(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】薄膜集電体を含む全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241111BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241111BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20241111BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/64 A
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2022561185
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(86)【国際出願番号】 KR2021009519
(87)【国際公開番号】W WO2022019694
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091625
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】フェ・ジン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュ・チョ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139966(WO,A1)
【文献】特開2019-114406(JP,A)
【文献】特開2004-335455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/0587(
H01M 4/00 - 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、固体電解質層、及び負極を含む全固体電池
の製造方法であって、
前記負極は厚さ5μm未満の集電体からなり、前記集電体は前記固体電解質層と直接接触し、
前記集電体は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金
属からなる群から選択される少なくとも1種以上からなり、
前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含み、
前記集電体は前記固体電解質層と一緒に熱処理されたものであ
り、
S1)離型フィルムに集電体用金属を蒸着して集電体を形成する段階と、
S2)前記段階S1)の集電体を固体電解質層に転写し、熱処理して電極組立体を形成する段階と、を含み、
前記熱処理は、40℃~200℃の温度、6時間~48時間の時間で行われる、全固体電池
の製造方法。
【請求項2】
前記集電体はリチウム金属を含んでいない、請求項1に記載の全固体電池
の製造方法。
【請求項3】
前記段階S2)の後に、または前記段階S2)の熱処理の前に、前記離型フィルムを除去する段階を含む、請求項
1または2に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記S2)段階で転写と熱処理とは同時に遂行する、請求項
1から3のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記離型フィルムは、前記金属が蒸着される蒸着面がコーティングまたは表面処理される、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項6】
前記S1)段階の蒸着は、真空蒸着法、化学蒸着法、化学気相蒸着法、及び物理蒸着法のうちのいずれか一つである、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年7月23日付の韓国特許出願第2020-0091625号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は薄膜集電体を含む全固体電池及びその製造方法に関する。具体的には、薄膜集電体を使って全固体電池の全体容量を増大させながら前記集電体と固体電解質との間の界面抵抗を改善するための薄膜集電体を含む全固体電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電解液を使用する二次電池は、充放電の際に消耗する電解液によって寿命が短縮されるか、電解液の漏液または燃焼によって過熱するか爆発する問題がある。
【0004】
二次電池の安全性を向上させるために、ヒューズや保護回路などの安全装置を備えるなどの多様な方案が考慮された。前記の問題を解決するために、液相電解液を固相に変更した全固体電池が提示されている。
【0005】
全固体電池は、既存の二次電池と違い、固体電解質を含む固体電解質層の両面に正極及び負極が形成され、前記固体電解質層が分離膜の役割も果たす。
【0006】
全固体電池は、液相の電解液の代わりに、固体電解質を使うので、温度変化による電解液の蒸発または外部衝撃による漏液がなくて爆発及び火災に対して安全である。しかし、前記全固体電池は、液体電解質を使う二次電池よりイオン伝導度が低く、正極、負極、及び固体電解質層の間の界面形成が容易でなくて界面抵抗が高い欠点がある。このような問題によって全固体電池は寿命及び出力が落ちる欠点がある。
【0007】
【0008】
図1に示すように、従来技術によるリチウム二次電池は、正極集電体11及び前記正極集電体11の両面にコーティングされた正極活物質層12を含む正極10と、固体電解質層20と、負極集電体31及びその両面にコーティングされた負極活物質層32を含む負極30とを含む。
