(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光測定装置
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20241108BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20241108BHJP
G01B 9/02004 20220101ALI20241108BHJP
G01S 17/34 20200101ALI20241108BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01C3/06 120Z
G01B11/00 G
G01B9/02004
G01S17/34
G01N21/17 620
(21)【出願番号】P 2024546258
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2022037544
(87)【国際公開番号】W WO2024075266
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆典
(72)【発明者】
【氏名】小竹 論季
(72)【発明者】
【氏名】後藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】今城 勝治
(72)【発明者】
【氏名】園 直樹
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-41706(JP,A)
【文献】特表2010-515919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C3/06
G01B11/00
G01B9/00
G01S17/34
G01N21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間に対して波長が連続的に変化する掃引光を出力する波長掃引光源と、
前記波長掃引光源からの掃引光による測定用出力光を測定対象物に向けて空間に測定光として出射し、前記測定対象物が前記測定光を反射した反射光を受けて測定反射光として出力する照射光学系と、
ループ部を有し、前記波長掃引光源からの掃引光による参照用出力光が前記ループ部をN(0以上の整数)回周回し、周回毎の周回参照光を出力する周回光経路と、
前記照射光学系からの測定用反射光と前記周回光経路からの周回参照光とを合波し、合波された干渉光を光電変換した精測定用信号を出力し、前記掃引光に基づき、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光を用いて得た電気信号からなる複数の粗測定用信号を出力する測定信号取得部と、
前記測定信号取得部からの精測定用信号により、前記測定用反射光と前記周回参照光の光路長差を得、前記測定信号取得部からの複数の粗測定用信号により、前記測定用反射光と前記周回参照光の光路長差を得た前記周回参照光の前記周回光経路における周回数を同定する信号処理部と、
を備える光測定装置。
【請求項2】
前記光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、前記掃引光に基づいた複数の波長時間依存性を持つ光である請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、前記掃引光の掃引範囲内の複数の異なる波長に分割した光を電気信号に変換した測定位置補正用信号により、前記周回参照光を分割したそれぞれ波長の異なる補正用参照光と、前記測定用反射光を分割したそれぞれ波長の異なる補正用反射光であり、
前記複数の粗測定用信号それぞれは、対応する波長の前記補正用参照光と前記補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した信号である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、前記周回光経路からの0回周回の周回参照光の掃引範囲内の複数の異なる波長に分割した光を電気信号に変換した測定位置補正用信号により、前記周回参照光をそれぞれ波長の異なる補正用参照光と、前記測定用反射光をそれぞれ波長の異なる補正用反射光であり、
前記複数の粗測定用信号それぞれは、対応する波長の前記補正用参照光と前記補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した信号である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記波長掃引光源から出力される時間に対して波長が連続的に変化する掃引光は、掃引範囲内を時間多重的に波長域がそれぞれ異なる複数の波長域に対して連続して変化させ、複数の波長域の光に波長掃引されたレーザ光である掃引光であり、
前記光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、前記波長掃引光源から出力される複数の波長域の光それぞれに対する周回参照光によるそれぞれ波長の異なる補正用参照光と、前記複数の波長域の光それぞれに対する測定用反射光によるそれぞれ波長の異なる補正用反射光であり、
前記複数の粗測定用信号それぞれは、対応する波長の前記補正用参照光と前記補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した信号である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、前記測定用反射光と前記周回参照光それぞれを直交する二偏光に分離した補正用反射光と補正用参照光であり、
前記複数の粗測定用信号それぞれは、対応する偏光の前記補正用参照光と前記補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した信号である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項7】
前記測定用出力光の光路と前記参照用出力光及び前記照射光学系までの前記周回参照光の光路は共通の光路であり、前記測定用反射光の光路と前記照射光学系からの前記周回参照光の光路は共通の光路である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源が出射した光を用いて光源から対象物までの距離を測定する方式として、パルス伝播方式、三角測距方式、共焦点方式、白色干渉方式、又は波長走査干渉方式等の方式などが知られている。
このような方式の中で、波長走査干渉方式を用い、光源特有のコヒーレンスに制限されることなく測定範囲の拡大ができる測定装置が特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に示された測定装置は、1×2ファイバ方向性結合器(カプラ)と干渉用1×2光ファイバカプラとの間に、2×2光ファイバカプラと光ファイバと光路遅延・選択器とにより構成される周回参照光学系を配置し、測定光出力がカプラからビームスプリッタに至り、測定対象から反射された測定光がビームスプリッタから干渉用1×2光ファイバカプラに至る測定光経路と、参照光出力がカプラから周回参照光学系に至り、周回参照光が干渉用1×2光ファイバカプラに至る参照光経路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された測定装置は、光ファイバの屈折率に温度依存性があるため、光ファイバ内の光速度に環境温度次第では数十μm/min程度の変動が生じ、測定光経路と参照光経路の光路長、特に、参照光経路が周回参照光学系を配置しているため、周回毎の光路長が変動しやすく、温度変化に対して測定精度が影響を受けやすい。
【0006】
