(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ゲノム編集によるエクソンスキッピング誘導方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241111BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241111BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20241111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A61K31/7088
A61K38/46
A61K48/00 ZNA
(21)【出願番号】P 2019508550
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2017041756
(87)【国際公開番号】W WO2018179578
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017068909
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100203253
【氏名又は名称】村岡 皓一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】李 紅梅
(72)【発明者】
【氏名】笹川 典子
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秋津
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】深草 亜子
【審判官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/025469(WO,A1)
【文献】特表2016-521554(JP,A)
【文献】特表2016-523560(JP,A)
【文献】国際公開第2015/105928(WO,A1)
【文献】Stem Cell Reports,2015年,Vol.4,pp.143-154
【文献】Cell,2013年,Vol.154,pp.1380-1389
【文献】Nature Biotech.,2016年,Vol.34,pp.869-874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRISPR-CasおよびガイドRNAを
含む、ゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンをスキップするための医薬であって、前記ガイドRNAは、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とし、前記ガイドRNAは2種類以上使用され、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有し、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有する、医薬。
【請求項2】
CRISPR-CasがCas9である、請求項
1に記載の医薬。
【請求項3】
Cas9がStreptococcus pyogenes由来、あるいはStaphylococcus aureus由来である、請求項
2に記載の医薬。
【請求項4】
CRISPR-CasがCpf1である、請求項
1に記載の医薬。
【請求項5】
Cpf1がAcidaminococcus sp. BV3L6由来、あるいはLachnospiraceae由来である、請求項
4に記載の医薬。
【請求項6】
目的遺伝子がヒトジストロフィン遺伝子である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
標的エクソンがエクソン45である、請求項
6に記載の医薬。
【請求項8】
前記ガイドRNAの少なくとも1種が配列番号
17~25、34~42のいずれかの塩基配列の塩基番号17~36の塩基配列、配列番号44~45のいずれかの塩基配列の塩基番号17~39の塩基配列、または配列番号50~53のいずれかの塩基配列の塩基番号24~43の塩基配列からなるスペーサー配列を有する、請求項
7に記載の医薬。
【請求項9】
前記ガイドRNAの少なくとも1種が配列番号17、18、20、24、25、36、39のいずれかの塩基配列の塩基番号17~36の塩基配列からなるスペーサー配列を有する、請求項7に記載の医薬。
【請求項10】
前記ガイドRNAが、スペーサー配列の組み合わせがsgRNA-DMD1(配列番号17の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD2(配列番号18の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD4(配列番号20の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD8(配列番号24の塩基番号17~36の塩基配列)またはsgRNA-DMD9(配列番号25の塩基番号17~36の塩基配列)と、sgRNA-DMD23(配列番号39の塩基番号17~36の塩基配列)またはsgRNA-DMD20(配列番号36の塩基番号17~36の塩基配列)の組み合わせである2種類のガイドRNAの組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
CRISPR-CasおよびガイドRNAを含む、ゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンをスキップするための試薬であって、前記ガイドRNAは、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とし、前記ガイドRNAは2種類以上使用され、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有し、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有する、試薬。
【請求項12】
前記ガイドRNAが、スペーサー配列の組み合わせがsgRNA-DMD1(配列番号17の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD2(配列番号18の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD4(配列番号20の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD8(配列番号24の塩基番号17~36の塩基配列)またはsgRNA-DMD9(配列番号25の塩基番号17~36の塩基配列)と、sgRNA-DMD23(配列番号39の塩基番号17~36の塩基配列)またはsgRNA-DMD20(配列番号36の塩基番号17~36の塩基配列)の組み合わせである2種類のガイドRNAの組み合わせを含む、請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
CRISPR-CasおよびガイドRNAを使用した、細胞(但し、ヒトの生体内にある細胞およびヒト受精卵を除く)のゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンをスキップするための方法であって、前記ガイドRNAは、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とし、前記ガイドRNAは2種類以上使用され、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有し、少なくとも1種のガイドRNAが、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から
50塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子組み換え技術に関し、研究分野や医療分野で有用なゲノム編集によるエクソンスキッピング誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy、以下DMD)はジストロフィン遺伝子の機能喪失によって、筋繊維が萎縮する疾患である。ジストロフィン遺伝子の骨格筋アイソフォーム(Dp427m)は79個のエクソンで構成されているが、この一部が欠損するなどして遺伝子の読み枠がずれてしまうことでジストロフィンタンパク質が正常に作られなくなることが原因となり、DMDが発症する (非特許文献1)。
【0003】
DMDの根治を目指し、機能不全の内在性ジストロフィン遺伝子に代えて、外部から機能性のジストロフィン遺伝子を添加する遺伝子治療法も様々な研究が行われている。ジストロフィンの全長cDNAのサイズは14 kbもあるため、不要なドメイン部分を切り詰めて小型化したミニジストロフィンやマイクロジストロフィンを作製し、様々な遺伝子導入ベクター(AAV, レンチウイルス、Sleeping Beautyトランスポゾンベクター、等)を用いて筋組織への導入が試みられている。しかし、巨大な遺伝子を導入するのは難しく、効果的な治療法の確立には至っていない。
【0004】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドを使って、mRNAがスプライシングされる際に特定のエクソンを一部読まないようにすることで、正常な機能をもつジストロフィンへと修復する研究(エクソン・スキッピング)が進められているが、アンチセンス・オリゴヌクレオチドの効果は一時的なものであり、根本的な治療としては遺伝子そのものを修復する方法が求められている。
【0005】
遺伝子そのものを修復する手法として近年、TALENやCRISPR-Casシステムというゲノム編集技術が開発されている。これらはゲノム配列の中から特定の配列箇所を認識してDNA二本鎖切断を誘導することにより、非相同組換え(Non-homologous end joining, NHEJ)や相同組換え(Homology directed repair, HDR)を介したDNA修復機構を局所的に誘導することで、その切断箇所に塩基を追加したり削除したりすることができる技術である。
【0006】
CRISPR-Casゲノム編集技術は、細菌や古細菌の持つType IIまたはType V CRISPRシステムが広く用いられており、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)に含まれるスペーサー配列依存的にターゲットDNAに結合し、Casヌクレアーゼ(Type IIの場合はCas9、Type Vの場合はCpf1)の作用によって、二本鎖DNA切断を誘導できる。Type II CRISPRシステムにおいてガイドRNAは、crRNAとtracrRNAの複合体、またはcrRNAとtracrRNAが連結されたsgRNA(single guide RNA)である。
【0007】
ゲノム編集技術を利用したジストロフィンのエクソンスキッピングを筋芽細胞[非特許文献2、3]やmdxマウスレベル[非特許文献4~7]で行ったという報告がある。
【0008】
これらの研究では二つのガイドRNAを使用してスキッピングするエクソンの両端を切断し、エクソン丸ごと大きな欠損を誘導する方法を取っているが、この方法だとgRNAが二つ必要となる分、非特異的な切断が起こるリスクが増加する。また、どちらか一方のgRNAでの切断だけでは全くエクソンスキッピングを誘導出来ず、二つのgRNA配列が同一ゲノム上で働く必要がある。また、少なくとも数百塩基は削除する必要があり、その領域に未知の制御領域やmiRNAのコード領域が含まれている場合、予期せぬ副作用が発生するリスクもある。
【0009】
一方、本発明者らは以前、DMD患者由来iPS細胞において、TALENやCRISPR-Cas9といったゲノム編集技術を用いることによって、(1)エクソンスキッピング、(2)フレームシフト誘導、(3)および欠損エクソンのノックインにより、ジストロフィンの遺伝子変異を修復できることを報告した[非特許文献8]。この中で(1)の方法ではエクソンのスプライスアクセプターを削除する方法を採っており、一つのgRNAで数塩基から数十塩基の欠損を誘導できれば、十分エクソンスキッピングが誘導出来るため、上記の[非特許文献2~7]で報告されている方法より効率が良く、副作用変異リスクが小さく、ごく僅かなDNA塩基削除で済むという3つの点において優れている。
一方で、スプライスアクセプターはエクソンスキッピングを誘導する上で魅力的なターゲット部位であるが、ポリピリミジン(T/Cの連続)配列を含んでおり、多くのエクソン配列で似た配列を持っていることから、特異性の高いgRNAの設計が困難であるという問題点があった。CRISPR-CasのDNA切断ドメインに変異を導入することにより、DNA二本鎖切断ではなく一本鎖切断を誘導するニッカーゼ改変型のCRISPR-Casを二つ組合せることで特異性を高めたダブルニッキング法[Mali P et al., Nat Biotechnol. 2013 Sep;31(9):833-8.][Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380-9.]が知られている。また、Type V AsCpf1はType II SpCas9と比較して、ヒト細胞中での特異性が高いことが知られており[Kleinstiver BP et al., Nat Biotechnol, 2016 Aug;34(8):869-74.| Kim D et al., Nat Biotechnol, 2016 Aug;34(8):863-8.]、ダブルニッキング法またはCpf1を使用してスプライシングアクセプター付近をターゲットすることにより、特異性の問題は回避できると考えた。
また、ガイドRNAのスペーサー配列やCRISPR-Casの種類によって切断活性や切断長が異なる事が知られており、効率的にエクソンスキッピングを誘導できるガイド配列や設計方法の経験則は未知であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Pichavant et al., Mol Ther. 2011 May;19(5):830-40.
【文献】Ousterout DG et al., Nat Commun. 2015 Feb 18;6:6244
【文献】Iyombe-Engembe JP Mol Ther Nucleic Acids. 2016 Jan 26;5:e283.
【文献】Xu L et al., Mol Ther. 2016 Mar;24(3):564-9.
【文献】Long C et al., Science, 2016 Jan 22;351(6271):400-3.
【文献】Nelson CE et al., Science. 2016 Jan 22;351(6271):403-7
【文献】Tabebordbar M et al., Science. 2016 Jan 22;351(6271):407-11
【文献】Li HL et al., Stem Cell Reports. 2015 Jan 13;4(1):143-54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、効率よくエクソンスキッピングを行うための方法を提供することを課題とする。本発明はまた、エクソンスキッピングの評価を簡便に行うための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。エクソンスキッピングの標的遺伝子として、コード領域内に第1イントロン、解析対象エクソンおよび第2イントロンを含む配列が挿入されたマーカー遺伝子を用い、エクソンがスキップされたときにマーカー遺伝子が機能するように設計することでマーカー遺伝子の表現型に基づいてエクソンスキッピングが効率よく解析できることを見出した。その結果、CRISPR-CasおよびガイドRNAを使用してゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンスキッピングを行う際に、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンのスプライスアクセプター部位またはスプライスドナー部位から80塩基以内に配置されるようにガイドRNAを設定することで、エクソンスキッピングの効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]CRISPR-CasおよびガイドRNAを使用したゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンをス
キップするための方法であって、前記ガイドRNA は、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とする方法。
[2]前記ガイドRNA は2種類以上使用される、[1]に記載の方法。
[3]CRISPR-CasがRuvCドメインのヌクレアーゼ活性残基が置換されたニッカーゼ改変型Casであり、目的遺伝子のセンス鎖に対するガイドRNAおよびアンチセンス鎖に対するガイドRNAを使用し、両ガイドRNAは、目的遺伝子のセンス鎖における切断部位および目的遺伝子のアンチセンス鎖における切断部位がいずれも標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有する、[1]に記載の方法。
[4]CRISPR-CasがCas9である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]Cas9がStreptococcus pyogenes由来、あるいはStaphylococcus aureus由来である
、[4]に記載の方法。
[6]CRISPR-CasがCpf1である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[7]Cpf1がAcidaminococcus sp. BV3L6由来、あるいはLachnospiraceae由来である、[6]に記載の方法。
[8]目的遺伝子がヒトジストロフィン遺伝子である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]標的エクソンがエクソン45である、[8]に記載の方法。
[10]前記ガイドRNAが配列番号17~42のいずれかの塩基配列の塩基番号17~3
6の塩基配列、配列番号44~45のいずれかの塩基配列の塩基番号17~39の塩基配列、または配列番号50~53のいずれかの塩基配列の塩基番号24~43の塩基配列からなるスペーサー配列を有する、[9]に記載の方法。
[11]CRISPR-CasおよびガイドRNAを含む、ゲノム上の目的遺伝子の標的エクソンをス
キップするための試薬であって、前記ガイドRNA は、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とする試薬。
