IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7584720波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法
<>
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図1
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図2
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図3
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図4
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図5
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図6
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図7
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図8
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図9
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図10
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図11
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図12
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図13
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図14
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図15
  • 特許-波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/20 20060101AFI20241108BHJP
   G01S 3/46 20060101ALI20241108BHJP
   H04B 17/27 20150101ALN20241108BHJP
【FI】
G01S3/20
G01S3/46
H04B17/27
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024551519
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2022044645
(87)【国際公開番号】W WO2024121875
(87)【国際公開日】2024-06-13
【審査請求日】2024-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 善樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 龍平
(72)【発明者】
【氏名】影目 聡
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-012033(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050246(WO,A1)
【文献】特開2003-139849(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180831(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174172(WO,A1)
【文献】特開2003-057325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00 - 5/30
H04B 17/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波源からの電波である直接波及び前記波源からの電波である1つ以上のマルチパス波のうち、1つ以上の電波を受信するアンテナから、前記1つ以上の電波の受信信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部により取得された受信信号に基づいて、前記アンテナに対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出するプロファイル算出部と、
前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに基づいて、前記波源が存在している方向を推定する方向推定部と
を備え
前記方向推定部は、
前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに対応する分布関数として、前記角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する分布関数算出部と、
前記波源が存在している方向として、前記分布関数算出部により算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する方向推定処理部とを備えていることを特徴とする波源存在方向推定装置。
【請求項2】
前記分布関数算出部は、
前記分布関数から、前記アンテナに対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布を算出し、
前記方向推定処理部は、
前記波源が存在している方向として、前記分布関数算出部により算出された確率分布において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定することを特徴とする請求項記載の波源存在方向推定装置。
【請求項3】
前記分布関数算出部は、
前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の受信電力を互いに異なる複数の電力のそれぞれで規格化することで、前記角度プロファイルから、複数の規格化後の角度プロファイルを算出し、それぞれの規格化後の角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出し、それぞれの分布関数から、前記アンテナに対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布を算出し、
前記方向推定処理部は、
前記分布関数算出部により算出されたそれぞれの確率分布において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定し、前記波源が存在している方向として、特定した複数の入射方向の中のいずれかを選択することを特徴とする請求項記載の波源存在方向推定装置。
【請求項4】
前記アンテナによるそれぞれの電波の受信時刻に基づいて、前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに含まれている、一部の電波の入射方向と受信電力とを除去する除去処理を行うプロファイル除去部を備え、
前記方向推定部は、
前記プロファイル除去部による除去処理後の角度プロファイルに基づいて、前記波源が存在している方向を推定することを特徴とする請求項1記載の波源存在方向推定装置。
【請求項5】
電波を放射している波源が複数存在しており、
前記信号取得部により取得された受信信号を、それぞれの波源からの電波の受信信号に分離し、分離後のそれぞれの受信信号を出力する混信分離処理部を備え、
前記プロファイル算出部は、
前記混信分離処理部から出力されたそれぞれの受信信号に基づいて、前記アンテナに対する、それぞれの波源からのそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出し、
前記方向推定部は、
前記プロファイル算出部により算出された、それぞれの波源からの角度プロファイルに基づいて、それぞれの波源が存在している方向を推定することを特徴とする請求項1記載の波源存在方向推定装置。
【請求項6】
信号取得部が、波源からの電波である直接波及び前記波源からの電波である1つ以上のマルチパス波のうち、1つ以上の電波を受信するアンテナから、前記1つ以上の電波の受信信号を取得し、
プロファイル算出部が、前記信号取得部により取得された受信信号に基づいて、前記アンテナに対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出し、
方向推定部が、前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに基づいて、前記波源が存在している方向を推定する
波源存在方向推定方法であって、
前記方向推定部の分布関数算出部は、前記プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに対応する分布関数として、前記角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出し、
前記方向推定部の方向推定処理部は、前記波源が存在している方向として、前記分布関数算出部により算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定することを特徴とする波源存在方向推定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を放射する波源の周囲に構造物が存在しているために、波源から放射された電波が構造物に反射される環境下でも、波源が存在している方向の推定が可能な波源存在方向推定装置がある。
このような波源存在方向推定装置として、非特許文献1には、波源からの電波である直接波及び波源からの電波であるマルチパス波の双方を受信するアンテナを搭載しているN個の無人飛行機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を備える方向推定システムが開示されている。Nは、2以上の整数である。
