(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】破砕乾燥装置、炭化装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20241111BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20241111BHJP
C10B 47/34 20060101ALI20241111BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B3/40 ZAB
C10B47/34
C10B53/00 A
(21)【出願番号】P 2021158446
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519006506
【氏名又は名称】Solution Creators株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521025(JP,A)
【文献】特開2018-062868(JP,A)
【文献】特開2014-134199(JP,A)
【文献】特開2018-115307(JP,A)
【文献】特開2000-264616(JP,A)
【文献】特開2002-146360(JP,A)
【文献】国際公開第2016/128994(WO,A2)
【文献】特開平11-060225(JP,A)
【文献】特開2008-248183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/30 - 3/45
C10B 47/34
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を破砕乾燥すると共に加熱して半炭化する破砕乾燥装置であって、
有機物が投入される投入部と半炭化された当該有機物が排出される排出部とを有する筐体と、
前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、
前記筐体は、
破砕加熱板が設けられた内殻と、
前記内殻の外側に設けられた外殻と、を備えた二重殻構造であり、
前記内殻と前記外殻との間に、前記投入部から前記排出部へ至り前記有機物が通る螺旋流路が形成され、
前記螺旋流路は、前記排出部側から前記投入部側へ向かって徐々に流路幅が大きくなるように構成され、
前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記有機物を搬送する破砕搬送板が設けられていることを特徴とする、破砕乾燥装置。
【請求項2】
前記破砕加熱板と前記破砕搬送板との隙間が、前記螺旋流路における前記投入部側ほど大きく、前記排出部側ほど小さくなるように、当該破砕加熱板および当該破砕搬送板が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項3】
高温蒸気を、前記螺旋流路における前記排出部側から供給し、前記投入部側から排出させることにより、当該螺旋流路を通る前記有機物を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項4】
排出する前記有機物を、最終粒子径を5mm以下とし、含水率を15%以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項5】
排出する前記有機物の含水率が15%以下となるよう、当該有機物への加熱量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項6】
前記有機物を5~30MPaの範囲で圧縮するとともに、100~450℃の範囲で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項7】
前記有機物の温度が100~450℃となるよう、当該有機物への加熱量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の破砕乾燥装置。
【請求項8】
半炭化された有機物を加熱して炭化する炭化装置であって、
前記半炭化された有機物の入口と加熱後の炭化物の出口とを有する筐体と、
前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、
前記筐体は、
圧縮加熱板が設けられた内殻と、
前記内殻の外側に設けられた外殻と、を備えた二重殻構造であり、
前記内殻と前記外殻との間に、前記入口から前記出口へ至り前記半炭化された有機物が通る螺旋流路が形成され、
