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特許7584710電気車制御装置および電気車制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電気車制御装置および電気車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241108BHJP
   B60L 9/22 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B60L3/00 C
B60L9/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024528128
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2022024637
(87)【国際公開番号】W WO2023248321
(87)【国際公開日】2023-12-28
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】時任 康介
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097868(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/152733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車に搭載され、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、
前記電源と前記電力変換装置との間を流れる電流の通電および遮断を切り替える磁気遮断器である遮断器と、
前記電力変換装置と前記遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、
前記抵抗器および前記第1接触器と並列に接続され、前記電力変換装置と前記電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、
を備えた電気車制御装置であって、
前記電力変換装置は、前記第2接触器を開放し、前記遮断器および前記第1接触器を投入して、前記電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、
前記電力変換装置は、前記電気車の異常を検出した場合に、前記電源からの電力供給を遮断するために、前記遮断器を開放する制御を行った後に前記第2接触器を投入する、
電気車制御装置。
【請求項2】
電気車に搭載される、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置と、
電源と前記第1の電気車制御装置との間、および前記電源と前記第2の電気車制御装置との間、を流れる電流の通電および遮断を切り替える磁気遮断器である遮断器と、
を備えた電気車制御システムであって、
第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置は、それぞれ、
前記電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、
前記電力変換装置と前記遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、
前記抵抗器および前記第1接触器と並列に接続され、前記電力変換装置と前記電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、
を有し、
前記第1の電気車制御装置の前記電力変換装置および前記第2の電気車制御装置の前記電力変換装置のそれぞれが、前記第2接触器を開放し、前記遮断器および前記第1接触器を投入して、前記電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、
前記第1の電気車制御装置の前記電力変換装置は、前記第1の電気車制御装置の異常を検出した場合に、前記電源からの電力供給を遮断するために、前記遮断器を開放する制御を行い、前記第2の電気車制御装置の前記電力変換装置に前記第1の電気車制御装置に異常が発生したことを通知し、
前記第2の電気車制御装置の前記電力変換装置は、前記第1の電気車制御装置の電力変換装置から前記第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を受け取った場合に、前記第2の電気車制御装置の前記第2接触器を投入する、