それぞれのUAVは、アンテナから出力された電波の受信信号に基づいて、波源が存在している方向を推定する。ただし、UAVにより推定された方向は、マルチパス波の影響によって、波源が存在している方向と異なることがある。当該方向推定システムは、方向の推定精度を高めるために、N個のUAVにより推定された方向に基づいて、波源が存在している方向を更に推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】村田真一、松田崇弘、西森健太郎著、「NLOS環境における複数UAVを用いた単一波源位置の最ゆう推定手法」、2022年3月 電子情報通信学会、信学論B Vol.J105-B No.3 p.220-239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されている方向推定システムは、波源が存在している方向を推定するために、アンテナを搭載しているUAVをN個備えていなければならないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、1つのアンテナの受信信号から、波源が存在している方向を推定することができる波源存在方向推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る波源存在方向推定装置は、波源からの電波である直接波及び波源からの電波である1つ以上のマルチパス波のうち、1つ以上の電波を受信するアンテナから、1つ以上の電波の受信信号を取得する信号取得部と、信号取得部により取得された受信信号に基づいて、アンテナに対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出するプロファイル算出部とを備えている。また、波源存在方向推定装置は、プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに基づいて、波源が存在している方向を推定する方向推定部を備えている。
方向推定部は、プロファイル算出部により算出された角度プロファイルに対応する分布関数として、角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する分布関数算出部と、波源が存在している方向として、分布関数算出部により算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する方向推定処理部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、1つのアンテナの受信信号から、波源が存在している方向を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】存在方向の推定対象である波源1と構造物2と波源存在方向推定装置3との位置関係を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。
図3】実施の形態1に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図4】波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図5】波源存在方向推定装置3の処理手順である波源存在方向推定方法を示すフローチャートである。
図6】角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)(またはa(θ,μ,κ))との差が大きいときの分布関数f(φ)と、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)(またはa(θ,μ,κ))との差が最小のときの分布関数f(φ)とを示す説明図である。
図7】角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)とを示す説明図である。
図8】実施の形態2に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。
図9】実施の形態2に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図10】角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ )とを示す説明図である。
図11】実施の形態3に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。
図12】実施の形態3に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図13】直接波の伝搬経路とマルチパス波の伝搬経路とを示す説明図である。
図14】2つのマルチパス波の伝搬経路を示す説明図である。
図15】実施の形態4に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。
図16】実施の形態4に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、存在方向の推定対象である波源1と構造物2と波源存在方向推定装置3との位置関係を示す説明図である。
図1において、波源1は、電波の放射源であり、波源存在方向推定装置3による存在方向の推定対象である。
構造物2は、波源1から放射された電波を反射させる物体である。構造物2としては、例えば、ビル、又は、壁がある。
波源存在方向推定装置3は、波源1が存在している方向を推定する装置である。
【0011】
図2は、実施の形態1に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。図2に示す波源存在方向推定装置3では、構造物2の記載が省略されている。
図3は、実施の形態1に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
アンテナ11は、例えば、複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナである。
アンテナ11は、波源1からの電波である直接波及び波源1からの電波である1つ以上のマルチパス波のうち、1つ以上の電波を受信する。
アンテナ11は、1つ以上の電波の受信信号を受信機12に出力する。
波源1からの直接波は、波源1から放射されたのち、構造物2によって反射されることなく、アンテナ11に到達した電波である。波源1からのマルチパス波は、波源1から放射されたのち、構造物2によって反射され、その後、アンテナ11に到達した電波である。マルチパス波は、図1に示すように、1つに限るものではなく、複数存在することがある。
受信機12は、アンテナ11から出力された受信信号を復調し、復調後の受信信号をアナログ信号からデジタル信号(以下「受信データ」と称する)に変換する。
受信機12は、受信データを波源存在方向推定装置3に出力する。
【0012】
波源存在方向推定装置3は、信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部23を備えている。
信号取得部21は、例えば、図3に示す信号取得回路31によって実現される。
信号取得部21は、アンテナ11からの受信信号として、受信機12から、受信データを取得する。
信号取得部21は、受信データをプロファイル算出部22に出力する。
【0013】
プロファイル算出部22は、例えば、図3に示すプロファイル算出回路32によって実現される。
プロファイル算出部22は、信号取得部21から、受信データを取得する。
プロファイル算出部22は、受信データに基づいて、アンテナ11に対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出する。
例えば、アンテナ11の正面方向を示す角度が0度であるとき、正面方向から時計回りの方向にθの角度だけ傾いている方向から、電波がアンテナ11に入射されたとすれば、電波の入射方向は、+θであるとする。また、正面方向から反時計回りの方向にθの角度だけ傾いている方向から、電波がアンテナ11に入射されたとすれば、電波の入射方向は、-θであるとする。
プロファイル算出部22は、角度プロファイルを方向推定部23に出力する。
【0014】
方向推定部23は、例えば、図3に示す方向推定回路33によって実現される。
方向推定部23は、分布関数算出部23a及び方向推定処理部23bを備えている。
方向推定部23は、プロファイル算出部22から、角度プロファイルを取得する。
方向推定部23は、角度プロファイルに基づいて、波源1が存在している方向を推定する。
方向推定部23は、波源1が存在している方向の推定結果を例えば外部の装置に出力する。
【0015】
分布関数算出部23aは、プロファイル算出部22から、角度プロファイルを取得する。
分布関数算出部23aは、角度プロファイルに対応する分布関数として、角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する。
方向推定処理部23bは、波源1が存在している方向として、分布関数算出部23aにより算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する。
【0016】
図2では、波源存在方向推定装置3の構成要素である信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部23のそれぞれが、図3に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、波源存在方向推定装置3が、信号取得回路31、プロファイル算出回路32及び方向推定回路33によって実現されるものを想定している。
信号取得回路31、プロファイル算出回路32及び方向推定回路33のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0017】
波源存在方向推定装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0018】
図4は、波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部23におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ41に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
【0019】
また、図3では、波源存在方向推定装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、波源存在方向推定装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、波源存在方向推定装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0020】
次に、図2に示す波源存在方向推定装置3の動作について説明する。
図5は、波源存在方向推定装置3の処理手順である波源存在方向推定方法を示すフローチャートである。
波源1から放射された電波は、構造物2によって反射されることなく、直接波としてアンテナ11に到達することがあるほか、構造物2によって反射されることで、マルチパス波としてアンテナ11に到達することがある。