本開示は上記した点に鑑みてなされたものであり、波長走査干渉方式の光測定装置において、測定レンジの拡大を図り、温度変化への耐性の抑制、つまり、環境温度の変化の影響を受け難く、精度の高い測定ができる光測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光測定装置は、時間に対して波長が連続的に変化する掃引光を出力する波長掃引光源と、波長掃引光源からの掃引光による測定用出力光を測定対象物に向けて空間に測定光として出射し、測定対象物が測定光を反射した反射光を受けて測定反射光として出力する照射光学系と、ループ部を有し、波長掃引光源からの掃引光による参照用出力光がループ部をN(0以上の整数)回周回し、周回毎の周回参照光を出力する周回光経路と、照射光学系からの測定用反射光と周回光経路からの周回参照光とを合波し、合波された干渉光を光電変換した精測定用信号を出力し、掃引光に基づき、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光を用いて得た電気信号からなる複数の粗測定用信号を出力する測定信号取得部と、測定信号取得部からの精測定用信号により、測定用反射光と周回参照光の光路長差を得、測定信号取得部からの複数の粗測定用信号により、測定用反射光と周回参照光の光路長差を得た周回参照光の周回光経路における周回数を同定する信号処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、測定レンジが狭い低コヒーレンス光源を用いても、測定レンジの拡大を図れ、環境温度の変化の影響を受け難く、測定対象物までの距離を精度高く測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る光測定装置を示す構成図である。
【
図2】測定用反射光によるスペクトルと端面反射光によるスペクトルを示す概略図である。
【
図3】実施の形態1に係る光測定装置において、測定用反射光による光路長、第1の波長域の周回参照光による光路長、第2の波長域の周回参照光による光路長を示す概略図である。
【
図4】実施の形態1に係る光測定装置において、第1の波長域の周回参照光によるスペクトルと第2の波長域の周回参照光によるスペクトルを示す概略図である。
【
図5】実施の形態1に係る光測定装置における光フィルタに透過前の掃引光の一部の光強度を示す概略図である。
【
図6】実施の形態1に係る光測定装置における光フィルタに透過後の掃引光の一部をk分割した光強度を示す概略図である。
【
図7】実施の形態1に係る光測定装置において、精測定により得られるスペクトルを示す概略図である。
【
図8】実施の形態1に係る光測定装置において、粗測定により得られるスペクトルを示す概略図である。
【
図9】実施の形態1に係る光測定装置において、周回参照光のループ部におけるループの周回ごとに周波数の時間に対する傾きが波長分散によって変化していることを示す概略図である。
【
図10】実施の形態1に係る光測定装置において、他の例である、測定反射光のループ部におけるループの周回ごとに周波数の時間に対する傾きが波長分散によって変化していることを示す概略図である。
【
図11】実施の形態2に係る光測定装置を示す構成図である。
【
図12】実施の形態2に係る光測定装置における粗測定用信号取得部を示す構成図である。
【
図13】実施の形態2に係る光測定装置において、測定用反射光による光路長、P波の周回参照光による光路長、S波の周回参照光による光路長を示す概略図である。
【
図14】実施の形態2に係る光測定装置において、P波の周回参照光によるスペクトルとS波の周回参照光によるスペクトルを示す概略図である。
【
図15】実施の形態3に係る光測定装置を示す構成図である。
【
図16】実施の形態4に係る光測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る光測定装置を
図1から
図10を用いて説明する。
実施の形態1に係る光測定装置は波長掃引型光干渉断層計(SS-OCT:Swept Source-OCT)を用いた波長走査干渉方式の光測定装置である。
実施の形態1に係る光測定装置は、コヒーレンス長が短い、例えばコヒーレンス長が10mm程度の低コヒーレンス光源(以下、波長掃引光源という)を用いた光測定装置である。
【0011】
低コヒーレンス光源は安価であるが、測定レンジが狭い。
実施の形態1に係る光測定装置は、参照光経路に周回光経路を配置することにより、測定レンジの拡大を図る。
実施の形態1に係る光測定装置は、波長掃引光源からの掃引光に基づき、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光を用いて得た電気信号からなる複数の粗測定用信号を用いて参照用出力光における周回光経路の周回数を同定する。
【0012】
実施の形態1に係る光測定装置は、参照光経路における光伝搬媒質に由来する屈折率の波長依存性、いわゆる波長分散を用いて複数の粗測定用信号を得、得た複数の粗測定用信号を用いて参照用出力光における周回光経路の周回数を同定する。
実施の形態1に係る光測定装置は、異なる周波数の光それぞれに対するビート周波数のシフト量が周回光経路の周回数と屈折率の波長依存性に比例する点を利用して複数の粗測定用信号を生成し、生成した複数の粗測定用信号を用いて参照用出力光における周回光経路の周回数を同定する。
【0013】
実施の形態1に係る光測定装置は、波長掃引光源1からの掃引光の掃引範囲内における異なる波長域の周回数測定用光によるビート周波数を用いた複数の粗測定用信号を生成し、生成した複数の粗測定用信号を用いて参照用出力光における周回光経路の周回数を同定する。
なお、光路長は光伝搬媒質の長さと屈折率の積に比例し、ビート周波数は光路長に比例し、異なる屈折率の波長依存性を持つ光路長の差分は周回光経路の周回数に比例する。
【0014】
実施の形態1に係る光測定装置は、
図1に示すように、波長掃引光源1と、光分配部2と、照射光学系3と、周回光経路4と、測定信号取得部5と、測定位置補正用信号生成部6と、信号処理部7とを備える。
なお、測定位置補正用信号生成部6は、実施の形態の説明の便宜上、測定信号取得部5と別の構成要素として示しているが、測定信号取得部5の一つの要素である。
【0015】
波長掃引光源1は、レーザ光源と掃引部を有し、レーザ光源からの単一周波数のレーザ光を掃引部が時間に対して波長を連続的に変化させ、波長掃引されたレーザ光である掃引光を出力(出射)する。
掃引部による波長掃引は光情報通信で用いられるTROSAのように複数波長を同時に掃引する手法を用いてもよい。
【0016】
掃引光は掃引が時間に対して一次線形であることが望ましく、時間と波長は1:1の関係にあるのが望ましい。
但し、掃引光は掃引が時間に対して非線形的でも測定信号取得部5と信号処理部7で非線形性を補償すればよい。非線形性を補償する技術は一般的に知られている技術を用いればよい。
掃引部からの掃引光の出射は複数回(N回)の周回を一周期とすると、一周期ごとに出射され、1回の出射時間は周回と周回の間の時間より長く、2周回分より短い。
【0017】
波長掃引光源1は、コヒーレンス長が短い光源であり、例えば、コヒーレンス長が10mm程度である。
波長掃引光源1は、掃引範囲内を時間に対して波長を連続的に変化させ、波長掃引されたレーザ光である掃引光、例えば、中心波長が1550nmで掃引範囲が掃引帯域の広い100nmの掃引光を出射する。
なお、波長掃引光源1として、掃引範囲内を掃引部により時間多重的に波長域がそれぞれ異なる複数の波長域に対して連続して変化させ、複数の波長域の光に波長掃引されたレーザ光である掃引光、例えば、1550nmを中心に波長が5nmずつずらした20の掃引光を時間多重的に掃引して、実質的に中心波長が1550nmで掃引範囲が掃引帯域の広い100nmの掃引光を出射するものでもよい。
【0018】
光分配部2は波長掃引光源1からの掃引光が光ファイバを介して入力され、測定用出力光と参照用出力光に分配する。測定用出力光と参照用出力光の分配比は種々の条件によって設定されるが、測定対象物8が反射率の低い対象物でも測定できるよう、測定用出力光に多くの分配比とするのが望ましい。
光分配部2は1×2ファイバ方向性結合器であるカプラである。
光ファイバは一般的に使用されるシングルモードファイバである。以下に説明する構成要素の間を接続する光ファイバもシングルモードファイバである。
【0019】
照射光学系3は、光分配部2からの測定用出力光が光ファイバを介して入力され、測定対象物8に向けて空間に測定光として出射し、測定対象物8が測定光を反射した反射光を受けて測定用反射光として出力する。
照射光学系3は、光サーキュレータと集光レンズとコネクタとを備える。
光サーキュレータは光分配部2からの測定用出力光を測定光として集光レンズに出力し、測定対象物8が測定光を反射した反射光を受けて測定用反射光として測定信号取得部5に出力する。
【0020】
光サーキュレータと光分配部2の間、及び光サーキュレータと測定信号取得部5との間は光ファイバにより接続される。
光サーキュレータからの測定光は光ファイバにより集光レンズに導かれ、集光レンズにより集光された測定光は光ファイバを介して光ファイバの一端に位置するコネクタの端面から測定対象物8に向けて空間に出射される。
