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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】コア採取装置およびボーリング装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/00 20060101AFI20241111BHJP
   E21B 47/026 20060101ALI20241111BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
E21B25/00
E21B47/026
G01N1/08 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021059234
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155822
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399089677
【氏名又は名称】ハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】小宮 国盛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6685471(JP,B1)
【文献】特開昭62-125193(JP,A)
【文献】特開2013-178195(JP,A)
【文献】特開昭63-070107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 25/00
E21B 47/026
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング装置のロッドに取り付けられて地盤を掘削しながらコアを内部に採取するコア採取装置本体と、
前記コア採取装置本体の内部に着脱可能なケースと、
前記コア採取装置本体内を上下方向に移動可能な移動部と、
前記ケースに設けられ、前記コア採取装置本体の傾斜を計測する少なくとも1つ以上の傾斜計測部と、
前記コア採取装置本体内に設けられ、押し出し部を有する押し出しユニットと、
を備え、
前記傾斜計測部は、傾斜計測部本体と、回転体と、回転規制部と、を備え、
前記回転体は、回転軸を中心として回転可能に前記傾斜計測部本体または前記回転規制部に備えられ、
前記傾斜計測部本体および前記回転規制部は、前記回転体の回転軸と平行な方向において対向しており、前記傾斜計測部本体または前記回転規制部は、前記回転体の回転軸と平行な方向に移動可能であり、
前記移動部の上方への移動に伴って、前記押し出し部が前記傾斜計測部に向かって押し出され、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方が前記押し出し部に押されて他方側に移動し、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部により前記回転体が挟み込まれ、前記回転体の回転が規制され
前記押し出し部は、屈曲可能または湾曲可能であり、前記移動部の上方への移動により前記傾斜計測部に向かって屈曲または湾曲して前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方を押すコア採取装置。
【請求項2】
前記傾斜計測部は、前記回転体の回転軸が水平方向に平行なものと、前記回転体の回転軸が上下方向に平行なものとが前記ケース内に備えられ、
前記押し出しユニットは、前記移動部の上方においてケース内に配されており、前記押し出し部を支持する支持体を備え、
前記移動部は、前記ケース内に通されており、上下方向において前記支持体が上方から挿入される空間である移動部空間と、前記移動部の上方への移動に伴って前記押し出し部を押す第1押し部と、前記移動部の上方への移動に伴って前記支持体を押す第2押し部と、を備え、
前記第1押し部は、前記第2押し部より上方に位置し、
前記押し出し部は、前記第1押し部に押されて、略水平方向に屈曲または湾曲するものであり、
前記回転体の回転軸が水平方向に平行な前記傾斜計測部は、前記押し出し部に対して水平方向外側に位置し、前記移動部の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方が前記押し出し部に押され、
前記回転体の回転軸が上下方向に平行な前記傾斜計測部は、前記支持体の上方に位置し、前記移動部の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方が前記支持体に押される請求項記載のコア採取装置。
【請求項3】
前記押し出しユニットは、前記支持体の上下方向周りに前記押し出し部を複数備える請求項記載のコア採取装置。
【請求項4】
前記押し出し部は、前記押し出し部を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体であるまたは前記押し出しユニットが、前記押し出し部を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体を備える請求項1~3のいずれか1項に記載のコア採取装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のコア採取装置を備えるボーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア採取装置およびボーリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤から採取するコアの傾斜を計測することができるコア採取装置が開示されている。特許文献1のコア採取装置は、移動部の上方への移動に伴って、傾斜計測部本体および回転規制部の一方が移動部に押されて他方側に移動して、傾斜計測部本体および回転規制部により回転体が挟み込まれ、回転体の回転が規制されることにより、コアの傾斜を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6685471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、鋭意研究開発を行った結果、特許文献1とは異なる構成で傾斜計測部の傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方を押すことにより、より確実にコアの傾斜を計測できるコア採取装置を発明した。
【0005】
