(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20241111BHJP
H02S 20/30 20140101ALN20241111BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G7/00 603
H02S20/30 A
(21)【出願番号】P 2023212972
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523351944
【氏名又は名称】ノータス研究所株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510054773
【氏名又は名称】高橋 隆造
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 隆造
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065387(JP,A)
【文献】特開2021-175383(JP,A)
【文献】特表2020-534805(JP,A)
【文献】特開2021-029158(JP,A)
【文献】特開2015-092850(JP,A)
【文献】特開2023-034041(JP,A)
【文献】特開2020-130075(JP,A)
【文献】登録実用新案第3177129(JP,U)
【文献】登録実用新案第3189168(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 - 9/20
E04D 1/30 - 13/18
H01L 31/04
H02S 20/30
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルの下で植物を栽培することを可能とする植物栽培システムであって、
前記植物を栽培するための農地を屋根のように覆う複数の太陽光発電パネルと、
前記複数の太陽光発電パネルのそれぞれの向きを変更可能な複数の駆動部と、
前記複数の太陽光発電パネルのそれぞれの裏面に設けられた複数の照明部と、
前記複数の駆動部のそれぞれの動きを制御するための制御部とを備え、
隣り合う前記太陽光
発電パネルの端の辺には、弾性部材(3)が設けられ、前記複数の太陽光
発電パネルで屋根を構成している状態では、隣り合う前記太陽光
発電パネルの間に隙間が生じ
ず、かつ前記太陽光発電パネルの間に段差が生じないように構成されており、
前記複数の照明部は、前記複数の太陽光発電パネルによって発電された電力を用いて光を発して、前記植物に光を当てることを特徴とする、植物栽培システム。
【請求項2】
前記制御部は、向きを変更させたい前記太陽光発電パネルが指定されたら、指定された前記太陽光発電パネルに対応する前記駆動部を駆動させて、前記太陽光発電パネルの向きを変更することを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記向きを変更させたい太陽光
発電パネルの指定は、作業者又は作業車が農地に入るときに行われることを特徴とする、請求項2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記向きを変更させたい太陽光
発電パネルの指定は、光を当てたい前記農地の領域を指定することによって行われることを特徴とする、請求項2に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記制御部は、
光を当てたい前記農地のエリアを指定させる手段と、
指定されたエリアに対応する前記太陽光発電パネルを選定して、選定された前記太陽光発電パネルの角度を算出する手段と、
選定された前記太陽光発電パネルが算出された角度となるように、対応する前記駆動部を駆動させる手段とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、
前記指定されたエリアに光を当てることができる前記照明部を選定する手段と、
選定された前記照明部の照度又は照明時間を制御する手段とを備えることを特徴とする、請求項5に記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記制御部は、光を当てるエリアが指定されたら、指定されたエリアに対応する前記照明部の照度又は照明時間を調整することを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項8】