電気車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部電源から電力を供給される電気車制御装置および電気車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気車は、直流電力をインバータで可変電圧、可変周波数の3相交流電力に変換して、電動機または補助電源装置に供給する。特許文献1には、遮断器、複数のインバータ、複数の接続回路および制御部を備え、遮断器を介して、複数のインバータに電力を供給することが開示されている。また、制御部は、接続回路と電動機との組によって形成される交流回路部に異常が生じた場合に、遮断器を開放する。その後、異常が生じたインバータを停止状態にすることで、異常が生じた交流回路部を給電系統から電気的に切り離すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-191487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気車は、直流電圧を安定に保つために、インバータの入力側である直流側に並列にフィルタコンデンサが接続され、電気車起動時に、フィルタコンデンサへの充電を行う場合、フィルタコンデンサに突入電流が流れることを防止するために、予め定められた所定電圧に達するまでは充電抵抗器を介すことで通電量を減らして充電する。フィルタコンデンサへの充電を行う際に、異常が発生した場合、電気車は、電源からの電力供給を停止するため、遮断器を開放する制御を行う。しかしながら、抵抗器を介さず充電する場合と比較して充電抵抗器を介して充電する場合は通電量が小さくなり、遮断器が完全に開放されないという問題がある。
【0005】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、抵抗器を介さず充電する場合と比較して通電量が小さい場合において、遮断器を開放することができる電気車制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係る電気車制御装置は、電気車に搭載され、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電源と電力変換装置との間を流れる電流の通電および遮断を切り替える磁気遮断器である遮断器と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を備えた電気車制御装置であって、電力変換装置は、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、電力変換装置は、電気車の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行った後に第2接触器を投入する。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る電気車制御システムは、電気車に搭載される、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置と、電源と第1の電気車制御装置との間、および電源と第2の電気車制御装置との間、を流れる電流の通電および遮断を切り替える磁気遮断器である遮断器と、を備えた電気車制御システムであって、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置は、それぞれ、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を有し、第1の電気車制御装置の電力変換装置および第2の電気車制御装置の電力変換装置のそれぞれが、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、第1の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行い、第2の電気車制御装置の電力変換装置に第1の電気車制御装置に異常が発生したことを通知し、第2の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の電力変換装置から第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を受け取った場合に、第2の電気車制御装置の第2接触器を投入する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電気車制御装置は、電気車に搭載され、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電源と電力変換装置との間を流れる電流の通電および遮断を切り替える遮断器と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を備えた電気車制御装置であって、電力変換装置は、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、電力変換装置は、電気車の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行った後に第2接触器を投入することにより、抵抗器を介さず充電する場合と比較して通電量が小さい場合において、遮断器を開放することができる。
【0009】
