(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20241111BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20241111BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20241111BHJP
F16K 31/40 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
F16K37/00 F
F16K31/06 305Z
H01F7/16 R
H01F7/16 Z
H01F7/16 D
F16K31/40 A
(21)【出願番号】P 2022036648
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成川 文太
(72)【発明者】
【氏名】安本 祐太
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228503(JP,A)
【文献】特開2002-250468(JP,A)
【文献】特開2019-007572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16K 31/06
H01F 7/16
F16K 31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口及び流出口が形成され、その間に弁座及び弁室が形成された弁本体と、
前記弁本体内に設けられ、内部が前記弁室側と連通されるとともに外気と遮断されたパイプと、
前記弁室内に配置され前記弁座と接離可能とされる弁体と、
前記パイプ内を上下に摺動するように配置され、前記弁体を前記弁座と接離する方向に移動させるプランジャと、
前記プランジャを駆動するためのコイルが巻回されたソレノイドと、
前記プランジャに取り付けられた磁石と、
前記弁本体
内における前記パイプの外側、かつ前記プランジャの軸方向の上方に位置し、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、
を備えた電磁弁。
【請求項2】
前記プランジャは円筒形状であり、
前記磁石は、前記プランジャの孔の上端部分に挿入されて固定されている、
請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記パイプと前記弁本体を連結する磁性ステンレス製の吸引子を有し、
前記吸引子と前記プランジャとの間に圧縮コイルばねが配置されている、
請求項
2に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁の異常や故障を検知可能な電磁弁が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-291887号公報
【文献】特公昭52-36287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電磁弁では、プランジャ駆動用のコイルの電流波形を見ることで異常を検知しているが、プランジャ自体の位置は検知していない。
【0005】
特許文献2の電磁弁では、別途設けたコイルで異常を検知しているが、プランジャ自体の位置は検知していない。
【0006】
本開示は上記事実を考慮し、プランジャの位置を検知して故障検知を実現できる電磁弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る電磁弁は、流体の流入口及び流出口が形成され、その間に弁座及び弁室が形成された弁本体と、前記弁室内に配置され前記弁座と接離可能とされる弁体と、前記弁本体内に配置され、前記弁体を前記弁座と接離する方向に移動させるプランジャと、前記プランジャを駆動するためのコイルが巻回されたソレノイドと、前記プランジャに取り付けられた磁石と、前記弁本体に設けられ、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、を備えている。
【0008】
この電磁弁では、ソレノイドのコイルに通電を行うことで、一例として、弁体を弁座から離間する方向に弁体を移動させることができ、これにより、流体を流入口から流出口へ流すことが可能となる。
【0009】
プランジャには磁石が取り付けられているので、プランジャが移動すると、磁石と弁本体に設けられた磁気センサとの距離が変化し、磁気センサで検出される磁石の磁束密度が変化する。