前記植物栽培システムは、制御のためのスケジュールを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記スケジュールに基づいて、前記駆動部を駆動させることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項9】
前記植物栽培システムは、気象センサをさらに備え、
前記制御部は、前記気象センサからの情報に基づいて、前記駆動部を駆動させることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項10】
前記植物栽培システムは、制御のためのスケジュールを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記スケジュールに基づいて、前記照明部の照度又は照明時間を制御することを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項11】
前記植物栽培システムは、前記植物の生育を監視する生育モニタリング部をさらに備え、
前記制御部は、前記生育モニタリング部から得られる情報に基づいて、前記駆動部を駆動させることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項12】
前記植物栽培システムは、前記植物の生育を監視する生育モニタリング部をさらに備え、
前記制御部は、前記生育モニタリング部から得られる情報に基づいて、前記照明部の照度又は照明時間を制御することを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項13】
前記複数の太陽光発電パネルで屋根を構成している状態において、雨が一方に流れるように、前記複数の太陽光発電パネルは、傾斜を付けて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電用パネルの下で植物を栽培することを可能とした植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるソーラシェアリングのように、太陽光パネルの下で植物を栽培する場合、パネルの間隔を空けて、光を下の植物に当てるようにするか、若しくは、パネルの裏に光源を付けて、植物に光が当たるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-208716号公報
【文献】特許5960332号公報
【文献】特開2014-236200号公報
【文献】特開2016-059118号公報
【文献】特開2015-126683号公報
【文献】特開2018-093854号公報
【文献】特開2018-093853号公報
【文献】特開2018-099008号公報
【文献】特開2013-214644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光が下に射し込むようにパネルの間隔を空けると、土地面積に対して、パネルの数が少なくなり、土地面積に対する発電効率が低くなる。
また、パネルを固定して、パネルの裏の光源で下の植物に光を当てるようにした場合、パネルが固定されているので、作業車などの農機具を農地に入れるのが困難となる。
【0005】
従来の人工的な栽培環境の構築は、ハウス栽培や植物工場に限られていたが、ハウス栽培や植物工場では、作付け可能な植物は限られており、土地利用型作物の作付けは難しかった。
【0006】
本発明は、土地を有効に使って出来る限り太陽光発電パネルを配置しつつも、作業車などの農機具を入れるのを可能とし、植物の栽培を可能とする植物栽培システムを提供することを目的とする。
【0007】
特許文献1~4には、太陽光パネルに雨樋を付けることに関する発明が記載されており、太陽光パネルが可動するものではない。
特許文献2には、照明(22)(括弧内の符号は特許文献に記載の符号であり、以下同様とする。)が設けられて下の植物に光が当てられているが、パネルが可動するものではない。
【0008】
特許文献5には、太陽光発電システムを、作業者が立ち入る場所に設置する場合であっても、作業の妨げにならないものにすることを課題としている。特許文献5に記載の太陽光発電システム(10)は、太陽光パネル(20)と、太陽光パネル(20)を回転自在に支持する支持機構(30)と、太陽光パネル(20)を回転させる駆動機構(40)と、太陽光パネル(20)の受光面(21)が太陽の方向を向き続けるように駆動機構(40)を制御する追尾動作を行う制御部(70)とを備えている。また、太陽光発電システム(10)は、作業者によって太陽光パネル(20)の停止指令が入力される停止入力部(84)を備えている。制御部(70)は、停止入力部(84)に停止指令が入力されると、追尾動作を中止し、太陽光パネル(20)が所定の停止位置で停止した状態に保たれるように駆動機構(40)を制御する停止動作を行う。