前記螺旋流路は、前記出口側から前記入口側へ向かって徐々に流路幅が大きくなるように構成され、
前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記半炭化された有機物を搬送する圧縮搬送板が設けられていることを特徴とする、炭化装置。
【請求項9】
高温蒸気を、前記螺旋流路における前記出口側から供給し、前記入口側から排出させることにより、当該螺旋流路を通る前記半炭化された有機物を加熱することを特徴とする、請求項8に記載の炭化装置。
【請求項10】
前記半炭化された有機物を450~700℃の範囲で加熱することを特徴とする、請求項8に記載の炭化装置。
【請求項11】
前記半炭化された有機物の温度が450~700℃となるよう、当該半炭化された有機物への加熱量を制御することを特徴とする、請求項8に記載の炭化装置。
【請求項12】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載された破砕乾燥装置と、
前記破砕乾燥装置により半炭化された有機物を炭化する請求項8または請求項9に記載された炭化装置と、
前記炭化装置により炭化された生成物を冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、
前記炭化装置の生成物の入口と冷却後の当該生成物の出口とを有する筐体と、
前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、
前記筐体は、
内殻と外殻とを備えた二重殻構造であり、
前記内殻と前記外殻との間に、前記入口から前記出口へ至る螺旋流路が形成され、
前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記生成物を搬送する圧縮搬送板が設けられており、
前記螺旋流路を冷却水が通ることにより、前記内殻の内部を通る前記生成物を冷却することを特徴とする、システム。
【請求項13】
前記冷却装置は、前記炭化装置の生成物の温度が15~85℃の範囲となるよう冷却することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記炭化装置の生成物の温度が15~85℃の範囲となるよう、前記冷却装置による当該生成物に対する冷却量を制御することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化原因物質の二酸化炭素発生源となる、炭素を含む有機物を、再生可能エネルギーを活用して効率よく連続的に炭化したり、半炭化固形物として回収する方法と、この方法を適用した、再生可能エネルギー活用型の有機物炭化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止にむけて、主要な原因物質となっている二酸化炭素の排出削減や、大気中に蓄積された二酸化炭素の分離回収と地下圧入による固定化が実施されつつある。特に、バイオマス資源を燃焼利用した際に発生する排気ガス中の二酸化炭素や、大気中の二酸化炭素を分離回収して固定化する技術は、大気中に蓄積された二酸化炭素の積極的な削減に資するネガティブエミッション技術として、社会実装と普及拡大が期待されている。
【0003】
一方、排気ガスや大気中からの分離回収した気体の二酸化炭素は、化学的な安定性が高く分解が困難なため、地下深部に圧入固定させる際には、圧縮液化して地下貯留サイトまで輸送し、地下深部に圧入するために、液化二酸化炭素をさらに圧縮する必要があり、多大なエネルギー消費と、そのエネルギー消費に伴う二酸化炭素の排出によってコストが嵩み、正味の二酸化炭素固定化量も減少するという課題がある。
【0004】
また、二酸化炭素を長期安定的に地下貯留できる場所や、各貯留場所によって、圧入固定できる量が限定されるため、圧入量が限度に達すれば、二酸化炭素を輸送できても、圧入による固定化そのものが不可能となるという課題もある。
【0005】
そこで、これらの課題を解決する手段として、二酸化炭素排出の原因物質となる有機物を炭化して固体炭素として回収し、回収した固体炭素を地中埋設したり沿岸埋立等に活用し、酸素や微生物等と接触しない措置を講じた上で長期保管することで、廃プラスチック等の化石燃料起源の有機物を焼却することによる二酸化炭素の排出量を削減したり、草木剪定枝や食品廃棄物、下水汚泥等のバイオマス起源の有機物を焼却処分する際の二酸化炭素排出を防止することで、ネガティブエミッションを実現することも可能である。
【0006】
