(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】測量地点調査RTKシステム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241111BHJP
G01S 19/43 20100101ALI20241111BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01S19/43
(21)【出願番号】P 2024104291
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 浩則
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰成
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315644(JP,A)
【文献】特開2004-170290(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205501(WO,A1)
【文献】特開2022-167438(JP,A)
【文献】特開平10-206154(JP,A)
【文献】特開平07-012570(JP,A)
【文献】特開平11-190632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00、21/00
G01S 5/00
19/42
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行政機
関による測量で記録された測量基準点座標情報に基づいて地面上に設置された測量基準点の場所を捜索する測量地点調査RTKシステムであって、
RTK測位精度を提供するRTKモジュールと、前記測量基準点座標情報、前記測量基準点の座標をRTK測位したRTK測位結果及び地図データを記録するデータベースサーバと、前記RTK測位結果の補正値を導出するとともに、補正済みの平面直角座標系の座標を出力するRTK座標変換・解析装置と、を有するRTK測量調査サーバと、
前記測量基準点の座標をRTK測位するRTKモジュールと、該RTK測位するRTKモジュールに備えられるGNSSアンテナを水平に維持するGNSSアンテナ水平調整機構と、前記RTK測位するRTKモジュールに備えられる前記GNSSアンテナの下方に固定されることで、前記測量基準点に向けてレーザ光を照射するとともに、前記GNSSアンテナ水平調整機構によって前記レーザ光の照射方向が鉛直下方に維持されるレーザ照射機構と、前記測量基準点の場所への、前記RTK測位するRTKモジュールの現在位置からの方向を表示する目標方向誘導灯機構と、前記RTK測量調査サーバの前記データベースサーバに記録された前記測量基準点座標情報を含む前記地図データを表示可能な表示器と、を有するRTK測量調査機器と、を備え、
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、
前記データベースサーバに記録された前記測量基準点座標情報及び発見された測量目印の前記RTK測位結果から4点を補正基準点として選出し、該補正基準点に基づき、前記測量基準点座標情報と前記RTK測位結果との誤差が最も小さな回転角、平行移動及び縮尺の各々の前記補正値を導出し、
さらに、前記測量基準点座標情報及び前記RTK測位結果から、発見された前記測量目印に位置合わせして測量する目印有りRTK測位を実施できた測量基準点、及び、前記測量目印が発見されることなく前記測量基準点座標情報に位置合わせして測量する目印無しRTK測位を実施した測量基準点のうち、前記目印無しRTK測位を実施した測量基準点を抽出し、前記補正値を用いて前記目印無しRTK測位を実施した測量基準点を補正した補正座標を、前記RTK測量調査機器の前記表示器において前記地図データ上に表示させることを特徴とする測量地点調査RTKシステム。
【請求項2】
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、
前記RTK測量調査機器の前記RTKモジュールによって前記測量目印をRTK測位したRTK測位結果を受信し、該RTK測位結果を前記平面直角座標系に変換するとともに、前記補正値を用いてX座標及びY座標を計算したXY補正座標として、前記RTK測量調査機器の前記表示器において前記地図データ上に表示させ、
さらに、前記XY補正座標と前記データベースサーバに記録された前記地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を前記平面直角座標系に変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算し、前記表示器において前記地図データ上に表示させることを特徴とする請求項1に記載の測量地点調査RTKシステム。
【請求項3】
前記RTK測量調査機器は、前記表示器において、前記補正値を用いて前記目印無しRTK測位した測量基準点を補正した前記補正座標とともに、前記RTK測位するRTKモジュールによってRTK測位した測量基準点を、前記地図データ上に表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の測量地点調査RTKシステム。
【請求項4】
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、4点の前記補正基準点に基づいて導出した前記補正値を保存した状態で、複数の前記測量基準点と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を前記平面直角座標系に変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算することにより、
複数の前記測量基準点と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異の計算を、前記XY補正座標と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異の計算とともに一括で処理することを特徴とする請求項2に記載の測量地点調査RTKシステム。
【請求項5】
前記RTK測量調査機器は、前記RTK測位するRTKモジュールによってRTK測位した前記RTK測量調査機器の自己位置から、前記測量目印の場所までの距離及び方位角を、前記XY補正座標を用いて算出するとともに、前記目標方向誘導灯機構により、前記測量基準点の場所を方向表示することを特徴とする請求項2に記載の測量地点調査RTKシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置済みの測量地点の再調査及び誤差の検出を自動化するための測量地点調査RTKシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
国や自治体による測量で決定され、道路上に設置される街区基準点等は、測量起点からのX距離及びY距離を測定することで記録される。また、近年では、測量起点からのメートル法によるX距離及びY距離の測定に加え、GNSS衛星(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)を用いて、測量基点からのX距離及びY距離を測定し、記録することも行われている。これらの方法によって測定された記録は、測量基準点の座標情報として一般に公開されている。
【0003】
上記のような基準点には、目視確認用の測量目印として、主に金属鋲と呼ばれる金属製の鋲や御影石からなる角材が地面上に打ち込まれることで、基準点を再確認する時の目印とされる。一方、道路等に打ち込まれた金属鋲等の問題点として、当初設置した場所で金属鋲を発見できないケースが生じることが挙げられる。この原因としては、そもそも測量当初の番地記録等が曖昧であった場合や、測量後に住所が変更された場合、金属鋲近傍の土地から流出する土砂の堆積や雑草の成長等により、金属鋲等からなる測量目印が覆い隠されて再測量時の発見が難しくなる場合、地殻変動等によって金属鋲が位置ずれしたり、あるいは紛失したりする場合等が挙げられる。
【0004】
上記のようなケースにおいて、金属鋲等の測量基準点を再度発見する手段としては、例えば、測量時点のセンチメートル座標を用いて光波測量を行う方法や、GNSS衛星から得た座標(GNSS座標)を用いて測位する単独測位あるいは相対測位を用いる方法等が挙げられる。特に、測量基準点は、道路の中央や街区の境界に設置される場合が多いことから、上記方法によって再度発見した測量基準点について、元々あった位置からのズレの角度及び方向を高精度で測位することが必要となる。
【0005】
測量基準点を捜索して再度発見するのにあたっては、可能な限りの少人数、望ましくは1名の作業員によって操作でき、且つ、高精度な測量機器を用いることが好ましい。しかしながら、上述した光波測量を行う方法では、最低2名の作業者が必要であり、作業者の確保や作業性の点で課題が残る。一方、GNSS衛星を用いた単独測位を行う方法では、上空におけるGNSS衛星の配置状況によっては測位の精度が約10m変動するため、1回のみの測位では正確な結果が得られない場合がある。また、GNSS衛星を用いた相対測位を行う方法の場合、2台以上の受信機を一定距離で離間させて設置する作業が必要となることから、上記同様、作業者の確保や作業性の点で課題が残る。