【0009】
特許文献5によれば、太陽光発電システム(10)において停止動作を行うようにしたことにより、太陽光発電システム(10)を作業スペースに設置する場合に、太陽光パネル(20)を作業者の妨げにならない位置に保持することができる。
【0010】
しかし、特許文献5には、土地に対する太陽光発電パネルの配置の効率化や下の植物へ光を如何にして与えるかということについての記載がない。
【0011】
特許文献6~8には、太陽光発電パネルの裏面にLEDを設ける発明が記載されている。しかし、特許文献6~8には、土地に対する太陽光発電パネルの配置の効率化や下の植物へ光を如何にして与えるかということについての記載がない。
【0012】
特許文献9には、太陽光発電パネルの裏面にLED照明部35を設けて、下で、植物を育てることができる構成について開示している。しかし、特許文献9には、土地に対する太陽光発電パネルの配置の効率化や下の植物へ光を如何にして与えるかということについての記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。
本発明は、太陽光発電パネルの下で植物を栽培することを可能とする植物栽培システムであって、植物を栽培するための農地を屋根のように覆う複数の太陽光発電パネルと、複数の太陽光発電パネルのそれぞれの向きを変更可能な複数の駆動部と、複数の太陽光発電パネルのそれぞれの裏面に設けられた複数の照明部と、複数の駆動部のそれぞれの動きを制御するための制御部とを備える。
隣り合う前記太陽光発電パネルの端の辺には、弾性部材(3)が設けられ、複数の太陽光発電パネルで屋根を構成している状態では、隣り合う太陽光発電パネルの間に隙間が生じず、かつ太陽光発電パネルの間に段差が生じないように構成されている。
複数の照明部は、複数の太陽光発電パネルによって発電された電力を用いて光を発して、植物に光を当てる。
【0014】
制御部は、向きを変更させたい太陽光発電パネルが指定されたら、指定された太陽光発電パネルに対応する駆動部を駆動させて、太陽光発電パネルの向きを変更する。
【0015】
向きを変更させたい太陽光パネルの指定は、作業者又は作業車が農地に入るときに行われる。
【0016】
向きを変更させたい太陽光パネルの指定は、光を当てたい農地の領域を指定することによって行われる。
【0017】
制御部は、
光を当てたい農地のエリアを指定させる手段と、
指定されたエリアに対応する太陽光発電パネルを選定して、選定された太陽光発電パネルの角度を算出する手段と、
選定された太陽光発電パネルが算出された角度となるように、対応する駆動部を駆動させる手段とを備える。
【0018】
制御部は、さらに、
指定されたエリアに光を当てることができる照明部を選定する手段と、
選定された照明部の照度又は照明時間を制御する手段とを備える。
【0019】
制御部は、光を当てるエリアが指定されたら、指定されたエリアに対応する照明部の照度又は照明時間を調整する。
【0020】
植物栽培システムは、制御のためのスケジュールを記憶する記憶部をさらに備える。
制御部は、スケジュールに基づいて、駆動部を駆動させる。
【0021】
植物栽培システムは、気象センサをさらに備える。
制御部は、気象センサからの情報に基づいて、駆動部を駆動させる。
【0022】
植物栽培システムは、制御のためのスケジュールを記憶する記憶部をさらに備える。
制御部は、スケジュールに基づいて、照明部の照度又は照明時間を制御する。
【0023】
植物栽培システムは、植物の生育を監視する生育モニタリング部をさらに備える。
制御部は、生育モニタリング部から得られる情報に基づいて、駆動部を駆動させる。
【0024】
植物栽培システムは、植物の生育を監視する生育モニタリング部をさらに備える。
制御部は、生育モニタリング部から得られる情報に基づいて、照明部の照度又は照明時間を制御する。
複数の太陽光発電パネルで屋根を構成している状態において、雨が一方に流れるように、複数の太陽光発電パネルは、傾斜を付けて配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の太陽光発電パネルが屋根状に農地を覆っているので、土地を有効に使って出来る限り太陽光発電パネルを配置することができる。
そして、太陽光発電パネルは、駆動部によって駆動できるので、作業車などの農機具を入れることが可能となっている。
さらに、太陽光発電パネルの裏面に照明部を設けることで、太陽光発電パネルの下でも、植物の栽培が可能となっている。
