(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】マイクロ波処理装置、マイクロ波導入装置、及びマイクロ波処理方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20241111BHJP
H05B 6/74 20060101ALI20241111BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H05B6/64 J
H05B6/74 E
B01J19/12 A
(21)【出願番号】P 2021073124
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2020020084の分割
【原出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-124671(JP,A)
【文献】特開2005-29255(JP,A)
【文献】特開2018-106893(JP,A)
【文献】特開2005-216599(JP,A)
【文献】特開2017-195096(JP,A)
【文献】特開平6-111933(JP,A)
【文献】実開昭51-57331(JP,U)
【文献】実開昭63-75325(JP,U)
【文献】米国特許第4904874(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0240962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0075830(US,A1)
【文献】国際公開第2002/022353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/64-6/80
F24C 7/02
B01J 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定されたベースに回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒状形状のキャビティであって、マイクロ波透過性の部材が内張りされたキャビティと、
前記キャビティを前記円筒状形状の軸周りに回転させる回転駆動部と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と
を備え、
前記マイクロ波発生器によって発生されたマイクロ波は、前記キャビティの円周側面から内部の空間に導入され
、
前記キャビティは、前記照射対象物が流入する上流側よりも下流側が低く傾斜する、マイクロ波処理装置。
【請求項2】
前記キャビティの内部の空間におけるマイクロ波の照射は、マルチモードで行われる、請求項1記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
固定されたベースに回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒状形状のキャビティであって、マイクロ波透過性の部材が内張りされたキャビティを前記円筒状形状の軸周りに回転させるステップと、
前記キャビティの円周側面から内部の空間にマイクロ波を導入するステップと
を含
み、
前記キャビティは、前記照射対象物が流入する上流側よりも下流側が低く傾斜する、マイクロ波処理方法。
【請求項4】
前記キャビティの内部の空間におけるマイクロ波の照射は、マルチモードで行われる、請求項3記載のマイクロ波処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状形状のキャビティ内の対象物にマイクロ波を照射するマイクロ波処理装置、マイクロ波導入装置、及びマイクロ波処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形状のキャビティを回転させながら、そのキャビティ内の対象物(被加熱物)にマイクロ波を照射して加熱することによって、対象物の乾燥または反応などを行う処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の処理装置においては、円筒形状のキャビティの端部からマイクロ波をキャビティ内に導入するため、キャビティの軸方向の長さが長くなった場合に、キャビティ内の対象物を適切に加熱することができなくなる可能性があるという問題があった。一般的に言えば、回転可能な円筒状形状のキャビティ内の対象物により適切にマイクロ波を照射するようにしたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記状況に応じてなされたものであり、回転可能な円筒状形状のキャビティ内の対象物により適切にマイクロ波を照射することができるマイクロ波処理装置、マイクロ波導入装置、及びマイクロ波処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置は、固定されたベースに回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒状形状のキャビティと、キャビティを円筒状形状の軸周りに回転させる回転駆動部と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、を備え、マイクロ波発生器によって発生されたマイクロ波は、キャビティの円周側面から内部の空間に導入される、ものである。
