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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022576921
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002324
(87)【国際公開番号】W WO2022157949
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518247173
【氏名又は名称】株式会社RABO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊豫 愉芸子
(72)【発明者】
【氏名】伊豫 健夫
(72)【発明者】
【氏名】新田 翔
(72)【発明者】
【氏名】眞嶋 啓介
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0141959(US,A1)
【文献】特開2019-207604(JP,A)
【文献】特開2016-42870(JP,A)
【文献】特開2016-149136(JP,A)
【文献】米国特許第8704668(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが管理する動物の行動種別ごとに、前記行動種別を推定する学習モデルを記憶し、
前記動物に装着されるセンサから測定データを受信し、
前記行動種別のそれぞれについて、前記行動種別に対応する前記学習モデルに前記測定データを与えて前記行動種別が行われたことを推定し、
前記学習モデルのそれぞれの評価値に応じて前記行動種別を決定する、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
少なくとも1つの前記行動種別について、複数の前記学習モデルを記憶し、
前記行動種別のそれぞれについて、対応する前記学習モデルを複数記憶している場合、対応する前記学習モデルのそれぞれに前記測定データを与えて前記行動種別が行われたことを推定し、前記学習モデルの当てはまり度合に応じて、1つの前記学習モデルを選択する、情報処理装置。
【請求項3】
食事の行動種別について、食べ物の種類ごとに前記学習モデルを記憶する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
食事の行動種別について、食べ方の種類ごとに前記学習モデルを記憶する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
食事又は水飲みの少なくとも何れかについて、食事又は水が供給される高さ位置ごとに前記学習モデルを記憶する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
食事又は水飲みの少なくとも何れかについて、食事又は水が供給される容器の深さごとに前記学習モデルを記憶する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記測定データは時系列データであり、
前記行動種別ごとの行動時間の代表値の長さだけ前記測定データを切り出す、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記評価値は、前記学習モデルについての適合率又は再現率である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ペットブームもあいまって、例えば、ネコの飼育数が増加の一途をたどり、プレミアムフードやペット保険などのペット関連サービスや、快適な飼育環境を実現する健康管理やマナー・エチケット関連サービスなどへの需要も今後も高まるであろうと予測されている。
【0003】
このような背景において、例えば、ネコの飼育状況について、飼い主は、多忙ゆえに、家族同然に考えているネコに留守番をさせている時間が長く、観察する時間や手段がないために、不安を抱えている。また、獣医師も「普段の状態」を問診以外で知るすべがない。このように、飼い主は、ネコの見ることができない時間が多い、という課題を抱えている。
【0004】
例えば、飼い犬に加速度センサを固定し、センサから取得される測定データを基に、犬の活動状態(静止中、歩行中、激しい運動)といった情報を算出し、飼い主に提供する、といった技術が公開されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-217928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術は、短時間の平均的なトレンド周波数に基づいて、活動量を示すことを実現しているものの、飼い主が長時間家を空けたときの活動状態、また、ペットの体調が悪くなったときに、獣医師が必要とするような健康状態を示す情報を得ることは難しい。