【0006】
ここで、近年では、RTK(Real Time Kinematics)測位が普及し、4機以上のGNSS衛星を利用することで、数cm以内の誤差で測量基準点の確認が可能になっている。また、RTK測位を用いた方法では、その機器構成が受信機器と通信機器のみであることから、作業者1名のみで操作できるというメリットがある。このようなRTK測位による結果を基に、ミリメートル座標と組みあわせて精度補正を行うことで、測量地点の高精度な位置確認が可能になるとともに、捜索作業の省力化を図ることが可能となる。また、従来の手法で設置された測量地点で比較することで、位置情報の誤りの検出や、精度の確認を行うことが可能になる。
【0007】
RTK測位が活用されている先行技術の一例として、以下に説明する特許文献1~3が挙げられる。
特許文献1には、杭芯位置を調査するためのシステムとして、RTK補正情報を提供する基地局と、調査ロボットであって、複数の基準点が記録されている設計図データを保存する手段と、基地局を介して自己位置のRTK測位をする手段とを有する調査ロボットと、を備えたものが開示されている。特許文献1に記載のシステムは、調査ロボットが、設計図データが示す基準点をRTK測位し、当該測位された基準点の座標に基づいて設計図データの杭芯座標をRTK座標系に変換し、当該変換された杭芯座標へ自走して到着した後、XYプロッターで誤差修正を行う。そして、特許文献1では、専用マーカを被せた従来手法で定めた杭芯を3D撮像手段で撮影し、画像認識により杭芯位置を検出して杭芯座標との誤差を計算する構成とされている。
【0008】
特許文献2には、建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムとして、RTK測位精度を提供する基地局と、走行ロボットと、を備えたものが開示されている。特許文献2に記載のロボットシステムは、走行ロボットが、自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、現場基準点と到達目標地点の座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る到達目標地点のRTK座標の差から直線距離を計測し、障害物情報の3Dデータに対して走行可否判定を行った結果により、直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる経路情報の作成を行う。そして、特許文献2では、上記の経路情報が、地面状況と当該地面状況に応じた予定速度情報を含み、走行ロボットが、経路情報に基づき、自動走行中は自己位置における速度を計算し、予定速度情報内の自己位置相当位置での予定速度との比較を行い、停止判断、迂回経路再作成判断を行い、RTK測位された到達目標地点に到達する構成とされている。
【0009】
特許文献3では、容易かつ高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる杭芯位置の墨出方法として、以下に示す各ステップを備えた方法が開示されている。即ち、特許文献3は、複数の杭の設計上の打設位置の情報を情報端末50に読み込ませるステップ、ポール21、アンテナ22、及び受信機23を含む移動局20におけるアンテナ22が受信した信号に基づく情報を受信機23から情報端末50を介して補正情報生成装置40に送信するステップを含む。そして、特許文献3は、さらに、補正情報生成装置40が生成したRTK技術に基づくポール21の位置情報を情報端末50に送信するステップ、情報端末50の表示部51に特定の打設位置とポール21の位置の相対的な位置関係を表示するステップ、及び、表示部51におけるポール21の位置と上記特定の打設位置が一致するときの現場における移動局20のポール21の位置を墨出位置として特定するステップを含む構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許7217483号公報
【文献】特許7274137号公報
【文献】特開2024-013366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、測量作業においては、上記の各方法のうち、機器構成が簡素であることや、建設系の専門学校や大学の建設学科等における履修科目として確立している等の理由から、光波測量による方法が広く用いられている。このような光波測量の方法においては、基準点側と測定対象との2地点に測量機器を設置して距離を計測するが、それらの間に障害物等がある場合、障害物を回避するために、例えば、基準点~前測量点~現測量点~次測量点のように順次測量する必要がある。しかしながら、上記のような方法で測量した場合、測量回数が多くなり、これに伴って誤差が積算されるおそれがある。このような測量上の誤差を最小限に抑えるためには、作業者に高い熟練度が要求されることから、技量の高い作業者の確保等の面で問題が生じるケースもある。
【0012】
また、RTK測位には、GNSS衛星からの信号が建築物等で反射されることなくRTKアンテナが直接受信することで計算された高精度のFIX解、及び、GNSS衛星からの信号が建築物などで反射してRTKアンテナで受信され、これに基づいて計算された低精度のFloat解がある。このため、測量基準点をRTK測量したときに、周囲の建築物の高さとGNSS衛星の配置との関係によってはFloat解が多くなり、測位精度にばらつきが生じることがあることから、測定結果が測量基準点座標情報と異なるものになるという問題があった。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、地面上に設置された測量の目印である測量基準点の捜索や測量作業を省力化することができるとともに、発見された測量基準点の自治体情報などに登録されている座標との誤差を高精度で算出することが可能な測量地点調査RTKシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ねた。この結果、測量基準点座標情報に基づいて地面上に設置された測量基準点の場所を捜索するのにあたり、まず、測量基準点座標情報に含まれるGNSS座標情報を到達目標地点として、現在位置のRTK座標と比較して距離と方角を特定する構成を採用することにより、捜索作業の時短や省力化が可能になることを知見した。そして、発見された金属鋲等からなる測量目印を真上からRTK測位して測量基準点座標情報と比較する構成、即ち、測量目印の位置に対する、登録されたGNSS座標と測量目印の真上で実際に測ったときのGNSS座標の誤差を確認する構成を採用した。これにより、測量目印の設置時に生じた作業ミスの具合や、地震等で測量目印がずれた具合に由来する誤差を高精度で確認できるとともに、測量地点調査作業の省力化が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明は、行政機関による測量で記録された測量基準点座標情報に基づいて地面上に設置された測量基準点の場所を捜索する測量地点調査RTKシステムであって、
RTK測位精度を提供するRTKモジュールと、前記測量基準点座標情報、前記測量基準点の座標をRTK測位したRTK測位結果及び地図データを記録するデータベースサーバと、前記RTK測位結果の補正値を導出するとともに、補正済みの平面直角座標系の座標を出力するRTK座標変換・解析装置と、を有するRTK測量調査サーバと、
前記測量基準点の座標をRTK測位するRTKモジュールと、該RTK測位するRTKモジュールに備えられるGNSSアンテナを水平に維持するGNSSアンテナ水平調整機構と、前記RTK測位するRTKモジュールに備えられる前記GNSSアンテナの下方に固定されることで、前記測量基準点に向けてレーザ光を照射するとともに、前記GNSSアンテナ水平調整機構によって前記レーザ光の照射方向が鉛直下方に維持されるレーザ照射機構と、前記測量基準点の場所への、前記RTK測位するRTKモジュールの現在位置からの方向を表示する目標方向誘導灯機構と、前記RTK測量調査サーバの前記データベースサーバに記録された前記測量基準点座標情報を含む前記地図データを表示可能な表示器と、を有するRTK測量調査機器と、を備え、
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、
前記データベースサーバに記録された前記測量基準点座標情報及び発見された測量目印の前記RTK測位結果から4点を補正基準点として選出し、該補正基準点に基づき、前記測量基準点座標情報と前記RTK測位結果との誤差が最も小さな回転角、平行移動及び縮尺の各々の前記補正値を導出し、
さらに、前記測量基準点座標情報及び前記RTK測位結果から、発見された前記測量目印に位置合わせして測量する目印有りRTK測位を実施できた測量基準点、及び、前記測量目印が発見されることなく前記測量基準点座標情報に位置合わせして測量する目印無しRTK測位を実施した測量基準点のうち、前記目印無しRTK測位を実施した測量基準点を抽出し、前記補正値を用いて前記目印無しRTK測位を実施した測量基準点を補正した補正座標を、前記RTK測量調査機器の前記表示器において前記地図データ上に表示させることを特徴とする測量地点調査RTKシステムを提供する。
【0016】
本発明の測量地点調査RTKシステムは、上記の態様において、