図1とは違い、負極は、リチウム二次電池の全体容量を増やすために、別途の負極活物質層32なしに、負極集電体を単独であるいはリチウム金属を用いるリチウムプレーティング及びストリッピング技法で形成することもできる。
【0009】
従来技術によるリチウム二次電池は、電池の上部及び下部から圧力Fをかけて正極10、固体電解質層20及び負極30の間の界面抵抗を減らす。前記正極10、固体電解質層20、及び負極30が均一ではない場合、押圧のみで界面抵抗を減少させにくく、界面抵抗が異なる部分で充電中にリチウムデンドライト成長によるショートが発生することもある。特に、高エネルギー密度の達成のために正極の容量が増えるのに伴い、充電の際に蒸着するリチウムの量も比例して増加し、よってショート発生の確率が高くなる。
【0010】
一方、電池のエネルギー密度を増加させるために、リチウムプレーティング/ストリッピング(Li plating/stripping)を用いた電池の研究が持続されている。ここで、使われる集電体は一般的に10μm前後の厚さを有するので、更なる薄膜化によるエネルギー密度の改善が必要である。
【0011】
特許文献1は、伝導性、電子伝導性、及びリチウムイオン伝導性を向上させるために、正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を押圧しているが、充電中のリチウムデンドライトによる単位セルのセルショート現象を防止する点に対しては認識していない。
【0012】
特許文献2も、界面抵抗を減少させるために、正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を押圧しているが、充電中のリチウムデンドライトによる応力を減少させて単位セルの安全性を向上しようとする点に対しては認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開第2018-181451号公報
【文献】特開第2019-200890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであり、集電体として薄膜集電体を使いながらも前記集電体を使う電極と固体電解質層との間の界面抵抗を減少させることを目的とする。
【0015】
また、本発明は薄膜集電体を使って電池の大きさ対比容量を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記のような目的を達成するために、本発明による全固体電池は、正極、固体電解質層、及び負極を含み、前記正極または負極は厚さ5μm未満の集電体からなり、前記集電体は前記固体電解質層と直接対面することができる。
【0017】
前記集電体はリチウム親和性を有する金属を含むことができる。
【0018】
ここで、前記リチウム親和性を有する金属は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属、及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上とすることができる。
【0019】
ここで、前記集電体はリチウム金属を含んでいないことが好ましい。
【0020】
前記集電体は前記固体電解質層と一緒に熱処理されることができる。
【0021】
また、前記集電体は蒸着及び転写過程によって形成されることができる。
【0022】
前記全固体電池は、ニッケル-カドミウム、ニッケル-マンガン、ニッケル-水素、または金属空気電池のように、リチウム金属を使わなくてもよい。
【0023】
本発明は、前記全固体電池のうちのいずれか一つを製造するための方法であって、S1)離型フィルムに集電体用金属を蒸着して集電体を形成する段階と、S2)前記段階S1)の集電体を固体電解質層に転写し、熱処理して電極組立体を形成する段階とを含むことができる。
【0024】
また、前記段階S2)の後に、または前記段階S2)の熱処理の前に、前記離型フィルムを除去する段階を含むことができる。
【0025】
また、前記S2)段階で転写と熱処理とは同時に遂行することができる。
【0026】
前記離型フィルムは、前記金属が蒸着される蒸着面がコーティングまたは表面処理されることができる。
【0027】
前記S1)段階の蒸着は、真空蒸着法、化学蒸着法、化学気相蒸着法、及び物理蒸着法のうちのいずれか一つとすることができる。
【0028】
本発明は、前記全固体電池を含むバッテリーモジュールまたはバッテリーパックを含むことができる。また、前記全固体電池が装着されたデバイスを含むことができる。
【0029】
本発明は、前記のような構成のうち互いに相反しない構成を一つまたは二つ以上選んで組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上で説明したように、本発明による全固体電池は薄膜集電体を固体電解質層と一緒に熱処理して界面抵抗を減少させて全固体電池の性能を向上させる。
【0031】
また、集電体の厚さが小さいので、全固体電池の大きさ対比容量が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図3】本発明による全固体電池の製造方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0034】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0035】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0036】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0037】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、A及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0038】
