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特許7584709送電装置、無線電力伝送システム、および無線電力伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】送電装置、無線電力伝送システム、および無線電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20241108BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20241108BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20241108BHJP
   H02J 50/23 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
H04B7/06 152
H04B7/06 952
H02J50/60
H02J50/70
H02J50/23
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024523545
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2022025815
(87)【国際公開番号】W WO2024004045
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】落合 麻里
(72)【発明者】
【氏名】上橋 俊介
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022140(JP,A)
【文献】特開2022-046025(JP,A)
【文献】国際公開第2021/200691(WO,A1)
【文献】特開2020-025400(JP,A)
【文献】特開2020-005468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H02J 50/60
H02J 50/70
H02J 50/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記影響量がしきい値以下となる前記送電位置と前記送電ビームのビーム方向との組み合わせの候補が複数存在する場合、複数の前記候補の中から、前記受電器における受電効率に基づいて、前記送電位置および前記送電ビームのビーム方向を決定する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記送電位置の初期値と、前記受電器の位置とに基づいて、前記送電ビームのビーム方向を計算し、計算した前記ビーム方向の前記送電ビームが前記対象に与える前記影響量を計算し、前記影響量がしきい値以下となるまで、前記送電位置を調整しながら前記ビーム方向および前記影響量の計算を繰り返す
ことを特徴とする送電装置。
【請求項3】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記影響量に基づいて前記送電位置および前記送電ビームのビーム方向を調整し、前記影響量がしきい値以下となる前記送電位置および前記ビーム方向の組み合わせが見つからない場合、前記影響量が前記しきい値以下となるように前記送電ビームの強度を下げる
ことを特徴とする送電装置。
【請求項4】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記制御部は、前記対象が無線機器である場合、前記送電ビームが前記対象に与える干渉電力量を前記影響量とし、前記干渉電力量に基づいて前記送電位置および前記ビーム方向を調整し、さらに、前記使用チャネル、前記連続出力時間、および前記出力休止時間の少なくとも1つを調整する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項5】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部と、
予め計算された調整後の前記調整パラメータの値を記憶するパラメータ記憶部と、
を備え、
前記対象の位置は既知であり、
前記制御部は、記憶された調整後の前記調整パラメータの値に基づいて制御する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項6】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記送電位置を変化させながら送電し、移動速度に応じて前記ビーム方向を前記送電位置の変化に合わせて変化させながら移動する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項7】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記対象は移動可能な対象を含み、
前記移動可能な対象が移動する空間の範囲である移動範囲が予め定められており、
前記制御部は、前記送電装置が前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが前記移動範囲に到達する到達電力量である前記影響量に基づいて、前記調整パラメータの値を調整する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項8】
送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、
前記送電位置から前記受電器に向けて放射する前記送電ビームが、前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、
を備え、
前記送電装置は、移動可能な車両に搭載され、
前記車両は人間によって運転され、
前記制御部は、調整後の前記調整パラメータに従って前記車両が前記送電位置に移動した後、移動後の前記送電装置の位置に基づいて、前記ビーム方向を微調整する
ことを特徴とする送電装置。
【請求項9】
前記しきい値は、前記対象の許容電力量に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記対象が無線機器である場合、前記送電ビームが前記対象に与える干渉電力量を前記影響量とする
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項11】
前記対象の許容電力量を示す情報を記憶する許容電力量情報記憶部、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記対象である無線機器の使用する周波数帯を示す被干渉局情報に基づいて、前記使用チャネルを選択する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項13】
前記対象である無線機器の使用する周波数帯を示す被干渉局情報を記憶する被干渉局情報記憶部、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項14】
前記対象は移動可能な対象を含み、
前記対象の現在の位置情報を取得する位置取得部、
をさらに備え、
前記制御部は、前記位置情報に基づいて、前記調整パラメータの値を調整する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項15】
前記移動可能な対象は、人体を含む
ことを特徴とする請求項14に記載の送電装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記対象が人体である場合、前記人体の位置に到達する電力量である到達電力量を前記影響量とする
ことを特徴とする請求項15に記載の送電装置。
【請求項17】
前記送電装置の位置を変化させる移動部、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項18】
前記送電装置は、移動可能な車両に搭載される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項19】
前記制御部は、調整後の前記調整パラメータの値を計算する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項20】
前記制御部は、外部装置で計算された調整後の前記調整パラメータの値を用いる
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項21】
受電器と、
請求項1から8のいずれか1項に記載の送電装置と、
を備え
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項22】