【0007】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、キャビティにおける軸方向の一部の領域にマイクロ波の1または複数の透過領域が設けられていてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、マイクロ波透過性の窓が、マイクロ波の1または複数の透過領域のそれぞれを構成してもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、キャビティは、マイクロ波透過性の部材が内張りされており、部材の一部が、マイクロ波の1または複数の透過領域のそれぞれを構成してもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、マイクロ波の1または複数の透過領域の外周側に、キャビティを円周方向の全体に亘って覆うように設けられ、マイクロ波発生器から導入されたマイクロ波の導波路をキャビティの外周側に形成するカバー部材をさらに備えてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、カバー部材は、キャビティと相対的に移動可能にベース側に固定されていてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、マイクロ波の1または複数の透過領域は、キャビティの円周方向の全体に亘って設けられていてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置では、マイクロ波の1または複数の透過領域は、スリット状であってもよい。
【0014】
また、本発明の一態様によるマイクロ波導入装置は、固定されたベースに回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒状形状のキャビティにおける軸方向の一部の領域に設けられたマイクロ波の1または複数の透過領域の外周側に、キャビティを円周方向の全体に亘って覆うように設けられ、マイクロ波の導波路をキャビティの外周側に形成するカバー部材と、導波路に導入されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、を備えたものである。
【0015】
また、本発明の一態様によるマイクロ波処理方法は、固定されたベースに回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒状形状のキャビティを円筒状形状の軸周りに回転させるステップと、キャビティの円周側面から内部の空間にマイクロ波を導入するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によるマイクロ波処理装置、マイクロ波導入装置、及びマイクロ波処理方法によれば、例えば、円筒状形状のキャビティの軸方向の長さが長い場合であっても、マイクロ波を照射したい箇所において、マイクロ波の照射対象物にマイクロ波を照射することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態によるマイクロ波処理装置を示す斜視図
【
図2】同実施の形態によるマイクロ波処理装置の正面図
【
図3】同実施の形態によるマイクロ波処理装置の側面図
【
図4】同実施の形態におけるキャビティを示す斜視図
【
図5】同実施の形態におけるマイクロ波の複数の透過領域が設けられた部分の正面図及び縦断面図
【
図6】同実施の形態におけるマイクロ波処理装置の軸方向に垂直な平面における断面図
【
図7】同実施の形態におけるマイクロ波処理装置の中心軸を通る平面における断面図
【
図8】同実施の形態によるマイクロ波処理装置の他の一例を示す側面図
【
図9】同実施の形態によるマイクロ波処理装置の他の一例を示す正面図
【
図10】同実施の形態におけるキャビティと複数のマイクロ波発生器との一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるマイクロ波処理装置及びマイクロ波処理方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるマイクロ波処理装置は、回転可能な円筒形状のキャビティの円周側面から内部の空間にマイクロ波を導入するものである。
【0019】
図1は、本実施の形態によるマイクロ波処理装置1の主な構成を示す斜視図である。
図2は、マイクロ波処理装置1の正面図であり、
図3は、マイクロ波処理装置1の側面図である。
図4は、キャビティ11の外観を示す斜視図である。なお、
図4は、
図1においてカバー部材13を取りのけた状態を示す図である。
図5(a)は、キャビティ11におけるマイクロ波の複数の透過領域11dの設けられたマイクロ波の透過部分11bを示す正面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線断面図である。
図6は、
図1で示されるマイクロ波処理装置1の軸方向に垂直な平面であって、導波管14aを通る平面における切断面の端面のみを示す縦断面図である。なお、
図6では、マイクロ波発生器14については省略している。
図7は、
図1で示されるマイクロ波処理装置1の軸方向に平行な平面における縦断面図である。なお、
図7では、マイクロ波処理装置1の上部側のみの断面を示している。
【0020】
本実施の形態によるマイクロ波処理装置1は、キャビティ11と、カバー部材13と、マイクロ波発生器14と、回転駆動部15とを備える。マイクロ波が照射され、マイクロ波加熱の対象となる対象物は、どのようなものであってもよい。対象物は、例えば、セメント材料、生石灰の材料である炭酸カルシウム、鉱石、ゴミ等であってもよく、化学反応の材料であってもよく、乾燥の対象となるものであってもよく、マイクロ波の照射の対象となるその他の物であってもよい。対象物は、例えば、粒状固体または粉体などであってもよく、液体であってもよい。通常、対象物は、キャビティ11の内部に直接、入れられ、キャビティ11の回転に応じて撹拌されながらマイクロ波が照射される。
【0021】