アンテナ11は、波源1からの直接波が到来してくれば、直接波を受信し、波源1からのマルチパス波が到来してくれば、マルチパス波を受信する。アンテナ11により受信されるマルチパス波は、1つに限るものではなく、複数あることがある。
また、アンテナ11は、直接波とマルチパス波とが到来してくれば、直接波とマルチパス波とを受信する。
アンテナ11は、1つ以上の電波の受信信号を受信機12に出力する。
【0021】
受信機12は、アンテナ11から出力された受信信号を復調し、アナログ信号である復調後の受信信号を、デジタル信号である受信データに変換する。
受信機12は、受信データを波源存在方向推定装置3に出力する。
【0022】
波源存在方向推定装置3の信号取得部21は、受信機12から、受信データを取得する(図5のステップST1)。
信号取得部21は、受信データをプロファイル算出部22に出力する。
【0023】
プロファイル算出部22は、信号取得部21から、受信データを取得する。
プロファイル算出部22は、受信データに基づいて、アンテナ11に対するそれぞれの電波の入射方向θを推定する(図5のステップST2)。k=1,・・・,Kであり、Kは、1以上の整数である。
アンテナ11によって直接波が受信されていれば、プロファイル算出部22は、アンテナ11に対する直接波の入射方向を推定する。アンテナ11によって1つ以上のマルチパス波が受信されていれば、プロファイル算出部22は、アンテナ11に対するそれぞれのマルチパス波の入射方向を推定する。
プロファイル算出部22は、電波の入射方向θを推定するアルゴリズムとして、公知の方位推定アルゴリズムを用いることができる。公知の方位推定アルゴリズムとしては、例えば、ビームフォーマ法、Capon法、MUSIC法、又は、FISTA法がある。
【0024】
プロファイル算出部22は、それぞれの電波の受信電力Pとして、それぞれの電波の入射方向θの信号強度を特定する(図5のステップST3)。入射方向θの信号強度を特定する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
プロファイル算出部22は、以下の式(1)に示すように、それぞれの電波の入射方向θ(k=1,・・・,K)とそれぞれの電波の受信電力Pとを含む角度プロファイルφを方向推定部23に出力する。
φ=f(θ,・・・,θ,P,・・・,P) (1)
【0025】
方向推定部23の分布関数算出部23aは、プロファイル算出部22から、角度プロファイルφを取得する。
分布関数算出部23aは、アンテナ11によって受信された電波の数が1つであるため、角度プロファイルφに含まれている入射方向θの数が1つであれば(図5のステップST4:YESの場合)、角度プロファイルφに含まれている入射方向θが、波源1が存在している方向であると特定する(図5のステップST5)。
【0026】
分布関数算出部23aは、アンテナ11によって受信された電波の数が複数であるため、角度プロファイルφに含まれている入射方向θの数が複数であれば(図5のステップST4:NOの場合)、角度プロファイルφに対応する分布関数f(φ)として、角度プロファイルφに含まれている、それぞれの電波の入射方向θに対するそれぞれの電波の受信電力Pの分布を示す分布関数f(φ)を算出する(図5のステップST6)。
分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布としては、例えば、以下の式(2)に示す正規分布p(θ;μ,σ)、以下の式(3)に示すラプラス分布p(θ;μ,σ)、又は、以下の式(4)に示すvon Mises分布p(θ;μ,κ)を用いることができる。θ=θ,・・・,θである。
【0027】
式(2)~(4)において、μは、分布関数f(φ)の受信電力が極大値になるときの入射方向、σは、入射方向に対応する受信電力の分散、κは、入射方向に対応する受信電力の集中度である。
【0028】
分布関数算出部23aは、分布関数f(φ)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a(θ,μ,σ)又は確率分布a(θ,μ,κ)のいずれかを算出する。
分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が正規分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a(θ,μ,σ)は、以下の式(5)のように表される。
分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布がラプラス分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a(θ,μ,σ)は、以下の式(6)のように表される。
また、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布がvon Mises分布p(θ;μ,κ)であれば、確率分布a(θ,μ,κ)は、以下の式(7)のように表される。
ここでは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が正規分布p(θ;μ,σ)等に従うことを前提としている。構造物2の配置状況によっては、受信電力Pの分布が正規分布p(θ;μ,σ)等と厳密に一致するとは限らないものの、統計的には、受信電力Pの分布が正規分布p(θ;μ,σ)等と概ね一致する。受信電力Pの分布が正規分布p(θ;μ,σ)等と概ね一致していれば、以下に示すように、入射方向の特定が可能である。
【0029】
【0030】
方向推定処理部23bは、波源1が存在している方向として、分布関数算出部23aにより算出された確率分布a(θ,μ,σ)、又は、確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定する(図5のステップST7)。
以下、方向推定処理部23bによる存在方向の特定処理を具体的に説明する。
【0031】
方向推定処理部23bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、正規分布p(θ;μ,σ)、又は、ラプラス分布p(θ;μ,σ)である場合、以下の式(8)に示すように、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)との差が最小になる、μとσとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部23bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、von Mises分布p(θ;μ,κ)である場合、以下の式(9)に示すように、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,κ)との差が最小になる、μとκとの組み合わせを探索する。
【0032】
【0033】
図6は、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)(またはa(θ,μ,κ))との差が大きいときの分布関数f(φ)と、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)(またはa(θ,μ,κ))との差が最小のときの分布関数f(φ)とを示す説明図である。
図6において、横軸は、電波の入射方向を示す角度、縦軸は、電波の受信電力である。
〇は、それぞれの電波の入射方向を示す角度と受信電力とを示している。
【0034】
図7は、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)とを示す説明図である。
図7に示す確率分布a(θ,μ,σ)の横軸は、入射方向の標準偏差を示し、確率分布a(θ,μ,σ)の縦軸は、確率を示している。
θは、存在確率の極大値になるときの入射方向μよりも2だけ標準偏差が低い入射方向であることを表している。θは、入射方向μよりも0.7だけ標準偏差が低い入射方向であることを表している。
θは、入射方向μよりも0.6だけ標準偏差が高い入射方向であることを表している。θは、入射方向μよりも2だけ標準偏差が高い入射方向であることを表している。
【0035】
方向推定処理部23bは、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)との差が最小になる、μとσとの組み合わせを探索すれば、波源1が存在している方向として、μとσとの組み合わせに係る確率分布a(θ,μ,σ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向θを特定する。極大値に対応する入射方向θは、μである。
方向推定処理部23bは、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,κ)との差が最小になる、μとκとの組み合わせを探索すれば、波源1が存在している方向として、μとκとの組み合わせに係る確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向θを特定する。極大値に対応する入射方向θは、μである。ここでは、波源1が存在している方向が、極大値に対応する入射方向θであるとしている。波源1が存在している方向は、厳密に極大値に対応する入射方向θであるものに限るものではなく、実用上問題のない範囲で、波源1が存在している方向が、極大値よりも小さい値に対応する入射方向θであるとしてもよい。
方向推定処理部23bは、波源1が存在している方向の推定結果として、極大値に対応する入射方向μ、又は、分布関数算出部23aにより特定された方向である入射方向θを例えば外部の装置に出力する。
【0036】
以上の実施の形態1では、波源1からの電波である直接波及び波源1からの電波である1つ以上のマルチパス波のうち、1つ以上の電波を受信するアンテナ11から、1つ以上の電波の受信信号を取得する信号取得部21と、信号取得部21により取得された受信信号に基づいて、アンテナ11に対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出するプロファイル算出部22とを備えるように、波源存在方向推定装置3を構成した。また、波源存在方向推定装置3は、プロファイル算出部22により算出された角度プロファイルに基づいて、波源1が存在している方向を推定する方向推定部23を備えている。したがって、波源存在方向推定装置3は、1つのアンテナ11の受信信号から、波源1が存在している方向を推定することができる。
【0037】
図2に示す波源存在方向推定装置3では、方向推定処理部23bが、波源1が存在している方向として、分布関数算出部23aにより算出された確率分布a(θ,μ,σ)、又は、確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向μを特定している。