【0010】
例えば、弁体を移動させるプランジャが、弁座から弁体が離間する方向に移動することで磁石が磁気センサに接近するように構成した場合、磁気センサで検出した磁束密度が大きい場合にはプランジャが弁座から弁体が離間する方向に移動した状態であることが検知できる。また、磁気センサで検出した磁束密度が小さい場合には、プランジャが弁座へ弁体を移動した状態であることが検知できる。
したがって、この電磁弁では、コイルへの通電とプランジャの位置との関係から、電磁弁の故障の検知を実現できる。
この電磁弁では、コイルへの通電に関係なくプランジャの位置の検知を行うことができる。
【0011】
第2の態様に係る電磁弁は、流体の流入口及び流出口が形成され、その間に弁座及び弁室が形成された弁本体と、前記弁室内に配置され前記弁座と接離可能とされる弁体と、前記弁本体内に配置され、前記弁体を前記弁座と接離する方向に移動させるプランジャと、前記プランジャを駆動するためのコイルが巻回されたソレノイドと、前記弁本体に設けられ、前記プランジャを通過した前記コイルの磁束密度を検出する磁気センサと、を備えている。
【0012】
この電磁弁では、ソレノイドのコイルに通電を行うことで、一例として、弁体を弁座から離間する方向に弁体を移動させることができ、これにより、流体を流入口から流出口へ流すことが可能となる。
【0013】
プランジャが移動すると、弁本体に設けられた磁気センサとプランジャとの距離が変化するので、磁気センサが設置された部位において、プランジャを通過したコイルの磁束密度が変化する。
【0014】
例えば、弁体を移動させるプランジャが、ソレノイドのコイルに通電を行うことで、弁体が弁座に接触する方向に移動し、プランジャが磁気センサから離間するように構成された電磁弁の場合、磁気センサで検出した磁束密度が予め設定した値以下である場合には、弁体が弁座へ接触する方向にプランジャが移動していることが検知できる。また、コイルへの通電時に磁気センサで検出した磁束密度が予め設定した値を超えている場合には、弁体が弁座から離間する方向にプランジャが位置している、即ち、プランジャが正規の位置にないことが検知できる。
【0015】
第3の態様は、第1の態様に係る電磁弁において、前記プランジャは円筒形状であり、前記磁石は、前記プランジャの孔の上端部分に挿入されて固定されている。
【0016】
この電磁弁では、プランジャを円筒形状とし、磁石をプランジャの孔の上端部分に挿入して固定しているので、円柱形状としたプランジャに比較して軽量化することができる。
【0017】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1態様に係る電磁弁において、内部が前記弁室側と連通されるとともに外気と遮断されたパイプを有し、前記プランジャは、前記パイプ内を上下に摺動するように配置され、前記磁気センサは、前記パイプの外側に配置されている。
【0018】
プランジャを、弁室側と連通され、外気とは遮断されたパイプ内に配置したので、弁室の流体が外気へ漏れることが無い。
磁気センサをパイプの内部に配置すると、磁気センサの信号を出力する配線を通す孔をパイプに形成し、パイプ内の流体が外気に漏れないように孔と配線との間をシール材等で塞ぐ必要があるが、磁気センサをパイプの外側に配置することで、該シールを必要とせず、構成が簡単になる。
【0019】
第5の態様は、第4の態様に係る電磁弁において、前記パイプと前記弁本体を連結する磁性ステンレス製の吸引子を有し、前記吸引子と前記プランジャとの間に圧縮コイルばねが配置されている。
【0020】
磁性ステンレス製の吸引子を設けると、ソレノイドのコイルに通電を行うことで、吸引子及びプランジャが磁化し、両者間に磁力吸引力が発生し、プランジャが圧縮コイルばねの弾発力に抗して圧縮される。ソレノイドのコイルへの通電が停止されると、電磁吸引力が無くなり、プランジャは圧縮コイルばねの弾発力により吸引前の元の位置に戻される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本開示の電磁弁によれば、プランジャの位置を検知して電磁弁の故障の検知を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の両方を開いた全開状態(ソレノイドに通電しない状態)を示すものである。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の双方を閉じた全閉状態(ソレノイドに通電した状態)を示すものである。