【0021】
測定対象物8により測定光が反射された反射光はコネクタの端面に入射され、光サーキュレータにより光ファイバを介して測定用反射光として測定信号取得部5に出力される。
測定対象物8は、測定対象物8からの反射光の光強度を十分に得るため、集光レンズの焦点付近にあることが望ましい。
また、ガルバノミラーなどで光を空間的に走査してもよい。
【0022】
周回光経路4は、光分配部2からの参照用出力光がN(0以上の整数)回周回し、周回毎の周回参照光を出力する。
周回光経路4はカプラ41と光ファイバによるループ部42を有する。
カプラ41は2つの入力ポートと2つの出力ポートを有する光ファイバカプラである。
【0023】
カプラ41の一方の入力ポートに入力された光分配部2からの参照用出力光は2つの出力ポートそれぞれに分岐させて一方の出力ポートから0回周回した周回参照光とし、他方の出力ポートからループ部42への周回光とする。
カプラ41の他方の入力ポートに入力されたループ部42からの周回光は2つの出力ポートそれぞれに分岐させて一方の出力ポートからN回周回した周回参照光とし、他方の出力ポートからループ部42への周回光とする。
【0024】
すなわち、カプラ41は、一方の出力ポートから、参照用出力光をそのまま通過させた周回参照光と、参照用出力光をループ部42が1回からN回周回させる毎の周回参照光を測定信号取得部5に出力する。
ループ部42はカプラ41の他方の出力ポートと他方の入力ポートを接続する光ファイバである。
ループ部42を構成する光ファイバは、シングルモードファイバである。
ループ部42を構成する光ファイバの長さは、例えば、波長掃引光源1から測定信号取得部5に至る参照光経路のループ部以外の長さ0.5mに対して1.0mとしている。
【0025】
なお、ループ部42を構成する光ファイバとして分散シフトファイバを用いてもよい。分散シフトファイバを用いることにより、周回数ごとに時間に対する周波数の傾きを大きくできる。
また、ループ部42を構成する光ファイバに断熱材により覆ってもよい。断熱材によりループ部42を構成する光ファイバを覆うことにより、ループ部42の温度変化の影響をさらに抑制できる。
【0026】
測定信号取得部5は、照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光とを合波し、合波された干渉光を光電変換した精測定用信号を出力する。
信号処理部7において、精測定用信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)し、掃引光の掃引範囲の波長域における測定用反射光と周回参照光の干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、測定用反射光と周回参照光による光路長差を得る精測定が実施される。
【0027】
測定信号取得部5は、掃引光に基づき、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光を用いて得た電気信号からなる複数の粗測定用信号を出力する。
信号処理部7において、複数の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、複数の周回数測定用光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、複数の周回数測定用光による光路長差を用いてループ部42における周回数を決定する粗測定を実施する。
【0028】
光路である参照光経路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光は、掃引光に基づいた複数の波長時間依存性を持つ光である。
複数の周回数測定用光は、具体的には、掃引光の掃引範囲内の異なる波長に複数分割した光を電気信号に変換した測定位置補正用信号により、周回参照光を分割したそれぞれ波長の異なる補正用参照光と、測定用反射光を分割したそれぞれ波長の異なる補正用反射光である。
複数の粗測定用信号それぞれは、対応する波長の補正用参照光と補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した信号である。
【0029】
補正用参照光及び補正用反射光それぞれを、実施の形態1では一例として、中心波長が1550nmで掃引範囲が100nmの掃引光を用いた場合、1500nmから1550nmの帯域の第1の波長域の光と1550nmから1600nmの帯域の第2の波長域の光の2つとした。
なお、第1の波長域の光と第2の波長域の光は中心波長1550nmを中心にして2つに分けたが、例えば、第1の波長域の光を1500nmから1560nm、第2の波長域の光を1540nmから1600nmとして第1の波長域の光と第2の波長域の光が一部重複した波長域の光でもよく、第1の波長域の光を1500nmから1540nm、第2の波長域の光を1560nmから1600nmとして第1の波長域の光と第2の波長域の光が離れた波長域の光でもよい。
また、1500nmから1600nmの掃引範囲の光から5nmずつ帯域を異ならした20種類の波長域の光としてもよい。
【0030】
掃引光に基づく第1の波長域の光と第2の波長域の光の2つの波長域の光は、中心波長が1550nmで掃引範囲が掃引帯域の広い100nmの掃引光を出射する波長掃引光源1を用いた場合は測定信号取得部5により第1の波長域の光と第2の波長域の光の2つの波長域の光に分割すればよい。
また、1550nm を中心に異なる波長域の掃引光、例えば波長が5nmずつずらした20の掃引光を時間多重的に掃引して、実質的に中心波長が1550nmで掃引範囲が100nmの掃引光を出射する波長掃引光源1を用いた場合は波長掃引光源1からの出射段階で第1の波長域の光と第2の波長域の光の2つに分割された異なる波長域の光を用いればよい。
【0031】
複数の粗測定用信号は、実施の形態1において、第1の波長域の補正用参照光と第1の波長域の補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した第1の粗測定用信号と、第2の波長域の補正用参照光と第2の波長域の補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した第2の粗測定用信号である。
【0032】
測定信号取得部5は、掃引範囲内を時間に対して波長を連続的に変化させ、波長掃引されたレーザ光である掃引光を出力する波長掃引光源1を用いた場合、合波部と光電変換部と測定位置補正用信号生成部6を有する。
合波部は照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光とを合波し、合波された合波光、つまり、干渉光として出力する。合波部は一般に知られている2つの光を合成させて干渉光を得るものである。
光電変換部は合波部からの干渉光を電気信号に変換し、測定用信号を出力する。
【0033】
なお、光分配部2から測定信号取得部5の光電変換部に至る測定光経路に用いられる光ファイバは直交する二つの偏波状態を保持する偏波保持ファイバを用いるのが好ましい。偏波保持ファイバを用いることにより、測定対象物8の内部以外の原因で生じるリタデーションへの影響を生じ難くさせ、照射光学系3から測定対象物8までの空気層におけるリタデーション変動の少ない条件で測定できる。
【0034】
図2に、濃い墨の山形で示す測定用反射光によるスペクトルMと、薄墨の山形で示す照射光学系3のコネクタにおける測定光を出射する端面により反射される、いわゆるフレネル反射である端面反射光によるスペクトルS
0~S
Nを示す。
図2において、Cはコヒーレンス長を示す。
測定用反射光によるスペクトルMは、測定用反射光を測定信号取得部5の合波部により得たビート周波数を電気信号に変換した測定用信号を信号処理部7により高速フーリエ変換して得たスペクトルである。
また、端面反射光によるスペクトルS
0~S
Nは、測定用反射光を測定信号取得部5の合波部により得たビート周波数を電気信号に変換した測定用信号を信号処理部7により高速フーリエ変換して得たスペクトルである。
【0035】
測定信号取得部5からの干渉光による電気信号を高速フーリエ変換することにより、反射位置に応じた周波数が得られ、反射光強度が強いほどピークは強くなる。
コヒーレンス長が短い場合、端面反射光によるビート周波数S0~SNは、参照光経路の経路が長くなるほど、つまり、ループ部42の周回数が増えるほど、ビート周波数のピークは低くなる。