【0026】
光を当てたいエリアを指定して、太陽光発電パネルを移動させたり、照明部の照度や照明時間を制御したりすることで、植物の生育をコントロールすることが期待出来る。
【0027】
気象センサやスケジュール、生育モニタを利用して、太陽光発電パネルを移動させたり、照明部の照度や照明時間を制御したりすることで、植物の生育をコントロールすることが期待出来る。
【0028】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における植物栽培システムの概要を示す図である。
図1(a)は、植物栽培システムの側面図である。
図1(b)は、太陽光発電パネル1を動かしたときの植物栽培システムの側面図である。
図1(c)は、植物栽培システムの平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における植物栽培システムの概要を示す図である。
図2(a)は、照明部4からの光を当てたいエリアA(ハッチングで示したエリア)を指定する際の表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
図2(b)は、太陽光発電パネル1を動かしたときの植物栽培システムの側面図である。
図2(c)は、照明部4の一部の照明の照度を上げたときの植物栽培システムの側面図である。
【
図3】
図3は、植物栽培システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
また、植物栽培システムの概要について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態における植物栽培システムは、農地で、植物を栽培している。農地には、基礎5が設けられている。基礎5には、支柱2が設置されている。支柱2の上部には、駆動部6が取付けられている。太陽光発電パネル1は、駆動部6を介して、支柱2に取付けられている。
【0031】
たとえば、二本の支柱2に、一軸方向に回転する回転軸を有する駆動部6を取付けて、当該駆動部6の回転軸に一枚の太陽光発電パネル1を取付けるようにするなどしたら良いが、他にも周知のあらゆる手法を用いることができる。また、二軸以上の回転方向を有する駆動部6が用いられてもよい。すなわち、太陽光発電パネル1の向きを変更することが可能であれば、支柱2及び駆動部6の具体的な構成については、周知のあらゆる手法を用いることがで、本発明を限定するものではない。
【0032】
太陽光発電パネル1の裏面には、照明部4が取付けられている。照明部4は、たとえば、LED照明などが用いられるとよい。
図1(c)に示すように、複数の太陽光発電パネル1が、農地を屋根のように覆っている。各太陽光発電パネル1の端には、ゴム板などの弾性部材3が取付けられていて、隙間から、雨が農地に入らないようにしている。ただし、本発明において、弾性部材3は、必須の構成ではない。
【0033】
図1(a)に示すように、太陽光発電パネル1は、雨が一方に流れるように、傾斜を付けて配置されている。ただし、このような傾斜は、本発明において、必須の構成ではない。
また、適宜、雨樋や貯水タンク、給水ポンプ、配水パイプなどが栽培システムに設けられていてもよいが、本発明において、必須の構成ではない。
【0034】
図1(b)に示すように、作業者が農地に入る場合や、農作業車を農地に投入する場合には、作業者が操作して、太陽光発電パネル1の向きを変えて、作業者や作業車が入りやすいようにすることが出来る。
【0035】
照明部4は、太陽光発電パネル1が発電した電力を用いて、光を発する。日中であれば、太陽光発電パネル1が発電した電力を、そのまま照明部4に供給することで、照明部4は、植物に光を照らす。日照が少ないときや夜間での照明に備えて、適宜、植物栽培システムは蓄電部9を備えている。照明部4は、蓄電部9からの電力も利用して、光を発する。
【0036】
どの照度の光をどの程度の時間必要とするかは、栽培する植物によって異なる。
したがって、植物栽培システムは、育てている植物に適した照度や照明時間(光を当てている時間)を照明部4に発光させる。
【0037】
降水時には、植物栽培システムは、太陽光発電パネル1を傾けて、雨水が農地に届くようにする。また、雨が多すぎて、植物の栽培に不向きな場合は、逆に、降水時でも、太陽光発電パネル1を閉じたままの屋根状にしておいて、農地に雨が届かないようにする。
【0038】
図2(a)に示すように、光を当てたいエリアAを表示部13に表示される画面で指定することができるようにしておく。たとえば、エリアAの植物の生育が悪いとする。その場合、