また、固体炭素を含む炭素系材料には、軽量かつ高強度な炭素繊維や、高い耐熱性と熱伝導性を有するシリコンカーバイド、高い吸着性を有する活性炭などが、様々な分野で利用されており、こうした機能性材料の製造原料として回収した固体炭素を利用し、製造された炭素含有材料が長期にわたって利用され続ければ、二酸化炭素の排出を抑制しながら、高機能材料を長期利用することも可能となる。
【0007】
以上の観点から、廃プラスチックや廃タイヤといった、化石燃料起源の炭素を含む廃棄物のほか、草木剪定枝や下水汚泥等のバイオマス起源の炭素を含む廃棄物を焼却処理することなく炭化させて、固体炭素として回収し、炭素系材料の原料として有効利用する技術も期待されている。
【0008】
一方、有機物を含む多様な廃棄物の炭化処理については、様々な技術や装置が提案されており、低酸素環境下で伝熱面からの伝熱や輻射によって有機物を揮発させて炭化を進める際に、生ゴミのような含水率の高い廃棄物を乾燥した上で昇温して炭化させる技術(特許文献1)や、バイオマスを高温ガスと接触させ、熱分解して炭化物を生成する技術(特許文献2)が開示されている。
【0009】
また、有機物で構成される多様な廃棄物を燃料として再利用する際には、廃棄物中の過剰な水分を高温の空気や燃焼ガスによって脱水乾燥蒸発させ、炭化させずに廃棄物起源の燃料成分となる有機物を多く残すことでエネルギー密度を最大化する半炭化処理が行われることが多く、バイオマスの水分が蒸発しやすい負圧条件下で酸素濃度が低い燃焼排ガスを廃棄物に吹き付けてバイオマスを半炭化させる技術(特許文献3)や、空気の侵入を遮断した低酸素環境や無酸素環境下でバイオマスを昇温し、発生する熱分解ガスを燃焼させて得られる熱を利用して廃棄物の半炭化を行う技術(特許文献4)のほか、有機物を密閉状態で加熱しながら圧縮して半炭化固形物を生成した後、生成した半炭化固形物を冷却することで、緻密なバイオマス固形物を製造する技術(特許文献5)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-234948号
【文献】特開2013-216780号
【文献】特開2019-45078号
【文献】特開2018-115307号
【文献】特許第4088933号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記の通り、特許文献に示された従来技術によれば、二酸化炭素の排出起源となる有機物で構成される廃棄物から、活性炭等の高機能材料や炭素系材料の原料に利用できる固体炭素を回収したり、含水率が高い廃棄物であっても、廃棄物を効率よく乾燥させて昇温することで、炭化水素の密度を高めた半炭化固形物を製造することができるが、これらの技術には以下に示す5つの課題がある。
【0012】
まず従来の技術では、寸法の大きな廃棄物を乾燥させたり半炭化または炭化させる際に必要となる廃棄物の破砕や粉砕に係わる記述がなく、予め破砕、粉砕された廃棄物の投入と搬送による攪拌と乾燥を前提としており、廃棄物処理の工程で大きなエネルギー消費を伴う破砕や粉砕に係わるエネルギー消費の効率化と、エネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量の削減にむけた解決策が開示されていない。特に大型で含水率の高い廃棄物を効率よく乾燥させたり、半炭化や炭化を行う上では、廃棄物を早期に破砕しながら加熱乾燥を同時に行って含水率を低下させて、さらに廃棄物を破砕しやすくすることで、効率的に廃棄物の破砕乾燥を実現することができるが、破砕工程と攪拌乾燥工程が分かれて実施される場合には装置が大型化し、大きな設置面積が必要となるという課題もある。
【0013】
また、廃棄物の破砕や攪拌、乾燥と、半炭化および炭化を行う各工程では、モーターやブロワ等の電動機器が使用されているが、これらの機器を稼働させる電力が再生可能エネルギーによるものでない場合には、装置の稼働に伴って二酸化炭素が発生し、正味の二酸化炭素削減効果が低減するほか、電力消費に伴うコストが嵩むという課題がある。
【0014】
また、本技術を構成する機器の駆動電力を、全て再生可能エネルギー起源の電力受給によって賄う場合であっても、再生可能エネルギーの発生場所で得られる回転駆動力や再生可能エネルギー熱を直接利用することができないために、発生場所で得られる回転駆動力を電力に変換する発電損失や得られた電力を消費地に送る際の送電損失が発生してエネルギー効率が低下するほか、再生可能エネルギー由来の冷温熱を直接利用することが困難となる課題がある。
【0015】
一方、昼夜や天候を問わず安定的に再生可能エネルギー起源の電気や熱を得られる地熱地帯や水力発電地帯は、送配電網が整備されていなかったり、送配電線の容量が少ない山間地域であることが多いため、常時安定的に活用できる再生可能エネルギー資源が豊富に存在していても、これを有効活用できなかったり、活用可能量が限定されるという課題があるが、こうした地域における再生可能エネルギーを廃棄物処理や二酸化炭素の削減に活用する具体的な方策が開示されていない。