【
図3】第1の実施形態に係る電磁弁の故障診断の制御を説明するフローチャートである。
【
図4】本開示の第2の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の両方を開いた全開状態(ソレノイドに通電しない状態)を示すものである。
【
図5】本開示の第2の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の双方を閉じた全閉状態(ソレノイドに通電した状態)を示すものである。
【
図6】本開示の第2の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の両方を開いた全開状態(ソレノイドに通電しない状態)を示すものである。
【
図7】本開示の第2の実施形態に係る電磁弁の構成を説明する縦断面図であり、パイロット弁及び主弁の双方を閉じた全閉状態(ソレノイドに通電した状態)を示すものである。
【
図8】第3の実施形態に係る電磁弁の故障診断の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
図1、及び
図2を用いて、本開示の第1の実施形態に係る電磁弁100について説明する。
ここで、
図1は、本実施形態に係る電磁弁100の構成を説明する図で、全開状態を示すものであり、
図2は、全閉状態を示すものである。なお、以下の実施形態の説明においては、上下・左右・内外の方向は、
図1及び
図3の紙面内における方向を示すものであり、これによって本開示の技術的範囲を狭める解釈が為されるものではない。
【0024】
本実施形態の電磁弁100は、弁本体30内に主弁部10及びパイロット弁部20を備えた自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いることのできるパイロット式電磁弁であり、主弁部10の開閉により、流体の流入口31と流出口32間の流体の流れを開閉制御する。流入口31と流出口32はバルブボディとしての弁本体30に形成されており、流入口31と流出口32との間には、主弁室33が設けられている。主弁室33内には、後述のように、本開示の弁体の一例である主弁体40が上下に摺動可能に収容されている。当該主弁体40の摺動方向の一方側(図示の実施例では下方)には主弁部10が構成され、他方側(図示の実施例では上方)にはパイロット弁部20が構成されている。弁本体30には、雌ねじ30b、30cが形成されている。弁本体30及び主弁体40は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等のアルミニウム材料により作成されている。
【0025】
電磁弁100の上部中央には、パイロット弁体60を摺動させる円筒状のプランジャ50が、下方に開放したパイプ51内に配置されている。プランジャ50の孔の上端部分には円柱状の磁石102が挿入されて固定されている。磁石102は、一例として、径方向の一方側がS極、反対側がN極に着磁されている。なお、図中の矢印Lmは、磁力線を示している。なお、本実施形態のプランジャ50は、円筒状に形成されているので、円柱状に形成されている場合に比較して、軽量化になる。
【0026】
パイロット弁体60は、プランジャ50に連結されており、プランジャ50と共に上下にパイプ51内を摺動可能に構成されている。つまり、プランジャ50は、ソレノイド70の作動によりパイプ51内を上下に摺動する。ソレノイド70の作動により、プランジャ50を駆動する手段として、吸引子80が設けられている。磁性ステンレス製の吸引子80は、適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド70に通電されると磁化し、吸引子80とプランジャ50との間に配置された圧縮コイルばねであるスプリング52の弾発力に打ち勝ってプランジャ50を下方に吸引する。プランジャ50を収容するパイプ51は、下方に開放しており、かしめ又は溶接等の適宜手段により吸引子80に固定されている。ソレノイド70は、コイル70aが巻回されたボビン70bの周囲を磁性材より形成されたヨーク70cで囲繞することにより構成されている。ヨーク70cの下側(弁本体側)には外側に張り出す張出部70dが形成されている。
【0027】
弁本体30の上部には、ソレノイド70を覆うカバー104が設けられている。
カバー104は、上部が開口しており、上部の開口部は蓋104Aで塞がれている。