マイクロ波が照射されている際に、キャビティ11の内部の空間11c内の対象物は、移動してもよく、または、そうでなくてもよい。すなわち、マイクロ波を照射することによって行われる対象物への処理は、連続式で行われてもよく、バッチ式で行われてもよい。対象物への処理が連続式で行われる場合に、対象物は、例えば、継続的に移動していてもよく、移動と停止とを繰り返してもよい。対象物への処理が連続式で行われる場合には、例えば、キャビティ11は、下流側が低くなるように傾斜しており、キャビティ11の回転に応じて、対象物が上流側の端部から、下流側の端部に撹拌されながら送られてもよい。また、対象物を撹拌したり、搬送したりする機構がキャビティ11の内部に別途、存在してもよい。
【0022】
対象物へのマイクロ波の照射は、例えば、対象物の乾燥のために行われてもよく、対象物の融解、昇華、または蒸発のために行われてもよく、対象物の反応のために行われてもよく、対象物の焼成のために行われてもよく、対象物の殺菌のために行われてもよく、その他の用途のために行われてもよい。対象物の反応は、例えば、化学反応であってもよい。対象物へのマイクロ波の照射は、例えば、常圧、減圧下、または加圧下で行われてもよい。また、マイクロ波の照射は、例えば、空気、または不活性ガスの気流下で行われてもよく、または、そうでなくてもよい。不活性ガスは、例えば、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、または窒素であってもよい。
【0023】
キャビティ11は、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間11cを内部に有する円筒形状のキャビティである。キャビティ11の内部の空間11cにおいて、対象物にマイクロ波が照射される。空間11cにおけるマイクロ波のモードは、通常、マルチモードである。
図4で示されるように、キャビティ11は、キャビティ本体11aと、キャビティ11の軸方向の一部の領域に設けられたマイクロ波の透過部分11bとを有している。
図4、
図5では、キャビティ本体11aとマイクロ波の透過部分11bとの境界を破線で示している。キャビティ本体11a、及びマイクロ波の透過部分11bは、通常、中空の円筒形状、すなわちパイプ形状である。なお、軸方向とは、キャビティ11である円筒形状の中心軸の方向のことである。また、その円筒形状の円周の方向を円周方向と呼ぶこともある。また、その円筒形状の軸方向に垂直な面における中心軸を通る直線の方向を半径方向と呼ぶこともある。また、キャビティ11は、通常、中心軸が略水平方向になるように配設されるが、それ以外の方向になるように配設されてもよい。
【0024】
キャビティ本体11aは、マイクロ波を透過しないものであることが好適である。キャビティ本体11aは、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などであってもよい。
図2、
図3で示されるように、キャビティ11は、固定されたベース7に対して回転可能となるように、支持ローラ22によって支持されている。なお、キャビティ11は、支持ローラ22以外の機構、例えば、ボールベアリング等によって、ベース7に回転可能となるように支持されてもよい。キャビティ11の回転は、円筒形状の中心軸を中心として行われる。また、
図1では、回転駆動部15、ベース7、及び支持ローラ22等を省略している。キャビティ11が回転可能であるとは、キャビティ11の全体が回転可能であることであってもよく、または、円周側面の少なくとも一部が回転可能であることであってもよい。なお、本実施の形態では、キャビティ11の全体が回転する場合について主に説明し、端面板、または円周側面の一部が回転しない場合については後述する。キャビティ本体11aの外周のうち、カバー部材13によって覆われていない領域は、断熱材、ジャケット等によって覆われていてもよい。
【0025】
対象物への処理が連続式で行われる場合には、キャビティ11の軸方向の端部には、対象物が通過する入口、出口が設けられていてもよい。
図1、
図3、
図4では、キャビティ11の端部が端面板11e,11fによって塞がれており、対象物の流入口11gが上流側の端面板11eに設けられており、対象物の流出口11hが下流側の端面板11fに設けられている場合について示している。また、キャビティ11の内部のマイクロ波が外に漏洩することを防止するため、流入口11g、流出口11hにはチョーク構造などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられてもよい。また、マイクロ波の照射がバッチ式で行われる場合には、キャビティ11の軸方向の端部は、閉じられていてもよい。なお、キャビティ11内部への対象物の出し入れを行うため、例えば、その端部は、開閉可能となっていてもよい。
【0026】
マイクロ波の透過部分11bには、マイクロ波の1または複数の透過領域11dが設けられている。マイクロ波の透過領域11dは、例えば、キャビティ11の円周方向の全体に亘って設けられていてもよく、または、円周方向の一部に設けられていてもよい。本実施の形態では、円周方向の全体に亘って、マイクロ波の複数の透過領域11dが設けられている場合について主に説明する。
【0027】
なお、マイクロ波の透過領域11dの個数は、例えば、1個であってもよく、または、複数であってもよい。マイクロ波の透過領域11dは、マイクロ波を透過しない円筒形状の部材に設けられることが好適である。その円筒形状の部材は、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料の例示は上記のとおりである。マイクロ波の複数の透過領域11dは、通常、マイクロ波の透過部分11bの表面に均等に設けられているが、そうでなくてもよい。マイクロ波の透過領域11dの形状は、例えば、
図5(a)で示されるように、スリット状であってもよく、丸形状、正方形状、矩形状、多角形状などであってもよく、その他の形状であってもよい。また、マイクロ波の透過領域11dの個数、形状、配置箇所等を選択することにより、マイクロ波のキャビティ11内への導入の程度などをコントロールすることができる。マイクロ波の透過領域11dがスリット状である場合に、スリット状の透過領域11dは、例えば、