【0036】
図3に、測定信号取得部5の合波部による、測定用反射光による光路長(ビート周波数)と第1の波長域(1500nmから1550nmの帯域)の周回参照光による光路長(ビート周波数)と第2の波長域(1550nmから1600nmの帯域)の周回参照光による光路長(ビート周波数)を示す。
第1の波長域の周回参照光による光路長が第1の周回数測定用光による光路長に相当し、第2の波長域の周回参照光による光路長が第2の周回数測定用光による光路長に相当する。
【0037】
図3において、縦軸が周回光経路の周回数、横軸が光路長(ビート周波数)を示し、実線が測定用反射光による光路長を、破線が第1の波長域の周回参照光による光路長を、一点鎖線が第2の波長域の周回参照光による光路長を示す。
また、
図3において、周回数がk回目と(k+1)回目との間に測定用反射光が受信していることを示し、
図3はk回目の周回参照光と測定用反射光とのビート周波数fb1が(k+1)回目の周回参照光と測定用反射光とのビート周波数fb2より大きい場合についての図である。
【0038】
図3に示すように、光路長は、光伝搬媒質の屈折率における波長での屈折率に比例するので、同じ参照光経路を伝搬する、第1の波長域の周回参照光による光路長は第2の波長域の周回参照光による光路長より短くなる。
一般的なシングルモードファイバで屈折率/波長の傾きは-0.001/100nm 程度である。例えば、波長が1500nmでの測定される光路長と、波長が1600nmでの測定される光路長は異なり、波長の大きい方が短くなる。ループ部42のループ長さを1mとすると、波長が1500nmから1600nmに長くなると光路長の短くなる差分が1000μm、負方向へシフトされる。
【0039】
また、第1の波長域の周回参照光による光路長と第2の波長域の周回参照光による光路長はループ部42を1回周回する毎に長くなり、第1の波長域の周回参照光による光路長の周回数に対する傾きは第2の波長域の周回参照光による光路長の周回数に対する傾きが大きい。
従って、周回毎の第1の波長域の周回参照光による光路長と第2の波長域の周回参照光による光路長の差分、つまりシフト量は周回数に対して比例する。
【0040】
第1の波長域の周回参照光及び第2の波長域の周回参照光それぞれについて、測定信号取得部5の合波部により得たビート周波数を電気信号に変換した測定用信号を信号処理部7により高速フーリエ変換して得たスペクトルを
図4に示す。
図4において、第1の波長域の周回参照光によるスペクトルfbλ1を濃い墨の山形で示し、第2の波長域の周回参照光によるスペクトルfbλ2を薄墨の山形で示し、
図4はビート周波数fb1がビート周波数fb2より大きい場合についての図である。
図4において、横軸を周回数、つまり測定された距離、縦軸をスペクトルの強度を示す。
【0041】
図4において、図示左側に位置するスペクトルfbλ11とスペクトルfbλ21が周回数0の場合のスペクトルを示し、スペクトルfbλ11のピーク位置とスペクトルfbλ21のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数0の場合の光路長差の差分を示す。
また、
図4図示右側に位置するスペクトルfbλ12とスペクトルfbλ22が周回数Nの場合のスペクトルを示し、スペクトルfbλ12のピーク位置とスペクトルfbλ22のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数Nの場合の光路長差の差分を示す。
従って、シフト量が周回数に比例するため、シフト量を知ることにより、測定用反射光を受信したタイミング、言い換えれば、周回数を決定できる。
【0042】
実施の形態1に係る光測定装置は、測定光経路に照射光学系3のコネクタの端面と測定対象物8との間に空間が存在することにより、測定光経路の波長分散特性と参照光経路の波長分散特性が異なることを利用し、第1の波長域の周回参照光による光路長と第2の波長域の周回参照光による光路長の差分を用いてループ部42の周回数を決定する粗測定を実施する。
【0043】
測定位置補正用信号生成部6(以下、補正用信号生成部と略称する)は、粗測定の際に複数の波長を切り出すために用いる測定位置補正用信号(以下、補正用信号と略称する)を各周期の掃引光に基づき周期毎に生成する。
本例では補正用信号生成部6は周回参照光及び測定用反射光から第1の波長域と第2の波長域それぞれを切り出すための補正用信号を生成する。
波長掃引光源1から出射される掃引光は1周期毎、つまり、掃引毎に時間軸方向、つまり、時間に対する線形性の変動(ジッタ)が含まれる。
補正用信号は掃引光にジッタによる変動があっても複数の波長の切り出しを正確に行うための信号である。
【0044】
補正用信号生成部6は光フィルタ61と光検出器62を備える。
光フィルタ61は波長掃引光源1から出射される掃引光の一部が光分配部2を介して入力され、第1の波長域の位置補正用光と第2の波長域の位置補正用光を切り出す。
光フィルタ61は
図6に示す、中心波長が1550nmで掃引範囲が100nmの掃引光の一部が入力され、1500nmから1500nmの帯域の第1の波長域の位置補正用光と1550nmから1600nmの帯域の第2の波長域の位置補正用光を切り出す。
【0045】
なお、位置補正用光は、
図6に示すように、掃引光の掃引範囲を1/k(kは2以上の整数)に分割し、λ
1からλ
kのk個の位置補正用光であればよい。
光フィルタ61は、例えば、kを20とし、1500nmから1600nmの帯域から帯域幅5nmとした第1の波長域λ
1から第20の波長域λ20の位置補正用光を切り出すものでもよい。
位置補正用光の数を多くすることにより、周回数の決定の精度が高まる。
【0046】
光フィルタ61は特定波長のみ透過する部材であるガスセルを用いる。
光フィルタ61として、HCN(シアン化水素)ガスセルのように分子の振動モードに対応した吸収スペクトルの得られる部材、エタロンのようにマッハ・ツェンダー(MZ:Mach-Zehnder)干渉計を用いて特定の波長のみ透過する部材を用いてもよい。
光検出器(フォトディテクタ、PD:Photo Detector)62は光フィルタ61からの第1の波長域の位置補正用光と第2の波長域の位置補正用光を電気信号に変換して第1の補正用信号と第2の補正用信号を測定信号取得部5に出力する。
なお、光フィルタ61により、20の位置補正用光が切り出されれば、位置補正用光を電気信号に変換して第1の補正用信号から第2の補正用信号を測定信号取得部5に出力する。
【0047】
補正用信号生成部6は、光分配部2を介して入力される波長掃引光源1から出射される掃引光の一部を用いて補正用信号を得るものとしたが、補正用信号として波長掃引光源の掃引特性が得られれば良いため、周回光経路4からの参照用出力光を0回周回の(周回しない)周回参照光を用いて補正用信号を得るものとしてもよい。
【0048】
測定信号取得部5では、補正用信号生成部6からの第1の補正用信号と第2の補正用信号により、波長掃引光源1から出射される掃引光と同期がとられて、周回数測定用光として、周回光経路4からの周回参照光から第1の波長域の補正用参照光と第2の波長域の補正用参照光を切り出し、照射光学系3からの測定用反射光から第1の波長域の補正用反射光と第2の波長域の補正用反射光を切り出す。
測定信号取得部5は、第1の波長域の補正用参照光と第1の波長域の補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した第1の粗測定用信号と、第2の波長域の補正用参照光と第2の波長域の補正用反射光を合波し、合波された干渉光を光電変換した第2の粗測定用信号を、信号処理部7に出力する。
【0049】
なお、波長掃引光源1として、1550nm を中心に波長が5nmずつずらした20の掃引光を時間多重的に掃引して、実質的に中心波長が1550nmで掃引範囲が掃引帯域の広い100nmの掃引光を出射するものとした場合、精測定用信号を得る場合、照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光は実質的に中心波長が1550nmで掃引範囲が掃引帯域の広い100nmを用いる。
【0050】
また、第1の波長域と第2の波長域の粗測定用信号を得る場合は、20の掃引光の内の波長の上下2分割した10ずつの照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光を用いればよい。