[12]エクソンスキッピングを評価するための方法であって、コード領域内に第1イントロン、解析対象エクソンおよび第2イントロンを含む配列が挿入されたマーカー遺伝子を使用し、解析対象エクソンがスキップされたときにマーカー遺伝子が機能するように設計されていることを特徴とする方法。
[13]エクソンスキッピングがCRISPR-CasおよびガイドRNAを使用したエクソンスキッ
ピングである、[12]に記載の方法。
[14]トランスポゾンベクターを用いることでマーカー遺伝子を解析対象細胞のゲノムに挿入する、[12]または[13]に記載の方法。
[15]マーカー遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である、[12]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]解析対象エクソンがヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45である、[12]~[15]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、ゲノム編集技術を利用したエクソンスキッピングにおいて、エクソンスキッピングの効率を向上させることができ、疾患の治療などに有効である。また、エクソンスキッピングの標的遺伝子として、コード領域内に第1イントロン、解析対象エクソンおよび第2イントロンを含む配列が挿入されたマーカー遺伝子を用い、エクソンがスキップされたときにマーカー遺伝子が機能するように設計することでマーカー遺伝子の表現型に基づいてエクソンスキッピングが効率よく解析できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ゲノム編集エクソンスキッピング法によるジストロフィンタンパク質の修復原理を示す。
【
図2】
図2は、スプライスアクセプター配列部位の配列特異性が一般的に低く、類似配列がゲノム上の別の場所にも存在することを表しており、特異性の高いCRISPRガイドRNA等をデザインすることは困難であることを示している。10塩基から16塩基の長さを持つ任意のDNA配列のうち、ヒトゲノム配列(hg19)に一箇所のみ存在するユニーク配列(Unique k-mer)データベースを作成し、このユニーク配列の分布を、ヒトRefSeq遺伝子の全エクソンにおける相対位置に応じてプロットした。ヒトのエクソン内部は総じてユニーク配列が多く集積しており特異性が高いが、スプライスアクセプター部分は特異性が大きく下がっていることが確認できる。
【
図3】
図3は、ジストロフィン遺伝子のエクソンスキッピング効率を検出するレポーターベクターの配列の一部を示す。Fireflyルシフェラーゼ遺伝子のcDNAの途中にある、エクソンエクソン接合部として最もよく見られる配列"CAG|G"を探し、ここへジストロフィン遺伝子のエクソン44の直後のスプライシングドナー(SD)付近配列("+"印)、エクソン45(">"印)と前後のイントロン配列、エクソン46直前のスプライスアクセプター(SA)配列("+"印)の順となるよう配列を設計してある。ベクターの構築に用いた制限酵素サイト (NarI, AgeI, SalI)を#印でマークしてある。
【
図4】
図4では、挿入したジストロフィン配列部位だけでスプライシングが起こるよう、Luc配列に変異を導入して改変した。(a)
図3のエクソンスキッピングベクターを293T細胞に導入してmRNAを抽出し、スプライシングパターンをサンガーシーケンス法で確認したところ、Luc遺伝子の途中 (
図3の31番塩基)に偽スプライシングドナー配列があり、予期せぬスプライシングが起こっている(シーケンスエレクトログラムに余分な波形が混入している)ことが判明した。(b) ジストロフィン遺伝子の全エクソン配列をEnsemble BioMartより取得し、WebLogoを用いてスプライシングドナー部分とスプライスアクセプター部分のコンセンサス配列を解析したところ、一般的なヒト遺伝子の塩基配列と同様の傾向がみられ、スプライシングドナーには"GT"配列が、スプライスアクセプター配列には"AG"が最も頻度が高く保存されていることを確認した。(c) (a)の偽スプライシングドナー配列を機能させないようにするために、Luc cDNAの開始塩基から967番目"G"(
図3の31番塩基)を"A"に改変した。この際、Lucタンパク質323番目のValアミノ酸は、Ileへと変更になった。
【
図5】
図5では、アミノ酸改変部位がFirefly Luciferaseの活性へ及ぼす影響を予測するために、Firefly Luciferaseタンパク質の結晶構造 (PDBコード: 1BA3)を解析した。323番目のVal残基(四角)は活性中心残基(丸印)[Branchini BR et al., JBC, 1997]から十分離れており直接的な相互作用は無いため、このアミノ酸を改変しても酵素活性への影響は少ないと予想された。またVal残基はαヘリックスの途中に位置していることから、αヘリックス構造を変化させにくく、構造や化学的性質の類似するIle残基へと変更した。
【
図6】
図6では、G967A (V323I)変異がスプライシングおよびLuc活性に及ぼす影響を調査した。(a) 比較解析に利用したLuc発現カセット。全て、piggyBacベクター(System Biosciences) pPV-EF1a-GW-iP-Aに挿入されている。*がG967A (V323I)変異を示し、点線はイントロン、ボックスはエクソンを表す。(b) 各ベクターを293T細胞に導入し、mRNAを抽出してイントロン部分を含むプライマーでPCRを行うことにより、スプライシングパターンを解析した。Lu2にイントロンを挿入したレーン2では、期待通りのスプライシングが起こっているバンド(377 bp)とは別に、イントロンが残留したままのバンド(468 bp)も観察された。同様の傾向はジストロフィンのエクソン45を挿入したレーン4でも見られ、予想通りのスプライシングが起こった468 bpのバンドの他に、イントロンを含んだ1166 bpのバンドも観察された。Luc2 cDNA中に点変異 (G967A (V323I)変異)を導入したレーン3およびレーン5では、それぞれスプライシングがより効率良く起こっていることが確認できた。(c) Luc2 cDNAにG967A (V323I)変異を導入したことによる、ルシフェラーゼ活性への影響はほとんど見られなかった(2番目と3番目の比較)。一方、ジストロフィンエクソン45を挿入したLuc2ベクターでは、スプライシング効率が良くエクソン45がLuc2に取り込まれるほど、Luc2にフレームシフトが起こりルシフェラーゼ活性は下がる事が期待される。G967A (V323I)変異導入によりルシフェラーゼ活性のバックグラウンドレベルが下がっており、これにより感度良く低頻度のエクソンスキッピングを検出可能となった。
【
図7】
図7では、エクソン45前後のイントロンの長さがスプライシングに及ぼす影響を調べるため、様々な長さのベクターを構築した。ルシフェラーゼレポーターはpiggyBacベクターに搭載されており、このベクターをpiggyBac転移酵素発現ベクターと共導入することによって、宿主細胞の染色体への安定組込が可能である。また、レポーターベクターが導入された細胞だけをエンリッチできるよう、IRESに続いてPuromycin耐性遺伝子も搭載している。
【
図8】(a)
図7のエクソンスキッピングベクター(Luc2 G967A)を293T細胞にトランスフェクションし、2日後にmRNAを抽出してPCR解析によりスプライシングパターンを解析した。エクソン45の前後のイントロン長(0.7~4.0 kb)は、長いほどスプライシングされていないバンド(1166 bp)が減少する傾向が見られたが、いずれにおいても効率的なスプライシングバンド(468 bp)が観察された。また、gRNA1とSpCas9発現プラスミドも共導入することにより、エクソンスキッピングを誘導した(Exon skipping "+")。その結果、何れのイントロン長レポーターにおいても、スキッピングが誘導されたバンド(377 bp)が観察された。(b) ルシフェラーゼアッセイにより、エクソンスキッピングの誘導効率を測定した。G967A点変異を導入していないレポーターベクター(Luc2 +hEx45(0.7 kb))では、エクソンスキップを誘導しない時のバックグラウンドレベルが高く、誘導前後で差が見られないが、G967A変異を導入したエクソンスキッピングベクターでは、SpCas9とsgRNA-DMD1を発現するベクターを導入することでエクソンスキッピングが誘導され、ルシフェラーゼ活性の上昇を確認できた。
【
図9】
図9は、ヒトジストロフィン遺伝子におけるエクソン45のスプライスアクセプター部位に対するCRISPR SpCas9 gRNAのターゲット配列を示す。
【
図10】
図10は、SSAアッセイにより測定した、ヒト293T細胞中でのCRISPR-SpCas9およびCRISPR-SpCas9(D10A)を用いた際のターゲットDNA切断活性を示す。CRISPR-SpCas9の場合、ガイドRNA1から5いずれにおいても切断活性が見られる。一方、ニッカーゼ改変型SpCas9(D10A)を用いた場合、単独のガイドRNAだけでは切断活性は期待通り観察されない。センス鎖に対するガイドRNA5およびアンチセンス鎖に対するガイドRNA4を組み合わせて使用した場合において、高いDNA切断活性が確認できた。
【
図11】
図11は、切断配列解析による切断パターンを示す。DMD-iPS細胞へCRISPR-Cas9および当該ガイドRNAを発現するプラスミドDNAをエレクトロポレーションにて導入し、ゲノムDNAを抽出後、MiSeqシーケンサーを用いてゲノムDNA切断パターンを解析した。塩基が欠損している位置を積み上げ折れ線グラフとして表している。
【
図12】
図12では、エクソンスキッピングレポーターとしてLuc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)を利用して、293T細胞にてsgRNA-DMD1~5のエクソンスキッピング効率を測定した。その結果、gRNA無しのサンプルと比較して、sgRNA-DMD1, sgRNA-DMD4, sgRNA-DMD2でP < 0.01の有意差でルシフェラーゼ活性が上昇した。
【
図13】(a) ジストロフィンエクソン45のスプライスアクセプター付近にデザインした各種CRISPR-Cas(SpCas9, SaCas9, AsCpf1)由来のgRNAのターゲット配列。PAM配列は下線で示す。(b)AsCpf1のgRNA発現カセットのイメージ図。H1プロモーターの転写開始点(TSS)にはG(またはA)が望ましい事が知られているが、Gを1塩基から3塩基に増やす事で、gRNAの発現量が増強されターゲットDNA切断効率が上昇することが期待された。(c)AsCpf1およびgRNAを293T細胞へ導入し、SSAアッセイによりターゲットDNAの切断活性を測定した。まず、転写開始点(TSS)のGを1塩基から3塩基に増やす事で切断活性の上昇が見られた。また、TTTTをPAM配列とするAsCpf1-gRNA-DMD1とAsCpf1-gRNA-DMD2は切断活性がとても低いが、TTTG(TTTV)をPAMとするAsCpf1-gRNA-DMD3とAsCpf1-gRNA-DMD4は、SpCas9-gRNA-DMD1と同等以上の切断活性を示した。(d) エクソンスキッピングレポーターとしてLuc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)を利用して、293T細胞にてDouble nicking法、SaCas9/gRNA、およびAsCpf1/gRNAを用いた場合のエクソンスキッピング効率を測定した。その結果、SpCas9/ sgRNA-DMD1と比較して、SpCas9(D10A) double nicking法によりsgRNA-DMD4とsgRNA-DMD5をペアで使用した場合においてエクソンスキッピング活性が高かった。さらに、AsCpf1のsgRNA-DMD 3とsgRNA-DMD 4を使用することでも、高いエクソンスキッピング効率を誘導することができた。
【
図14A】(a) ジストロフィンエクソン45上にデザイン可能なSpCas9-gRNAのターゲット部位に、26種類のgRNAを作製した。
【
図14B】(b) (a)で用いたsgRNA-DMD1~26のターゲット配列およびスペーサー配列の一覧表。293T細胞にSpCas9発現ベクターとLuc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)エクソンスキッピングレポーターベクターと共に各gRNAを導入し、下記のプライマー (Luc2-Fwd-Splice: TGCCCACACTATTTAGCTTC(配列番号1), Luc2-Rev-Splice:GTCGATGAGAGCGTTTGTAG) (配列番号2)を用いてT7E1アッセイを行い、各gRNAのレポーターベクター上のターゲット部位のDNA切断活性を測定した(T7E1 Indel activity [%])。また、エクソンスキッピング効率についても測定を行った(Exon skipping Luc activity [A.U.])。
【
図14C】(c) エクソンスキッピングレポーターとしてLuc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)を利用して、293T細胞にてsgRNA-DMD1~26のエクソンスキッピング効率を測定した。その結果、エクソン45のスプライスアクセプター付近をターゲットにするgRNA、およびスプライシングドナー付近をターゲットにするgRNAでエクソンスキッピング効率が高いことが判明した。
【
図15】
図15では、
図14で使用した2種類のsgRNAの組合せについて、
図14と同様にしてSpCas9によるエクソンスキッピングの効率を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法は、CRISPR-CasおよびガイドRNAを使用したゲノム上の目的遺伝子の標的
エクソンをスキップするための方法であって、ガイドRNA が、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内に配置されるようなスペーサー配列を有することを特徴とする。
【0017】
<CRISPR-Casシステム>
CRISPRシステムとしては、複数因子が複合体を形成して働くClass 1と、単一因子でも働くClass 2が知られており、Class1にはType I, Type III, Type IVが含まれ、Class 2にはType II, Type V, Type VIが含まれる(Makarova KS et al., Nat Rev Microbiol. 2015 | Mohanraju P et al., Science, 2016)。現在、哺乳類細胞におけるゲノム編集用途では、単一因子で作用するClass 2のCRISPR-Casが主に使われており、Type II Cas9やType V Cpf1が代表例である。
【0018】
CRISPR-Cas9システムとしては、広くゲノム編集ツールとして使用されている化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のClass 2 Type II Cas9が使用できるが、他の細菌由来のClass 2 Type II Cas9も報告されており、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus, Sa)由来Cas9や、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis, Nm)由来Cas9、サーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus, St)由来Cas9等も使用することができる。
[I]
An updated evolutionary classification of CRISPR-Cas systems.
Makarova KS, Wolf YI, Alkhnbashi OS, Costa F, Shah SA, Saunders SJ, Barrangou R, Brouns SJ, Charpentier E, Haft DH, Horvath P, Moineau S, Mojica FJ, Terns RM, Terns MP, White MF, Yakunin AF, Garrett RA, van der Oost J, Backofen R, Koonin EV.
Nat Rev Microbiol. 2015 Nov;13(11):722-36. doi: 10.1038/nrmicro3569.
[II]
Diverse evolutionary roots and mechanistic variations of the CRISPR-Cas systems.
Mohanraju P, Makarova KS, Zetsche B, Zhang F, Koonin EV, van der Oost J.Science. 2016 Aug 5;353(6299):aad5147. doi: 10.1126/science.aad5147
[III]
In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9. Nature. 2015 Apr 9;520(7546):186-91.
[IV]
Orthogonal Cas9 proteins for RNA-guided gene regulation and editing. Nat Methods. 2013 Nov;10(11):1116-21.
[V]
Efficient genome engineering in human pluripotent stem cells using Cas9 from Neisseria meningitidis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Sep 24;110(39):15644-9.
[VI]
Streptococcus thermophilus CRISPR-Cas9 systems enable specific editing of the human genome. Mol Ther. 2016 Mar;24(3):636-44.
【0019】
また、Class 2 Type VのCRISPR-CasシステムとしてCpf1が同定されており、アシダミノコッカス (Acidaminococcus sp., As)由来Cpf1やLachnospiraceae由来Cpf1を用いることで、gRNA配列依存的にヒト細胞でゲノム編集が可能であることが報告されている。したがって、これらのCRISPR-Cpf1を使用することもできる。
[V]
Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System. Cell. 2015 Oct 22;163(3):759-71
[VI]
Multiplex gene editing by CRISPR-Cpf1 using a single crRNA array. Nat Biotechnol. 2017 Jan;35(1):31-34.