図5(a)で示されるように、円筒形状の円周方向に延びていてもよく、円筒形状の軸方向、またはその他の方向に延びていてもよい。
図5(a)では、スリット状の透過領域11dが軸方向の2つの位置に設けられている場合、すなわちスリット状の透過領域11dが2列に設けられている場合について示しているが、スリット状の透過領域11dは、1列だけ設けられてもよく、3列以上設けられてもよい。また、
図5(a)、
図5(b)では、スリット状の透過領域11dが、各列の円周方向において90度ごとに4箇所設けられている場合について示しているが、スリット状の透過領域11dは、各列の円周方向において、(360/N)度ごとにN箇所設けられていてもよい。ここで、Nは、2以上の任意の整数である。また、マイクロ波の複数の透過領域11dは、列ごとに整列しないように設けられてもよい。
図5で示されるように、マイクロ波の透過領域11dが円周方向の全体に亘って設けられることによって、キャビティ11の円周側面における円周方向の種々の方向から、マイクロ波をキャビティ11の内部に導入することができるようになる。
【0028】
マイクロ波透過性の窓が、マイクロ波の1または複数の透過領域11dのそれぞれを構成してもよい。この場合には、マイクロ波の透過領域11dは、例えば、マイクロ波を透過しない円筒形状の部材に設けられた開口がマイクロ波透過性の材料によってシールされたものであってもよい。この場合には、キャビティ11の内部の対象物、キャビティ11の内部において発生した水蒸気、ガスなどが、マイクロ波の透過領域11dを介してマイクロ波発生器14側に移動することを防止でき、マイクロ波発生器14の故障などを防止することができる。
【0029】
キャビティ11の内面が、後述するように、マイクロ波透過性の部材51で内張りされている場合には、部材51の一部が、マイクロ波の1または複数の透過領域11dのそれぞれを構成してもよい。この場合には、マイクロ波の透過領域11dは、マイクロ波を透過しない円筒形状の部材に設けられた開口と、その開口に相当する部材51の部分とによって構成されることになる。この場合にも、キャビティ11の内部の対象物などが、マイクロ波の透過領域11dを介してマイクロ波発生器14側に移動することを防止でき、マイクロ波発生器14の故障などを防止することができる。
【0030】
マイクロ波の透過部分11bと、キャビティ本体11aとの間には隙間がないことが好適である。キャビティ本体11aと、円筒形状の部材であるマイクロ波の透過部分11bとは、例えば、ネジ止め、溶接、または接着等によって接続されてもよく、一体的に形成されてもよい。本実施の形態では、後者の場合、すなわち、金属によって構成されたキャビティ11におけるマイクロ波の透過部分11bに、マイクロ波の複数の透過領域11dが設けられた場合について主に説明する。
【0031】
なお、後述する導波路13bからキャビティ11の内側に、マイクロ波の透過領域11dを介してマイクロ波が効率よく透過するためには、スリット状の透過領域11dは、円筒形状の円周方向に延びていることが好適である。また、円周方向に延びているスリット状の透過領域11dの円周方向の間隔、及び軸方向の間隔は、マイクロ波がキャビティ11の内部に進入しやすいように設定されることが好適である。その間隔としては、例えば、方形導波管の一面に、長手方向に延びるスリット状の複数のスロットが設けられた公知の漏洩導波管と同様の間隔を採用してもよい。
【0032】
マイクロ波透過性材料は、比誘電損失が小さい材料であり、特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、石英、ガラス等であってもよい。マイクロ波透過性材料の比誘電損失は、例えば、マイクロ波処理装置1の稼働時のマイクロ波の周波数及び温度において、1より小さいことが好適であり、0.1より小さいことがより好適であり、0.01より小さいことがさらに好適である。なお、キャビティ11の内部の対象物が高温になる場合には、マイクロ波透過性材料として、石英、ガラスが用いられることが好適である。
【0033】
なお、キャビティ11の内面には、
図5~
図7で示されるように、マイクロ波透過性の部材51が内張りされていてもよい。マイクロ波透過性の部材51は、例えば、マイクロ波透過性材料によって構成された部材であってもよく、マイクロ波透過性の断熱材であってもよい。後者の場合には、部材51は、例えば、マイクロ波透過性の耐火煉瓦であってもよい。部材51は、キャビティ本体11aの内面、及びマイクロ波の透過部分11bの内面の両方に設けられていてもよい。部材51が断熱性を有する場合には、キャビティ11の壁面が高温になることを防止することができる。マイクロ波処理装置1がロータリーキルンとして用いられ、内部が1000℃以上などのような高温になる場合には、キャビティ11の内面に断熱材である部材51が内張りされていることが好適である。キャビティ11の内面に断熱材である部材51を内張りすることによって、キャビティ11の内部の対象物が高温になっても、キャビティ11の壁面が高温になることを防止することができると共に、マイクロ波が部材51を介して対象物に適切に到達できるようになる。一方、内部が高温にならない場合には、キャビティ11の内面に断熱材である部材51が設けられていなくてもよい。また、マイクロ波の1または複数の透過領域11dが、上述のマイクロ波透過性の窓である場合には、キャビティ11の内面に部材51が設けられていなくてもよい。マイクロ波透過性の部材51は、他の部材と比較して比誘電損失が小さいものであってもよい。部材51の比誘電損失は、例えば、マイクロ波処理装置1の稼働時のマイクロ波の周波数及び温度において、1より小さいことが好適であり、0.1より小さいことがより好適であり、0.01より小さいことがさらに好適である。