【0007】
また、特にネコの場合においては、動きが小刻みであり、上下方向に移動も活発であるので、その意味においても、短時間的なトレンドデータのみに基づく情報把握が難しい。
【0008】
そこで、本発明は、ペット、特にネコについて、その活動状態を把握することが可能な、見守り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の実施形態は、情報処理装置であって、ユーザが管理する動物の行動種別ごとに行動種別を推定する複数の学習モデルを記憶し、動物に装着されるセンサから測定データを受信し、測定データを学習モデルに与えて行動種別が行われたことを推定し、学習モデルの評価値に応じて行動種別を決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペット、特にネコについて、その活動状態を把握することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態によるシステムの構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態による、宅内におけるネコの活動状態のセンシングを説明する概念図である。
図3】本発明の第1の実施の形態によるサーバの機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態によるサーバの制御部の詳細を示した機能ブロック図である。
図5】本発明の第1の実施の形態によるサーバのストレージの詳細を示した機能ブロック図である。
図6】本発明の第1の実施の形態による行動データ管理テーブルの例である。
図7】本発明の第1の実施の形態による基本データ管理テーブルの例である。
図8】本発明の第1の実施の形態による行動データ提供処理の例を示したフローチャートの例である。
図9】本発明の第1の実施の形態による行動データ生成処理の例をしたフローチャートである。
図10】本発明の第1の実施の形態によるユーザ端末のユーザインターフェースの例を示した図である。
図11】本発明の第1の実施の形態によるネコの動作をトラッキングする処理を概念的に示した図である。
図12】本発明の第2の実施の形態によるシステムの構成図である。
図13】本発明の第2の実施の形態による行動データ提供処理の例を示したフローチャート図である。
図14】本発明の他の実施の形態によるシステム構成図を示す図である。
図15】本発明の実施の形態による画面表示例である。
図16】本発明の実施の形態による画面表示例である。
図17】本発明の実施の形態による画面表示例である。
図18】本発明の実施の形態による画面表示例である。
図19】本発明の実施の形態による行動種別の分析の流れについての説明図である。
図20】行動種別の判定処理についての説明図である。
図21】行動種別の判定処理についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態によるサーバは、以下のような構成を備える。
[項目1]
ユーザが管理する動物の行動種別ごとに前記行動種別を推定する複数の学習モデルを記憶し、
前記動物に装着されるセンサから測定データを受信し、
前記測定データを前記学習モデルに与えて前記行動種別が行われたことを推定し、
前記学習モデルの評価値に応じて前記行動種別を決定する、
情報処理装置。
[項目2]
食事の行動種別について、食べ物の種類ごとに前記学習モデルを記憶する、
項目1に記載の情報処理装置。
[項目3]
食事の行動種別について、食べ方の種類ごとに前記学習モデルを記憶する、
項目1又は2に記載の情報処理装置。
[項目4]
食事又は水飲みの少なくとも何れかについて、食事又は水が供給される高さ位置ごとに前記学習モデルを記憶する、
項目1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
[項目5]
食事又は水飲みの少なくとも何れかについて、食事又は水が供給される容器の深さごとに前記学習モデルを記憶する、
項目1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
[項目6]
前記測定データは時系列データであり、
前記行動種別ごとの行動時間の代表値の長さだけ前記測定データを切り出す、
項目1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
[項目7]
前記評価値は、前記学習モデルについての適合率又は再現率である、