しかし、これは一例に過ぎず、分布関数算出部23aが、以下の式(10)に示すように、入射方向μを電波のビーム幅θBWで規格化し、波源1が存在している方向の推定結果として、規格化後の角度μ’を例えば外部の装置に出力するようにしてもよい。
μ’=δθBWμ (10)
式(10)において、δは、ビーム幅θBWを基準とする規格化定数である。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態2では、方向推定部24が、プロファイル算出部22により算出された角度プロファイルφに含まれている、それぞれの電波の受信電力を互いに異なるM個の電力G~Gのそれぞれで規格化することで、角度プロファイルφから、M個の規格化後の角度プロファイルφ~φを算出する波源存在方向推定装置3について説明する。Mは2以上の整数である。
【0039】
図8は、実施の形態2に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。図8において、図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図9は、実施の形態2に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図9において、図3と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図8に示す波源存在方向推定装置3は、信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部24を備えている。
【0040】
方向推定部24は、例えば、図9に示す方向推定回路34によって実現される。
方向推定部24は、分布関数算出部24a及び方向推定処理部24bを備えている。
方向推定部24は、プロファイル算出部22から、角度プロファイルφを取得する。
方向推定部24は、角度プロファイルφに基づいて、波源1が存在している方向を推定する。
方向推定部24は、波源1が存在している方向の推定結果を例えば外部の装置に出力する。
【0041】
分布関数算出部24aは、プロファイル算出部22から、角度プロファイルφを取得する。
分布関数算出部24aは、角度プロファイルφに含まれている、それぞれの電波の受信電力を互いに異なるM個の電力G~Gのそれぞれで規格化することで、角度プロファイルφから、M個の規格化後の角度プロファイルφ~φを算出する。
分布関数算出部24aは、規格化後の角度プロファイルφに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数f(φ)を算出する。m=1,・・・,Mである。
分布関数算出部24aは、分布関数f(φ)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)を算出する。
【0042】
方向推定処理部24bは、分布関数算出部24aにより算出された確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向θを特定する。
方向推定処理部24bは、波源が存在している方向として、特定したM個の入射方向θ~θの中のいずれかを選択する。
【0043】
図8では、波源存在方向推定装置3の構成要素である信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部24のそれぞれが、図9に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、波源存在方向推定装置3が、信号取得回路31、プロファイル算出回路32及び方向推定回路34によって実現されるものを想定している。
信号取得回路31、プロファイル算出回路32及び方向推定回路34のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0044】
波源存在方向推定装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、プロファイル算出部22及び方向推定部24におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図4に示すメモリ41に格納される。そして、図4に示すプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
【0045】
また、図9では、波源存在方向推定装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、波源存在方向推定装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、波源存在方向推定装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0046】
次に、図8に示す波源存在方向推定装置3の動作について説明する。ただし、方向推定部24以外は、図2に示す波源存在方向推定装置3と同様であるため、ここでは、方向推定部24の動作のみを説明する。
【0047】
分布関数算出部24aは、プロファイル算出部22から、角度プロファイルφを取得する。
分布関数算出部24aは、図2に示す分布関数算出部23aと同様に、角度プロファイルφに対応する分布関数f(φ)として、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する。
分布関数算出部24aは、以下の式(11)に示すように、角度プロファイルφに含まれている、それぞれの電波の受信電力を互いに異なるM個の電力G~Gのそれぞれで規格化することで、角度プロファイルφから、M個の規格化後の角度プロファイルφ~φを算出する。
【0048】
式(12)において、αは、ステップ幅であり、分布関数算出部24aにおいて既値である。
【0049】
分布関数算出部24aは、規格化後の角度プロファイルφ(m=1,・・・,M)に含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数f(φ)を算出する。
分布関数算出部24aは、図10に示すように、分布関数f(φ)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)を算出する。分布関数算出部24aによる確率分布の算出処理自体は、分布関数算出部23aによる確率分布の算出処理と同様である。
分布関数算出部24aは、確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)を方向推定処理部24bに出力する。
【0050】
図10は、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ )とを示す説明図である。
図10に示す確率分布a(θ,μ,σ )の横軸は、入射方向の標準偏差を示し、確率分布a(θ,μ,σ )の縦軸は、確率を示している。
θm,1は、存在確率の極大値になるときの入射方向μよりも2だけ標準偏差が低い入射方向であることを表している。θm,2は、入射方向μよりも0.5だけ標準偏差が低い入射方向であることを表している。
θm,3は、入射方向μよりも0.7だけ標準偏差が高い入射方向であることを表している。θm,4は、入射方向μよりも2.1だけ標準偏差が高い入射方向であることを表している。
【0051】
方向推定処理部24bは、分布関数算出部24aから、確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)を取得する。
方向推定処理部24bは、確率分布a(θ,μ,σ )、又は、確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向θを特定する。
方向推定処理部24bは、波源が存在している方向として、M個の入射方向θ~θの中のいずれかを選択する。
具体的には、方向推定処理部24bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、正規分布p(θ;μ,σ)、又は、ラプラス分布p(θ;μ,σ)である場合、以下の式(13)に示すように、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,σ)との差が最小になる、μとσとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部24bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、von Mises分布p(θ;μ,κ)である場合、以下の式(14)に示すように、角度プロファイルφと確率分布a(θ,μ,κ)との差が最小になる、μとκとの組み合わせを探索する。
【0052】
【0053】
方向推定処理部24bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、正規分布p(θ;μ,σ)、又は、ラプラス分布p(θ;μ,σ)である場合、M個のμ~μの中から、式(13)が最小になるμを選択する。
方向推定処理部24bは、分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布が、von Mises分布p(θ;μ,κ)である場合、M個のμ~μの中から、式(14)が最小になるμを選択する。
方向推定処理部24bは、波源1が存在している方向の推定結果として、選択したμを例えば外部の装置に出力する。
【0054】
以上の実施の形態2では、分布関数算出部24aが、プロファイル算出部22により算出された角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の受信電力を互いに異なる複数の電力のそれぞれで規格化することで、角度プロファイルから、複数の規格化後の角度プロファイルを算出する。そして、分布関数算出部24aが、それぞれの規格化後の角度プロファイルに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出し、それぞれの分布関数から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布を算出する。方向推定処理部24bが、分布関数算出部24aにより算出されたそれぞれの確率分布において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定し、波源1が存在している方向として、特定した複数の入射方向の中のいずれかを選択するように、図8に示す波源存在方向推定装置3を構成した。したがって、図8に示す波源存在方向推定装置3は、図2に示す波源存在方向推定装置3と同様に、1つのアンテナ11の受信信号から、波源1が存在している方向を推定することができるほか、図2に示す波源存在方向推定装置3よりも波源1が存在している方向の推定精度を高めることができる。
【0055】
実施の形態3.
