(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20241111BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20241111BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2024053859
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503116442
【氏名又は名称】コガソフトウェア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131853
【氏名又は名称】澤邉 由美子
(72)【発明者】
【氏名】木村 穣
(72)【発明者】
【氏名】古賀 詳二
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/166599(WO,A1)
【文献】特表2018-512202(JP,A)
【文献】特開2015-041097(JP,A)
【文献】Elizabeth F. TEEL et al.,Balance and cognitive performance during a dual-task: Preliminary implications for use in concussion assessment,Journal of Science and Medicine in Sport,2013年05月,Vol.16, No.3,pp.190-194,DOI:10.1016/j.jsams.2012.09.007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/398
A61B 10/00
G16H 10/00-80/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタスクでの被験者の反応時間であるシングルタスク反応時間を測定するシングルタスク反応時間測定手段と、
前記シングルタスク反応時間測定手段によって前記シングルタスク反応時間を測定した後に、前記第1のタスクと第2のタスクとを前記被験者が同時に実行した場合の前記第1のタスクの前記被験者の反応時間であるデュアルタスク反応時間を測定するデュアルタスク反応時間測定手段と、
前記シングルタスク反応時間測定手段によって測定した前記シングルタスク反応時間の平均値
に対する前記デュアルタスク反応時間測定手段によって測定した前記デュアルタスク反応時間の平均値
の遅れがプラス傾向になる場合に認知機能が低下していると評価し、前記シングルタスク反応時間の平均値に対する前記デュアルタスク反応時間の平均値の遅れがマイナス傾向になる場合に認知機能が正常であると評価する認知機能評価手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第1のタスクは、課題に対し前記被験者が回答することであり、
前記第2のタスクは、前記被験者が動作することである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1のタスクは、
画面に文字を表示した後に前記文字の色名を回答すること、
画面に漢字と前記漢字の読み方を表示した後に前記漢字の読み方を選択すること、
または、画面に基準となる図形と複数の図形を表示した後に前記複数の図形から前記基準となる図形と同一の図形を選択すること、のいずれか1つまたは組合せである、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2のタスクは、
前記被験者が立って足踏みすること、
前記被験者が椅子に座って足踏みすること、
前記被験者が椅子に立ったり座ったりすること、
前記被験者が片手または両手で膝を叩くこと、
または、前記被験者が手拍子を打つこと、のいずれか1つまたは組合せである、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1のタスクにおける前記被験者が提示された課題の回答は、
前記被験者が音声で回答する、
前記被験者の動作で回答する、
または、前記被験者が操作するボタンで回答する、のいずれか1つまたは組合せである、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記認知機能評価手段は、MMSEスコアと相関する認知機能評価値を算出する、請求項1~5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する認知機能測定方法であって、
第1のタスクでの被験者の反応時間であるシングルタスク反応時間を測定するシングルタスク反応時間測定ステップと、
