(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】デジタル微生物叢解析
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20241111BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241111BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241111BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20241111BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20241111BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241111BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12M1/28
C12Q1/04
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2021516285
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017792
(87)【国際公開番号】W WO2020218553
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019085836
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)海洋生物多様性および生態系の保全・再生に資する基盤技術の創出「シングルセルゲノム情報に基づいた海洋難培養微生物メタオミックス解析による環境リスク数理モデルの構築」委託研究、及び、平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)統合1細胞解析の革新的技術基盤「組織内の細胞多様性を明らかにする超並列ゲノム解析技術の創成」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】519035229
【氏名又は名称】bitBiome株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】細川 正人
(72)【発明者】
【氏名】竹山 春子
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅人
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0371525(US,A1)
【文献】特開2008-173132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068899(US,A1)
【文献】特表2010-506136(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010740(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/133710(WO,A2)
【文献】Nature Biotechnology,2017年05月29日,Vol. 35, No. 7,pp. 640-646, Supplementary Information,<DOI: 10.1038/nbt.3880>
【文献】Scientific Reports,2017年07月12日,Vol. 7, Article 5199,pp. 1-11, Supplementary Information,<DOI: 10.1038/s41598-017-05436-4>
【文献】Scientific Reports,2018年02月01日,Vol. 8, Article 2059,pp. 1-11, Supplementary Information,<DOI: 10.1038/s41598-018-20384-3>
【文献】Frontiers in Microbiology,2015年03月11日,Vol. 6, Article 195,pp. 1-10,<DOI: 10.3389/fmicb.2015.00195>
【文献】日本化学会春季年会講演予稿集,2018年03月,Vol. 98,Article 3D4-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物叢組成を分析する方法であって、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する工程を含む、方法
であって、
該1つずつの細胞由来の増幅核酸が、
微生物叢を含む試料を用い、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する工程と、
該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、
該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して該細胞を溶解する工程であって、該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で該ゲルカプセル内に保持される、工程と、
該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程と
を含む、方法によって生成されており、
該細胞の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで該懸濁液をせん断することにより該細胞を封入した該液滴が作製されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ゲルカプセルがアガロース、アクリルアミド、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、コラーゲン又は光硬化性樹脂から形成されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解用試薬がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルカプセルがヒドロゲルカプセルであることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、分析する増幅核酸を含む試料を選択する工程をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料において、特定の配列を有する核酸を検出する工程を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記特定の配列を有する核酸を検出する工程が、特定の配列を有する核酸を増幅および配列解読することを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物叢組成を評価する工程が、微生物叢中の各種微生物の絶対数を特定することを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、該1つずつの細胞のゲノム配列データを得る工程をさらに含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つずつの細胞のゲノム配列データから、分析するゲノム配列データを選択する工程をさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物叢組成を評価する工程が、各微生物におけるDe novoアセンブリデータより抽出した遺伝子配列を比較することを含む、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物叢が、細菌叢である、請求項1~1
1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物叢が、腸内細菌叢である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~1
3の方法において用いるためのキットであって、保存液を含む検体採取容器を備える、キット。
【請求項15】
前記保存液が、グアニジンまたはエタノールを含む、請求項1
4に記載のキット。
【請求項16】
微生物叢組成を分析するためのシステムであって、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料を提供する試料提供部と、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する組成評価部と
を含
み、
該試料提供部は、
微生物叢を含む試料を用い、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する液滴封入部であって、該細胞の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで該懸濁液をせん断することにより該細胞を封入した前記液滴が作製されるように構成される、液滴封入部と、
該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、
細胞を溶解するための1種以上の溶解用試薬が格納された、該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して該細胞を溶解する細胞溶解部であって、該細胞溶解部は、該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で該ゲルカプセル内に保持されるように構成されている、細胞溶解部と、
該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅するための該ポリヌクレオチド増幅用試薬と
を含み、
該組成評価部は、前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料において特定の配列を有する核酸を検出するための検出試薬または検出装置を含み、
該検出試薬または検出装置が、核酸を増幅および配列解読するための核酸増幅配列決定装置を含む
システム。
【請求項17】
さらに、保存液を含む検体採取容器を含む、請求項1
6に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、分析する増幅核酸を含む試料を選択するための試料選択部をさらに含む、請求項1
6または17に記載のシステム。
【請求項19】
前記組成評価部は、微生物叢中の各種微生物の絶対数を特定する手順を実行する計算部を含む、請求項1
6~
18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記組成評価部は、前記微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、該1つずつの細胞のゲノム配列データをゲノム配列データ取得部をさらに含む、請求項1
6~
19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記組成評価部は、前記1つずつの細胞のゲノム配列データから、分析するゲノム配列データを選択するデータ選択部をさらに含む、請求項2
0に記載のシステム。
【請求項22】
前記組成評価部は、各微生物におけるDe novoアセンブリデータより抽出した遺伝子配列を含むまたは導入し、比較する機能を有する、請求項1
6~2
1のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微生物叢組成の分析に関し、生物学的研究、医療、環境、ヘルスケアなどの分野において利用可能である。
【背景技術】
【0002】
環境微生物の多様性を評価する方法として、次世代シーケンサーを利用して、16SrRNA遺伝子や18SrRNA遺伝子の保存領域を対象としたアンプリコンシーケンス解析が近年広く用いられている。16SrRNA遺伝子を対象とした場合は、多様な微生物を含むサンプル(糞便や土壌、海水など)から一括抽出したDNAに対して、数百塩基の保存領域をPCR増幅し、次世代シーケンサーで保存領域の塩基配列を網羅解析することで、塩基配列の種類=微生物種の種類として微生物叢組成を評価することができる。一方、本法にはいくつかの問題が存在する。