【0016】
加えて、生ゴミや漁業廃棄物、下水汚泥といった、含水率が高い有機廃棄物を乾燥する際には、廃棄物の加熱による廃棄物中の水分蒸発による脱水乾燥のために多大なエネルギーを必要とするため、有機廃棄物の熱分解によって得られる熱分解ガスの燃焼ガスから得られる熱だけでは賄いきれない場合があり、廃棄物の乾燥処理や乾燥前の予熱のために、補助燃料として化石燃料を使用する場合には、化石燃料の利用に伴って二酸化炭素が発生し、正味の二酸化炭素削減効果が低減するとともに、化石燃料の利用に伴うコストが嵩むという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地熱蒸気や水力といった、常時安定的に活用できる再生可能エネルギーから得られる回転駆動力や、地熱蒸気が保有する再生可能エネルギー熱を直接または間接的に、有機物の破砕と攪拌乾燥のほか、半炭化や炭化の工程にも活用し、これらの処理を一貫して効率よく実施できる再生可能エネルギー活用型の炭素回収方法を提供するとともに、発明技術を適用した、再生可能エネルギー活用型の炭素回収システムを提供することである。
【0018】
請求項1に記載の発明は、有機物を破砕乾燥すると共に加熱して半炭化する破砕乾燥装置であって、有機物が投入される投入部と半炭化された当該有機物が排出される排出部とを有する筐体と、前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、前記筐体は、破砕加熱板が設けられた内殻と、前記内殻の外側に設けられた外殻と、を備えた二重殻構造であり、前記内殻と前記外殻との間に、前記投入部から前記排出部へ至り前記有機物が通る螺旋流路が形成され、前記螺旋流路は、前記排出部側から前記投入部側へ向かって徐々に流路幅が大きくなるように構成され、前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記有機物を搬送する破砕搬送板が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記破砕加熱板と前記破砕搬送板との隙間が、前記螺旋流路における前記投入部側ほど大きく、前記排出部側ほど小さくなるように、当該破砕加熱板および当該破砕搬送板が配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、高温蒸気を、前記螺旋流路における前記排出部側から供給し、前記投入部側から排出させることにより、当該螺旋流路を通る前記有機物を加熱することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、排出する前記有機物を、最終粒子径を5mm以下とし、含水率を15%以下とすることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、排出する前記有機物の含水率が15%以下となるよう、当該有機物への加熱量を制御することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記有機物を5~30MPaの範囲で圧縮するとともに、100~450℃の範囲で加熱することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、前記有機物の温度が100~450℃となるよう、当該有機物への加熱量を制御することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、半炭化された有機物を加熱して炭化する炭化装置であって、前記半炭化された有機物の入口と加熱後の炭化物の出口とを有する筐体と、前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、前記筐体は、圧縮加熱板が設けられた内殻と、前記内殻の外側に設けられた外殻と、を備えた二重殻構造であり、前記内殻と前記外殻との間に、前記入口から前記出口へ至り前記半炭化された有機物が通る螺旋流路が形成され、前記螺旋流路は、前記出口側から前記入口側へ向かって徐々に流路幅が大きくなるように構成され、前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記半炭化された有機物を搬送する圧縮搬送板が設けられていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