図2(b)に示すように、エリアAに照明部4からの光がより多く当たるように、エリアAの周辺の太陽光発電パネル1の角度を調整するようにする。また、
図2(c)に示すように、エリアAの周辺の照明部4の照度だけを上げるようにして、エリアAの植物の生育を促すようにすることも出来る。たとえば、エリアAだけ、エリアA以外と比べて、照明部4からの照明時間を長くするようにしてもよい。
【0039】
このように、本発明の植物栽培システムは、照明部4による光のコントロールに加えて、栽培に必要な水の量もコントロールすることを可能としている。
【0040】
次に、植物栽培システムの機能的構成について説明する。
図3に示すように、植物栽培システムは、複数の太陽光発電パネル1と、複数の照明部4と、複数の駆動部6と、制御部7と、操作部8と、蓄電部9と、気象センサ10と、生育モニタリング部11と、通信部12と、表示部13と、記憶部14とを備える。
なお、電力系統の配線の記載を省略している。
【0041】
太陽光発電パネル1で発電された電力は、照明部4及び蓄電部9に供給される。制御部7は、適宜、発電電力の分配を制御する。また、夜間に照明部4で照明を行う場合には、制御部7は、蓄電部9からの電力を照明部4に供給するように、制御する。また、制御部7は、照明部4の照度及び照明時間を制御する。
【0042】
制御部7は、駆動部6を制御することで、太陽光発電パネル1の向きを調整する。
【0043】
操作部8は、作業者が手動で太陽光発電パネル1を動かすための装置である。制御部7は、操作部8からの指示内容に応じて、駆動部6を駆動して、太陽光発電パネル1の向きを変える。
【0044】
気象センサ10は、降水量や気温、湿度、風速などを検出するセンサである。検出された気象情報は、制御部7に入力される。制御部7は、気象情報に基づいて、照明部4及び駆動部6を制御する。たとえば、降雨時、制御部7は、太陽光発電パネル1を上げたり、下げたりする。風速が強いとき、制御部7は、太陽光発電パネル1を屋根状に閉じるようにするとよい。
【0045】
生育モニタリング部11は、カメラや画像認識処理、人工知能などによって、農地で育てている植物の生育を監視するための装置である。生育モニタリング部11は、監視した情報、たとえば、生育の悪いエリアに関する情報を、制御部7に入力する。制御部7は、入力された生育情報に基づいて、照明部4及び駆動部6を制御する。たとえば、制御部7は、生育の悪いエリアの照度を強くしたり、太陽光発電パネル1を傾けたり、自然の日照が当たるようにしたりする。
【0046】
通信部12は、外部の通信装置と通信することができる。たとえば、制御部7の動作を、インターネットを介して、外部から制御することも可能である。
【0047】
表示部13は、タッチパネル等の表示装置である。本実施形態では、光を当てたいエリアを表示及び指定するのに使用する。その他、動かしたい太陽光発電パネル1を指定するために表示部13を用いてもよい。タッチパネルを用いる場合は、表示部13は、操作部8としても機能する。
【0048】
記憶部14には、太陽光発電パネル1の動作スケジュールや照明部4の照明スケジュールが記憶されている。
動作スケジュールは、季節や時間帯に応じた太陽光発電パネル1の角度などの情報である。
照明スケジュールは、季節や時間帯に応じた照度や照明時間などの情報である。
どのようなスケジュールとするかは、栽培する植物の種類に応じて、適宜決めるとよい。
【0049】
次に、制御部7の動作について説明する。
図4に示すように、制御部7は、操作部8からの操作開始時があった場合(S101)、操作部8の操作に応じて、駆動部6を制御して(S102)、太陽光発電パネル1の角度を調整する。
【0050】
図5に示すように、制御部7は、記憶部14に記憶されている制御スケジュールが到来したら(S201)、制御スケジュールの内容に従って、駆動部6を制御して(S102)、太陽光発電パネル1の角度を調整する。
【0051】
図6に示すように、制御部7は、気象センサ10にて、降雨や風速などの情報を検出したら(S301)、検出内容に応じて、駆動部6を制御して(S102)、太陽光発電パネル1の角度を調整する。
どのような検出内容に応じて、どのように駆動部6を制御するから、予め決めておくとよい。たとえば、風速何メートル以上なら、太陽光発電パネル1を閉じるとか、降水量が何ミリ以上なら太陽光発電パネル1を上げるとか、そのようなルールが予め決められているとよい。
【0052】
図7に示すように、制御部7は、記憶部14に記憶されている制御スケジュールが到来したら(S401)、制御スケジュールの内容に従って、照明部4の照度や照明時間を制御する(S402)。
【0053】
図8を用いて、照明を強く当てたいエリアがある場合の動作について説明する。