項目1乃至6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0013】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態によるサーバによるサービスの提供方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態によるサービス提供システムの構成図である。
【0014】
図1に示すように、サービス提供システムは、サービスを提供するサーバ1と、サーバ1に、インターネット等のネットワークを介して接続される、通信端末2とユーザ端末3とを含む。また、サーバ1は、ネットワークを介して分析サーバ4と接続している。図1には、説明の便宜のために、各々1つの通信端末2、ユーザ端末3及び分析サーバ4が図示されているが、各々複数の端末が、本システムのネットワークに接続可能である。
【0015】
サーバ1は、サービスを、アプリケーションを介してユーザ端末3に対して提供することができる。ユーザ端末3は、アプリケーションをサーバ1または別のサーバからダウンロードし、このアプリケーションを実行し、ブラウザ等のウェブページの閲覧ソフトウェアを介してサーバ1にアクセスすることで、サーバ1と情報を送受信することでき、また、サービスを受けることが可能となる。
【0016】
通信端末1は、動物、例えばネコ6に装着された加速度センサ5と近距離無線通信を行うことで、センサから測定データを取得することができる。より具体的には、まず、図2に示すように、ネコ6に対し、首輪状(またはペンダント状)のウェアラブルデバイスが取り付けられる。ウェアラブルデバイスには、加速度センサ及び/または温度センサ5が内蔵される。センサ5は、測定データをBLUETOOTH(登録商標) LAW ENERGY(BLE)等の近距離無線通信を通じて、同じ宅内に設置される受信装置7に送信し、受信装置7は、ルータ等の通信端末2に測定データを転送し、通信端末2は、測定データを、ネットワークを介してサーバ1に送信する。なお、センサ5は、測定データ等をBLUETOOTH(登録商標) LAW ENERGY(BLE)等の近距離無線通信を通じて、ユーザ端末3に直接送信することとしてもよい。ここで、受信装置7は、一例として、Linux(登録商標)ベースのオペレーションシステムを搭載し、また、気温を測定する温度センサ等各種センサを搭載することができる。しかしながら、組み込みのチップセット等、OSを搭載しないものであってももちろんよい。
【0017】
加速度センサ5は、図2に示すように、互いに直交する3軸方向(x軸、y軸、z軸方向)の加速度を検出するセンサであり、ネコの首部に装着する首輪に内蔵される。図2に示すように、ネコの前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向と定義し、ネコの動きに応じて各方向の加速度信号が検出できるよう首輪をネコに取り付ける。センサの種類はこれに限らず、ジャイロセンサやモーションセンサ等、ネコの動きに関する情報を取得できるあらゆるセンシング装置を採用可能である。
【0018】
図1に戻り、ユーザ端末3として、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはスマートフォン、タブレット、携帯端末、その他情報端末等であってもよい。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施の形態によるサーバ1の機能ブロック図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。
【0020】
図示されるように、サーバ1は、データベース(図示せず)と接続されシステムの一部を構成する。サーバ1は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、或いはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0021】
サーバ1は、少なくとも、制御部10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13、入出力部14等を備え、これらはバス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0022】
制御部10は、サーバ1全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部10はCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ12に格納されメモリ11に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0023】
メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、サーバ1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0024】
ストレージ12は、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベース(図示せず)がストレージ12に構築されていてもよい。
【0025】
送受信部13は、サーバ1をネットワークに接続する。なお、送受信部13は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インターフェースを備えていてもよい。
【0026】
入出力部14は、キーボード・マウス類等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。
【0027】
バス15は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達する。
【0028】
<制御>
図4は、本発明の第1の実施の形態によるサーバの制御部10の詳細を示した機能ブロック図である。上述の通り、制御部10において、本実施の形態に係るサービスに関するアプリケーション・プログラムの実行がされ、この実行されるプログラムのモジュールは、図示のとおり、いくつかの機能ブロックに分けられる。また、サーバの本制御部で実行される機能ブロックの全部又は一部は、その性質に応じて通信端末2(または受信装置7)の(図示しない)制御部によって実行することも可能である。
【0029】
まず、測定データ検出部21は、センサ5によって検出され、通信端末2を介して送信された測定データを、サーバ1の送受信部13を介して受信する。受信された測定データは、サーバ1に内蔵されるストレージ12の測定データ格納部31に格納される。または、図1において示す、分析サーバ4に内蔵されるストレージに格納することもできる。
【0030】
次に、行動データ生成部22は、受信した測定データを基に、図1において示す、分析サーバ4と連携しながら(または、本行動データ生成部22における単独の処理によって)、ネコの行動データを生成する。また、行動データ管理部23は、生成された行動データを行動データ格納部32に格納し、管理する。
【0031】
ここで、行動データとは、行動データ格納部32に格納される、図6に示す行動データ管理テーブル600に含まれる、運動データ、睡眠データ、食事データ、トイレデータ、位置データ等を含む。より具体的には、運動データとして、運動の有無、時間とともに1日においてどれくらいの活動をしているのかといった集計データ、睡眠データとして、睡眠の有無と時間とともに1日においてどれくらいの睡眠をしているのかといった集計データ、食事データとして、食事行動の有無と時間とともに食事を何回食べたか、いつ食べたかといった集計データ、トイレデータとして、トイレ行動の有無と時間とともにトイレを何回したか、いつしたかといった集計データ、が挙げられる。また、位置データとして、どの方向に移動したか、どの位置にいたか、その他のデータとして、水を何回飲んだか、いつ飲んだか等が挙げられる。また、図示しないが、計測時のネコの体温、また、ネコのいる室温等周辺環境に関するデータを取得し、格納することができる。なお、行動データには他にも、ネコがけいれんしていることを示すけいれんデータ、ネコが咳をしたことを示す咳データ、ネコが身体を掻いている(かゆみを感じている)ことを示すかゆみデータ、ネコがくしゃみをしたことを示すくしゃみデータ、ネコが嘔吐したことを示す嘔吐データなどを含めることができる。
【0032】
また、基本データ管理部24は、ネコの基本情報を管理する。基本データとは、基本データ格納部33に格納される、基本データ管理テーブル700に含まれる、ネコの名前、種類、年齢、性別、居住地(エリア)、健康情報、飼い主情報等を含む。健康情報としては、通院歴、病歴等が挙げられ、また、飼い主情報としては、飼い主の性別、年齢、職業等の情報が挙げられる。
【0033】
その他、制御部10は、ユーザ端末3のディスプレイに表示される画面を構成するデータを生成する、表示制御部25を有する。
【0034】
<処理の流れ>
図8は、本発明の第1の実施の形態による行動データ提供処理の例を示したフローチャートの例である。本処理は、例えば、サーバ1のメモリ11に格納されたプログラムを制御部10において実行することで実現される。本処理は、例えば、行動データ生成部22が実行するようにすることができる。