【0003】
第一に、16SrRNA遺伝子のゲノム上のコピー数は各細菌で異なることが挙げられる。細菌では、単一コピーの16SrRNA遺伝子しか持たない細菌もいれば、7遺伝子以上持つ細菌も存在する。さらには、環境微生物の大部分のゲノムが未決定であるため、当該遺伝子の数が不明であり、補正をかけることもできない。
【0004】
第二にPCR時の増幅バイアスの問題がある。前記PCR増幅では、保存領域を対象として増幅が行われるが、内部の配列が微生物ごとに異なるため、塩基配列などの違いなどから増幅効率が各々異なることになる。この結果、PCR増幅のサイクルが増えるほど増幅効率の差異に由来するバイアスが大きくなる。上記の理由により、最終的にPCR増幅後に検出される遺伝子配列の組成比は実際の細菌組成比を反映していない。また、このようなアンプリコンシーケンス解析で得られるのはあくまで組成比であるため、実際の微生物総量の増減については不明である。つまり、あるサンプルを比較して、微生物Xが他種微生物よりも少なくなる事象を発見したとしても、その微生物Xの総量が減ったのか、他微生物数が単に増え微生物Xの数は変わっていないことも考えられる。
【0005】
さらには、多くの微生物叢解析では、組成比1%以下の微生物は「その他」としてまとめられて議論されているが、上記のバイアスを考慮すると実際よりも多く又は少なく微生物組成が見積もられていることが懸念される。この解決方法として、内部標準として配列既知のDNAを用い、これをサンプルにスパイクしてPCRを行う手法(非特許文献1(Stammler et al., 2016 Microbiome, 4(1), 28))や細菌絶対数を別法でカウントして補正する手法がある。前者では、内部標準との読み取り配列総量の比較から、各サンプルごとの微生物総数の相対的比較は可能であるが、PCR増幅時の問題は依然として残されており、多種の細菌絶対数をカウントすることはできていない。後者では非特許文献2(Vandeputte et al. 2017 Nature)にてフローサイトメトリーで細菌絶対数をカウントするとともに、各微生物種の代表的な16SrRNA遺伝子コピー数で補正をかけて、各種細菌数を定量的に評価する方法が紹介されている。この方法では、代表的な値で補正をかけており、中には正確なコピー数を見積もれない微生物が存在する問題点と、細菌数の測定サンプルと配列解析のサンプルが実質的には別であること、フローサイトメトリーで微小な微生物を非細胞粒子と分けてカウントすることは一般的には困難であること等が挙げられ、精度面に問題が残る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Stammler et al., 2016 Microbiome, 4(1), 28
【文献】Vandeputte et al. 2017 Nature, 551(7681), 507-511
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、微生物叢組成を分析する方法であって、該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する工程を含む、方法により、全ゲノム配列解読前の実行で、安く簡単に微生物叢組成の絶対数評価が可能で、全ゲノム配列解読後に、デジタル配列情報から、解析対象の情報を絞り込むことで、長い遺伝子配列で比較することなどが可能になり精度が高まることを見出し、本開示を完成させた。
【0008】
1つの局面では、本開示は、多様な微生物から1細胞ごとに並列調整された増幅ポリヌクレオチドから、微生物種を同定する遺伝子配列を網羅的に読み取り、サンプル中の微生物種を1細胞ずつデジタルカウントし、微生物叢を絶対量としてデジタルカウントした情報を提供するものである。
本開示の実施形態の例として、以下のものが挙げられる。
(項目1) 微生物叢組成を分析する方法であって、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する工程を含む、方法。
(項目1A) 微生物叢を分析する方法であって、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報に基づいて、微生物叢を評価する工程を含む、方法。
(項目2) 前記1つずつの細胞由来の増幅核酸が、
微生物叢を含む試料を用い、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する工程と、
該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、
該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞を溶解する工程であって、該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持される、工程と、
該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程と
を含む、方法によって生成されている、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目3) 前記細胞の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで前記懸濁液をせん断することにより前記細胞を封入した前記液滴が作製されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4) 前記ゲルカプセルがアガロース、アクリルアミド、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、コラーゲン又は光硬化性樹脂から形成されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5) 前記溶解用試薬がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6) 前記ゲルカプセルがヒドロゲルカプセルであることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7) 前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、分析する増幅核酸を含む試料を選択する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8) 前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料において、特定の配列を有する核酸を検出する工程を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9) 前記特定の配列を有する核酸を検出する工程が、特定の配列を有する核酸を増幅および配列解読することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10) 前記微生物叢組成を評価する工程が、微生物叢中の各種微生物の絶対数を特定することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11) 前記微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、該1つずつの細胞のゲノム配列データを得る工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12) 前記1つずつの細胞のゲノム配列データから、分析するゲノム配列データを選択する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13) 前記微生物叢組成を評価する工程が、各微生物におけるDe novoアセンブリデータより抽出した遺伝子配列(例えば、16SrRNA遺伝子配列、18SrRNA遺伝子配列や共通遺伝子のセットなど)を比較することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14) 前記微生物叢が、細菌叢である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15) 前記微生物叢が、腸内細菌叢である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16) 項目1~15の方法において用いるためのキットであって、保存液を含む検体採取容器を備える、キット。
(項目17) 前記保存液が、グアニジンまたはエタノールを含む、項目16に記載のキット。
(項目18) 微生物叢組成を分析するためのシステムであって、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料を提供する試料提供部と、
該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する組成評価部と
を含む、システム。
(項目19) 前記試料提供部は、
微生物叢を含む試料を用い、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する液滴封入部と、
該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、
細胞を溶解するための1種以上の溶解用試薬が格納された、該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞を溶解する細胞溶解部であって、該細胞溶解部は、該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持されるように構成されている、細胞溶解部と、
該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅するための該ポリヌクレオチド増幅用試薬と
を含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目20)さらに、保存液を含む検体採取容器を含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目21) 前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、分析する増幅核酸を含む試料を選択するための試料選択部をさらに含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目22) 前記組成評価部は、前記1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料において特定の配列を有する核酸を検出するための検出試薬または検出装置を含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目23) 前記検出試薬または検出装置が、核酸を増幅および配列解読するための核酸増幅配列決定装置を含む、請求項5Aに記載のシステム。
(項目24) 前記組成評価部は、微生物叢中の各種微生物の絶対数を特定する手順を実行する計算部を含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目25) 前記組成評価部は、前記微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、該1つずつの細胞のゲノム配列データをゲノム配列データ取得部をさらに含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目26) 前記組成評価部は、前記1つずつの細胞のゲノム配列データから、分析するゲノム配列データを選択するデータ選択部をさらに含む、前記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目27) 前記組成評価部は、各微生物におけるDe novoアセンブリデータより抽出した遺伝子配列を含むまたは導入し、比較する機能を有する、前記項目のいずれかに記載のシステム。
【0009】
本開示において、上記1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態及び利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、微生物叢中の1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報に基づいて、微生物叢を評価することによって、微生物叢の組成の絶対数評価を可能とすることができる。