本発明は、コアの傾斜を確実に計測できるコア採取装置およびこれを備えるボーリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
コア採取装置は、ボーリング装置のロッドに取り付けられて地盤を掘削しながらコアを内部に採取するコア採取装置本体と、コア採取装置本体の内部に着脱可能なケースと、コア採取装置本体内を上下方向に移動可能な移動部と、ケースに設けられ、コア採取装置本体の傾斜を計測する少なくとも1つ以上の傾斜計測部と、コア採取装置本体内に設けられ、押し出し部を有する押し出しユニットと、を備えている。傾斜計測部は、傾斜計測部本体と、回転体と、回転規制部と、を備えている。回転体は、回転軸を中心として回転可能に前記傾斜計測部本体または前記回転規制部に備えられている。傾斜計測部本体および前記回転規制部は、回転体の回転軸と平行な方向において対向しており、傾斜計測部本体または回転規制部は、回転体の回転軸と平行な方向に移動可能である。そして、移動部の上方への移動に伴って、押し出し部が傾斜計測部に向かって押し出され、傾斜計測部本体および回転規制部の一方が押し出し部に押されて他方側に移動し、傾斜計測部本体および回転規制部により回転体が挟み込まれ、回転体の回転が規制される。
【0007】
コア採取装置は、押し出し部が、屈曲可能または湾曲可能であり、移動部の上方への移動により傾斜計測部に向かって屈曲または湾曲して前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方を押すものであってもよい。この場合、押し出し部は、屈曲可能または湾曲可能な機構を備えるものであってもよいし、屈曲可能または湾曲可能な可撓性を有する部材で構成されていてもよい。
【0008】
また、コア採取装置は、傾斜計測部が、回転体の回転軸が水平方向に平行なものと、回転体の回転軸が上下方向に平行なものとがケース内に備えられ、押し出しユニットが、移動部の上方においてケース内に配されており、押し出し部を支持する支持体を備え、移動部が、ケース内に通されており、上下方向において支持体が上方から挿入される空間である移動部空間と、移動部の上方への移動に伴って押し出し部を押す第1押し部と、移動部の上方への移動に伴って支持体を押す第2押し部とを備え、第1押し部が、第2押し部より上方に位置し、押し出し部が、第1押し部に押されて、略水平方向に屈曲または湾曲するものであってもよい。この場合、回転体の回転軸が水平方向に平行な傾斜計測部は、押し部に対して水平方向外側に位置し、前記移動部の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方が前記押し出し部に押される。また、回転体の回転軸が上下方向に平行な傾斜計測部は、支持体の上方に位置し、前記移動部の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体および前記回転規制部の一方が支持体に押される。
【0009】
また、コア採取装置は、支持体に、支持体に対し上下方向に移動可能な第1取付部と、第1取付部の上方において、支持体に対して上下方向に移動可能な第2取付部と、第2取付部の所定の位置より上方への移動を規制する移動規制部とが設けられ、押し出し部が、第1取付部と第2取付部とに連結し、第1押し部が、第1取付部を支持するとともに、移動部の上方への移動に伴って第1取付部を押すものであってもよい。
【0010】
押し出し部は、水平方向回りにおいて回転可能に連結した2つの押し出し部材を備え、一方の押し出し部材は、水平方向回りにおいて回転可能に第1取付部に連結し、他方の押し出し部材は、水平方向回りにおいて回転可能に第2取付部に連結しているものであってもよい。
【0011】
また、押し出しユニットは、所定の方向回りに押し出し部を複数備えるものであってもよい。押し出し部は、支持体の上下方向周り(支持体の側周の周方向)に複数備えられてもよい。
【0012】
また、押し出し部は、押し出し部を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体であってもよい。また、押し出しユニットは、押し出し部を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体を備えるものであってもよい。押し出しユニットは、第1取付部と第2取付部との間に弾性体を備えるものであってもよい。また、弾性体は、支持体が通されたコイルばねであってもよい。
【0013】
コア最終装置は、コア採取装置本体内のケースの下方においてコア採取装置本体に支持されるコア接触部を備えるものであってもよい。また、コア接触部は、コア採取装置本体内に進入するコアに抗する重さのものであり、上下方向に移動可能であり、上下方向に貫通する貫通部を備え、移動部が上下方向に移動可能に貫通部に通されているものであってもよい。また、ケースとコア接触部は、供回り不能に連結していてもよい。
【0014】
ボーリング装置は、上記コア採取装置を備えている。
【発明の効果】
【0015】
コア採取装置およびこれを備えるボーリング装置によると、コアの傾斜を確実に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】左右方向から見たコア採取装置の縦断面図である。
図2図1のコア採取装置の下部側を拡大して示す拡大図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5】第1傾斜計測部を示す平面図である。
図6】第1傾斜計測部を示す側面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図5のVIII-VIII線から見た傾斜計測部を示す図である。
図9図5のIX-IX線から見た回転規制部を示す図である。
図10】第1傾斜計測部の回転規制部が傾斜計測部本体に固定された状態を示す断面図である。
図11】コア採取時におけるコア採取装置の下部側を拡大して示す拡大断面図である。
図12】ボーリング装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。コア採取装置は、図1に示すように、コア採取装置本体1と、支持部30と、ケース40と、傾斜計測部と、移動部60と、押し出しユニット70とを備えている。以下の説明において、方向に関しては、説明の便宜上、コア採取装置本体1の長手方向(管の軸方向)を上下方向とし、上下方向に直交する一の方向を前後方向とし、上下方向および前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0018】