本開示に係る電気車制御システムは、電気車に搭載される、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置と、電源と第1の電気車制御装置との間、および電源と第2の電気車制御装置との間、を流れる電流の通電および遮断を切り替える遮断器と、を備えた電気車制御システムであって、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置は、それぞれ、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を有し、第1の電気車制御装置の電力変換装置および第2の電気車制御装置の電力変換装置のそれぞれが、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、第1の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行い、第2の電気車制御装置の電力変換装置に第1の電気車制御装置に異常が発生したことを通知し、第2の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の電力変換装置から第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を受け取った場合に、第2の電気車制御装置の第2接触器を投入することにより、抵抗器を介さず充電する場合と比較して通電量が小さい場合において、遮断器を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる電気車制御装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる電気車制御装置の動作の一例を示すシーケンス図である。
図4】実施の形態2にかかる電気車制御システムの構成例を示すブロック図である。
図5】実施の形態2にかかる電気車制御システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図6】実施の形態にかかる電気車制御システムを実現するハードウェアの一般的な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る電気車制御スステムの実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図面において、回路および装置の構成を示す図は、あくまで概略構成を示す図である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1にかかる電気車制御装置の構成例を示すブロック図である。図1において、電気車制御装置は、遮断器10、第1接触器50、抵抗器60、第2接触器70および電力変換装置100を備えて構成される。電力変換装置100は、電源12から供給された電力を直流電力または交流電力に変換し、変換した電力を負荷90に供給する。ここで、負荷は、例えば、電動機である。電力変換装置100は、インバータ20、フィルタコンデンサ30および電圧検出器40を有する。インバータ20は、例えば、2レベル3相インバータ回路または3レベル3相インバータ回路などである。
【0013】
遮断器10は、集電装置11と電力変換装置100との間に電気的に直列に設けられる。遮断器10の一端は集電装置11に接続される。遮断器10の他端は第1接触器50および第2接触器70に接続される。第1接触器50の一端は遮断器10に接続される。第1接触器50の他端は抵抗器60に接続される。第1接触器50および抵抗器60は直列に接続される。第2接触器70の一端は遮断器10に接続される。第2接触器70の他端は抵抗器60およびフィルタリアクトル80に接続される。第2接触器70および抵抗器60は並列に接続される。抵抗器60の一端は第1接触器50に接続される。抵抗器60の他端は第2接触器70およびフィルタリアクトル80に接続される。フィルタリアクトル80の一端は第2接触器70および抵抗器60に接続される。フィルタリアクトル80の他端はインバータ20の入力端、フィルタコンデンサ30および電圧検出器40に接続される。フィルタコンデンサ30の一端はインバータ20、電圧検出器40およびフィルタリアクトル80に接続される。フィルタコンデンサ30の他端は接地される。インバータ20の入力端の一端はフィルタコンデンサ30、電圧検出器40およびフィルタリアクトル80に接続される。インバータ20の入力端の他端は接地される。インバータ20の出力端は負荷である電動機90に接続される。電動機90は、例えば、誘導電動機、同期電動機、またはリラクタンスモータである。インバータ20は、フィルタコンデンサ30および電圧検出器40と並列に接続される。
【0014】
遮断器10は、例えば、電力変換装置100に故障が生じた場合など、電気車への電力の供給を停止させる必要がある場合に、開放される。遮断器10が開放されることで、集電装置11および電力変換装置100は電気的に遮断され、集電装置11から電力変換装置100への電力の供給が停止される。電気車に電力の供給をする必要がある場合には、遮断器10は投入される。遮断器10が投入されることで、集電装置11および電力変換装置100は電気的に接続され、電源12から電力変換装置100に電力が供給される。
【0015】
集電装置11は、電源12を介して、外部回路である変電所(図示しない)から直流電力を取得し、電力変換装置100に電力を供給する。集電装置11は、例えば、架線からの電力の供給を受けるパンタグラフ、または、第三軌条から電力の供給を受ける集電靴である。
【0016】
電源12は、変電所と接続されており、変電所から直流電力が供給される。電源12は、例えば、架線、または第三軌条である。
【0017】