【0035】
まず、サーバ1の制御部10の測定データ検出部21は、通信端末2から、ネコに装着された加速センサ5によって測定された測定データを、送受信部13を介して受信する(S101)。
【0036】
次に、行動データ生成部22は、測定データを分析する。測定データの分析手順は、図9において詳述する。そして、行動データ生成部22は、測定データの分析に基づいて、行動データ(運動データ、睡眠データ、食事データ、トイレデータ、位置データ)を生成し(S102)、行動データ管理部23は、生成された行動データを、計測または生成された時間とともに、行動データ格納部32に格納される行動データ管理テーブル600を更新する。
【0037】
行動データ管理部23は、格納された行動データを参照し、ネコが一定期間(例えば、1日)当たりに所定の行動を行った回数及び日時を集計し(S103)、集計された行動データを送信する(S104)。
【0038】
<行動データの生成>
図9は、本発明の第1の実施の形態による行動データ生成処理の例をしたフローチャートである。本処理は、図1に示す、サーバ1と接続する分析サーバ4によって実行することも可能である。
【0039】
まず、行動データ生成部22は、測定データ検出部21において検出された測定データを確認する(S201)。
【0040】
続いて、行動データ生成部22は、測定データを基に行動種別を判定する(S202)。行動種別の判定方法は、いくつかの既知の行動分析方法によって実現し得るが、例えば、加速度センサ5から得られたxyz軸方向の加速度データ(Gx、Gy、Gz)を、ウェーブレット変換を用いて、振動をもった信号を時刻毎に周期と振幅に分解し、各々の時刻における信号の周期性を行動スペクトルとして認識し、スペクトルの類似性に従って、事前に登録した行動要素と比較することで行動を分類することができる。
【0041】
事前に登録した行動要素の情報が無い場合は、新しい行動要素として認識し、後述の異常行動を示すデータとして、例えば、獣医師に提供することができる。または、例えば、加速度センサ5から得られた加速度データをフーリエ変換し、時間軸に沿って算出される周波数成分の平均値やピーク値を、同じまたは別のネコの行動種別(運動、睡眠、食事、トイレ等)に対応する既知の周波数と比較することで行動を特定したり、加速度成分を高速フーリエ変換(FFT)することにより算出された周波数成分を基に、特徴的な波形やスペクトル値を抽出し、同じまたは別のネコの行動種別(運動、睡眠、食事、トイレ等)に対応する既知の特徴的波形またはスペクトル値と比較することで、行動を特定することができる。また、加速度センサで算出される、各軸方向の姿勢(θx、θy、θz)からネコの姿勢を把握することで、行動種別を推測することもできる。
【0042】
行動種別が判定されると、行動データ生成部22は、行動種別を示すデータを行動データとして、測定データを測定した日時(または受信した日時、行動データを生成した日時)とともに生成する(S203)。
【0043】
<行動種別の分析>
次に、行動種別の分析の流れについて、図19を参照して更に説明を行う。すなわち、加速度センサ5から加速度データを取得し(S221)、加速度データに基づいて前処理を行い、特徴量を生成し(S222)、特徴量から行動種別を判定する(S223)。
【0044】
<前処理(S222)>
図19のステップS222における前処理では、例えば、加速度データを統計処理した統計量を算出することができる。また、前処理では、上述したウェーブレット変換により得られたスペクトルデータやフーリエ変換等により得られた周波数成分データを算出することができる。これらの統計量、スペクトルデータ、周波数成分データなどを特徴量とすることができる。
【0045】
前処理では、3軸加速度の統計量、重力加速度の統計量、差分系列の統計量、姿勢(確度)情報の統計量、周波数データを特徴量として作成することができる。
【0046】
前処理では、加速度データを異なる長さの時間単位で切り出して特徴量とすることができる。例えば、3秒、12秒、60秒など複数の時間の長さで加速度データからデータを切り出して特徴量とすることができる。データの切り出しは、上記のような複数の長さのウィンドウをずらしながら行うローリング特徴量の作成とすることができる。切り出したデータの各種統計量や切り出したデータそのものに基づいて、ウェーブレット変換やフーリエ変換等により求めた成分データなどを求め、これを特徴量とすることもできる。また、ネコの位置が変化しているか否かのようなダミー変数を作成して特徴量として用いることもできる。
【0047】