【0011】
PCRによる微生物叢解析の場合には、増幅DNAサンプルのうちの一部を使うことが可能であり、PCRを行った後に配列決定を行い、部分配列を決定することで、特定の遺伝子配列の情報から微生物叢組成を評価し、安く簡単な評価を行うことができる。デジタル配列データに基づく微生物叢解析を行う場合、配列決定を行って得られたデジタル配列データを対象とし、細菌叢解析に利用する遺伝子配列を抽出して、組成データを作成し、高い精度での解析を行うこともできる。本開示により、標的遺伝子のコピー数や配列によって生じるバイアスの問題を解消しつつ、同時に相対組成比ではなく絶対量比を求めることが可能である。組成比の割合の低い微生物は「その他」としてまとめられる場合があるが、実際よりも多く又は少なく微生物組成が見積もられていることが懸念されるところ、本開示は、絶対数カウントを可能にすることによって実際の組成のより正確な測定を可能にする。
【0012】
したがって、本開示は、全ゲノム配列解読前の実行で、安く簡単に微生物叢組成の絶対数評価が可能であり、全ゲノム配列解読後に、デジタル配列情報から、解析対象の情報を絞り込むことで、長い遺伝子配列で比較することなどが可能になり精度が高まるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、増幅DNAを調製するためのステップを行う模式図を示す。
【
図2】
図2は、ウェットの配列スクリーニングの模式図を示す。
【
図4】
図4は、ドライの配列スクリーニングステップを示す模式図である。
【
図5】
図5は、本開示における微生物叢の解析の全体的なフローを示す模式図である。
【
図6】
図6は、糞便試料からのシングルセル由来の増幅核酸から作成されたドラフトゲノムのゲノム解読率(コンプリート率)の箱ひげ図である。左は保存液に浸漬しなかった糞便試料由来のシングルセルの解析結果であり、右は保存液に浸漬した糞便試料由来のシングルセルの解析結果である。
【
図7】
図7は、糞便試料からのシングルセル由来の増幅核酸から作成されたドラフトゲノムに基づき、CheckMを用いて検出されたマーカー遺伝子群を参照して、各サンプルのゲノムデータから細菌の進化系統分類解析を行った結果を示す図である。左は保存液に浸漬しなかった糞便試料由来のシングルセルの解析結果であり、右は保存液に浸漬した糞便試料由来のシングルセルの解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
本開示は、微生物叢(例えば、細菌叢)を微生物特異的に検出し、解析する方法に関するものである。
【0016】
(定義等)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義及び/又は基本的技術内容を適宜説明する。
【0017】
本明細書において、「細胞」とは、遺伝情報を有する分子を内包する粒子であって、(単独で可能かどうかにかかわらず)複製されることが可能である任意の粒子を指す。本明細書における「細胞」としては、単細胞生物の細胞、細菌、多細胞生物由来の細胞、真菌、ウイルスなどが包含される。
【0018】
本明細書において、「生体分子」とは、任意の生物またはウイルスが有する分子を指す。生体内分子には、核酸、タンパク質、糖鎖または脂質などを含み得る。本明細書において、「生体分子の類似体」とは、生体分子の天然または非天然の変種を指す。生体内分子の類似体には、修飾核酸、修飾アミノ酸、修飾脂質または修飾糖鎖などを含み得る。
【0019】
本明細書において、「集合」とは、2つ以上の単一生物単位、細胞または細胞用構造物を含む集まりをいう。
【0020】
本明細書において、「サブ集合」とは、集合よりも少ない数の単一生物単位、細胞または細胞用構造を有する集合の一部分を指す。
【0021】
本明細書において、「ゲル」とは、コロイド溶液(ゾル)において、高分子物質またはコロイド粒子がその相互作用により全体として網目構造をつくり,溶媒あるいは分散媒である液相を多量に含んだまま流動性を失った状態のことをいう。本明細書において、「ゲル化」とは、溶液を「ゲル」の状態に変化させることをいう。
【0022】
本明細書において、「ゲルカプセル」とは、その中に細胞または細胞様構造物を保持することが可能なゲル状の微粒子状構造体を指す。
【0023】
本明細書において、「遺伝子分析」とは生体サンプル中の核酸(DNA、RNA等)の状態を調べることをいう。1つの実施形態では、遺伝子分析は、核酸増幅反応を利用するものを挙げることができる。これらを含め、遺伝子分析の例としては、配列決定、遺伝子型判定・多型分析(SNP分析、コピー数多型、制限酵素断片長多型、リピート数多型)、発現解析、蛍光消光プローブ(Quenching Probe:Q-Probe)、SYBR green法、融解曲線分析、リアルタイムPCR、定量RT-PCR、デジタルPCRなどを挙げることができる。
【0024】
本明細書において「単一生物単位レベル」とは、1つの単一生物単位に含まれる遺伝情報またはその他の生体分子の情報に対して、他の単一生物単位に含まれる遺伝情報またはその他の生体分子の情報と区別し得る状態で処理を行うことをいう。
【0025】
本明細書において、「シングルセルレベル」とは、1つの細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報に対して、他の細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報と区別した状態で処理を行うことをいう。例えば、「シングルセルレベル」でのポリヌクレオチドを増幅する場合、ある細胞中のポリヌクレオチドと、他の細胞中のポリヌクレオチドが区別可能な状態でそれぞれの増幅が行われる。
【0026】
本明細書において、「シングルセル解析」とは、1つの細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報を、他の細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報と区別した状態で解析することを指す。
【0027】
本明細書において、「核酸情報」とは、1つの細胞または細胞様構造物に含まれる核酸の情報を指し、特定の遺伝子配列の有無、特定の遺伝子の収量または全核酸収量を含む。
【0028】
本明細書において、「同一性」とは、2つの核酸分子間の配列類似性を指す。同一性は、比較のためにアライメントしうる各配列中の位置を比較することによって決定することができる。
【0029】
本明細書において、「微生物叢」とは、一定の物理的な範囲に存在している微生物の集合全体を指す。「微生物」は、肉眼でその存在が判別できず、顕微鏡などによって観察できる程度以下の大きさの生物(多細胞生物の場合個々の細胞であってもよい)を含む。一定の物理的な範囲としては、例えば、ある個体の腸内、皮膚、口腔、鼻腔、または膣や、環境での水域、土壌、生物表面、生物内部などにおける一定範囲が挙げられる。微生物叢は、複数種の分類にわたる微生物の集合、例えば、真菌、細菌、古細菌、単細胞動物、ウイルスなどの組合せであってもよく、一部の分類の微生物を抜き出して集合としてもよい。微生物叢の1つの例として、細菌叢が挙げられる。
【0030】
本明細書において、微生物叢の「組成」とは、微生物叢中にどのような種が含まれているか、または含まれている各々の種の量についての情報を指し、微生物叢中の一部の微生物種が含まれるかについて、またはその量についての情報も包含する。
【0031】
(分析)
本開示の1つの局面において、微生物叢を分析する方法であって、当該微生物叢中の1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報に基づいて、微生物叢を評価する工程を含む、方法が提供される。複数の細胞由来の核酸の情報からは、ある配列の核酸の量を特定することができるものの、微生物ごとにコピー数の差があることから、特定の種の微生物の絶対量を測定することができないが、1つずつの細胞由来の核酸の情報に基づくことによって、特定の種の微生物の絶対量を測定することができる。
【0032】
本開示の1つの実施形態において、微生物叢組成を分析する方法であって、当該微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、微生物叢組成を評価する工程を含む、方法が提供され得る。微生物由来の核酸は1細胞あたりの量が少なく、複数の細胞由来の核酸が混合された状態で分析する場合であったとしても、増幅反応を用いることが一般的であるが、ランダムプライマーを用いるなど、核酸を全体として増幅しようとした場合であっても、GC含量などにより、配列ごとに増幅の程度に偏りが生じることが知られている。増幅に偏りが生じる場合、微生物叢内の特定の種の微生物の相対量の測定は困難である。
【0033】
(シングルセル解析)
本開示において、1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報は、任意の方法によって得てよいが、多数の細胞から簡便に1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報を得るためには、微生物叢を含む試料を用い、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する工程と、当該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、当該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して細胞を溶解する工程であって、当該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが当該ゲルカプセル内に溶出し当該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で当該ゲルカプセル内に保持される、工程と、当該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて当該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程とを含む、方法によって1つずつの細胞由来の増幅核酸を得ることが好ましい場合がある。
本開示の一実施形態において、当該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて当該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程は、当該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内でゲル状態を保ちながら増幅することもできる。
【0034】
1つの実施形態において、液滴は、1つの細胞をマイクロ流路中に流動させ、オイルで懸濁液をせん断することにより1つの細胞を封入することで作製され得る。一部の実施形態において、ゲルカプセルはヒドロゲルカプセルであってもよい。
【0035】
ゲルカプセルの材料は、アガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂(例えば、PEG-DA)、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、コラーゲンなどを含み得る。液滴のゲル化は、液滴にゲルカプセルの材料が含まれるように構成し、作製した液滴を冷却することによって行うことができる。あるいは、液滴に対して光等の刺激を与えることによってゲル化を行うこともできる。液滴にゲルカプセルの材料が含まれるようにするには、例えば、細胞または細胞様構造物の懸濁液にゲルカプセルの材料を含めておくことによって行うことができる。
【0036】
ゲルカプセルは、ヒドロゲルカプセルであってよい。本明細書において、「ヒドロゲル」とは、高分子物質またはコロイド粒子の網目構造によって保持されている溶媒あるいは分散媒が水であるものを指す。
【0037】
溶解用試薬は、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択され得る。
【0038】