実施の形態3では、プロファイル除去部25を備える波源存在方向推定装置3について説明する。
【0056】
図11は、実施の形態3に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。図11において、図2及び図8と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図12は、実施の形態3に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図12において、図3及び図9と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図11に示す波源存在方向推定装置3は、信号取得部21、プロファイル算出部22、プロファイル除去部25及び方向推定部26を備えている。
【0057】
プロファイル除去部25は、例えば、図12に示すプロファイル除去回路35によって実現される。
プロファイル除去部25は、アンテナ11によるそれぞれの電波の受信時刻に基づいて、プロファイル算出部22により算出された角度プロファイルφに含まれている、一部の電波の入射方向と受信電力とを除去する除去処理を行う。
プロファイル除去部25は、除去処理後の角度プロファイルφ’を方向推定部26に出力する。
【0058】
方向推定部26は、例えば、図3に示す方向推定回路36によって実現される。
方向推定部26は、分布関数算出部26a及び方向推定処理部26bを備えている。
方向推定部26は、プロファイル除去部25から、除去処理後の角度プロファイルφ’を取得する。
方向推定部26は、除去処理後の角度プロファイルφ’に基づいて、波源1が存在している方向を推定する。
方向推定部26は、波源1が存在している方向の推定結果を例えば外部の装置に出力する。
【0059】
分布関数算出部26aは、プロファイル除去部25から、除去処理後の角度プロファイルφ’を取得する。
分布関数算出部26aは、除去処理後の角度プロファイルφ’に対応する分布関数として、除去処理後の角度プロファイルφ’に含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する。
方向推定処理部26bは、波源1が存在している方向として、分布関数算出部26aにより算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する。
【0060】
図11に示す波源存在方向推定装置3は、プロファイル除去部25及び方向推定部26が図2に示す波源存在方向推定装置3に適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、プロファイル除去部25及び方向推定部26が図8に示す波源存在方向推定装置3に適用されたものであってもよい。
【0061】
図11では、波源存在方向推定装置3の構成要素である信号取得部21、プロファイル算出部22、プロファイル除去部25及び方向推定部26のそれぞれが、図12に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、波源存在方向推定装置3が、信号取得回路31、プロファイル算出回路32、プロファイル除去回路35及び方向推定回路36によって実現されるものを想定している。
信号取得回路31、プロファイル算出回路32、プロファイル除去回路35及び方向推定回路36のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0062】
図11に示す波源存在方向推定装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、プロファイル算出部22、プロファイル除去部25及び方向推定部26におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図4に示すメモリ41に格納される。そして、図4に示すプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
【0063】
また、図12では、波源存在方向推定装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、波源存在方向推定装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、波源存在方向推定装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0064】
次に、図11に示す波源存在方向推定装置3の動作について説明する。ただし、プロファイル除去部25及び方向推定部26以外は、図2に示す波源存在方向推定装置3と同様であるため、ここでは、プロファイル除去部25及び方向推定部26の動作のみを説明する。
【0065】
図13は、直接波の伝搬経路とマルチパス波の伝搬経路とを示す説明図である。
図14は、2つのマルチパス波の伝搬経路を示す説明図である。
マルチパス波の伝搬経路の距離は、図13に示すように、直接波の伝搬経路の距離よりも長い。マルチパス波の受信時刻は、双方の伝搬経路の距離差に応じて、直接波の受信時刻よりも遅くなる。
一方、2つのマルチパス波の伝搬経路の間では、図14に示すように、距離差が小さいことが多い。このため、2つのマルチパス波の間での受信時刻の時刻差は、直接波の受信時刻とマルチパス波の受信時刻との時刻差よりも小さくなることが多い。
【0066】
プロファイル除去部25は、プロファイル算出部22から、角度プロファイルφを取得する。
プロファイル除去部25は、角度プロファイルφに含まれている、入射方向がθ~θであるK個の電波の間の遅延時間差を算出する。
具体的には、プロファイル除去部25は、K個の電波の中で、アンテナ11によって最初の受信された電波の受信時刻を特定する。ここでは説明の便宜上、最初の受信された電波が、入射方向がθの電波であって、当該電波の受信時刻がtであるとする。直接波の伝搬経路の距離は、マルチパス波の伝搬経路の距離よりも短いため、最初の受信された電波は、直接波である可能性が高い。
プロファイル除去部25は、最初の受信された電波の受信時刻tに対する、残りの(K-1)個の電波の受信時刻t~tの遅延時刻差Δt~Δtを算出する。遅延時刻差Δt~Δtを算出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0067】
プロファイル除去部25は、遅延時刻差Δt(k=2,・・・,K)と時刻閾値thとを比較する。時刻閾値thは、プロファイル除去部25の内部メモリに格納されていてもよいし、図11に示す波源存在方向推定装置3の外部から与えられるものであってもよい。
プロファイル除去部25は、残りの(K-1)個の電波の中で、遅延時刻差Δtが時刻閾値thよりも大きい電波を特定する。
プロファイル除去部25は、角度プロファイルφから、遅延時刻差Δtが時刻閾値thよりも大きい電波の入射方向θと受信電力Pとを除去する除去処理を行う。
プロファイル除去部25は、除去処理後の角度プロファイルφ’を方向推定部26に出力する。
【0068】
方向推定部26の分布関数算出部26aは、プロファイル除去部25から、除去処理後の角度プロファイルφ’を取得する。
分布関数算出部26aは、アンテナ11によって受信された電波の数が1つであるため、除去処理後の角度プロファイルφ’に含まれている入射方向θの数が1つであれば、角度プロファイルφ’に含まれている入射方向θが、波源1が存在している方向であると特定する。