また、自己相関係数を特徴量とすることもできる。例えば、ネコが前足の毛繕いをする場合と、背中の毛繕いをする場合とでは、周期が異なる(前足の方が周期が早い)ため、自己相関係数や周波数データを特徴量とすることにより、毛繕いの行動種別を前足を行っている場合に効く特徴量と、背中を行っている場合に効く特徴量との両方を求めることができる。
【0048】
また、3軸加速度の中で、1つ又は2つの加速度のみに基づいて周波数成分を計算し、特徴量とすることもできる。例えば、上方向(z方向)の低周波成分を特徴量として切り出すことにより、ネコが上を向いているのか、下を向いているのかを推定することができる。なお、このような周波数成分を用いた一般的な手法により、ネコの姿勢の継続又は変化を特定し、特定した姿勢の継続又は変化を特徴量として用いることもできる。例えば、食事の皿が床に置かれるような状況であれば、下を向いた状態が継続することで食事の判定を行うことも可能となり、水飲みを皿からではなく、給水管等から行うような状況であれば、上を向いた状態が継続することで水飲みの判定を行うことも可能となる。
【0049】
切り出す時間の長さは、分析しようとする行動種別の行動を継続する長さとすることができる。行動種別の長さは、例えば、ネコについて観察した、行動種別(例えば、水を飲む、食事をする、毛繕いする、歩く、走るなど)ごとの継続時間に基づいて設定することができる。行動種別の継続時間の観察は、複数のネコについて行うようにしてもよい。行動種別の長さは、例えば、複数回観察した継続時間の平均値や中央値、所定長の時間単位に丸めた値の最頻値などの代表値とすることができる。また、行動種別ごとに、多く観察された長さのグループ(例えば、1から5秒程度継続したものと、7から17秒程度継続したものと、50から70秒継続したものなど)ごとに代表値を決定し、複数の長さを設定するようにしてもよい。行動種別ごとによく観察される特徴的な長さが存在するため、この長さで切り出したデータを特徴量とすることにより、行動種別を精度良く予測することが可能となる。
【0050】
また、差分系列の統計量として、とくにネコの前後方向(X)及び左右方向(Y)の統計量を特徴量として用いることができる。食事や水飲みの時には、一定時間同じ向きを見ることが多く、この差分系列の統計量は小さくなりやすい。このような統計量を特徴量として用いることにより、動きの少なさが生じやすい行動種別を精度良く区別することが可能となる。
【0051】
また、あるモデルの推定値や確度(特定の行動種別の行動が行われた確率)を他のモデルの特徴量とすることもできる。例えば、水飲みモデルの推定結果及び/又は確度を、食事モデルに特徴量として与えるようにすることもできる。
【0052】
<行動種別の判定処理(S223)>
図20及び図21は、ステップS223における行動種別の判定処理の説明図である。
【0053】
サーバ1は、図21に示すように、行動種別ごとに、特徴量に基づいて当該行動種別が行われたかどうかを判別する分類器(学習モデル)を複数記憶する学習モデル記憶部242を備えることができる。図21では一例として、「食事」、「水飲み」、「毛繕い」、「走る」、「歩く」の5つの行動種別のそれぞれについて2つのモデルが登録されていることを示しているが、行動種別はこれら5つに限られない。例えば、上述した、「睡眠」や「トイレ」、「けいれん」、「かゆみ」、「くしゃみ」、「嘔吐」などの行動種別を含めることもできる。また、行動種別ごとに3つ以上のモデルが登録されてよく、行動種別によって異なる数のモデルが登録されていてよい。また、全ての行動種別について複数のモデルを登録せず、一部の行動種別については1つのモデルだけが登録されていてもよい。さらに、複数の行動種別に対応付けて、複数の行動種別の中から1つを特定する分類器の学習モデルを登録することもできる。
【0054】
学習モデル記憶部242に登録される各モデルは、機械学習により学習済みの学習モデルとすることができる。機械学習の手法は問わない。例えば、ディープラーニング等のニューラルネットワークを用いるようにしてもよいし、サポートベクターマシンや決定木などを用いるようにしてもよいし、ロジスティック回帰モデルや重回帰モデルを用いるようにしてもよい。
【0055】
行動種別の判定処理ではまず、行動種別ごとに、当該行動種別に対応する学習モデルに特徴量241を与えて行動種別を推定する(S231)。特徴量241は、上述した前処理(S222)において作成された各種の特徴量である。なお、もちろん学習モデルによって使用する特徴量は異なってよい。学習モデルに特徴量を与えることにより、対応する行動種別であること(又は行動種別でないこと)の確からしさ(確度、当てはまりの良さ)を計算することができる。
【0056】
