホスト端末が生成する乱数キーをもとに、前記クライアント端末が端末固有IDを暗号化するとともに、前記ホスト端末に送信し、該暗号化された端末固有IDを前記ホスト端末が復号化することにより認証を行う構成である。
【0013】
また、前記ホスト端末は、ホスト側通信切断検出手段を備え、該ホスト側通信切断検出手段が通信切断を検出した際に、前記ホスト側通信要求手段が、通信を要求するクライアント端末を前記ホスト側管理手段から抽出して指定するとともに、前記サーバに対してホスト端末情報を送信することにより、指定したクライアント端末との通信を再確立する構成である。
【0014】
また、前記クライアント端末は、クライアント側通信切断検出手段を備え、該クライアント側通信切断検出手段が通信切断を検出した際に、前記クライアント側通信要求手段は、ホスト端末情報を基に、前記クライアント側管理手段から抽出して指定したホスト端末にクライアント端末情報を送信して該ホスト端末に対して通信の確立要求を行うことにより、指定したホスト端末との通信を再確立する構成である。
【0015】
更に、前記ホスト端末情報は、該ホスト端末のIPアドレスとポート番号とからなるとともに、前記クライアント端末情報は、該クライアント端末のIPアドレスとポート番号とからなる構成でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.通信確立時にサーバの介入を最小限にしたため、ホスト端末とクライアント端末間の通信の確立処理時、および端末間での通信中にサーバへの負荷を軽減することが可能となる。また、ホスト端末とクライアント端末間の通信の確立にかかる時間を短縮することが可能となる。
2.ホスト側通信要求手段がサーバを介してクライアント端末に端末情報を送信するとともに、クライアント側通信要求手段が、ホスト端末に対して通信の確立要求を行う構成としたため、サーバの介入を最小限とすることが可能となり、サーバダウン時においても端末間の通信を継続することが可能となる。また、ホスト端末の通信確立に用いるIPアドレス等のホスト端末情報が変更された場合であっても、ホスト端末がサーバを介してクライアント端末に変更後のホスト端末情報を再送信することで、通信の再接続をすることが可能となり、サーバの負荷を軽減することが可能となる。更に、クライアント端末側から、サーバを介さず直接ホスト端末に対して通信の再接続を要求することが可能となる。
【0017】
3.クライアント端末認証手段が端末固有IDを乱数キーによって暗号化する構成としたため、通信の秘匿化を図ることが可能となり、信頼性の高い通信確立システムを提供することが可能となる。
4.ホスト端末がホスト側通信切断検出手段を備える構成としたため、通信の切断を迅速に検知してサーバを介した再接続処理に移行することが可能となる。
【0018】
5.クライアント端末がクライアント側通信切断検出手段を備える構成としたため、通信の切断を迅速に検知するとともに、ホスト端末に対して直接再接続処理を要求することが可能となる。
6.ホスト端末情報およびクライアント端末情報が、IPアドレスとポート番号からなる構成としたため、通信する相手方端末を直接的に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る通信確立システムを、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る通信確立システムの概念図であり、
図2は、クライアント側からの接続フローを示す図である。
図3は、通信確立システムの接続フローを示す図である。
【0020】
本発明の通信確立システム1は、
図1に示すように、ホスト端末100と、クライアント端末200と、サーバ300と、からなり、インターネットを経由したホスト端末100とクライアント端末200との間の双方向通信を、サーバ300が仲介して確立することで、通信確立までの時間短縮およびサーバの負荷の削減、通信の安定性・秘匿性の確保を可能とした通信確立システムである。
【0021】
本発明に係る通信確立システム1は、本実施例では、