カバー104の内部には、プランジャ50の上側に間隔を開けて制御装置としての制御基板106が設けられている。
【0028】
制御基板106の下面には、一例として、磁束密度の強弱を検出する磁気センサ108が設けられており、制御基板106の上面にはマイクロコンピュータ110等の電気部品が搭載されている。このように、磁気センサ108をパイプ51の外側に配置することで、磁気センサ108の信号を出力する配線を通す孔をパイプ51に形成し、パイプ51内の流体が外気に漏れないように孔と配線との間をシール材等で塞ぐ必要はなく、構成が簡単になる。
【0029】
本実施形態の磁気センサ108はホール素子であるが、ホール素子以外の磁気センサ、一例として、磁気抵抗素子等を用いることもできる。
【0030】
マイクロコンピュータ110は、磁気センサ108で検出した磁束密度の強弱から、プランジャ50の位置を検知することができる。即ち、磁石102が磁気センサ108に近い位置にある場合には磁束密度が強くなるのでホール出力電圧が高くなり、磁石102が磁気センサ108から遠い位置にある場合には磁束密度が弱くなるのでホール出力電圧が低くなるので、ホール出力電圧を計測することで、磁石102の近い遠い、即ち、プランジャ50の位置を検知することができる。
【0031】
本実施形態では、磁気センサ108がプランジャ50の軸方向の上方に位置している。
カバー104の側部には、制御基板106の電気回路と空調システムの外部機器(図示せず)とを電気的に接続するための雌コネクタ112が設けられている。外部機器とは、一例として、自動車用空調機のエアコンECUである。制御基板106と外部機器との間では、電気信号の送受信が行われる。制御基板106は、外部機器からの指示により、ソレノイド70への通電の制御(一例としてオン、オフ)を行うことができる。
【0032】
吸引子80は、全体的には上下に貫通孔が形成された多段の筒形状をしており、パイプ51が取り付けられる。この状態で、吸引子80は弁本体30に形成された上部大径穴部30aに挿入あるいは螺着され、その後、パイプ51の外周に挿入されたソレノイド70の張出部70dに形成された貫通孔に雄ねじ71を挿入し、これを弁本体30に形成された雌ねじに螺合することにより、吸引子80は弁本体30に押え付けられ、固定される。吸引子80の筒形状は概略では上部の小径部81と下部の大径部82とから成り、小径部81にパイプ51の下側開放端が固定されており、大径部82は前述のように弁本体30に固定されている。小径部81に固定されたパイプ51にはプランジャ50が上下に摺動可能に収納される。
【0033】
吸引子80の大径部82には、その内側に円筒状の主弁体収容部(空間部)82aが形成され、この主弁体収容部82a内に主弁体40が上下に摺動可能に収容されている。当該空間が主弁体40により上下に分割されることにより、当該空間の下部が主弁室33となり上部がパイロット弁室34とされている。吸引子80の大径部82の外側は、適宜Oリング83により弁本体30との間がシールされ、大径部82の内側は、大径部82内を摺動する主弁体40の外周面(吸引子80と摺動する部分)との間が適宜主弁体シーリング43によりシールされ、冷媒の漏出がないように構成されている。
【0034】
なお、上述した様に構成されることで、パイプ51の内部は、パイロット弁室34側とは連通されているが、外気とは遮断されている。
【0035】
本開示の図示した実施例においては、吸引子80の小径部81と大径部82とを一つの部材として段差を介して一体構造の円筒形状部材を構成しているが、勿論、実施形態によっては、図示はしないが、小径部81と大径部82とを別部材により構成して、適宜手段により両者を固定するものでも良い。要は、ソレノイド70への通電により、吸引子80がプランジャ50を吸引して駆動できれば良い。本開示においては、プランジャ50を吸引駆動し、主弁体40を上下摺動可能に収容する部材を吸引子として称している。吸引子80が一つの部材により構成されているか、又は、複数の部材により構成されているかが問題ではない。
【0036】
主弁部10は、主弁体40の下側に取り付けられた主弁パッキン41と、弁本体30の流入口31と流出口32との間に形成された主弁座35により構成されており、パイロット弁部20は、パイロット弁体60の下方に取り付けられたパイロット弁パッキン61と、主弁体40の上側に形成されたパイロット弁座42によって構成されている。主弁体40には、パイロット通路45と均圧孔44が形成されている。パイロット通路45の端部に、パイロット弁座42が設けられている。均圧孔44は、主弁室33とパイロット弁室34とを連通するものであり、該均圧孔44の断面積はパイロット通路45の断面積よりも小とされている。