送電位置から受電器に向けて放射する送電ビームが前記送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量を計算するステップと、
前記影響量に基づいて、前記送電位置、前記送電ビームの使用チャネル、前記送電ビームの連続出力時間、前記送電ビームの出力休止時間、前記送電ビームのビーム方向、前記送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整するステップと、
調整後の前記調整パラメータの値を用いて、前記送電位置から前記受電器に向けて前記送電ビームを放射することによって前記受電器に無線で送電するステップと、
を含み、
前記調整パラメータの値を調整するステップでは、前記影響量がしきい値以下となる前記送電位置と前記送電ビームのビーム方向との組み合わせの候補が複数存在する場合、複数の前記候補の中から、前記受電器における受電効率に基づいて、前記送電位置および前記送電ビームのビーム方向を決定する
ことを特徴とする無線電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線で電力を伝送する送電装置、無線電力伝送システム、および無線電力伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送技術の中でも、例えばマイクロ波を用いた無線電力伝送技術は、送電距離を数mから数十m、さらにそれ以上の距離とすることが可能であるため、様々なIoT(Internet of Things)機器、センサ、ロボット、ドローンなどへの適用が期待されている。一方、送電距離が延びるほど送電時の出力が大きくなるため、無線機器などの対象への影響が懸念されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、受電器の近傍に存在する他の無線機器に、送電ビームが与える干渉を考慮した送電ビーム制御方法が開示されている。この送電ビーム制御方法では、予め定めた形状及びサイズの三次元空間内の所定位置に配置されたアンテナの傾斜角度および高さから、三次元空間外への干渉電力が所定の許容値以下になるように、送電ビームの空中線電力および送電方向を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-14154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術において、送電装置は、予め定められた位置に固定されている。このため、特許文献1に開示された技術は、例えば、送電装置が受電器の設置された場所に移動して送電を行う場合など送電装置の位置が変化する場合には適用することができないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、送電装置の位置が変化する場合に、送電ビームが対象に与える影響を低減することが可能な送電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる送電位置まで移動して送電ビームを放射することにより受電器に無線で送電する送電装置において、送電位置から受電器に向けて放射する送電ビームが送電ビームの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、送電位置、送電ビームの使用チャネル、送電ビームの連続出力時間、送電ビームの出力休止時間、送電ビームのビーム方向、送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部、を備え、制御部は、影響量がしきい値以下となる送電位置と送電ビームのビーム方向との組み合わせの候補が複数存在する場合、複数の候補の中から、受電器における受電効率に基づいて、送電位置および送電ビームのビーム方向を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる送電装置は、送電装置の位置が変化する場合に、送電ビームが対象に与える影響を低減することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる無線電力伝送システムの構成を示す図
図2図1に示す送電装置の機能構成の一例を示す図
図3図2に示す計算部の動作の一例を説明するためのフローチャート
図4図2に示す計算部が設定する送電位置の初期値の説明図
図5図2に示す計算部が行う送電位置の調整についての説明図
図6図2に示す送電装置の動作の一例を説明するためのフローチャート
図7図2に示す制御部のハードウェア構成の一例を示す図
図8】実施の形態2にかかる無線電力伝送システムの構成を示す図
図9図8に示す送電装置の機能構成の一例を示す図
図10図8に示す管理装置の機能構成の一例を示す図
図11図8に示す無線電力伝送システムの動作を説明するためのシーケンス図
図12】実施の形態3にかかる無線電力伝送システムの構成を示す図
図13図12に示す送電装置の機能構成の一例を示す図
図14】実施の形態4にかかる無線電力伝送システムの構成を示す図
図15図14に示す送電装置の機能構成の一例を示す図
図16】実施の形態4の変形例についての説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる送電装置、無線電力伝送システム、および無線電力伝送方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる無線電力伝送システム10の構成を示す図である。無線電力伝送システム10は、送電装置100と、複数の受電器200-1,200-2,200-3とを有する。なお、受電器200-1,200-2,200-3は、同様の構成および機能を有しており、以下、受電器200-1,200-2,200-3のそれぞれを特に区別する必要がない場合、単に受電器200と称する。
【0012】
送電装置100は、自律走行機能を有する。送電装置100は、送電位置まで移動して送電ビームBを放射することにより受電器200に無線で送電する。送電位置は、送電装置100が送電を行う位置であり、具体的には、受電器200に送電ビームBが届く位置である。送電装置100は、複数の受電器200のそれぞれに近づいて、1台ずつ受電器200に送電を行う。なお、図1に示す送電装置100および受電器200の台数は一例である。例えば、無線電力伝送システム10は、複数の送電装置100を備えていてもよい。各装置の台数は図1に示した台数と異なっていてもよい。
【0013】
受電器200は、無線受電機能を有する装置であればその種類は問わない。受電器200は、予め定められた位置に固定されている。受電器200は、送電装置100から無線で受電した電力を用いて動作することができる。
【0014】
送電装置100が放射する送電ビームBは、例えばマイクロ波である。送電ビームBのビーム方向、送電位置、強度などによって、送電ビームBが給電することのできる範囲である到達範囲や、送電ビームBが届くことで周辺の無線機器などの対象に影響を及ぼす範囲である影響範囲は変化する。送電ビームBの影響範囲内に他の無線機器が位置している場合、送電ビームBが影響範囲内の無線機器へ干渉するため、干渉を低減することが望ましい。なお、送電装置100と受電器200との距離は数十m以内であることが一般的であるのに対して、送電ビームBがマイクロ波である場合、送電距離と比較して影響範囲が非常に広く、影響範囲は数kmに及ぶ可能性がある。実施の形態1では、送電装置100の送電対象である受電器200のそれぞれに送電する際の送電位置から放射される送電ビームBの影響範囲内の無線機器に対する干渉を低減する方法について説明する。送電装置100は各受電器200の近くに移動して送電を行うため、送電位置は受電器200毎に異なる。実際に送電を行う際の条件が定まるまで、詳細な影響範囲は分からないので、以下では、簡単のため、各受電器200を中心とする予め定められた距離以内の範囲を影響範囲と考え、影響範囲内の無線機器を、送電ビームBの影響を受ける可能性のある無線機器とする。実施の形態1において、影響範囲内の無線機器は、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象の一例である。送電ビームBの影響範囲内の無線機器は、予め定められた位置に固定されているか、或いは、予め定められたエリアで通信する無線機器とする。
【0015】
図2は、図1に示す送電装置100の機能構成の一例を示す図である。送電装置100は、送電部20と、制御部30と、移動部40とを有する。送電部20は、送電アンテナ21と、送電回路22とを有する。制御部30は、外部インタフェース部31と、記憶部32と、計算部33と、制御パラメータ生成部34とを有する。移動部40は、位置推定部41と、駆動部42とを有する。