多様な微生物について、細胞ごとに核酸の増幅または分析を行う場合、溶解試薬または溶解試薬の組合せとして、ある程度強力なものを用いることが望ましい。例えば、グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層を有する細胞壁を有するため、緩和なもののみでは細胞が十分に溶解できない可能性がある。
【0039】
本開示において、1つずつの細胞にわけて増幅核酸を含む試料を調製する手法としては、マイクロマニピュレーターやフローサイトメトリーを用いて1細胞をチューブに分取し、チューブ一つ一つに対して溶解試薬や全ゲノム増幅試薬を添加する一般的な方法がある。非特許文献(Rinke C, Lee J, Nath N, et al. Obtaining genomes from uncultivatedenvironmental microorganisms using FACS-based single-cell genomics. Nat Protoc.2014;9(5):1038-1048. doi:10.1038/nprot.2014.067)。微生物組成を評価する方法としては、非特許文献(Vandeputteet al.2017 Nature)等の様々な文献で報告されているように、16S rRNA遺伝子の部分配列または全体配列をシークエンスすることなどによってなされる。
【0040】
本開示の微生物叢分析で対象としうる細胞または細胞様構造物は、2つ以上の任意の数字であり、例えば、10個以上、50個以上、100個以上、500個以上、1000個以上、5000個以上、1万個以上、5万個以上、10万個以上、50万個以上、100万個以上、500万個以上、1000万個以上であり得る。本開示の微生物叢分析は、従来のシングルセル反応系、例えば、0.2mL、1.5mLマイクロチューブ反応系を用いるよりも多数の細胞からの、1つずつの細胞由来の核酸ごとの情報を用い得る。
(ゲノム配列解読前の分析)
【0041】
本開示において、個々の微生物の配列情報の総体に対する解析(例えば、ゲノム配列解読)を行う前に、多様な微生物から並列調製された核酸またはその他の生体分子の構造や配列から、その構造や配列を参照して個別の個体特異的に検出し、選抜することを行ってよい。すなわち、方法は、1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、分析する増幅核酸を含む試料を選択する工程を含み得る。
【0042】
1つの実施形態において、選択は、特定の遺伝子配列の有無、特定の遺伝子の収量または全核酸収量に基づいて行い得る。一部の実施形態において、特定の遺伝子配列がある場合に選択してもよく、特定の遺伝子配列が無い場合に選択してもよい。一部の実施形態において、特定の遺伝子の収量が基準となる収量より多い場合選択してもよく、低い場合に選択してもよい。一部の実施形態において、全核酸収量が、基準となる収量より多い場合に選択してもよく、低い場合に選択してもよい。
【0043】
特定の実施形態において、特定の遺伝子配列の有無を、特定の遺伝子配列を特異的に検出する試薬、アガロースゲル電気泳動、マイクロチップ電気泳動、PCR、qPCR、遺伝子配列決定(サンガーシーケンシング、NGS)からなる群から選択される手段により検出する。一部の実施形態において、特定の遺伝子配列を特異的に検出する試薬として、抗体、プローブ、DNA結合性蛍光色素、蛍光色素結合ヌクレオチドが挙げられる。
【0044】
特定の実施形態において、特定の遺伝子の収量または全核酸収量を吸光度測定、蛍光光度測定、アガロースゲル電気泳動、マイクロチップ電気泳動により測定することができる。方法は、1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料において、特定の配列を有する核酸を検出する工程を含み得る。特定の配列を有する核酸を検出する工程は、特定の配列を有する核酸を増幅および配列解読することを含み得る。
【0045】
微生物叢組成の評価は、微生物叢中の各種微生物の絶対数を特定することを含み得る。1つずつの細胞由来の増幅核酸のそれぞれについて、微生物種を特定することによって、各種微生物の絶対数が特定され得る。微生物種の特定は、例えば、特定の遺伝子配列の有無を特定することによって行うことができる。
【0046】
(ゲノム配列解読を伴う分析)
本開示の方法は、微生物叢中の1つずつの細胞由来の増幅核酸を含む試料から、当該1つずつの細胞のゲノム配列データを得る工程を含み得る。ゲノム配列データを得ることによって、微生物叢中の個々の微生物について、単に配列としての情報だけではなく、配列が果たす機能という観点からの情報を得ることも可能である。
【0047】
1つずつの細胞のゲノム配列データから、分析するゲノム配列データを選択することが可能である。ゲノム配列データは情報量が多く、処理する量を限定することは、労力や時間の削減につながる。
【0048】
選択は、特定の遺伝子配列の有無および/または特定の遺伝子配列との同一性を評価することを含み得る。一部の実施形態において、特定の遺伝子配列との同一性は、BLAST等を用いることで評価することができる。特定の実施形態において、選択は、特定の遺伝子配列の有無に基づき、核酸情報を細胞ごとに選別してもよい。他の実施形態において、選択は、特定の遺伝子配列と、2つ以上の細胞に由来する核酸情報との同一性に基づき、核酸情報を細胞ごとに選別してもよい。一部の実施形態において、一定以上の同一性を有する場合に選択してもよく、一定以下の同一性の場合に選択してもよい。特定の実施形態において、同一性は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%であってもよい。他の実施形態において、同一性は、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、または0%であってもよい。
【0049】
ゲノム配列データを得ている場合、微生物叢組成の評価は、各微生物における長い遺伝子配列を比較することによって行ってよい。長い配列は、例えば、de novoアセンブリデータより抽出した遺伝子配列(例えば、16S遺伝子配列や共通遺伝子のセットなど)であってよい。このような長い遺伝子配列の比較は、評価の精度を高めるだけでなく、微生物叢における機能の評価も可能とし得る。例えば、配列情報のみでは、複数の種が存在することがわかってもそれぞれの機能については個別の情報が無ければ、微生物叢全体の機能の点を理解することができないが、遺伝子の情報に基づけば、微生物叢内で、特定の活性(例えば、酵素活性)を有する可能性のある種の量などについての情報を得ることができる。
【0050】
(微生物叢)
本開示で対象とされ得る微生物叢は、限定されるものではないが、真正細菌、大腸菌、枯草菌、藍色細菌、球菌、桿菌、ラセン菌、グラム陰性菌、グラム陽性菌、古細菌、真菌、あるいはそれらの任意の組合せを含むものが挙げられる。微生物叢の一例としては、細菌叢が挙げられる。微生物叢は、異なる細胞の性質(例えば、細胞壁の有無など)を有する複数の微生物を含み得るため、微生物種を問わず同一の様式で、細胞1つ毎の核酸情報を得るか、細胞1つごとの増幅核酸を得ることができる手段を採用することは、本開示の解析において好ましい場合があり得る。
【0051】
微生物叢は、限定されるものではないが、腸内微生物叢、皮膚微生物叢、口腔微生物叢、鼻腔微生物叢、膣微生物叢、土壌微生物叢、根圏微生物叢、河川・海水中微生物叢、活性汚泥微生物叢、昆虫共在微生物叢、動物共生微生物叢などであり得る。腸内細菌叢は、ヒトの健康状態への影響が広く研究されており、本開示の解析の対象として好ましいものの1つである。
【0052】
(組み合わせの実施形態)
本開示において、同じ微生物叢に由来する、1つずつの細胞由来ではない核酸配列情報の解析の情報をさらに組み合わせて解析を行うことが可能である。解析としては、メタゲノム解析が挙げられる。メタゲノム解析は、培養という過程を経ずに、環境中の微生物がもつ核酸、遺伝子、DNAを全体として抽出、収集し、これらの構造(塩基配列)を網羅的に調べる手法である。個々の核酸や遺伝子がどの微生物由来かはわからないものの、環境中の微生物の集合体(コミュニティー)がもつ遺伝子群についての情報を得ることができ、このような手法をメタゲノム解析と呼ぶ。
【0053】
(システム)
本開示の別の局面において、微生物叢組成を分析するシステムが提供され得る。システムは、本明細書における他の項目において記載される任意の特徴を備える方法またはその工程を実装するための手段を備え得る。
【0054】
システムは、細胞中のポリヌクレオチドを増幅するための装置を含み得る。装置は、とりわけ、シングルセルレベルで細胞中のポリヌクレオチドを増幅することができるものであり得る。装置は、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する液滴作製部;液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部;ゲルカプセルを溶解用試薬に浸漬する溶解用試薬浸漬部;ゲルカプセルから夾雑物質を除去する除去部;および/またはゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬する増幅用試薬浸漬部を備え得る。システムまたは装置は、ゲルカプセルを選別し、ゲルカプセルを収容容器に収容する選別部をさらに備え得る。
【0055】
システムまたは装置は、必要に応じて、細胞または細胞様構造物を封入する媒体、ゲルカプセルの材料、溶解用試薬、増幅用試薬、核酸の配列決定に用いられる試薬(例えば、ポリメラーゼ、プライマーセット(バーコード配列が含まれることもある)など)などの試薬を備え得る。試薬としては、本明細書の他の箇所に記載されるものに加えて、当技術分野で公知のものを使用してもよい。
【0056】
装置またはシステムは、増幅用試薬浸漬部において増幅されたポリヌクレオチド中の核酸配列の配列決定を行う配列決定部をさらに備え得る。配列決定部は上記装置と一体として提供されてもよく、システム中の別の装置として提供されてもよい。配列決定部は、サンガー法、マクサム・ギルバード法、単一分子リアルタイムシーケンシング(例えば、Pacific Biosciences、Menlo Park、California)、イオン半導体シーケンシング(例えば、Ion Torrent、South San Francisco、California)、シーケンシングバイシンセシス、パイロシーケンシング(例えば、454、Branford、Connecticut)、ライゲーションによるシーケンシング(例えば、Life Technologies、Carlsbad、CaliforniaのSOLiDシーケンシング)、合成および可逆性ターミネーターによるシーケンシング(例えば、Illumina、San Diego、California)、透過型電子顕微鏡法などの核酸イメージング技術、ナノポアシーケンシングなどを実行するための機器であってよい。
【0057】
システムまたは装置は、増幅した遺伝子を検出・計測する手段を備え得る。例えば、ゲルルカプセルの形状を扱うのに好適である、フローサイトメトリー機器が、上記装置と一体として提供されてもよく、システム中の別の装置として提供されてもよい。増幅した遺伝子を検出・計測する手段としては、検出反応を行う手段(例えば、サーマルサイクラーおよび適当な試薬)、および/またはシグナルを検出する手段(光センサ、カメラ、および適当な分析用の手段)が含まれ得る。
【0058】
システムまたは装置は、本明細書の他の箇所に記載される任意の情報処理を行うように構成され得る、計算部を備え得る。計算部は、上記装置と一体として提供されてもよく、システム中の別の装置(コンピュータ)として提供されてもよい。本開示の別の局面では、計算部において、本明細書の他の箇所に記載される情報処理を行い、本開示の方法を実装させるためのプログラムおよびそれを記録した記憶媒体も提供され得る。計算部は、必要に応じて、かかるプログラムおよび/またはそれを記録した記憶媒体を備え得る。
【0059】
(キット)
本開示の1つの局面は、本開示の方法において用いられ得るキットを提供する。本開示において、微生物叢組成を分析するためのキットが提供され得る。キットは、ゲルカプセルの材料を含み得、ゲルカプセルを用いることは、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、細胞または細胞様構造物中の核酸をシングルセルレベルで増幅することについて有利であり、微生物組成の分析に関して本明細書に記載されるとおり用いられ得る。キットは、例えば、ゲルカプセルの材料と、必要に応じて、1以上の試薬を含み得る。試薬としては、本明細書の他の箇所に記載されるものに加えて、当技術分野で公知のものを使用してもよい。