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、前記RTK測量調査機器の前記RTKモジュールによって前記測量目印をRTK測位したRTK測位結果を受信し、該RTK測位結果を前記平面直角座標系に変換するとともに、前記補正値を用いてX座標及びY座標を計算したXY補正座標として、前記RTK測量調査機器の前記表示器において前記地図データ上に表示させ、
さらに、前記XY補正座標と前記データベースサーバに記録された前記地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を前記平面直角座標系に変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算し、前記表示器において前記地図データ上に表示させる構成を採用できる。
【0017】
本発明の測量地点調査RTKシステムは、上記の態様において、
前記RTK測量調査機器は、前記表示器において、前記補正値を用いて前記目印無しRTK測位した測量基準点を補正した前記補正座標とともに、前記RTK測位するRTKモジュールによってRTK測位した前記測量基準点を、前記地図データ上に表示させる構成を採用できる。
【0018】
本発明の測量地点調査RTKシステムは、上記の態様において、
前記RTK測量調査サーバは、前記RTK座標変換・解析装置において、4点の前記補正基準点に基づいて導出した前記補正値を保存した状態で、複数の前記測量基準点と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を前記平面直角座標系に変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算することにより、複数の前記測量基準点と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異の計算を、前記XY補正座標と前記地図データ内のX座標及びY座標との差異の計算とともに一括で処理する構成を採用できる。
【0019】
本発明の測量地点調査RTKシステムは、上記の態様において、
前記RTK測量調査機器が、前記RTK測位するRTKモジュールによってRTK測位した前記RTK測量調査機器の自己位置から、前記測量目印の場所までの距離及び方位角を、前記XY補正座標を用いて算出するとともに、前記目標方向誘導灯機構により、前記測量基準点の場所を方向表示する構成を採用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の測量地点調査RTKシステムによれば、RTK測量調査サーバに備えられるRTK座標変換・解析装置において、測量基準点座標情報及びRTK測位結果から選出した補正基準点に基づき、測量基準点座標情報とRTK測位結果との誤差が最も小さくなる補正値を導出し、さらに、測量目印が発見されない測量基準点を抽出し、これを補正値によって補正した補正座標を、RTK測量調査機器が有する表示器で地図データ上に表示させる構成を採用している。このような構成の測量地点調査RTKシステムを用いて測量基準点の位置を特定することで、捜索作業の時短や省力化が可能になる。また、発見された測量目印をRTK測位して自治体情報などに登録されている測量基準点座標情報と比較することで、設置時の測量基準点の位置に対する誤差を高精度で確認できるとともに、測量作業の省力化も可能になる。
また、紛失した測量目印の記録や、位置を特定してスプレー等で目印を付与した仮の目印により、改めて金属鋲や御影石を打ち込む工事における作業場所が効率的にリスト化できるので、捜索時の作業時間の短縮も可能となる。
さらに、本実施形態の測量地点調査RTKシステムを用いて測量基準点のRTK測位を行うことで、緯度及び経度に加え、ジオイド高を取得できるので、測量基準点座標情報に含まれるジオイド高と比較できることから、地形変化を記録することも可能となる。
【0021】
本発明の他の目的、特徴及び利点については、添付図面を参照した以下の本発明の実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、RTK測量調査サーバ及びRTK測量調査機器を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1中に示したRTK測量調査機器の構成を詳細に示す拡大ブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1中に示したRTK測量調査サーバの構成を詳細に示す拡大ブロック図である。
【
図4】
図4(a),(b)は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1及び
図2中に示したRTK測量調査機器に備えられるGNSSアンテナ水平調整機構の動作の一例を詳細に説明する概略図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1及び
図2中に示したRTK測量調査機器に備えられる目標方向誘導灯機構の一例を詳細に示す概略図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1及び
図2中に示したRTK測量調査機器に備えられる伸縮式支柱の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査における情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a),(b)は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図8(a)は、
図1及び
図2中に示したRTK測量調査機器に備えられる目標方向誘導灯機構による誘導動作を平面方向で示す概略図であり、
図8(b)は、目標方向誘導灯機構における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査における全体の情報処理のうち、RTK測位結果を補正するための補正値を作成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査における全体の情報処理のうち、測量基準点を含む調査対象地点の現在位置からの方向及び距離の算出、及び、作業者を調査対象地点に誘導するためのデータ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査における全体の情報処理のうち、RTK測位結果と測量基準点座標情報との差異を解析して出力するためのデータ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12(a)~(d)は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査のうち、行政機関等から公表されている街区基準点をRTK測位して記録する場合の調査プロセスの一例を地図上で示した概略図である。
【
図13】
図13(a)~(c)は、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの一実施形態について模式的に説明する図であり、
図1に示した測量地点調査RTKシステムを用いた測量地点調査のうち、行政機関等から公表されている街区基準点情報に含まれない地点をRTK測位して測位結果を記録する場合の調査プロセスの一例を地図上で示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る測量地点調査RTKシステムの実施の形態を挙げ、図面を適宜参照しながら詳しく説明する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明の測量地点調査RTKシステムの特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を若干拡大して示している場合があり、また、各構成要素の接続形態等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される通信方式や構造等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更を施して実施することが可能である。
【0024】
<測量地点調査RTKシステムの全体構成>
本発明の一実施形態である測量地点調査RTKシステムの全体構成について、主に
図1~
図6を適宜参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100の全体構成を示すブロック図であり、
図2はRTK測量調査機器200の構成を詳細に示す拡大ブロック図、
図3はRTK測量調査サーバ300の構成を詳細に示す拡大ブロック図である。
図4(a),(b)は、RTK測量調査機器200に備えられるGNSSアンテナ水平調整機構220の動作の一例を詳細に説明する概略図であり、
図5は、目標方向誘導灯機構240の一例を詳細に示す概略図、
図6(a)~(c)は、RTK測量調査機器200に備えられる伸縮式支柱280の一例を示す概略図である。
【0025】