【0020】
CRISPR-Cas9はRuvCドメインとHNHドメインの二つのヌクレアーゼドメインを持ち、それぞれのドメインが二本鎖DNAの各鎖の切断を担っている。また、CRISPR-Cpf1はRuvCドメインとNucドメインを持つ。そして、Streptococcus pyogenes由来Cas9においてRuvCドメインの10番目のAspをAlaに置換(D10A)すると、gRNAが結合しないDNA鎖が切断されなくなり、HNHドメインの840番目のHisをAlaに置換(H840A)すると、gRNAが結合するDNA鎖が切断されなくなる[Jinek M et al., Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21.]。この特性を利用して、二本鎖DNAの一本鎖しか切断しないNickaseを二つ近接した状態で、各々別々のDNA鎖を切断することによって、目的の領域に二本鎖DNA切断を誘導するDouble nicking(またはpaired nickases)法が開発された[Mali P et al., Nat Biotechnol. 2013 Sep;31(9):833-8.][Ran FA et al., Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380-9.]。これにより、ターゲット部位以外の所へ配列変異を誘導するリスクを低下させつつ、任意の配列をノックインにて挿入するターゲティング等のゲノム編集を行うことが可能となった[WO 2014204725 A1]。
したがって、本発明の方法においては、D10A Cas9 NickaseをCRISPR-Cas9として使用し、センス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ切断するための2種類のガイドRNAを使用することもできる(Double nicking法)。Streptococcus pyogenes由来Cas9以外でもRuvCドメインの活性アミノ酸残基に変異を導入することでDouble nicking法に使用できるNickase型Cas9やNickase型Cpf1を得ることができる。
【0021】
上記のようなCRISPR-Cas をコードするDNAは、GenBank等に登録されているCRISPR-Casをコードする配列に基づいてクローニングすることにより入手可能である。また、市販のCRISPR-Casを含むプラスミドをAddgene等から入手して使用してもよいし、当該プラスミドを鋳型としたPCRによりCRISPR-CasをコードするDNAを得てもよいし、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。Cas NickaseをコードするDNAは、公知の分子生物学的手法によりCRISPR-Casのヌクレアーゼドメインの活性アミノ酸残基へ変異を導入することによって入手することができるし、あらかじめ変異が導入されたCRISPR-Cas遺伝子を含むプラスミド等からクローニングして用いてもよい。また、CRISPR-Casは宿主における発現効率を向上させるためにコドン改変されてもよい。
【0022】
CRISPR-CasはmRNAやタンパク質、あるいはDNAとして細胞に導入されてもよい。ガイドRNAはRNAあるいはDNAとして細胞に導入されても良い。ベクターを用いて導入する場合に使用されるベクターとしては、真核生物細胞において複製可能なベクター、ならびにエピソームを維持するベクターあるいは宿主細胞ゲノムに組み込まれるベクターが挙げられるが、ウイルスベクターとして例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。また、トランスポゾンベクターとしては、piggyBacベクター、piggyBatベクター、Sleeping Beautyベクター、TolIIベクター、LINEベクター等が挙げられる。治療においては、恒常的に発現するベクターでの導入は副作用リスクが高まるため好ましくなく、投与直後にDNA切断が誘導されればよいため、Cas9 mRNA/gRNAやCas9タンパク質/gRNAとしての導入、エピソーマルベクターとしての導入等が好ましい。
ベクターは、選択マーカーを含んでもよい。「選択マーカー」とは、選択マーカーが導入された細胞に選択可能な表現型を提供する遺伝エレメントをいい、一般には、遺伝子産物が細胞の増殖を阻害するかまたは細胞を殺傷する薬剤に対する耐性を与える遺伝子である。具体的には、例えば、Puro耐性遺伝子、Neo耐性遺伝子、Hyg耐性遺伝子、Bls遺伝子、hisD遺伝子、Gpt遺伝子およびBle遺伝子が挙げられる。選択マーカーの存在を選択するために有用な薬物としては、例えば、Puro耐性遺伝子に対してはピューロマイシン、Neo耐性遺伝子に対してはG418、Hyg耐性遺伝子に対してはハイグロマイシン、Bls遺伝子に対してはブラスチサイジン、hisDに対してはヒスチジノール、Gptに対してはキサンチン、そしてBleに対してはブレオマイシンが挙げられる。
【0023】
<ガイドRNA>
ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)は、CRISPR-Cas9法におけるtracrRNAとcrRNAの複合体、またはtracrRNAとcrRNAを人工的に連結させたものである。[Jinek M et al., Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21.]本発明においては、標的遺伝子に対応する配列を有するスペーサー配列とスキャッフォールド配列を連結させたものを意味する。
SpCas9のガイドRNAのスキャッフォールド配列は、公知の配列、例えば、5’-GTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGCTTTTTTT-3’(配列番号3)の配列を使用することが可能である。または、改変されたスキャッフォールド配列 (Chen B et al., Cell, 2013 Dec 19;155(7):1479-91) 5'-GTTTTAGAGCTATGCTGGAAACAGCATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGCTTTTTTTTT-3'(配列番号4)でもよい。
なお、ガイドRNAは、CRISPR-Cpf1においてtracrRNAは必要としない。
AsCpf1のガイドRNAのスキャッフォールド配列は、公知の配列、例えば、5'-GTAATTTCTACTCTTGTAGAT-3'(配列番号5)または5'-GGGTAATTTCTACTCTTGTAGAT-3'(配列番号6)の配列を使用することが可能である。たとえば、当業者に公知の人工遺伝子合成技術を用いて、当該DNAを人工的に作製してもよく、その入手方法に制限はない。
【0024】
本発明の方法においては、CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内、好ましくは50塩基以内、より好ましくは30塩基以内に配置されるようにガイドRNA
のスペーサー配列を設定する。また、Exonic Splicing Enhancer (ESE)配列部分へ設計しても良い。
このように設定することで、標的エクソンのスプライスアクセプター部位またはドナー部位の近傍で切断が起こり、その修復過程でスプライスアクセプター部位またはドナー部
位が破壊され、Pre-mRNAがmRNAへと成熟する過程でスプライシング反応が起こる際に標
的エクソンのスキッピングが起こる。
【0025】
スプライスアクセプター部位は、標的エクソン直前の2塩基と定義され、例えば、AG配列である。
スプライスドナー部位は、標的エクソン直後の2塩基と定義され、例えば、GT配列である。
Exonic Splicing Enhancer (ESE)配列は標的エクソン中に存在するSRタンパク質(SRSF1~12遺伝子)の結合部位として定義される。SRタンパク質の結合部位はデータベースでのサーチが可能であり、そのようなデータベースとして例えばRESCUE-ESE [Fairbrother WG et al., Science, 2002]、ESEfinder [Cartegni L. et al., NAR, 2003]などがある。
【0026】
Type II Cas9のスペーサー配列は標的遺伝子のセンス鎖またはアンチセンス鎖の配列において、PAM配列(例えば、S. pyogenes Cas9の場合はNGG、Staphylococcus aureus Cas9の場合はNNGRRT)の直前の塩基を3’末端とする15~30塩基の連続する塩基配列を有するRNAとして設計することができる(例えばNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGG(配列番号7))。(Nはスペーサー配列)
ただし、配列が100%一致していなくとも切断は起こりうるため、1~2塩基のミスマッチがあってもよい(特に5’側)。なお、ヒトH1 PolIIIプロモータからの転写開始点とするにはスペーサー配列の5’末端の塩基はCまたはTでないことが好ましく、もし、ゲノム上の相当する塩基がCまたはTの場合はGに変換することが好ましい。
Type V Cfp1のガイドRNAの場合はPAM配列(例えばAcidaminococcus sp. Cpf1の場合、TTTV)の直後の塩基を5’末端とする15~30塩基の連続する塩基配列を有するRNAとして設計することができる(例えばTTTTVNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(配列番号8))。Cpf1の場合、tracrRNAは必要としない。
【0027】
S. pyogenes Cas9によるDNA切断部位は、スペーサー配列の3’末端の塩基を1として3’→5’の方向に数えると該塩基から3番目の塩基と4番目の塩基の間で切れるので、「切断部位が標的エクソンのアクセプター部位またはドナー部位から80塩基以内に配置される」とは、アクセプター部位またはドナー部位の塩基(例えば、GTまたはAG(アンチセンス鎖の場合はACまたはCT))とスペーサー配列の3’末端の塩基に相当する塩基から3’→5’の方向に数えて4番目の塩基の間に存在する塩基数が80塩基以内であることを意味する。
AsCpf1によるDNA切断部位は、スペーサー配列の5’末端の塩基を1として5’→3’の方向に数えると該塩基から19番目のセンス鎖塩基と23番目のアンチセンス鎖塩基が切断される。
【0028】
図3で説明する。
ヒトジストロフィン(hDMD)遺伝子のエクソン45を標的とし、エクソン45の直前のアクセプター部位を破壊し、エクソン45のスキッピングを行う。
この際、Sp-sgRNA-DMD1では、PAM配列(AGG)の直前の20塩基(tggtatcttacagGAAC/TCC)(配列番号9)に相当するスペーサー配列が設計される。この場合はアクセプター配列(ag)と切断部位(C/T)の間には4塩基が存在している。
同様に、Sp-sgRNA-DMD2では、PAM配列(TGG)の直前の20塩基(atcttacagGAACTCCA/GGA)(配列番号10)に相当するスペーサー配列が設計される。この場合はアクセプター配列(ag)と切断部位(A/G)の間には8塩基が存在している。
同様に、Sp-sgRNA-DMD3では、PAM配列(TGG)の直前の20塩基(cagGAACTCCAGGATGG/CAT)(配列番号11)に相当するスペーサー配列が設計される。この場合はアクセプター配列(ag)と切断部位(G/C)の間には14塩基が存在している。
同様に、Sp-sgRNA-DMD4では、PAM配列(CGG)の直前の20塩基(TCCAGGATGGCATTGGG/CAG)(配列番号12)に相当するスペーサー配列が設計される。この場合はアクセプター配列(ag)と切断部位(G/C)の間には21塩基が存在している。
Sp-sgRNA-DMD5は、アンチセンス鎖に設定されており、PAM配列(AGG)の直前の20塩基(GTTCctgtaagatacca/aaa)(配列番号13)に相当するスペーサー配列が設計される。
この場合はアクセプター配列(ct)と切断部位(a/a)の間には11塩基が存在している。
なお、各配列番号においてRNA配列を意味する場合はTをUに読み替えるものとする。
【0029】
上記のようなスペーサー配列にスキャッフォールド配列を付加することでガイドRNAを得ることができる。スキャッフォールド配列を内包し、任意のスペーサー配列に対応するDNA配列を挿入することにより所望のガイドRNAを発現させることができるプラスミドが市販されている(Addgeneプラスミド41824等)ので、それを使用してガイドRNAを細胞に導入することが簡便である。
【0030】
なお、ガイドRNAは2種類以上使用してもよい。その場合、1つの破壊対象部位(標的
エクソン)に対し、「CRISPR-Casによる切断部位が標的エクソンの直前のスプライスアクセプター部位または標的エクソンの直後のスプライスドナー部位から80塩基以内」という条件を満たす2種類以上のガイドRNAを使用することができる。同じ破壊対象部位に対
して2種またはそれ以上の異なるガイドRNAを使用し、同時に2ヶ所以上でDNA二本鎖
の切断を起こす場合、非常に高い効率でエクソンスキッピングを引き起こすことができる。なお、2種類以上のガイドRNAはセンス鎖とアンチセンス鎖の一方に設定されてもよい
し、両方に設定されてもよい。
【0031】
また、D10A Cas9 Nickaseを使用し、センス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ切断するための2種類のガイドRNAを使用する場合は、2種類のガイドRNAのうち少なくともどちらかの切断部位が標的エクソンの前後のアクセプター部位またはドナー部位から80塩基以内という要件を満たすように設計する。その場合、センス鎖のガイドRNA結合部位(スペーサー配列)とアンチセンス鎖のガイドRNA結合部位(スペーサー配列)の間の距離は-10~200塩基であることが好ましく、より好ましくは0~100塩基であり、センス鎖の切断部位とアンチセンス鎖の切断部位の間にアクセプター部位またはドナー部位が配置されることが好ましい。また、センス鎖を切断するためのガイドRNAのスペーサー配列とアンチセンス鎖を切断するためのガイドRNAのスペーサー配列は互いに重なっていても良いが、重ならないことが好ましい。
【0032】
標的エクソンを有する標的遺伝子は特に制限されないが、哺乳類の遺伝子であることが好ましく、ヒト遺伝子であることがより好ましく、例えば、疾患に関連する遺伝子が挙げられる。
その一例として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子であるジストロフィン遺伝子が挙げられ、エクソン45をスキップすることで変異型遺伝子の表現型をマスクすることができることが知られているので、ヒトジストロフィン遺伝子のエクソン45がエクソンスキップの対象としては好適に使用できる。
なお、人工的に合成したエクソン及びイントロンを含む遺伝子を標的遺伝子としてもよい。
【0033】
本発明の方法において使用しうるガイドRNAに含まれるスペーサー配列の具体的配列としては、配列番号17~42のいずれかの塩基配列の塩基番号17~36の塩基配列、配列番号44~45のいずれかの塩基配列の塩基番号17~39の塩基配列、または配列番号50~53のいずれかの塩基配列の塩基番号24~43の塩基配列が例示される。なお、これらの相補配列でもよい。
この中で、2種類のガイドRNA を組み合わせて使用するときに好ましいスペーサー配列の組み合わせとしては、例えば、sgRNA-DMD1(配列番号17の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD2(配列番号18の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD4(配列番号20の塩基番号17~36の塩基配列)、sgRNA-DMD8(配列番号24の塩基番号17~36の塩基配列)またはsgRNA-DMD9(配列番号25の塩基番号17~36の塩基配列)と、sgRNA-DMD23(配列番号39の塩基番号17~36の塩基配列)の組み合わせである。
また、この中で、Double nicking法に使用するときに好ましいスペーサー配列の組み合わせとしては、例えば、sgRNA-DMD4(配列番号20の塩基番号17~36の塩基配列)とsgRNA-DMD5(配列番号21の塩基番号17~36の塩基配列)である。
【0034】
細胞へのDNA、RNAまたはこれらを発現するベクターのトランスフェクションは、公知の任意の手段を使用することにより可能であり、市販のトランスフェクション用試薬を使用してもよい。たとえば、Lipofectamine2000(Thermo Fisher)、StemFect(STEMGEN)、FuGENE 6/HD(プロメガ)、jetPRIME Kit(ポリプラストランスフェクション)、DreamFect(オズバイオサイエンス)、GenePorter3000(オズバイオサイエンス)、Calcium Phosphate Transfection Kit(オズバイオサイエンス)等を使用可能である。また、エレクトロポレーションでも良く、例えばNEPA21(ネッパジーン)、4D-Nucleofector(ロンザ)、Neon (Thermo Fisher)、Gene Pulser Xcell(バイオラッド)、ECM839(BTX Harvard Apparatus)等が使用可能である。細胞へのトランスフェクションは、CRISPR-Casタンパク質とgRNAとで予め複合体を形成させ、当該複合体を細胞にトランスフェクションしてもよい。また受精卵にマイクロインジェクション、エレクトロポレーションによりDNA、RNAを導入することも可能である。
【0035】
細胞としては哺乳動物細胞が好ましく、ヒト細胞がより好ましい。細胞は株化細胞や哺乳動物組織から単離された初代培養細胞でもよいが、間葉系細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞でもよい。例えば、ジストロフィン遺伝子を標的とする場合、DMD患者由来の骨格筋細胞、間葉系細胞、またはiPS細胞を樹立し、そこへ当該発明のエクソンスキッピングを誘導するガイドRNAとCRISPR-Cas、またはガイドRNAペアとCas Nickaseを共導入することによりジストロフィン遺伝子のエクソンスキッピングを誘導し、ジストロフィンタンパク質を回復させることができる。そして、このような修復細胞またはその誘導産物を患者に移植することで、萎縮した筋細胞の補充を行うことができる。
【0036】
また、DMD患者の筋組織に、当該発明のエクソンスキッピングを誘導するガイドRNAとCRISPR-Cas、またはガイドRNAペアとCas Nickaseを共導入することにより、ジストロフィン遺伝子のエクソンスキッピングを誘導し、患者の体内でジストロフィンタンパク質を回復させる態様も挙げられる。
【0037】
<エクソンスキッピングの評価方法>
本発明はまた、CRISPR-CasおよびガイドRNA等を使用したエクソンスキッピングを評価するための方法であって、コード領域内に第1イントロン、解析対象エクソンおよび第2イントロンを含む配列が挿入されたマーカー遺伝子を使用し、(解析対象エクソン近傍に設定されたガイドRNAとCRISPR-Casの作用により)解析対象エクソンがスキップされたときにマーカー遺伝子が機能するように設計されていることを特徴とする方法を提供する。
なお、エクソンスキッピングはアンチセンス核酸等でも誘導可能であり、評価対象はゲノム編集に限定されない。
【0038】
マーカー遺伝子としては、ルシフェラーゼやLacZ等の酵素を含む遺伝子や、GFP、Ds-RedおよびmCherry等の蛍光蛋白質をコードする遺伝子や、Puro耐性遺伝子、Neo耐性遺伝子、Hyg耐性遺伝子、Bls遺伝子、hisD遺伝子、Gpt遺伝子およびBle遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が例示されるが、これらに限定されない。なお、マーカー遺伝子cDNA内にスプライシングドナーやアクセプター配列と同一又は類似配列が存在するときは、当該部位を改変してマーカー内でのスプライシングが起こらないようにしておくことが、挿入配列におけるスプライシングを特異的に評価する目的から好ましい。
【0039】
第1イントロン(ドナー部位およびアクセプター部位を含む)、解析対象エクソンおよび第2イントロン(ドナー部位およびアクセプター部位を含む)を含む配列のマーカー遺伝子への挿入位置は、エクソンが挿入されることによりマーカー遺伝子が機能しなくなる(マーカータンパク質の活性またはマーカー遺伝子に基づく表現型が消失する)ような位置である。エクソン挿入によりマーカー遺伝子が機能しなくなることは事前に調べておけばよい。また、挿入部位の配列として、CAG@GまたはAAG@Gという配列の"@"の部分を選択すれば、第1イントロンのスプライスドナー配列および第2イントロンのスプライスアクセプター配列が、ヒトスプライスアクセプター(MAG|GURAG)およびヒトスプライスアクセプター配列(NCAG|G)のコンセンサス(最頻度)配列となることから、より好ましい。