前記シングルタスク反応時間測定ステップによって前記シングルタスク反応時間を測定した後に、前記第1のタスクと第2のタスクとを前記被験者が同時に実行した場合の前記第1のタスクの前記被験者の反応時間であるデュアルタスク反応時間を測定するデュアルタスク反応時間測定ステップと、
前記シングルタスク反応時間測定ステップによって測定した前記シングルタスク反応時間の平均値
に対する前記デュアルタスク反応時間測定ステップによって測定した前記デュアルタスク反応時間の平均値
の遅れがプラス傾向になる場合に認知機能が低下していると評価し、前記シングルタスク反応時間の平均値に対する前記デュアルタスク反応時間の平均値の遅れがマイナス傾向になる場合に認知機能が正常であると評価する認知機能評価ステップと、
を含む認知機能評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載した認知機能評価方法をコンピュータに実行させることを特徴とする認知機能評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知症の進行を遅らせるため、認知症を早期に発見し早期に治療を開始することに関心が高まっている。認知症を発見するための認知機能の検査方法として、ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination:MMSE)、長谷川式認知症スケール等が知られている。これらの検査は、評価者が被験者と対面し評価者が発する質問に対し被験者が回答する内容で認知機能を検査する。このような方法は、被験者ごとに検査を実施する評価者が必要であるため、簡便な方法とは言えなかった。かかる課題を解決する技術として、体を動かしながら思考するデュアルタスクによって認知機能を評価するデュアルタスク遂行能力評価方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載する技術は、被験者の回答を評価者が解析して回答スコアを算出するため、解析処理が煩雑であり作業負荷が高いという問題があった。また、出願人は、被験者が実行するタスクを工夫することによって認識機能の低下を精度よく評価する方法を見出した。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、評価者の作業負担が少なく、かつ、被験者の認知機能を精度よく評価することができる情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明では、第1のタスクでの被験者の反応時間であるシングルタスク反応時間を測定し、反応時間を測定した後に、第1のタスクと第2のタスクとを被験者が同時に実行した場合の第1のタスクの被験者の反応時間であるデュアルタスク反応時間を測定し、シングルタスク反応時間の平均値と、デュアルタスク反応時間の平均値との差異から認知機能を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したように構成した本発明によれば、評価者の作業負担が少なく、かつ、被験者の認知機能を精度よく評価することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例にかかる情報処理装置100の構成を示すブロック図である。
【
図2】コンテンツ記憶部121に記憶するコンテンツの例を示す説明図である。
【
図3】測定結果記憶部122のデータ構成の一例を示す説明図である。
【
図4】情報処理装置100が実行する認知機能評価処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】情報処理装置100が実行するシングルタスク反応時間測定処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】情報処理装置100が実行するデュアルタスク反応時間測定処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照し本願にかかる情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラムを実施するための形態である実施例を説明する。以下の説明は、本願の実施の形態の例示であり、本願にかかる情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラムは、これらの実施例に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本実施例にかかる情報処理装置100の構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、被験者に対し課題を提示するとともに、被験者への課題提示から回答までの時間(以下、シングルタスク反応時間という。)を測定する。情報処理装置100は、被験者に対し動作の指示と課題を提示するとともに、被験者への課題提示から回答までの時間(以下、デュアルタスク反応時間という。)を測定する。情報処理装置100は、シングルタスク反応時間とデュアルタスク反応時間から認知機能を評価する。