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100は、行政機関等による測量で記録された測量基準点座標情報に基づいて地面上に設置された測量基準点の場所を捜索し、RTK測位したうえで、測量基準点座標情報に登録されたGNSS座標と、本実施形態におけるRTK測位で得られたGNSS座標とを比較して誤差を算出する作業で用いられるものである。測量地点調査RTKシステム100は、
図1に示すように、RTK測量調査サーバ300と、RTK測量調査機器200とを備え、概略構成される。
【0026】
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いて捜索され、測量に供される測量基準点とは、例えば、金属鋲や御影石等からなる基準点であり、上端が露出した状態で地中に埋め込まれるような形態で、行政機関等によって設置されるものである。
【0027】
RTK測量調査サーバ300は、
図1及び
図3に例示するように、RTKモジュール310と、データベースサーバ330と、RTK座標変換・解析装置340とを有する。また、図示例のRTK測量調査サーバ300は、さらに、インターネット接続部320と、バッテリ360とを有する。
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100において、RTK測量調査サーバ300は、詳細については後述するが、RTK測量調査機器200に備えられるRTKモジュール210が測量目標地点のRTK測位を行うに際してのRTK測定精度を向上させるために設けられる。
【0028】
RTKモジュール310は、RTK測量を行うための手段であり、測量地点調査RTKシステム100に備えられるRTK測量調査機器200に対してRTK測位精度を提供する。
RTKモジュール310としては、RTK測位における移動式の基地局として使用可能なモジュールを採用できる。一方、RTKモジュール310による基地局機能は、例えば、携帯電話等の電気通信事業者からインターネット網を介して提供される位置情報提供サービス等のような有料サービスに置き換えることも可能である。この場合には、RTK測量調査サーバ300からRTKモジュール310を省略することが可能となる。
【0029】
データベースサーバ330は、測量基準点座標情報、測量基準点の座標をRTK測位したRTK測位結果及び地図データを記録・保持するものである。また、データベースサーバ330は、インターネット接続部320により、RTK測量調査機器200とRTK測量調査サーバ300との間のインターネット網を介した接続の確立及び保持が行われることで、測量基準点座標情報を共有できるように構成されている。
データベースサーバ330としては、例えば、大容量のハードディスクやメモリを備える記憶・情報処理装置を用いることができる他、一般的なパーソナルコンピューターやタブレット機器等を採用することも可能である。
【0030】
RTK座標変換・解析装置340は、RTK測位結果の補正値を導出するとともに、補正済みの平面直角座標系の座標を出力する。また、RTK座標変換・解析装置340は、RTK測位結果をRTK測量調査機器200に備えられる表示器290で地図データ上にプロット(表示)するための回転角、平行移動及び縮尺の補正値の算出並びに保持、詳細を後述するRTK測量調査機器200のRTKモジュール210が特定したRTK測位の対象位置と画像処理後の計測対象地点との距離計測及び誤差解析を行う。
【0031】
RTK座標変換・解析装置340としても、特に限定されず、CPU等を備えて構成される専用装置を用いる他、一般的なパーソナルコンピューターやタブレット機器等を採用することも可能である。また、RTK座標変換・解析装置340としてパーソナルコンピューターやタブレット機器を用いた場合には、それらの内部に備えられる記憶手段を利用することで、上述したデータベースサーバ330の機能を兼ね備えさせることも可能となる。
【0032】
測量基準点地図生成装置350は、データベースサーバ330に予め記録された測量基準点座標情報及び地図データに基づき、測量基準点座標情報を含む地図データを生成する。この地図データは、RTK測量調査機器200に備えられる表示器290に表示される。
【0033】
インターネット接続部320は、RTK測量調査サーバ300をインターネットに接続するための手段である。RTK測量調査サーバ300は、インターネット接続部320により、インターネット網を介してRTK測量調査機器200等と通信することが可能な構成とされている。
【0034】
バッテリ360は、RTK測量調査サーバ300を構成する各手段を動作させるための電力を供給する手段である。
バッテリ360としても、特に限定されず、一般的な蓄電手段を何ら制限なく採用することが可能である。
【0035】
RTK測量調査機器200は、
図1及び
図2に例示するように、RTKモジュール210と、GNSSアンテナ水平調整機構220と、レーザ照射機構230と、目標方向誘導灯機構240と、表示器290と、を有する。さらに、図示例のRTK測量調査機器200は、バッテリ250と、インターネット接続部260と、持ち手270と、伸縮式支柱280とを有して構成される。
RTK測量調査機器200は、RTK測位を活用して測量目標地点を調査する機能を有するものであり、図示例のように、作業者が運搬することが容易なハンディタイプに構成される。
【0036】
RTKモジュール210は、RTK測量調査機器200の自己位置を測位するものである。即ち、RTKモジュール210は、RTK測量調査機器200を操作する作業員から付与された座標に対するRTKモジュール210の現在位置情報を取得し、作業員の到達目標地点への到達後に、到達目標地点のRTK測位を行う。
【0037】
RTKモジュール210としても、上述したRTKモジュール310と同様のモジュールを採用することができる。そして、RTKモジュール210が取得したRTK測位結果を、RTK測量調査サーバ300のRTKモジュール310に送信することで、上述したRTK座標変換・解析装置340における補正値の導出が可能になる。
【0038】
GNSSアンテナ水平調整機構220は、上述したRTKモジュール210に備えられるGNSSアンテナの設置角度を調整するとともに、GNSSアンテナの下方に固定されたレーザ照射機構230の向きを調整するものである。即ち、GNSSアンテナ水平調整機構220は、RTKモジュール210におけるGNSSアンテナの水平な姿勢を維持するとともに、レーザ照射機構230におけるレーザ光の照射方向を鉛直下方に調整して維持するために設けられる。
【0039】
GNSSアンテナ水平調整機構220としては、
図1及び
図2等においては詳細な図示を省略しているが、例えば、ジンバル等の可動機構を有する構造のものを採用することが可能である。
【0040】
レーザ照射機構230は、測量基準点に向けてレーザ光を照射するものである。レーザ照射機構230は、例えば、上述したGNSSアンテナの下方側で、GNSSアンテナを平面視したときの概略中央に位置するように固定されており、上述したように、GNSSアンテナ水平調整機構220によってレーザ光の照射方向が調整可能な構成とされている。即ち、レーザ照射機構230は、GNSSアンテナの平面視における中央位置から鉛直方向下方に向けてレーザ光を照射することで、RTKモジュール210が示す到達地点を明示するとともに、RTK測量調査機器200と測量基準点との位置合わせを行う手段である。
【0041】
RTK測量調査機器200に備えられるレーザ照射機構230としては、特に限定されず、例えば、一般的な測量機器等に用いられている、可視光を照射可能なレーザ照射手段を用いることが可能である。
【0042】
目標方向誘導灯機構240は、測量基準点の場所を方向表示する。
具体的には、目標方向誘導灯機構240は、
図5に示す例では、7箇所のLEDライトLED
1,LED
2,LED
3,LED
4,LED
5,LED
6,LED
7からなるLEDライト群241と、電子コンパス242とから構成されている。
目標方向誘導灯機構240は、7箇所のLEDライトLED
1~LED
7のうち、到達目標地点への方角側のLEDライトのみを点灯(点滅)させることで、RTK測量調査機器200を操作する作業員に対し、到達目標地点への向かうべき方向を示すものである。
【0043】
目標方向誘導灯機構240は、
図1及び
図2に示す例では、側面視で概略板状に構成されている。また、図示例の目標方向誘導灯機構240は、
図5に示すように、平面視、即ち、RTK測量調査機器200を上方から見たとき、LEDライト群241が外周に沿って環状で配置されてなる、概略で円板状に構成されている。
【0044】
LEDライト群241は、上記のように、7箇所のLED
1~LED
7が、目標方向誘導灯機構240の外周に沿って環状に配置されている。
図5に示す例では、LEDライトLED
1,LED
2,LED
3,LED
4,LED
5,LED
6,LED
7が、平面視において時計回りで順次配置されている。
【0045】
電子コンパス242は、地磁気の方向を検出することにより、方角情報を取得するものである。
電子コンパス242としては、特に限定されず、一般的なコンパスモジュールを採用することが可能である。
【0046】
LEDライトの点灯(点滅)位置は、例えば、電子コンパス242で検出される方位角、及び、予め取得済の測量基準点座標情報の中から選択した目標位置の方角とRTKモジュール210で測位される現在位置とから、RTK測量調査機器200が向いている前方からの時計回りの角度を計算したうえで、LEDライトの設置数に依存する分解能から決定される。