図1に示すように、映像・音声等をホスト端末100とクライアント端末200との間で相互に通信し合う構成からなり、ホスト端末100およびクライアント端末200には、それぞれ映像表示手段140・240、撮影手段150・250、マイク160・260、スピーカ170・270を備える構成であるが、この構成に限定されることはなく、音声のみの通信を行う構成としてもよいし、文字情報、画像情報を相互にやり取りする構成としてもよい。また、本実施例では、ホスト端末100は専用コンピュータからなり、クライアント端末200は、1または複数からなるスマートフォン等のタブレットコンピュータからなる構成としているが、この実施例に限定されることはない。
【0022】
また、ホスト端末100は、本実施例では、通信の開始を行うための通信開始手段180を備える構成であり、
図1に示すように、通信開始ボタンからなる通信開始手段180を備える構成であるが、この構成に限定されるものではなく、センサーやホスト端末100にインストールされたソフトウェアで処理する構成としてもよい。
【0023】
以下、本発明に係る通信確立システム1を構成する各要素について詳説する。ホスト端末100は、通信確立システム1における通信の開始要求をする端末であり、
図1に示すように、ホスト側通信要求手段110と、ホスト側管理手段120とを備える。ホスト側通信要求手段110は、サーバ300に対してホスト端末情報102を送信するための手段である。ここでは、ホスト端末情報102は、ホスト端末100を外部から特定して通信を可能とするための情報からなる。
【0024】
また、ホスト側管理手段120は、1または複数からなるクライアント端末200の各々のクライアント端末情報202を管理するための手段である。これにより、ホスト端末100自体がクライアント端末200に関する情報を管理することとなるため、サーバ等で一元管理することがなくなり、サーバに掛かる負荷を減らすことが可能となる。
【0025】
クライアント端末200は、ホスト端末100からの通信の開始要求を承諾する端末であり、
図1に示すように、クライアント側通信要求手段210と、クライアント側管理手段220とを備える構成である。クライアント側通信要求手段210は、ホスト端末100に対してクライアント端末情報202を送信するための手段である。ここでは、クライアント端末情報202は、ホスト端末100がクライアント端末200を特定して通信を可能とするための情報からなる。
【0026】
また、クライアント側管理手段220は、通信確立承諾を行うホスト端末100のホスト端末情報102を管理するための手段である。これにより、クライアント端末200自体がホスト端末100に関する情報を管理することとなるため、ホスト端末100に係る端末情報をサーバ側で管理する必要がなくなり、サーバに掛かる負荷を減らすことが可能となる。
【0027】
サーバ300は、ホスト端末100とクライアント端末200との通信の確立を仲介するサーバマシンである。本実施例では、ホスト端末情報102およびクライアント端末情報202は、クライアント端末200とホスト端末100とが各々管理する構成であるため、サーバ300はこれらの情報を管理することなく、ホスト端末100から送信されたクライアント端末情報202を基に、ホスト端末100が通信確立を要求するクライアント端末200に対して、通信確立要求があった旨の通知を行う。
【0028】
本実施例では、クライアント端末200からサーバに対する処理要求は行われない構成である。これにより、サーバ300に掛かる負荷を最小限に抑えることが可能となる。
【0029】
通信確立システム1は、コネクト手段400を備える構成である。コネクト手段400は、ホスト端末100がサーバ300を介して通信開始要求を送信したクライアント端末200から受信したクライアント端末情報202を基に、ホスト端末100がクライアント端末200に対して直接セッション開始要求を行った上で、ホスト端末100とクライアント端末200との通信の確立処理を行うための手段である。
【0030】
サーバ300は、ホスト端末100が接続したいクライアント端末200に、接続に必要なホスト端末情報102を送信する処理のみを行い、本実施例では、通信の確立に関する管理やホスト端末100、クライアント端末200に関するデータ保持は行わない。
【0031】