コア採取装置本体1は、本実施形態ではダブルコアチューブであり、図1図4に示すように、外管10と、内管20と、を備えている。
【0019】
外管10は、外管本体12と、外管ヘッド14と、ビット16と、連結ロッド18とを備えている。外管本体12は、円管(円筒)状のものである。外管本体12の上端には、外管ヘッド14が取り付けられており、外管本体12の上側の開口を塞いでいる。外管ヘッド14は、外管本体12に対して着脱可能となっている。また、外管ヘッド14は、ボーリング装置170のロッド176を外管本体12と同軸で着脱するための着脱部14aを備えている。外管ヘッド14には、ロッド176の内部に通ずる流路15が設けられている。ビット16は、地盤を掘削しつつ地盤からコアCをくり抜くためのものである。ビット16は、筒状であって、外管本体12の下端に着脱可能に取り付けられている。連結ロッド18は、円柱状のものであり、外管10内において外管ヘッド14の底面から下方に延びている。外管10は、ボーリング装置170のロッド176の回転に伴って、その中心軸(上下方向)を回転軸として回転する。
【0020】
内管20は、内管本体22と、内管ヘッド24と、コアリフタ26と、を備えている。内管本体22は、円管(円筒)状であり、その外径は、外管本体12の内径より小さいものとなっている。内管本体22は、外管10との間に隙間を保った状態で外管本体12と同軸で外管10内に配されている。内管本体22の上端には、内管ヘッド24が取り付けられており、内管本体22の上側の開口を塞いでいる。内管ヘッド24は、内管本体22に対して着脱可能となっている。内管ヘッド24は、軸受28を介して連結ロッド18に連結し、外管ヘッド14に支持されている。内管ヘッド24は、連結ロッド18に着脱可能となっている。内管20は、軸受28により、ロッド176および外管10の回転に伴って供回りしないようになっている。内管20と外管10との隙間は、外管ヘッド14の流路15およびロッド176の内部に通じている。コア採取装置本体1のビット16を冷却するためにボーリング装置170からロッド176の内部を通して供給される液体が、外管ヘッド14の流路15および外管本体12と内管本体22との隙間を通ってビット16に送られ、コア採取装置本体1の下端の開口部から放出される。コアリフタ26は、内管20内に採取されるコアCの脱落を防止するためのものである。コアリフタ26は、弾性体90で形成された筒状のものであり、弾性変形により径方向に伸縮可能となっている。コアリフタ26は、内管本体22内の下端付近において、その側周面に支持されている。
【0021】
なお、コア採取装置本体1は、ダブルコアチューブ以外のものであってもよく、シングルチューブなどであってもよい。
【0022】
支持部30は、図1図4に示すように、コア採取装置本体1(内管20)内に配されており、コア接触部34と、支持部本体32と、を備えている。
【0023】
コア接触部34は、略円柱状のものである。本実施形態では、コア接触部34は、金属で形成されており、その重さは、コア採取装置本体1(内管20)内に採取されるコアCに対する重りとなって、コアCの乱れや崩壊を抑えることができるような重さとなっている。コア接触部34の径は、内管本体22の内径以下となっている。コア接触部34は、その中心軸を中心として上下方向に貫通する貫通部36を備えている。貫通部36内には、これに通される移動部60との隙間を塞ぐとともに移動部60を上下方向において移動可能に支持するために、止水部(図示略)が設けられている。止水部は、ここではゴム製または樹脂製のOリングが用いられている。
【0024】
コア接触部34を備えることにより、コア接触部34がコア採取装置本体1(内管20)内に採取されるコアCの頭部に接してコアCの乱れや崩壊を抑えるので、良質なコアCを採取することができる。
【0025】
支持部本体32は、円筒状のものであって、下端側が開口しており、上端側が壁で塞がれている。支持部本体32は、その内部を視認できるようにするため、透明な樹脂などの透明な素材で形成されている。支持部本体32の外径は、コア接触部34の径と略同一となっている。支持部本体32は、その下端側が、コア接触部34の上部に、着脱可能に取り付けられている。支持部本体32の下端側の開口は、コア接触部34により塞がれている。
【0026】
支持部30は、コア採取装置本体1内において、その軸を上下方向に平行とした状態で、上下方向に移動可能に、コア採取装置本体1に支持されている。支持部30は、コアCを採取する前の初期状態(以下、「初期状態」とする)では、コア接触部34がコア採取装置本体1のコアリフタ26に挟み込まれてコア採取装置本体1内で上下方向に移動可能に支持されている。支持部30は、コアリフタ26に着脱可能となっている。初期状態において、コア接触部34は、その下端側が、コア採取装置本体1より下方に突出していることが好ましい。このようにすることにより、よりコアCの乱れや崩壊が抑えられ、さらに良質なコアCを採取することができる。支持部30は、地盤を掘削してコアCの採取を行う際(以下、「コアCの採取時」とする)、コア採取装置本体1内に進入するコアCに押されて上方に移動し、コアリフタ26から抜けるとコアCにより支持されることとなる。
【0027】
なお、支持部30は、コアリフタ26以外のコア採取装置本体1の構成により、コア採取装置本体1内において、上下方向に移動可能かつ着脱可能に支持されるものであってもよい。
【0028】
ケース40は、図1図2および図4に示すように、円筒状のものであり、上端側および下端側が上壁および底壁で塞がれている。ケース40は、透明な樹脂などの透明な素材で形成されている。ケース40の底壁の中心には、内外を貫通し、移動部60を通すことが可能な第1ケース孔41が設けられている。ケース40は、支持部本体32内に設けられ、軸受であるケース軸受50を介してコア接触部34に同軸で連結している。ケース40は、コア接触部34の上方に位置している。
【0029】
ケース軸受50は、玉軸受であって、外側から内側に向かって順に、外輪52と、中輪54と、内輪56とを備えている。外輪52、中輪54および内輪56は、それぞれの間に備えられるボール58により、それぞれ上下方向に平行な軸を中心として回転可能となっている。ケース軸受50は、コア接触部34およびケース40と同軸で、外輪52がコア接触部34に連結し、中輪54がケース40に連結している。そのため、ケース40は、コア接触部34に対して上下方向回りに回転可能であるが、供回り不能となっている。
【0030】