【0034】
キャビティ11の軸方向の長さは、長くてもよい。例えば、マイクロ波処理装置1がロータリーキルンとして用いられる場合には、キャビティ11の軸方向の長さは、30メートル以上、50メートル以上などのように、長くてもよい。なお、マイクロ波処理装置1がロータリーキルンとして用いられるのではない場合などには、キャビティ11の軸方向の長さは、それほど長くなくてもよい。例えば、1メートル、5メートル、10メートル等であってもよい。
【0035】
カバー部材13は、マイクロ波の透過部分11bの外周側、すなわちマイクロ波の1または複数の透過領域11dの外周側に、キャビティ11を円周方向の全体に亘って覆うように設けられる。カバー部材13によって、マイクロ波発生器14から導入されたマイクロ波の導波路13bがキャビティ11の外周側に形成される。そして、導波路13bに導入されたマイクロ波が、マイクロ波の1または複数の透過領域11dを介して、キャビティ11の内部の空間11cに進入し、対象物が加熱されることになる。なお、カバー部材13は、回転しないものである。すなわち、カバー部材13は、ベース7側に固定されており、回転するキャビティ11に対して相対的に移動可能となっている。カバー部材13は、例えば、
図2,
図3で示されるように、ベース7に固定された支持部23によって支持されることによって、ベース7側に固定されてもよい。
【0036】
導波路13bは、中空円柱形状である。導波路13bは、方形導波管を円形状に曲げることによって形成された中空円柱形状と同様の形状であると考えることもできる。導波路13bは、カバー部材13以外をも用いて、形成されることになる。本実施の形態では、導波路13bは、
図6,
図7で示されるように、マイクロ波の透過部分11bと、カバー部材13とによって形成されている。より具体的には、導波路13bの外周面は、カバー部材13によって形成されており、導波路13bの内周面は、マイクロ波の透過部分11bの外周面によって形成されており、導波路13bの側面(すなわち、外周面と内周面とを繋ぐ面)は、カバー部材13によって形成されている。なお、導波路13bの軸方向の長さと、マイクロ波の透過部分11bの軸方向の長さとは、同じであることが好適であり、両者の軸方向の位置も同じであることが好適である。
【0037】
導波路13bは、マイクロ波発生器14によって発生されたマイクロ波が導入されるための開口13cを有している。開口13cには、導波管14aが接続されている。そして、導波管14aによって、マイクロ波発生器14からのマイクロ波が導波路13bにまで導かれることになる。導波管14aは、
図6で示されるように、中空円柱形状である導波路13bの接線方向に延びるように設けられていることが好適である。なお、マイクロ波発生器14は、開口13cの部分に直接、接続されてもよい。また、開口13cは、マイクロ波透過性材料によってシールされていてもよい。マイクロ波透過性材料の例示は上記のとおりである。
【0038】
導波路13bの円周方向に垂直な平面における断面は、導波路13bを伝搬するマイクロ波の周波数に適した方形導波管の断面と同様のサイズとなることが好適である。例えば、2.45GHzのマイクロ波が導波路13bを伝搬する場合には、導波路13bの軸方向の長さは、109.2(mm)であり、半径方向の長さは、54.6(mm)であってもよい。
【0039】
導波路13bには、2以上のマイクロ波発生器14からのマイクロ波が導入されてもよい。導波路13bは、導入されるマイクロ波の周波数に応じたサイズとなるため、2以上のマイクロ波発生器14からのマイクロ波が導波路13bに導入される場合であっても、通常、その2以上のマイクロ波発生器14が発生するマイクロ波の周波数は同じになる。
【0040】
カバー部材13は、マイクロ波を透過しないものであることが好適である。カバー部材13は、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属の例示は、上記のとおりである。
【0041】
なお、本実施の形態では、カバー部材13の外形が円柱形状である場合について示しているが、そうでなくてもよい。カバー部材13の外形は立方体形状等であってもよい。その場合であっても、カバー部材の内周面は、導波路13bを形成するため、円筒形状となっている。
【0042】
図7で示されるように、カバー部材13は、ボールベアリング41によってキャビティ11の外周側において回転可能に設けられてもよい。なお、キャビティ11の外周面と、カバー部材13の導波路13b以外の部分との間に形成された隙間の半径方向の長さは、一定であることが好適である。ボールベアリング41は、
図7とは別の位置に設けられてもよく、また、より多くのボールベアリングが設けられてもよい。なお、ボールベアリング41は、マイクロ波が照射されないようにするため、後述する漏洩防止機構によってマイクロ波の進入が遮断される箇所に設けられてもよい。
図1においては、説明の便宜上、ボールベアリング41を省略している。
【0043】
また、キャビティ11とカバー部材13との隙間から、導波路13bを伝搬するマイクロ波が外側に漏洩しないようにするための漏洩防止機構が、キャビティ11とカバー部材13との間に設けられてもよい。マイクロ波の漏洩防止機構は、
図7で示されるチョーク構造31であってもよい。なお、チョーク構造については、すでに公知であるため、その詳細な説明を省略する。本実施の形態では、カバー部材13にチョーク構造31が設けられる場合について示しているが、チョーク構造は、例えば、キャビティ11側に設けられてもよい。
【0044】
また、キャビティ11、カバー部材13の導波路13b部分の内周面、及びカバー部材13の導波路13b以外の部分の内周面は、同軸に形成されていることが好適である。
【0045】