【0060】
微生物叢組成を分析するためのキットは、溶解用試薬を含み得る。溶解用試薬は、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、Zwittergent 3-12からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。溶解用試薬は、シングルセルレベルでの増幅ポリヌクレオチド、特に、ゲノム全域にわたる増幅産物を得るのに有用である。
【0061】
キットは、核酸の増幅用試薬を含み得る。増幅用試薬としては、例えば、ポリメラーゼ、プライマーセット(バーコード配列が含まれることもある)、塩基ミックス、好適なバッファーなどが挙げられる。キットは、核酸の配列決定に用いられる試薬(例えば、ポリメラーゼ、プライマーセット(バーコード配列が含まれることもある)など)などの試薬を備え得る。例えば、サンガーシーケンスやNGSにて特定の遺伝子を増幅・解読するための試薬(ポリメラーゼ、プライマーセット(バーコード配列が含まれることもある)ほか)が含まれ得る。また、キットは、特定の配列の検出・計測に用いられ得る試薬、例えば、核酸結合色素、蛍光標識プローブなどを含み得る。これらの試薬を用いて、増幅した遺伝子を検出・計測する機器(フローサイトメトリーなど)によって特定の配列の有無を測定することができる。
【0062】
キットは、試料を採取するための手段を含み得る。また、キットは、採取した試料を保存するための手段を含み得る。試料を採取するための手段としては、注射器、スワブ、生検パンチ、採尿容器、採便容器、唾液採取容器、医療用テープなどが挙げられる。保存するための手段としては、冷却剤(例えば、保冷剤、ドライアイス、液体窒素)や、保存液(例えば、グアニジン塩酸塩、硫酸アンモニウム、エタノールなどのいずれかを含む溶液)などが挙げられる。
【0063】
本開示の1つの局面では、微生物叢組成を分析するための、保存液を含む検体採取容器を備えるキットが提供され得る。保存液は、例えば、グアニジン溶液(例えば、FS-0007やFS-0008、テクノスルガラボ社)又はエタノール(例えば、OMR-200やOM-501、DNA genotek社)を含み得る。このような保存液を備えるキットを用いることにより、常温で一定期間病院施設等で保管されたとしても、その後のシングルセルレベル解析において、良好なゲノム解読率(コンプリート率)や、試料中の多くの生物系統の同定といった効果が奏され得る。また、通常行われている凍結便としての採便保存方法と比較して、利便性が格段に高い。
【0064】
保存液は、一般的には核酸の安定性を高めるために用いられ、例えば、グアニジン溶液およびアルコール類などは、タンパク質変性を生じさせ、核酸の分解を進行させる酵素の働きを阻害するように使用される。本開示の方法においては、試料の保存において、細胞としての形態安定性が維持されることが好ましい場合がある。これは、細胞が崩れているとドロップレットへの封入が難しくなること、または細胞デブリなどの多発によりデータの取得が困難になることなどによるものである。そのため、タンパク質変性を生じさせるような保存液は、細胞形態の安定性に対して不利であると予想されていたが、本明細書の実施例において、予想外に、保存液による保存後に細胞の多くが良好に形態を保持しており、本開示の方法において特に好適であることが見出されている。
【0065】
(好ましい実施形態)
細胞を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程と、液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して細胞を溶解する工程であって、当該細胞中のポリヌクレオチドがゲルカプセル内に溶出しポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態でゲルカプセル内に保持される、工程と、ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させてポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程とを含む方法によって、増幅保持された1細胞ゲノム由来ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルを調製する。本ゲルカプセルをDNA結合蛍光色素などで染色し、フローサイトメトリーで蛍光陽性カプセルをカウントする。一定容量中の蛍光陽性カプセル数が導入された微生物総数に相当する。この場合、ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させてポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程は、ポリヌクレオチドをゲルカプセル内でゲル状態を保ちながら増幅することもできる。
【0066】
ついで、フローサイトメーターなどにより所定以上に増幅したゲノムDNAを保持するゲルカプセルを選別し、で、ゲルカプセルを1細胞ごとにマイクロプレートなどに分別収集する。さらに、プレート内で各ゲルカプセル中のポリヌクレオチドを鋳型として全ゲノム増幅反応を行い、これをライブラリマスタープレートとする。ついで、ライブラリマスタープレート中の反応液の一部を分取し、レプリカプレートを調製する。本レプリカを鋳型として標的遺伝子特異的なプライマーセットで増幅を行う。続いて、増幅物をサンガーシーケンスなどにより、配列を特定し各サンプルの微生物種を特定する。
【0067】
より効果的には、上記プライマーセットにバーコード配列を含ませて、各サンプルに異なるバーコードが付与される増幅反応を行い、複数レプリカプレート由来のPCR産物をプールして次世代シーケンスを行う。その後、バーコード配列でプレート・ウェル番号を特定するとともに、PCR産物の配列を特定することで一挙に数百から数千のサンプルの微生物種を特定する。なお、上記プライマーセットは複数の遺伝子領域を対象としたプライマーセットの混合物であってもよい。より具体的には、16S rRNA遺伝子のv3-v4、v1-v2領域などを対象としたものや、18S rRNA、ITSなど細菌やアーキア、真菌などを見分けるプライマーセットなどから選択される。前記プライマーセットを複数種同時に用いれば、細菌・アーキア・真菌を同時に検出することができる。
【0068】
上記いずれかの方法で、ウェルプレート等に分取された各ゲルカプセルに含まれていた微生物種を特定し、計数するとともに、初期に測定した微生物総数と合わせる。本反応では、全てのPCR反応が別個に行われ、各バーコードごとに微生物種を同定・計数していくことから、細胞数を反映したデジタルカウントデータが得られる。すなわち従来の問題であった、コピー数や配列の差異によるバイアスを避けたデータが得られる。また、相対比1%以下の希少細胞についても実質的な総数での比較が可能となる。
【0069】
(システム)
細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する液滴封入部と、該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、細胞を溶解するための1種以上の溶解用試薬が格納された、該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞を溶解する細胞溶解部であって、該細胞溶解部は、該細胞のゲノムDNAまたはその部分を含むポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ゲノムDNAまたはその部分に結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持されるように構成されている、細胞溶解部と、該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅するための該ポリヌクレオチド増幅用試薬とを含む微生物叢組成を分析するためのシステムによって、増幅保持された1細胞ゲノム由来ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルを調製する。
【0070】
このようにして調整したゲルカプセルを用いて、ヒトなどのホスト自体の遺伝子情報等の解析と、ヒト由来試料の微生物叢との複合的な解析を行うことができる。例えば、ヒト腸内微生物叢を対象として上記のような方法およびシステムによって得られた各ゲルカプセルから、サンプルに含まれる微生物種を特定し、この腸内微生物叢の情報と、ヒトの細胞を対象として上記のような方法およびシステムによって得られた各ゲルカプセルから得られる遺伝情報とを併せて解析する。この場合、上記システムの組成評価部は、評価対象としたヒト腸内微生物叢とヒト細胞とをそれぞれ評価して核酸を増幅および配列解読することができ、1つずつの細胞のゲノム配列データを取得することができる。
以上のようにして、本発明のシステムは、腸内細菌やそれに由来する代謝物がホストに与える影響や、腸内細菌自体の機能を併せて評価することができ、その相関関係を見出すことができる。
【0071】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0072】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したものではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0073】
以下、本開示の実施例を記載する。
試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
【0074】
(実施例1:マウス腸内細菌叢組成の解析)
実験は、雄性BALB/cマウス(7、9週齢)(日本クレア株式会社)の糞便を容量1.5mLのチューブ(1212-10, SSIbio)に採取し(n=5)、500μLのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline, 14190-144, Thermo Fisher Scientific)中で破砕機を用いて固形物がなくなるまですり潰した。2,000×gで2秒間遠心分離し(himac CF15RX, 工機ホールディングス)、上清を回収する操作を2回繰り返した後、15,000×gで3分間遠心分離することでマウス腸内微生物を集菌した。菌体のペレットをPBSを用いて2回遠心分離により洗浄した後、PBS中に懸濁することでマウス腸内微生物の細胞懸濁液を取得した。調製した細胞懸濁液中の細胞濃度を測定し(顕微鏡:CKX41, OLYMPUS、バクテリア計算盤A161,2-5679-01, アズワン)、終濃度1.5%になるように超低融点アガロース(A5030-10G, SIGMA-ALDRICH)を加えることで、ゲルカプセル作製に用いる腸内微生物懸濁液を調製した(細胞終濃度:1.5×103cells/μL)。
【0075】
ポリジメチルシロキサン(Sylgard 184: Dow Corning社)を用いて自作したマイクロ流路を用いて、微小液滴の作製および微小液滴内へのマウス腸内微生物細胞の封入を行った。本実施例では、第一流路、第二流路、第三流路及び第四流路からなり、隣接する流路が直角に配置されたマイクロ流路を用いたが、略T字状に接続したマイクロ流路を使用することも可能である。本実施例のマイクロ流路は、幅34μm、高さ50μmのものを使用したが、作製する微小液滴の大きさや封入する1細胞の大きさによりマイクロ流路のサイズは適宜変更可能である。
【0076】
次に、第一流路(水相インレット)から腸内微生物懸濁液を導入し、第二流路及び第四流路(油相インレット)からPico-Surf1(2% in Novec7500)(Sphere Fluidics社)(以下、「オイル」という)を導入して腸内微生物懸濁液をせん断することで、直径50μmの微小液滴を作製し、第三流路7を流動させて容量0.2mLのチューブに回収した。微小液滴は、500液滴/秒の速度で約45万個作製した。微小液滴内の細胞濃度は、0.1 cells/dropletである。
【0077】
