(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】除草剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20241111BHJP
A01N 51/00 20060101ALI20241111BHJP
A01N 57/20 20060101ALI20241111BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20241111BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N51/00
A01N57/20 G
A01P7/04
A01P13/00
(21)【出願番号】P 2018068793
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉丸 勝郎
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】冨永 保
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104068051(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106590677(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105165903(CN,A)
【文献】特開2010-6802(JP,A)
【文献】特表2009-541233(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029894(WO,A1)
【文献】特開2001-97802(JP,A)
【文献】特表2001-502355(JP,A)
【文献】佐藤仁彦、宮本徹編、「農薬学」、株式会社朝倉書店、2005年3月30日、初版第3刷、204及び205頁
【文献】宍戸孝ら編、「農薬科学用語辞典」、社団法人日本植物防疫協会、平成6年6月15日発行、189頁、「展着剤」の項
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性除草成分と水性殺虫成分とノニオン系界面活性剤とを含み
溶液状態であり、
シャワーノズル付き容器を用いて散布される除草剤であって、
上記水性除草成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の除草剤であり、
上記水性殺虫成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の殺虫剤であり、
上記水性殺虫成分は、雑草の根元に生息する害虫を殺虫対象としていることを特徴とする除草剤。
【請求項2】
請求項1に記載の除草剤において、
水性殺虫成分は、ネオニコチノイド系殺虫剤及び有機リン系殺虫剤の少なくとも一方であることを特徴とする除草剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の除草剤において、
水性除草成分は、アミノ酸系除草剤、ピピリジリウム系除草剤、芳香族酸系除草剤の少なくとも1つであることを特徴とする除草剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば雑草等を除去するための除草剤に関し、特に害虫の殺虫効果を持った薬剤を含有させる技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に農薬と呼ばれる除草剤が広く使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1には、水への溶解性が低いクロロアセトアミド系除草剤のような液状農薬成分と、固体農薬成分と、乳化安定剤としての油脂とを含む水中懸濁性農薬組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、グリホサート等の除草剤成分の他に殺虫剤を含有させたフォーム状除草剤として、表6にはビアラホス(油性除草剤)とペルメトリン(油性殺虫剤)との組み合わせが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-214495号公報
【文献】特開平05-904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、水への溶解性が低い液状農薬を必須成分として含んでいるので、乳化安定剤としての油脂が必要になり、製造工程が煩雑である。また、特許文献2では、ビアラホスのような油性除草剤とペルメトリンのような油性殺虫剤とを組み合わせる場合、これら薬剤をイオン交換水に溶かすためには多量の界面活性剤が必要になる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、殺虫成分を含む除草剤の製造を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、水性除草成分と水性殺虫成分とノニオン系界面活性剤とを混合するようにした。
【0008】
第1の発明は、水性除草成分と水性殺虫成分とノニオン系界面活性剤とを含み液状であり、上記水性殺虫成分は、雑草の根元に生息する害虫を殺虫対象としていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、除草成分と殺虫成分とが共に水性であることから良好に混ざり合う。よって、特許文献1のような乳化安定剤としての油脂は不要になるとともに、特許文献2のような多量の界面活性剤は不要になるので、製造が容易になる。
【0010】
また、殺虫成分を含む除草剤が液状であるので、例えば雑草が生えているところに散布等し易く、しかも散布した領域及びその近傍で害虫を駆除することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、水性殺虫成分は、ネオニコチノイド系殺虫剤及び有機リン系殺虫剤の少なくとも一方であることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1または2の発明において、水性除草成分は、アミノ酸系除草剤、ピピリジリウム系除草剤、芳香族酸系除草剤の少なくとも1つであることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記水性除草成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の除草剤であることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記水性殺虫成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の殺虫剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水性除草成分と水性殺虫成分とを含んでいるので、殺虫効果を得ることができる除草剤を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