【0047】
LEDライトLED1~LED7の点灯方式としては、特に限定されないが、例えば、RTKモジュール210と目標位置との距離が近いほど点滅間隔を短くすることで、作業者が目標位置までの距離を把握しやすいように制御することができる。そして、RTKモジュール210が到達目標地点の真上に到達した際には、全方向のLEDライトLED1~LED7が全点灯(点滅無し)するように制御することで、作業者に対して、RTKモジュール210を用いたRTK測位が可能となったことを知らせることが可能となる。
【0048】
目標方向誘導灯機構240に備えられるLEDライトの数は、特に限定されないが、RTK測量調査機器200を操作する作業員の操作性、利便性等を考慮すると、前方、左前方、左方、左後方、右前方、右方、及び右後方を指し示す7個以上で設けられていればよい。
図5に示す例においては、7個のLEDライトLED
1,LED
2,LED
3,LED
4,LED
5,LED
6,LED
7が、概略270°の範囲で、平面視で環状(扇状)に等間隔で配置されている。
【0049】
RTK測量調査機器200には、RTK測量調査サーバ300のデータベースサーバ330に記録された地図データを表示可能な表示器290が備えられている。
このような表示器としては、特に限定されず、例えば、各種携帯機器に用いられる一般的な小型のLCDパネル等を何ら制限なく用いることができる。
【0050】
バッテリ250は、RTK測量調査機器200を構成する各手段を動作させるための電力を供給する手段である。
バッテリ250としても、特に限定されず、一般的なモバイルバッテリ等を何ら制限なく採用することが可能である。
【0051】
インターネット接続部260は、RTK測量調査機器200をインターネットに接続するための手段である。RTK測量調査機器200は、インターネット接続部260により、インターネット網を介してRTK測量調査サーバ300と通信することで、RTK測量調査サーバ300に備えられるデータベースサーバ330との間で測量基準点座標情報等を授受したり、計測地点情報及び計測結果を送受信したりすることが可能となる。
【0052】
持ち手270は、RTK測量調査機器200を使用する作業者が、RTK測量調査機器200を計測目標地点の真上で保持する際に把持するものである。
持ち手270としては、図示例のような、概略棒状とされたハンドル形状のものを何ら制限無く採用できる。
【0053】
伸縮式支柱280は、作業者が上記の持ち手270を把持してRTK測量調査機器200を計測目標地点の真上で保持する際、先端が地面上に接地することでRTK測量調査機器200を簡易的に支持する。伸縮式支柱280は、先端が地面上に接地することで、作業者がRTK測量調査機器200を保持する際の負荷を低減するものである。
【0054】
図6(a)~(c)に示す例では詳細な図示を省略しているが、伸縮式支柱280は、軸方向で伸縮可能なスライド機構を有する。
即ち、伸縮式支柱280は、
図6(a)中に示すように、作業員がRTK測量調査機器200を運搬しながら計測目標地点捜索のために移動する際は、持ち手270側に縮小させた状態とすることができるので、運搬性に優れたものとなる。
一方、伸縮式支柱280は、
図6(b),(c)中に示すように、作業員が計測目標地点の真上で、RTKモジュール210が垂直姿勢となるようにRTK測量調査機器200を保持する際には、軸方向で伸長させることができる。これにより、伸縮式支柱280の先端を地面上に接地させながらRTK測量調査機器200を保持できるので、作業員の負荷を低減することが可能となる。
【0055】
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100は、上記構成により、以下に説明するような処理を実施する。
即ち、RTK測量調査サーバ300のRTK座標変換・解析装置340が、まず、データベースサーバ330に記録された測量基準点座標情報及び発見された測量目印のRTK測位結果から4点を補正基準点として選出し、この補正基準点に基づき、測量基準点座標情報とRTK測位結果との誤差が最も小さな回転角、平行移動及び縮尺の各々の補正値を導出する。
さらに、測量基準点座標情報及びRTK測位結果から、発見された測量目印に位置合わせして測量する目印有りRTK測位を実施できた測量基準点、及び、測量目印が発見されることなく測量基準点座標情報に位置合わせして測量する目印無しRTK測位を実施した測量基準点の全てを、上記の補正値を用いて補正し、補正座標として導出する。そして、この結果と測量基準点座標情報とを比較することで、測量目印が発見されない測量基準点を抽出し、RTK測量調査機器200の表示器290において地図データ上に表示させる。これにより、発見されなかった目印無し測量基準点を捜索する位置を作業員に指し示すことで、捜索作業の時短や省力化が可能になる。また、発見された測量基準点を目印有りRTK測位して測量基準点座標情報と比較することで、設置時の測量基準点の位置に対する誤差を高精度で確認できるとともに、測量作業の省力化も可能になる。
【0056】
従来から一般的に用いられている光波測量による方法は、光波が届かない場合は、基準点~前測量点~現測量点~次測量点といったように、順次測量する必要があるため、測量を重ねるたびに誤差が積算されるおそれがある。
これに対し、RTK測位を用いた方法は、特定の基準点からの相対位置ではなく、GNSS衛星から俯瞰で計測することで絶対位置を得る方法なので、上記のような測定点が連続することによる誤差の積算は発生しない。
【0057】
一方、RTK測位のみで測量を行う方法の場合、上空におけるGNSS衛星の配置と周辺環境との関係等により、測位ズレが生じるケースもあることから、測量時間帯によっては測位結果が一定にならない場合もある。
これに対し、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100によれば、上記構成を備えることにより、GNSS衛星の配置と周辺環境との関係等の各種状況に関わらず、正確で安定した測位結果を得ることが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100においては、さらに、以下のような処理を行うことが可能な構成を採用できる。
例えば、RTK測量調査サーバ300のRTK座標変換・解析装置340が、まず、RTK測量調査機器200のRTKモジュール210によって測量基準点をRTK測位したRTK測位結果を受信する。そして、RTK測位結果を平面直角座標系に変換するとともに、補正値を用いてX座標及びY座標を計算したXY補正座標として、RTK測量調査機器200の表示器290において地図データ上に表示させる。さらに、XY補正座標とデータベースサーバ330に記録された地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を前記平面直角座標系に変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算し、表示器において地図データ上に表示させる構成とすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、例えば、RTK測量調査機器200の表示器290が、補正値を用いて上記の目印無しRTK測位した測量基準点を補正した補正座標とともに、RTKモジュール210によってRTK測位した測量基準点を地図データ上に表示させる構成としてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、例えば、RTK測量調査サーバ300のRTK座標変換・解析装置340が、4点の補正基準点に基づいて導出した補正値を保存した状態で、複数の測量基準点と地図データ内のX座標及びY座標との差異を、GNSS座標を平面直角座標系へ変換したXY座標の値及びメートル法上の数値で計算する構成を採用できる。これにより、XY補正座標と地図データ内のX座標及びY座標との差異の計算とともに一括で処理することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、例えば、RTK測量調査機器200が、まず、RTKモジュール210によってRTK測位したRTK測量調査機器200の自己位置から、測量基準点の場所までの距離及び方位角を、XY補正座標を用いて算出する。そして、目標方向誘導灯機構240により、測量基準点を含む調査対象地点の場所を方向表示する構成とすることができる。
【0062】
<測量地点調査RTKシステムを用いた測量基準点の捜索・測量方法>
以下、上述した本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いて測量基準点の捜索、及び、測量作業を行う方法(手順)について、上記同様、
図1~
図6を適宜参照しながら説明する。
【0063】
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた方法では、測量基準点座標情報を含む地図情報(地図データ)に沿って、手持ち式のRTK測量調査機器200による測量基準点の捜索、及び、この捜索で発見された測量基準点が測量基準点座標情報に対して、どの方角に、どのぐらいの距離でずれているのかを確認する。