分布関数算出部26aは、アンテナ11によって受信された電波の数が複数であるため、除去処理後の角度プロファイルφ’に含まれている入射方向θの数が複数であれば、角度プロファイルφ’に対応する分布関数f(φ)として、角度プロファイルφ’に含まれている、それぞれの電波の入射方向θに対するそれぞれの電波の受信電力Pの分布を示す分布関数f(φ)を算出する。
分布関数f(φ)が示す受信電力Pの分布としては、例えば、式(2)に示す正規分布p(θ;μ,σ)、式(3)に示すラプラス分布p(θ;μ,σ)、又は、式(4)に示すvon Mises分布p(θ;μ,κ)を用いることができる。
分布関数算出部26aは、図2に示す分布関数算出部23aと同様に、分布関数f(φ)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なる複数の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a(θ,μ,σ)、又は、確率分布a(θ,μ,κ)を算出する。
【0069】
方向推定処理部26bは、図2に示す方向推定処理部23bと同様に、波源1が存在している方向として、分布関数算出部26aにより算出された確率分布a(θ,μ,σ)、又は、確率分布a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向μを特定する。
方向推定処理部26bは、波源1が存在している方向の推定結果として、極大値に対応する入射方向μ、又は、分布関数算出部26aにより特定された方向である入射方向θを例えば外部の装置に出力する。
【0070】
以上の実施の形態3では、アンテナ11によるそれぞれの電波の受信時刻に基づいて、プロファイル算出部22により算出された角度プロファイルに含まれている、一部の電波の入射方向と受信電力とを除去する除去処理を行うプロファイル除去部25を備え、方向推定部26が、プロファイル除去部25による除去処理後の角度プロファイルに基づいて、波源1が存在している方向を推定するように、図11に示す波源存在方向推定装置3を構成した。したがって、図11に示す波源存在方向推定装置3は、図2に示す波源存在方向推定装置3と同様に、1つのアンテナ11の受信信号から、波源1が存在している方向を推定することができるほか、図2に示す波源存在方向推定装置3よりも、確率分布等を算出する処理を軽減することができる。
【0071】
実施の形態4.
実施の形態4では、電波を放射している複数の波源のそれぞれが存在している方向を推定することが可能な波源存在方向推定装置3について説明する。
【0072】
図15は、実施の形態4に係る波源存在方向推定装置3を示す構成図である。図15において、図2図8及び図11と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図16は、実施の形態4に係る波源存在方向推定装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図16において、図3図9及び図12と同一符号は同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図15に示す波源存在方向推定装置3は、信号取得部21、混信分離処理部27、プロファイル算出部28及び方向推定部29を備えている。
図15に示す波源存在方向推定装置3では、説明の簡単化のため、電波を放射している波源1として、2つの波源1a,1bが存在している例を説明する。ただし、これは一例にすぎず、3つ以上の波源が存在しているものであってもよい。
【0073】
混信分離処理部27は、例えば、図16に示す混信分離処理回路37によって実現される。
混信分離処理部27は、信号取得部21から、受信データを取得する。
混信分離処理部27は、信号取得部21から取得した受信データを、波源1aからの電波の受信データと、波源1bからの電波の受信データとに分離する。
混信分離処理部27は、波源1aからの電波の受信データと、波源1bからの電波の受信データとをプロファイル算出部28に出力する。
【0074】
プロファイル算出部28は、例えば、図16に示すプロファイル算出回路38によって実現される。
プロファイル算出部28は、混信分離処理部27から、波源1aからの電波の受信データと、波源1bからの電波の受信データとを取得する。
プロファイル算出部28は、波源1aからの電波の受信データに基づいて、アンテナ11に対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルφ1aを算出する。
また、プロファイル算出部28は、波源1bからの電波の受信データに基づいて、アンテナ11に対するそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルφ1bを算出する。
プロファイル算出部28は、角度プロファイルφ1a,φ1bを方向推定部29に出力する。
【0075】
方向推定部29は、例えば、図16に示す方向推定回路39によって実現される。
方向推定部29は、分布関数算出部29a及び方向推定処理部29bを備えている。
方向推定部29は、プロファイル算出部28から、角度プロファイルφ1a,φ1bを取得する。
方向推定部29は、角度プロファイルφ1aに基づいて、波源1aが存在している方向を推定する。
方向推定部29は、角度プロファイルφ1bに基づいて、波源1bが存在している方向を推定する。
方向推定部29は、波源1a,1bのそれぞれが存在している方向の推定結果を例えば外部の装置に出力する。
【0076】
分布関数算出部29aは、プロファイル算出部28から、角度プロファイルφ1a,φ1bを取得する。
分布関数算出部29aは、角度プロファイルφ1aに対応する分布関数として、角度プロファイルφ1aに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する。
分布関数算出部29aは、角度プロファイルφ1bに対応する分布関数として、角度プロファイルφ1bに含まれている、それぞれの電波の入射方向に対するそれぞれの電波の受信電力の分布を示す分布関数を算出する。
方向推定処理部29bは、波源1aが存在している方向として、分布関数算出部29aにより算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する。
方向推定処理部29bは、波源1bが存在している方向として、分布関数算出部29aにより算出された分布関数において、受信電力の極大値に対応する入射方向を特定する。
【0077】
図15に示す波源存在方向推定装置3は、混信分離処理部27、プロファイル算出部28及び方向推定部29が図2に示す波源存在方向推定装置3に適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、混信分離処理部27、プロファイル算出部28及び方向推定部29が、図8に示す波源存在方向推定装置3、又は、図11に示す波源存在方向推定装置3に適用されたものであってもよい。
【0078】