次に、行動種別ごとに、もっとも当てはまりの良いモデルを選択する(S232)。行動種別に対応する全てのモデルで当該行動種別が行われたことが推定されなかった場合には、モデルを選択しなくてよい。図21の例では、「食事」について「食事モデル1」、「水飲み」について「水飲みモデル1」、「毛繕い」について「毛繕いモデル2」が選択されており、「走る」及び「歩く」についてはモデルが選択されていない。
【0057】
そして選択された各モデルの評価指標に応じてモデルを選択し、選択したモデルが推定した行動種別を判定処理の判定結果として選択する(S233)。図21の例では、適合率(precision)の最も高い「水飲みモデル1」に対応する「水飲み」が判定結果244として選択されている。なお、評価指標は、再現率(recall)を用いるようにしてもよい。また、図21には記載されていないものの、評価指標として正解率(accuracy)、特異率(specificity)、F値(F-measure)などを用いるようにしてもよい。
【0058】
また、評価指標に加えて、各モデルの推定についての確度(行動種別の行動が行われた確率)を考慮するようにしてもよい。例えば、モデルによる推定の確度(当該行動種別の行動が行われた確率)が所定値(例えば90%等任意の閾値とすることができる)以上となった場合には、そのモデルの推定結果を採用するようにしてもよい。例えば、食事モデルにより食事が行われたことが推定されるとともに、水飲みモデルにより水飲みが行われたことも推定された場合に、食事モデルよりも水飲みモデルの方が評価指標(例えば適合率)が大きい場合、行動種別は「水飲み」と判定されるところ、食事モデルの確度が90%以上である場合には、「食事」と判定するようにすることができる。この場合、所定値以上の確度のモデルの中から、評価指標に応じて選択するようにすることもできる。これにより、例えば、ネコの個体差で、水飲みと食事の加速度データが近いネコも存在するところ、食事モデルよりも水飲みモデルの評価指標が大きい場合であっても、食事モデルによる推定の確度が高い(明らかに食事していると推定している)場合には、食事と判定することも可能となる。
【0059】
また、複数のモデルからの推定結果に基づいて、他の行動種別と判定するルールをステップS233に組み入れてもよい。例えば、嘔吐いている動作を検出する嘔吐きモデルと、吐き出す動作を検出する吐き出しモデルとが準備されている場合に、嘔吐いたことと、吐き出したこととの両方が検出された場合に「嘔吐」という行動種別を判定するようにすることができる。
【0060】
また、時間差で推定された行動種別に応じて特定の行動種別を判定するルールをステップS233に組み入れてもよい。例えば、嘔吐きモデルにより嘔吐いていたと推定された後、所定時間以内に、吐き出しが推定されたときに、「嘔吐」の行動種別を判定するようにすることができる。この場合、最終的に判定された行動種別(評価指標に応じて複数の中から選択された1つの行動種別)のみでなく、各モデルについて、いずれかのモデルにより行われたことが推定されたものの履歴を記録するようにし、過去所定時間内に推定されたいずれかの行動種別と、現時点で推定されたいずれかの行動種別との組み合わせから、特定の行動種別の行動が行われたことを推定することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態のサービス提供システムでは、行動種別ごとに複数の学習モデルを用意して同じ行動種別について複数の学習モデルで推定を行い、行動種別ごとに最も当てはまりのよいもの(行動別チャンピオンモデル)を選択するとともに、選択した行動別チャンピオンモデルの中でも最も評価の高いものを選択することで行動種別を判定することができる。
【0062】
本実施形態のサービス提供システムでは、同じ行動種別であっても、細かいグループ分類ができるものや、ネコによって異なる動作グループに分類することができる場合には、グループごとに学習モデルを作成しておくことができる。すなわち、行動種別に関連する、加速度データ以外の特徴量別に学習モデルを作成することができる。
【0063】
例えば、前足の毛繕いと、背中の毛繕いとを異なる学習モデルとして作成及び学習しておき、同じく「毛繕い」の行動種別に対応付けて学習モデル記憶部242に登録しておくことができる。同じ毛繕いであっても、異なる部位の毛繕いでは姿勢や動作スピードが異なることから、同じ加速データに基づいても異なる判断とされるところ、毛繕いの中でも各種のパターン別に学習モデルを作ることで、予測精度を向上することができる。
【0064】