マイクロ波発生器14は、マイクロ波を発生させる。マイクロ波発生器14は、例えば、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン等を用いてマイクロ波を発生させてもよく、半導体素子を用いてマイクロ波を発生させてもよい。マイクロ波の周波数は、例えば、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、24GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。また、マイクロ波の強度は、図示しない制御部によって適宜、制御されてもよい。その制御は、例えば、キャビティ11の内部の温度、対象物の温度、対象物の水分量などのセンシング結果を用いたフィードバック制御であってもよい。
【0046】
回転駆動部15は、キャビティ11を円筒形状の軸周りに回転させる。回転駆動部15は、例えば、モータ等であってもよい。回転駆動部15は、例えば、
図2、
図3で示されるようにベース7に固定されてもよい。また、回転駆動部15によって回転されるチェーンホイール15aと、キャビティ11に同軸となるように設けられたチェーンホイール15bとにチェーン21が掛け渡されており、回転駆動部15によってチェーンホイール15aが回転されることによって、キャビティ11が回転される。その回転は、導波路13bを伝搬するマイクロ波と同じ方向であってもよく、または、逆方向であってもよい。前者の場合には、
図6において、時計回りにキャビティ11が回転することになり、後者の場合には、
図6において、反時計回りにキャビティ11が回転することになる。また、回転駆動部15は、キャビティ11を揺動させてもよい。なお、その揺動は、対象物にマイクロ波が均一に照射される角度の範囲内で行われることが好適である。なお、キャビティ11を回転させる回転機構として、上記以外のものを使用してもよいことは言うまでもない。例えば、ギヤ等を介してキャビティ11が回転されてもよい。回転駆動部15は、キャビティ11を一定の回転速度で回転させてもよく、または、そうでなくてもよい。
【0047】
なお、本実施の形態では、キャビティ11の軸方向の1箇所においてマイクロ波の照射を行う場合について説明したが、キャビティ11の軸方向の2箇所以上においてマイクロ波の照射を行ってもよい。その場合には、キャビティ11の軸方向の2箇所以上に、マイクロ波の透過部分11bが設けられ、マイクロ波の導波路13bが形成されてもよい。なお、カバー部材13、及び回転駆動部15は、例えば、マイクロ波の導波路13bごとに設けられてもよく、複数のマイクロ波の導波路13bに対して一つのカバー部材13、及び回転駆動部15が用いられてもよい。後者の場合には、カバー部材13は、複数の導波路13bを形成することになる。また、キャビティ11の軸方向の2箇所以上でマイクロ波の照射が行われる場合に、マイクロ波処理装置1は、1個のマイクロ波発生器14を備えていてもよく、または、複数のマイクロ波発生器14を備えていてもよい。前者の場合には、1個のマイクロ波発生器14によって発生されたマイクロ波が分岐されて照射されてもよい。また、複数のマイクロ波発生器14が用いられる場合には、各マイクロ波発生器14が発生させるマイクロ波の周波数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、マイクロ波発生器14によって発生されたマイクロ波が、導波管14aによって導波路13bに導入される場合について説明したが、マイクロ波発生器14によって発生されたマイクロ波は、同軸ケーブル等の他の伝送手段によって導波路13bに導入されてもよい。同軸ケーブルによってマイクロ波が伝送される場合には、同軸ケーブルに接続された、マイクロ波を放射するためのアンテナが導波路13bに設けられてもよい。
【0049】
次に、本実施の形態によるマイクロ波処理装置1による対象物へのマイクロ波の照射方法について、簡単に説明する。キャビティ11の内部の空間11cに対象物を入れ、マイクロ波発生器14によってマイクロ波を発生させると共に、キャビティ11を回転駆動部15によって回転させる。その結果、マイクロ波発生器14から導波路13bに導かれたマイクロ波が、回転しているマイクロ波の透過部分11bにおけるマイクロ波の1または複数の透過領域11dを介して対象物に照射されることになる。ここで、マイクロ波の透過部分11bが回転しているため、マイクロ波は、円周方向の種々の位置から対象物に照射されることになる。その結果、対象物へのマイクロ波の均等な照射を実現することができる。なお、バッチ式の場合には、対象物への処理が終了するごとに、対象物の入れ替えを行う。一方、連続式の場合には、キャビティ11内への流入口11gからの処理前の対象物の投入と、流出口11hからの処理後の対象物の流出とが連続して行われることになる。
【0050】
以上のように、本実施の形態によるマイクロ波処理装置1によれば、キャビティ11の円周側面から内部にマイクロ波を導入することができる。したがって、キャビティ11の軸方向の長さが長い場合であっても、マイクロ波を照射したい位置において、キャビティ11内の対象物にマイクロ波を照射することができるようになる。また、例えば、キャビティ11の軸方向における複数箇所にマイクロ波の透過部分11b、及び導波路13bが設けられることによって、キャビティ11の軸方向の長さが長くても、端部のみからマイクロ波が導入される場合と比較して、キャビティ11内の対象物の温度の低下を抑えることができ、対象物を適切に加熱することができるようになる。また、マイクロ波の透過部分11bが、マイクロ波反射性の円筒形状部材に、マイクロ波の複数の透過領域11dを円周方向の全体に亘って設けたものである場合には、その複数の透過領域11dが回転しながらマイクロ波がキャビティ11の内部に導入されるため、キャビティ11の内部の対象物に円周方向の様々な方向からより均一にマイクロ波を照射することができるようになり、より均一な加熱が可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態では、マイクロ波の透過部分11bに、マイクロ波の複数の透過領域11dが設けられる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。マイクロ波の透過部分11bそのものが、マイクロ波の1個の透過領域11dとなっていてもよい。その場合には、マイクロ波の透過部分11bは、例えば、円筒形状のマイクロ波透過性材料によって構成されてもよく、または、その透過部分11bの領域に、上述の部材51が設けられていてもよい。