ケース40は、ケース40の重心を軸からずらすため、重り部48を備えている。重り部48は、ケース40の外側の側周面のうちケース40の軸の後方において、上下方向に延びている。重り部48は、例えば金属で形成されるなど、ケース40に1または複数備えられる傾斜計測部と比較して十分に重いものとなっている。重り部48を傾斜計測部より十分重いものとすることにより、ケース40の重心の軸からのずれは、重り部48に支配される。ケース40がコア接触部34に対して上下方向回りに回転可能であることと、ケース40に重り部48を備えることとにより、コア採取時にコア採取装置本体1の上下方向(長手方向)が重力方向に対して傾斜する場合、重り部48が重力方向の下方側に位置するようにコア接触部34に対してケース40が回転する。このように、コア採取装置本体1がどのように傾斜しても、ケース40の姿勢を一定に保つことができるので、後述する傾斜計測部の回転体144の回転軸を一定の方向に保つことができる。
【0031】
なお、ケース40は、傾斜計測部がケース40の外側に設けられる場合には、透明ではない素材で形成されていてもよい。また、重り部48は、ケース40の重心を軸からずらせるものであれば、その素材、形状およびケース40に設けられる場所はどのようなものであってもよい。
【0032】
傾斜計測部は、図1および図2に示すように、第1傾斜計測部110、第2傾斜計測部120および第3傾斜計測部130としてケース40内に3つ備えられている。第1傾斜計測部110、第2傾斜計測部120および第3傾斜計測部130は、それぞれ傾斜計測部本体142と、回転体144と、回転規制部146とを備えている。第1傾斜計測部110は、回転体144の回転軸が前後方向に平行となるようにケース40内に備えられている。第2傾斜計測部120は、回転体144の回転軸が左右方向に平行となるようにケース40内に備えられている。第3傾斜計測部130は、回転体144の回転軸が上下方向に平行となるようにケース40内に備えられている。以下、図1図2および図4図10を参照して、第1傾斜計測部110に基づいて各傾斜計測部の共通点をまとめて説明しつつ、異なる点を個別に説明する。
【0033】
傾斜計測部本体142は、ケース40内に固定されている。傾斜計測部本体142は、基部142aと、凹部142eと、嵌込部142fとを備えている。傾斜計測部本体142の基部142aは、回転規制部146に対抗する面である対向面142bと、対向面142bに対向する固定面142cと、対向面142bと固定面142cとを接続する側周面142dとを備えている。傾斜計測部本体142の基部142aの対向面142bは、略正方形状の形状となっている。傾斜計測部本体142の基部142aの対向面142bには、凹状の凹部142eが設けられている。凹部142eは対向面142bの中心の周りにおいて環状に設けられている。また、傾斜計測部本体142の基部142aの対向面142bの中心には、嵌込部142fが設けられている。嵌込部142fは、嵌込孔142gと、狭小部142hとを備えている。嵌込孔142gは、回転体144の回転軸と平行な方向において基部142aの対向面142bから固定面142c側に延びている。狭小部142hは、嵌込孔142gの開口部において、嵌込孔142gの周壁から中心に向かって環状に突出し、嵌込孔142gの開口部の横断面(幅)を狭めている。また、基部142aには、嵌込孔142gと固定面142cとの間をつなぐ孔である通し孔142iが備えられている。
【0034】
傾斜計測部本体142の基部142aには、回転体144の回転角を表示する目盛142jが設けられている。目盛142jは、回転体144の回転角に対応する目盛線や回転角の数値などにより構成されている。本実施形態では、凹部142e内の底面に目盛線が表示され、傾斜計測部本体142の基部142aの対向面142bに数値が表示されている。また、目盛142jには、基準となる方向を示す基準目盛142kが含まれている。基準目盛142kは、例えば、前後方向、左右方向または上下方向を示す目盛線と、0°および90°などの数値の表示とで構成される。傾斜計測部本体142の基部142aは、傾斜計測部の外部から回転体144および目盛142jを視認しやすくするため、透明な合成樹脂などの透明な素材で形成されている。
【0035】
傾斜計測部本体142の基部142aの固定面142cは、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120では、ケース40の内側の側周面に沿う曲面となっており、第3傾斜計測部130では、対向面142bと平行な正方形状の平らな面となっている。第1傾斜計測部110は、後述する押し出しユニット70の水平方向外側、ここでは押し出しユニット70の前方において、通し孔142iの長手方向が前後方向と平行になるように、傾斜計測部本体142の基部142aの固定面142cが、ケース40の内側の側周面に固定されている。第2傾斜計測部120は、押し出しユニット70の水平方向外側、ここでは押し出しユニット70の側方において、通し孔142iの長手方向が左右方向と平行になるように、傾斜計測部本体142の基部142aの固定面142cが、ケース40の内側の側周面に固定されている。第3傾斜計測部130は、後述する押し出しユニット70の支持体71の上方において、通し孔142iの長手方向がケース40の軸と重なるように、傾斜計測部本体142の基部142aの固定面142cが、ケース40の内側の上面の中心に固定されている。ケース40のうち、各傾斜計測部の通し孔142iの延長線上には、ケース40の内外を貫通し、通し孔142iに通ずる第2ケース孔42が設けられている。
【0036】
回転体144は、球状のものであり、その大きさは、全体が凹部142e内に収まる大きさとなっている。回転体144は、傾斜計測部本体142(対向面142b)の中心、言い換えれば凹部142eの環の中心を回転軸として、凹部142e内において環方向に回転可能となっている。ここで、回転体144の回転とは、回転軸を中心とした回転体144の回転または移動(旋回)のことを意味する。回転体144は、第1傾斜計測部110では、前後方向を回転軸として回転し、第2傾斜計測部120では、左右方向を回転軸として回転し、第3傾斜計測部130では、上下方向を回転軸として環状の凹部142e内を回転する。なお、回転体144は、その全体が凹部142e内に収まるものではなく、その一部が凹部142eに収まるものであってもよい。
【0037】