【0064】
まず、上記の確認作業を行うための事前準備として、RTK測量調査サーバ300とRTK測量調査機器200との間で通信を行うためのインターネット網への接続環境を準備する。具体的には、RTK測量調査サーバ300に備えられるインターネット接続部320、及び、RTK測量調査機器200に備えられるインターネット接続部260をインターネット網に接続する。そして、インターネット接続部320及びインターネット接続部260により、RTK測量調査サーバ300とRTK測量調査機器200とをインターネット網を介して接続する。
【0065】
また、事前準備として、測量基準点座標情報を用いて、RTK測量調査機器200に備えられる表示器290で地図データ上に表示する測量基準点の配置図を作成する。
【0066】
上記の事前準備が完了した後、測量地点調査RTKシステム100を用いて地面上の測量基準点の捜索及び測位を行う。この際、手持ち式のRTK測量調査機器200に備えられる目標方向誘導灯機構240のLEDライト群241が、次に向かう測量基準点の方向に対応するいずれかのLEDライトLED1~LED7を点灯(点滅)させる。また、RTK測量調査機器200の表示器に表示された地図データ上には、周辺の地図情報と、次に向かう測量基準点の場所が表示され、作業者による捜索作業を支援する。そして、測量基準点の真上に到達した際には、目標方向誘導灯機構240のLEDライト群241を構成するLEDライトLED1~LED7の全てが全点灯することで、作業者に対して目標地点に達したことを通知する。
【0067】
上記方法は、例えば、周辺における工事や災害等の影響によって測量基準点が土砂に埋まっている場合や、金属鋲等からなる測量基準点が地面の表面から外れて紛失状態となっている場合、及び、金属鋲等からなる測量基準点が地面ごとずれている場合等に、事前に得られている情報通りの位置、即ち、自治体等に登録されている測量基準点情報に基づく本来の測量基準点位置を発見し、測位するのにあたって非常に有効である。
【0068】
次いで、上記方法で測量基準点の真上に到達した後、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いてRTK測位を行う。
【0069】
まず、事前準備で指定した全ての測量基準点のうちの4点以上をRTK測位した後、測量基準点座標情報及びRTK測位結果のうちの4点を補正基準点として選出し、この補正基準点に基づき、測量基準点座標情報とRTK測位結果との誤差が最も小さな回転角、平行移動及び縮尺の各々の補正値を導出する。この際、例えば、最初に4点以上の測量基準点をRTK測位した後、4点のRTK測位結果から補正値を導出し、次いで、残りの測量基準点をRTK測位し、この補正に、最初にRTK測位した4点のRTK測位結果から得られる補正値を使用することも可能である。また、上記のRTK測位においては、最初の測位から次の測位の間で、上述した目標方向誘導灯機構240を用いて、次にRTK測位する測量基準点を指し示すことも可能である。
【0070】
上記のようにして選出される4点の補正基準点は、正しいものとして他の取得結果を補正するための基準点となるため、実地測位における精度が高いと考えられる4点を選定することが望ましい。そこで、例えば、上記の4点の選定の条件として、RTK測位結果がFIX解である結果のみで4点の組み合わせを作り、補正に用いるホモグラフィ変換行列を導出して最も誤差が小さい補正値とする。さらに、4点の補正基準点を選出するのにあたっては、上記のような誤差に加えて、選出された4点で囲まれた領域の面積が大きく、且つ、概略で平面視矩形状に近い形状となるパターンであることが、より高い測位精度が得られる観点からより好ましい。加えて、測量対象地点を含む範囲のうち、可能な限り遠い位置とされた4点の補正基準点を選出することがさらに好ましい。これは、より遠い位置を基準として近くの位置を測量する方が、測量精度がより高められるという、測量における基本的な考え方に沿うものである。
また、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた方法では、例えば、上記各条件に合致した4点の補正基準点を自動探索することも可能である。
【0071】
上述したホモグラフィ変換行列は、例えば、画像処理等で用いられる手法であり、回転(回転角)、拡大縮小(縮尺)、左右上下(平行移動)の差異を補正するアフィン変換に用いられる行列である。ホモグラフィ変換行列は、上述した4点のRTK測位結果を用いた最小二乗法によって導出することが可能である。
従って、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた各補正値の導出は、ホモグラフィ変換行列を用いたアフィン変換で実施することが好ましい。
【0072】
なお、上記の補正基準点を2点又は3点として補正値を導出することも可能ではあるが、この場合には実地測位における精度が低下することから、上記のように、補正基準点の選出数を4点とすることが望ましい。
【0073】
RTK測量調査機器200は、従来の測量機器とは異なる小型の手持ち式機器であり、且つ、レーザ照射機構230によって測量基準点にレーザ光を照射して位置合わせしながら、ジンバル機構等からなるGNSSアンテナ水平調整機構220により、RTKモジュール210のGNSSアンテナを、測量基準点の真上で正確に水平保持できる。この際、伸縮式支柱280を用いることで、RTKモジュール210のGNSSアンテナを、より正確に水平保持することが可能となる。
上記により、複数の作業者による協業を要することなく1人での作業が可能で、作業性に優れるとともに、高い熟練度が要求されることがないので人員配置が容易になる。また、短時間での作業が可能になることで、測量による道路占有時間を大幅に短縮できる。
【0074】
<測量地点調査RTKシステムの用途の例>
以下、上述した本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いて測量基準点の捜索、及び、測量作業を行う方法の具体的な用途について、上記同様、
図1~
図6を適宜参照しながら説明する。
【0075】
[用途1:測量地点の捜索]
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた測量基準点の捜索においては、X軸及びY軸の各々をミリメートル座標値に変換した後、上記方法で導出した補正値を用いて、回転(回転角)、拡大縮小(縮尺)、左右上下(平行移動)による微調整を行う。
また、周辺の建物配置を把握可能な地図データを、ゼロ位置となる1点(中心点)を重ね合わせた状態で、補正角度(回転角)を用いて回転させ、基準距離の比率を用いて縮尺の微調整を行う。
そして、上記方法で変換した捜索対象の座標、周辺の地図データ、及びRTK測量調査機器200の自己位置を表示器290で同一画面上に表示することで、現在位置から測量基準点までの距離と経路を作業者に指し示す。
【0076】
[用途2:測量誤差の計算]
測量地点調査RTKシステム100を用いて、測量基準点として設置された金属鋲等の目印の位置精度の確認及び誤差の計測を行うのにあたっては、RTK測位結果と測量基準点座標情報に含まれる補正されたXY補正座標とを比較し、直線距離、X軸及びY軸の各方向への距離の差を求める。そして、求められた距離の差を、RTK測量調査サーバ300のデータベースサーバ330に記憶し、直線距離が許容誤差を超える場合には、測量基準点である金属鋲等の目印位置の再確認を上記の表示器等で促し、X軸及びY軸の各方向の誤差表示と合わせて、測量精度を是正する。
【0077】
[用途1及び用途2によって得られる効果]
上述した測量地点の捜索(用途1)及び測量誤差の計算(用途2)によって取得したRTK座標と、行政機関等から事前に公開された取得可能な測量基準点座標情報(街区基準点情報)との、X軸及びY軸の座標並びに測量目印との差異の距離は、データベースサーバ330に記憶することができる。これにより、例えば、測量対象範囲を含む地図データの画像上への座標描画や距離の一覧表形式等を任意の態様とし、且つ、任意の方法で閲覧できる構成とすることが可能である。
【0078】
本実施形態の測量地点調査RTKシステム100は、従来の手法で測量・記録された測量地点の捜索や、測量精度確認及び測量ズレの是正に有効である。特に、地震等の地盤に影響を与える災害や事故が発生した場合、道路上に設置された測量基準点は、地中への埋没や、位置が地盤ごとずれることで目視での捜索が難しくなる可能性もあるため、測量地点調査RTKシステム100を用いて災害後の再測量を行うことが非常に有効となる。
【0079】
<測量地点調査RTKシステムにおける情報処理>
次に、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた測量基準点の捜索・測量における情報処理の流れについて、
図7~
図11に示したフローチャートを適宜参照しながら順次説明する(
図1~
図6も適宜参照)。
【0080】
[
図7に示すフローチャートの説明]
図7は、測量地点調査RTKシステム100を用いた測量地点調査における情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、S1010において、行政機関等による測量で記録され、測量基準点座標情報として一般に公開されている測量基準点の一覧を読み込む。