図15では、波源存在方向推定装置3の構成要素である信号取得部21、混信分離処理部27、プロファイル算出部28及び方向推定部29のそれぞれが、図16に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、波源存在方向推定装置3が、信号取得回路31、混信分離処理回路37、プロファイル算出回路38及び方向推定回路39によって実現されるものを想定している。
信号取得回路31、混信分離処理回路37、プロファイル算出回路38及び方向推定回路39のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0079】
図15に示す波源存在方向推定装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
波源存在方向推定装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、信号取得部21、混信分離処理部27、プロファイル算出部28及び方向推定部29におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図4に示すメモリ41に格納される。そして、図4に示すプロセッサ42がメモリ41に格納されているプログラムを実行する。
【0080】
また、図16では、波源存在方向推定装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、波源存在方向推定装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、波源存在方向推定装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0081】
次に、図15に示す波源存在方向推定装置3の動作について説明する。
図15に示す波源存在方向推定装置3では、波源1aからの電波として、直接波又はマルチパス波がアンテナ11に到来し、波源1bからの電波として、直接波又はマルチパス波がアンテナ11に到来する。波源1aからアンテナ11に到来する電波の数がGであり、波源1bからアンテナ11に到来する電波の数がHであるものとする。G,Hのそれぞれは、1以上の整数である。
【0082】
アンテナ11は、波源1aからの電波と波源1bからの電波とを受信し、これらの電波の受信信号を受信機12に出力する。
受信機12は、アンテナ11から出力された受信信号を復調し、アナログ信号である復調後の受信信号を、デジタル信号である受信データに変換する。
受信機12は、受信データを波源存在方向推定装置3に出力する。
【0083】
波源存在方向推定装置3の信号取得部21は、受信機12から、受信データを取得する。
信号取得部21は、受信データを混信分離処理部27に出力する。
【0084】
混信分離処理部27は、信号取得部21から、受信データを取得する。
混信分離処理部27は、例えば、受信データに対するフーリエ変換を行うことで、受信データを周波数領域の信号に変換する。周波数領域の信号には、波源1aからの電波の信号と、波源1bからの電波の信号とが含まれている。波源1aからの電波の信号の周波数と、波源1bからの電波の信号の周波数とは互いに異なる。
混信分離処理部27は、周波数の相違に基づいて、周波数領域の信号を、波源1aに係る周波数領域の信号と、波源1bに係る周波数領域の信号とに分離する。
混信分離処理部27は、例えば、波源1aに係る周波数領域の信号に対する逆フーリエ変換を行うことで、波源1aに係る受信データRaを算出する。
また、混信分離処理部27は、例えば、波源1bに係る周波数領域の信号に対する逆フーリエ変換を行うことで、波源1bに係る受信データRbを算出する。
混信分離処理部27は、波源1aに係る受信データRaと波源1bに係る受信データRbとをプロファイル算出部28に出力する。
【0085】
プロファイル算出部28は、混信分離処理部27から、波源1aに係る受信データRaと波源1bに係る受信データRbとを取得する。
プロファイル算出部28は、波源1aに係る受信データRaに基づいて、アンテナ11に対する、波源1aからのそれぞれの電波の入射方向θ1a,gを推定する。g=1,・・・,Gである。
プロファイル算出部28は、波源1aからのそれぞれの電波の受信電力P1a,gとして、それぞれの電波の入射方向θ1a,gの信号強度を特定する。
プロファイル算出部28は、以下の式(15)に示すように、それぞれの電波の入射方向θ1a,g(g=1,・・・,G)とそれぞれの電波の受信電力P1a,gとを含む角度プロファイルφ1aを方向推定部29に出力する。
φ1a=f(θ1a,1,・・・,θ1a,G,P1a,1,・・・,P1a,G) (15)
【0086】
プロファイル算出部28は、波源1bに係る受信データRbに基づいて、アンテナ11に対する、波源1bからのそれぞれの電波の入射方向θ1b,hを推定する。h=1,・・・,Hである。
プロファイル算出部28は、波源1bからのそれぞれの電波の受信電力P1b,hとして、それぞれの電波の入射方向θ1b,hの信号強度を特定する。
プロファイル算出部28は、以下の式(16)に示すように、それぞれの電波の入射方向θ1b,h(h=1,・・・,H)とそれぞれの電波の受信電力P1b,hとを含む角度プロファイルφ1bを方向推定部29に出力する。
φ1b=f(θ1b,1,・・・,θ1b,H,P1b,1,・・・,P1b,H) (16)
【0087】
方向推定部29の分布関数算出部29aは、プロファイル算出部28から、角度プロファイルφ1a,φ1bを取得する。
分布関数算出部29aは、アンテナ11によって受信された、波源1aからの電波の数が1つであるため、角度プロファイルφ1aに含まれている入射方向θ1a,gの数が1つであれば、角度プロファイルφ1aに含まれている入射方向θ1a,1が、波源1aが存在している方向であると特定する。
分布関数算出部29aは、アンテナ11によって受信された、波源1aからの電波の数が複数であるため、角度プロファイルφ1aに含まれている入射方向θ1a,gの数が複数であれば、角度プロファイルφ1aに対応する分布関数f(φ1a)を算出する。
即ち、分布関数算出部29aは、角度プロファイルφ1aに含まれている、それぞれの電波の入射方向θ1a,gに対するそれぞれの電波の受信電力P1a,gの分布を示す分布関数f(φ1a)を算出する。
【0088】
また、分布関数算出部29aは、アンテナ11によって受信された、波源1bからの電波の数が1つであるため、角度プロファイルφ1bに含まれている入射方向θ1b,hの数が1つであれば、角度プロファイルφ1bに含まれている入射方向θ1b,1が、波源1bが存在している方向であると特定する。
分布関数算出部29aは、アンテナ11によって受信された、波源1bからの電波の数が複数であるため、角度プロファイルφ1bに含まれている入射方向θ1b,hの数が複数であれば、角度プロファイルφ1bに対応する分布関数f(φ1b)を算出する。
即ち、分布関数算出部29aは、角度プロファイルφ1bに含まれている、それぞれの電波の入射方向θ1b,hに対するそれぞれの電波の受信電力P1b,hの分布を示す分布関数f(φ1b)を算出する。
分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,g及び分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hとしては、例えば、式(2)に示す正規分布p(θ;μ,σ)、式(3)に示すラプラス分布p(θ;μ,σ)、又は、式(4)に示すvon Mises分布p(θ;μ,κ)を用いることができる。