回転規制部146は、回転体144の回転軸方向において傾斜計測部本体142より内側で傾斜計測部本体142に対向している。回転規制部146は、基部146aと、凸部146eと、嵌込部146fとを備えている。回転規制部146の基部146aは、傾斜計測部本体142に対抗する面である対向面146bと、対向面146bに対向する被押面146cと、対向面146bと被押面146cとを接続する側周面146dとを備えている。回転規制部146の基部146aの対向面146bは、略正方形状の形状となっている。回転規制部146の基部146aの対向面146bには、傾斜計測部本体142の凹部142eに嵌る凸状の凸部146eが設けられている。凸部146eは対向面146bの中心の周りに環状に設けられている。また、回転規制部146の基部146aの対向面146bの中心には、傾斜計測部本体142の嵌込部142fに着脱自在に嵌め込まれる嵌込部146fが設けられている。回転規制部146の嵌込部146fは、嵌込部本体146gと、頭部146hとを備えている。嵌込部本体146gは、柱状のものであり、基部146aの対向面146bから回転軸方向に延びている。頭部146hは、略円錐状のものであり、その底面が嵌込部本体146gの先端に同軸で連結している。嵌込部本体146gの横断面は傾斜計測部本体142の嵌込孔142gの開口部の横断面より小さいものとなっている。また、頭部146hは、その底面が、嵌込部本体146gの横断面および嵌込孔142gの開口部の横断面より大きく、嵌込孔142gの横断面より小さいものとなっている。また、頭部146hには、その先端から回転体144の回転軸方向に延びる棒状の嵌込解除部146iが備えられている。嵌込解除部146iは、傾斜計測部本体142の通し孔142iに通されている。また、嵌込解除部146iは、回転規制部146が移動して回転規制部146と傾斜計測部本体142で回転体144を挟み込んだ際に、その先端側がケース40の第2ケース孔42からケース40の外側に突出する。
【0038】
回転規制部146が傾斜計測部本体142側に移動すると、回転規制部146の嵌込部146fが傾斜計測部本体142の嵌込部142fに嵌め込まれて、回転規制部146が傾斜計測部本体142に固定され、回転体144が傾斜計測部本体142の凹部142eと回転規制部146の凸部146eに挟まれてその位置が固定される。回転規制部146の頭部146hおよび傾斜計測部本体142の狭小部142hは、頭部146hが嵌込孔142gに着脱可能となるように、少なくとも一方が合成樹脂などの比較的に弾性変形しやすい素材で形成されている。これにより、回転規制部146が回転体144の回転軸方向のうち傾斜計測部本体142側に移動すると、回転規制部146の頭部146hおよび傾斜計測部本体142の狭小部142hの少なくとも一方が変形して、回転規制部146の頭部146hが傾斜計測部本体142の嵌込孔142gに挿入され、回転規制部146が傾斜計測部本体142に固定される。傾斜計測部本体142の嵌込孔142gに挿入された回転規制部146の頭部146hは、その底面が、嵌込孔142gの開口部の横断面より大きいので、嵌込孔142gより抜けにくくなっている。そのため、コア採取装置本体1に衝撃など外力が作用しても、傾斜計測部本体142と回転規制部146との固定およびこれらによる回転体144の固定が解除され難くなっている。回転規制部146が傾斜計測部本体142に固定された状態において、第2ケース孔42からケース40の外側に突き出た嵌込解除部146iの先端をケース40側に押すと、回転規制部146の頭部146hおよび傾斜計測部本体142の狭小部142hの少なくとも一方が変形して、回転規制部146の頭部146hが傾斜計測部本体142の嵌込孔142gから抜け、回転規制部146と傾斜計測部本体142の固定が解除される。
【0039】
各傾斜計測部の回転規制部146の被押面146cは、後述する押し出しユニット70の押し出し部80または支持体71に押される部分であり、対向面146bと平行な正方形状の面となっている。傾斜計測部の外部から回転体144および目盛142jを視認しやすくするため、回転規制部146の基部146aは、透明な合成樹脂などの透明な素材で形成されている。
【0040】
傾斜計測部本体142および回転規制部146には、回転体144の回転軸方向において回転規制部146を傾斜計測部本体142側に移動可能に両者を連結し、その移動範囲を規制して凹部142eからの回転体144の脱落を防止するために、ガイド部150が複数設けられている。傾斜計測部本体142のガイド部150は、ガイド穴152と、狭小部154とを備えている。ガイド穴152は、回転体144の回転軸と平行な方向において傾斜計測部本体142の基部142aの対向面142bから固定面142c側に設けられている。狭小部154は、ガイド穴152の開口部において、ガイド穴152の周壁から中心に向かって同心円状に突出し、ガイド穴152の開口部の横断面(幅)を狭めている。回転規制部146のガイド部150は、ガイド部本体156と、頭部158とを備えている。ガイド部本体156は、回転規制部146の基部146aの対向面146bから回転体144の回転軸に平行な方向に延びる棒状のものであり、その先端側がガイド穴152内に通されている。頭部158は、円柱状のものである。頭部158は、ガイド穴152内において、その底面がガイド部本体156の先端に同軸で連結している。ガイド部本体156の横断面は傾斜計測部本体142のガイド穴152の開口部の横断面より小さいものとなっている。また、頭部158は、その径が、ガイド穴152の開口部の横断面より大きく、開口部より内側にあるガイド穴152の横断面より小さいものとなっている。
【0041】
回転規制部146は、ガイド部150により、傾斜計測部本体142と回転規制部146との間から回転体144が脱落せず、また回転体144が傾斜計測部本体142と回転規制部146に挟まれて固定することが可能な範囲で移動する。より具体的には、初期状態において、回転規制部146は傾斜計測部本体142から最も離れた位置にあり、回転規制部146の凸部146eの先端と傾斜計測部本体142の対向面142bとの距離は、回転体144の径より小さいものとなる。回転規制部146が傾斜計測部本体142に固定される固定状態では、回転規制部146の凸部146eの先端と傾斜計測部本体142の凹部142eの底面との距離は、回転体144の径と略同じものとなる。このような範囲で回転規制部146が移動するように傾斜計測部本体142のガイド部本体156および回転規制部146のガイド穴152の深さが設定されている。
【0042】