第1接触器50および第2接触器70は、投入されることで両端を電気的に接続し、開放されることで電気的に遮断する接触器である。抵抗器60は、フィルタコンデンサ30へ充電する際に突入電流を防ぐための充電抵抗である。フィルタリアクトル80およびフィルタコンデンサ30はLCフィルタ回路を構成し、インバータ20が電力変換を行う際に発生する高調波が電源12に流れることを抑制するために設けられる。また、フィルタリアクトル80は、電源12からインバータ20に流れる電流を平滑し、フィルタコンデンサ30は、インバータ20の直流側電圧を平滑する。インバータ20は、電源12から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を電動機90に供給する。
【0018】
電力変換装置100に電力を供給するために、遮断器10および第1接触器50が投入される。この段階では、第2接触器70は開放されている。遮断器10および第1接触器50が投入されることで、集電装置11、遮断器10、第1接触器50、抵抗器60、フィルタリアクトル80、およびフィルタコンデンサ30が電気的に接続され、フィルタコンデンサ30が充電される。フィルタコンデンサ30に予め定められた電力量が充電されると、第2接触器70が投入され、第1接触器50が開放される。第2接触器70が投入され、第1接触器50が開放されることで、集電装置11、遮断器10、第2接触器70、フィルタリアクトル80、およびフィルタコンデンサ30が電気的に接続され、フィルタコンデンサ30が充電される。第1接触器50および抵抗器60を介してフィルタコンデンサ30を充電することで、フィルタコンデンサ30への突入電流を抑制する。フィルタコンデンサ30を充電する際に、突入電流が流れないようにするために、第1接触器50および第2接触器70の投入が切り替えられる。フィルタコンデンサ30が充電されると、インバータ20が電力変換を実行することが可能となる。電力変換動作は一般的な動作であるため、説明は省略する。
【0019】
図2は、本開示の実施の形態1にかかる電力変換装置の概略を示す図である。インバータ20を例に説明する。インバータ20は、駆動部501、変換部502、異常検知部504、通信部503、処理部505、制御部506および記憶部507を備える。
【0020】
駆動部501は、変換部502が有するスイッチング素子を制御する。具体的には、駆動部501は、トランジスタで構成されるスイッチング素子のゲートを制御するための信号を生成する。
【0021】
変換部502は、2レベル3相インバータ回路を構成するスイッチング素子を有する。スイッチング素子は、レグと呼ばれる、直列に接続される正側アームと負側アームとの組を構成する。変換部502は、U相、V相およびW相においてレグを構成し、直流電力を交流電力に変換する。変換部502は、変換した交流電力を電動機90に供給する。
【0022】
通信部503は、電圧検出器40の値が入力される。電圧検出器40の値は、フィルタコンデンサ30の電圧値を示す値である。
【0023】
異常検知部504は、電気車制御装置の故障を検知する。故障は、例えば、フィルタコンデンサ30が、予め定められた期間に所定の電力量が充電されないという充電異常、および電気車制御装置の短絡などである。異常検知部504は、電圧検出器40の値が、記憶部507に記憶されている故障の条件に該当する場合、電気車制御装置の異常と判断する。例えば、異常検知部504は、電圧検出器40の値が、記憶部507に記憶されている予め定められた期間を経過しても所定の値に達しない場合、充電異常と判断する。
【0024】
処理部505は、通信部503と接続されており、電圧検出器40の値が入力される。また、処理部505は、遮断器10、第1接触器50および第2接触器70を投入および開放するための指令を制御部506に送る。
【0025】
制御部506は、処理部505から遮断器10、第1接触器50および第2接触器70を投入および開放するための指令が送られてきた場合、遮断器10、第1接触器50および第2接触器70を投入および開放する制御を行う。
【0026】
記憶部507は、故障の条件が記録されているメモリである。具体的には、異常検知部504において故障を検知する場合の条件などが記録されている。
【0027】
次に、遮断器10の仕組みについて説明する。遮断器10は、例えば、磁気遮断器が使用される。電気回路を流れている電流を強制的に切り離そうとしても電流は電路を流れ続けようとするため、電極が物理的に離れた際に、電極間にアークが発生する。アークは導電性を持っているため、アークを通して電流が流れ続けようとする。磁気遮断器は、電流を遮断した際に発生するアーク放電を電磁力によって吸引し、アークシュートまで導く遮断器である。しかしながら、通電電流が小さいと電磁力も小さくなるため、アークがアークシュートまで導かれずに完全に遮断できない状態になる可能性がある。
【0028】
例えば、電気車制御装置のフィルタコンデンサ30を充電する際、第2接触器70は開放し、抵抗器60と直列に接続されている第1接触器50を投入することで、通電電流を小さくして、フィルタコンデンサ30を充電する。その際、電力変換装置100は、フィルタコンデンサ30の充電不良または電気車制御装置の短絡などの異常を検知した場合に、電力変換装置100は、遮断器10を遮断する必要がある。しかしながら、通電電流が小さいため、遮断器10の遮断ができない場合などがある。本開示の発明は、通電量が小さいときであっても遮断器10を開放することができる。本開示では、抵抗器60を介さず充電する場合と比較して抵抗器60を介して充電する場合に流れる電流が小さくなることを「通電量が小さい」と表現する。