【0016】
送電アンテナ21は、1つ以上のアンテナ素子により構成される送電用のアンテナであり、例えば、フェーズドアレーアンテナである。送電回路22は、生成した送電用の信号を各アンテナ素子に分配し、所望の指向性が得られるように位相の調整を行って、送電用の信号を必要な電力レベルに増幅して出力する回路である。なお、送電アンテナ21は、電子的にビームを動かしてビーム方向を制御してもよいし、固定したアンテナの下に設置した機械的な駆動部(不図示)によってビーム方向を変えることもできる。
【0017】
外部インタフェース部31は、有線または無線で制御部30と外部の機器とを接続するインタフェースである。外部インタフェース部31は、例えば、有線インタフェースであればUSB(Universal Serial Bus)等であり、無線インタフェースであれば無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信部である。また、外部インタフェース部31は、有線インタフェースおよび無線インタフェースの両方を有することもある。
【0018】
記憶部32は、送電装置100が送電を行う受電器200の情報である受電器情報等を記憶するメモリである。受電器情報は、少なくとも受電器200の位置情報を含む。記憶部32は、受電器情報以外に、各受電器200に送電する際の送電ビームBの影響範囲内の他の無線機器であって送電装置100と使用周波数帯が近く、送電装置100が放射する送電ビームBと干渉を起こす可能性のある被干渉局の情報である被干渉局情報と、送電装置100の送電に関する情報である送電情報とを記憶する。なお、送電装置100は、各受電器200に送電する際には、送電対象の受電器200が到達範囲内に位置するように、送電対象の受電器200の近くまで移動して送電を行う。このため、「各受電器200に送電する際の送電位置」は、送電対象の受電器200の位置が到達範囲内となるような位置となる。被干渉局情報は、例えば、各被干渉局の位置、高さ、および種類、各被干渉局の受電アンテナ利得、各被干渉局に対する干渉低減方法および許容干渉電力量などを含む。送電情報は、例えば、送電装置100の移動部40の移動するルート、地図情報、送電アンテナ利得、送電装置100の位置などを含む。
【0019】
ここで、被干渉局に対する干渉低減方法とは、干渉を低減するために対象の被干渉局に対して使用する方法を示し、例えば、送電ビームBを制御することによる干渉電力量の低減、被干渉局の使用周波数帯とできるだけ周波数が離れたチャネルを使用するといった使用チャネルの制限、連続送電時間に制限を設けたり、送信停止時間を設けたりすることによる送電時間の制約などである。許容干渉電力量とは、許容電力量の一例であり、例えば、被干渉局が干渉を受けた場合に許容できる干渉電力量である。許容干渉電力量を示す情報は、例えば、許容干渉電力量自体を示す値であってもよいし、被干渉局の種類を示す情報であってもよい。また、許容干渉電力量を示す情報は、例えば、一括管理されてもよいし、受電器200の位置ごとに記憶されてもよい。また、使用チャネルの制限を示す情報は、送電装置100が使用するチャネルに設けられる制限を示す情報であり、例えば、被干渉局が使用する周波数帯を示す情報である。使用チャネルの制限を示す情報についても、一括管理されてもよいし、受電器200の位置毎に管理されてもよい。
【0020】
計算部33は、記憶部32に記憶された情報に基づいて、各受電器200に送電する際の調整パラメータの値を計算する。調整パラメータは、制御パラメータ生成部34に与えられるパラメータであり、制御部30が送電部20および移動部40を制御する際に調整可能なパラメータである。例えば、調整パラメータは、送電位置、送電ビームBのビーム方向、送電ビームBの使用チャネル、送電ビームBの連続出力時間、送電ビームBの出力休止時間、送電ビームBの強度などを含むことができる。計算部33は、送電位置から放射される送電ビームBの影響範囲内に位置する対象に与える影響の大きさを示す影響量として、無線機器の干渉電力量を計算し、計算した干渉電力量に基づいて、送電位置、送電ビームBのビーム方向、送電ビームBの使用チャネル、送電ビームBの連続出力時間、送電ビームBの出力休止時間、および送電ビームBの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する。
【0021】
図3は、図2に示す計算部33の動作の一例を説明するためのフローチャートである。ここで計算部33は、図3に示す動作を開始する前に、計算対象となる受電器200を選択しているものとする。
【0022】
計算部33は、送電位置を設定する(ステップS1)。例えば、計算対象の受電器200について初めてステップS1の処理を行う際には、計算部33は、送電位置の初期値として、受電器200のアンテナ面と送電装置100のアンテナ面とが正対する送電位置を設定する。図4は、図2に示す計算部33が設定する送電位置の初期値の説明図である。図4において、受電器200のアンテナ面は、送電装置100の送電アンテナ21のアンテナ面と正対しているものとする。計算部33は、例えば、受電器200のアンテナ面と送電装置100のアンテナ面とが正対し、且つ、送電装置100と受電器200との間の距離が予め定められた距離となる位置を送電位置の初期値とすることができる。
【0023】
次に、計算部33は、設定した送電位置から受電器200に向けた最適なビーム方向Dを計算する(ステップS2)。つまり、送電位置の初期値であれば、ビーム方向Dは、図4に示すように、送電アンテナ21のアンテナ面に垂直な方向であり、正面方向D1となる。
【0024】
計算部33は、計算したビーム方向Dから、送電ビームBによる無線機器300への干渉電力量を計算する(ステップS3)。計算部33は、記憶部32に記憶された被干渉局情報を用いて、干渉電力量を計算することができる。被干渉局情報は、無線機器300の位置情報を含む。無線機器300の位置情報は、例えば、送電装置100の移動を管理する地図上の位置情報であってもよいし、受電器200からの位置を示すベクトル情報などであってもよい。また、無線機器300の位置情報は、地上高などの高さ情報を含んでもよい。さらに、計算部33は、被干渉局情報に含まれる、無線機器300のアンテナ利得の情報を使用して干渉電力量を計算することができる。
【0025】
無線機器300の位置における干渉電力量PIは、以下の数式(1)で表される。
【0026】
I=PTO+GATX+GARX-LS-LO ・・・(1)
【0027】
ここで、PTOは送電装置100の出力であり、GATXは送電装置100の送電アンテナ利得であり、GARXは無線機器300の受電アンテナ利得であり、LSは伝搬損失であり、LOは伝搬以外による損失である。伝搬以外による損失は、例えば送電装置100と無線機器300との間に存在する壁による透過損失などである。
【0028】
図4に示すように、送電装置100のビーム方向Dを基準とした無線機器300の角度をθとすると、計算部33は、送電装置100が送電中の角度θ方向の電力が無線機器300の位置に到達する値を数式(1)を用いて計算する。このとき、計算部33は、記憶部32に記憶された被干渉局情報に含まれる受電アンテナ利得GARX、記憶部32に記憶された送電情報に含まれる送電アンテナ利得GATX、記憶部32に記憶された伝搬以外による損失LOの情報を用いて、干渉電力量PIを計算することができる。また、計算部33は、記憶部32に記憶された無線機器300の位置情報と送電位置とに基づいて、送電装置100と無線機器300との間の距離d1を計算し、計算した距離d1と、伝搬損失LSを求めるためのモデルとを使用して、伝搬損失LSを求めることができる。なお、無線機器300が予め定められたエリア内で通信する機器である場合、予め定められたエリア内の位置であって、送電位置から最も近い位置を無線機器300の位置として距離d1を計算することができる。伝搬損失LSを求めるためのモデルは、例えば、自由空間減衰モデルであり、送電装置100の外部から事前に設定しておくか、受電器200および無線機器300の組み合わせ毎に記憶部32に記憶しているものとする。
【0029】
図3の説明に戻る。計算部33は、ステップS3における計算結果がしきい値以下であるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、しきい値は、対象の無線機器300の許容干渉電力とすることができる。計算結果である干渉電力量PIがしきい値以下である場合(ステップS4:Yes)、計算部33は、この送電位置およびビーム方向を計算結果として決定し、制御パラメータ生成部34に出力する(ステップS5)。なお、図4では二次元の例について示したが、送電装置100および無線機器300の高さの相互関係を把握することができる場合には、高さも加味して干渉電力量PIを計算してもよい。