図1図4に示す移動部60は、コア採取装置本体1内を上下方向に移動可能なものである。本実施形態では、移動部60は、円柱状のものである。移動部60は、貫通部36、ケース軸受50の内輪56内および第2ケース孔42に通されている。移動部60は、貫通部36において止水部に圧着されていることにより、上下方向に移動可能にコア接触部34に支持されている。移動部60は、初期状態において、下端がコア接触部34およびコア採取装置本体1より下方に突出し、上端がケース40内に位置している。移動部60には、後述する支持体71が上下方向に移動可能に挿入される穴である移動部穴62が備えられている。移動部穴62は、移動部空間の一態様である。移動部穴62は、移動部60の上端から下方に延びており、その横断面は円形となっている。移動部穴62の底は、第2押し部66となる。移動部60は、その上端側において、水平方向外側に向かって放射状(環状)に突出する第1押し部64が設けられている。第1押し部64は、移動部穴62の底、すなわち第2押し部66より上方に設けられる。
【0043】
移動部60は、移動部穴62に代えて、移動部60を上右下方向に貫通する孔を備えるもの、すなわち筒状のものであってもよく、この場合第2押し部66は、移動部60内を遮蔽するものであってもよいし、移動部60内に突出するものであってもよい。
【0044】
図1図2および図4に示す押し出しユニット70は、支持体71と、押し出し部80と、弾性体90とを備えている。支持体71は、円柱状のものであり、軸を上下方向に平行にした状態で、下端側が移動部60の移動部穴62に入れられている。支持体71および移動部60の軸は、ケース40の軸と重なっている。また、支持体71は、第3傾斜計測部130の下方に位置している。支持体71は、第1取付部72と、第2取付部73と、移動規制部76とを備えている。第1取付部72および第2取付部73は、同一のものであり、それぞれ円板状のものであって、板面を貫く孔が設けられており、その孔には支持体71が通されている。第1取付部72は、移動部60の第1押し部64に支持されている。第2取付部73は、第1取付部72の上方に位置している。第1取付部72および第2取付部73は、支持体71に沿って上下方向に移動可能であり、また支持体71に対し上下方向回りに回転可能となっている。第1取付部72が移動部60の第1押し部64に支持されている状態において、支持体71の下端は、第2押し部66(移動穴の底)の上方に位置している。言い換えれば、支持体71と第2押し部66(移動穴の底)との間には、間隔があけられている。第1取付部72の上面および第2取付部73の底面には、押し出し部80を連結するため、一対の取付基部74が設けられている。一対の取付基部74は、水平方向において、隙間が開いている。また、各取付基部74には、その隙間が空く方向と平行に貫通する孔が設けられている。一対の取付基部74は、押し出し部80の数に応じて、第1取付部72および第2取付部73のそれぞれの軸周りに複数設けられている。移動規制部76は、第2取付部73の所定の位置より上方への移動を規制するためのものである。ここでは、移動規制部76は、径が第2取付部73の孔の径より大きな径の円板状のものであり、支持体71の上端に同軸で連結している。
【0045】
押し出し部80は、傾斜計測部を押し出すためのものである。本実施形態では、押し出し部80は、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120を押し出すためのものである。押し出し部80は、一対の押し出し部材82,82で構成されている。各押し出し部材82は、直線的に延びる部材で構成されている。一対の押し出し部材82,82は、それぞれの一端が軸部84により水平方向を軸として軸部84により回転可能に連結している。各押し出し部材82の他端は、第1取付部72および第2取付部73の取付基部74に軸部84により水平方向を軸として回転可能に連結している。押し出し部80は、図4に示すように、支持体71の側周面の周り(上下方向周り)に等ピッチで複数備えられている。なお、図1図2および図11では、便宜上、支持体71の前後の押し出し部80のみ表示しており、その他の押し出し部80は表示を省略している。初期状態において、各押し出し部材82は、その長手方向が上下方向に平行となっている。複数の押し出し部80のうち少なくともいずれかは、第1傾斜計測部110の略前後方向に位置する。また、複数の押し出し部80のうち少なくともいずれかは、第2傾斜計測部120の略左右方向に位置する。
【0046】
弾性体90は、初期状態において、押し出し部80を屈曲または湾曲させないようにするためのものである。本実施形態において、弾性体90は、コイルばねであり、第1取付部72と第2取付部73の間において、その内部に支持体71が通されている。初期状態において、押し出し部80は、弾性体90の復元力により、屈曲しないように、言い換えれば押し出し部材82の長手方向が上下方向に平行となる姿勢に保たれる。
【0047】
なお、押し出しユニット70は、押し出し部80が湾曲するものであってもよい。また、押し出しユニット70は、上記弾性体90に代えて、押し出し部80自体が、屈曲可能または湾曲可能であって、屈曲または湾曲しないように復元力が働く弾性体90で構成されていてもよい。
【0048】
上記移動部60、傾斜計測部および押し出しユニット70の動作について説明する。傾斜計測部は、コア採取装置本体1の傾斜に応じて、回転体144が凹部142e内において重力方向の下方側に位置するように回転(移動)する。図11に示すように、コアCに押されて移動部60が上昇すると、第1取付部72が第1押し部64に押されて上昇し、第2取付部73の上昇が移動規制部76により規制されることにより、押し出し部80の一対の押し出し部材82,82の回転可能に連結された部分が水平方向外側に向かって屈曲する。押し出し部80が屈曲することにより、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120の回転規制部146の被押面146cが各押し出し部80に押され、それぞれの回転規制部146が傾斜計測部本体142側に移動する。そして、回転体144が傾斜計測部本体142の凹部142eと回転規制部146の凸部146eに挟み込まれてその位置が固定されるとともに、回転規制部146の嵌込部146fが傾斜計測部本体142の嵌込部142fに嵌め込まれることにより傾斜計測部本体142と回転規制部146とが固定される。
【0049】
第1押し部64が第2押し部66より上側に位置し、第2押し部66と支持体71との間に間隔が開けられていることにより、押し出し部80が第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120の回転規制部146を押し出した後、移動部60がさらに上昇すると、第2押し部66が支持体71に接し、支持体71が移動部60に押されて上昇する。支持体71が上昇すると、第3傾斜計測部130の回転規制部146の被押面146cが支持体71に押され、回転規制部146が傾斜計測部本体142側に移動する。そして、回転体144が傾斜計測部本体142の凹部142eと回転規制部146の凸部146eに挟み込まれてその位置が固定されるとともに、回転規制部146の嵌込部146fが傾斜計測部本体142の嵌込部142fに嵌め込まれることにより傾斜計測部本体142と回転規制部146とが固定される。