【0029】
次に、本開示の実施の形態1にかかる電気車制御装置の動作を説明する。図3は、本開示の実施の形態1にかかる電気車制御装置において、フィルタコンデンサ30を充電する際に、短絡、または充電異常などの異常が発生した場合の電力変換装置100、遮断器10、第1接触器50および第2接触器70の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0030】
電力変換装置100の制御部506はフィルタコンデンサ30を充電するために、遮断器10を投入、第1接触器50を投入、第2接触器70を開放する制御を行う(S101)。遮断器10は投入され(S102)、第1接触器50は投入され(S103)、第2接触器70は開放される(S104)。電力変換装置100の異常検知部504は、電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知する(S105)。電力変換装置100の制御部506は遮断器10を開放する制御を行う(S106)。遮断器10は開放される(S107)。遮断器10が開放された後、電力変換装置100の制御部506は第2接触器70を投入する制御を行う(S108)。第2接触器70は投入される(S109)。第2接触器70が投入されることで、遮断器10に流れる電流量が一時的に増加する。遮断器10に流れる電流量が増加することで、遮断器10の電磁力が大きくなり、アークをアークシュートに導き、電流を遮断することが可能となる。電力変換装置100は、電流検出器(図示しない)または電圧検出器(図示しない)により電気車制御装置に流れる電流が遮断できたことを確認する(S110)。電気車制御装置に流れる電流の遮断を確認した後、電力変換装置100の制御部506は第1接触器50を開放する制御を行う(S111)。第1接触器50は開放される(S112)。最後に、電力変換装置100の制御部506は第2接触器70を開放する制御を行う(S113)。第2接触器70は開放される(S114)。
【0031】
電気車制御装置では、フィルタコンデンサ30を充電する際、電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知した場合、遮断器10を開放した後に、第2接触器70を投入することで、遮断器10に流れる電流量が増え、遮断器10を流れる電流を遮断する。
【0032】
第2接触器70を投入することで増えた電流は、短絡箇所、フィルタコンデンサ30、または放電回路(図示しない)に流れる。第2接触器70を投入することで増えた電流を通電する手段は他の手段であってもよい。
【0033】
電気車制御装置は、電気車制御装置に通流していないこと、つまり電気車制御装置に流れる電流の遮断を確認した後、第1接触器50を開放する。ここで、電気車制御装置は、第2接触器70を投入した後、予め定められた所定の期間経過後に電気車制御装置に流れる電流の遮断を確認する。また、電気車制御装置は、遮断器に流れる電流の遮断を確認した後、予め定められた所定の期間経過後に、第1接触器50を開放する。
【0034】
上記で説明したように、電気車制御装置は、フィルタコンデンサ30を充電するなど通電量が小さい場合において、電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知した場合、遮断器10を開放した後に、第2接触器70を投入することで、遮断器10に流れる電流量を一時的に増加させ、遮断器10の電磁力を大きくして遮断器10を流れる電流を遮断する。つまり、電気車制御装置は、抵抗器を介さず充電する場合と比較して、通電量が小さい場合においても、遮断器10を開放することが可能となる。
【0035】
実施の形態1にかかる電気車制御装置は、電気車に搭載され、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電源と電力変換装置との間を流れる電流の通電および遮断を切り替える遮断器と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を備えた電気車制御装置であって、電力変換装置は、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、電力変換装置は、電気車の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行った後に第2接触器を投入することで、抵抗器を介さず充電する場合と比較して、通電量が小さい場合において、遮断器を開放することができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、第2接触器70を投入することで一時的に増えた電流を異常が生じた電気車制御装置に流すことで通電電流を確保した。実施の形態2では、同じ車両、あるいは同じ編成に搭載された複数の電気車制御装置のうち、異常が発生していない電気車制御装置に通電電流を流すことで抵抗器を介さず充電する場合と比較して、通電量が小さい場合において、遮断器10を開放することができる。
【0037】