【0030】
ステップS3における計算結果がしきい値を超える場合(ステップS4:No)、計算部33は、次の送電位置の候補を決定する(ステップS6)。図5は、図2に示す計算部33が行う送電位置の調整についての説明図である。例えば、計算部33は、前回の送電位置よりも、送電ビームBのビーム方向Dが無線機器300から遠ざかる方向、つまり、送電ビームBのビーム方向Dを基準とした無線機器300の角度θが増加する方向に送電位置をずらしたところを、次の送電位置の候補とする。次の送電位置の候補を決定する方法としては、例えば、角度θを1度ずつなど予め定められた値だけ増やして設定することが考えられる。この角度幅は、計算部33の計算能力に基づいて決定してもよいし、ステップS3における計算結果としきい値との差異の大きさに基づいて決定してもよい。
【0031】
計算部33は、次の送電位置の候補を決定すると、再びステップS1に戻り、ステップS1~ステップS4の処理を繰り返すことによって、ステップS4において計算結果がしきい値以下となるまで、しきい値を超えないビーム方向Dおよび送電位置を探索する。
【0032】
図5に示すように、正面方向D1以外でしきい値を超えない計算結果が得られた場合、ステップS5において、ビーム方向Dとして、アンテナの正面方向D1からの角度Φを計算する。
【0033】
なお、高さの情報を取得することができる場合には、二次元ではなく三次元で送電位置を調整することができる。図5では、水平方向について説明したが、鉛直方向にも送電装置100を動かすことができる場合には、鉛直方向にも送電位置を調整してもよい。この場合、ビーム方向Dは、アンテナの正面方向D1からの水平角度Φおよび鉛直方向の角度λ(不図示)を求めて、ビーム方向Dを決定することができる。高さ方向も含めて送電位置およびビーム方向Dを調整する場合、干渉電力量がしきい値以下となる送電位置およびビーム方向Dの組み合わせの候補が複数求められる可能性がある。複数の候補が存在する場合、計算部33は、受電器200の受電効率に基づいて、受電効率が最もよくなる候補を選択すればよい。
【0034】
また、図3の処理において、干渉電力量がしきい値以下となる送電位置が見つからない場合には、送信電力を減らして干渉電力量がしきい値以下となるように調整する。このとき、各送電位置、ビーム方向Dおよび送信電力で、受電器200における受電効率が最もよくなるように送電位置を選択する。
【0035】
また、図3に示す処理において、送電位置を探索する範囲は、予め指定して受電器200毎に記憶部32に記憶しておいてもよいし、受電器200の正面方向からの角度範囲を決めておくこともできる。
【0036】
図2の説明に戻る。計算部33は、上述の方法により、調整パラメータの値を調整すると、調整後の調整パラメータの値を制御パラメータ生成部34に出力する。
【0037】
制御パラメータ生成部34は、調整パラメータの値に基づいて、送電回路22および駆動部42の制御パラメータを生成する機能を有する。送電回路22の制御パラメータとは、計算部33で求められたビーム方向Dを表す角度Φおよびλを満たす送電ビームBを形成するためのパラメータであって、例えば、各アンテナ素子の位相および電力を調整するための設定値、送電開始時および送電終了時のON/OFF信号である。アンテナのビームが機械駆動である場合には、送電回路22の制御パラメータは、アンテナを乗せた台座の傾斜角度および向きを設定する設定値を含む。
【0038】
また、制御パラメータ生成部34は、記憶部32に記憶された被干渉局情報が使用チャネルの指定を含む場合、被干渉局情報に基づいて、チャネルの設定を変更する。例えば、被干渉局情報が、送電装置100が使用するチャネルを指定する情報を含む場合、制御パラメータ生成部34は、被干渉局情報により指定されたチャネルを使用するように、送電回路22の設定を変更する。また、被干渉局情報が、無線機器300が使用する周波数帯の情報を含む場合、制御パラメータ生成部34は、使用チャネルの周波数が、無線機器300の使用する周波数帯からできるだけ離れるように、送電回路22の設定を変更して使用チャネルを設定する。また、被干渉局情報が送電時間の制約情報を含む場合、制御パラメータ生成部34は、制約情報に基づいて、送電回路22にON/OFF信号を出力する。また、駆動部42の制御パラメータとは、例えば、進行方向、移動距離、送電位置などの情報、設定値を含む。
【0039】
位置推定部41は、移動部40の位置を推定する機能を有する。推定した位置は、制御部30に渡され、駆動部42に対する移動の制御パラメータを生成する際に使用される。駆動部42は、移動を制御する機能を有し、移動方向、移動速度などを制御パラメータとして制御パラメータ生成部34から受け取り、受け取った制御パラメータに基づいて駆動して移動部40を移動させる。
【0040】
移動部40は、例えば、ロボット、自走式の台車などを用いて、ロボット、自走式の台車などの上に送電部20および制御部30を載せることでも実現可能である。この場合、制御パラメータ生成部34が移動部40に渡す制御パラメータは、次に移動する先の送電位置の情報だけであってもよい。また、ロボット等の持つ制御機能に計算部33および制御パラメータ生成部34の機能の一部または全てを持たせることもできる。本実施の形態では、送電装置100が送電位置まで移動することができれば移動の実現方法については問わず、何らかの市販の移動機能を有するものを利用してかまわない。
【0041】
図6は、図2に示す送電装置100の動作の一例を説明するためのフローチャートである。図3を用いて説明した調整パラメータの値の計算処理を行うタイミングは、特に制限されない。例えば、送電装置100が送電対象とする複数の受電器200のそれぞれについて、予め計算しておき、調整後の調整パラメータの値を記憶部32に保持しておいてよい。或いは、送電装置100は、移動しながら計算処理を行ってもよいし、受電器200への送電中に次の受電器200への送電中の調整パラメータの値を計算してもよい。以下では、予め全ての受電器200に対して、調整パラメータの値を計算しておく場合について、説明する。
【0042】
図6に示す動作を開始する前に、送電装置100は、送電対象とする全ての受電器200について、図3に示す処理を行って、送電中の調整パラメータの値を計算しておく。送電装置100の制御パラメータ生成部34は、送電対象の受電器200を選択する(ステップS10)。制御パラメータ生成部34は、選択した受電器200に対して予め計算された調整パラメータの値を記憶部32から取得する(ステップS11)。ここで取得する調整パラメータの値は、図3に示す処理を行った結果、計算された送電位置およびビーム方向と、記憶部32に予め記憶された被干渉局情報に含まれる、送電ビームBの使用チャネル、送電ビームの連続出力時間、送電ビームの出力休止時間、送電ビームの強度のうち少なくとも1つを含む。
【0043】
制御パラメータ生成部34は、取得した調整パラメータから制御パラメータを生成する(ステップS12)。制御パラメータ生成部34は、生成した制御パラメータを、送電部20および移動部40のそれぞれに出力する。これにより、移動部40は、送電位置に移動し(ステップS13)、送電部20は、制御パラメータに従った条件で、送電ビームBを用いて送電する(ステップS14)。
【0044】
例えば、ステップS10からステップS12の処理は、送電対象の受電器200の送電位置への移動を開始する前に行ってもよいし、送電対象の受電器200の送電位置へ移動しながら行ってもよい。送電対象の受電器200の送電位置へ移動しながら行う場合、送電位置の初期値が示す位置に移動しながら、送電位置などの調整パラメータの値を調整し、ステップS13では、調整後の送電位置へ移動する。
【0045】
図7は、図2に示す制御部30のハードウェア構成の一例を示す図である。送電装置100の送電部20は、送電ビームBを発生させる電子回路である。移動部40は、送電部20および制御部30を載せて移動し、指定した地点に停止することができれば、送電装置100に内蔵された装置であってもよいし、送電装置100と別体の装置であってもよい。このため、ここでは、制御部30についてのみハードウェア構成を図示する。
【0046】
制御部30は、システムバス50を介して互いに接続されたインタフェース51と、メモリ52と、プロセッサ53とにより実現することができる。インタフェース51は、送電装置100の外部との接続インタフェースである。インタフェース51は、有線または無線のインタフェースである。インタフェース51は、有線および無線の両方のインタフェースを有していてもよい。メモリ52は、情報を記憶する記憶装置である。メモリ52は、インタフェース51を介して入力された情報を記憶することもできるし、メモリ52に記憶された情報をインタフェース51を介して出力することもできる。プロセッサ53は、マイコン、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などである。メモリ52には、プロセッサ53が実行するソフトウェアを保持することもできる。