【0050】
上記のようにケース40がコア接触部34に対して上下方向回りに回転可能であることと、ケース40に重り部48を備えることとにより、コア採取装置本体1の上下方向が重力方向に対して傾斜すると、重り部48が常に重力方向の下方側に位置するようにケース40が回転するため、ケース40の姿勢が常に一定に保たれる。そのため、第1傾斜計測部110の回転体144の回転軸は、常に前後方向に平行となり、第2傾斜計測部120の回転体144の回転軸は、常に左右方向に平行となる。これにより、第1傾斜計測部110では、前後方向に対するコア採取装置本体1の傾きを計測することができ、第2傾斜計測部120では、左右方向に対するコア採取装置本体1の傾きを計測することができる。そして、コア採取装置本体1に採取されるコアCはコア採取装置と同軸となるため、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120で計測されるコア採取装置本体1の傾斜は、コアCの傾斜(コアCの長手方向の傾斜)とみなすことができる。
【0051】
また、第3傾斜計測部130によると、ケース40の重り部48が重力方向の下方側に位置していたか否かを確認することができる。第3傾斜計測部130は、ケース40の姿勢が常に一定に保たれることにより、その目盛142jのうち前後方向を示す基準目盛142kの線がケース40の回転軸から重り部48(重心)に向かう方向と一致する。そのため、第3傾斜計測部130の回転体144が、前後方向を示す基準目盛142kのうち後側(重り部48側)の目盛上にあれば、ケース40の重り部48が重力方向の下方側に位置し、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120の回転軸が前後方向および左右方向に保たれていたことになり、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120で計測されるコアCの傾斜は、信頼性があるものと判断することができる。逆に、第3傾斜計測部130の回転体144が、前後方向を示す基準目盛142kのうち後側(重り部48側)の目盛上になければ、コアC等の回転などの何らかの要因によりケース40が上下方向を軸として回転し、ケース40の重り部48が重力方向の下方側に位置しておらず、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120の回転軸が前後方向および左右方向に対して平行ではないので、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120で計測されるコアCの傾斜は、信頼性がないものと判断することができる。
【0052】
ボーリング装置170は、図12に示すように、ボーリング装置本体172と、ロッド176と、上記コア採取装置と、液体供給部180とを備えている。ボーリング装置本体172は、ロッド176をその軸を中心として回転させるとともに、その軸方向に並進(進退)させる駆動装置174を備えている。ロッド176は、管状であって、ボーリング装置本体172に、回転可能および並進可能に支持されている。コア採取装置は、外管ヘッド14を介してロッド176の下端に取り付けられている。液体供給部180は、液体貯留部182と、液体供給路184と、液体輸送部186とを備えている。液体貯留部182は、液体を貯留するものである。液体供給路184は、ホース状のものであり、一端が液体貯留部182内に配され、他端がロッド176の上端に連結し、液体貯留部182内とロッド176内を接続している。液体輸送部186は、液体供給部180に設けられ、液体貯留部182に貯留される液体をロッド176に輸送するためのものである。液体輸送部186としては、ポンプが用いられている。液体供給部180により、液体が、液体貯留部182からロッド176を介してコア採取装置本体1に供給され、その開口部から放出される。
【0053】
次に、上記コア採取装置を備えるボーリング装置170を用いたコアの採取方法について説明する。
まず、コアCの採取を行う前にコア採取装置の各構成を初期状態にし、次いでコアCの採取を行う。コアCの採取については、図11および図12に示すように、ボーリング装置170でロッド176を回転および並進させることにより、外管10およびビット16を回転させながらコア採取装置本体1を地中側に並進させ、地盤を掘削しながらコアCを切り出して、コアCをコア採取装置本体1内に採取する。この際、必要に応じて、コア採取装置本体1の開口部から液体を放出し、ビット16を冷却しながら、地盤の掘削およびコアCの採取を行う。
【0054】
地盤の掘削およびコアCの採取において、ロッド176を地盤の奥側に並進させると、ビット16が地盤に接する前に、まずコア接触部34の貫通部36から下方側に突出する移動部60が地盤に接する。そして、移動部60が地盤に押されて上昇すると、第1取付部72が第1押し部64に押されて上昇することにより押し出し部80が屈曲し、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120の回転規制部146が押し出し部80に押され、第3傾斜計測部130の回転規制部146が支持体71に押されて、傾斜計測部本体142側に移動し、回転体144が傾斜計測部本体142の凹部142eと回転規制部146の凸部146eに挟まれてその位置が固定され、回転規制部146の嵌込部146fが傾斜計測部本体142の嵌込部142fに嵌め込まれて,回転規制部146が傾斜計測部本体142に固定される。
【0055】
ビット16が地盤に接し地盤を掘削し始めると、ビット16により地盤からくり抜かれたコアCがコア採取装置本体1の開口部から内管20内に取り込まれていく。そして、図11に示すように、コア採取装置本体1の内管20内に取り込まれるコアCにより、ケース40、移動部60および押し出しユニット70を含む支持部30が押し上げられて、内管20内を上昇する。
【0056】