本発明の方法において、スプライシングが正常に起こる場合は、マーカー遺伝子はエクソンが挿入された融合タンパク質(元の活性は失っている)として発現される、またはエクソンの挿入により正常に発現しないので、マーカー遺伝子は機能しない。
一方、ゲノム編集によりエクソンがスキップされると、マーカー遺伝子は正常型として発現し、マーカータンパク質の活性またはマーカー遺伝子に基づく表現型が観察される。
したがって、マーカー遺伝子の機能の有無によってエクソンがスキップされたかを解析できる。これにより、エクソンスキッピングの簡便な評価ができ、エクソンスキップを促進する化合物のスクリーニングなどにも有用である。
【0040】
改変マーカー遺伝子が導入された細胞において、挿入配列に応じたガイドRNAをCRISPR-Casとともに導入し、当該細胞のマーカー遺伝子に対応する表現型を解析することで、エクソンスキッピングが起こっているかを調べることができる。なお、改変マーカー遺伝子の染色体上への組み込みはトランスポゾンベクターまたはウイルスベクターを用いて行うことが好ましい。トランスポゾンベクターとしてはpiggyBacベクター、piggyBatベクター、Sleeping Beautyベクター、TolIIベクター、LINEベクター等が挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、センダイウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。
エクソンの種類は特に限定されず、例えば、上述のようなジストロフィン遺伝子のエクソン45などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて発明を具体的に説明するが本発明は以下の態様には限定されない。
【0042】
<方法>
<Unique k-merデータベース>
図2関連
Perlスクリプトを用いて、10~16-mer (k-mer)の全組合せ塩基配列を生成した。Bowtieプログラム(Langmead et al., 2009)を用いて生成したk-mer配列を、ミスマッチを許容せずにヒトゲノムhg19へとマッピングした。次に、ヒトゲノムhg19に一回のみマッピングされたk-mer配列のみを抽出して、Unique k-merデータベースを構築した(Li HL et al., Stem Cell Reports, 2015)。R言語で動作するngs.plot.rプログラム(Shen L et al., BMC Genomics, 2014)を用いて、ヒト全エクソンの前後200bpにおけるUnique k-merの分布を調べ、プロットを行った。
【0043】
<SpCas9 cDNA発現ベクター構築>
DNA合成(GenScript社)により、C末端にSV40 large T抗原由来核移行シグナルペプチド(PKKKRKV)(配列番号217)を持ち、ヒトコドン頻度に最適化したStreptococcus pyogenes由来Cas9 cDNAを挿入したpUC57-SphcCas9ベクターを作製した。これをSalI-XbaI制限酵素で切断し、pENTR2B (A10463, Thermo Fisher)のSalI-XbaIサイトへライゲーションすることで、pENTR-SphcCas9ベクターを構築した。次に、pENTR-SphcCas9ベクターのSphcCas9 cDNA部分をGateway LRクロナーゼ反応によりpHL-EF1α-GW-iC-Aベクター、pHL-EF1α-GW-iP-Aベクター、またはpHL-EF1α-GW-Aベクターへ挿入し、pHL-EF1α-SphcCas9-iC-Aベクター(SpCas9-IRES-mCheery-polyA)、pHL-EF1α-SphcCas9-iP-Aベクター(SpCas9-IRES-PuroR-polyA)(Addgene, 60599)、およびpHL-EF1α-SphcCas9-Aベクター(SpCas9-polyA)を構築した。EF1αプロモーターは、ウイルス由来プロモーター(CMVプロモーター等)よりも多能性幹細胞での発現量が高く得られるため適している。
また、SpCas9のD10A変異体(ニッカーゼ)を作製するために、GaCコドン(Asp, D)をGcCコドン(Ala, A)に変換したDNA配列SphcCas9-D10A(NcoI-SbfI)をgBlock(IDT)で合成した。
SphcCas9-D10A(NcoI-SbfI)配列をNcoI-SbfI制限酵素で切断し、pENTR-SphcCas9ベクターのNcoI-SbfIサイトにIn-Fusion反応を用いて挿入することで、pENTR-SphcCas9-D10Aベクターを構築した。次に、pENTR-SphcCas9-D10AベクターのSphcCas9-D10A cDNA部分をGateway LRクロナーゼ反応によりpHL-EF1α-GW-iC-Aベクター、またはpHL-EF1α-GW-iP-Aベクターへ挿入し、pHL-EF1α-SphcCas9-D10A-iC-Aベクター(SpCas9-IRES-mCheery-polyA)、およびpHL-EF1α-SphcCas9-D10A-iP-Aベクター(SpCas9-IRES-PuroR-polyA)を構築した。
【0044】
SphcCas9-D10A(NcoI-SbfI)
5'-ATTCAGTCGACCATGGATAAGAAATACAGCATTGGACTGGcCATTGGGACAAACTCCGTGGGATGGGCCGTGATTACAGACGAATACAAAGTGCCTTCAAAGAAGTTCAAGGTGCTGGGCAACACCGATAGACACAGCATCAAGAAAAATCTGATTGGAGCCCTGCTGTTCGACTCCGGCGAGACAGCTGAAGCAACTCGGCTGAAAAGAACTGCTCGGAGAAGGTATACCCGCCGAAAGAATAGGATCTGCTACCTGCAGGAGATTTTCAGCAA-3'(配列番号14)
【0045】
<SpCas9 gRNA発現ベクター構築>
SpCas9のgRNAを発現ベクターへクローニングするために、下記の任意のSp-sgRNA-XXX-fwdプライマー(配列番号17~42のいずれか)と、Sp-sgRNA-Universal-revプライマーを10 pmolずつ混合し、KOD Plus Neo DNAポリメラーゼ(Toyobo)を用いてサーマルサイクリング反応を行う(98℃: 2 min熱変性を行った後、{94℃: 10 sec, 55℃: 10 sec, 68℃: 10 sec}×35サイクル, その後、4℃で保温)。PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動し、135bp付近のサイズのDNAバンドを切り出し精製する。この精製PCR産物をBamHI-EcoRIで切断したpHL-H1-ccdB-mEF1a-RiHベクター(Addgene 60601)にIn-Fusion反応(Takara-Clontech)を用いて挿入し、任意のgRNAを発現するpHL-H1-[SpCas9-gRNA]-mEF1a-RiHベクターを構築する。
【0046】
PCR産物配列 (135 bp)
GAGACCACTTGGATCCRNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGCTTTTTTTGAATTCAAACCCGGGC(配列番号15)
【0047】
Sp-sgRNA-XXX-fwd
GAGACCACTTGGATCCRNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号16)
Sp-sgRNA-DMD1-fwd
GAGACCACTTGGATCCGggtatcttacaggaactccGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号17)
Sp-sgRNA-DMD2-fwd
GAGACCACTTGGATCCGtcttacaggaactccaggaGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号18)
Sp-sgRNA-DMD3-fwd
GAGACCACTTGGATCCGaggaactccaggatggcatGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号19)
Sp-sgRNA-DMD4-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCCAGGATGGCATTGGGCAGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号20)
Sp-sgRNA-DMD5-fwd
GAGACCACTTGGATCCGTTCCTGTAAGATACCAAAAGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号21)
Sp-sgRNA-DMD6-fwd
GAGACCACTTGGATCCGcaTTTTTGTTTTGCCTTTTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号22)
Sp-sgRNA-DMD7-fwd
GAGACCACTTGGATCCGTGCCTTTTTGGTATCTTACGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号23)
Sp-sgRNA-DMD8-fwd
GAGACCACTTGGATCCAGGAACTCCAGGATGGCATTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号24)
Sp-sgRNA-DMD9-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCCGCTGCCCAATGCCATCCGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号25)
Sp-sgRNA-DMD10-fwd
GAGACCACTTGGATCCGTCAGAACATTGAATGCAACGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号26)
Sp-sgRNA-DMD11-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCAGAACATTGAATGCAACTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号27)
Sp-sgRNA-DMD12-fwd
GAGACCACTTGGATCCGAGAACATTGAATGCAACTGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号28)
Sp-sgRNA-DMD13-fwd
GAGACCACTTGGATCCAATACTGGCATCTGTTTTTGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号29)
Sp-sgRNA-DMD14-fwd
GAGACCACTTGGATCCAACAGATGCCAGTATTCTACGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号30)
Sp-sgRNA-DMD15-fwd
GAGACCACTTGGATCCGAATTTTTCCTGTAGAATACGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号31)
Sp-sgRNA-DMD16-fwd
GAGACCACTTGGATCCGAGTATTCTACAGGAAAAATGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号32)
Sp-sgRNA-DMD17-fwd
GAGACCACTTGGATCCAGTATTCTACAGGAAAAATTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号33)
Sp-sgRNA-DMD18-fwd
GAGACCACTTGGATCCAATTGGGAAGCCTGAATCTGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号34)
Sp-sgRNA-DMD19-fwd
GAGACCACTTGGATCCGGGGAAGCCTGAATCTGCGGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号35)
Sp-sgRNA-DMD20-fwd
GAGACCACTTGGATCCAAGCCTGAATCTGCGGTGGCGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号36)
Sp-sgRNA-DMD21-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCTGAATCTGCGGTGGCAGGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号37)
Sp-sgRNA-DMD22-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCTCCTGCCACCGCAGATTCGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号38)
Sp-sgRNA-DMD23-fwd
GAGACCACTTGGATCCAGCTGTCAGACAGAAAAAAGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号39)
Sp-sgRNA-DMD24-fwd
GAGACCACTTGGATCCGTCAGACAGAAAAAAGAGGTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号40)
Sp-sgRNA-DMD25-fwd
GAGACCACTTGGATCCGCAGACAGAAAAAAGAGGTAGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号41)
Sp-sgRNA-DMD26-fwd
GAGACCACTTGGATCCGGTAGGGCGACAGATCTAATGTTTTAGAGCTAGAAATAGCA(配列番号42)
【0048】
Sp-sgRNA-Universal-rev
GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAAGCACCGACTCGGTGCCACTTTTTCAAGTTGATAACGGACTAGCCTTATTTTAACTTGCTATTTCTAGCTCTAA(配列番号43)
【0049】
<SaCas9 cDNA発現ベクター構築>
図13関連
DNA合成(GenScript)により、N末端にSV40 large T NLSを、C末端にNucleoplasmin NLSと3×HAタグを持つ、ヒトコドン頻度に最適化したStaphylococcus aureus由来Cas9 cDNAをGateway attL1サイトとattL2サイトの間に挿入したpUC-Kan-SahcCas9ベクターを作製した。次に、pUC-Kan-SahcCas9ベクターのSaCas9 cDNA部分をGateway LRクロナーゼ反応によりpHL-EF1α-GW-AまたはpHL-EF1α-GW-iP-Aベクターへ挿入し、HL-EF1α-SaCas9-AおよびHL-EF1α-SaCas9-iC-Aベクターをそれぞれ構築した。
【0050】
<SaCas9 gRNA発現ベクター構築>
SaCas9のgRNAを発現ベクターへクローニングするために、下記の任意のsgRNA-DMD-SA-X-fwdプライマー(配列番号44~45のいずれか)と、SA1-gRNA-Universal-Revプライマーを10 pmolずつ混合し、KOD Plus Neo DNAポリメラーゼ(Toyobo)を用いてサーマルサイクリング反応を行う(98℃: 2 min熱変性を行った後、{94℃: 10 sec, 55℃: 10 sec, 68℃: 10 sec}×35サイクル, その後、4℃で保温)。PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動し、135bp付近のサイズのDNAバンドを切り出し精製する。この精製PCR産物をBamHI-EcoRIで切断したpHL-H1-ccdB-mEF1a-RiHベクター(Addgene 60601)にIn-Fusion反応(Takara-Clontech)を用いて挿入し、任意のgRNAを発現するpHL-H1-[SaCas9-gRNA]-mEF1a-RiHベクターを構築する。
【0051】
sgRNA-DMD-SA-5
5’-GAGACCACTTGGATCCATTACAGGAACTCCAGGATGGCAGTTTTAGTACTCTGGAAACAGAAT-3’ (配列番号44)
sgRNA-DMD-SA-8
5’-GAGACCACTTGGATCCATTGCCGCTGCCCAATGCCATCCGTTTTAGTACTCTGGAAACAGAAT-3’ (配列番号45)
SA1-gRNA-Universal-Rev
5’-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAATCTCGCCAACAAGTTGACGAGATAAACACGGCATTTTGCCTTGTTTTAGTAGATTCTGTTTCCAGAGTACTAA-3’ (配列番号46)
【0052】
<AsCpf1 cDNA発現ベクター構築>
図13関連
DNA合成(GenScript)により、Gateway attL1サイトとattL2サイトの間に、C末端にNucleoplasmin NLS(KRPAATKKAGQAKKKK)(配列番号218)と3×HAタグ(YPYDVPDYA YPYDVPDYA YPYDVPDYA)(配列番号219)配列を持ち、ヒトコドン頻度に最適化したAcidaminococcus sp. BV3L6由来Cpf1 cDNAを挿入したpUC57-hcAsCpf1ベクターを作製した。次に、pENTR-hcAsCpf1ベクターのhcAsCpf1 cDNA部分をGateway LRクロナーゼ反応によりpHL-EF1α-GW-AまたはpHL-EF1α-GW-iP-Aベクターへ挿入し、HL-EF1α-hcAsCpf1-AおよびHL-EF1α-hcAsCpf1-iC-Aベクターをそれぞれ構築した。
【0053】
<AsCpf1 gRNA発現ベクター構築>
AsCpf1のgRNAを発現ベクターへクローニングするために、下記の任意のAsCpf1-gRNA-XXX-revプライマー(配列番号50~53のいずれか)とAsCpf1-gRNA-Universal-GGG-fwdプライマー(またはAsCpf1-gRNA-Universal-G-fwdプライマー)を10 pmolずつ混合し、KOD Plus Neo DNAポリメラーゼ(Toyobo)を用いてサーマルサイクリング反応を行う(98℃: 2 min熱変性を行った後、{94℃: 10 sec, 55℃: 10 sec, 68℃: 10 sec}×35サイクル, その後、4℃で保温)。PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動し、80bp付近のサイズのDNAバンドを切り出し精製する。この精製PCR産物をBamHI-EcoRIで切断したpHL-H1-ccdB-mEF1a-RiHベクターにIn-Fusion反応(Takara-Clontech)を用いて挿入し、AsCpf1 gRNAを発現するpHL-H1-[AsCpf1-gRNA]-mEF1a-RiHベクターを構築する。
AsCpf1-gRNA-Universal-GGG-fwd (GGG at TSS)
5'-GAGACCACTTGGATCCGGGTAATTTCTACTCTTGTAGAT-3'(配列番号47)
AsCpf1-gRNA-Universal-G-fwd (G at TSS)
5'-GAGACCACTTGGATCCGTAATTTCTACTCTTGTAGAT-3'(配列番号48)
AsCpf1-gRNA-XXX-rev
5'-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAANNNNNNNNNNNNNNNNNNNNATCTACAAGAGTAGAAATTA-3'(配列番号49)
AsCpf1-gRNA-DMD1-rev
5'-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAAGGAGTTCCTGTAAGATACCAATCTACAAGAGTAGAAATTA-3'(配列番号50)
AsCpf1-gRNA-DMD2-rev
5'-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAATGGAGTTCCTGTAAGATACCATCTACAAGAGTAGAAATTA-3'(配列番号51)
AsCpf1-gRNA-DMD3-rev