【0011】
情報処理装置100は、
図1に示すように、制御部110と、記憶部120と、出力部130と、入力部140と、通信部150とを備える。
【0012】
制御部110は、記憶部120に記憶する種々のプログラムおよび制御情報を展開して実行することにより、情報処理装置100全体および各部の動作を制御する。制御部110は、シングルタスク提示部111、デュアルタスク提示部112、回答検出部113、反応時間測定部114、認知機能評価部115のそれぞれとして機能する。
【0013】
記憶部120は、コンテンツ記憶部121と、測定結果記憶部122と、図示しない、各部を制御するためのプログラム、アプリケーションプログラム、各種制御情報、中間ファイル等を記憶する。
【0014】
コンテンツ記憶部121は、第1のタスクを実行する際に被験者に対し提示する課題のコンテンツ(静止画、動画、音声等)を記憶する。
図2は、コンテンツ記憶部121に記憶するコンテンツの例を示す説明図である。
図2に示すように、被験者に提示するコンテンツは、(a)表示装置の画面に表示した文字の色名を回答する(b)画面に表示した漢字の読み方を選択する(c)画面に表示した基準となる図形と同一の図形を選択する等である。課題のコンテンツは、これらを組合せてもよく、これらのほか被験者が認知機能に用いて回答する課題であればどのようなものであってもよい。
【0015】
コンテンツ記憶部121は、被験者が第1のタスクと同時に第2のタスクを実行する際に、第2のタスクである、被験者に対し動作を指示するコンテンツを記憶する。動作の指示のコンテンツは、例えば被験者が立って足踏みする場合は、画面に表示する「立って足踏みをしてください。」の文字である。このほか、被験者が行う動作は、被験者が椅子に座って足踏みする、被験者が椅子に立ったり座ったりする、被験者が両手または片手で膝を叩く、被験者が手拍子を打つ等でもよく、これらを組合せてもよい。被験者が実行する動作は、被験者の身体の状況(例えば足が痛い、半身が不自由等)に応じて選択してもよい。
【0016】
測定結果記憶部122は、被験者の第1のタスクの反応時間であるシングルタスク反応時間および被験者の第1のタスクと第2のタスクを同時に実行した際の反応時間であるデュアルタスク反応時間の測定結果やシングルタスク反応時間およびデュアルタスク反応時間の平均値の算出結果、認知機能評価結果等を記憶する。
図3は、測定結果記憶部122のデータ構成の一例を示す説明図である。
図3に示すように、被験者を識別する被験者IDと、シングルタスク反応時間と、デュアルタスク反応時間と、デュアルタスク反応時間の平均値(以下、D平均という。)と、シングルタスクとデュアルタスクの反応時間の差異(以下、D遅れという。)と、認知機能の算出結果である認知機能評価値と、その他の情報とを対応付けて記憶する。認知機能評価値は、被験者にミニメンタルステート検査を実施した場合に得られるMMSEスコアに対応する推定点数であり、MMSEスコアと同様に30点満点である。なお、評価値27点以下は、MMSEスコアと同様に軽度認知障害(MCI)の疑いとなる。このように、本実施例のような簡易な認知機能評価を適時実施することで認知機能の低下に早期に気づくことができ、早めに対応を採ることで認知症の進行を遅らせることができる。
【0017】
次に、制御部110で機能する、シングルタスク提示部111、デュアルタスク提示部112、回答検出部113、反応時間測定部114、認知機能評価部115について説明する。
【0018】
シングルタスク提示部111は、コンテンツ記憶部121に記憶する課題のコンテンツを読み出し、出力部130からコンテンツを出力する。より具体的には、シングルタスク提示部111は、静止画や動画のコンテンツを表示部131の画面に表示し、または音声のコンテンツをスピーカ132から出力する。
【0019】
デュアルタスク提示部112は、コンテンツ記憶部121に記憶する動作を指示するコンテンツと課題のコンテンツを読み出し、出力部130から動作を指示するコンテンツと課題のコンテンツを出力する。より具体的には、デュアルタスク提示部112は、動作と課題を提示する静止画や動画のコンテンツを表示部131に表示、または動作と課題を提示する音声のコンテンツをスピーカ132から出力する。動作の速さの目安として、例えばBPM(Beat Per Minute)100での音(メトロノーム音等)をスピーカ132から出力してもよい。
【0020】
回答検出部113は、被験者が発した課題に対する回答を検出する。より具体的には、回答検出部113は、被験者の発した音声や動作等の入力を入力部140で受付け、受付けた音声や動作等から回答を検出する。例えば、課題が「黒色の文字で「赤」と描いた画面」に対し回答方法が「文字の色を答えてください。」のように音声での回答を求める場合は、マイクロフォン142で収音し被験者が声を発したか否かを判断する。また、回答方法が「「文字」と「文字の色名」が同じ場合には右手を上げ、異なる場合には左手を上げてください。」のように動作での回答を求める場合は、カメラ143で撮像した被験者の画像から被験者の動作を検出する。回答検出部113は、さらに被験者の回答が正解か否かを判断してもよい。