【0089】
分布関数算出部29aは、分布関数f(φ1a)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なるG個の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a1a(θ,μ,σ)を算出する。
分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,gの分布が正規分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a1a(θ,μ,σ)は、以下の式(17)のように表される。
分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,gの分布がラプラス分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a1a(θ,μ,σ)は、以下の式(18)のように表される。
また、分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,gの分布がvon Mises分布p(θ;μ,κ)であれば、確率分布a1a(θ,μ,κ)は、以下の式(19)のように表される。
【0090】
【0091】
分布関数算出部29aは、分布関数f(φ1b)から、アンテナ11に対する入射方向が互いに異なるH個の電波におけるそれぞれの存在確率を示す確率分布a1b(θ,μ,σ)を算出する。
分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hの分布が正規分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a1b(θ,μ,σ)は、以下の式(20)のように表される。
分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hの分布がラプラス分布p(θ;μ,σ)であれば、確率分布a1b(θ,μ,σ)は、以下の式(21)のように表される。
また、分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hの分布がvon Mises分布p(θ;μ,κ)であれば、確率分布a1b(θ,μ,κ)は、以下の式(22)のように表される。
【0092】
【0093】
方向推定処理部29bは、波源1aが存在している方向として、分布関数算出部29aにより算出された確率分布a1a(θ,μ,σ)、又は、確率分布a1a(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定する。
方向推定処理部29bは、波源1bが存在している方向として、分布関数算出部29aにより算出された確率分布a1b(θ,μ,σ)、又は、確率分布a1b(θ,μ,κ)において、存在確率の極大値に対応する入射方向を特定する。
以下、方向推定処理部29bによる存在方向の推定処理を具体的に説明する。
【0094】
方向推定処理部29bは、分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,gの分布が、正規分布p(θ;μ,σ)、又は、ラプラス分布p(θ;μ,σ)である場合、以下の式(23)に示すように、角度プロファイルφ1aと確率分布a1a(θ,μ,σ)との差が最小になる、μとσとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部29bは、分布関数f(φ1a)が示す受信電力P1a,gの分布が、von Mises分布p(θ;μ,κ)である場合、以下の式(24)に示すように、角度プロファイルφ1aと確率分布a1a(θ,μ,κ)との差が最小になる、μとκとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部29bは、波源1aが存在している方向の推定結果として、極大値に対応する入射方向μ、又は、分布関数算出部29aにより特定された方向である入射方向θ1a,1を例えば外部の装置に出力する。
【0095】
【0096】
方向推定処理部29bは、分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hの分布が、正規分布p(θ;μ,σ)、又は、ラプラス分布p(θ;μ,σ)である場合、以下の式(25)に示すように、角度プロファイルφ1bと確率分布a1b(θ,μ,σ)との差が最小になる、μとσとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部29bは、分布関数f(φ1b)が示す受信電力P1b,hの分布が、von Mises分布p(θ;μ,κ)である場合、以下の式(26)に示すように、角度プロファイルφ1bと確率分布a1b(θ,μ,κ)との差が最小になる、μとκとの組み合わせを探索する。
方向推定処理部29bは、波源1bが存在している方向の推定結果として、極大値に対応する入射方向μ、又は、分布関数算出部29aにより特定された方向である入射方向θ1b,1を例えば外部の装置に出力する。
【0097】
【0098】
以下の実施の形態4では、電波を放射している波源1a,1bが複数存在しており、信号取得部21により取得された受信信号を、それぞれの波源1a,1bからの電波の受信信号に分離し、分離後のそれぞれの受信信号を出力する混信分離処理部27を備えるように、図15に示す波源存在方向推定装置3を構成した。また、波源存在方向推定装置3のプロファイル算出部28は、混信分離処理部27から出力されたそれぞれの受信信号に基づいて、アンテナ11に対する、それぞれの波源1a,1bからのそれぞれの電波の入射方向とそれぞれの電波の受信電力とを含む角度プロファイルを算出する。また、波源存在方向推定装置3の方向推定部29は、プロファイル算出部28により算出された、それぞれの波源1a,1bからの角度プロファイルに基づいて、それぞれの波源1a,1bが存在している方向を推定する。したがって、図15に示す波源存在方向推定装置3は、1つのアンテナ11の受信信号から、複数の波源1a,1bのそれぞれが存在している方向を推定することができる。
【0099】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、波源存在方向推定装置及び波源存在方向推定方法に適している。
【符号の説明】
【0101】
1,1a,1b 波源、2 構造物、3 波源存在方向推定装置、11 アンテナ、12 受信機、21 信号取得部、22 プロファイル算出部、23 方向推定部、23a 分布関数算出部、23b 方向推定処理部、24 方向推定部、24a 分布関数算出部、24b 方向推定処理部、25 プロファイル除去部、26 方向推定部、26a 分布関数算出部、26b 方向推定処理部、27 混信分離処理部、28 プロファイル算出部、29 方向推定部、29a 分布関数算出部、29b 方向推定処理部、31 信号取得回路、32 プロファイル算出回路、33 方向推定回路、34 方向推定回路、35 プロファイル除去回路、36 方向推定回路、37 混信分離処理回路、38 プロファイル算出回路、39 方向推定回路、41 メモリ、42 プロセッサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16