【0047】
図2の外部インタフェース部31は、インタフェース51により実現することができる。図2の記憶部32は、メモリ52により実現することができる。計算部33および制御パラメータ生成部34は、プロセッサ53により実現することができる。
【0048】
以上説明したように、実施の形態1によれば、送電装置100は、送電位置まで移動して送電ビームBを放射することにより受電器200に無線で送電する。送電装置100は、送電位置から受電器200に向けて放射する送電ビームBが、送電ビームBの影響範囲内に位置する対象である無線機器300に与える影響の大きさを示す影響量である干渉電力量に基づいて、送電位置、送電ビームBの使用チャネル、送電ビームBの連続出力時間、送電ビームBの出力休止時間、送電ビームBのビーム方向D、送電ビームBの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を調整する制御部30を有する。このため、受電器200の位置に応じて、送電装置100が送電する際の調整パラメータの値が調整され、無線機器300への干渉を低減させることが可能になる。
【0049】
具体的には、制御部30は、送電位置の初期値と、受電器200の位置とに基づいて、送電ビームBのビーム方向Dを計算し、計算したビーム方向Dの送電ビームBが無線機器300に与える影響量である干渉電力量を計算し、干渉電力量がしきい値以下となるまで、送電位置を調整しながらビーム方向Dおよび干渉電力量の計算を繰り返す。これにより、干渉電力量に基づいて、送電位置およびビーム方向を含む調整パラメータの値が調整される。また、制御部30は、干渉電力量がしきい値以下となる送電位置と送電ビームBのビーム方向Dとの組み合わせの候補が複数存在する場合、複数の候補の中から、受電器200における受電効率に基づいて、送電位置および送電ビームBのビーム方向Dを決定する。これにより、対象である無線機器300に与える影響を低減しつつ、受電効率のよい送電を行うことが可能になる。なお、ここで用いるしきい値は、対象の許容電力量に基づいて設定される。対象の許容電力量とは、対象が無線機器300である場合には許容干渉電力量である。
【0050】
また制御部30は、影響量である干渉電力量に基づいて送電位置およびビーム方向Dを調整し、干渉電力量がしきい値以下となる送電位置およびビーム方向Dの組み合わせが見つからない場合、干渉電力量がしきい値以下となるように送電ビームBの強度を下げる。これにより、送電位置およびビーム方向Dの調整によって、無線機器300への干渉電力量がしきい値以下とすることができない場合であっても、無線機器300への干渉電力量をしきい値以下に低減しつつ、送電を行うことができる。
【0051】
制御部30は、無線機器300への干渉電力量に基づいて送電位置およびビーム方向Dを調整し、さらに、使用チャネル、連続出力時間、および出力休止時間の少なくとも1つを調整する。これにより、送電位置およびビーム方向Dだけを調整するよりも、さらに、送電ビームBが無線機器300へ与える影響を低減することが可能になる。
【0052】
記憶部32は、無線機器300の許容電力量を示す情報を記憶する。このため、記憶部32は、許容電力量情報記憶部とも称することができる。ここで、無線機器300の許容電力量を示す情報は、許容電力量自体を示す値であってもよいし、無線機器300の種類毎に許容電力量が異なる場合、無線機器300の種類を示す情報であってもよい。また、許容電力量を示す情報は、一括管理されてもよいし、受電器200の位置毎に管理されてもよい。制御部30は、無線機器300の種類を示す情報から無線機器300の許容電力量を特定し、干渉電力量が特定した許容電力量以下となるように調整を行うことができる。また、制御部30は、無線機器300の使用する周波数帯を示す被干渉局情報に基づいて、使用チャネルを選択することができる。例えば、無線機器300の使用する周波数帯を示す情報とは、被干渉局である無線機器300の種類を示す情報であってもよい。制御部30は、送電対象の受電器200に対応づけて記憶された被干渉局の種類を示す情報から、被干渉局の使用する周波数帯を特定し、被干渉局の使用する周波数帯からできるだけ離れたチャネルを送信チャネルとして使用することができる。
【0053】
送電装置100は、対象が予め定められた位置に固定された無線機器300である場合、記憶部32に、予め計算された調整後の調整パラメータの値を記憶しておき、制御部30は、記憶された調整後の調整パラメータの値に基づいて制御を行うことができる。これにより、送電時には、調整パラメータの値を調整する計算処理を行う必要がないため、迅速に調整後の値を用いて送電を開始することが可能になる。
【0054】
また送電装置100は、移動しながら送電を行う、つまり、移動と同時並行で送電を行うこともできる。この場合、送電位置を変化させながら送電することになるため、移動速度に応じてビーム方向を送電位置の変化に合わせて変化させながら移動する。このとき送電装置100が使用するビーム方向は、送電位置から放射される送電ビームBの影響範囲内に位置する対象である無線機器300に与える影響を低減するように調整されている。したがって、一時停止した状態で送電を行うよりも送電にかかる時間を短縮しつつ、送電ビームBが無線機器300に与える影響を低減することが可能になる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1では、送電装置100が計算部33を備えていたが、干渉を回避する対象の位置が既知である場合には、予め調整パラメータの値を調整しておくことができるため、この場合、計算部33の処理は送電装置100の内部で行わなくてもよい。例えば、送電装置100の外部のコンピュータ等で計算処理を行い、計算結果を送電装置100に入力すればよい。
【0056】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2にかかる無線電力伝送システム11の構成を示す図である。無線電力伝送システム11は、送電装置100Aと、受電器200A-1,200A-2,200A-3と、管理装置400とを有する。なお、受電器200A-1,200A-2,200A-3は、同様の構成および機能を有しており、以下、受電器200A-1,200A-2,200A-3のそれぞれを特に区別する必要がない場合、単に受電器200Aと称する。
【0057】
送電装置100Aは、自律走行機能を有する。送電装置100Aは、送電位置まで移動して送電ビームBを放射することにより受電器200Aに無線で送電する。送電位置は、送電装置100Aが送電を行う位置であり、具体的には、受電器200Aに送電ビームBが届く位置である。なお、図8に示す送電装置100Aおよび受電器200Aの台数は一例である。例えば、無線電力伝送システム11は、複数の送電装置100Aを備えていてもよい。各装置の台数は図8に示した台数と異なっていてもよい。
【0058】
受電器200Aは、無線受電機能を有する装置であればその種類は問わない。受電器200Aは、予め定められた位置に固定されている。受電器200Aは、送電装置100Aから無線で受電した電力を用いて動作することができる。また、受電器200Aは、管理装置400との通信機能を有する以外は、実施の形態1の受電器200と同様である。
【0059】
送電装置100Aが放射する送電ビームBは、例えばマイクロ波である。送電ビームBのビーム方向、送電位置、強度などによって、送電ビームBの到達範囲や、影響範囲は変化する。送電ビームBの影響範囲内に他の無線機器300が位置している場合、送電ビームBが到達範囲内の無線機器へ干渉するため、干渉を低減することが望ましい。実施の形態2では、実施の形態1と同様に、送電装置100Aの送電対象である受電器200Aのそれぞれに送電する際の送電位置から放射される送電ビームBの影響範囲内にある無線機器に対する干渉を低減する方法について説明する。なお、送電ビームBの影響範囲内にある無線機器は、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象の一例である。送電ビームBの影響範囲内にある無線機器は、予め定められた位置に固定されているか、予め定められたエリア内で通信する無線機器である。
【0060】
管理装置400は、無線電力伝送システム11が備える受電器200Aの充電状況、送電装置100Aの位置、送電装置100Aから受電器200Aへの送電などを管理する。送電装置100Aは、管理装置400からの指示に基づいて移動して、各受電器200Aに近づいて1台ずつ受電器200Aに送電を行う。