5'-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAACTGGAGTTCCTGTAAGATACATCTACAAGAGTAGAAATTA-3'(配列番号52)
AsCpf1-gRNA-DMD4-rev
5'-GCCCGGGTTTGAATTCAAAAAAAAGGATGGCATTGGGCAGCGGATCTACAAGAGTAGAAATTA-3'(配列番号53)
【0054】
<SSAベクターの構築>
図10関連
Sp-gRNA-DMD1~5のターゲット配列を持つSSA-DMD-all-ssオリゴDNAとSSA-DMD-all-asオリゴDNAをアニーリングさせ、pGL4-SSAベクター(Addgene 42962, Ochiai et al., Genes Cells, 2010)のFirefly Luc2 cDNA内に存在するBsaIサイトへライゲーションすることで、pGL4-SSA-DMD-allベクターを構築した。pGL4-SSA-DMD-allベクターにおいてFirefly Luc2 cDNAは分割されておりLuc活性を示さないが、ガイドRNAによりpGL4-SSAベクターのターゲットDNA部分の切断が誘導されると、SSA(Single strand annealing)経路によりDNA切断が修復されFirefly Luc2 cDNAが回復する。
SSA-DMD-all-ss
5'-gtcgTGCCTTTTTGGTATCTTACAGGAACTCCAGGATGGCATTGGGCAGCGGCAAACTGTTGTCAGAACATggt-3'
(配列番号54)
SSA-DMD-all-as
5'-cggtaccATGTTCTGACAACAGTTTGCCGCTGCCCAATGCCATCCTGGAGTTCCTGTAAGATACCAAAAAGGCA-3'
(配列番号55)
【0055】
<SSAアッセイによるターゲットDNA切断活性>
図10,
図13(c)
pGL4-SSA-DMD-Allベクター100 ng、Renilla Lucを発現するphRL-TKベクターを20 ng、CRISPR-Casを発現するpHL-EF1aベクターを200 ng、sgRNAを発現するpHL-H1-sgRNA-mEF1a-RiHベクターを200 ng混合し、Opti-MEM 25 μlで希釈する。Lipofectamine 2000 0.7 μlをOpti-MEM 25 μlで希釈し、3-5分室温でインキュベートした後、上記のDNA溶液と混合し、室温でさらに20分インキュベートする。そこへ、トリプシン-EDTA処理によって懸濁した293T細胞の細胞数を計測し、60,000細胞/100μlとなるように培地で希釈して、上記DNA-Lipofectamine複合体を含む96-wellプレートの1 wellに100 μlずつ播種する。48時間、5% CO
2、37℃で細胞を培養した後、室温に戻した96-wellプレートへDual-Glo Reagentを添加し、室温で30分インキュベートすることで細胞を融解してルシフェラーゼ反応を起こさせる。上清100 μlを白色96-wellプレートに移し、Centro LB960(ベルトールドテクノロジー社)を用いてFireflyとRenillaの発光強度を測定する。Firefly LucはCRISPRによりDNA切断が誘導された場合にのみ発光するので、Fireflyの発光値をRenillaの発光値でノーマライズした値をDNA切断効率として測定する。
【0056】
<細胞培養>
293T細胞はDMEM培地に5~10%FBSを添加して培養した。
DMD-iPS細胞(クローンID: CiRA00111)は、マイトマイシンC処理により細胞増殖を止めたSNLフィーダー細胞上にて、Knockout SR培地{200 mLのDMEM/F12培地(Thermo Fisher, 10565018)に、50 mLのKnockout SR (Thermo Fisher, 10828028)、2.5 mLのL-グルタミン (Thermo Fisher, 25030081)、2.5 mLの非必須アミノ酸ミックス (Thermo Fisher, 11140050)、0.5 mL 2-メルカプトエタノール (Thermo Fisher, 21985023)、1.25 mLのペニシリン-ストレプトマイシン (Thermo Fisher, 15140122)、そして8 ng/ml human basic FGF (Wako, 6404541)を添加}を用いて培養した。あるいは、StemFit AK03N (Ajinomoto)培地を用い、フィーダー細胞を使用せずにiMatrix-511 (Nippi, 892014)上で培養しても良い。
【0057】
<DMD-iPS細胞におけるゲノムDNA切断パターンの解析>
図11
エクソン44を欠損するDMD患者より樹立したiPS細胞に対し、トランスフェクションを行う一時間以上前から培地中に10 μMのY-27632 (Sigma)を添加した。エレクトロポレーションを行う直前に、iPS細胞をCTK溶液で剥離し、0.25%トリプシン-EDTAを用いて細胞をばらばらにした後、細胞カウントを行い、一条件あたり1×10
6個の細胞を用意した。ここへ、NEPA21エレクトロポレーター(ネッパジーン社)を用いて、穿孔パルス電圧125V、パルス幅5ミリ秒、パルス数2回の条件にて、pHL-EF1α-SphcCas9-iP-Aベクター(Addgene, 60599)5μgとpHL-H1-[Sp-gRNA]-mEF1α-RiHベクター5μgをエレクトロポレーションした。また、ダブルニッキングを行う場合は、pHL-EF1α-SphcCas9-D10A-iP-Aベクター5μgと、pHL-H1-[Sp-gRNA]-mEF1α-RiHベクターを5μgずつ2種類で合計10μgをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションしたiPS細胞は数日以上培養後、ゲノムDNAを抽出し、DMD-MiSeq-Rd1-fwd-XおよびDMD-MiSeq-Rd2-rev-Xプライマーを用いて一次PCR増幅を行った後、Multiplex P5 fwdプライマーおよびMultiplex P7 revプライマーを用いて二次PCR増幅を行った。PCR産物はゲル切り出し精製した後、Qubit 2.0 Fluorometer (Thermo Fisher)およびKAPA Library Quantification Kit for Illumina (KAPA Biosystems)を用いて定量し、サンプル毎に等量となるように混合した後、DNA濃度を2 nMに調製し、0.2N NaOHで5分間処理することでDNAをアルカリ変性させた。変性したDNAサンプルを12 pMに希釈し、4 pMのPhiX spike-in DNAを加えた後、MiSeq Reagent Kit v2 for 2 ×150bp(Illumina)を用いてMiSeqシーケンス反応を行った。シーケンスの結果生成されたFASTQシーケンスファイルから、クオリティの低いリードをFASTX- Toolkit中のfastq_quality_filterプログラムを用いて除去した。スパイクインとして用いたPhiX配列を除去した後、fastx_barcode_splitterプログラムを用いて、バーコード配列に応じてサンプル毎に分割を行った。各サンプルの配列はBWAプログラムを用いてマッピングし、配列の挿入欠損パターンはCIGARコードのMDタグ情報より抽出を行った。
【0058】
DMD-MiSeq-Rd1-fwd-X (Nにはサンプルに応じたバーコード配列が入る。下記参照)
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTNNNNAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3'(配列番号56)
DMD-MiSeq-Rd2-rev-X (Nにはサンプルに応じたバーコード配列が入る。下記参照)
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTNNNNCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号57)
Multiplex P5 fwd
5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTC-3'(配列番号58)
Multiplex P7 rev
5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTC-3'(配列番号59)
【0059】
上記Xのバーコードを含む具体的配列
DMD-MiSeq-Rd1-fwd1-AGTC
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTagtcAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号60)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd2-GTCA
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTgtcaAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号61)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd3-TCAG
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTtcagAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号62)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd4-CAGT
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTcagtAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号63)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd5-ATGC
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTatgcAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号64)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd6-TGCA
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTtgcaAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号65)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd7-GCAT
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTgcatAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号66)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd8-CATG
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTcatgAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号67)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd9-AACG
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTaacgAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号68)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd10-ACGA
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTacgaAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号69)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd11-CGAA
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTcgaaAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号70)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd12-GAAC
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTgaacAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号71)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd13-TACC
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTtaccAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号72)
DMD-MiSeq-Rd1-fwd14-ACCT
5'-CTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTacctAATAAAAAGACATGGGGCTTCA-3’ (配列番号73)
【0060】
DMD-MiSeq-Rd2-rev1-AGTC
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTagtcCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号74)
DMD-MiSeq-Rd2-rev2-GTCA
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTgtcaCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号75)
DMD-MiSeq-Rd2-rev3-TCAG
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTtcagCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号76)
DMD-MiSeq-Rd2-rev4-CAGT
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTcagtCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号77)
DMD-MiSeq-Rd2-rev5-ATGC
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTatgcCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号78)
DMD-MiSeq-Rd2-rev6-TGCA
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTtgcaCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号79)
DMD-MiSeq-Rd2-rev7-GCAT
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTgcatCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号80)
DMD-MiSeq-Rd2-rev8-CATG
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTcatgCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号81)
DMD-MiSeq-Rd2-rev9-AACG
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTaacgCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号82)
DMD-MiSeq-Rd2-rev10-ACGA
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTacgaCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号83)
DMD-MiSeq-Rd2-rev11-CGAA
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTcgaaCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号84)
DMD-MiSeq-Rd2-rev12-GAAC
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTgaacCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号85)
DMD-MiSeq-Rd2-rev13-TACC
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTtaccCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号86)
DMD-MiSeq-Rd2-rev14-ACCT
5'-CTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTacctCTGGCATCTGTTTTTGAGGA-3'(配列番号87)
【0061】
<Lucレポーターを利用したエクソンスキッピング検出ベクターの構築>
pGL4-CMV-luc2(プロメガ)からLuc2 cDNAをPCR増幅し、pENTR-D-TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific Inc.)にクローニングすることで、pENTR-D-TOPO-Luc2ベクターを構築した。pENTR-D-TOPO-Luc2ベクターをNarIとAgeIで切断して、gBlock(IDT社)で合成した下記のイントロン配列とDMD Exon 45配列を挿入し、pENTR-D-TOPO-Luc2-DMD-intron-Ex45[+]ベクターを構築した。次に、gBlock配列中hEx45の両側に二箇所存在するSalIサイトで切断して、ベクター側を再ライゲーションすることで、pENTR-D-TOPO-Luc2-DMD-intron-Ex45[-]ベクターを構築した。
【0062】
NarI-AgeI-DMD-Ex45-gBlock (
図6の配列)
GCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGGTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGGTAAGTCTTTGATTTGTCGACCGTATCCACGATCACTAAGAAACCCAAATACTTTGTTCATGTTTAAATTTTACAACATTTCATAGACTATTAAACATGGAACATCCTTGTGGGGACAAGAAATCGAATTTGCTCTTGAAAAGGTTTCCAACTAATTGATTTGTAGGACATTATAACATCCTCTAGCTGACAAGCTTACAAAAATAAAAACTGGAGCTAACCGAGAGGGTGCTTTTTTCCCTGACACATAAAAGGTGTCTTTCTGTCTTGTATCCTTTGGATATGGGCATGTCAGTTTCATAGGGAAATTTTCACATGGAGCTTTTGTATTTCTTTCTTTGCCAGTACAACTGCATGTGGTAGCACACTGTTTAATCTTTTCTCAAATAAAAAGACATGGGGCTTCATTTTTGTTTTGCCTTTTTGGTATCTTACAGGAACTCCAGGATGGCATTGGGCAGCGGCAAACTGTTGTCAGAACATTGAATGCAACTGGGGAAGAAATAATTCAGCAATCCTCAAAAACAGATGCCAGTATTCTACAGGAAAAATTGGGAAGCCTGAATCTGCGGTGGCAGGAGGTCTGCAAACAGCTGTCAGACAGAAAAAAGAGGTAGGGCGACAGATCTAATAGGAATGAAAACATTTTAGCAGACTTTTTAAGCTTTCTTTAGAAGAATATTTCATGAGAGATTATAAGCAGGGTGAAAGGCGTCGACGTTTGCATTAACAAATAGTTTGAGAACTATGTTGGAAAAAAAAATAACAATTTTATTCTTCTTTCTCCAGGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGG(配列番号88)