【0021】
反応時間測定部114は、シングルタスク提示部111またはデュアルタスク提示部112によって課題が提示されてから回答検出部113で被験者の回答を検出するまでの時間を計測する。反応時間測定部114は、シングルタスクおよびデュアルタスクで測定した反応時間を測定結果記憶部122に格納する。なお、反応時間測定部114は、シングルタスク提示部111またはデュアルタスク提示部112で課題が提示されてから正解の回答を検出するまでの時間を計測してもよい。
【0022】
認知機能評価部115は、測定結果記憶部122に記憶するシングルタスクの反応時間およびデュアルタスクの反応時間からシングルタスク反応時間の平均値とデュアルタスク反応時間の平均値を算出する。認知機能評価部115は、シングルタスク反応時間の平均値とデュアルタスク反応時間の平均値の差異に基づき被験者の認知機能を評価する。
【0023】
出力部130は、シングルタスク提示部111およびデュアルタスク提示部112がコンテンツ記憶部121から読み出したコンテンツを出力する。出力部130は、表示部131と、スピーカ132とを備える。表示部131は、静止画や動画を表示する、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の表示装置である。スピーカ132は、音声を出力する。なお、出力部130は、被験者が認識できるようにコンテンツを出力するものであれば、表示部131、スピーカ132以外の装置であってもよい。
【0024】
入力部140は、認知機能評価の開始を受付け、被験者の課題に対する回答を受付ける。入力部140は、操作部141と、マイクロフォン142と、カメラ143とを備える。操作部141は、キーボードやマウス、液晶ディスプレイ等と重畳して構成するタッチセンサ等である。マイクロフォン142は、被験者が発する音声を収音する。カメラ143は、被験者の全身または一部を静止画または動画として撮像する。
【0025】
通信部150は、図示しないネットワークを介して他の装置と互いに通信可能に接続し、他の装置との間でデータを送受信する。
【0026】
上述したように構成された情報処理装置100で実行する処理について説明する。
図4は、情報処理装置100が実行する認知機能評価処理手順を示すフローチャートである。
【0027】
情報処理装置100の操作部141は、認知機能評価の開始を受付ける(ステップS401)。認知機能評価の開始を受付けた場合、シングルタスク反応時間測定処理を実行する(ステップS402)。詳細は、
図5とともに後述する。次に、デュアルタスク反応時間測定処理を実行する(ステップS403)。詳細は、
図6とともに後述する。
【0028】
認知機能評価部115は、測定結果記憶部122に記憶するシングルタスクの反応時間を読み出し、シングルタスク反応時間の平均値を算出する(ステップS404)。認知機能評価部115は、測定結果記憶部122に記憶するデュアルタスク反応時間を読み出し、デュアルタスク反応時間の平均値(D平均)を算出する(ステップS405)。認知機能評価部115は、シングルタスク反応時間の平均値に対するデュアルタスク反応時間の平均値の遅れ(D遅れ)を算出する(ステップS406)。
【0029】
認知機能評価部115は、被験者の認知機能を評価する(ステップS407)。より具体的には、下記数式(1)に被験者の測定値を入力することによって、MMSEスコアに相当する値である認知機能評価値を算出することができる。
認知機能評価値=a*D平均-b*D平均遅れ ・・・ 数式(1)
【0030】
出願人は、被験者の認知機能を簡易に評価する方法を検討するなかで、被験者のシングルタスク反応時間およびデュアルタスク反応時間を測定し、認知機能が正常な被験者は、「デュアルタスクによる反応の遅れ」<「学習効果による反応の迅速化」であり、D遅れがマイナス傾向になること、一方、認知機能が低下している被験者は、「デュアルタスクによる反応の遅れ」>「学習効果による反応の迅速化」であり、D遅れがプラス傾向となることを見出した。このような測定結果に基づき、MMSEスコアを目的変数、MMSEスコアと相関関係のある変数を説明変数とした増減法にて重回帰分析を行うことで、被験者のMMSEスコアを推定する数式(1)を得た。なお、aおよびbは、定数である。
【0031】
次に、シングルタスク反応時間測定処理の詳細について説明する。
図5は、情報処理装置100が実行するシングルタスク反応時間測定処理手順を示すフローチャートである。
【0032】