【0061】
図9は、図8に示す送電装置100Aの機能構成の一例を示す図である。送電装置100Aは、送電部20と、制御部30Aと、移動部40とを有する。送電部20および移動部40の構成は実施の形態1と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。制御部30Aは、外部インタフェース部31と、制御パラメータ生成部34とを有する。外部インタフェース部31は、有線または無線で制御部30Aと外部の機器とを接続するインタフェースであり、図2に示す外部インタフェース部31と同様である。
【0062】
制御パラメータ生成部34は、調整パラメータの値に基づいて、送電回路22および駆動部42の制御パラメータを生成する機能を有する。制御パラメータ生成部34は、外部インタフェース部31を介して管理装置400から受信する制御信号に含まれる調整パラメータの値を用いる以外は、図2に示す制御パラメータ生成部34と同様である。送電回路22の制御パラメータとは、計算部33で求められたビーム方向Dを表す角度Φおよびλを満たす送電ビームBを形成するためのパラメータであって、例えば、各アンテナ素子の位相および電力を調整するための設定値、送電開始時および送電終了時のON/OFF信号である。アンテナのビームが機械駆動である場合には、送電回路22の制御パラメータは、アンテナを乗せた台座の傾斜角度および向きを設定する設定値を含む。
【0063】
また、制御パラメータ生成部34は、制御信号が使用チャネルの指定を含む場合、指定された使用チャネルに基づいて、チャネルの設定を変更する。また、制御信号が送電時間の制約情報を含む場合、制御パラメータ生成部34は、制約情報に応じて、送電回路22にON/OFF信号を出力する。また、駆動部42の制御パラメータとは、例えば、進行方向、移動距離、送電位置などの情報、設定値を含む。
【0064】
図10は、図8に示す管理装置400の機能構成の一例を示す図である。管理装置400は、外部インタフェース部61と、受電器管理部62と、送電装置管理部63と、被干渉局管理部64と、送電制御部65とを有する。
【0065】
外部インタフェース部61は、外部インタフェース部31と同様の機能を有し、管理装置400は、外部インタフェース部61を介して、送電装置100Aおよび受電器200Aのそれぞれと接続し、送電装置100Aおよび受電器200Aのそれぞれの状況を取得すると共に、送電を指示する制御信号を送電装置100Aに送信する。
【0066】
受電器管理部62は、無線電力伝送システム11が備える受電器200Aの情報である受電器情報を管理する。具体的には、受電器情報は、受電器200Aの位置、受電アンテナの向き、バッテリーの充電状況を含むことができる。受電器管理部62は、無線電力伝送システム11が備える受電器200Aのそれぞれの位置、受電アンテナの向き、バッテリーの充電状況を管理することができる。受電器管理部62は、外部インタフェース部61を介して各受電器200Aと通信して、それぞれの受電器200Aの充電状況を取得する。
【0067】
送電装置管理部63は、送電装置100Aの情報である送電情報を管理する。送電情報は、実施の形態1において記憶部32に記憶された送電情報と同様の情報であってよい。また送電情報は、送電装置100Aが充電バッテリーを使用している場合には、バッテリーの充電状況を含んでいてもよい。この場合、送電装置管理部63は、送電装置100Aの充電状況を管理することができる。
【0068】
被干渉局管理部64は、無線電力伝送システム11が影響を与える範囲内にある近傍の周波数を使用する他の無線機器300の情報を管理する。被干渉局管理部64は、無線機器300の情報である被干渉局情報を記憶する。被干渉局情報は、例えば、実施の形態1において記憶部32に記憶された被干渉局情報と同様の情報であってよい。被干渉局管理部64は、受電器200Aの位置が変わる、新規に他の無線機器300が設置されるなど、被干渉局情報の内容に更新がある場合、外部インタフェース部61を介して内容を更新する。
【0069】
送電制御部65は、送電装置100Aの送電の制御を行う。具体的には、送電制御部65は、受電器管理部62の有する受電器情報に基づいて、送電対象とする受電器200Aを決定し、送電対象の受電器200Aについての、調整パラメータの値を決定する。調整パラメータの値を決定する方法は、実施の形態1において計算部33が行う方法と同様であり、例えば、図3に示す処理を行うことによって、調整パラメータの値を決定することができる。送電制御部65は、決定した調整パラメータの値を含む制御信号を生成し、生成した制御信号を送電装置100Aに送信する。
【0070】
また、送電制御部65は、受電器管理部62の受電器情報と、送電装置管理部63の送電情報とに基づいて、複数の受電器200Aの送電順序、送電時間の設定、送電装置100Aの充電のスケジュール管理などを行ってもよい。
【0071】
なお、ここでは受電器200Aが管理装置400と通信する機能を有することとしたが、例えば、定期的に送電装置100Aが各受電器200Aの位置を回って送電するような運用の場合には、必ずしも受電器200Aが管理装置400との通信機能を有していなくてもよい。
【0072】
図11は、図8に示す無線電力伝送システム11の動作を説明するためのシーケンス図である。管理装置400は、送電対象の受電器200Aを選択する(ステップS20)。続いて管理装置400は、選択した受電器200Aに対する調整パラメータの計算処理を行う(ステップS21)。ステップS21の処理は、例えば、実施の形態1において図3を用いて説明した計算部33の処理である。管理装置400は、計算結果を含む制御信号を送電装置100Aに送信する(ステップS22)。なお、制御信号は、ここでは、調整パラメータの値と、送電対象の受電器200Aを示す情報とを含むものとする。
【0073】
送電装置100Aは、制御信号を受信すると、受信した制御信号に従って、送電処理を行う(ステップS23)。ステップS23の処理は、例えば、実施の形態1において、図6を用いて説明した処理である。ここで、ステップS10では、制御信号に基づいて受電器200Aを選択し、ステップS11では、制御信号に含まれる調整パラメータの値を取得することになる。送電装置100Aは、送電処理が終了すると、送電終了通知を管理装置400に送信する(ステップS24)。
【0074】
管理装置400は、次の送電対象の受電器200Aがあるか否かを判断する(ステップS25)。次の受電器200Aがある場合(ステップS25:Yes)、管理装置400は、ステップS20から処理を繰り返す。全ての受電器200Aについて送電が完了しており次の受電器200Aがない場合(ステップS25:No)、管理装置400は、送電装置100Aに終了指示を送信し(ステップS26)、処理を終了する。
【0075】
終了指示を受けた送電装置100Aは、例えば、送電装置100Aを充電可能な場所に移動して、送電装置100Aの充電を行う。なお、ここでは簡単のため、管理装置400は、送電終了通知を受信してから、次の受電器200Aの選択および調整パラメータの計算処理を行うこととしたが、管理装置400は、送電装置100Aにおける送電処理と同時並行で、次の受電器200Aの選択および調整パラメータの計算処理を行ってもよい。また、管理装置400は、図11に示す処理と並行して、送電装置100Aの充電状況を監視し、全ての受電器200Aの充電が終わっていなくても、送電装置100Aの充電状況に応じて受電器200Aへの送電処理を中断して送電装置100Aを充電してもよい。無線電力伝送システム11が複数の送電装置100Aを備える場合、管理装置400は、送電装置100Aの充電状況に応じて受電器200Aへの送電処理を行う送電装置100Aを変更することもできる。管理装置400は、無線電力伝送システム11全体の制御を行うことができる。
【0076】
また、ここでは管理装置400が送電装置100Aと通信しながら送電していく例について説明したが、管理装置400が計算した調整パラメータの値を予め送電装置100Aに送信しておき、送電装置100Aが内部に有するメモリに記憶させておくことも可能である。また、送電対象の受電器200Aの指定についても、受電器200Aへの送電が定期的に行われる場合には、送電装置100Aが内部に有するメモリに、送電対象の受電器200Aとその送電処理を開始するタイミングとを示す送電スケジュールを記憶しておいてもよい。この場合、送電装置100Aは、記憶した送電スケジュールに従って移動および送電を行うことができる。
【0077】
管理装置400が計算した調整パラメータの値を予め記憶しておく場合、送電装置100Aの動作は、計算部33による計算処理が管理装置400で行われる以外は、実施の形態1の送電装置100と同様であってよい。
【0078】