この時、波長掃引光源1から出力される第1の波長域の掃引光と測定信号取得部5に入力される第1の波長域の補正用参照光及び第1の波長域の補正用反射光は同期がとられ、波長掃引光源1から出力される第2の波長域の掃引光と測定信号取得部5に入力される第2の波長域の補正用参照光及び第2の波長域の補正用反射光は同期がとられる。
この場合は補正用信号生成部6を必要としない。
【0051】
信号処理部7は、測定信号取得部5において、波長掃引光源1から出射される掃引光の掃引範囲の帯域と同じ帯域の、照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光とを合波して得た電気信号からなる精測定用信号を高速フーリエ変換し、掃引光の掃引範囲の波長域における測定用反射光と周回参照光の干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、測定用反射光と周回参照光による光路長差を得る精測定が実施される。
【0052】
信号処理部7は、精測定において、掃引光の掃引範囲の帯域と同じ帯域の広い波長範囲の測定用反射光と周回参照光を用いてビート周波数を得ているので、ビート周波数の半値全幅は高速フーリエ変換に用いる波長範囲と反比例するものの、精度の高い精測定を行える。
例えば、中心波長1550nmで掃引範囲100nmの場合、得られるビート周波数の半値全幅は10um程度であるため、1μm程度の十分精度の高い距離測定が行える。
【0053】
信号処理部7による精測定の結果得られるスペクトルを
図7に示す。
図7において、測定用反射光が
図3に示す周回数がk回と(k+1)回に存在する場合、左側に位置するスペクトルはk回の周回参照光側に位置していることを示し、右側に位置するスペクトルは(k+1)回の周回参照光側に位置していることを示している。
すなわち、掃引光の掃引範囲の波長域測定用反射光と周回参照光の干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、測定用反射光と周回参照光との光路長差、つまり、距離を測定できる。
但し、周回参照光の周回数kは精測定だけでは決定できない。
【0054】
例えば、波長掃引光源1から測定信号取得部5に至る参照光経路のループ部42以外の長さ0.5m、ループ部42のループの長さを1.0mとし、測定対象物8を通る測定光経路1.8mと仮定する。
信号処理部7による精測定で得られる結果は、測定用反射光と周回参照光との光路長の差分である0.3m(=1.8-1.5)である。
【0055】
信号処理部7は、測定信号取得部5において、補正用信号生成部6からの第1の補正用信号により波長掃引光源1から出射される掃引光と同期がとられた第1の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、第1の波長域の補正用参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、第1の波長域の光路長差を得る。
信号処理部7は、測定信号取得部5において、補正用信号生成部6からの第2の補正用信号により波長掃引光源1から出射される掃引光と同期がとられた第2の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、第2の波長域の補正用参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、第2の波長域の光路長差を得る。
【0056】
信号処理部7による第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を高速フーリエ変換して得られるスペクトルを
図8に示す。
図8に示すように、第1の波長域の光路長差によるスペクトルと第2の波長域の光路長差によるスペクトルとのピーク間隔であるシフト量は周回数に比例する。
従って、事前に、周回数とシフト量の関係をテーブルにより記憶しておく、もしくは、周回数とシフト量の線形関係を記憶しておく。
なお、波長の、参照光経路における光伝搬媒質の温度に対する傾きが線形でない場合、テーブル又は線形関係に温度変化の影響を考慮する。
【0057】
図8は
図4と同様の図であり、
図8において、図示左側に位置する第1の波長域の光路長差によるスペクトルfbλ11と第2の波長域の光路長差によるスペクトルfbλ21か周回数0の場合のスペクトルを示し、スペクトルfbλ11のピーク位置とスペクトルfbλ21のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数0の場合の光路長差を示す。
また、
図8図示右側に位置するスペクトルfbλ12とスペクトルfbλ22か周回数Nの場合のスペクトルを示し、スペクトルfbλ12のピーク位置とスペクトルfbλ22のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数Nの場合の光路長差を示す。
【0058】
第1の粗測定用信号が第1の波長域における照射光学系3からの測定用反射光(補正用反射光)と周回光経路4からの周回参照光(補正用参照光)とを合波して得た電気信号からなる粗測定用信号であり、第2の粗測定用信号が第2の波長域における照射光学系3からの測定用反射光(補正用反射光)と周回光経路4からの周回参照光(補正用参照光)とを合波して得た電気信号からなる粗測定用信号であると、第1の波長域の補正用反射光と補正用参照光による第1の波長域の光路長差と第2の波長域の補正用反射光と補正用参照光による第2の波長域の光路長差が得られる。
【0059】
第1の波長域の光路長差と第2の波長域の光路長差とによるシフト量が得られ、この得られたシフト量とテーブルとして記憶された周回数とシフト量の関係又は記憶された周回数とシフト量の線形関係により、得られたシフト量に対する周回数が得られる。
信号処理部7は測定信号取得部5からの第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を用いて粗測定が実施され、照射光学系3からの測定用反射光を得た周回数を得る。
【0060】
例えば、上記した例示と同様に、波長掃引光源1から測定信号取得部5に至る参照光経路のループ部42以外の長さ0.5m、ループ部42のループの長さを1.0mとし、測定対象物8を通る測定光経路1.8mと仮定する。
信号処理部7による粗測定において、第1の波長域の光路長差と第2の波長域の光路長差とによるシフト量とテーブルにおける周回数とシフト量の関係から周回数が周回数1(周回参照光の光路長1.5m)と周回数2(周回参照光の光路長2.5m)の間、かつ、周回数1側に位置すると決定する。
その結果、精測定で得られる0.3mと粗測定で得られた周回数1である1.5mの和1.8mの測距が実施できる。
【0061】
信号処理部7は、精測定における精測定用信号の高速フーリエ変換と粗測定における第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号それぞれの高速フーリエ変換を並列処理することにより、高速化を図っている。
【0062】
実施の形態1に係る光測定装置は、測定光経路に照射光学系3のコネクタの端面と測定対象物8との間に空間が存在することにより、測定光経路の波長分散特性と参照光経路の波長分散特性が異なることを利用し、
図9に示すように、周回参照光のループ部42におけるループの周回ごとに周波数の時間に対する傾きが波長分散によって変化していることにより、粗測定によって周回数が同定できる。
なお、ループ部42を構成する光ファイバを他の経路に用いられるシングルモードファイバと異なる、例えば分散シフトファイバを用いることで周回数に対する傾きを大きくし、周回数の同定にさらなる精度の向上を図ってもよい。
【0063】
また、
図10に示すように、測定対象物8と照射光学系3のコネクタの端面と測定対象物8との間の空気層の厚みが測定対象物8までの距離と比例することを利用し、測定用反射光のループ部42におけるループの周回ごとに周波数の時間に対する傾きが波長分散によって変化していることにより、粗測定によって周回数が同定するようにしてもよい。
【0064】
次に、実施の形態1に係る光測定装置における精測定と粗測定の動作を説明する。
まず、精測定の動作を説明する。
測定信号取得部5に測定用反射光が入力されると、測定信号取得部5からは、入力された測定用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光とを合波し、電気信号に変換された精測定用信号が信号処理部7に出力される。