、高温蒸気を、前記螺旋流路における前記出口側から供給し、前記入口側から排出させることにより、当該螺旋流路を通る前記半炭化された有機物を加熱することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、前記半炭化された有機物を450~700℃の範囲で加熱することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、前記半炭化された有機物の温度が450~700℃となるよう、当該半炭化された有機物への加熱量を制御することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載された破砕乾燥装置と、前記破砕乾燥装置により半炭化された有機物を炭化する請求項8または請求項9に記載された炭化装置と、前記炭化装置により炭化された生成物を冷却する冷却装置と、を備え、前記冷却装置は、前記炭化装置の生成物の入口と冷却後の当該生成物の出口とを有する筐体と、前記筐体内部で回転可能に設けられた回転軸と、を備え、前記筐体は、内殻と外殻とを備えた二重殻構造であり、前記内殻と前記外殻との間に、前記入口から前記出口へ至る螺旋流路が形成され、前記回転軸には、当該回転軸の回転に伴って回転することにより前記生成物を搬送する圧縮搬送板が設けられており、前記螺旋流路を冷却水が通ることにより、前記内殻の内部を通る前記生成物を冷却することを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、前記冷却装置は、前記炭化装置の生成物の温度が15~85℃の範囲となるよう冷却することを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、前記炭化装置の生成物の温度が15~85℃の範囲となるよう、前記冷却装置による当該生成物に対する冷却量を制御することを特徴とする。
【0044】
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、地熱蒸気や水力といった、常時安定的に得られる再生可能エネルギーから得られる回転駆動力や温冷熱と電力を、直接または間接的に有機物の破砕乾燥や半炭化処理または炭化処理に利用することで、有機物起源の半炭化固形物や固体炭素回収に係わる化石燃料の消費を削減し、二酸化炭素の排出を抑制しながら、容易に輸送や貯留が可能な半炭化固形物や固体炭素を回収したり、炭素を長期固定しながら利用できる炭素系材料を製造する際に必要となる、原料炭素を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明に係る第1実施形態である、地熱エネルギー活用型の炭素回収システムを示す模式図である。
【
図2】本発明に係る第2実施形態である、水力エネルギー活用型の半炭化固形物回収システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、本実施形態に限定されるものではない。
【0048】
(第1実施形態)
【0049】
まず本発明の第1実施形態に係る、地熱エネルギー活用型の炭素回収システムについて、
図1に基づいて説明する。
【0050】
図1に示すように、このシステムには、地熱流体1を100℃~180℃程度の地熱蒸気と、100℃未満の熱水に分離する汽水分離器2と、前記汽水分離器から排出された地熱蒸気で駆動される蒸気タービン3と、この蒸気タービンの回転軸に変速機4を介して接続されて回転する動翼状の破砕板が固定され、投入有機物5の破砕乾燥処理を行う破砕乾燥装置6と、前記破砕乾燥装置で破砕乾燥された有機物が加熱されて半炭化された後に、生成した半炭化物をさらに加熱して炭化させる、破砕乾燥有機物の炭化装置7と、前記炭化装置で生成された有機物起源の炭素を冷却し、常温での回収を可能とする、炭素冷却装置8が構成されている。
【0051】
また、地熱蒸気タービン3の回転軸には、地熱蒸気で発電を行う蒸気タービン発電機9が接続され、この発電機で得られた電力は、有機物の加熱乾燥を確実かつ均一に行うために、破砕乾燥装置の出口部分に設置された電熱ヒータ10と、破砕乾燥有機物を確実かつ均一に炭化するために炭化装置の出口部分に設置された電熱ヒータ11に電力を供給するとともに、有機物の加熱乾燥時に有機物から発生する水蒸気含有ガスの臭気成分を除去する、オゾナイザ等のガス浄化装置12と、破砕乾燥装置内を減圧化するために水蒸気含有ガスを強制排気するための排気ブロワ13や、有機物を加熱して半炭化および炭化させる過程で有機物から発生する熱分解ガスを燃焼させるための空気を吸い込み、熱分解ガス燃焼装置14で燃焼させた高温の燃焼ガスを炭化装置に送出させる、空気ブロワ15に供給されるよう構成されている。