図4は、本開示の実施の形態2にかかる電気車制御システムの構成例を示すブロック図である。図2において、第1の電気車制御装置は、遮断器10、第1接触器50、抵抗器60、第2接触器70および電力変換装置100を備えて構成される。第2の電気車制御装置は、遮断器10、第1接触器51、抵抗器61、第2接触器71および電力変換装置110を備えて構成される。第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置は、遮断器10を共用している。
【0038】
第1の電気車制御装置の電力変換装置100のフィルタコンデンサ30および第2の電気車制御装置の電力変換装置110のフィルタコンデンサ31を充電する際の基本動作は、実施の形態1と同様である。遮断器10を投入し、第1接触器50を投入し、第2接触器70を開放することで、第1の電気車制御装置のフィルタコンデンサ30は充電が開始される。また、第1接触器51を投入し、第2接触器71を開放することで、第2の電気車制御装置のフィルタコンデンサ31は充電が開始される。
【0039】
ここで、第1の電気車制御装置の電力変換装置100のフィルタコンデンサ30および第2の電気車制御装置の電力変換装置110のフィルタコンデンサ31を充電する際に、第1の電気車制御装置に異常が検知された場合の動作を説明する。
【0040】
電力変換装置100の制御部506はフィルタコンデンサ30を充電するために、遮断器10を投入、第1接触器50を投入、第2接触器70を開放する制御を行う(S201)。また、電力変換装置110の制御部506はフィルタコンデンサ31を充電するために、遮第1接触器51を投入、第2接触器71を開放する制御を行う(S202)。遮断器10は投入され(S203)、第1接触器50は投入され(S204)、第2接触器70は開放される(S205)。第1接触器51は投入され(S206)、第2接触器71は開放される(S207)。電力変換装置100の異常検知部504は、電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知する(S208)。電力変換装置100の制御部506は遮断器10を開放する制御を行う(S209)。遮断器10は開放される(S210)。遮断器10が開放された後、電力変換装置100の通信部503を介して、電力変換装置110の通信部503に、第1の電気車制御装置に異常が発生したことを通知する(S211)。電力変換装置110は、第1の電気車制御装置に異常が発生した通知を受け取った後、電力変換装置110の制御部506は第2接触器71を投入する制御を行う(S212)。第2接触器71は投入される(S213)。第2接触器71が投入されることで、遮断器10に流れる電流量が一時的に増加する。遮断器10に流れる電流量が増加することで、遮断器10の電磁力が大きくなり、アークシュートに導き、電流を遮断することが可能となる。電力変換装置100および電力変換装置110は第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置に流れる電流が遮断できたことを確認する(S214、S215)。電気車制御装置に流れる電流の遮断を確認した後、電力変換装置100の制御部506は第1接触器50を開放する制御を行う(S216)。第1接触器50は開放される(S217)。電力変換装置110の制御部506は第1接触器51を開放する制御を行う(S218)。第1接触器51は開放される(S219)。最後に、電力変換装置110の制御部506は第2接触器71を開放する制御を行う(S220)。第2接触器71は開放される(S221)。
【0041】
電気車制御システムでは、第1の電気車制御装置のフィルタコンデンサ30を充電する際、第1の電気車制御装置の電力変換装置100が、第1の電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知した場合、遮断器10を開放した後に、第2の電気車制御装置の電力変換装置110が、第2の電気車制御装置の第2接触器71を投入することで、遮断器10に流れる電流量が増え、遮断器10を流れる電流を遮断する。
【0042】
第2の電気車制御装置の第2接触器71を投入することで一時的に増加した電流は、第2の電気車制御装置のフィルタコンデンサ31、または、第2の電気車制御装置の放電回路(図示しない)に流れる。第2接触器71を投入することで一時的に増加した電流を通電する手段は他の手段であってもよい。
【0043】
第1の電気車制御装置は、電流検出器(図示しない)または電圧検出器(図示しない)により第1の電気車制御装置に通流していないことを確認した後、第1の接触器50を開放する。また、第2の電気車制御装置は、電流検出器(図示しない)または電圧検出器(図示しない)により第2の電気車制御装置に通流していないことを確認した後、第1の接触器51を開放する。
【0044】
上記で説明したように、電気車制御システムは、フィルタコンデンサ30およびフィルタコンデンサ31を充電するなど通電量が小さい場合において、電気車制御装置の短絡または充電異常などの異常を検知した場合、遮断器10を開放した後に、第2接触器71を投入することで、遮断器10に流れる電流量を一時的に増加させ、遮断器10の電磁力を大きくして遮断器10を流れる電流を遮断する。つまり、電気車制御システムは、抵抗器を介さず充電する場合と比較して、通電量が小さい場合においても、遮断器10を開放することが可能となる。