【0052】
次に、本実施の形態によるマイクロ波処理装置の変形例について説明する。
【0053】
[固定されたキャビティの端面板]
キャビティ11の端面板11e,11fがキャビティ11の側面と一緒に回転する場合について説明したが、そうでなくてもよい。キャビティ11の端面板11e,11fの少なくとも一方は、ベース7側に固定されていてもよい。
図8は、端面板11fがベース7に固定されている状態を示す側面図である。
図8では、端面板11fが、ベース7に固定された支持部25によって支持されている状態を示している。この場合には、キャビティ本体11aと、端面板11fとの隙間からマイクロ波が漏れないように、チョーク構造などマイクロ波の漏洩防止機構が両者の間に設けられていることが好適である。また、マイクロ波の照射対象物も、その隙間から漏れないようになっていることが好適である。この場合には、
図8で示されるように、流出口11hを任意の位置に設けることができるようになる。なお、端面板が固定されており、キャビティの円周側面のみが回転する構成は、上記特許文献1に開示されており、その詳細な説明を省略する。
【0054】
[キャビティの端面からのマイクロ波の導入]
キャビティ11の円周側面からキャビティ11の内部にマイクロ波を導入する場合について説明したが、キャビティ11の端面からも、マイクロ波を導入するようにしてもよい。その場合には、端面板は、円周側面と一緒に回転しないことが好適である。
【0055】
[カバー部材を用いない構成]
本実施の形態では、カバー部材13によって形成された導波路13bに導入されたマイクロ波が、マイクロ波の透過部分11bに設けられたマイクロ波の1または複数の透過領域11dを介してキャビティ11の内部に導入される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。
図9は、導波路13bを介さないでキャビティ12の内部にマイクロ波が導入されるマイクロ波処理装置2の構成を示す正面図である。
図9で示されるマイクロ波処理装置2は、キャビティ12と、マイクロ波発生器14と、回転駆動部15とを有する。キャビティ12は、軸方向の一部に、ベース7側に固定された固定部12cを有している。固定部12cは、
図9で示されるように、支持部24によってベース7に固定されてもよい。なお、固定部12c以外の回転部12a,12bは、キャビティ11と同様に回転するものである。マイクロ波処理装置2の構成は、キャビティ12における固定部12cが回転しない以外は、マイクロ波処理装置1と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0056】
固定部12cは、回転しない円筒形状の部材であり、マイクロ波を透過しない材料によって構成されることが好適である。固定部12cは、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料の例示は上記のとおりである。また、固定部12cの内部は、導波管14aと連通しており、マイクロ波発生器14によって発生されたマイクロ波は、導波管14aを介して、固定部12cにおいて、キャビティ11の内部の空間に導入されるようになっている。なお、固定部12cは回転しないため、その軸方向の長さは短いほうが好適である。また、マイクロ波発生器14からのマイクロ波は、導波管14aを介さないでキャビティ12の内部に導入されてもよい。また、マイクロ波発生器14と、キャビティ12の内部との間は、例えば、マイクロ波透過性材料によってシールされてもよい。このような簡単な構成によって、キャビティ11の円周側面から内部にマイクロ波を導入することもできる。
【0057】
この場合には、固定部12cと、回転部12a,12bとの隙間からマイクロ波が漏れないように、チョーク構造などマイクロ波の漏洩防止機構が両者の間に設けられていることが好適である。また、マイクロ波の照射対象物も、その隙間から漏れないようになっていることが好適である。また、固定部12cと、回転部12a,12bとは、例えば、ボールベアリング等によって、回転部12a,12b側が回転可能となるように連結されていてもよい。
【0058】
また、キャビティ12の内面に、マイクロ波透過性の内張部材(例えば、部材51に相当する部材)が設けられている場合には、例えば、固定部12cの内面の内張部材は、回転の対象となる回転部12a,12bの内面の内張部材と一体的に設けられており、キャビティ12の内面の内張部材は、軸方向の全体について一体的に回転するようになっていてもよい。この場合には、固定部12cの領域において、固定部12cの円筒形状の部材の内周面と、内張部材の外周面との間に隙間が存在することが好適である。また、キャビティ12の内面の内張部材は、通常、回転部12a,12bと一緒に回転することになる。したがって、回転部12a,12bは連動して同じ方向に同じ回転速度で回転されることが好適である。
【0059】
なお、回転部12a,12bの内面と、固定部12cの内面とにおいて、それぞれ別々に内張部材が設けられている場合、またはキャビティ12の内面に内張部材が設けられていない場合などには、固定部12cの内側では、対象物が撹拌されないことになる。したがって、キャビティ12の内側の空間に、撹拌手段が設けられてもよい。その撹拌手段は、固定部12cの領域においてのみ対象物を撹拌するものであってもよく、キャビティ12の軸方向の全体に亘って対象物を撹拌するものであってもよい。