信号処理部7は精測定用信号を高速フーリエ変換し、掃引光の掃引範囲の波長域における測定用反射光と周回参照光の干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、測定用反射光と周回参照光との光路差を求め、測定用反射光と周回参照光とによる距離を求める。
【0065】
一方、粗測定では、測定信号取得部5に測定用反射光が入力されると、測定信号取得部5からは、補正用信号生成部6からの第1の補正用信号により波長掃引光源1から出射される掃引光の第1の波長域と同期がとられた、入力された測定用反射光における第1の波長域の測定用反射光である補正用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光における第1の波長域の周回参照光である補正用参照光とを合波し、電気信号に変換された第1の粗測定用信号が信号処理部7に出力される。
【0066】
また、測定信号取得部5からは、補正用信号生成部6からの第2の補正用信号により波長掃引光源1から出射される掃引光の第2の波長域と同期がとられた、入力された測定用反射光における第2の波長域の測定用反射光である補正用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光における第2の波長域の周回参照光である補正用参照光とを合波し、電気信号に変換された第2の粗測定用信号が信号処理部7に出力される。
【0067】
なお、掃引範囲内を掃引部により時間多重的に波長域がそれぞれ異なる第1の波長域及び第2の波長域に波長掃引された掃引光をそれぞれ出力する波長掃引光源1を用いた場合、測定信号取得部5からは、波長掃引光源1から出射される第1の波長域及び第2の波長域の掃引光それぞれと同期がとられた、入力された第1の波長域及び第2の波長域の測定用反射光である補正用反射光それぞれと第1の波長域及び第2の波長域の測定用反射光が入力された時点の前後の第1の波長域及び第2の波長域の周回参照光である補正用参照光それぞれとを合波し、電気信号に変換された第1の波長域及び第2の粗測定用信号が信号処理部7に出力される。
補正用反射光と補正用参照光が周回数測定用光を構成する。
【0068】
信号処理部7は、第1の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、第1の波長域の周回参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、第1の波長域の測定用反射光と周回参照光との第1の波長域の光路長差を求め、第2の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、第2の波長域の周回参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、第2の波長域の測定用反射光と周回参照光との第2の波長域の光路長差を求める。
【0069】
信号処理部7は、第1の波長域の光路長差と第2の波長域の光路長差とのシフト量を求め、求めたシフト量と、テーブルとして記憶された周回数とシフト量の関係又は記憶された周回数とシフト量の線形関係により、得られたシフト量に対する周回数を得る。
信号処理部7は、精測定により求めた測定用反射光と周回参照光とによる距離と粗測定により得た周回数とにより、測定対象物8までの距離を求め、求めた距離を出力する。
【0070】
以上に述べたように、精測定においては、波長掃引光源1からの広い掃引範囲と同じ帯域の測定用反射光と周回参照光を用い、広い帯域すべて高速フーリエ変換に用いることで、
図7に示すようにピーク位置の変動がなく、距離測定に高い精度を維持できる。
粗測定において、粗測定に対して、掃引範囲より狭い範囲の帯域の測定用反射光と周回参照光を用いて高速フーリエ変換することにより、
図8に示すように、スペクトルの幅は広がるものの、シフト量の情報は正確に得られる。
【0071】
実施の形態1に係る光測定装置は、ループ部を有する周回光経路を備えたので、波長掃引光源1として測定レンジが狭い低コヒーレンス光源を用いても、測定レンジの拡大を図ることができる。
しかも、掃引光に基づき、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ複数の周回数測定用光を用いて得た電気信号からなる複数の粗測定用信号を出力する測定信号取得部5と、測定信号取得部5からの複数の粗測定用信号により、測定用反射光と周回参照光の光路長差を得た周回参照光の周回光経路4における周回数を同定する信号処理部7を備えたので、環境温度の変化の影響を受け難く、測定対象物までの距離を精度高く測定ができる。
【0072】
また、実施の形態1に係る光測定装置は、周回数を同定するための複数の粗測定用信号を、波長掃引光源1からの掃引光における掃引範囲を複数に分割した波長域に対応した波長域の測定用反射光と周回参照光により得たので、測定の時間分解能の低下と光測定装置としてのハードウェア構成の複雑さを増大させることない。
【0073】
実施の形態2.
実施の形態2に係る光測定装置を
図11から
図14を用いて説明する。
実施の形態2に係る光測定装置は、実施の形態1に係る光測定装置が、第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を得るための、光路に対して異なる屈折率の依存性を持つ第1の周回数測定用光及び第2の周回数測定用光を波長掃引光源1からの掃引光における掃引範囲を複数に分割した波長域に対応した波長域の測定用反射光と周回参照光により得ているのに対し、第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を測定用反射光と周回参照光それぞれを直交する二偏光に分離した補正用反射光と補正用参照光により得ている点が相違し、その他の点については同じ又は同様である。
図11から
図14中、
図1から
図10に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0074】
実施の形態2に係る光測定装置は、光の二偏光、つまり、偏波モードPの光と偏波モードPに直交する偏波モードSの光に対する光伝搬媒質の屈折率の偏光依存性、いわゆる複屈折を利用して第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を得、周回光経路の周回数を同定する。
【0075】
実施の形態2に係る光測定装置は、偏波モードPの光のビート周波数(光路長)と偏波モードSの光のビート周波数(光路長)との差分、いわゆるシフト量が周回光経路の周回数と複屈折に比例する点を利用して第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を得、得た第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を用いて参照用出力光における周回光経路の周回数を同定する。
なお、光路長は光伝搬媒質の長さと屈折率の積に比例し、ビート周波数は光路長に比例し、異なる複屈折を持つ光路長の差分は周回光経路の周回数に比例する。
【0076】
実施の形態2に係る光測定装置は、
図11に示すように、波長掃引光源1と光分配部2と照射光学系3と周回光経路4と測定信号取得部5と信号処理部7とを備える。
測定信号取得部5は、
図12に示す粗測定用信号取得部9を備える。
【0077】
以下に、実施の形態2に係る光測定装置について、実施の形態1に係る光測定装置における測定信号取得部5、特に、粗測定用信号取得部9を中心に説明する。
実施の形態1に係る光測定装置と同じ構成である、波長掃引光源1と光分配部2と照射光学系3と周回光経路については極力説明を省略する。
なお、測定光経路と参照光経路に用いられる光ファイバは偏光保持光ファイバを用いるのが好ましい。偏光保持光ファイバを用いることにより、複屈折が偏光保持光ファイバの全長に亘って時間的及び空間的に安定する。
【0078】
測定信号取得部5は、照射光学系3からの測定用反射光と周回光経路4からの周回参照光とを合波し、合波された干渉光を光電変換した精測定用信号を出力する。
粗測定用信号取得部9は、
図12に示すように、反射光用ビームスプリッタ91と参照光用ビームスプリッタ92とP波用合波部93とS波用合波部94とP波用バランス検出器95とS波用バランス検出器96とを備える。
測定信号取得部5は、一般に光情報通信の分野の受信機に用いられる光集積デバイスである集積コヒーレント受信器(ICR:Integrated Coherent Receiver)を用いる。