【0082】
次に、S1020において、調査対象となる測量基準点を選択する。この測量基準点mの座標は、そのX座標及びY座標に基づき、次式{m=mx,my}で表される。
【0083】
次に、S1030において、調査対象となる測量基準点mの残りがあるかどうかを判断する。
そして、調査対象の残りが無い場合には、後述のS1100において、ホモグラフィ変換行列による補正行列を作成した後、その処理を終了する。S1100における補正行列の作成は、詳細については後述するが、
図9のフローチャート中に示すS3010~S3170の各ステップにより実施する。
一方、調査対象の残りがある場合には、次のステップであるS1040に進む。
【0084】
S1040においては、上述したRTK測量調査機器200に備えられるRTKモジュール210を用いたRTK測位により、RTK測量調査機器200の現在位置を(緯度及び経度)を取得する。
【0085】
次に、S1050において、RTK測位結果を平面直角座標系に補正・変換する。この変換後の座標は、次式{g=gx,gy}で表される。
【0086】
次に、S1060において、上述した目標方向誘導灯機構240により、測量基準点を含む調査対象地点の場所を方向表示する。
【0087】
次に、S1070では、調査対象地点において目標とする測量基準点に到着したかどうかを判断し、未到着である場合には、上記のS1020に戻る。
一方、目標とする測量基準点に到着している場合には、次のステップであるS1080に進む。
【0088】
S1080においては、目標として捜索することで到着した測量基準点の座標を記録する。
即ち、測量目印、次式{g=gx、gy}で表される測量基準点の座標、並びに、GNSS衛星によるFIX解又はFLOAT解による測量基準点の緯度及び経度を、RTK測位値として記録する。
【0089】
次に、S1090において、次に捜索する測定基準点を設定のうえ、上記のS1020に戻る。
【0090】
[
図8に示すフローチャートの説明(目標方向誘導灯機構の誘導動作の説明を含む)]
図8(a)は、RTK測量調査機器200に備えられる目標方向誘導灯機構240による誘導動作を平面方向で示す概略図であり、
図8(b)は、目標方向誘導灯機構240における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0091】
図8(b)のフローチャートに示すように、目標方向誘導灯機構240による処理においては、まず、測量基準点mの座標(位置:m=m
x,m
y)、及び、現在位置(g=g
x、g
y)を読み込む。
【0092】
次に、S2010において、
図8(a)に示した目標方向誘導灯機構240に備えられる電子コンパス242により、北方位からの方位角θ
aを取得する。
【0093】
次に、S2020において、RTK測量調査機器200の現在位置から捜索目標とする測量基準点までのベクトルeを、次式{e=m-g}にて計算する。
【0094】
次に、S2030において、捜索目標である測量基準点への到着判定を行う。この際、S2020で求めたベクトルeに基づき、次式{||e||<100mm}で表される精度にて到着判定を行う。
そして、目標の測量基準点に到着したと判定された場合には、次のステップであるS2040において、
図8(a)に示した目標方向誘導灯機構240のLEDライト群241を構成するLEDライトLED
1~LED
7の全てを点滅させる。
一方、未到着と判定された場合には、
図8(b)のフローチャート中におけるS2050に進む処理を実施する。
【0095】
S2050においては、RTK測量調査機器200の機器前方方向と、捜索目標である測量基準点との方角差θdを計算する。この際、次式{θd=(90-θa)+θe}により、上記の方角差θdを計算する。
【0096】
次に、S2060においては、
図8(a)に示した目標方向誘導灯機構240のLEDライト群241を構成するLEDライトLED
1~LED
7のうちの、点灯(点滅:表示)すべきLEDライトの位置を計算して割り出す。
【0097】
次に、S2070においては、
図8(a)に示したLEDライト群241を構成するLEDライトLED
1~LED
7のうちの、上記のS2060で割り出された位置のLEDライトを点灯(点滅)させる。
【0098】
[
図9に示すフローチャートの説明]
図9は、測量地点調査RTKシステム100を用いた測量地点調査における全体の情報処理のうち、RTK測位結果を補正するための補正値を作成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0099】
まず、S3010においては、先に説明した
図7のフローチャート中に示したS1030で、調査対象となる測量基準点mの残りが無いと判断された場合に、補正行列の作成を開始する。即ち、まず、S3010では、インデックスiが補正行列におけるN列よりも小さい場合には、次のステップであるS3020へと進む。
一方、インデックスiが補正行列におけるN列よりも大きい場合には、
図9のフローチャート中におけるS3100へと進む。
【0100】
S3020においては、次式{gi=(xi,yi)}で表されるRTK測位値を読み込む。
【0101】
次に、S3030においては、RTK測位値のFIX解(ki:1 or 0)を読み込む。
【0102】
次に、S3040においては、捜索目標である測量基準点miの座標(mi=(xi,yi)を読み込む。
【0103】
次に、S3050においては、FIX解がki=1である場合には、次のステップであるS3060に進む。
一方、FIX解がki=0である場合には、後述するS3090に進む処理を実施する。
【0104】
次に、S3060においては、次式{d=||gi-mi||}により、測量基準点と地図データ内のX座標及びY座標との差異を求める誤差計算を行う。
【0105】
次に、S3070においては、S3060で求められた差異(誤差:d)と閾値(T)とを比較し、差異が閾値以下である場合に、次のステップであるS3080において、インデックスiが確保されたと判断する。
一方、差異が閾値を超えている場合には、後述するS3090に進む処理を実施する。
【0106】
次に、S3090においては、インデックスiに1を積算する処理を行い、順次、S3010に戻る処理を行う。
【0107】
S3100においては、S3010にてインデックスiが補正行列におけるN列よりも大きい場合に、4点ペアの補正基準点(Pj)を作成する。
【0108】
次に、S3110においては、補正基準点(Pj)におけるjが補正行列におけるM行よりも大きい場合には、次のステップであるS3120に進む。
一方、補正基準点(Pj)におけるjが補正行列よりも小さい場合には、詳細を後述するS3160に進む処理を実施する。
【0109】
次に、S3120においては、最小二乗法により、ホモグラフィ変換行列Hjを導出する。
【0110】
次に、S3130においては、変換行列Hkを用いて上記の4点のアフィン変換を実施する。
【0111】
次に、S3140においては、アフィン変換後のRTK測位値g’と測量基準点mとの誤差ejを次式{ej=||g’i-mi||}によって導出する。
【0112】
次に、S3150においては、誤差ejにおけるjに1を積算する処理を行う。
【0113】
次に、S3160においては、S3120で導出されたホモグラフィ変換行列Hjの中から、誤差ejが小さな変換行列Hjを選出する。
【0114】
次に、S3170においては、変換行列Hjと補正行列として出力し、補正行列の作成を終了する。
【0115】
[
図10に示すフローチャートの説明]
図10は、測量基準点を含む調査対象地点の現在位置からの方向及び距離の算出、及び、作業者を調査対象地点に誘導するためのデータ処理の一例を示すフローチャートである。
【0116】
まず、S4010において、
図9のフローチャートに示す手順で作成した補正行列を読み込む。
【0117】
次に、S4020において、行政機関等による測量で記録され、測量基準点座標情報として一般に公開されている測量基準点の一覧を読み込む。
【0118】
次に、S4030において、捜索対象となる測量基準点mを選択する。この測量基準点mの座標は、そのX座標及びY座標に基づき、次式{m=mx,my}で表される。
【0119】
次に、S4040において、調査捜索対象となる測量基準点mの残りがあるかどうかを判断する。
そして、捜索対象の残りが無い場合には、その処理を終了する。
一方、操作対象の残りがある場合には、次のステップであるS4050に進む。
【0120】
S4050においては、RTK測量調査機器200に備えられるRTKモジュール210を用いたRTK測位により、RTK測量調査機器200の現在位置(緯度及び経度)を取得する。
【0121】
次に、S4060において、RTK測位結果を平面直角座標系に補正・変換する。この変換後の座標は、次式{g=gx,gy}で表される。
【0122】
次に、S4070において、補正行列Hがある場合には、次のステップであるS4080に進む。
一方、補正行列Hがない場合には、後述するS4100に進む処理を行う。
【0123】
S4080においては、次式{g’=H・g}で表されるアフィン変換を実施する。
【0124】
次に、S4090において、目標方向誘導灯機構240により、測量基準点を含む捜索対象地点の場所を方向表示する。