【0052】
さらに、蒸気タービン発電機9から得られる電力は、炭素冷却装置8で炭素を冷却する冷却水の循環ポンプ16や、循環冷却水の冷熱を得るために、汽水分離器2で分離された熱水を利用して駆動する吸収式冷凍機17と、その附帯設備となる冷却塔18や、冷却塔用冷却水の循環ポンプ19のほか、破砕乾燥装置における有機物の加熱乾燥熱源として供給する地熱発電後の蒸気から、加熱乾燥熱交換時に発生するドレン水を排水するポンプ20や、炭化装置において破砕乾燥有機物を加熱する熱源として供給する燃焼ガスを利用した熱交換時に発生するドレン水を浄化する排水浄化装置21と、浄化したドレン水を排水するポンプ22と、破砕乾燥装置と炭化装置の電熱ヒータへの電力供給量や、冷却装置に循環する冷却水の温度や流量を調整する運転制御装置23にも供給されている。
【0053】
このうち、未破砕で含水率の高い有機物5を破砕および粉砕しながら加熱乾燥し、含水率を低下させた乾燥粉末とする破砕乾燥装置6は、地熱蒸気で駆動する蒸気タービンの回転駆動力によって筐体内で回転する破砕搬送板が固定された回転軸と、前記の蒸気タービンを駆動した後の高温地熱蒸気で加熱される破砕加熱板が筐体内壁に固定された筐体によって構成された、多段翼型コンプレッサのような態様で構成されている。
【0054】
ただし、本装置の筐体は二重殻構造となっており、前記の破砕加熱板が固定されている内殻の外側には、外側表面を断熱材で覆われた外殻筐体があり、この外殻筐体と内殻との間には、螺旋流路壁24が構成されており、蒸気タービン駆動後の高温地熱蒸気が螺旋流路内を流れて筐体内殻を通じた熱伝導によって破砕加熱板を加熱し、有機物を破砕乾燥する構成としている。また、破砕乾燥装置を構成する、内殻壁における破砕加熱板間の一部には、有機物から発生する蒸気やガスだけが通過できる、フィルターつきの蒸気抽気口25が設置されており、有機物を乾燥させた際に発生する蒸気含有ガス抽気されて集約され、浄化された後に排気ブロワ13を介して大気に放散されるとともに、排気ブロワによる強制排気によって、破砕乾燥装置内が減圧されて有機物の気化乾燥が促される。
【0055】
なお、前記の筐体二重殻構造内に構成される螺旋流路は、破砕乾燥装置の出口側に近い方から入口側にむかって、徐々に流路幅が大きくなるように構成されるとともに、高温地熱蒸気を破砕乾燥装置の出口側の螺旋流路から供給し、破砕乾燥装置の入口側の螺旋流路から排出させることにより、筐体内部の有機物と螺旋流路を流れる地熱蒸気との温度差を保って有機物中の水分蒸発を促すとともに、破砕乾燥装置の出口側における高温加熱を強化することで、有機物を充分に加熱乾燥できるように構成することが望ましい。
【0056】
また、本装置を構成する、動翼状の破砕搬送板と、静翼状の破砕加熱板は多段構成となっており、有機物の投入部に近い上流段側の隙間は大きめとして、大型の未破砕有機物を破砕乾燥させやすい状態にしたうえで、後段の排出部に近い側にむけて徐々に隙間を小さく狭め、最終段では排出される破砕乾燥有機物の寸法が5mm以下で、含水率が10%程度になるように構成されていることが望ましく、破砕乾燥物の寸法や含水率を最適化し、均一化するため、排出口付近にサンプル採取口が設けられ、サンプルの測定結果に応じて地熱蒸気の供給量や、電気ヒータ10への電力供給量が制御されていることが望ましい。
【0057】
すなわち、破砕乾燥有機物の含水率が高い場合には、変速機を制御することで破砕搬送板が固定された回転軸の回転数を低下させ、有機物の搬送速度を低下させて装置内での滞留時間を長期化させるか、地熱蒸気の供給量を増大させるか、電気ヒータへの電力供給量を増量させる制御を通じて熱供給量を増大させることで加熱乾燥を促す一方、破砕乾燥有機物の含水率が低ければ、回転軸の回転数を増加させて有機物の装置内における滞留時間を短縮させるか、地熱蒸気の供給量を削減するか、電気ヒータへの電力供給量を減少させる制御を通じて熱供給量を減少させることで、加熱乾燥を抑制し、破砕乾燥有機物の含水率を最適な範囲に維持することが望ましい。
【0058】
また、前記の破砕乾燥装置6から排出された有機物の乾燥粉末を半炭化させた後に炭化させる炭化装置7も、地熱蒸気で駆動する蒸気タービンの回転駆動力によって筐体内で回転する圧縮搬送板が固定された圧縮搬送回転軸と、有機物が熱分解する際に発生する熱分解ガスを燃焼させた燃焼ガスで加熱される圧縮加熱板が内壁に固定された筐体によって、多段翼型コンプレッサのような態様で構成されている。
【0059】