また、すべての数値範囲は、はっきりと除くという記載がない限り、両端の値とその間のすべての中間値とを含む。
【0039】
本発明による全固体電池は、正極、固体電解質層、及び負極を含み、前記正極または負極は厚さが5μm未満の集電体からなっており、前記集電体が前記固体電解質層と直接対面している。
【0040】
【0041】
本発明による全固体電池は、正極100が厚さ5μm未満の正極集電体110からなり、前記正極集電体110が前記固体電解質層200と直接対面しており、負極が厚さ5μm未満の負極集電体300からなり、前記負極集電体300が前記固体電解質層200と直接対面していることができる。他の方法として、正極100及び負極が共に厚さ5μm未満の電極集電体からなり、前記電極集電体が前記固体電解質層200と直接対面していることができる。いずれも薄膜集電体を使わない正極及び負極が可能であるが、以下では
図2に基づいて負極にのみ薄膜集電体を使う場合を基準に説明する。薄膜集電体を正極にも適用することができるというのは言うまでもない。
【0042】
図2に示すように、本発明による全固体電池は、正極集電体110及び正極集電体110の少なくとも一面にコーティングされている正極活物質層120を含む正極100と、固体電解質層200と、負極集電体300からなる負極とを含む。前記正極は、正極集電体110及び前記固体電解質層200と対面する正極活物質120からなり、前記負極は負極集電体300の少なくとも一面に塗布されている負極活物質層からなる場合もあるが、前記正極及び前記負極が共に電極集電体からなる場合も可能である。
【0043】
前記正極100は、例えば、正極集電体110に正極活物質粒子から構成された正極活物質、導電材、及びバインダーが混合された正極合剤を塗布して正極活物質層120を形成する方法で製造することができ、必要に応じては、前記正極合剤に充填剤をさらに添加することができる。また、前記正極100は、
図2とは違い、正極集電体110のみを使うこともできる。
【0044】
前記正極集電体110は、一般的に3μm~500μmの厚さを有するように製造される。ただ、前記正極集電体110のみを前記固体電解質層と一緒に熱処理する場合、前記正極集電体110の厚さは5μm未満とすることができる。
【0045】
前記正極集電体110は、当該電池に化学的変化を引き起こさないながら高導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びアルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀で表面処理したものから選択される1種を使うことができ、特にアルミニウムを使用することができる。集電体は、その表面に微小凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0046】
前記正極活物質層120内に含まれる正極活物質は、例えば、前記正極活物質粒子の他に、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物または1種またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1)、またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などから構成されることができが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記正極活物質層120は前記正極集電体110の少なくとも一面に位置することができる。ここで、前記正極集電体110を本発明の集電体に代替する場合、前記正極活物質層120は前記正極集電体110の前記固体電解質層200と対面する面にのみ位置することができる。
【0048】
前記導電材は、通常正極活物質を含む混合物総重量を基準に0.1重量%~30重量%添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさないながら導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などを使うことができる。
【0049】
前記正極100に含まれるバインダーは活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に役立つ成分であり、通常正極活物質を含む混合物総重量を基準に0.1~30重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0050】
前記固体電解質層200は有機固体電解質や無機固体電解質などを使うことができるが、これらにのみ限定されるものではない。また、前記固体電解質層はポリテトラフルオロエチレン(PTEF:Polytetrafluoroethylene)のようなバインダーをさらに含むことができる。
【0051】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを使うことができる。
【0052】
前記無機固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質を例として挙げることができる。