管理装置400のハードウェア構成は、図7を用いて説明した送電装置100の制御部30と同様である。インタフェース51と、メモリ52とプロセッサ53とを用いて管理装置400の機能を実現することができる。例えば、管理装置400は、パーソナルコンピュータを用いて実現することができる。外部インタフェース部61は、インタフェース51により実現することができる。受電器管理部62、送電装置管理部63、および被干渉局管理部64の機能は、メモリ52を用いて実現することができる。また、受電器管理部62、送電装置管理部63、および被干渉局管理部64が単に情報を記憶するだけでなく情報処理を伴う機能を有する場合、受電器管理部62、送電装置管理部63、および被干渉局管理部64の機能は、プロセッサ53およびメモリ52を用いて実現することができる。送電制御部65の機能は、プロセッサ53およびメモリ52を用いて実現することができる。
【0079】
以上説明したように、実施の形態2では、送電装置100Aが送電位置から受電器200Aに向けて放射する送電ビームBが、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象に与える影響の大きさを示す影響量に基づいて、送電位置、送電ビームBの使用チャネル、送電ビームBの連続出力時間、送電ビームBの出力休止時間、送電ビームBのビーム方向、送電ビームBの強度のうち少なくとも1つを含む調整パラメータの値を、管理装置400が決定する機能を有する。送電装置100Aの制御部30Aは、管理装置400から受信する制御信号に含まれる調整パラメータの値を用いることで、調整パラメータの値を調整することになる。したがって、実施の形態1と同様に、送電装置100Aの位置が変化する場合に、送電ビームBが対象に与える影響を低減することが可能であると共に、実施の形態1における計算部33の機能を送電装置100Aが有する必要がないため、送電装置100Aの計算負荷を低減し、送電装置100Aの処理能力に制限がある場合であっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、管理装置400において送電装置100Aによる受電器200Aへの送電を管理するため、無線電力伝送システム11全体の状態に基づいて、各装置の制御を行うことが可能になる。
【0080】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3にかかる無線電力伝送システム12の構成を示す図である。図12において、図8と同様の機能を有する構成要素については、図8と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
無線電力伝送システム12は、移動可能な車両110に搭載された送電装置100Bと、受電器200A-1,200A-2,200A-3と、管理装置400とを有する。
【0082】
送電装置100Bは、自律走行機能を有さず、車両110に搭載されており車両110の移動に伴って移動する。送電装置100Bは、送電位置まで移動して送電ビームBを放射することにより受電器200Aに無線で送電する。送電位置は、送電装置100Bが送電を行う位置であり、具体的には、受電器200Aに送電ビームBが届く位置である。なお、図12に示す送電装置100Bおよび受電器200Aの台数は一例である。例えば、無線電力伝送システム12は、車両110に搭載された複数の送電装置100Bを備えていてもよい。各装置の台数は図12に示した台数と異なっていてもよい。
【0083】
送電装置100Bが放射する送電ビームBは、例えばマイクロ波である。送電ビームBのビーム方向、送電位置、強度などによって、送電ビームBの到達範囲および影響範囲は変化する。また、影響範囲内に他の無線機器300が位置している場合、送電ビームBが到達範囲内の無線機器へ干渉するため、干渉を低減することが望ましい。実施の形態3では、実施の形態1,2と同様に、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象を無線機器300とし、無線機器300の位置は既知であることとし、無線機器300に対する干渉を低減する方法について説明する。
【0084】
実施の形態3の無線電力伝送システム12において、車両110は、人間が運転する車両であってもよいし、自動運転車両であってもよい。
【0085】
図13は、図12に示す送電装置100Bの機能構成の一例を示す図である。送電装置100Bは、送電部20と、制御部30Bとを有する。送電部20の構成は実施の形態1,2と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。制御部30Bは、外部インタフェース部31と、制御パラメータ生成部34Bとを有する。外部インタフェース部31は、有線または無線で制御部30Bと外部の機器とを接続するインタフェースであり、図2に示す外部インタフェース部31と同様である。
【0086】
制御パラメータ生成部34Bは、外部インタフェース部31を介して取得する制御信号に基づいて、制御パラメータを生成する。制御パラメータ生成部34Bは、送電回路22の制御パラメータを生成する機能を有する。制御パラメータ生成部34Bが送電回路22の制御パラメータを生成する方法および生成する制御パラメータの内容については、実施の形態1,2と同様である。
【0087】
図12の説明に戻る。車両110は、管理装置400と通信する外部インタフェース(不図示)を有する。管理装置400は、車両110の移動先である送電位置を計算し、車両110に移動先を指示する。車両110が人間の運転する車両である場合、例えば、移動先を車両110内のカーナビゲーションシステムの表示部に表示することにより、移動先を指示することができる。また、車両110は、車両110の位置を管理装置400に定期的に通知する。人間が車両110の運転を行う場合、送電位置に停止する際に位置の誤差が生じる。このため、無線電力伝送システム12は、車両110が停止した後に、送電ビームBのビーム方向Dを微調整する仕組みを備えていてもよい。例えば、管理装置400が、車両110から通知される位置に基づいてビーム方向Dを計算しなおしてもよいし、送電装置100Bがビーム方向Dを微調整する機能を有していてもよい。この場合の微調整の仕組みは、受電器200Aのビーコン信号に合わせる手法が用いられてもよいし、送電装置100Bがカメラを内蔵しており、カメラを用いて取得した画像を用いてビーム方向を調整する手法が用いられてもよい。ビーム方向Dを微調整する仕組みについては、既存の方式のどれを用いてもよい。
【0088】
車両110が自動運転車両である場合、管理装置400から送電位置を車両110に通知して移動させる。車両110への移動先の設定方法については、車両110の移動先設定方法に従う。車両110は、管理装置400からの遠隔操縦で動く自動運転車であってもよい。また、車両110が遠隔操縦の自動運転車であって遠隔操縦する操作元が管理装置400と別にある場合、管理装置400からの移動先の指定は、この操作元に送信される。
【0089】
また、車両110に搭載されているカーナビゲーションシステム、ECU(Engine Control Unit)などの制御装置の中に、制御部30Bの機能を組み込んで、車両110から送電装置100Bを制御する構成にしてもよい。この場合、車両110の車内のカーナビゲーションシステムなどのコンピュータに制御部30Bの機能を実現するためのソフトウェアをインストールすることで、送電機能を実現することができる。
【0090】
なお、実施の形態3においても、受電器200Aが管理装置400と通信する機能を有することとしたが、実施の形態2と同様に、例えば、定期的に送電装置100Bが各受電器200Aの位置を回って送電するような運用の場合には、必ずしも受電器200Aが管理装置400との通信機能を有していなくてもよい。
【0091】
以上説明したように、実施の形態3によれば、移動機能を持たない送電装置100Bであっても、移動する車両110に搭載することで、実施の形態1,2と同様に、送電装置100Bの位置が変化する場合に、送電ビームBが対象に与える影響を低減することが可能である。また、上記の送電装置100で説明したように、送電装置100Bにおいても、移動しながら送電を行う、つまり、移動と同時並行で送電を行うこともできる。この場合、送電位置を変化させながら送電することになるため、移動速度に応じてビーム方向Dを送電位置の変化に合わせて変化させながら移動する。このとき送電装置100Bが使用するビーム方向Dは、送電ビームBが無線機器300に与える影響を低減するように調整されている。したがって、一時停止した状態で送電を行うよりも送電にかかる時間を短縮しつつ、送電ビームBが無線機器300に与える影響を低減することが可能になる。
【0092】
実施の形態4.