【0037】
この均圧孔44の形成により、主弁室33とパイロット弁室34とを均圧化し、主弁体40の開閉作動を容易・円滑化する。また、主弁部10が閉状態において、当該電磁弁100に接続された図示されない圧縮機からの急激な圧力変化、例えば圧縮機を起動させたときに対しても速やかに主弁室33の冷媒をパイロット弁室34に流出させ主弁部10が開弁しないように、又は、開弁し難くする作用を奏するものである。
【0038】
この電磁弁100においては、弁本体30と主弁体40とはアルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材料で構成し、吸引子80を磁性ステンレスで構成している。そして、主弁体40の全体、あるいは主弁体40の、少なくとも吸引子80の主弁体収容部82aと摺動する面はアルマイト加工処理層で構成している。
【0039】
(作用、効果)
次に、電磁弁100の動作について、該電磁弁100が冷凍サイクルに適用されている場合を例にとり、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は、ソレノイド70(コイル70a)へ通電されていない状態を示している。この場合、吸引子80には吸引力は発生しないから、スプリング52の弾発力により、プランジャ50はパイプ51内を上方に持ち上げられ、パイロット弁部20は開状態とされている。また主弁体40は、主弁体スプリング46の弾発力により主弁室33内で上方に持ち上げられ、主弁部10は開状態とされている。
【0040】
この状態で、圧縮機(図示なし)を運転すれば、流入口31から、主弁室33内で開いている主弁部10を介し、流出口32を通じて例えば高温高圧の冷媒が流れる。また、主弁室33から均圧孔44を経由してパイロット弁室34に流れる冷媒の量よりも、パイロット弁室34からパイロット通路45を経由して主弁室33に流れる冷媒の量の方が大きいので、パイロット弁室34の圧力が主弁室33の圧力よりも小さくなって主弁体40には上方へ作用する力が発生し、主弁体スプリング46の弾発力と共に主弁部10は十分な開状態を保持し、流入口31から流出口32への流れが維持される。
【0041】
次に、
図1に示す状態でソレノイド70に通電すると、吸引子80及びプランジャ50が磁化し、両者間に電磁吸引力が発生して、プランジャ50がスプリング52の弾発力に抗して引き下げられる。プランジャ50には、下方に、パイロット弁体60が一体的に固定されているので、パイロット弁体60はプランジャ50の移動と同じくパイプ51内を上下に摺動する。吸引子80による吸引力により、プランジャ50が引き下げられ、それと共にパイロット弁体60も下方に摺動される。これにより、パイロット弁体60の下方に設けられたパイロット弁パッキン61が主弁体40の上方側に形成されたパイロット弁座42に当接し、
図2に示すように、パイロット弁部20を閉状態とする(すなわちパイロット通路45を閉塞する)。
【0042】
パイロット通路45が閉塞されると、パイロット弁室34と主弁室33とを連通する通路が均圧孔44だけとなり、両弁室の圧力差がなくなる。そしてさらに、プランジャ50が主弁体40を下方に押し下げられてその最下点まで摺動すると、主弁体40の下方側に形成した主弁パッキン41が弁本体30内に形成された主弁座35に当接して主弁部10を閉状態とする。これにより、
図2に示すように、主弁部10も閉状態とされ、冷媒等の流体は、流路が閉じられて流入口31から流出口32への流れが阻止される。
【0043】
次に、
図2に示す状態で、ソレノイド70への通電が停止されると、ソレノイド70による吸引子80の電磁吸引力が無くなり、プランジャ50はスプリング52の弾発力により上方へ押し上げられ、プランジャ50と共にパイロット弁体60が上方に移動して、パイロット弁パッキン61が主弁体40の上面側に設けたパイロット弁座42から離れてパイロット弁部20が開状態となり、
図3に示す状態となる。
【0044】
これにより、主弁体40の中心部に設けたパイロット通路45を介して、パイロット弁室34が流出口32と連通され、パイロット弁室34内の圧力が高圧から低圧へ移行する。
【0045】
これにより、主弁体40は上方に移動して、主弁体40の下面側に固定した主弁パッキン41が主弁座35から離れて、開弁状態となり、
図1の状態となる。
【0046】