従来の通信の確立及び通信には、サーバが必要であったり、通信の確立に必要な情報をサーバが保持する構成が多く存在するが、本発明に係る通信確立システム1は、上記構成としたため、サーバが通信を管理したり、通信に必要な各種情報を保持する必要が無くなり、サーバへのアクセス集中を回避するとともに、リアルタイムなサーバ応答の必要性を無くした構成となっている。通信の確立に関する情報は、通信を行うホスト端末100とクライアント端末200が、それぞれ各端末情報をローカルで保持する構成であるため、サーバ障害に強く、秘匿性が高い通信確立システムを提供することが可能となった。
【0032】
また、ホスト端末100は、常にクライアント端末200との通信の確立可否の監視を行い、クライアント端末200との通信の確立に必要な情報(IPアドレスなど)が変更された場合には、ホスト端末100はサーバ300を介して、再度通信の確立に必要な情報を送付することだけで、クライアント端末200との通信の再確立が可能となる。すなわち、通信の再確立は、一度通信の確立を行なっていれば、既に保持している通信の確立に必要な情報を利用し、ホスト端末100、クライアント端末200のいずれからでも行うことが可能となり、サーバへの負荷を軽減し、サーバダウン等の障害時でも通信を継続することが可能な通信確立システムを提供することが可能となった。
【0033】
次に、コネクト手段400による通信確立処理について詳説する。コネクト手段400は、ホスト側通信要求手段110と、クライアント側通信要求手段210と、クライアント端末認証手段410とから構成される。
【0034】
まず、
図1および
図3に示すように、ホスト側通信要求手段110が、通信を要求するクライアント端末200をホスト側管理手段120から抽出して指定する。その後、ホスト側通信要求手段110は、サーバ300に対して自らのホスト端末情報102を送信する。これにより、サーバ300が、ホスト側通信要求手段110によって指定されたクライアント端末200を特定することが可能となるため、サーバ300が、クライアント端末200を特定した上で、クライアント端末200にホスト端末情報102を送信して、ホスト端末100との通信の確立要求を行うよう通知する。
【0035】
次に、ホスト端末100に指定されたクライアント端末200のクライアント側通信要求手段210は、受信したホスト端末情報102を基に、クライアント側管理手段220からホスト端末100を抽出して指定する。その後、指定したホスト端末100に自らのクライアント端末情報202を送信して、ホスト端末100に対して通信の確立要求をする。
【0036】
その後、ホスト端末100がクライアント端末200を認証するために用いられるクライアント端末認証手段410によって認証処理が行われ、通信が確立する。
【0037】
以上の構成とすることにより、通信確立においてサーバ300の介入を最小限とすることが可能となり、通信確立までの時間短縮が可能となるとともに、サーバダウン時においても端末間の通信を継続することが可能となった。また、ホスト端末100の通信確立に用いるIPアドレス等のホスト端末情報102が変更された場合であっても、ホスト端末100がサーバ300を介してクライアント端末200に変更後のホスト端末情報102を再送信することで、通信の再接続をすることが可能となり、サーバの負荷を軽減することが可能となった。更に、クライアント端末側200から、サーバ300を介さず直接ホスト端末100に対して通信の再接続を要求することも可能となった。
【0038】
クライアント端末認証手段410は、本実施例では、乱数キーを用いた認証を行う構成である。すなわち、ホスト端末100が生成する乱数キーをもとに、クライアント端末200が端末固有IDを暗号化するとともに、ホスト端末100に送信し、該暗号化された端末固有IDをホスト端末100が復号化することにより認証を行う構成である。
【0039】
具体的な実施例としては、通信の確立要求を受け取ったホスト端末100は暗号化した乱数キーをクライアント端末200に送り、暗号化した乱数キーを受け取ったクライアント端末200は、クライアント端末固有ID(デバイストークン)を、暗号化してホスト端末100に送る。暗号化されたクライアント端末固有IDを受け取ったホスト端末200は、複合化して、事前に登録されたクライアント端末固有IDと比較し、この登録リストにクライアント端末固有IDが存在すれば、適正なクライアント端末として通信を確立する。