本実施例では、微小液滴の直径を50μmと均一にすることで、1細胞ずつ微小液滴に封入され易くしている。1細胞の大きさを考慮すると、微小液滴の直径は、例えば1~250μmであり、20~200μmであることが好ましい。液滴の直径は、約1~250μm、より好ましくは約10~200μmであってよく、例えば、液滴の直径は、約1μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約40μm、約50μm、約80μm、約100μm、約150μm、約200μm、または約250μmであってよい。
【0078】
チューブ内には複数の微小液滴とオイルが収容されるが、微小液滴はオイルよりも比重が軽いため上層に集積する。
【0079】
次に、チューブを氷上で15分間冷却し、超低融点アガロースにより微小液滴をゲル化した。ゲル化した微小液滴がゲルカプセルである。微小液滴の直径が50μmであることからゲルカプセルの直径も50μmとなる。ゲルカプセルの直径は、約1~250μm、より好ましくは約10~200μmであってよく、例えば、約1μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約40μm、約50μm、約80μm、約100μm、約150μm、約200μm、または約250μmであってよい。ゲルカプセルの直径は、作製する液滴と同じであってもよいが、ゲル化に際して直径が変化してもよい。また、ゲルカプセルの直径は1~250μmであることが好ましい。ゲルカプセルの直径を均一とすることにより、後述する溶菌試薬の各ゲルカプセル内への浸透率をより均一化することができる。
【0080】
次に、チューブに20μLの1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール(SIGMA-ALDRICH社)を加え、下層のオイルを取り除いた後、アセトン(富士フイルム和光純薬社)(500μL)、イソプロパノール(富士フイルム和光純薬社)(500μL)を順に加えて遠心洗浄し、オイルの除去を行った。オイルを除去するための遠心洗浄は後述の除去部により行った。本実施例では、ゲルカプセルに浸透したオイルも夾雑物質に含まれるものとする。さらに、500μLのPBSを添加して遠心洗浄を3回行い、ゲルカプセルを水層(PBS)に懸濁した状態とした。ゲルカプセルは水層よりも比重が重いため下層に集積した。
【0081】
続いて、溶解用試薬としての溶菌試薬にゲルカプセルを順次浸漬し、ゲルカプセル内部で細胞の細胞壁等の収集目的物以外の部分を溶解し、ゲルカプセル内にゲノムDNAを溶出させた。
【0082】
具体的には、チューブに溶菌試薬の1種であるリゾチーム(10U/μL)(R1804M、Epicentre)を加え、細胞を溶解した。次に、チューブに溶菌試薬の1種であるアクロモペプチダーゼ(850U/mL)(015-09951、富士フイルム和光純薬社)を加えた。次に、チューブに溶菌試薬の1種であるプロテアーゼK(1mg/mL)(MC5005、Promega)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.5%(71736-100ML、SIGMA-ALDRICH社)を加え、細胞を溶解した後に遠心洗浄を5回行いプロテアーゼ及び溶解した細胞のゲノムDNA以外の成分(夾雑物質)をチューブから除去した。続いて、溶菌試薬の1種である水酸化カリウムを含む水溶液であるBuffer D2(QIAGEN社)にゲルカプセルを浸漬し、残存成分の溶解とゲノムDNAの変性を行った。本実施例で使用する溶菌試液は、上述のとおり、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼK、ドデシル硫酸ナトリウム及びBuffer D2であった。なお、水酸化カリウムは通常のDNA増幅反応工程でも使用するが、溶菌の効果も兼ねていることから、本実施例では溶菌試薬の一つとした。ゲルカプセルの溶菌試薬への浸漬は短時間であるため、溶出させたゲノムDNAが溶菌試薬によりゲルカプセル外に流出されることはなく、ゲルカプセル内に保持される。本実施例では、ゲルカプセルに浸透した溶菌試薬も夾雑物質に含まれるものとする。
【0083】
本実施例は、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ及びプロテアーゼKを順次加え、ドデシル硫酸ナトリウムを加えて細胞を溶解した後、Buffer D2を入れる前にのみ遠心洗浄を行った。これによって十分な洗浄効果を得ることができる。しかしながら、各溶菌試薬により細胞を溶解した後に遠心洗浄を行ってもよい。
【0084】
このように、複数種類の溶菌試薬により細胞の溶解を行うことで、目的のゲノムDNAを採取することができ、溶菌試薬への浸漬後に遠心洗浄を行うことで、溶菌試薬や溶解した細胞のポリヌクレオチド以外の成分等の夾雑物質を除去し、続くゲノムDNA増幅反応を阻害することのなくゲノムDNAを精製することができる。
【0085】
水酸化カリウム溶液(Buffer D2)中で変性したゲノムDNAを保持するゲルカプセルを含むチューブに増幅用試薬を加え、ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬した。具体的には、鎖置換型DNA合成酵素であるphi29DNAポリメラーゼを用いたMDA(Multiple Displacement Amplification)法を使用した。ここでは、全ゲノム増幅反応試薬REPLI-g Single Cell Kit(QIAGEN社)に浸漬し、3時間の全ゲノム増幅反応を行った(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad社)。増幅用試薬(REPLI-g Single Cell Kit)には水酸化カリウム溶液(Buffer D2)を中和する成分が含まれている。
【0086】
さらに、蛍光性DNAインターカレーター(SYBR Green I nucleic acid gel stain 10,000 in DMSO, (S7563、Thermo Fisher Scientific社))による染色を行い、フローサイトメーター(BD FACSMelody セルソーター, BD Biosciences)を用いて、各糞便由来のサンプル(n=5)から蛍光を示すゲルカプセルをプレート(PCR-96-FS-C、Axygen社)に94個ずつ個別に回収した(計470個)。
【0087】
回収した個々のゲルカプセルに対して65℃で加熱を行う(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad)ことによりゲルカプセルを溶解した後、各プレートのウェル内でMDA法(REPLI-g Single Cell Kit, 150345 ,QIAGEN)による二次増幅を実施し、各ウェルにつき10 μLのDNA増幅産物を含むライブラリマスタープレートを作成した。
【0088】
新しいプレートの各ウェルに39μLのヌクレアーゼフリー水(UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water, 10977-015, Thermo Fisher Scientific)を分注し、ライブラリマスタープレート中のDNA増幅産物1μLを加え、ライブラリマスタープレートの40倍希釈溶液を調製した。次に、希釈液1μLを用いてQubitフルオロメーター(Q33226, Thermo Fisher Scientific)Qubit dsDNA HS Assay Kit(Q32854, Thermo Fisher Scientific )によるDNA濃度の定量を行った。また、希釈液1μLをテンプレートに用いて16S rRNA遺伝子のV3V4領域を対象としたPCRを行った(6.25 μL PrimeSTAR Max DNA Polymerase(R045B, タカラバイオ)、0.5μL 10μM Primer Forward(5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3’(配列番号1))、0.5μL 10μM Primer Reverse (5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3’(配列番号2))、1.0μL DNA希釈液、4.25μL UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water(10977-015, Thermo Fisher Scientific)(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad)。PCRの反応条件は、初期熱変性を95℃, 5分、熱変性を98℃, 10秒、アニーリング51℃, 15秒、伸長反応を72℃, 5秒で27サイクル行い、72℃, 5分の反応後、4℃で保存した。アガロースゲル電気泳動(泳動槽:Mupid-exU, EXU-1, Mupid、マーカー:GeneRulerTM 1kb DNA Ladder, #SM0318, Fermentas、染色:Midori Green Direct, NE-MG06,日本ジェネティクス、ローディングバッファー:6×Loading Buffer, 9157, タカラバイオ)(泳動条件:100V, 15min)によってPCR産物の有無を確認後、増幅が見られたサンプルについてサンガー法(株式会社ファスマックのDNAシーケンス外注サービス)を用いてシークエンス解析を行った。
【0089】
(選抜条件)
MDAによる増幅を行った470個のサンプルの内、本実施例では(1)MDA増幅後のDNA収量が200ng以上である、(2)16S rRNA遺伝子のPCR後に増幅が確認される、の基準を設定し、DNA収量がその後の解析に十分であり、細菌由来物であることの基準を満たすサンプルの選抜を行った。サンプル選抜の結果、470個のサンプル中347個(74%)が選抜された。さらに、PCR産物のシーケンス解析により得られた配列情報に対してBLASTを用いた相同性検索(デフォルト条件)を行い、ライブラリマスタープレートに含まれる細菌の種類や数の情報を取得した。本実施例では、BLASTでの相同性検索の結果Lachnospiraceae(ラクノスピラ科)およびBacteroidaceae(バクテロイデス科)に分類される1細胞増幅ゲノムライブラリーが多く確認され、147個がLachnospiraceae細菌、68個がBacteroidaceae細菌であった(下表)。
【表1】
【0090】
(実施例2:ヒト腸内細菌叢組成の解析)
(ヒトからの試料回収)
ヒト糞便を採便容器(FS-0007またはFS-0008、テクノスルガラボ社)に回収した。保存液を含む採便容器では、8000xg, 5min, 4℃の遠心の後、保存液を取り除き、1000μLのDPBSでの洗浄を1度行った。冷凍便(in 1.5ml tube)は、氷上に30分置くことで自然解凍した。保存液を含まない新鮮便では特に破砕前の処理はない。その後、500μLのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline, 14190-144, Thermo Fisher Scientific)中で破砕機を用いて固形物がなくなるまですり潰した。2,000×gで2秒間遠心分離し(himac CF15RX, 工機ホールディングス)、上清を回収する操作を2回繰り返した後、15,000×gで3分間遠心分離することでマウス腸内微生物を集菌した。菌体のペレットをPBSを用いて2回遠心分離により洗浄した後、PBS中に懸濁することでマウス腸内微生物の細胞懸濁液を取得した。調製した細胞懸濁液中の細胞濃度を測定し(顕微鏡:CKX41, OLYMPUS、バクテリア計算盤A161,2-5679-01, アズワン)、終濃度1.5%になるように超低融点アガロース(A5030-10G, SIGMA-ALDRICH)を加えることで、ゲルカプセル作製に用いる腸内微生物懸濁液を調製した(細胞終濃度:1.5×103cells/μL)。
【0091】
(回収した試料の処理(ウェット))
ポリジメチルシロキサン(Sylgard 184: Dow Corning社)を用いて自作したマイクロ流路を用いて、微小液滴の作製および微小液滴内へのヒト腸内微生物細胞の封入を行った。本実施例では、第一流路、第二流路、第三流路及び第四流路からなり、隣接する流路が直角に配置されたマイクロ流路を用いたが、略T字状に接続したマイクロ流路を使用することも可能である。本実施例のマイクロ流路は、幅34μm、高さ50μmのものを使用したが、作製する微小液滴の大きさや封入する1細胞の大きさによりマイクロ流路のサイズは適宜変更可能である。
【0092】