(プランジャの位置検出)
本実施形態の電磁弁100では、外部機器からのソレノイド70への通電のON、OFFの指示により、プランジャ50が移動する。しかし、ソレノイド70への通電、及び通電の停止を行っても、何らかの原因でプランジャ50が移動しない場合がある。
【0047】
本実施形態では、以下のようにしてプランジャ50の位置を検出し、電磁弁100の故障診断を行うことができる。以下、
図3に示すフローチャートにしたがって、電磁弁100の故障診断について説明する。
【0048】
ステップ100では、ソレノイド70(コイル70a)へ通電されていない状態(通電OFF)であり、開弁状態(
図1参照)となっている。
【0049】
ステップ102では、磁気センサ108で検出した磁束密度の大小(差異)を判断する。具体的には、磁束密度が予め設定した設定値を超えていると判断した場合には、磁石102が磁気センサ108に接近している、即ち、プランジャ50が上方に移動しており、主弁パッキン41が主弁座35から離れて主弁部10が開弁状態となっていると判断する。
【0050】
一方、磁束密度が予め設定した設定値以下であると判断した場合には、磁石102が磁気センサ108から離れているため、プランジャ50が、ソレノイド70への通電を停止した際の正規の位置にないと判断する。
ここで言う正規の位置にないとは、例えば、プランジャ50が
図2に示すように下方に移動している状態(主弁パッキン41が弁本体30内に形成された主弁座35に当接して主弁部10が閉状態)である。
【0051】
ステップ102で主弁部10が開弁状態となっていると判断するとステップ104へ進み、主弁部10が閉弁状態となっていると判断するとステップ116へ進む。ステップ116では、一例として、図示しない表示装置等を用い、外部機器等は電磁弁100が故障していることをユーザーに通知することができる。
【0052】
ステップ104では、主弁部10を開弁状態から閉弁状態とするためにソレノイド70へ通電が行われる。
【0053】
次のステップ106では、磁気センサ108で検出した磁束密度の大小を判断する。ここで、磁束密度が予め設定した設定値以下であると判断した場合には、プランジャ50が下方に動いたことになるのでステップ108へ進む。一方、磁束密度が予め設定した設定値を超えていると判断した場合には、ソレノイド70へ通電されてもプランジャ50が下方に動いていないことになるのでステップ116に進み、外部機器に故障を通知する。
【0054】
次のステップ108では、主弁部10を閉弁状態から開弁状態とするためにソレノイド70への通電が停止される。
【0055】
次のステップ110では、磁気センサ108で検出した磁束密度の大小を判断する。ここで、磁束密度が予め設定した設定値を超えていると判断した場合には、磁石102が磁気センサ108に接近しており、プランジャ50が上方に動いたことになり、主弁部10が開弁状態となっていることになるので、ステップ112へ進む。
【0056】
一方、磁束密度が予め設定した設定値以下であると判断した場合には、磁石102が磁気センサ108から離間しており、ソレノイド70への通電が停止されてもプランジャ50が上方に動いていないことになり、主弁部10が閉弁状態となっていることになるので、ステップ116に進み、外部機器に故障を通知する。
【0057】
次のステップ112では、外部機器から故障診断の停止指示を受け、ステップ114では故障診断の停止指示を受けたか否かが判断される。ステップ114で故障診断の停止指示を受けたと判断した場合には処理を終了し、故障診断の停止指示を受けていないと判断した場合にはステップ100へ戻り、故障診断を続ける。
【0058】
本実施形態の電磁弁100では、以上説明した故障診断を行うことで、プランジャ50の位置を検知して、電磁弁100の故障を検知、ここでは、主弁部10の開閉状態を検知することができる。また、本実施形態の構成とした電磁弁100は、磁気センサ108で磁束密度を検出することで、ソレノイド70への通電、非通電に関係なく、プランジャ50の位置を常時検知することが可能である。
【0059】
また、本実施形態の電磁弁100では、磁石102の磁束密度の大小を磁気センサ108で検出するという簡単な構成で、電磁弁100の故障を検知することができる。
【0060】
なお、ソレノイド70の磁力線が、磁気センサ108の磁石102の磁束密度の検出に影響する場合、一例として、
図1に示すように、ソレノイド70の上方に、電磁鋼板などからなる磁気シールド116を設けてもよい。
【0061】
[第2の実施形態]