【0045】
上記で説明したように、電気車制御システムは、第1の電気車制御装置が第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を第2の電気車制御装置へ送り、第2の電気車制御装置が第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を受け取ることで、第2の電気車制御装置が電気車制御システムの制御を行うことが可能となる。
【0046】
上記で説明したように、電気車制御システムは、異常が発生していない第2の電気車制御装置の第2遮断器71を投入することで、異常が発生した第1の電気車制御装置への通電を防止することができる。
【0047】
電力変換装置100および電力変換装置110はそれぞれ、少なくともプロセッサと、メモリと、受信器と、送信器とを備え、各装置の動作はソフトウェアにより実現することができる。図6は、実施の形態にかかる電気車制御装置および電気車制御システムを実現するハードウェアの一般的な構成例を示す図である。図6に示す装置は、プロセッサ1001、メモリ1002、受信器1003および送信器1004を備え、プロセッサ1001は受信したデータを用いてソフトウェアによる演算および制御を行う。メモリ1002は受信したデータ、またはプロセッサ1001が演算および制御を行うに際して必要なデータを記憶し、ソフトウェアの記憶も行う。受信器1003は、電力変換装置100および電力変換装置110に入力される信号または情報を受信するインターフェースである。送信器1004は、電力変換装置100および電力変換装置110から出力される信号または情報を送信するインターフェースである。なお、プロセッサ1001、メモリ1002、受信器1003および送信器1004は、各々複数設けられていてもよい。
上記の説明では、電源が直流電力である例を説明したが、電源は交流電力であってもよい。なお、電源が交流電力である場合、集電装置11の後段に受電する交流電圧を降圧するための変圧器が設けられ、変圧器の後段には変圧器から出力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータが設けられる。
上記の説明では、電力変換装置100および電力変換装置110の負荷は電動機を例として説明したが、補助電源装置であってもよい。また、遮断器10を電動機および補助電源装置が共有していてもよい。
上記の説明では、電力変換装置100が遮断器10を開放する制御を行うことを説明したが、電力変換装置100が電力変換装置110へ第1の電気車制御装置の異常を通知し、電力変換装置110が電力変換装置100から第1の電気車制御装置の異常の通知を受け取った後、電力変換装置110が遮断部10を開放する制御を行ってもよい。
【0048】
実施の形態2にかかる電気車制御システムは、電気車に搭載される、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置と、電源と第1の電気車制御装置との間、および電源と第2の電気車制御装置との間、を流れる電流の通電および遮断を切り替える遮断器と、を備えた電気車制御システムであって、第1の電気車制御装置および第2の電気車制御装置は、それぞれ、電源から電力の供給を受けて、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電力変換装置と遮断器との間に直列に接続され、抵抗器と直列に接続される第1接触器と、抵抗器および第1接触器と並列に接続され、電力変換装置と電源との間を流れる電流の通電と遮断とを切り換える第2接触器と、を有し、第1の電気車制御装置の電力変換装置および第2の電気車制御装置の電力変換装置のそれぞれが、第2接触器を開放し、遮断器および第1接触器を投入して、電源からの電力をコンデンサに充電する場合において、第1の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の異常を検出した場合に、電源からの電力供給を遮断するために、遮断器を開放する制御を行い、第2の電気車制御装置の電力変換装置に第1の電気車制御装置に異常が発生したことを通知し、第2の電気車制御装置の電力変換装置は、第1の電気車制御装置の電力変換装置から第1の電気車制御装置に異常が発生したことを示す通知を受け取った場合に、第2の電気車制御装置の第2接触器を投入する、ことで、抵抗器を介さず充電する場合と比較して、通電量が小さい場合において、遮断器を開放することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 遮断器、11 集電装置、12 電源、20,21 インバータ、30,31 フィルタコンデンサ、40,41 電圧検出器、50,51 第1接触器、60,61 抵抗器、70,71 第2接触器、80,81 フィルタリアクトル、90,91 電動機、100,110 電力変換装置、501 駆動部、502 変換部、503 異常検知部、504 通信部、505 処理部、506 制御部、507 記憶部、1001 プロセッサ、1002 メモリ、1003 受信器、1004 送信器10。
図1
図2
図3
図4
図5
図6