シングルタスク提示部111は、コンテンツ記憶部121に記憶する課題のコンテンツを読み出し、読み出した課題のコンテンツを出力する(ステップS501)。より具体的には、シングルタスク提示部111は、コンテンツ記憶部121に記憶する課題のコンテンツを読み出し、読み出した課題のコンテンツが静止画または動画であれば表示部131の画面に表示する。また、読み出した課題のコンテンツが音声であればスピーカ132から出力する。
【0033】
回答検出部113は、被験者の回答を検出したか否かを判断する(ステップS502)。より具体的には、課題に対する回答として音声による回答を求めている場合、回答検出部113は、収音しているマイクロフォン142が音声の入力を受付けたか否かによって回答を検出する。また、課題に対する回答として動作による回答を求めている場合、回答検出部113は、撮像しているカメラ143が被験者の動作の入力を受付けたか否かによって回答を検出する。被験者の回答を検出しない場合(ステップS502:No)、ステップS502に戻り、回答を検出する。
【0034】
被験者の回答を検出した場合(ステップS502:Yes)、反応時間測定部114は、課題のコンテンツを出力してから被験者の回答を検出するまでの時間を反応時間として測定する(ステップS503)。反応時間測定部114は、反応時間を反応結果記憶部122に格納する。なお、所定時間を経過するまで回答がない場合は、測定不能として平均値算出の対象としない、または所定時間を反応時間としてもよい。
【0035】
シングルタスク提示部111は、コンテンツ記憶部121に記憶する課題のコンテンツが終了したか否かを判断する(ステップS504)。課題のコンテンツが終了しないと判断した場合は(ステップS504:No)、ステップS501に戻り、新たな課題のコンテンツを出力する。課題のコンテンツが終了したと判断した場合は(ステップS504:Yes)、シングルタスク反応時間測定処理を終了する。
【0036】
デュアルタスク反応時間測定処理の詳細について説明する。
図6は、情報処理装置100が実行するデュアルタスク反応時間測定処理手順を示すフローチャートである。
【0037】
デュアルタスク提示部112は、コンテンツ記憶部121に記憶する動作指示のコンテンツを読み出し、読み出した動作指示のコンテンツを出力する(ステップS601)。動作指示のコンテンツは、例えば「足踏みをしましょう。」のような文字での指示を表示部131の画面に表示する。また、動作指示のコンテンツが音声であればスピーカ132から音声を出力する。さらに、動作指示のコンテンツは、動作の指示を出力したうえで、足踏みのための一定速度のリズムを音声でスピーカ132から出力してもよい。
【0038】
デュアルタスク提示部112は、コンテンツ記憶部121に記憶する課題のコンテンツを読み出し、読み出した課題のコンテンツを出力する(ステップS602)。以下、ステップS602~ステップS605の処理は、
図5で説明したステップS501~ステップS504の処理と同一であるため、上述した説明を参照し、ここでの説明を省略する。
【0039】
このように、上述した情報処理装置においてシングルタスク反応時間とデュアルタスク反応時間を測定することによって、被験者ごとに評価者が対面で質問等を行い被験者の回答を判断することなく、簡易な方法で被験者の認知機能を評価することができる。また、シングルタスク反応時間とデュアルタスク反応時間の差異(D遅れ)を用いた数式(1)でMMSEスコアを推定するができ、被験者の認知機能を適切に評価することができる。
【0040】
上述したシンクルタスク反応時間およびデュアルタスク反応時間の計測では、課題に対する回答が正解か不正解かは判断しなかったが、コンテンツ記憶部121に課題ごとの正解を記憶しておき、回答検出部113においてコンテンツ課題に対する回答が正解か不正解かを判断してもよい。
【0041】
この場合、反応時間測定部114は、正解の反応時間を反応結果記憶部122に格納する。認知機能評価部115は、測定結果記憶部122に記憶するシングルタスク反応時間およびデュアルタスク反応時間を読み出し、シングルタスク反応時間の平均値およびデュアルタスク反応時間の平均値を算出する。認知機能評価部115は、D平均、D平均遅れを正解を回答した場合の反応時間の平均値を用いて認知機能評価値を算出する。
【0042】
なお、シングルタスク反応時間測定処理およびデュアルタスク反応時間測定処理において、プログラムで回答を検出し反応時間を測定するのではなく、担当者によって被験者が回答したか否か、被験者の回答が正解か否かを判断し、課題の提示から被験者が反応するまでの反応時間を計測し、計測した反応時間を反応時間記憶部122に記載してもよい。
【0043】