図14は、実施の形態4にかかる無線電力伝送システム13の構成を示す図である。無線電力伝送システム13は、送電装置100Cと、受電器200-1,200-2,200-3とを有する。実施の形態4では、送電ビームBの影響を受ける対象が人体500である。なお、人体500は、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象の一例であると共に、送電ビームBの影響を受ける可能性のある移動可能な対象の一例である。以下、実施の形態1と同様の部分については詳細な説明を省略し、実施の形態1と異なる部分について主に説明する。
【0093】
実施の形態1~3では、送電ビームBの影響を受ける可能性のある対象は無線機器300であり、無線機器300の位置は既知であることとした。しかしながら、送電ビームBは、人体500にも影響を与えるため、人体500が無線電力伝送システム13の運用エリア内にいる場合、人体500への影響を低減するように、調整パラメータの値を調整することが望ましい。また、人体500は移動可能であるため、人体500の現在の位置に基づいて、人体500への影響を低減する必要がある。
【0094】
図15は、図14に示す送電装置100Cの機能構成の一例を示す図である。送電装置100Cは、送電部20と、制御部30Cと、移動部40とを有する。送電部20および移動部40の機能は、実施の形態1にかかる送電装置100と同様である。制御部30Cは、外部インタフェース部31と、記憶部32と、計算部33Cと、制御パラメータ生成部34と、位置取得部35とを有する。外部インタフェース部31と、記憶部32と、制御パラメータ生成部34とは、実施の形態1にかかる送電装置100と同様である。
【0095】
位置取得部35は、人体500の位置情報を取得する。この位置情報は、どのように生成された情報であってもよい。例えば、人体500の位置情報は、位置検出センサを用いて生成することもできるし、カメラを用いて取得した画像を解析することによって生成することもできる。位置情報を生成するために用いられるセンサやカメラは、送電装置100Cに備わっていてもよいし、無線電力伝送システム13の運用エリア全体を撮影するカメラが用いられてもよい。また、無線電力伝送システム13の運用エリア全体を撮影するカメラを設置する場合、人体500の検出は、画像解析によって自動的に行われてもよいし、監視員が行ってもよい。位置取得部35は、取得した位置情報を計算部33Cに出力する。
【0096】
計算部33Cは、実施の形態1にかかる計算部33における無線機器300の位置情報の代わりに、位置取得部35が出力する人体500の現在の位置情報を用いて、人体500への影響量がしきい値以下となるように、調整パラメータの値を決定することができる。このとき、計算部33Cは、人体500の位置に到達する到達電力量を影響量とすることができる。到達電力量は、干渉電力量を示す上記の数式(1)において、受電アンテナ利得GARXの値を「0」とすることで求めることができる。また、しきい値として用いられる許容電力量は、人体防護指針を満足する値とすることが望ましい。これにより、計算部33Cは、人体500に対する到達電力量が人体防護指針を満たすしきい値以下となるように、送電ビームBのビーム方向Dおよび送電位置を調整することができる。なお、実施の形態1と同様に、影響量がしきい値以下となるようなビーム方向Dおよび送電位置の組み合わせが見つからない場合、計算部33Cは、送電ビームBの強度を下げてもよい。また、送電ビームBの連続出力時間に制限を設けたり、出力休止時間を設けたりすることで、人体500に対する送電ビームBの影響を低減してもよい。
【0097】
或いは、無線電力伝送システム13の運用エリア内で、人間の立ち入りを許可する範囲を定めてもよい。図16は、実施の形態4の変形例についての説明図である。無線電力伝送システム13の運用エリア内において、人間の立ち入りを許可する範囲である立入許可エリア510を設ける。この場合、送電装置100Cの位置取得部35が立入許可エリア510の範囲全体を人体500の位置情報として取得することによって、立入許可エリア510内の影響量がしきい値以下となるように調整パラメータの値が調整され、立入許可エリア510内に立ち入る人間の人体500への影響量をしきい値以下とすることが可能になる。
【0098】
なお、実施の形態4では、実施の形態1と同様に、移動部40を備え、計算部33Cの機能を有する送電装置100Cについて説明したが、本実施の形態はかかる例に限定されない。例えば、実施の形態4における位置取得部35および計算部33Cの機能を、実施の形態2のように管理装置400内に設けてもよいし、送電装置100Cは、実施の形態3の送電装置100Bのように移動部40を備えずに車両110に搭載されてもよい。
【0099】
以上説明したように、実施の形態4によれば、送電装置100Cが受電器200付近の送電位置まで移動して送電を行う場合において、送電ビームBが人体500に与える影響を低減することが可能になる。したがって、無線電力伝送システム13の運用エリア内において、人間が立ち入ることが可能になる。
【0100】
なお、実施の形態4では、送電ビームBの影響を受ける可能性のある移動可能な対象の一例を人体500としたが、例えば、移動可能な対象は、ロボットなどの電子機器であってもよい。この場合、実施の形態1と同様に、影響量として、干渉電力量を用いることができる。
【0101】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0102】
例えば、実施の形態3に記載したように移動部40を備えずに車両110に搭載される送電装置100Bが、実施の形態1の送電装置100のように、記憶部32および計算部33を備えており、調整パラメータの値を決定する機能を有していてもよい。また、実施の形態4に記載したように、人体500に対する到達電力量がしきい値以下となるように調整パラメータの値を決定する計算部33Cの機能を、実施の形態2,3に記載した管理装置400において実現してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10,11,12,13 無線電力伝送システム、20 送電部、21 送電アンテナ、22 送電回路、30,30A,30B,30C 制御部、31,61 外部インタフェース部、32 記憶部、33,33C 計算部、34,34B 制御パラメータ生成部、35 位置取得部、40 移動部、41 位置推定部、42 駆動部、50 システムバス、51 インタフェース、52 メモリ、53 プロセッサ、62 受電器管理部、63 送電装置管理部、64 被干渉局管理部、65 送電制御部、100,100A,100B,100C 送電装置、110 車両、200,200-1,200-2,200-3,200A,200A-1,200A-2,200A-3 受電器、300 無線機器、400 管理装置、500 人体、510 立入許可エリア、B 送電ビーム、D ビーム方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
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