次に、第一流路(水相インレット)から腸内微生物懸濁液を導入し、第二流路及び第四流路(油相インレット)からPico-Surf1(2% in Novec7500)(Sphere Fluidics社)(以下、「オイル」という)を導入して腸内微生物懸濁液をせん断することで、直径50μmの微小液滴を作製し、第三流路7を流動させて容量0.2mLのチューブに回収した。微小液滴は、500液滴/秒の速度で約45万個作製した。微小液滴内の細胞濃度は、0.1 cells/dropletである。
【0093】
本実施例では、微小液滴の直径を50μmと均一にすることで、1細胞ずつ微小液滴に封入され易くしている。1細胞の大きさを考慮すると、微小液滴の直径は、例えば1~250μmであり、10~200μmであることが好ましい。
【0094】
チューブ内には複数の微小液滴とオイルが収容されるが、微小液滴はオイルよりも比重が軽いため上層に集積する。
【0095】
次に、チューブを氷上で15分間冷却し、超低融点アガロースにより微小液滴をゲル化した。ゲル化した微小液滴がゲルカプセルである。微小液滴の直径が50μmであることからゲルカプセルの直径も50μmとなる。また、ゲルカプセルの直径は1~250μmであることが好ましい。ゲルカプセルの直径を均一とすることにより、後述する溶菌試薬の各ゲルカプセル内への浸透率をより均一化することができる。
【0096】
次に、チューブに20μLの1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール(SIGMA-ALDRICH社)を加え、下層のオイルを取り除いた後、アセトン(富士フイルム和光純薬社)(500μL)、イソプロパノール(富士フイルム和光純薬社)(500μL)を順に加えて遠心洗浄し、オイルの除去を行った。オイルを除去するための遠心洗浄は後述の除去部により行った。本実施例では、ゲルカプセルに浸透したオイルも夾雑物質に含まれるものとする。さらに、500μLのPBSを添加して遠心洗浄を3回行い、ゲルカプセルを水層(PBS)に懸濁した状態とした。ゲルカプセルは水層よりも比重が重いため下層に集積した。
【0097】
続いて、溶解用試薬としての溶菌試薬にゲルカプセルを順次浸漬し、ゲルカプセル内部で細胞の細胞壁等の収集目的物以外の部分を溶解し、ゲルカプセル内にゲノムDNAを溶出させた。
【0098】
具体的には、チューブに溶菌試薬の1種であるリゾチーム(10U/μL)(R1804M、Epicentre)を加え、細胞を溶解した。次に、チューブに溶菌試薬の1種であるアクロモペプチダーゼ(850U/mL)(015-09951、富士フイルム和光純薬社)を加えた。次に、チューブに溶菌試薬の1種であるプロテアーゼK(1mg/mL)(MC5005、Promega)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.5%(71736-100ML、SIGMA-ALDRICH社)を加え、細胞を溶解した後に遠心洗浄を5回行いプロテアーゼ及び溶解した細胞のゲノムDNA以外の成分(夾雑物質)をチューブから除去した。続いて、溶菌試薬の1種である水酸化カリウムを含む水溶液であるBuffer D2(QIAGEN社)にゲルカプセルを浸漬し、残存成分の溶解とゲノムDNAの変性を行った。本実施例で使用する溶菌試液は、上述のとおり、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼK、ドデシル硫酸ナトリウム及びBuffer D2であった。なお、水酸化カリウムは通常のDNA増幅反応工程でも使用するが、溶菌の効果も兼ねていることから、本実施例では溶菌試薬の一つとした。ゲルカプセルの溶菌試薬への浸漬は短時間であるため、溶出させたゲノムDNAが溶菌試薬によりゲルカプセル外に流出されることはなく、ゲルカプセル内に保持される。本実施例では、ゲルカプセルに浸透した溶菌試薬も夾雑物質に含まれるものとする。
【0099】
本実施例は、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ及びプロテアーゼKを順次加え、ドデシル硫酸ナトリウムを加えて細胞を溶解した後、Buffer D2を入れる前にのみ遠心洗浄を行うことで十分な洗浄効果を得ることができる。しかしながら、各溶菌試薬により細胞を溶解した後に遠心洗浄を行ってもよい。
【0100】
このように、複数種類の溶菌試薬により細胞の溶解を行うことで、目的のゲノムDNAを採取することができ、溶菌試薬への浸漬後に遠心洗浄を行うことで、溶菌試薬や溶解した細胞のポリヌクレオチド以外の成分等の夾雑物質を除去し、続くゲノムDNA増幅反応を阻害することのなくゲノムDNAを精製することができる。
【0101】
水酸化カリウム溶液(Buffer D2)中で変性したゲノムDNAを保持するゲルカプセルを含むチューブに増幅用試薬を加え、ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬した。具体的には、鎖置換型DNA合成酵素であるphi29DNAポリメラーゼを用いたMDA(Multiple Displacement Amplification)法を使用した。ここでは、全ゲノム増幅反応試薬REPLI-g Single Cell Kit(QIAGEN社)に浸漬し、3時間の全ゲノム増幅反応を行った(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad社)。増幅用試薬(REPLI-g Single Cell Kit)には水酸化カリウム溶液(Buffer D2)を中和する成分が含まれている。
【0102】
さらに、蛍光性DNAインターカレーター(SYBR Green I nucleic acid gel stain 10,000 in DMSO, (S7563、Thermo Fisher Scientific社))による染色を行い、フローサイトメーター(BD FACSMelody セルソーター, BD Biosciences)を用いて、各糞便由来のサンプル(n=2)から蛍光を示すゲルカプセルをプレート(PCR-96-FS-C、Axygen社)に94個ずつ個別に回収した(計188個)。
【0103】
回収した個々のゲルカプセルに対して65℃で加熱を行う(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad)ことによりゲルカプセルを溶解した後、各プレートのウェル内でMDA法(REPLI-g Single Cell Kit, 150345 ,QIAGEN)による二次増幅を実施し、各ウェルにつき10 μLのDNA増幅産物を含むライブラリマスタープレートを作成した。
【0104】
新しいプレートの各ウェルに39μLのヌクレアーゼフリー水(UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water, 10977-015, Thermo Fisher Scientific)を分注し、ライブラリマスタープレート中のDNA増幅産物1μLを加え、ライブラリマスタープレートの40倍希釈溶液を調製した。次に、希釈液1μLを用いてQubitフルオロメーター(Q33226, Thermo Fisher Scientific)Qubit dsDNA HS Assay Kit(Q32854, Thermo Fisher Scientific )によるDNA濃度の定量を行った。また、希釈液1μLをテンプレートに用いて16S rRNA遺伝子のV3V4領域を対象としたPCRを行った(6.25 μL PrimeSTAR Max DNA Polymerase(R045B, タカラバイオ), 0.5μL 10μM Primer Forward (5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3’(配列番号1)), 0.5μL 10μM Primer Reverse (5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3’(配列番号2)), 1.0μL DNA希釈液, 4.25μL UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water(10977-015, Thermo Fisher Scientific)(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad)。PCRの反応条件は、初期熱変性を95℃, 5分、熱変性を98℃, 10秒、アニーリング51℃, 15秒、伸長反応を72℃, 5秒で27サイクル行い、72℃, 5分の反応後、4℃で保存した。アガロースゲル電気泳動(泳動槽:Mupid-exU, EXU-1, Mupid、マーカー:GeneRulerTM 1kb DNA Ladder, #SM0318, Fermentas、染色:Midori Green Direct, NE-MG06,日本ジェネティクス、ローディングバッファー:6× Loading Buffer, 9157, タカラバイオ)(泳動条件:100V, 15 min)によってPCR産物の有無を確認後、増幅が見られたサンプルについてサンガー法(株式会社ファスマックのDNAシーケンス外注サービス)を用いてシークエンス解析を行った。
【0105】
(シングルセルレベルで得られたデータの解析)
(選抜条件)
MDAによる増幅を行った188個のサンプルの内の96個を対象とし、本実施例では(1)MDA増幅後のDNA収量が200ng以上である、(2)16S rRNA遺伝子のPCR後に増幅が確認される、の基準を設定し、DNA収量がその後の解析に十分であり、細菌由来物であることの基準を満たすサンプルの選抜を行った。サンプル選抜の結果、95個のサンプルが選抜された。また、PCR産物のシーケンス解析により得られた配列情報に対してBLASTを用いた相同性検索(デフォルト条件)を行い、ライブラリマスタープレートに含まれる細菌の種類や数の情報を取得した。
【0106】
上記の95個のサンプルに対して、Nextera XT DNA sample prep kit(Illumina社, FC-131-1096)を用いてライブラリー調製を行い、Miseq(Illumina社, SY-410-1003)を用いた全ゲノムシークエンスによって2×75bpのペアエンドリードを取得した。SPAdes(Bankevich A et al., J Comput Biol. 2012 May;19(5):455-77. http://doi.org/10.1089/cmb.2012.0021)を用いてシークエンスデータのアセンブリを行い、Contigを作製した。また、ゲノム解読率(コンプリート率)およびコンタミネーション度の評価にはCheckM(Parks et al., Genome Res. 2015. 25: 1043-1055, doi:10.1101/gr.186072.114)を用いてデフォルト条件で解析を行った。この結果、新鮮便サンプルで平均コンプリート率は37.8%、平均コンタミネーション率は1.3%、保存液便サンプルで平均コンプリート率は52.6%、平均コンタミネーション率は4.8%と算出された(
図6)。
【0107】
さらに、CheckMを用いて検出されたマーカー遺伝子群を参照して、各サンプルのゲノムデータから細菌の進化系統分類解析を行った。この結果、多くのデータが、腸内細菌の優先種として存在するFirmicutes門、Actinobacteria門、Bacteroidetes門、Proteobacteria門に由来することが示された。この様な系統分類に関する指標や16SrRNA遺伝子の同一性を参照して、細菌種を特定・カウントし、
図7のように組成比を算出することが可能である。また、当該細菌のデジタル配列情報を解析することで、当該細菌の代謝機能解析、薬剤耐性遺伝子の保有、遺伝子変異の解析、既知細菌との比較、他検体との比較なども可能である。この工程は、例えば、blastなどの検索エンジンや、Ensembl等の解析ウェブサイトなどのほか、QUAST、CheckMなどのアセンブリ評価ツール、Prokka、InterProScan、DFASTなどのアノテーションツール、MetaCyc、MAPLEなどの代謝・生理機能ポテンシャル評価システムを用いて実施することができる。遺伝情報の解析の一連の流れとして、denovo アセンブリを行って得た遺伝情報に対し、QUASTでアセンブリの実効性を評価し、CheckMでゲノムセットとしての質評価を行う。その後、Prokkaなどのアノテーションツールを用いて、ゲノム中の遺伝子を同定し、MAPLEにて代謝経路としての保存性を評価する。PfamおよびCOGデータベースを用いて、各遺伝子の保存性や同一性を評価し、近縁種生物との比較ゲノム解析を実行する。