【0053】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、Li3+xPO4-xNx(LiPON)、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、またはLi4SiO4-LiI-LiOHなどのLiの窒化物、ハロゲン化物などを使うことができる。
【0054】
前記硫化物系固体電解質は本発明で特に限定されなく、リチウム電池分野で使用する公知のすべての硫化物系材料が可能である。前記硫化物系材料は、市販のものを購入して使うか、非晶質硫化物系材料から結晶化工程で製造したものを使うことができる。例えば、前記硫化物系固体電解質は、結晶質硫化物系固体電解質、非晶質硫化物系固体電解質、及びこれらのうちのいずれか1種またはこれらの組合せを使うことができる。使用可能な複合化合物の例としては、硫黄-ハロゲン化合物、硫黄-ゲルマニウム化合物、硫黄-シリコン硫化物があり、具体的にはSiS2、GeS2、B2S3などの硫化物を含むことができ、Li3PO4、ハロゲン、ハロゲン化合物などが添加されることができる。好ましくは、10-4S/cm以上のリチウムイオン伝導度を具現することができる硫化物系電解質を使うことができる。
【0055】
代表的には、Li6PS5Cl(LPSCl)、チオ(Thio)-LISICON(Li3.25Ge0.25P0.75S4)、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li3PS4、Li7P3S11、LiI-Li2S-B2S3、Li3PO4-Li2S-Si2S、Li3PO4-Li2S-SiS2、LiPO4-Li2S-SiS、Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、及びLi7P3S11を含む。
【0056】
本発明による負極が負極集電体300のみを使うか前記正極100が正極集電体110のみを使用する場合、負極集電体300の少なくとも一面に負極活物質を塗布した負極を使うことができる。
【0057】
前記負極として負極集電体の少なくとも一面に負極活物質を塗布した負極を使う場合、前記負極集電体300は、一般的に3μm~500μmの厚さを有することができる。このような負極集電体300は当該電池に化学的変化を引き起こさないながら導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅またはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使うことができる。また、正極集電体110と同様に、表面に微小凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使うことができる。
【0058】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使うことができる。
【0059】
前記負極として負極集電体300のみを使用する場合、前記負極集電体300は厚さが5μm未満であり、前記負極集電体300は前記固体電解質層200と直接対面している。
【0060】
前記負極集電体300はリチウム親和性を有する金属を含むことができる。前記リチウム親和性を有する金属は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属、及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物からなる群から選択される物質のうちの少なくとも一つ以上とすることができる。
【0061】
前記負極集電体300がリチウム親和性を有する金属を有することにより、前記全固体電池の内部で発生するリチウムデンドライトの形成位置を調節することができる。
【0062】
前記負極集電体300は固体電解質層200と一緒に熱処理されることができる。前記負極集電体300が前記固体電解質層200と一緒に熱処理される場合、前記負極集電体300と前記固体電解質層200との間の界面抵抗が減少する。ここで、前記負極集電体300は別に形成された後、前記固体電解質層200と一緒に熱処理されるので、前記負極集電体300と前記固体電解質層200とは互いに反応しない。もちろん、前記負極集電体300をすぐ固体電解質層200に蒸着することも可能である。
【0063】
前記正極集電体110または負極集電体300はリチウム金属を含まなくてもよい。これは、前記正極集電体110または負極集電体300の厚さが5μm未満の点を考慮してみると、リチウムデンドライトの形成を調節しても、固体電解質層200が損傷してショートが発生する可能性があるからである。したがって、前記全固体電池は、ニッケル-カドミウム、ニッケル-マンガン、ニッケル-水素、金属空気電池のように、リチウム金属を使わない全固体電池とすることができる。
【0064】
図3は本発明による全固体電池の製造方法の模式図である。
【0065】
図3のように、本発明による全固体電池は、S1)離型フィルム320に集電体用金属310を蒸着して集電体を形成する段階と、S2)前記段階S1)の集電体を固体電解質層200に転写
し、熱処理して電極組立体を形成する段階と、S3)前記電極組立体から離型フィルム320を除去する段階とを含む。
【0066】
前記集電体用金属310は前述した正極集電体または負極集電体として使用された金属を使うことができる。集電体用金属310として使用可能な正極集電体として使用された金属及び負極集電体として使用された金属については先に説明したので省略する。
【0067】