本発明の実施形態に係る除草剤は、水性除草成分、水性殺虫成分及び溶媒(水)を含んでおり、液状である。水性殺虫成分は、ネオニコチノイド系殺虫剤及び有機リン系殺虫剤の少なくとも一方とすることができ、これら両方の殺虫剤を含んでいてもよい。また、水性除草成分は、アミノ酸系除草剤、ピピリジリウム系除草剤、芳香族酸系除草剤の少なくとも1つであり、これら除草剤のうち、任意の複数を混合して使用することもできる。
【0018】
また、水性殺虫成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の殺虫剤であることが好ましい。水性殺虫成分の含有量は、例えば数wt%程度である。
【0019】
【0020】
n-オクタノール/水の分配係数が1以下の殺虫剤としては、表1に示すように、ネオニコチノイド系殺虫剤として、例えばジノテフラン、アセタミプリド、ニテンピラム、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム等を挙げることができ、有機リン系殺虫剤として、例えばトリクロルホン等を挙げることができる。ここに挙げた水溶性殺虫剤は一例であり、上記以外にも各種水溶性殺虫剤を使用することができる。水溶性殺虫剤は、複数を混合して使用することができる。
【0021】
また、水性除草成分は、OECDGuidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn-オクタノール/水の分配係数が1以下の除草剤であることが好ましい。
【0022】
【0023】
n-オクタノール/水の分配係数が1以下の除草剤としては、表2に示すように、アミノ酸系除草剤として、例えば、グリホサート、グリホシネート等を挙げることができ、ピピリジリウム系除草剤として、例えば、パラコート、ジクワット等を挙げることができ、芳香族酸系除草剤として、例えば、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)、MCPA(2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸ナトリウム)、トリクロピル等を挙げることができ、また、その他にもテトラピオンやMDBA(ジカンバカリウム塩)であってもよい。水溶性除草剤は、複数を混合して使用することができる。
【0024】
この実施形態の除草剤の溶媒は水であり、上記水性除草成分および水性殺虫成分を容易に溶解させることができる。なお、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、水以外の溶媒を加えて混合溶媒としても良い。また上記成分に加えて、更に追加の成分を配合することができる。追加の成分としては、展着剤、安定剤(酸化防止剤等)、防腐剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0025】
この実施形態に係る除草剤は、除草成分と殺虫成分とが共に水性であることから良好に混ざり合う。よって、製造が容易になる。また、除草剤は、液状であることから、例えばスプレーポンプが付いた噴霧容器、シャワーノズルが付いた散布容器等に収容して使用することができる。噴霧容器としては、例えば使用者が手で操作可能なハンドスプレー容器等が好ましい。
【0026】
ただし、本発明の除草剤は液状に限らない。たとえば、水性除草成分および水性殺虫成分を、水を主成分とする溶媒に溶解させ、この溶液を固体担体にスプレーないし含浸させた後に乾燥させることで、固体状の除草剤を得ることができる。この場合であっても、除草成分と殺虫成分が共に水性であることから良好に混ざり合うとともに溶媒に溶解し易いので、固体状の除草剤の製造が容易になる。
【0027】
本実施形態の除草剤を雑草が生えているところに散布すると、除草剤が付着した雑草が枯れるとともに、散布した領域及びその近傍にいる害虫を駆除することができる。対象害虫は、殺虫剤の種類によって異なるが、例えば、ムカデ、ダンゴムシ、アリ等の匍匐害虫を挙げることができる。
【実施例】
【0028】
次に、この実施形態の除草剤について具体例をあげて説明する。この実施例は、水を溶媒とする液状の除草剤であって、水性除草成分としてグリホサートアンモニウム塩、水性殺虫成分としてジノテフラン、および展着剤としてノニオン系界面活性剤を以下の割合で含む。
【0029】
グリホサートアンモニウム塩 …… 1.0wt%
ジノテフラン …… 0.1wt%
ノニオン系界面活性剤 …… 0.1wt%
【0030】
上記の割合で各成分を混合したところ、各成分は問題なく水に溶解した。また、各成分の溶解後は均一な液相を形成し、安定性にも問題は無かった。なお、ノニオン系界面活性剤はあくまで展着剤として配合しており、省略しても良い。すなわち、ノニオン系界面活性剤を省略したとしても、グリホサートアンモニウム塩およびジノテフランは問題なく水に溶解する。このように製造した除草剤を、雑草が生えているところに対してシャワーノズル付き容器を用いて散布したところ、除草効果を示すとともに、ムカデ、ダンゴムシ、アリ等の匍匐害虫に対する殺虫効果が認められた。このように、この実施例の除草剤は、製造が容易であるとともに、除草効果および殺虫効果を得ることができる優れたものである。
【0031】
この除草剤の使用場面は特に限定さないが、例えば、一般家庭において庭に雑草が生えた箇所に散布するのが好適である。これによれば、庭の除草ができると同時に、庭に住む匍匐害虫(いわゆる不快害虫)も駆除できる。なお、不快害虫は雑草の根元に生息していることが多いので、上記のように本実施形態の除草剤を使用すれば、庭に住む不快害虫を駆除する効果が極めて高い。
【0032】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明に係る除草剤は、例えば一般家庭での庭等で使用することができる。