【0040】
この構成とすることにより、通信の秘匿化を図ることが可能となり、信頼性の高い通信確立システムを提供することが可能となった。
【0041】
ホスト端末100は、
図1に示すように、ホスト側通信切断検出手段130を備える構成とすることが可能である。ホスト側通信切断検出手段130は、確立された通信が切断されたことをホスト端末100側で検出する手段であり、ホスト側通信切断検出手段130が通信切断を検出した際には、ホスト側通信要求手段110が、通信を要求するクライアント端末200をホスト側管理手段120から抽出して指定するとともに、サーバ300に対してホスト端末情報102を送信する。これにより、指定したクライアント端末200との通信を再確立する処理を行うことが可能となる。この構成とすることにより、通信の切断を迅速に検知して、サーバ300を介した再接続処理に移行することが可能となった。
【0042】
また、クライアント端末200は、クライアント側通信切断検出手段230を備える構成とすることが可能である。クライアント側通信切断検出手段230は、確立された通信が切断されたことをクライアント端末200側で検出する手段であり、クライアント側通信切断検出手段230が通信切断を検出した際には、
図2に示すように、クライアント側通信要求手段210が、ホスト端末情報102を基に、クライアント側管理手段220から抽出して指定したホスト端末100にクライアント端末情報202を送信して、ホスト端末100に対して通信の確立要求を行う。これにより、指定したホスト端末100との通信を再確立することが可能となる。
【0043】
この構成とすることにより、通信の確立を仲介するサーバ300を利用する必要がなくなり、予め保存してあるホスト端末情報102を利用して、クライアント端末200からホスト端末100に対して直接に通信確立の要求を送ることができ、サーバ負荷の軽減、通信確立までの時間の短縮が可能となった。
【0044】
本実施例では、ホスト端末情報102は、ホスト端末100のIPアドレスとポート番号とからなる構成となっている。また、クライアント端末情報202も同様に、クライアント端末200のIPアドレスとポート番号とからなる構成である。この構成とすることにより、通信する相手方端末を直接的に特定することが可能となった。なお、ホスト端末情報102およびクライアント端末情報202はこれに限定されることはなく、特定可能な情報であれば、適宜選択して使用することが可能である。
【0045】
以上詳述した通り、本発明に係る通信確立システム1を上記構成とすることにより、ホスト端末100からクライアント端末200との通信の確立を行う場合には、通信の確立時のみ、通信の確立を仲介するサーバ300を利用することとなり、通信が確立した後には通信の確立を仲介するサーバ300を必要としない構成とすることができる。また、クライアント端末200からホスト端末100との通信の確立を行う場合には、クライアント端末200内に予め保存してあるホスト情報を用いて通信の確立を行うため、通信の確立を仲介するサーバ300を必要としない構成とすることが可能となる。
【0046】
また、クライアント端末200内に保存するホスト端末情報102は、ホスト端末100が常時監視しホスト端末情報102が変更された場合には、通信の確立を仲介するサーバ300を利用して即時クライアント端末200内のホスト端末情報102を更新するため、クライアント端末200は常にホスト端末100との通信の確立を、仲介するサーバ300を介すことなく行うことができる。
【0047】
従来の仕組みでは災害時など通信の確立を仲介するサーバ300へのアクセスが集中し、通信障害を起こす可能性があったが、本発明に係る通信確立システム1では通信の確立のために、必ずしも通信の確立を仲介するサーバ300を必要としないため、通信の確立を仲介するサーバ300へのアクセスが限定的で、通信の確立を仲介するサーバ300へのアクセスが必要な場合にも、アクセスを分散して行うことができるため、通信の確立を仲介するサーバ300への負荷が少なく通信障害を起こしにくい。
【0048】