【0079】
反射光用ビームスプリッタ91は、照射光学系3からの測定用反射光を偏波モードP(以下、P波という)の測定用反射光であるP波の補正用反射光と偏波モードS(以下、S波という)の測定用反射光であるS波の補正用反射光に分割する。
参照光用ビームスプリッタ92は、周回光経路4からの周回参照光をP波の周回参照光であるP波の補正用参照光とS波の周回参照光であるP波の補正用参照光に分割する。
【0080】
P波用合波部93は、反射光用ビームスプリッタ91からのP波の測定用反射光と参照光用ビームスプリッタ92からのP波の周回参照光とを合波し、合波された合波光、つまり、ビート周波数を有するP波の干渉光として出力する。
S波用合波部94は、反射光用ビームスプリッタ91からのS波の測定用反射光と参照光用ビームスプリッタ92からのS波の周回参照光とを合波し、合波された合波光、つまり、ビート周波数を有するS波の干渉光として出力する。
【0081】
P波用バランス検出器95は、P波用合波部93からのP波の干渉光を電気信号に変換し、第1の測定用信号(P波)を出力する。
S波用バランス検出器96は、S波用合波部94からのS波の干渉光を電気信号に変換し、第2の測定用信号(S波)を出力する。
P波用バランス検出器95とS波用バランス検出器96はバランスフォトダイオード(BPD)により構成され、P波の干渉光とS波の干渉光を電気信号に変換する。
【0082】
P波の周回参照光による光路長(ビート周波数)及びS波の周回参照光による光路長(ビート周波数)を
図13に示す。
図13において、縦軸が周回光経路の周回数、横軸が光路長(ビート周波数)を示し、実線が測定用反射光による光路長を、破線がP波の周回参照光による光路長を、一点鎖線がS波の周回参照光による光路長を示す。
【0083】
また、
図13において、周回数がk回目と(k+1)回目との間に測定用反射光が受信していることを示し、
図13はk回目の周回参照光と測定用反射光とのビート周波数fb1が(k+1)回目の周回参照光と測定用反射光とのビート周波数fb2より大きい場合についての図である。
【0084】
P波の周回参照光による光路長はS波の周回参照光による光路長より短くなる。
P波の周回参照光による光路長とS波の周回参照光による光路長はループ部42を1回周回する毎に長くなり、P波の周回参照光による光路長の周回数に対する傾きはS波の周回参照光による光路長の周回数に対する傾きが大きい。
従って、周回毎のP波の周回参照光による光路長とS波の周回参照光による光路長の差分、つまりシフト量は周回数に対して比例する。
【0085】
第1(P波)の測定用信号及び第2(S波)の測定用信号それぞれについて、信号処理部7により高速フーリエ変換して得たスペクトルを
図14に示す。
図14において、P波の周回参照光によるスペクトルfbPを濃い墨の山形で示し、S波の周回参照光によるスペクトルfbSを薄墨の山形で示し、
図14はビート周波数fb1がビート周波数fb2より大きい場合についての図である。
図14において、横軸を周回数、つまり測定された距離、縦軸をスペクトルの強度を示す。
【0086】
図14において、図示左側に位置するスペクトルfbP1とスペクトルfbS1が周回数0の場合のスペクトルを示し、スペクトルfbP1のピーク位置とスペクトルfbS1のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数0の場合の光路長差の差分を示す。
また、
図14図示右側に位置するスペクトルfbP2とスペクトルfbS2が周回数Nの場合のスペクトルを示し、スペクトルfbP2のピーク位置とスペクトルfbS2のピーク位置の間隔がシフト量、言い換えれば、周回数Nの場合の光路長差の差分を示す。
従って、シフト量が周回数に比例するため、シフト量を知ることにより、測定用反射光を受信したタイミング、言い換えれば、周回数を決定できる。
【0087】
図13及び
図14から明らかなように、複屈折は測定光経路及び参照光経路における光伝搬媒質で決まり、シフト量が周回数に比例するため、事前にシフト量と周回数の関係を取得し、周回数とシフト量の関係をテーブルにより記憶しておく。
【0088】
次に、実施の形態2に係る光測定装置における精測定と粗測定の動作を説明する。
まず、精測定の動作を説明する。
測定信号取得部5に測定用反射光が入力されると、測定信号取得部5からは、入力された測定用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光とを合波し、電気信号に変換された精測定用信号が信号処理部7に出力される。
信号処理部7は精測定用信号を高速フーリエ変換し、掃引光の掃引範囲の波長域における測定用反射光と周回参照光の干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、測定用反射光と周回参照光との光路長差を求め、測定用反射光と周回参照光とによる距離を求める。
【0089】
一方、粗測定では、測定信号取得部5に測定用反射光が入力されると、測定信号取得部5における粗測定用信号取得部9により、入力された測定用反射光におけるP波の測定用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光におけるP波の周回参照光とを合波し、電気信号に変換された第1の粗測定用信号が信号処理部7に出力される。
また、測定信号取得部5からは、入力された測定用反射光におけるS波の測定用反射光と測定用反射光が入力された時点の前後の周回参照光におけるS波の周回参照光とを合波し、電気信号に変換された第2の粗測定用信号が信号処理部7に出力される。
【0090】
信号処理部7は、第1の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、P波の周回参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、P波の測定用反射光とP波の周回参照光とのP波の光路長差を求め、第2の粗測定用信号を高速フーリエ変換し、S波の周回参照光による干渉光におけるスペクトルのピーク位置に基づいた、S波の測定用反射光とS波の周回参照光とのS波の光路長差を求める。
信号処理部7は、P波の光路長差とS波の光路長差とのシフト量を求め、求めたシフト量と、テーブルとして記憶された周回数とシフト量の関係により、得られたシフト量に対する周回数を得る。
信号処理部7は、精測定により求めた測定用反射光と周回参照光とによる距離と粗測定により得た周回数とにより、測定対象物8までの距離を求め、求めた距離を出力する。
【0091】
以上に述べたように、精測定においては、波長掃引光源1からの広い掃引範囲と同じ帯域の測定用反射光と周回参照光を用い、広い帯域すべて高速フーリエ変換に用いることでピーク位置の変動がなく、距離測定に高い精度を維持できる。
粗測定において、粗測定に対して、P波の測定用反射光及びP波の周回参照光とS波の測定用反射光及びS波の周回参照光を用い、P波による第1の粗測定用信号及びS波による第2の粗測定用信号を高速フーリエ変換することにより、シフト量の情報は正確に得られる。
【0092】
実施の形態2に係る光測定装置は、ループ部を有する周回光経路を備えたので、波長掃引光源1として測定レンジが狭い低コヒーレンス光源を用いても、測定レンジの拡大を図ることができる。
しかも、光路に対して異なる屈折率の依存性である光の二偏光、つまり、偏波モードPの光と偏波モードSの光に対する光伝搬媒質の屈折率の偏光依存性、いわゆる複屈折を利用し、P波の周回参照光及びS波の周回参照光それぞれにより電気信号からなるP波による第1の粗測定用信号及びS波による第2の粗測定用信号それぞれを出力する測定信号取得部5と、測定信号取得部5からのP波の粗測定用信号及びS波の粗測定用信号により、測定用反射光と周回参照光の光路長差を得た周回参照光の周回光経路4における周回数を同定する信号処理部7を備えたので、環境温度の変化の影響を受け難く、測定対象物までの距離を精度高く測定ができる。
【0093】
また、実施の形態2に係る光測定装置は、周回数を同定するための第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を測定用反射光及び周回参照光差それぞれにおけるP波及びS波により得たので、測定の時間分解能の低下と光測定装置としてのハードウェア構成の複雑さを増大させることはない。
【0094】
実施の形態3.