前記離型フィルム320は公知のすべての離型フィルムを使うことができる。一例として、前記離型フィルム320は、前記集電体用金属310を蒸着するときに損傷がなく、前記集電体用金属310を剥離するときに残余物が残らないように、表面粗さが低く、容易に剥離可能な物質であれば、いずれも使うことができる。例えば、前記離型フィルム320は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate copolymer)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene vinyl alcohol copolymer)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)などの合成樹脂フィルム、金属箔などからなることができる。
【0068】
前記離型フィルム320は、前記集電体用金属310を剥離するときに残余物が残らないように、少なくとも集電体用金属310の対向面にコーティングまたは表面処理を施したものとすることができる。前記表面処理の一例としては、プラズマ処理、スルホン化処理のような表面改質処理またはシリコン処理、長環式アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を挙げることができる。また、前記離型フィルム320は、前記電極組立体から離型フィルム320を除去するS3)段階を遂行しないようにするために、熱処理などによって蒸発する材料を使うこともできる。
【0069】
また、前記離型フィルム320は、前記集電体用金属310を取り外す工程を容易に遂行するために、両面の接着力を異にすることができる。ここで、前記集電体用金属310の対向面の接着力がその反対面の接着力より弱くてもよい。
【0070】
前記S1)段階の蒸着は、真空蒸着法、化学蒸着法、化学気相蒸着法、及び物理蒸着法、物理気相蒸着法、熱蒸着法、電子ビーム蒸発法、及びスパッタリング法のうちで選択することができるが、これに限定されるものではなく、当該技術分野で使われる多様な蒸着法を使うことができる。
【0071】
前記S2)段階では、前記集電体を固体電解質層200に転写し、熱処理することで、電極組立体を形成する。ここで、前記転写と熱処理とは同時に遂行することができる。前記転写はロールプレスのような装置を用いることができる。ここで、ロールプレスは加熱及び押圧を同時に遂行することができる。
【0072】
ここで、前記集電体及び前記固体電解質層200に印加される温度は40℃~200℃とすることができ、詳細には、前記温度は100℃~150℃とすることができる。前記温度が40℃未満の場合、集電体と固体電解質層200との間の接触が所望の程度に至らなく、200℃を超える場合、副反応などによる物質の変性、またはバインダーの性能減少による接着力減少、または固体電解質層200の変形のおそれがあるので好ましくない。
【0073】
前記熱処理時間は約6時間~48時間とすることができ、詳細には約12時間~24時間とすることができる。前記時間が6時間未満の場合、熱処理による改善効果が小さいことがあり、48時間以上の場合、工程性が低下するので好ましくない。
【0074】
ロールプレスの重量は約1トン~約3トンとすることができ、詳細には約1.5~約2トンとすることができる。前記重量が3トンを超える場合、固体電解質層が損傷することがあり、前記重量が1トン未満の場合、前記集電体と固体電解質層200との間の界面抵抗減少の効果が小さいことがある。
【0075】
前記押圧時間は約1分~約24時間とすることができる。ここで、最適の範囲は約1.5分~約2.5分とすることができる。押圧の際、時間が24時間を超えると、固体電解質層200の構造的変形を引き起こすことがあり、押圧の際、時間が1分未満の場合、前記集電体と固体電解質層200との間の界面抵抗減少の効果が小さい。
【0076】
前記S3)段階では、前記電極組立体から離型フィルム320を除去する段階を遂行する。前記離型フィルム320をロールまたは前記離型フィルム320との接着力が良い基材に付着した状態で前記集電体用金属310を剥離させることができる。前記集電体用金属310と対向する前記離型フィルム320の面とその反対面との接着力の差によって前記集電体用金属310が剥離されることができる。また、前記離型フィルム320は、前述したように、熱処理などによって蒸発する材料を使うことにより、前記S2)段階の熱処理によって蒸発することもできる。
【0077】
以下では、本発明による実験例と従来技術による比較例とを比較して本発明を説明する。
【0078】
(実験例1)
PET離型フィルムに1μmの厚さに蒸着してコーティングした銀(製造例1)、PET離型フィルムに2μmの厚さに蒸着してコーティングした銀(製造例2)、PET離型フィルムに1μmの厚さに蒸着してコーティングした金(製造例3)、蒸着しなかった厚さ11μmのニッケルホイル(製造例4)、及び蒸着しなかった厚さ10μmのSUS304ホイル(製造例5)の電気伝導度を比較して下記の表1に示す。前記電気伝導度は、5×5cm2サイズの各サンプルに4点プローブ(4-point probe)装備で測定した。ここで、各部分を25区画に分けて測定した値の平均抵抗値(Rs)を求め、下記のような式を用いて製造例1~製造例5で使用された材料の比抵抗(ρcal)を計算して下記の表1に示した。
【0079】
ρcal=Rs×厚さ(μm)
【0080】
前記電気伝導度は前記比抵抗(ρcal)の逆数として求めることができる。比抵抗値が小さいほど電気伝導度が高いことが分かる。
【0081】
下記の表1で、ρcalは製造例1~製造例5で使用された材料の固有比抵抗値である。
【0082】
【0083】
前記表1を参照すると、製造例1~製造例5による材料の前記式によって計算された比抵抗(ρcal)は固有比抵抗(ρbulk)とほぼ同じ数値に計算されたことを確認することができるので、計算された比抵抗値(ρcal)の信頼度が高いことが分かる。