さらに、本装置の筐体も二重殻構造となっており、前記の圧縮加熱板が固定されている内殻の外側には、外側表面を断熱材で覆われた外殻筐体があり、この外殻筐体と内殻との間には、螺旋流路壁26が構成されていることで、熱分解ガス燃焼後の高温燃焼ガスが螺旋流路内を流れて筐体内殻を通じた熱伝導によって圧縮加熱板を加熱し、有機物を圧縮加熱して半炭化物を生成させた上で、さらに生成させた半炭化物を圧縮加熱して炭化させることで、炭化装置の出口からは、有機物起源の固体炭素粉末が排出されるようになっている。
【0060】
なお、前記の炭化装置を構成する筐体内における、圧縮加熱板間の内壁部の一部にも、有機物から発生する熱分解ガスだけが通過できる、フィルターつきの熱分解ガス抽気口27が設置されており、有機物を半炭化および炭化させた際に発生する熱分解ガスが抽気されて集約され、空気吸入と燃焼排ガスの送出を行う吸気ブロワから吸入された空気と燃焼させた後に、前記の筐体二重殻構造部の螺旋流路内を流通させることによって、炭化装置内が加熱され、有機物が無酸素環境下で加熱圧縮されることにより、半炭化反応や炭化反応が促進される。
【0061】
ここで、炭化装置の筐体二重殻構造内に構成される螺旋流路は、炭化装置の出口側に近い方から入口側にむかって、徐々に流路幅が大きくなるように構成されるとともに、燃焼排ガスを炭化装置の出口側の螺旋流路から供給し、破砕乾燥装置の入口側の螺旋流路から排出させることにより、筐体内部の有機物と螺旋流路を流れる燃焼排ガスとの温度差を保って有機物の半炭化と炭化を促すとともに、炭化装置の出口側における高温加熱を強化することで、半炭化物を充分に加熱して炭化できるように構成することが望ましい。
【0062】
さらに、本装置を構成する動翼状の圧縮搬送板と、静翼状の圧縮加熱板は多段階構成となっており、破砕乾燥有機物の半炭化や炭化を段階的かつ確実に反応させることで、最終的に排出される炭素の品質が均一化されていることが望ましい。このため、炭化装置の排出口付近には生成した炭素のサンプル採取口が設けられ、サンプルの測定結果に応じて燃焼ガスの供給量や、電気ヒータ11への電力供給量が制御されていることが望ましい。
【0063】
すなわち、回収炭素の純度が低い場合には、変速機を制御して圧縮搬送回転軸の回転数を低下させ、装置内での滞留時間を長期化させたり、燃焼ガスの供給量を増大させるか、電気ヒータへの電力供給量を増量させるか、その両方を行う制御を通じて破砕乾燥有機物の半炭化や炭化のための熱供給量を増大させる一方、回収炭素の純度が基準を上回る過剰な状態であれば、圧縮搬送回転軸の回転数を増加させて装置内での滞留時間を短縮したり、燃焼ガスの供給量を削減するか、電気ヒータへの電力供給量を減少させるか、その両方を行う制御を通じて半炭化や炭化のための熱供給量を減少させることで、回収炭素の品質が最適に維持されることが望ましい。
【0064】
次に、前記の炭化装置7から排出された高温の炭素粉末は、地熱蒸気で駆動する蒸気タービンの回転駆動力によって筐体内で回転する圧縮搬送板が固定された圧縮搬送回転軸を収納し、高温の炭化物を冷却する冷却水が流れる流路が構成された二重殻筐体の炭素冷却装置8に搬送される。
【0065】
なお、本装置の筐体も二重殻構造となっており、外殻と内殻との間には螺旋流路壁が構成され、螺旋流路内を冷却水が流れることで筐体内殻を通じた熱伝導によって、内部で圧縮搬送される炭素が冷却されることにより、炭素冷却装置の出口からは、空気中の酸素と接触しても容易に発熱・発火しない、有機物起源の固体炭素粉末28を回収できる。
【0066】
ここで、本装置によって高温の炭化物を冷却するための冷却水は、地熱蒸気を汽液分離した際に得られる高温の熱水を利用して駆動される吸収式冷凍機17によって得られる、10~15℃の冷却水を循環利用することで、地熱を利用して高温炭素の冷却を行える構成としている。
【0067】
このように、本発明の地熱エネルギー活用型の炭素回収システムでは、昼夜や天候によらず安定的にエネルギー利用が可能な地熱蒸気を活用して、含水率が高い未破砕の有機物であっても、連続的に均質な固体炭素を回収することが可能となり、二酸化炭素の排出源となる炭素の固定化や、高機能材料の原料として利用することが可能となる。
【0068】
また本システムでは、廃プラスチックなどの化石燃料起源の有機物から、二酸化炭素発生源となる炭素を回収することで、焼却処理による二酸化炭素の排出を抑制できるが、草木剪定枝や食品廃棄物、農水産品の非可食部分や下水汚泥といったバイオマス有機物を投入して炭素を回収して地中埋設等の固定化を行えば、バイオマスを介して大気中の二酸化炭素を減少させるネガティブエミッションを実現することも可能となる。
【0069】