【0125】
次に、S4100において、目標として捜索した測量基準点の座標を記録する。
即ち、次式{g=gx、gy}で表される測量基準点の座標、並びに、GNSS衛星によって得られるFIX解又はFLOAT解による測量基準点の緯度及び経度を、RTK測位値として記録する。
そして、上述したS4030のステップに戻り、引き続き、捜索処理を実施する。
【0126】
[
図11に示すフローチャートの説明]
図11は、測量地点調査RTKシステム100を用いた測量地点調査における全体の情報処理のうち、RTK測位結果と測量基準点座標情報との差異を解析して出力するためのデータ処理の一例を示すフローチャートである。
【0127】
まず、S5010において、
図9のフローチャートに示す手順で作成した補正行列を読み込む。
【0128】
次に、S5020において、行政機関等による測量で記録され、測量基準点座標情報として一般に公開されている測量基準点の一覧を読み込む。
【0129】
次に、S5030において、測定点の有無を判断し、測定点が無い場合には、その処理を終了する。
一方、測定点がある場合には、次のステップであるS5040に進む。
【0130】
S5040においては、調査対象となる測量基準点mを選択する。この測量基準点mの座標は、そのX座標及びY座標に基づき、次式{m=mx,my}で表される。
【0131】
次に、S5050において、
図7のフローチャート中におけるS1080で記録した、次式{g=(x,y)}で表されるRTK測位値を読み込む。
【0132】
次に、S5060において、次式{g’=H・g}で表されるアフィン変換による補正処理を実施する。
【0133】
次に、S5070において、次式{e=g’-m}により、差分計算を実施して誤差e
を求める。
【0134】
次に、S5080において、補正済みの測定点、及び、次式{||e||,g’x-mx,g’y-my}で表される誤差eを、解析結果ファイルとして出力する。
そして、上述したS5030のステップに戻り、引き続き、解析結果作成処理を実施する。
【0135】
<測量地点調査RTKシステムを用いた調査プロセス>
次に、本実施形態の測量地点調査RTKシステム100を用いた調査プロセスについて、
図12(a)~(d)及び
図13(a)~(c)を適宜参照しながら順次説明する(
図1~
図6も適宜参照)。
図12(a)~(d)は、測量地点調査RTKシステム100を用いた測量地点調査のうち、行政機関等から公表されている街区基準点をRTK測位して記録する場合の調査プロセスの一例を地図上で示した概略図である。
図13(a)~(c)は、測量地点調査RTKシステム100を用いた測量地点調査のうち、行政機関等から公表されている街区基準点情報に含まれない地点をRTK測位して測位結果を記録する場合の調査プロセスの一例を地図上で示した概略図である。
【0136】
[
図12(a)~(d)に示す調査プロセスの説明]
まず、
図12(a)~(d)を参照して、街区基準点座標情報に基づく測量基準点の調査の概要について説明する。
図12(a)中には、街区基準点情報(測量基準点座標情報)に記録された測量基準点の配置状況が記載されており、図示例では、街区基準点(測量基準点)m
1~m
6は位置が明らかであるものの、街区基準点m
7が設置されている正確な位置が不明となっている。
【0137】
図12(b)に示すように、まず、街区基準点g
7の真上でRTK測位を実施し、この測位結果を記録する。この際、街区基準点g
1,g
2,g
4,g
5,g
6については、RTK測位によってFIX解を取得し、街区基準点g
3については、RTK測位によってFloat解を取得する。
【0138】
次いで、
図12(c)に示すように、FIX解のRTK測位から4点の街区基準点(測量基準点)を選出して最適な補正値を導出する。図示例においては、FIX解及び補正行列による誤差が最小であった街区基準点g
1,g
2,g
5,g
6を選出している。
【0139】
そして、
図12(d)に示すように、導出した補正値により全てのRTK測量した値を変換して補正する。図示例における街区基準点g’
1は、街区基準点g
1が変換行列によって変換された補正後の街区基準点である。
【0140】
[
図13(a)~(c)に示す調査プロセスの説明]
次に、
図13(a)~(c)を参照して、測量基準点座標情報において不明な測量基準点の操作の概要について説明する。
図13(a)中には、測量基準点座標情報に基づく測量基準点の配置状況が記載されており、図示例では、測量基準点m
1~m
6は位置が明らかであるものの、測量基準点m
7が設置されている正確な位置が不明となっている。
【0141】
図13(b)に示すように、まず、目標方向誘導灯機構240を用いて正確な位置が不明な測量基準点m
7を捜索し、捜索された地点を街区基準点g
7として記録する。即ち、街区基準点g
7として、測量基準点座標情報に記載された測量基準点m
7を緯度及び経度で捜索した結果を記録する。
【0142】
そして、
図13(c)中に示すように、予め導出した補正値を用いて上記結果を変換することで、測量基準点m
7の位置を推定して記録する。
図13(c)中における街区基準点g’
7は、街区基準点g
7が補正行列によって変換されたものである。
【0143】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の測量地点調査RTKシステムによれば、RTK測量調査サーバ300に備えられるRTK座標変換・解析装置340が、測量基準点座標情報及びRTK測位結果から選出した補正基準点に基づき、測量基準点座標情報とRTK測位結果との誤差が最も小さくなる補正値を導出し、さらに、測量目印が発見されない測量基準点を抽出し、これを補正値によって補正した補正座標を、RTK測量調査機器200が有する表示器290で地図データ上に表示させる構成を採用している。このような構成の測量地点調査RTKシステム100を用いて測量基準点の位置を特定することで、捜索作業の時短や省力化が可能になる。また、発見された測量目印をRTK測位して自治体情報などに登録されている測量基準点座標情報と比較することで、設置時の測量基準点の位置に対する誤差を高精度で確認できるとともに、測量作業の省力化も可能になる。
また、紛失した測量目印の記録や、位置を特定してスプレー等で目印を付与した仮の目印により、改めて金属鋲や御影石を打ち込む工事における作業場所が効率的にリスト化できるので、捜索時の作業時間の短縮も可能となる。
さらに、本実施形態の測量地点調査RTKシステムを用いて測量基準点のRTK測位を行うことで、緯度及び経度に加え、ジオイド高を取得できるので、測量基準点座標情報に含まれるジオイド高と比較できることから、地形変化を記録することも可能となる。
【0144】
<本発明の変形例>
上記においては、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の測量地点調査RTKシステムは上記の実施形態によって限定されるものではなく、本発明の原理及び添付の請求の範囲の範囲を逸脱しない限り、種々の変更及び修正を施して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の測量地点調査RTKシステムは、地面上に設置された測量の目印である測量基準点の捜索や測量作業を省力化することができるとともに、発見された測量基準点の自治体情報などに登録されている座標との誤差を高精度で算出することが可能なものである。従って、本発明の測量地点調査RTKシステムは、例えば、道路工事や各種建造物の建設工事等の際の建設位置決定や測量にあたり、金属鋲や御影石等の測量目印からなる測量基準点を捜索し、正確な測量を行う用途等において非常に好適である。
【符号の説明】
【0146】
100…測量地点調査RTKシステム
200…RTK測量調査機器
210…RTKモジュール
220…GNSSアンテナ水平調整機構
230…レーザ照射機構
240…目標方向誘導灯機構
241…LEDライト群
LED1,LED2,LED3,LED4,LED5,LED6,LED7…LEDライト
242…電子コンパス
250…バッテリ
260…インターネット接続部
270…持ち手
280…伸縮式支柱
300…RTK測量調査サーバ
310…RTKモジュール
320…インターネット接続部
330…データベースサーバ
340…RTK座標変換・解析装置
350…測量基準点地図生成装置
360…バッテリ
【要約】
【課題】測量基準点の捜索や測量作業を省力化でき、発見された測量基準点の誤差を高精度で算出可能な測量地点調査RTKシステムを提供する。
【解決手段】RTKモジュール310、データベースサーバ330及びRTK座標変換・解析装置340を有するRTK測量調査サーバ300と、RTKモジュール210、GNSSアンテナ水平調整機構220、レーザ照射機構230、目標方向誘導灯機構240及び表示器290を有するRTK測量調査機器200とを備え、測量基準点座標情報及びRTK測位結果から4点を補正基準点として選出し、測量基準点座標情報とRTK測位結果との誤差が最も小さな回転角、平行移動及び縮尺の補正値を導出し、さらに、測量基準点座標情報及びRTK測位結果から測量目印が発見されない測量基準点を抽出し、これを補正値によって補正した補正座標を、RTK測量調査機器200が有する表示器290で地図データ上に表示させる。
【選択図】
図1