【0084】
表1に示すように、リチウム親和性の銀を薄膜化した製造例1及び製造例2の場合、一般的なニッケル集電体を使った製造例4の平均抵抗と比較するとき、金を薄膜化した製造例3よりは類似した水準の平均抵抗値を示す。
【0085】
特に、1μm厚さの銀をPET離型フィルムに蒸着した製造例1の場合、非常に小さい厚さにもかかわらず、製造例5のSUS304集電体より平均抵抗が非常に低く測定されたので、製造例1の場合、非常に優れた電気伝導度を示す。
【0086】
したがって、PET離型フィルムにコーティングした銀及びPET離型フィルムにコーティングした金もニッケルやSUS304のように集電体としての役割を果たすことができることが分かる。
【0087】
(実験例2)
前記製造例1の集電体と固体電解質層とを接合した後、熱処理する前と100℃で12時間の間に真空状態で熱処理した後の界面抵抗を測定して表2に示す。
【0088】
前記固体電解質層は固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)とバインダーであるPTFEを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して固体電解質層スラリーを形成し、これをPET離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することで製造した。
【0089】
【0090】
(実験例3)
前記実験例1及び実験例2に基づき、実験例3では、下記の正極、固体電解質層、及び下記の実施例1、比較例1及び比較例2による負極を含む全固体電池を使って実験した。
【0091】
前記正極は、正極活物質であるNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)、導電材であるカーボン、及びバインダーであるPTFEを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して正極スラリーを形成した。前記正極スラリーを厚さ14μmのアルミニウム集電体にドクターブレードで塗布した後、100℃で12時間真空乾燥して正極を製造した。
【0092】
固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)とバインダーであるPTFEを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌して固体電解質層スラリーを形成し、これをPET離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥して固体電解質層を形成した。
【0093】
前記正極、固体電解質層、及び下記の実施例1、比較例1及び比較例2による負極を順に積層して電池を製作した。
【0094】
実験例3では、前記全固体電池を使い、60℃の条件で最初1回の充放電(初期充電:CCで0.05Cで4.25V、0.01Cでカットオフ(cut off)、初期放電:CCで0.05Cで3Vまで放電)し、出力効率及びショート発生率を測定して表3に示す。
【0095】
(実施例1)
実施例1では、製造例1を負極として使用して電極組立体を製造した後、100℃で12時間熱処理した。
【0096】
(比較例1)
比較例1では、製造例4の厚さ11μmのニッケルを積層して負極として使用した点を除き、前記実施例1と同様な方法で電池を製造した。
【0097】
(比較例2)
比較例2では、製造例1を負極として使用して電極組立体を製造した後、別途の熱処理過程を遂行しなかった。
【0098】
【0099】
前記表3を参照すると、実施例1のように熱処理した電池の場合、改善された界面抵抗によって、充電及び放電容量が比較例2の熱処理をしなかった場合より優れていることが現れた。さらに、集電体としてリチウム親和性物質を使うことにより、充電時に発生するショート発生率も低減することができた。
【0100】
また、前記実施例1及び比較例1による集電体を比較すると、実施例1は比較例1に対する厚さの比が最大で約9%であるので、比較例1に比べて厚さが小さいだけでなく、正極50μm及び固体電解質層30μmの場合、比較例1に比べて改善されるエネルギー密度が12.3%であることが分かる。
【0101】
また、本発明は、前記全固体電池を含む電池モジュール、電池パック、及び前記電池パックを含むデバイスを提供する。前記のような電池パック及びデバイスは当該技術分野に公知となっているので、本明細書ではそれについての具体的な説明を省略する。
【0102】
前記デバイスは、例えば、ノートブック型パソコン、ネットブック型パソコン、タブレット型パソコン、携帯電話、MP3プレーヤー、ウェアラブル電子機器、動力工具(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)、電気ゴルフカート(electric golf cart)、または電力貯蔵用システムであることができるが、これらに限定されないというのは言うまでもない。
【0103】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上で説明したように、本発明による全固体電池は、薄膜集電体を固体電解質層と一緒に熱処理して界面抵抗を減少させて全固体電池の性能を向上させる。
【0105】
また、集電体の厚さが小さいので、全固体電池の大きさに比べて容量が増加する。
【符号の説明】
【0106】
10、100 正極
11、110 正極集電体
12、120 正極活物質層
20、200 固体電解質層
30 負極
31、300 負極集電体
310 集電体用金属
32 負極活物質層
320 離型フィルム
F 圧力