回答検出部113において、回答が正解か否かを判断する場合の処理について説明する。回答検出部113は、カメラ143で撮像した被験者の画像から骨格情報を取得する。回答検出部113は、被験者の骨格情報から右肩と右手首の距離、右肩と右ひじの距離、左肩と左手首の距離、左肩と左ひじの距離を算出する。回答検出部113は、右肩と右ひじの距離より右肩と右手首の距離の方が近いか否かを判定する(すなわち、右ひじを曲げているか否かを判定する)。また、回答検出部113は、左肩と左ひじの距離より左肩と左手首の距離の方が近いか否かを判定する(すなわち、左ひじを曲げているか否かを判定する)。回答検出部113は、両肩で水平方向に画面を分割し、右または左の手首の位置が鼻と同じ領域に属しているかを判定する。回答検出部113は、右ひじまたは左ひじを曲げている、または、右または左の手首の位置が鼻と同じ領域に属すると判定した場合には、右または左の手を上げていると判断する。
【0044】
また、他の方法として、回答検出部113は、人物が右手または左手を挙げた画像で学習させた学習モデルに用いて、カメラ143で撮像した被験者の画像が右手を挙げた画像であるか左手を挙げた画像であるかを判断してもよい。さらに、被験者の両手に回答のためのボタンを持たせ、ボタンを押下することで右または左の回答を受け付けてもよい。
【0045】
上述した、カメラ143で撮像した画像を解析する処理は、情報処理装置100で実行するほか、通信部150がネットワークを介して接続するサーバ装置で実行してもよい。負荷の高い処理を別の装置で実行することによって、情報処理装置100は、比較的処理能力が高くない装置であっても認知機能評価処理を実行することができる。情報処理装置100は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末やその他のコンピュータであってもよい。
【0046】
上述した実施例にかかる情報処理装置100のハードウェア構成は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサを含み、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置、通信制御装置等を備えた通常のコンピュータであり、ROMやRAM、HDD等に記憶されたプログラムをCPU等が読み出し動作させることによって、上述した構成や機能を実現する。なお、制御部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等の電子回路であってもよい。
【0047】
情報処理装置100で動作するプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納しておき、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供したり、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD、USBメモリ、SDカード等のコンピュータで読取り可能な記録媒体に記録し提供してもよい。また、上述した機能や処理を実現するプログラムは、API(Application Programming Interface)やSaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングという利用形態で提供してもよい。
【0048】
上述した実施例では、情報処理装置100を1つの装置として説明したが、情報処理装置100の機能を複数の装置として構成してもよい。本発明は、上述した実施例そのままに限定されるものではなく、必ずしも物理的に図示したように構成されている必要はない。また、本発明は、実施例で説明した構成要素の全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じ、任意の単位で機能的または物理的に分割、統合、入替、変形または削除して構成することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…情報処理装置、110…制御部、111…シングルタスク提示部、112…デュアルタスク提示部、113…回答検出部、114…反応時間測定部、115…認知機能評価部、120…記憶部、121…コンテンツ記憶部、122…測定結果記憶部、130…出力部、131…表示部、132…スピーカ、140…入力部、141…操作部、142…マイクロフォン、143…カメラ、150…通信部
【要約】
【課題】評価者の作業負担が少なく、かつ、被験者の認知機能を精度よく評価することができる情報処理装置、認知機能評価方法、および認知機能評価プログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置100において、反応時間測定部114は、第1のタスクでの被験者の反応時間であるシングルタスク反応時間を測定し、反応時間測定部114は、シングルタスク反応時間を測定した後に、第1のタスクと第2のタスクとを被験者が同時に実行した場合の第1のタスクの被験者の反応時間であるデュアルタスク反応時間を測定し、認知機能評価部115は、シングルタスク反応時間の平均値と、デュアルタスク反応時間の平均値との差異から認知機能を評価する。
【選択図】
図1