【0063】
Trichoplusia ni由来のpiggyBac 5'TR(Terminal repeat)と3'TR配列 は、3分割したgBlocks配列(gBlock11~13-PV-3'TR-5'TR)として合成(IDT)し、その3断片をPCRで連結した後、 pUC19ベクターのAatII-PvuIIサイトへIn-Fusion反応で挿入し、pPV-synthesizedベクターを構築した。
【0064】
gBlock11-PV-3'TR-5'TR
GAAAAGTGCCACCTGACGTCATCTGTTAACATTATACGCGTTTAACCCTAGAAAGATAATCATATTGTGACGTACGTTAAAGATAATCATGCGTAAAATTGACGCATGTGTTTTATCGGTCTGTATATCGAGGTTTATTTATTAATTTGAATAGATATTAAGTTTTATTATATTTACACTTACATACTAATAATAAATTCAACAAACAATTTATTTATGTTTATTTATTTATTAAAAAAAAACAAAAACTCAAAATTTCTTCTATAAAGTAACAAAACTTTTAAACATTCTCTCTTTTACAAAAATAAACTTATTTTGTACTTTAAAAACAGTCATGTTGTATTATAAAATAAGTAATTAGCTTAACCTATACATAATAGAAACAAATTATACTTA(配列番号89)
【0065】
gBlock12-PV-3'TR-5'TR
CCTATACATAATAGAAACAAATTATACTTATTAGTCAGTCAGAAACAACTTTGGCACATATCAATATTATGCTCTGCTAGCGATATCTGTAAAACGACGGCCAGTTCTAGACTTAAGCTTCATGGTCATAGCTGTTTCCTGCTCGAGTTAATTAACCAACAAGCTCGTCATCGCTTTGCAGAAGAGCAGAGAGGATATGCTCATCGTCTAAAGAACTACCCATTTTATTATATATTAGTCACGATATCTATAACAAGAAAATATATATATAATAAGTTATCACGTAAGTAGAACATGAAATAACAATA(配列番号90)
【0066】
gBlock13-PV-3'TR-5'TR
ATCACGTAAGTAGAACATGAAATAACAATATAATTATCGTATGAGTTAAATCTTAAAAGTCACGTAAAAGATAATCATGCGTCATTTTGACTCACGCGGTCGTTATAGTTCAAAATCAGTGACACTTACCGCATTGACAAGCACGCCTCACGGGAGCTCCAAGCGGCGACTGAGATGTCCTAAATGCACAGCGACGGATTCGCGCTATTTAGAAAGAGAGAGCAATATTTCAAGAATGCATGCGTCAATTTTACGCAGACTATCTTTCTAGGGTTAATACGTATAATACATATGATTCAGCTGCATTAATGAATC(配列番号91)
【0067】
PB-EF1a-GW-iPベクター(Masui H et al., PLOS ONE, 2014 Aug 15;9(8):e104957.)をNheI-PacIで切断し、pPV-synthesizedのNheI-PacIサイトへライゲーションを行い、pPV-EF1a-GW-iPベクターを構築した。次に、pCXLE-EGFPベクター(Okita K et al., Nat Methods, 2011 May;8(5):409-12.)からpHL-PacI-rHBB-pA-IF-fw プライマー(5'-GTATACCTCGAGTTAAATTCACTCCTCAGGTGC-3'(配列番号92))およびpPV-PacI-rHBB-pA-IF-revプライマー(5'-CGAGCTTGTTGGTTAATTAAGTCGAGGGATCTCCATAA-3'(配列番号93))を用いて、ウサギ由来 hemoglobin poly A signalを増幅し、pPV-EF1a-GW-iPベクターのPacIサイトへIn-Fusion反応を用いて挿入することで、pPV-EF1a-GW-iP-Aベクターを構築した。pPV-EF1a-GW-iP-AベクターとpENTR-D-TOPO-Luc2-DMD-intron-Ex45[+]を用いたGateway LR反応により、pPV-EF1a-Luc2-hDMD-Ex45[+]-iP-Aベクターを構築した。また、pPV-EF1a-GW-iP-AベクターとpENTR-D-TOPO-Luc2-DMD-intron-Ex45[-]を用いたGateway LR反応により、pPV-EF1a-Luc2-hDMD-Ex45-[-]-iP-Aベクターを構築した。
【0068】
<Luc2 V323I (G867A)変異の導入>
piggyBacベクターpPV-EF1a-Luc2-hDMD-Ex45[-]ベクターを鋳型にして、プライマーLuc2-NcoI-IF-Fwd と Luc2-V323I-fwdの組合せ、及びLuc2-V323I-revとLuc2-SalI-IF-Revの組み合わせでそれぞれ別々にPCRを行った。増幅された2つの断片を混合して両端のプライマー(Luc2-NcoI-IF-Fwd とLuc2-SalI-IF-Rev)で変異の入った断片を作成し、pPV-EF1a-Luc2-hDMD-Ex45[-]ベクターのNcoIとSalI切断部位にIn-Fusion反応で挿入することで、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[-]ベクターを構築した。
Luc2-NcoI-IF-Fwd GCCCCCTTCACCATGGAAG(配列番号94)
Luc2-V323I-fwd CAGCAAGGAGATAGGTGAGG (配列番号95)
Luc2-V323I-rev CCTCACCTATCTCCTTGCTG(配列番号96)
Luc2-SalI-IF-Rev TAATGCAAACGTCGACAAATCAAAGAC(配列番号97)
【0069】
<1kb, 2kb, 4kb, 0.7kbのhDMD exon 45および周辺イントロン配列の挿入>
pPV-EF1a-Luc2-hDMD-Ex45[+]-iP-Aを鋳型にして、DMD-Ex45-SalI-IF-FとDMD-Ex45-SalI-IF-Rプライマーを用いてPCR増幅し、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[-]ベクターのSalI切断サイトにIn-Fusion反応で挿入することで、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](0.7 kb)ベクターを構築した。
DMD-Ex45-SalI-IF-F tctttgatttGTCGACcgtatc(配列番号98)
DMD-Ex45-SalI-IF-R taatgcaaacGTCGACgcc(配列番号99)
【0070】
1383D2 細胞から調製したヒトゲノムDNAを鋳型にして、下記のプライマー(HDMD-SR-XkbFrag-fwd & rev)を用いることでexon 45 とその周辺イントロンを増幅し、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[-]ベクターのSalI切断部位にIn-Fusion反応で挿入することで、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](1kb)、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](2kb)、pPV-EF1a-Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](4kb)ベクターを構築した。
HDMD-SR-1kbFrag-fwd tctttgatttGTCGAGGGATATCTTGATGGGATGCTCC(配列番号100)
HDMD-SR-1kbFrag-rev taatgcaaacGTCGAAAACCACTAACTAGCCACAAGT(配列番号101)
HDMD-SR-2kbFrag-fwd tctttgatttGTCGAATTGTGAGGCACCGTGTCAC(配列番号102)
HDMD-SR-2kbFrag-rev taatgcaaacGTCGACTCTTTGGCTCAAGTTCCCCT(配列番号103)
HDMD-SR-4kbFrag-fwd tctttgatttGTCGAGCTGCAGCATTAGTTTATAGCA(配列番号104)
HDMD-SR-4kbFrag-rev taatgcaaacGTCGAAACTTTGGCAAGGGGTGTGT(配列番号105)
【0071】
構築したエクソンスキップレポーターcDNA部分の配列を下記に示す。
Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[-]
ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCCCAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCCGGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGCAGAAGCTATGAAGCGCTATGGGCTGAATACAAACCATCGGATCGTGGTGTGCAGCGAGAATAGCTTGCAGTTCTTCATGCCCGTGTTGGGTGCCCTGTTCATCGGTGTGGCTGTGGCCCCAGCTAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATCAGCCAGCCCACCGTCGTATTCGTGAGCAAGAAAGGGCTGCAAAAGATCCTCAACGTGCAAAAGAAGCTACCGATCATACAAAAGATCATCATCATGGATAGCAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAAAGCATGTACACCTTCGTGACTTCCCATTTGCCACCCGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCCGAGAGCTTCGACCGGGACAAAACCATCGCCCTGATCATGAACAGTAGTGGCAGTACCGGATTGCCCAAGGGCGTAGCCCTACCGCACCGCACCGCTTGTGTCCGATTCAGTCATGCCCGCGACCCCATCTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATCCTCAGCGTGGTGCCATTTCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACGCTGGGCTACTTGATCTGCGGCTTTCGGGTCGTGCTCATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTATTCTTGCGCAGCTTGCAAGACTATAAGATTCAATCTGCCCTGCTGGTGCCCACACTATTTAGCTTCTTCGCTAAGAGCACTCTCATCGACAAGTACGACCTAAGCAACTTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGaTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGgtaagtctttgatttGTCGACgtttgcattaacaaatagtttgagaactatgttggaaaaaaaaataacaattttattcttctttctccagGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGGGTGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGCGTCCGTGGCCCCATGATCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCCGAGGCTACAAACGCTCTCATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGAGCCTGATCAAATACAAGGGCTACCAGGTAGCCCCAGCCGAACTGGAGAGCATCCTGCTGCAACACCCCAACATCTTCGACGCCGGGGTCGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCCGCCGCAGTCGTCGTGCTGGAACACGGTAAAACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTTACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGTGGTGTTGTGTTCGTGGACGAGGTGCCTAAAGGACTGACCGGCAAGTTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATTCTCATTAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA(配列番号106)
Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+]
ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCCCAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCCGGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGCAGAAGCTATGAAGCGCTATGGGCTGAATACAAACCATCGGATCGTGGTGTGCAGCGAGAATAGCTTGCAGTTCTTCATGCCCGTGTTGGGTGCCCTGTTCATCGGTGTGGCTGTGGCCCCAGCTAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATCAGCCAGCCCACCGTCGTATTCGTGAGCAAGAAAGGGCTGCAAAAGATCCTCAACGTGCAAAAGAAGCTACCGATCATACAAAAGATCATCATCATGGATAGCAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAAAGCATGTACACCTTCGTGACTTCCCATTTGCCACCCGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCCGAGAGCTTCGACCGGGACAAAACCATCGCCCTGATCATGAACAGTAGTGGCAGTACCGGATTGCCCAAGGGCGTAGCCCTACCGCACCGCACCGCTTGTGTCCGATTCAGTCATGCCCGCGACCCCATCTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATCCTCAGCGTGGTGCCATTTCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACGCTGGGCTACTTGATCTGCGGCTTTCGGGTCGTGCTCATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTATTCTTGCGCAGCTTGCAAGACTATAAGATTCAATCTGCCCTGCTGGTGCCCACACTATTTAGCTTCTTCGCTAAGAGCACTCTCATCGACAAGTACGACCTAAGCAACTTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGaTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGgtaagtctttgatttGTCGACcgtatccacgatcactaagaaacccaaatactttgttcatgtttaaattttacaacatttcatagactattaaacatggaacatccttgtggggacaagaaatcgaatttgctcttgaaaaggtttccaactaattgatttgtaggacattataacatcctctagctgacaagcttacaaaaataaaaactggagctaaccgagagggtgcttttttccctgacacataaaaggtgtctttctgtcttgtatcctttggatatgggcatgtcagtttcatagggaaattttcacatggagcttttgtatttctttctttgccagtacaactgcatgtggtagcacactgtttaatcttttctcaaataaaaagacatggggcTTCATTtttgttttgcctttttggtatcttacagGAACTCCAGGATGGCATTGGGCAGCGGCAAACTGTTGTCAGAACATTGAATGCAACTGGGGAAGAAATAATTCAGCAATCCTCAAAAACAGATGCCAGTATTCTACAGGAAAAATTGGGAAGCCTGAATCTGCGGTGGCAGGAGGTCTGCAAACAGCTGTCAGACAGAAAAAAGAGgtagggcgacagatctaataggaatgaaaacattttagcagactttttaagctttctttagaagaatatttcatgagagattataagcagggtgaaaggcGTCGACgtttgcattaacaaatagtttgagaactatgttggaaaaaaaaataacaattttattcttctttctccagGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGGGTGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGCGTCCGTGGCCCCATGATCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCCGAGGCTACAAACGCTCTCATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGAGCCTGATCAAATACAAGGGCTACCAGGTAGCCCCAGCCGAACTGGAGAGCATCCTGCTGCAACACCCCAACATCTTCGACGCCGGGGTCGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCCGCCGCAGTCGTCGTGCTGGAACACGGTAAAACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTTACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGTGGTGTTGTGTTCGTGGACGAGGTGCCTAAAGGACTGACCGGCAAGTTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATTCTCATTAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA(配列番号107)
Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](1kb)
ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCCCAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCCGGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGCAGAAGCTATGAAGCGCTATGGGCTGAATACAAACCATCGGATCGTGGTGTGCAGCGAGAATAGCTTGCAGTTCTTCATGCCCGTGTTGGGTGCCCTGTTCATCGGTGTGGCTGTGGCCCCAGCTAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATCAGCCAGCCCACCGTCGTATTCGTGAGCAAGAAAGGGCTGCAAAAGATCCTCAACGTGCAAAAGAAGCTACCGATCATACAAAAGATCATCATCATGGATAGCAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAAAGCATGTACACCTTCGTGACTTCCCATTTGCCACCCGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCCGAGAGCTTCGACCGGGACAAAACCATCGCCCTGATCATGAACAGTAGTGGCAGTACCGGATTGCCCAAGGGCGTAGCCCTACCGCACCGCACCGCTTGTGTCCGATTCAGTCATGCCCGCGACCCCATCTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATCCTCAGCGTGGTGCCATTTCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACGCTGGGCTACTTGATCTGCGGCTTTCGGGTCGTGCTCATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTATTCTTGCGCAGCTTGCAAGACTATAAGATTCAATCTGCCCTGCTGGTGCCCACACTATTTAGCTTCTTCGCTAAGAGCACTCTCATCGACAAGTACGACCTAAGCAACTTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGaTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGgtaagtctttgatttGTCGAAGCACGCATTTGGCTTTCTGTGCCTTCAATACATTCCAAGGGAAATTTAAATGATGATTGAATTTGACAGTAACCTTTTTGAGGTTTTGTTTTCCCCATTAAACTTGTACCTCTTTGGCTCAAGTTCCCCTTCAAGAATGTATTCACAAATGTGGTGAAACTAGAGGTAAGTGACACTATCACTTTTTTTAGCTTCATAGTCATATTCATAGCTATTTTTAAAACTAAGCAAAGATCTGTCTTTCCTACAAAACAATCATTTATAATTGCTTTCTAAAATCTTCTTGAAAAACAACTGAGATTCAGCTTGTTGAAGTTAAAATATATTGAAGATATTCACCTTTAAGCAATCATGGGTGATTTTTAAAGCAAACTTCAAGTTTAAAATAGCAGAAAACCACTAACTAGCCACAAGTATATATTTTAGTATATGAAAAAAAGAAATAAAAAATTTCTTTACTGCTGTTGATTAATGGTTGATAGGTTCTTTAATGTTAGTGCCTTTCACCCTGCTTATAATCTCTCATGAAATATTCTTCTAAAGAAAGCTTAAAAAGTCTGCTAAAATGTTTTCATTCCTATTAGATCTGTCGCCCTACCTCTTTTTTCTGTCTGACAGCTGTTTGCAGACCTCCTGCCACCGCAGATTCAGGCTTCCCAATTTTTCCTGTAGAATACTGGCATCTGTTTTTGAGGATTGCTGAATTATTTCTTCCCCAGTTGCATTCAATGTTCTGACAACAGTTTGCCGCTGCCCAATGCCATCCTGGAGTTCCTGTAAGATACCAAAAAGGCAAAACAAAAATGAAGCCCCATGTCTTTTTATTTGAGAAAAGATTAAACAGTGTGCTACCACATGCAGTTGTACTGGCAAAGAAAGAAATACAAAAGCTCCATGTGAAAATTTCCCTATGAAACTGACATGCCCTCGACgtttgcattaacaaatagtttgagaactatgttggaaaaaaaaataacaattttattcttctttctccagGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGGGTGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGCGTCCGTGGCCCCATGATCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCCGAGGCTACAAACGCTCTCATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGAGCCTGATCAAATACAAGGGCTACCAGGTAGCCCCAGCCGAACTGGAGAGCATCCTGCTGCAACACCCCAACATCTTCGACGCCGGGGTCGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCCGCCGCAGTCGTCGTGCTGGAACACGGTAAAACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTTACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGTGGTGTTGTGTTCGTGGACGAGGTGCCTAAAGGACTGACCGGCAAGTTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATTCTCATTAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA(配列番号108)
Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](2kb)
ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCCCAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCCGGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGCAGAAGCTATGAAGCGCTATGGGCTGAATACAAACCATCGGATCGTGGTGTGCAGCGAGAATAGCTTGCAGTTCTTCATGCCCGTGTTGGGTGCCCTGTTCATCGGTGTGGCTGTGGCCCCAGCTAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATCAGCCAGCCCACCGTCGTATTCGTGAGCAAGAAAGGGCTGCAAAAGATCCTCAACGTGCAAAAGAAGCTACCGATCATACAAAAGATCATCATCATGGATAGCAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAAAGCATGTACACCTTCGTGACTTCCCATTTGCCACCCGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCCGAGAGCTTCGACCGGGACAAAACCATCGCCCTGATCATGAACAGTAGTGGCAGTACCGGATTGCCCAAGGGCGTAGCCCTACCGCACCGCACCGCTTGTGTCCGATTCAGTCATGCCCGCGACCCCATCTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATCCTCAGCGTGGTGCCATTTCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACGCTGGGCTACTTGATCTGCGGCTTTCGGGTCGTGCTCATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTATTCTTGCGCAGCTTGCAAGACTATAAGATTCAATCTGCCCTGCTGGTGCCCACACTATTTAGCTTCTTCGCTAAGAGCACTCTCATCGACAAGTACGACCTAAGCAACTTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGaTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGgtaagtctttgatttGTCGATCTTTAACTTTGGCAAGGGGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTTTAGGTCAACTAATGTGTTTATTTTGTACAAAATATGAATTGTATCTACTTTCTGAATAATGTAACATGAATAAAGAGGGAAAGAGGAGGTGGGCAAAGACAACTGACATAATTCCAAAATCTTCTTTTTAATACATCTTAACGAAAGATATTCATCAATGAGTTGTTCTAGCTTCCTGAATATTAAAATCCACCTATTATGTGGATGATGGGTGGGATGCAAGAGCTTGGCAAAAGAACGAAGTTTTCATTGTTCATAACAATAGTCTCATTTGGTAAATAAAGGCCAAGTCTTCCTTTACGAAACAAGACACATTAACATCAACAACTGGAAGCATAATACAAAATCCCATTTATAAACTCTCTAGGCTTTCCAACTGCAGCAGCACGCATTTGGCTTTCTGTGCCTTCAATACATTCCAAGGGAAATTTAAATGATGATTGAATTTGACAGTAACCTTTTTGAGGTTTTGTTTTCCCCATTAAACTTGTACCTCTTTGGCTCAAGTTCCCCTTCAAGAATGTATTCACAAATGTGGTGAAACTAGAGGTAAGTGACACTATCACTTTTTTTAGCTTCATAGTCATATTCATAGCTATTTTTAAAACTAAGCAAAGATCTGTCTTTCCTACAAAACAATCATTTATAATTGCTTTCTAAAATCTTCTTGAAAAACAACTGAGATTCAGCTTGTTGAAGTTAAAATATATTGAAGATATTCACCTTTAAGCAATCATGGGTGATTTTTAAAGCAAACTTCAAGTTTAAAATAGCAGAAAACCACTAACTAGCCACAAGTATATATTTTAGTATATGAAAAAAAGAAATAAAAAATTTCTTTACTGCTGTTGATTAATGGTTGATAGGTTCTTTAATGTTAGTGCCTTTCACCCTGCTTATAATCTCTCATGAAATATTCTTCTAAAGAAAGCTTAAAAAGTCTGCTAAAATGTTTTCATTCCTATTAGATCTGTCGCCCTACCTCTTTTTTCTGTCTGACAGCTGTTTGCAGACCTCCTGCCACCGCAGATTCAGGCTTCCCAATTTTTCCTGTAGAATACTGGCATCTGTTTTTGAGGATTGCTGAATTATTTCTTCCCCAGTTGCATTCAATGTTCTGACAACAGTTTGCCGCTGCCCAATGCCATCCTGGAGTTCCTGTAAGATACCAAAAAGGCAAAACAAAAATGAAGCCCCATGTCTTTTTATTTGAGAAAAGATTAAACAGTGTGCTACCACATGCAGTTGTACTGGCAAAGAAAGAAATACAAAAGCTCCATGTGAAAATTTCCCTATGAAACTGACATGCCCATATCCAAAGGATACAAGACAGAAAGACACCTTTTATGTGTCAGGGAAAAAAGCACCCTCTCGGTTAGCTCCAGTTTTTATTTTTGTAAGCTTGTCAGCTAGAGGATGTTATAATGTCCTACAAATCAATTAGTTGGAAACCTTTTCAAGAGCAAATTCGATTTCTTGTCCCCACAAGGATGTTCCATGTTTAATAGTCTATGAAATGTTGTAAAATTTAAACATGAACAAAGTATTTGGGTTTCTTAGTGATCGTGGATACGAGAGGTGAAAAAGAACAAACATAGGTTAGTCACAGTATTAAAAAAAAACTCTAGAGATATTTAAATAAAATTAATTGCTATATTAGAAGAAAATTCATTTCAAATTCTGTCTGCGTCAATGTATTTTGCATTAGAAGCCACAAAAAACTGAGAATTAATTGCTTTCAGGAGCATCCCATCAAGATATCCCTAAGCTACAGTAATAAATTTTAAAATAATCTATAGTCACCAGAGCATTTTTATGATTGTCATCGACgtttgcattaacaaatagtttgagaactatgttggaaaaaaaaataacaattttattcttctttctccagGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGGGTGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGCGTCCGTGGCCCCATGATCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCCGAGGCTACAAACGCTCTCATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGAGCCTGATCAAATACAAGGGCTACCAGGTAGCCCCAGCCGAACTGGAGAGCATCCTGCTGCAACACCCCAACATCTTCGACGCCGGGGTCGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCCGCCGCAGTCGTCGTGCTGGAACACGGTAAAACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTTACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGTGGTGTTGTGTTCGTGGACGAGGTGCCTAAAGGACTGACCGGCAAGTTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATTCTCATTAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA(配列番号109)
Luc2(V323I)-hDMD-Ex45[+](4kb)
ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCCCAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCCGGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGCAGAAGCTATGAAGCGCTATGGGCTGAATACAAACCATCGGATCGTGGTGTGCAGCGAGAATAGCTTGCAGTTCTTCATGCCCGTGTTGGGTGCCCTGTTCATCGGTGTGGCTGTGGCCCCAGCTAACGACATCTACAACGAGCGCGAGCTGCTGAACAGCATGGGCATCAGCCAGCCCACCGTCGTATTCGTGAGCAAGAAAGGGCTGCAAAAGATCCTCAACGTGCAAAAGAAGCTACCGATCATACAAAAGATCATCATCATGGATAGCAAGACCGACTACCAGGGCTTCCAAAGCATGTACACCTTCGTGACTTCCCATTTGCCACCCGGCTTCAACGAGTACGACTTCGTGCCCGAGAGCTTCGACCGGGACAAAACCATCGCCCTGATCATGAACAGTAGTGGCAGTACCGGATTGCCCAAGGGCGTAGCCCTACCGCACCGCACCGCTTGTGTCCGATTCAGTCATGCCCGCGACCCCATCTTCGGCAACCAGATCATCCCCGACACCGCTATCCTCAGCGTGGTGCCATTTCACCACGGCTTCGGCATGTTCACCACGCTGGGCTACTTGATCTGCGGCTTTCGGGTCGTGCTCATGTACCGCTTCGAGGAGGAGCTATTCTTGCGCAGCTTGCAAGACTATAAGATTCAATCTGCCCTGCTGGTGCCCACACTATTTAGCTTCTTCGCTAAGAGCACTCTCATCGACAAGTACGACCTAAGCAACTTGCACGAGATCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCTCAGCAAGGAGaTAGGTGAGGCCGTGGCCAAACGCTTCCACCTACCAGgtaagtctttgatttGTCGATTTGCAACTACAGGGCTCCATATAGACATCTAGCTTGAATTTATACACTTTCTTTCATTGATGTCCCTGGACTAAAAAATGTTAAATATTTCTAACCGCTGTACTTAAAGTCCATTACAAACGAAGACTACTGTTGTTAAGTTGAATAGGCATCTTATATATTTTTCACCGGTGCAATAAATAACTTCTATTCCCTTCTAACATCTGCTTGCGTTGCACTGAGAGTACACTATTGATTAGCAATAGGTTCGTGATTACAGCCCTTCTATAATTAATTGTTAGGTTAACATATTATTCATAAAATATTATTTTATTAATTTTTACTTGATTTGCTACTGGATGCTTAGAAATAGCTATGAGTATATTGGTAGAACCAGTACTTATATTTTATTACATTTTTACATTTCATAAAATTTAAGTGATATAAAAATCCTGAGGAAGTATGCCACAAAAGTGGTCTCAGTGGAAATTTAAATATGTTAACATTTATTTTTAAAATGTAGCGTGAAATAGACAACTTTAAAAGCTCAGCTTAAAAAAAAAACTCAAGGAAGCTGAACTTGACTTTTTAAAGCACTGAAGTGCAATATTTAATGTAGGTCAACATGTTTAAATGGGAAAATTTTTTTCCTAATTACAGCCAAATCCCTAGCTGTAATTAACTTAAAATTTGTATACTATTTCACAACAGAGTCAGCATATACCACTTTCTTATAAAATTAGAAAGATCTAAAATTTTAGAGCTTATTTGGTGAAACAGGCATATTGCTACATCTTTGTTTATAAATTATAATGTGCCTTTAGAGCCCAATAACAGATAACAAGATTTTGAAAATTCAGGTGAATTAGAGTTATCAGAGGGAATGTTAATACACTCTATTCAAATACTATATGAGTAAGACATTTAAAATAGGAAACAATACTTTATATATTATAGAAAAATAATCTTCCAGTCGATTTAATCCACTTTATGAATTCTCTCCGTATATATATATTTATAGTATGGTATTCAATTTTTTTAATTTTCTCATTTCTTACCATCTTAATTTGGATTAGATTGAGCCTAGTTCAGAAATGACATTATACAGGTTTATACCTGTTCATAGTATAAGCACATCAGTTATCTAAATAATAAAATACTTGTATGATTAAGAGAAGAATTTCAATCTGGGAAAAAAGTATATGACTTACCTAAGGAAGTAGTTTAACTACAAAGTTTAGTTCTTTATTTTATCTATCTATAATCAAGAAGATTTTCAAAACCAAGACTTAATTATTCAAAATATCTTTTGATGAGGCTATAATTCTTTAACTTTGGCAAGGGGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTTTAGGTCAACTAATGTGTTTATTTTGTACAAAATATGAATTGTATCTACTTTCTGAATAATGTAACATGAATAAAGAGGGAAAGAGGAGGTGGGCAAAGACAACTGACATAATTCCAAAATCTTCTTTTTAATACATCTTAACGAAAGATATTCATCAATGAGTTGTTCTAGCTTCCTGAATATTAAAATCCACCTATTATGTGGATGATGGGTGGGATGCAAGAGCTTGGCAAAAGAACGAAGTTTTCATTGTTCATAACAATAGTCTCATTTGGTAAATAAAGGCCAAGTCTTCCTTTACGAAACAAGACACATTAACATCAACAACTGGAAGCATAATACAAAATCCCATTTATAAACTCTCTAGGCTTTCCAACTGCAGCAGCACGCATTTGGCTTTCTGTGCCTTCAATACATTCCAAGGGAAATTTAAATGATGATTGAATTTGACAGTAACCTTTTTGAGGTTTTGTTTTCCCCATTAAACTTGTACCTCTTTGGCTCAAGTTCCCCTTCAAGAATGTATTCACAAATGTGGTGAAACTAGAGGTAAGTGACACTATCACTTTTTTTAGCTTCATAGTCATATTCATAGCTATTTTTAAAACTAAGCAAAGATCTGTCTTTCCTACAAAACAATCATTTATAATTGCTTTCTAAAATCTTCTTGAAAAACAACTGAGATTCAGCTTGTTGAAGTTAAAATATATTGAAGATATTCACCTTTAAGCAATCATGGGTGATTTTTAAAGCAAACTTCAAGTTTAAAATAGCAGAAAACCACTAACTAGCCACAAGTATATATTTTAGTATATGAAAAAAAGAAATAAAAAATTTCTTTACTGCTGTTGATTAATGGTTGATAGGTTCTTTAATGTTAGTGCCTTTCACCCTGCTTATAATCTCTCATGAAATATTCTTCTAAAGAAAGCTTAAAAAGTCTGCTAAAATGTTTTCATTCCTATTAGATCTGTCGCCCTACCTCTTTTTTCTGTCTGACAGCTGTTTGCAGACCTCCTGCCACCGCAGATTCAGGCTTCCCAATTTTTCCTGTAGAATACTGGCATCTGTTTTTGAGGATTGCTGAATTATTTCTTCCCCAGTTGCATTCAATGTTCTGACAACAGTTTGCCGCTGCCCAATGCCATCCTGGAGTTCCTGTAAGATACCAAAAAGGCAAAACAAAAATGAAGCCCCATGTCTTTTTATTTGAGAAAAGATTAAACAGTGTGCTACCACATGCAGTTGTACTGGCAAAGAAAGAAATACAAAAGCTCCATGTGAAAATTTCCCTATGAAACTGACATGCCCATATCCAAAGGATACAAGACAGAAAGACACCTTTTATGTGTCAGGGAAAAAAGCACCCTCTCGGTTAGCTCCAGTTTTTATTTTTGTAAGCTTGTCAGCTAGAGGATGTTATAATGTCCTACAAATCAATTAGTTGGAAACCTTTTCAAGAGCAAATTCGATTTCTTGTCCCCACAAGGATGTTCCATGTTTAATAGTCTATGAAATGTTGTAAAATTTAAACATGAACAAAGTATTTGGGTTTCTTAGTGATCGTGGATACGAGAGGTGAAAAAGAACAAACATAGGTTAGTCACAGTATTAAAAAAAAACTCTAGAGATATTTAAATAAAATTAATTGCTATATTAGAAGAAAATTCATTTCAAATTCTGTCTGCGTCAATGTATTTTGCATTAGAAGCCACAAAAAACTGAGAATTAATTGCTTTCAGGAGCATCCCATCAAGATATCCCTAAGCTACAGTAATAAATTTTAAAATAATCTATAGTCACCAGAGCATTTTTATGATTGTCAAGCTTAAATATTGTTTACTTTTTTCCTGAATGAAATTTTAAGAGTAAAGTATCAGAAAAATAGCTCAATTGAAAAGGAGAATATTACAACCAAGTACACACAAAAACAAAAATGCTTTTTACCATTAAATAAAAATGGCAATTACGTTCTATTTAACTTTTTAAAAAAGATAATCTAGAATTTGTAAGGCCATTAAAATAACATATTAACTAAATACGAACCTTAGAAAATGAAATAATATCTGAGAACTTGAGGTACCTACCGTATTTAAATCTGAATGACTCAAATCCTTATGTCACTGACAGAATAATGTGCGTATGTAGAAAACTCTCCTAATAGATGTGATTCATATTCTCTAATATTTTTGTATTCTCCTACTCCTTGACACAATAGCAAGCTGACAGTAGACCCCAGTACATGCTTCCTAAATGAAGGAAGGAATGCATGTTTTCTGAGACTGAGGTAAAGCTCCCTTAGACTCTCGTTTCACATACATTTCTTGGCTTTTTTCTTTTTCTACATTCAAGCAAAATTATTTTCGAATACTGGAAATTTTGGTAGCATACAGTTAGCAATTAAAATACTCTGTAAATCAGCAAACCGGTGACACGGTGCCTCACAATGAATATAAAACTATGCACAGTTACTGAACTATTCACAAGCTGTCCTGGCCATACTCTCTTGAATGCCCATGAGATGTGCTCTAGTAAACATGTGATATTTCCTTGTAACTAGTTGGCTTTGCTCCATTGCTCGACgtttgcattaacaaatagtttgagaactatgttggaaaaaaaaataacaattttattcttctttctccagGCATCCGCCAGGGCTACGGCCTGACAGAAACAACCAGCGCCATTCTGATCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCTGGCGCAGTAGGCAAGGTGGTGCCCTTCTTCGAGGCTAAGGTGGTGGACTTGGACACCGGTAAGACACTGGGTGTGAACCAGCGCGGCGAGCTGTGCGTCCGTGGCCCCATGATCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCCGAGGCTACAAACGCTCTCATCGACAAGGACGGCTGGCTGCACAGCGGCGACATCGCCTACTGGGACGAGGACGAGCACTTCTTCATCGTGGACCGGCTGAAGAGCCTGATCAAATACAAGGGCTACCAGGTAGCCCCAGCCGAACTGGAGAGCATCCTGCTGCAACACCCCAACATCTTCGACGCCGGGGTCGCCGGCCTGCCCGACGACGATGCCGGCGAGCTGCCCGCCGCAGTCGTCGTGCTGGAACACGGTAAAACCATGACCGAGAAGGAGATCGTGGACTATGTGGCCAGCCAGGTTACAACCGCCAAGAAGCTGCGCGGTGGTGTTGTGTTCGTGGACGAGGTGCCTAAAGGACTGACCGGCAAGTTGGACGCCCGCAAGATCCGCGAGATTCTCATTAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGATCGCCGTGTAA(配列番号110)
【0072】
<Lucレポーターを利用したエクソンスキッピングレポーターアッセイ>
pPV-EF1a-Luc2(V323I)hDMD-Ex45[+]ベクター40 ng、Renilla Lucを発現するphRL-TKベクターを20 ng、CRISPR-Casを発現するpHL-EF1aベクター(Addgene)を280 ng、ガイドRNAを発現するpHL-H1-sgRNA-mEF1a-RiHベクターを280 ng混合し、Opti-MEM 25 μlで希釈する。Lipofectamine 2000 0.7 μlをOpti-MEM 25 μlで希釈し、3-5分室温でインキュベートした後、上記のDNA溶液と混合し、室温でさらに20分インキュベートする。そこへ、トリプシン-EDTA処理によって懸濁した293T細胞の細胞数を計測し、60,000細胞/100μlとなるように培地で希釈して、上記DNA-Lipofectamine複合体を含む96-wellプレートの1 wellに100 μlずつ播種する。48時間、5% CO2、37℃で細胞を培養した後、室温に戻した96-wellプレートへDual-Glo Reagentを添加し、室温で30分インキュベートすることで細胞を融解してルシフェラーゼ反応を起こさせる。上清100 μlを白色96-wellプレートに移し、Centro LB960(ベルトールドテクノロジー社)を用いてFireflyとRenillaの発光強度を測定する。Firefly Lucはエクソンスキッピングが誘導された場合にのみ発光するので、Fireflyの発光値をRenillaの発光値でノーマライズした値をエクソンスキッピング効率として測定する。
【0073】
<結果>
Duchenne型筋ジストロフィーに対する治療法を開発するために、ジストロフィン遺伝子におけるエクソンスキッピング誘導を検討した。
図1に概要を示す。
(1) 健常人の正常ジストロフィン遺伝子の骨格筋アイソフォーム(Dp427m)では79個のエクソンがスプライシングにより連結され、3685アミノ酸からなるジストロフィンタンパク質をコードしている。
(2) 一方、エクソン44を欠損するDMD患者の場合、エクソン44のサイズが3の倍数では無いためタンパク質読み枠がずれてしまい、直後のエクソン45に停止コドンが発生してしまうため、ジストロフィンタンパク質が途切れた形となる。
(3) ここで、エクソン45のスプライスアクセプター配列部分をゲノム編集にて破壊すれば、エクソン45がスプライシングの際に認識されず、直後のエクソン46が代わりにエクソン43と連結され、結果としてジストロフィンタンパク質の読み枠を回復させることができる。
【0074】
スプライスアクセプターはブランチング(分岐)配列、ポリピリミジン(C/U)配列、そして"AG"アクセプター配列から構成される。この中で特に、"AG"アクセプター配列がスプライシング反応の際に最も高度に保存されており、この二塩基を削除することが出来れば、エクソンスキッピングを誘導することができる。
【0075】
CRISPR システムのgRNAを設計するにあたり、ゲノム上におけるターゲット配列以外を認識切断してしまうオフターゲットリスクを鑑み、Unique k-mer法[Li HL et al., Stem Cell Reports, 2015]を用いてスプライスアクセプター付近の配列特異性を観察したところ、一般的にスプライスアクセプター付近の特異性は、エクソン領域やその他のイントロン領域と比較しても特に低いことが明らかとなった(
図2)。
【0076】
ジストロフィン遺伝子のエクソンスキッピング効率を簡便かつ高感度に検出するために、Firefly ルシフェラーゼ (Luciferase, Luc)遺伝子を用いたレポーターベクターの
構築を行った。Luc cDNAを二つに分割し、そこへ合成イントロン配列を挿入したベクター(Luc + Int)と、さらにヒトジストロフィンエクソン45の前後の配列を挿入したベクター(Luc + hEx45)を作製した(
図3)。このベクターを293T細胞へ導入し、mRNAを回収して逆転写した後にPCR増幅したところ、前半Luc cDNAに偽スプライシングドナー配列が
含まれ、余分なスプライシングが起こっていることが判明した(
図4(a))。この偽ス
プライシングドナー配列を破壊すべく、ヒトジストロフィン遺伝子に含まれる全エクソン配列からスプライシングドナー配列とアクセプター配列をEnsemble Biomartデータベース(http://www.ensembl.org)から抽出し、共通する塩基をWeblogoソフト(http://weblogo.threeplusone.com/)で解析したところ、既知のスプライシングドナーおよびアクセプター配列とよく一致していることを確認した(
図4(b))。従って、偽スプ
ライシングドナー配列”AGGTA”の真ん中の”G”を”G以外の配列”に変換へと変換すれ
ば、スプライシングドナーとして機能しなくなることが期待された。但し、この塩基はValアミノ酸をコードするコドン”GTA”の最初の塩基であり、この塩基を改変すると必然的にアミノ酸配列が変わってしまう。”A”に変更すると”ATA”でIleアミノ酸(
図4(c))、”C”まはた”T”に変更すると”CTA”または”
TTA”でLeuアミノ酸をコードするコ
ドンとなる。我々はこのアミノ酸変換がLuc活性へ影響を及ぼさないか確認するために、
ルシフェラーゼタンパク質の立体構造(PDBコード: 1BA3)をPDBデータベースからダウ
ンロードし、Chimeraソフトを利用することでG967A(V323I)変異アミノ酸部位が活性残
基[Branchini BR et al., J Biol Chem. 1997 Aug 1;272(31):19359-64.]か
ら離れていて直接相互作用が無いことを確認した(
図5)。
【0077】
次に、実際に予想されたスプライシングパターンが起こっているかどうかを確認するため、
図6(a)に示す各種ベクターを293T細胞に導入してmRNAを抽出し、逆転写後にPCRを行いcDNAのサイズをゲル電気泳動で確認したところ、G967A(V323I)変異を導入していないベクター(Lane 2, 4)ではスプライシングの起こっていない転写産物に相当するバンドが濃く出ているのに対し、G967A(V323I)変異を導入したベクター(Lane 3, 5)では、ほぼ全ての転写産物で目的サイズでのスプライシングが起こっていることを確認できた(
図6(b))。さらに、各ベクターのルシフェラーゼ活性を調べたところ、イントロン配列の挿入およびG967A(V323I)変異を導入ではほとんど変化は見られなかった。一方、ヒトエクソン45配列を挿入した場合、G967A(V323I)変異が無いベクターでは偽スプライシングドナーを介したルシフェラーゼ活性が僅かに見られ、バックグラウンドレベルが高くなっているが、G967A(V323I)変異を導入することによりヒトエクソン45を含んだLuc cDNA配列が大多数となったお陰で、非常に低いルシフェラーゼ活性を示すことが確認できた(
図6(c))。
【0078】
次に、エクソン45の前後のイントロン配列の長さによるスプライシングパターンの解析を行った。最初に構築した0.7 kbの配列の他、1.0 kb、2.0 kb、4.0kbのそれぞれの長さを挿入したベクターを構築した(
図7)。これらのベクターのスプライシングパターンを解析したところ(
図8(a))、何れのベクターもほぼ期待通りのスプライシングパターン(468 bpのバンド)が大多数であったが、イントロンサイズが大きくなるにつれて、イントロン残存バンド(1166 bp)が消失していく傾向が見られた。一方で、ルシフェラーゼ活性を確認したところ、イントロンサイズが大きくなると細胞への導入活性が下がり、結果としてバックグラウンド活性がやや高くなる様子が観察された。何れのベクターを用いても、CRISPR-sgRNA-DMD1 を用いてエクソンスキッピングを誘導した場合にはルシフェラーゼ活性の上昇がみられ(
図8(b))、簡便かつ高感度に測定できるレポーターベクターとして有用であることが判明した。
【0079】
オフターゲットのリスクを最小限にしつつ、ジストロフィンのエクソンスキッピングを誘導するために、エクソン45のスプライスアクセプター部位に、複数のgRNAを設計し(
図9)、通常の野生型SpCas9とgRNAによる切断パターン、およびD10A Nickase型SpCas9とgRNAを二つ組み合わせた場合について、SSA(Single Strand Annealing)アッセイを行い、目的箇所のDNA切断活性を測定した。その結果、
図10に示すように、5種類のgRNAでいずれも高いDNA 切断活性を示し、さらに、Double nicking法では二つのgRNAが重なっている場合は切断活性が低く、ある程度の距離が離れて初めて効率的なDNA切断が誘導できることがわかった。
【0080】
次に、各条件においてDNA切断パターンを調査するため、ターゲット部位をPCRで増幅し、次世代シーケンサーMiSeqによる配列解析を行った。その結果、Double nicking法で二つのgRNAを適切な距離に設計した場合、各gRNAのNicking誘導部位の間が削除されるDNA切断パターンが多く観察され、ここにスプライスアクセプター配列、特に"AG"アクセプター配列を含むことにより、効率的にエクソンスキッピングが誘導できることを見出した(
図11)。
【0081】
エクソンスキッピングを効率的に誘導できるgRNA配列やCRISPRの種類(SpCas9, AsCpf1など)、ゲノム編集方法(double-nicking)を検証するために、上記で開発したエクソンスキッピングレポーターを用いて検証を行った。
図12ではSpCas9のgRNA配列を5種類試し、
図13ではSpCas9、SaCas9、AsCpf1およびSpCas9 double-nicking法を比較解析した。また、
図14ではヒトエクソン45にデザイン可能なすべての配列(NGG PAM配列を含むsgRNA配列)でエクソンスキッピングの効率を測定するために、26種類のgRNAをデザインした(
図14(a))。
26種類のgRNAについてヒト293T細胞へ導入し、ターゲットDNAの切断活性をT7E1アッセイにて測定した(
図14(b))。その結果、sgRNA-DMD6はDNA切断活性が低かったものの、それ以外のgRNAは基本的に10%以上の切断活性を示した。そこで、26種類のgRNAについて、Luc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)レポーターを用いて293T細胞でエクソンスキッピング効率測定を行った。その結果、エクソンスキッピングの効率は、gRNAのデザイン部位およびスプライスアクセプターまたはスプライシングドナーからの距離が重要であることが判明した(
図14(c))。
【0082】
さらに、単独でエクソンスキッピング活性を示した7種類のgRNA(DMD#1,2,4,8,9,20,23)を選択し、この中から任意の2つのsgRNAの組合せについて、Luc2 (G967A) +hEx45 (0.7 kb)レポーターを用いて293T細胞でエクソンスキッピング効率測定を行った。その結果、二種類のgRNAを共導入することにより、エクソンスキッピング効率をより効率化できることが判明した(
図15)。
【0083】
参考論文
1.Li HL, Fujimoto N, Sasakawa N, Shirai S, Ohkame T, Sakuma T, et al. Precise correction of the dystrophin gene in duchenne muscular dystrophy patient induced pluripotent stem cells by TALEN and CRISPR-Cas9. Stem Cell Reports. 2015 Jan 13;4(1):143-54.
2.Mali P, Aach J, Stranges PB, Esvelt KM, Moosburner M, Kosuri S, et al. CAS9 transcriptional activators for target specificity screening and paired nickases for cooperative genome engineering. Nat Biotechnol. 2013 Sep;31(9):833-8.
3.Ran FA, Hsu PD, Lin C-Y, Gootenberg JS, Konermann S, Trevino AE, et al. Double nicking by RNA-guided CRISPR Cas9 for enhanced genome editing specificity. Cell. 2013 Sep 12;154(6):1380-9.
4.Ousterout DG, Kabadi AM, Thakore PI, Majoros WH, Reddy TE, Gersbach CA. Multiplex CRISPR/Cas9-based genome editing for correction of dystrophin mutations that cause Duchenne muscular dystrophy. Nat Commun. 2015;6:6244.
5.Iyombe-Engembe J-P, Ouellet DL, Barbeau X, Rousseau J, Chapdelaine P, Lague P, et al. Efficient Restoration of the Dystrophin Gene Reading Frame and Protein Structure in DMD Myoblasts Using the CinDel Method. Mol Ther Nucleic Acids. 2016;5:e283.
6.Long C, Amoasii L, Mireault AA, McAnally JR, Li H, Sanchez-Ortiz E, et al. Postnatal genome editing partially restores dystrophin expression in a mouse model of muscular dystrophy. Science. 2016 Jan 22;351(6271):400-3.
7.Nelson CE, Hakim CH, Ousterout DG, Thakore PI, Moreb EA, Castellanos Rivera RM, et al. In vivo genome editing improves muscle function in a mouse model of Duchenne muscular dystrophy. Science. 2016 Jan 22;351(6271):403-7.
8.Tabebordbar M, Zhu K, Cheng JKW, Chew WL, Widrick JJ, Yan WX, et al. In vivo gene editing in dystrophic mouse muscle and muscle stem cells. Science. 2016 Jan 22;351(6271):407-11.
【配列表】