すなわち、本発明の構成により、ホスト端末とクライアント端末間の通信が確立されるまでの時間短縮を可能とするとともに、ホスト端末とクライアント端末との通信の確立処理や確立後の端末間通信、再接続処理においてサーバへの負荷を軽減し、サーバダウン等の障害時でも通信を継続することを可能とした、通信確立システムを提供することが可能となった。
【0049】
本発明に係る通信確立システム1は、以下のような状況において使用することが考えられる。
(1)通信機能を備えた自動車等のガレージや、店舗などのシャッターに本発明に係る通信確立システム1を導入することにより、外出中もしくは無人の場合でも、宅配業者、商品配達などに対して、遠隔地から画像(映像)で伝票などを確認、双方向の会話で対応後、シャッターの開閉を行う。
(2)畑などに設置してあるデータロガーに通信確立システム1を導入することにより、データ収集、必要に応じてカメラを設置し畑の様子の確認を行う。
(3)自宅・店舗などのドアを開閉するためのスマートキーに、通信確立システム1を導入することにより、外出中もしくは無人の場合でも、宅配業者、商品配達などに対して、遠隔地から画像(映像)で伝票などを確認、双方向の会話で対応後、ドアの開閉を行う。
(4)監視カメラに、通信確立システム1を導入することにより、動体センサー、人感センサーなどで、異常を検出した場合、クライアント端末から確認、音声による威嚇などを行う。
(5)その他、従来サーバを必要としていた、クライアント端末がインターネットに接続したスマートフォンからなる双方向通信システムに本発明の通信確立システム1を適用する。
【0050】
例えば、通信機能を備えた自動車等のガレージに本発明の通信確立システム1を適用した場合の構成は、以下の通りである。
(1)ガレージに設置した通話開始ボタンを押す。
(2)予め登録した、ビデオ通話(通信)を行うクライアント端末(スマートフォンなど)への通知(PUSH通知もしくはメール送信)のリクエストを行い、ネットワーク接続情報としてホスト端末の端末情報(IPアドレス、ポート番号)をサーバに送信する。
(3)サーバは指定されたクライアント端末(スマートフォンなど)に対して通知(PUSH通知もしくはメール送信)を行うとともに、ホスト端末の端末情報(IPアドレス、ポート番号)を送信する。
(4)クライアント端末は、通知(PUSH通知もしくはメール送信)で受け取ったデータを使用して、ホスト端末へクライアント端末情報(IPアドレス、ポート番号)を送信する。
(5)ホスト端末は、受け取ったクライアント端末情報を使用してクライアント端末を呼び出し、ネットワーク経由の接続コネクトを行う。
(6)接続が完了し、双方向通信(ビデオ通話)が開始される。
【0051】
接続後は、常時グローバルアドレスとローカルアドレスの両方を管理・チェックして、ネットワーク接続環境(グローバル接続もしくはローカル接続)が変わった場合には、自動的に接続ルートを切り替える構成とすることが可能である。
【0052】
また、接続後は、接続を常時監視し、何らかの理由により通信が切断された場合には、自動的に、ホスト端末が上記(2)移行の手順を実行することで、再度接続を構築する構成とすることも可能である。
【0053】
なお、ホスト端末が過去に接続したことのあるクライアント端末である場合には、ホスト端末に保存してあるクライアント端末情報(IPアドレス、ポート番号)を基に直接接続を試み、接続出来ない場合には、クライアント端末に対してPUSH通知もしくはメール送信を利用して接続に必要な情報を送信して、接続を試みる構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【符号の説明】
【0055】
1 通信確立システム
100 ホスト端末
102 ホスト端末情報
110 ホスト側通信要求手段
120 ホスト側管理手段
130 ホスト側通信切断検出手段
140 映像表示手段
150 撮影手段
160 マイク
170 スピーカ
180 通信開始手段
200 クライアント端末
202 クライアント端末情報
210 クライアント側通信要求手段
220 クライアント側管理手段
230 クライアント側通信切断検出手段
240 映像表示手段
250 撮影手段
260 マイク
270 スピーカ
300 サーバ
400 コネクト手段
410 クライアント端末認証手段