そして、コア採取装置本体1(内管20)内に地盤の所定の区間におけるコアCの採取が完了したら、ロッド176を並進させて掘削孔からコア採取装置を引き抜き、コア採取装置から内部にケース40を備える支持部30を取り出す。次いで、取り出した支持部30から支持部本体32を取り外し、ケース40を通して第1傾斜計測部110、第2傾斜計測部120および第3傾斜計測部130の回転体144の回転角を読み取る。また、第3傾斜計測部130で計測された角度が、上記のように信頼性がある場合には、第1傾斜計測部110および第2傾斜計測部120で計測された回転体144の回転角を、採取されたコアCの前後方向および左右方向を軸とするコアCの傾斜とみなすことができる。また、その区間におけるロッド176の並進長により、地盤を掘削した長さを特定することができる。ロッド176の並進長は、例えばボーリング装置170に備えられるロッド176の変位を計測する変位計などにより計測することができる。
【0057】
上記のようにコア採取装置を初期状態にし、ボーリング装置170で所定の区間のコアCを採取し、コアCの傾斜を読み取る一連の作業を、地盤のコアCの採取範囲において全てのコアCを採取するまで繰り返し行う。コア採取装置の各構成を初期状態に戻す場合には、ケース40の外側に突出する各傾斜計測部の嵌込解除部146iを押して、各回転規制部146を初期状態にする。また、移動部60については、ピンセットなどの引き抜き具を差し込んで下方に引っ張って初期状態にする。また、支持部本体32をコア接触部34に装着する。そして、ケース40、移動部60および押し出しユニット70を含め支持部30をコア採取装置本体1の内管20に挿入し、コア接触部34をコアリフタ26に挟み込ませる。
【0058】
本発明のコア採取装置は、押し出し部80を有する押し出しユニット70を備えることにより、押し出し部80が傾斜計測部本体142および回転規制部146の一方を確実に押すので、採取されるコアCの長手方向の傾きを確実に計測することができる。
【0059】
本発明のコア採取装置は、傾斜計測部として、回転軸が水平方向に平行なものと、回転軸が上下方向に平行なものとがケース40内に備えられ、前記押し出しユニット70は、ケース40内に配されており、押し出し部80を支持する支持体71を備え、移動部60は、ケース40内に通されており、上下方向において支持体71が相対移動可能に上方から挿入される空間である移動部空間と、押し出し部80を支持するとともに移動部60の上方への移動に伴って押し出し部80を押す第1押し部64と、移動部60の上方への移動に伴って支持体71を押す第2押し部66と、を備え、第1押し部64は、第2押し部66より上方に位置し、押し出し部80は、第1押し部64に押されて、略水平方向に屈曲または湾曲するものであり、回転軸が水平方向に平行な傾斜計測部は、押し出し部80に対して水平方向外側に位置し、前記移動部60の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体142および前記回転規制部146の一方が前記押し出し部80に押され、回転軸が上下方向に平行な傾斜計測部は、支持体71の上方に位置し、前記移動部60の上方への移動に伴って、前記傾斜計測部本体142および前記回転規制部146の一方が支持体71に押される態様とすることができる。
この態様によれば、コア採取時における移動部60の上昇により、まず押し出し部80が回転軸が水平方向に平行な傾斜計測部の傾斜計測部本体142および回転規制部146の一方を押し、次いで支持体71が回転軸が上下方向に平行な傾斜計測部の傾斜計測部本体142および回転規制部146の一方を押すので、コアCの傾斜をより確実に計測することができる。
【0060】
本発明のコア採取装置は、押し出しユニット70が、支持体71の周りに押し出し部80を複数備えることにより、移動部60がその軸周りに回転し、これに伴って支持体71が回転した場合であっても、押し出し部80のいずれかが回転軸が水平方向に平行な傾斜計測部の傾斜計測部本体142および回転規制部146の一方を押すことができるので、水平方向に対するコアCの傾斜をより確実に計測することができる。
【0061】
本発明のコア採取装置は、前記押し出し部80が、押し出し部80を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体90であるまたは押し出しユニット70が、押し出し部80を屈曲または湾曲させないように復元力が働く弾性体90を備えることにより、移動部60が衝撃を受けて上昇するなどの移動部60がコアCに押される以外の要因により上昇する場合に、押し出し部80を屈曲または湾曲させないようにして、移動部60がコアCに押される前に傾斜計測部がコアCの傾斜を計測することを防止することができる。
【0062】
本発明のコア採取装置は、ケース40が、コア接触部34と供回り不能に連結し、移動部60と供回り不能とすることにより、コア採取時にコア接触部34または移動部60が上下方向回りに回転しても、ケース40は回転しないので、回転軸が水平方向に平行な傾斜計測部の回転軸の方向を所定の方向に保つことができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 コア採取装置本体
10 外管
12 外管本体
14 外管ヘッド
14a 着脱部
15 流路
16 ビット
18 連結ロッド
20 内管
22 内管本体
24 内管ヘッド
26 コアリフタ
28 軸受
30 支持部
32 支持部本体
34 コア接触部
36 貫通部
40 ケース
41 第1ケース孔
42 第2ケース孔
48 重り部
50 ケース軸受
52 外輪
54 中輪
56 内輪
58 ボール
60 移動部
62 移動部穴(移動部空間)
64 第1押し部
66 第2押し部
70 押し出しユニット
71 支持体
72 第1取付部
73 第2取付部
74 取付基部
76 移動規制部
80 押し出し部
82 押し出し部材
84 軸部
90 弾性体
110 第1傾斜計測部(傾斜計測部)
120 第2傾斜計測部(傾斜計測部)
130 第3傾斜計測部(傾斜計測部)
142 傾斜計測部本体
142a 基部
142b 対向面
142c 固定面
142d 側周面
142e 凹部
142f 嵌込部
142g 嵌込孔
142h 狭小部
142i 通し孔
142j 目盛
142k 基準目盛
144 回転体
146 回転規制部
146a 基部
146b 対向面
146c 被押面
146d 側周面
146e 凸部
146f 嵌込部
146g 嵌込部本体
146h 頭部
146i 嵌込解除部
150 ガイド部
152 ガイド穴
154 狭小部
156 ガイド部本体
158 頭部
170 ボーリング装置
172 ボーリング装置本体
174 駆動装置
176 ロッド
180 液体供給部
182 液体貯留部
184 液体供給路
186 液体輸送部
C コア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12