【0060】
また、回転部12a,12bの内面と、固定部12cの内面とにおいて、それぞれ別々に内張部材が設けられている場合、またはキャビティ12の内面に内張部材が設けられていない場合などには、回転部12aと回転部12bとは、連動して回転されてもよく、または、独立して回転されてもよい。前者の場合には、両者は同じ方向に同じ回転速度で回転されることになり、後者の場合には、例えば、両者を逆方向に回転させてもよく、両者の回転速度を異ならせてもよい。
【0061】
また、この場合には、固定部12cの複数箇所において、マイクロ波を導入することもできる。その場合に、例えば、
図10で示されるように、2以上のマイクロ波発生器14からのマイクロ波がそれぞれキャビティ12の内部に導入されてもよく、1つのマイクロ波発生器14からのマイクロ波が分岐されてキャビティ12の内部に導入されてもよい。前者の場合には、2以上のマイクロ波発生器14の発生させるマイクロ波のそれぞれの周波数は、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。また、複数のマイクロ波を導入する際のキャビティ12の円周方向の位置、複数のマイクロ波の照射の角度は問わない。例えば、
図10では、2つのマイクロ波の照射の角度が60度となっているが、例えば、90度、120度、180度等となるように2つのマイクロ波がキャビティ12内に導入されてもよい。なお、
図10において、回転駆動部15、及び支持ローラ22等は省略している。
【0062】
また、キャビティ12の軸方向の2箇所以上に固定部12cが設けられ、各固定部12cの位置において、キャビティ12の内部にマイクロ波が導入されてもよい。その場合にも、例えば、2以上のマイクロ波発生器14からのマイクロ波がそれぞれ複数の固定部12cにおいてキャビティ12の内部に導入されてもよく、1つのマイクロ波発生器14からのマイクロ波が分岐されてそれぞれ複数の固定部12cにおいてキャビティ12の内部に導入されてもよい。前者の場合には、複数のマイクロ波発生器14が発生させるマイクロ波の周波数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
なお、マイクロ波発生器14がキャビティと一緒に回転してもよい場合には、回転可能に支持されたキャビティの外側にマイクロ波発生器14を固定して、キャビティの全体を回転させるようにしてもよい。そして、マイクロ波発生器14からのマイクロ波が、キャビティの円周側面から内部に導入されてもよい。この場合には、キャビティの全体を回転させることができると共に、導波路13bを設ける必要がないため、マイクロ波処理装置の構成を簡易なものとすることができる。マイクロ波発生器14は、例えば、キャビティ12の円周側面に固定されてもよい。なお、マイクロ波発生器14への給電は、例えば、キャビティの外周側において円周方向に設けられた電線を介して行われてもよく、無線給電によって行われてもよく、キャビティに固定されたバッテリを用いて行われてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態において、キャビティ11,12が円筒形状であること、すなわち、キャビティ11,12の軸方向に垂直な断面が正円であることを前提に説明をしたが、断面は正円から少しずれた形状、例えば、楕円形状、または正多角形状であってもよい。軸方向に垂直な断面が正円である場合、及び正円から少しずれた形状である場合を含めて、キャビティ11,12の形状を円筒状形状(cylinder-like shape)と呼ぶことがある。キャビティ11の軸方向に垂直な断面が正円から少しずれた形状である場合には、カバー部材13は、内周側でキャビティ11が回転できるようになっていることが好適である。
【0065】
また、例えば、ロータリーキルンなどの既存のキャビティ11に、カバー部材13とマイクロ波発生器14とを装着することによって、マイクロ波処理装置1を構成することができる。したがって、その場合には、カバー部材13と、マイクロ波発生器14とを有するマイクロ波導入装置を、軸方向の一部の領域にマイクロ波の透過部分を有する回転可能なキャビティ11に装着するようにしてもよい。そのマイクロ波導入装置は、例えば、固定されたベース7に回転可能に支持され、マイクロ波の照射対象物が入れられる空間を内部に有する円筒形状のキャビティ11における軸方向の一部の領域に設けられたマイクロ波の1または複数の透過領域11dの外周側に、キャビティ11を円周方向の全体に亘って覆うように設けられ、マイクロ波の導波路13bをキャビティ11の外周側に形成するカバー部材13と、導波路13bに導入されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器14と、を備えたものであってもよい。
【0066】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上より、本発明の一態様によるマイクロ波処理装置、マイクロ波処理方法、及びマイクロ波導入装置によれば、例えば、円筒状形状のキャビティの軸方向の長さが長い場合であっても、マイクロ波を照射したい箇所において、マイクロ波の照射対象物にマイクロ波を適切に照射することができるという効果が得られ、対象物にマイクロ波を照射するマイクロ波処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1、2 マイクロ波処理装置
11、12 キャビティ
11b マイクロ波の透過部分
11d マイクロ波の透過領域
12c 固定部
13 カバー部材
13b 導波路
14 マイクロ波発生器
15 回転駆動部