実施の形態3に係る光測定装置を
図15を用いて説明する。
実施の形態3に係る光測定装置は、実施の形態1に係る光測定装置に対して共通光路干渉系を用いた点が相違し、その他の点については同じ又は同様である。
図15中、
図1から
図10に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0095】
実施の形態1に係る光測定装置は、測定用出力光が光分配部2から照射光学系3を通過して測定対象物8に向かって測定光として出射され、出射された測定光が測定対象物8から反射されて照射光学系3を通過して測定用反射光として測定信号取得部5に至る測定光経路に用いる光ファイバと、参照用出力光が光分配部2から周回光経路4を介して周回参照光として測定信号取得部5に至る参照光経路に用いる光ファイバを異なるものとしている。
【0096】
これに対して、実施の形態3に係る光測定装置は、共通光路干渉系を用い、測定光経路と参照光経路を共通の光ファイバとしている。
なお、
図15において、測定用反射光と周回参照光を別々に示しているが、説明の都合上、別々に記載しているのであり、共通の光ファイバである。
【0097】
実施の形態3に係る光測定装置は、
図15に示すように、実施の形態1に係る光測定装置と同様に、波長掃引光源1と光分配部2と照射光学系3と周回光経路4と測定位置補正用信号生成部6を有する測定信号取得部5と信号処理部7とを備える。
実施の形態3に係る光測定装置は、上記で述べたように、実施の形態1に係る光測定装置に対して共通光路干渉系を用いた点が相違するので、測定光経路と参照光経路を中心に説明する。
【0098】
測定光経路について説明する。
波長掃引光源1からの掃引光が光分配部2により分配された掃引出力光は共通の光ファイバを介して周回光経路4のカプラ41に入力される。カプラ41に入力された掃引出力光はそのまま測定用出力光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
照射光学系3に入力された測定用出力光は、測定対象物8に向けて空間に測定光として出射される。測定対象物8が測定光を反射した反射光を照射光学系3が受け、照射光学系3から共通の光ファイバを介して測定用反射光として測定信号取得部5へ出力する。
【0099】
参照光経路について説明する。
波長掃引光源1からの掃引光が光分配部2により分配された掃引出力光は共通の光ファイバを介して周回光経路4のカプラ41に入力される。カプラ41に入力された掃引出力光はそのまま0回周回した周回参照光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
【0100】
また、カプラ41に入力された掃引出力光はループ部42を周回し、ループ部42を1回からN回周回させる毎の周回参照光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
周回光経路4からの0回からN回の周回毎の周回参照光は照射光学系3を介して共通の光ファイバを介して測定信号取得部5へ出力される。
【0101】
光分配部2からの掃引出力光が、以上のような共通光路干渉系を介して、測定用反射光及び周回参照光として測定信号取得部5に入力される。
測定信号取得部5は、入力された測定用反射光と周回参照光により、実施の形態1における測定信号取得部5と同様に動作して、精測定用信号と第1(第1の波長域)の粗測定用信号及び第2(第2の波長域)の粗測定用信号を出力する。
【0102】
測定信号取得部5からの精測定用信号を受けた信号処理部7は、実施の形態1における信号処理部7と同様に精測定の動作を実施し、測定反射光と周回参照光とによる距離を求める。
測定信号取得部5からの第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を受けた信号処理部7は、実施の形態1における信号処理部7と同様に粗測定の動作を実施し、周回数を得る。
信号処理部7は、精測定により求めた測定反射光と周回参照光とによる距離と粗測定により得た周回数とにより、測定対象物8までの距離を求め、求めた距離を出力する。
【0103】
実施の形態3に係る光測定装置は実施の形態1に係る光測定装置と同様の効果を有す他、測定光経路と参照光経路を共通光路干渉系により構成しているので、測定対象物8までの距離の測定に対して共通の光ファイバの温度変動による影響を抑制できる。
【0104】
実施の形態4.
実施の形態4に係る光測定装置を
図16を用いて説明する。
実施の形態4に係る光測定装置は、実施の形態2に係る光測定装置に対して共通光路干渉系を用いた点が相違し、その他の点については同じ又は同様である。
図16中、
図11に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0105】
実施の形態2に係る光測定装置は、測定用出力光が光分配部2から照射光学系3を通過して測定対象物8に向かって測定光として出射され、出射された測定光が測定対象物8から反射されて照射光学系3を通過して測定用反射光として測定信号取得部5に至る測定光経路に用いる光ファイバと、参照用出力光が光分配部2から周回光経路4を介して周回参照光として測定信号取得部5に至る参照光経路に用いる光ファイバを異なるものとしている。
【0106】
これに対して、実施の形態4に係る光測定装置は、共通光路干渉系を用い、測定光経路と参照光経路を共通の光ファイバとしている。
なお、
図16において、測定用反射光と周回参照光を別々に示しているが、説明の都合上、別々に記載しているのであり、共通の光ファイバである。
【0107】
実施の形態4に係る光測定装置は、
図16に示すように、実施の形態2に係る光測定装置と同様に、波長掃引光源1と照射光学系3と周回光経路4と粗測定用信号取得部9を有する測定信号取得部5と信号処理部7とを備える。
実施の形態4に係る光測定装置は、上記で述べたように、実施の形態2に係る光測定装置に対して共通光路干渉系を用いた点が相違するので、測定光経路と参照光経路を中心に説明する。
【0108】
測定光経路について説明する。
波長掃引光源1からの掃引光は共通の光ファイバを介して周回光経路4のカプラ41に入力される。カプラ41に入力された掃引光はそのまま測定用出力光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
照射光学系3に入力された測定用出力光は、測定対象物8に向けて空間に測定光として出射される。測定対象物8が測定光を反射した反射光を照射光学系3が受け、照射光学系3から共通の光ファイバを介して測定用反射光として測定信号取得部5へ出力する。
【0109】
参照光経路について説明する。
波長掃引光源1からの掃引光は共通の光ファイバを介して周回光経路4のカプラ41に入力される。カプラ41に入力された掃引光はそのまま0回周回した周回参照光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
また、カプラ41に入力された掃引光はループ部42を周回し、ループ部42を1回からN回周回させる毎の周回参照光として共通の光ファイバを介して照射光学系3に入力される。
周回光経路4からの0回からN回の周回毎の周回参照光は照射光学系3を介して共通の光ファイバを介して測定信号取得部5へ出力される。
【0110】
波長掃引光源1からの掃引光が、以上のような共通光路干渉系を介して、測定用反射光及び周回参照光として測定信号取得部5に入力される。
測定信号取得部5は、入力された測定用反射光と周回参照光により、実施の形態2における測定信号取得部5と同様に動作して、精測定用信号と第1(P波)の粗測定用信号及び第2(S波)の粗測定用信号を出力する。
【0111】
測定信号取得部5からの精測定用信号を受けた信号処理部7は、実施の形態2における信号処理部7と同様に精測定の動作を実施し、測定反射光と周回参照光とによる距離を求める。
測定信号取得部5からの第1の粗測定用信号及び第2の粗測定用信号を信号処理部7は、実施の形態2における信号処理部7と同様に粗測定の動作を実施し、周回数を得る。
信号処理部7は、精測定により求めた測定反射光と周回参照光とによる距離と粗測定により得た周回数とにより、測定対象物8までの距離を求め、求めた距離を出力する。
【0112】
実施の形態4に係る光測定装置は実施の形態2に係る光測定装置と同様の効果を有す他、測定光経路と参照光経路を共通光路干渉系により構成しているので、測定対象物8までの距離の測定に対して共通の光ファイバの温度変動による影響を抑制できる。
【0113】
なお、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係る光測定装置は、加工装置及び半導体検査装置において、測定対象物までの距離を測定する光測定装置に好適である。
【符号の説明】
【0115】
1 波長掃引光源、2 光分配部、3 照射光学系、4 周回光経路、5 測定信号取得部、6 測定位置補正用信号生成部、7 信号処理部、8 測定対象物、9 粗測定用信号取得部。