【0108】
より具体的には、遺伝子変異の単一細胞単位での評価を目的とした際は、標的遺伝子を対象とした(1)BLAST、hmmerを用いた単一生物由来遺伝子配列の相同性検索、もしくは(2)BWA、bowtie2を用いた単一生物由来シーケンスデータのマッピングによって、単一生物由来遺伝子配列と標的遺伝子配列の差異を検出し、遺伝子変異を特定する。
【0109】
既知細菌との比較、他検体との比較、亜種の解析を目的とした場合は、Average Nucleotide IdentityおよびCheckM、GTDB-tkで検出されるシングルコピーマーカー遺伝子配列をもとに、同種微生物由来ゲノムと推定される単一生物由来遺伝子情報および既知微生物遺伝子情報を含んだゲノムセットを作成する。続いて、特定遺伝子の有無、遺伝子座、共通遺伝子配列の変異、など各ゲノム間の差異をBLAST、hmmerなどの相同性検索ツールによって特定・抽出する。特徴的なゲノム間差異に基づいたクラスタリングを行うことで、同種微生物の株レベルでの分類もしくは同株微生物の亜株レベルでの分類を行う。
【0110】
(実施例3:多様な細胞の中から特定の特徴を有する細胞のデータを選択的に獲得したい場合)
腸内細菌などの動物共生微生物や海洋・土壌微生物の中で、当業者が注目する特定の1種以上の微生物のゲノムデータを獲得することが目的であった場合には、ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルまたはゲルカプセルより回収した増幅核酸に対し、事前に標的とする微生物の遺伝子断片の有無を事前確認しておくことで、不要な遺伝子配列データ取得とそれにかかるコストを削減することができる。測定対象例としては、同一系統微生物の比較解析(例えば、疾患等に関連する微生物系統群における亜種の解析)や特定の遺伝子(例えば、微生物の生産する二次代謝産物や酵素)を有する微生物の探索、あるいは多系統の生物種を含む中から細菌・アーキア・真菌・その他真核細胞等を個別に選択して解析することなどを目的とした場合が想定される。特に、ホストであるヒトの腸内環境や口腔、皮膚環境の評価を目的として、特定の代謝機能を担う腸内細菌、口腔細菌を遺伝子から特異的に検出することや、皮膚細菌における亜種の検出することなどが想定される。
【0111】
(実施例4:ホストDNAなどが多量に混在する場合)
解析試料が、糞便、唾液、喀痰や皮膚、口腔、鼻腔、耳、生殖器などの拭い液、手術洗浄液、あるいは組織抽出物や血液であり、当該試料中に含まれる微生物を解析対象とした場合には、試料中に多くのホスト動物由来の細胞、細胞内小器官、核酸が含まれる。これらの一部も、ゲルカプセル内部に封入されポリヌクレオチド増幅が実行されうる。このため、増幅ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルに対し、事前に標的とする微生物の遺伝子断片あるいはホスト由来の遺伝子断片の有無を確認しておくことで、ホスト由来のポリヌクレオチドを含む不要な遺伝子配列データ取得を避け、それにかかるコストを削減することができる。測定例としては、ヒト由来試料からの微生物検出、例えば、血液や喀痰からの病原性微生物の探索や組織内部に共生する微生物解析などが想定される。
【0112】
あるいは、ホスト由来のポリヌクレオチドを積極的に解析することで、微生物叢の複合的な解析に応用することもできる。
【0113】
例えば、消化管に存在する腸内細菌叢と宿主動物は、宿主が消化管という細菌叢定着のための嫌気的環境を提供すると同時に、腸内細菌叢は宿主の健康に影響を及ぼすという共生関係を持つことが知られている。例えば、ホストの健康状態への影響として、大きなものは栄養素の産生と感染症に対する防御・免疫系の発達などが挙げられる。また、他の例を挙げると、炎症性腸疾患は、遺伝的素因に加え、腸内細菌を初めとする腸内環境因子の異常が相まって起こる疾患である。
【0114】
このような病態等については、ホスト自体の遺伝子情報等の解析と、腸内微生物叢、つまり細菌、ウイルス、真菌とを含めた統合的解析と、宿主生理機能への作用機序を明らかにすることが必要であり、本開示の技術はこれらに寄与し得る。また、腸内微生物叢と種々の疾患の病態との関わりや、代謝産物を中心とした機能解析も、ホスト自体の遺伝子情報等も含めて解析することでより深化した解析を行うことができる。
【0115】
また、腸管においては、腸内細菌と生体側は栄養素を競合して取り合う関係である一方、生体のために腸内細菌は栄養素の代謝や分解も併せて行うことで、より統合的な解析を行うことができる。このように、腸内細菌に由来する代謝物がどのような働きを示すかについてはホスト側の、遺伝子解析、メタボローム解析や生化学的解析等も交えて複合的に解析し、腸内細菌の機能については細菌のゲノム配列情報から機能を類推し、生成する代謝物との相関を見ることができる。
【0116】
(実施例5:遺伝子変異の単一細胞単位での評価)
ゲノム配列上の変異多様性を単一細胞単位で評価し、微生物叢中の各微生物のゲノム不均質性や変異系統の発生や進展の追跡を実行することができる。増幅ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルに対し、標的とする細胞の標的遺伝子変異箇所を選択的に増幅・検出することで、解析対象とする遺伝子配列データのみを特異的に取得し、それにかかるコストを削減することができる。遺伝子変異微生物やプラスミド感染の検出などに利用できる。
【0117】
(実施例6:特定生物種の保存性評価)
薬剤、農薬、食品などで、特定の生物種を包含することを立証する、あるいは棄却することが目的であった際に、本開示技術を用いることで特定生物を増幅ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルから検出・選抜することで、その含有率を示すことができる。また得られた遺伝情報を詳細に解析することで、標品とのゲノムレベルでの一致度、保存性などを評価することができる。微生物製剤等の品質保証などに利用が想定される。
【0118】
具体的な手順としては、標的遺伝子を対象とした(1)BLAST、hmmerを用いた単一生物由来遺伝子配列の相同性検索、もしくは(2)BWA、bowtie2を用いた単一生物由来シーケンスデータのマッピングによって、単一生物由来遺伝子配列と標的遺伝子配列の差異を検出し、遺伝子変異を特定する。
【0119】
(実施例7:特定生物種の検出)
解析試料が、糞便、唾液、喀痰や皮膚、口腔、鼻腔、耳、生殖器などの拭い液、手術洗浄液、あるいは組織抽出物や血液などであり、特定の1種以上の微生物の存在を検知し、薬剤奏効性、薬剤耐性を判定することや食品の代謝能力を評価することがある。本開示技術を用いることで特定生物を増幅ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルから検出・選抜することで、その含有率を示すことができる。また得られた遺伝情報を詳細に解析することで、ゲノムレベルでの機能推定と保存性などを評価することができる。
【0120】
例えば、マウス腸内微生物の単一細胞由来配列データを得た場合、食物繊維イヌリンを代謝する遺伝子あるいは微生物Bacteroides種を特定する遺伝子マーカーを元に、単一生物由来遺伝子配列の相同性検索を行うことで、当該食品イヌリンの分解を担う微生物および遺伝子群を特定し、既知遺伝子の相同性、アミノ酸配列に基づく立体構造予測からその機能を推定することができた。また、複数の腸内微生物の単一細胞由来配列データ中での当該微生物種の占める比率(含有率)までを評価することができた。
【0121】
(実施例8:土壌細菌の評価)
土壌や海水を解析試料の対象とした場合には、本開示の技術を用いて土壌や海水に生息する種々の特定生物を、増幅ポリヌクレオチドを含むゲルカプセルから検出・選抜することで、その生息区域の特定や生息量を示すことができる。また得られた遺伝情報を詳細に解析することで、当該土壌や海水に適した栽培品種や畜産または養殖品種などをゲノムレベルで評価することができる。さらに土壌細菌または海洋細菌を用いた無農薬製法などにも利用が想定される。
【0122】
具体的には、10gの土壌を容量50mLのチューブ(2342-050, Iwaki)に採取し(n=3)、リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Dulbecco’sPhosphate-Buffered Saline, 14190-144, Thermo Fisher Scientific)を全量が40mLとなるまで加えて十分に懸濁した。懸濁後のチューブを氷上にて5分間静置した後、上清を新しい容量50mLのチューブに移した。上清を5μm径のフィルター(SMWP04700,Sigma-Aldrich)を用いて濾過した後、10,000×gで5分間遠心分離し(75004263, Thermo Fisher Scientific)、上清を除去した。ペレットを10mLのPBS中に再度懸濁し、1.5mLのチューブ(MCT-150-C,Axygen)に1mLずつ分注した後、10,000×gで5分間遠心分離することで土壌細菌を集菌した。菌体のペレットを1本の1.5mLのチューブにまとめ、PBSを用いて2回遠心分離により洗浄した後、PBS中に懸濁することで土壌細菌の細胞懸濁液を取得した。調製した細胞懸濁液中の細胞濃度を測定し(顕微鏡:CKX41,OLYMPUS、バクテリア計算盤A161,2-5679-01, アズワン)、終濃度1.5%になるように超低融点アガロース(A5030-10G,Sigma-Aldrich)を加えることで、ゲルカプセル作製に用いる土壌細菌懸濁液を調製した(細胞終濃度:1.5×103cells/μL)。続いて、実施例1または2に記載した手法と同様の手順で解析を進めて評価した。
【0123】
(実施例9:水圏微生物組成の解析)
実験は、4Lの海水または淡水を滅菌済のポリタンクに回収し、5μm径のフィルター(SMWP04700, Sigma-Aldrich)を用いて濾過したのち、0.22μm径のフィルター(GSWP04700,Sigma-Aldrich)で濾過することによって細菌画分をフィルター上にトラップした。0.22μm径のフィルターを、10mLのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Dulbecco’sPhosphate-Buffered Saline, 14190-144, Thermo Fisher Scientific)を含んだ容量25mLのチューブ(2362-025,Iwaki)内に入れ、十分に懸濁した。10mLの細菌懸濁液を1.5mLのチューブ(MCT-150-C, Axygen)に1mLずつ分注した後、10,000×gで5分間遠心分離することで海水または淡水由来の細菌を集菌した。菌体のペレットを1本の1.5mLのチューブにまとめ、PBSを用いて2回遠心分離により洗浄した後、PBS中に懸濁することで海水または淡水由来の細菌の細胞懸濁液を取得した。調製した細胞懸濁液中の細胞濃度を測定し(顕微鏡:CKX41,OLYMPUS、バクテリア計算盤A161,2-5679-01, アズワン)、終濃度1.5%になるように超低融点アガロース(A5030-10G,Sigma-Aldrich)を加えることで、ゲルカプセル作製に用いる海水または淡水由来細菌懸濁液を調製した(細胞終濃度:1.5×103cells/μL)。続いて、実施例1または2に記載した手法と同様の手順で解析を進めて評価した。
【0124】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本開示の具体的な好ましい実施形態の記載から、本開示の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2019年4月26日に出願された特許出願2019-85836に対して優先権主張をするものであり、同出願の内容自体は具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示は、生物学的研究、医療、環境、ヘルスケアなどの分野において利用可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0126】
配列番号1:フォワードプライマー
配列番号2:リバースプライマー
【配列表】