以上の構成とすることで、二酸化炭素の排出を伴わない再生可能エネルギーである地熱蒸気の多段階活用によって、小規模な設備で効率よく、有機物から炭素を回収することが可能となり、豊富な地熱蒸気があっても送配電網への接続供給や熱供給ができない場所であっても、地熱蒸気の有効活用による炭素の固定化や有効利用が可能となる。
(第2実施形態)
【0070】
次に、本発明の第2実施形態に係る、水力エネルギー活用型の半炭化固形物回収システムについて、
図2に基づいて説明する。
【0071】
図2に示すように、第2実施形態のシステムでは、炭素回収を行うための再生可能エネルギーとして、落差を伴う河川等の水力を利用する点と、有機物を破砕乾燥して半炭化させた後に圧縮成形と冷却を行って、半炭化固形物29を生成して回収する点が異なる。
【0072】
ここで、水力を利用して有機物を半炭化させるうえでは、水車30によって駆動する回転破砕板を回転させつつ、水力発電システム31から得られる電力によって、破砕乾燥半炭化装置の筐体表面に覆われた電気ヒータ32を用いて有機物を加熱乾燥させた後に、110~200℃程度に圧縮加熱して半炭化させながら圧縮成形を行う点が異なる。
【0073】
また、圧縮成形された高温の半炭化固形物を冷却水を用いて冷却し、長期保管が可能な半炭化固形物として回収させる、半炭化固形物製造装置33が接続されている点が異なる。
【0074】
また、前記の半炭化固形物製造装置における高温の半炭化固形物の冷却では、水力発電後の河川水を冷却水汲み上げポンプ34で汲み上げて供給し、水車駆動や水力発電に利用する水が保有する冷熱を、生成させた半炭化物の冷却にも利用する点が異なっている。
【0075】
このような構成とすることで、地熱資源がない一方で水力資源に恵まれた地域でも、有機物から二酸化炭素発生源となる炭素の回収と固定化や有効利用を行うことが可能となる。
【0076】
以上のように、地域に分散する地熱や水力のエネルギーを利用して、二酸化炭素排出の起源物質となる有機物に含まれる炭素を、固体炭素または半炭化固形物として回収することで、二酸化炭素ガスの固定化よりも容易に輸送と固定化が可能となる固体炭素での固定化や、二酸化炭素起源物質を長期固定しながら環境負荷の低い炭素系材料を製造する際の炭素原料を提供することが可能となる。また本システムは、再生可能エネルギー資源があっても送配電網への接続や熱供給が困難な場所でも適用が可能で、電力 系統で停電が起こっても継続的に有機物から炭素回収が行えるようになり、幅広い地域で有機物から炭素の回収と固定化を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
なお本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、例えば
図1の実施形態は地熱蒸気の発生地だけでなく、高温の温泉が湧出している場所においても、温泉熱発電による電力や高温源泉がもつ保有熱を活用する形態で適用可能であり、
図2の実施形態は落差を有する河川の利用に限らず、上水道施設で落差と流量から水力起源の電力や熱が得られる場所での有機廃棄物処理による炭素回収や、下水処理施設で落差と流量から水力起源の電力や熱が得られる場所において、施設内で発生する下水汚泥を乾燥処理して炭化回収する際にも適用可能であるほか、安定した海流や潮流によって発電や海水冷却が可能な地域においても適用可能である。
【0078】
このように、前記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0079】
1・・・・地熱流体
2・・・・汽水分離器
3・・・・蒸気タービン
4・・・・変速機
5・・・・未破砕高含水率有機物
6・・・・有機物破砕乾燥装置
7・・・・破砕乾燥有機物炭化装置
8・・・・炭素冷却装置
9・・・・蒸気タービン発電機
10・・・有機物破砕乾燥装置用電熱ヒータ
11・・・破砕乾燥有機物炭化装置用電熱ヒータ
12・・・蒸気含有ガス浄化装置
13・・・蒸気含有ガス排気ブロワ
14・・・熱分解ガス燃焼装置
15・・・熱分解ガス燃焼用空気ブロワ
16・・・冷却水循環ポンプ
17・・・吸収式冷凍機
18・・・冷却塔
19・・・冷却塔循環ポンプ
20・・・地熱蒸気ドレン水排水ポンプ
21・・・燃焼ガスドレン水浄化装置
22・・・燃焼ガスドレン水排水ポンプ
23・・・有機物炭化回収システム制御装置
24・・・地熱蒸気螺旋流路
25・・・蒸気抽気口
26・・・燃焼排ガス螺旋流路
27・・・熱分解ガス抽気口
28・・・固体炭素粉末
29・・・半炭化固形物
30・・・水車
31・・・水力発電システム
32・・・有機物破砕乾燥半炭化装置用電熱ヒータ
33・・・半炭化固形物製造装置
34・・・冷却水汲み上げポンプ