図4、及び
図5を用いて、本開示の第2の実施形態に係る電磁弁100について説明する。
【0062】
本実施形態の電磁弁100では、第1の実施形態とは、制御基板106、及び磁気センサ108の位置が異なっている。
本実施形態では、第1の実施形態よりも制御基板106の位置が下方に位置しており、制御基板106の中央部分をパイプ51の上端部分が貫通している。
【0063】
第2の実施形態で用いる磁石102は、上下方向の一方側がS極、他方側がN極となるように着磁されており、磁気センサ108は、磁力線がLmが磁気センサ108を通過するようにパイプ51の側部に接近した位置に設けられている。
【0064】
本実施形態の電磁弁100も、第1の実施形態と同様に、プランジャ50の位置によって磁気センサ108で検出する磁石102の磁束密度が変化するので、第1の実施形態と同様にして電磁弁100の故障を検知することができる。
【0065】
[第3の実施形態]
図6~
図8を用いて、本開示の第3の実施形態に係る電磁弁100について説明する。
図6では、主弁部10の開弁状態を示しており、
図7では、主弁部10の閉弁状態を示している。
【0066】
本実施形態の電磁弁100では、第1の実施形態、及び第2の実施形態とは異なり、プランジャ50に磁石102が設けられていないが、
図6の矢印で示すように、磁気センサ108がソレノイド70の磁力線Lmを検知するように構成されている。
【0067】
以下、
図8に示すフローチャートにしたがって、電磁弁100の故障診断の一例について説明する。
【0068】
ステップ200では、主弁部10を
図6に示す開弁状態から
図7に示す閉弁状態とするために、ソレノイド70へ通電(ON)が行われる。
【0069】
次のステップ202では、ソレノイド70へ通電(ON)が行われている状態で、磁気センサ108で検出した磁束密度の大小を判断する。
【0070】
ここで、磁束密度が予め設定した設定値を超えていると判断した場合には、プランジャ50が上方に位置している、即ち、プランジャ50がソレノイド70へ通電(ON)時における正規の位置になく、主弁部10が開弁状態になったままでいることになるのでステップ206に進み、外部機器に故障を通知する。
【0071】
一方、磁束密度が予め設定した設定値以下であると判断した場合には、プランジャ50が下方に移動して主弁部10が閉弁状態となっていることになるのでステップ204に進む。
【0072】
ステップ204では、主弁部10を閉弁状態から開弁状態とするためにソレノイド70への通電が停止(OFF)される。
【0073】
次のステップ208では、外部機器から故障診断の停止指示を受けたか否かが判断され、故障診断の停止指示を受けたと判断した場合には処理を終了し、故障診断の停止指示を受けていないと判断した場合にはステップ200へ戻り、故障診断を続ける。
【0074】
本実施形態の電磁弁100では、以上説明した故障診断を行うことで、ソレノイド70へ通電して、プランジャ50が正規の位置に動いたか否かを検知することができる。
また、本実施形態の電磁弁100では、プランジャ50を通過したソレノイド70の磁束密度の大小を磁気センサ108で検出するという簡単な構成で、電磁弁100の故障を検知することができる。
【0075】
[その他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0076】
上記実施形態では、電磁弁100がパイロット式電磁弁であり、パイロット式電磁弁のプランジャ50に磁石102を取り付けて該プランジャ50の位置を検知したが、パイロット弁が設けられていない通常の電磁弁のプランジャに磁石102を取り付けて、該プランジャの位置を検知してもよいのは勿論である。
【0077】
なお、制御装置としての制御基板106は、外部機器への故障の通知、ソレノイド70に対する通電のオン、オフを制御する他に、電圧異常、温度異常(ソレノイド70の温度を測定する温度センサを設けた場合)、ソレノイド70のコイル断線などの異常を検知することも可能であり(On Board Diagnostics(車両の自己診断)対応)、低負荷時には通電する電流値を下げるなど、消費電力の低減も実現できる。
【符号の説明】
【0078】
30 弁本体
31 流入口
32 流出口
33 主弁室
35 主弁座(弁座)
40 主弁体(弁体)
50 プランジャ
51 パイプ
52 スプリング(圧縮コイルばね)
70 ソレノイド
70a コイル
80 吸引子
100 電磁弁
102 磁石
108 磁気センサ