照明を当てたいエリアが指定されたとする(S501)。この指定は、通信部12によって、外部から指定されても良いし、表示部13の操作によって指定されても良い。
【0054】
制御部7は、指定したエリアに照明が当たる太陽光発電パネル1の角度を算出する(S502)。この算出方法は、特に限定されないが、たとえば、通常、真上の一枚の太陽光発電パネル1の裏面に取付けられた照明部4からの光が当該エリアに当たっていたとすると、当該エリアに、隣接するもう一枚の太陽光発電パネル1からの照明が当たるように、隣り合う二枚の太陽光発電パネル1の角度を、たとえば、
図2(b)に示したように、ハの字状にするように調整するようにするとよい。
【0055】
さらに、オプションとして、強く光を当てたい場合には、制御部7は、指定したエリアに当たる照明部4を選択して(S504)、選択した照明部4の照度又は照明時間(光を当てる時間)を制御する(S505)。
【0056】
このように、光を強く当てたいエリアの太陽光発電パネル1の角度を調整したり、照明部の光量及び照明時間を調整したりすることで、生育が遅れている植物に多くの光を当てることで、生育を促すことが出来る。
【0057】
なお、光の当てる量を少なくしたい場合に、
図8の動作が適用できることは言うまでもない。
【0058】
図8では、太陽光発電パネル1の角度を調整することとしたが、太陽光発電パネル1の角度を調整せずに、
図9に示すように、照明部4の照度又は照明時間のみで、光の量を調整することも可能である。
【0059】
図9において、照明を当てたいエリアが指定されたとする(S601)。制御部7は、指定されたエリアに照明が当たる照明部4を選択して(S602)、選択した照明部4の照度又は照明時間を制御する(S603)。
【0060】
このように、照明部4の照度及び照明時間の制御のみで、指定したエリアに当たる光の量をコントロールすることも可能である。
【0061】
もちろん、光の当てる量を少なくしたい場合に、
図9の動作が適用できることは言うまでもない。
【0062】
本実施形態の植物栽培システムによれば、太陽光発電パネルを設置はするものの農地をそのまま利用することができるので、既存の土地を有効に活用しつつ栽培が可能となる。
【0063】
太陽光発電パネルの裏面の照明部によって、植物に光を当てる育て方でよければ、太陽光発電パネルは閉じておけばよい。
日光を植物に当てる必要あるときは、太陽光発電パネルを開けておけばよい。
このようにして、可動式の太陽光発電パネルを用いることで、日照をコントロールすることができる。
【0064】
さらに、可動式の太陽光発電パネルを用いれば、雨水もコントロールすることができる。雨水が必要ないときは、太陽光発電パネルを閉じておけばよいし、雨水が必要なときは、太陽光発電パネルを開けておけばよい。
【0065】
基本的には、太陽光発電パネルを屋根状に閉じておく構成であっても、照明部は、発電電力を利用して植物に光を当てることができる。したがって、太陽光発電パネルを屋根のように農地に出来る限り配置することができる。照明以外で余った電力を蓄電したり、別に送電したりすることもできる。
【0066】
このように、本実施形態は、土地を有効に使って出来る限り太陽光発電パネルを配置しつつも、作業車などの農機具を入れるのを可能とし、様々な品種を作付け可能とする植物栽培システムとなる。
【0067】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、太陽光発電パネルを用いた植物栽培システムであり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 太陽光発電パネル
2 支柱
3 弾性部材
4 照明部
5 基礎
6 駆動部
7 制御部
8 操作部
9 蓄電部
10 気象センサ
11 生育モニタリング部
12 通信部
13 表示部
14 記憶部
【要約】
【課題】土地を有効に使って出来る限り太陽光発電パネルを配置しつつも、作業車などの農機具を入れるのを可能とし、植物の栽培を可能とする植物栽培システムを提供する。
【解決手段】植物栽培システムは、植物を栽培するための農地を屋根のように覆う複数の太陽光発電パネル1と、複数の太陽光発電パネル1のそれぞれの向きを変更可能な複数の駆動部6と、複数の太陽光発電パネル1のそれぞれの裏面に設けられた複数の照明部4と、複数の駆動部6のそれぞれの動きを制御するための制御部7とを備える。複数の照明部4は、複数の太陽光発電パネル1によって発電された電力を用いて光を発して、植物に光を当てることで、太陽光発電パネル1の下でも栽培を植物の可能としている。
【選択図】
図1