また、ネコによって食事の食べ方が異なることが観察された場合、例えば、食べ散らかすネコと、静かに食べるネコと、興奮して食べるネコとが観察された場合に、ネコをこれらの食べ方でグループ分けし、食べ方のグループごとに学習モデルを作成して、当該グループに分類されたネコからの加速度データ(及びこれに基づいて生成された特徴量、以下同じ。)のみを学習させることができる。これにより、同じ「食事」の行動種別であっても、推定対象のネコの食べ方に応じて精度の高い推定を行うことができる。なお、ネコの食事の食べ方を特徴量として盛り込んだ学習モデルを作成するようにしてもよい。この場合、推定対象のネコの食べ方を設定情報として登録しておき、当該設定情報を特徴量として学習モデルに与えるようにすることができる。
【0065】
また、例えば、「食事」の行動種別の学習時に、食事の種類(ドライキャットフード、缶詰、おやつ等)を特徴量として学習させずに、食事の種類ごとに別の学習モデルを学習させることができる。この場合、学習時には、該当する種類の食事を行ったネコからの加速度データのみから学習を行うようにする。これにより、加速度データ以外の特徴量は判定時に取得できなくても、当てはまりの良いモデルを選択することにより、取得できない特徴量を考慮した推定を行うことができる。なお、食事の種類を学習モデルの特徴量とすることもできる。この場合、飼い主が通常与えている食事の種類を設定情報として登録しておき、当該設定情報を特徴量として学習モデルに与えることができる。
【0066】
また、例えば、ネコが食事が採るときの食器(皿等)が置かれる高さ位置をグループ(例えば、床に置かれたグループ、台に置かれたグループ、机上に置かれたグループ、手から与えたグループなど)に分類し、高さ位置のグループごとに異なる学習モデルを作成して学習を行うことができる。食器が置かれる高さ位置は家庭毎に異なることがあり、食器の高さ位置によって、ネコの食事姿勢も異なることから、食器の高さ位置ごとに学習モデルを作成することにより、食事に関する行動種別をより精度良く区別することが可能となる。なお、食器の高さ位置を学習モデルの特徴量とすることもできる。この場合、通常の食器の高さ位置を設定情報として登録しておき、当該設定情報を特徴量として学習モデルに与えることができる。
【0067】
同様に、ネコが水を飲む位置、すなわち給水手段(水の入った皿や、給水器など)が配置される高さ位置をグループに分類し、グループ毎に異なる学習モデルを作成して学習を行うことができる。食事と同様に、給水手段の位置も家庭毎に異なることがあるので、給水手段の高さ位置(のグループ)ごとに異なる学習モデルを準備することにより、水飲みに関する行動種別をより精度良く識別することが可能となる。また、食事の皿の高さと、給水の高さとが異なるような場合には、この高さ位置を特徴量として用いることにより、水飲みと食事のような似た姿勢が取られうる行動種別を精度良く区別することが期待される。なお、給水手段の高さ位置を学習モデルの特徴量とすることもできる。この場合、給水手段の高さ位置を設定情報として登録しておき、当該設定情報を特徴量として学習モデルに与えることができる。
【0068】
また、食器(皿等)の深さごとに学習モデルを作成して学習を行うこともできる。この場合、食事のための食器の深さと、水飲みのための食器の深さとの両方又は何れか一方ごとに学習モデルを登録することができる。食器の深さによりネコの姿勢が変わり得るため、食器の深さごとに学習モデルを作成することにより、食事や水飲みの行動種別を精度良く推定することができる。なお、食器の深さを特徴量とすることもでき、この場合、食器の深さを設定情報として登録しておき、当該設定情報を特徴量として学習モデルに与えることができる。
【0069】
また、学習モデルは、ネコの個体別の学習モデルを作成して、特定のネコから取得した加速度データのみから学習を行うようにすることもできる。これにより、個体の特徴を学習したモデルを用いて判定処理を行うことができるので、精度向上が期待される。なお、この場合に、個体別の学習モデルと、複数のネコについて学習した学習モデルとの両方に特徴量を与えて当てはまりの良さにより選択するようにしてもよい。
【0070】
また、上記の説明では学習モデルは学習済みであることを想定したが、学習処理を継続するようにしてもよい。この場合、例えば、飼い主から行動種別の入力を受け付けるようにし、飼い主から受け付けた行動種別を教師データとして機械学習を行い、学習モデルをアップデートすることができる。
【0071】
<ユーザインタフェース>
図10は、本発明の第1の実施の形態によるユーザ端末のユーザインターフェースの例を示した図である。
【0072】
例えば、ユーザ端末3の表示装置に表示されるユーザインターフェース用画面において、日時情報(図10においては、月と週の曜日)が表示され、ユーザの飼いネコ(名前は「BURIMARU」)の各行動データが示される。例えば、活発な行動を示す「PLAY」時間が1日において45分、昼寝や微睡を示す「DAY DREAM」時間が7時間、睡眠を示す「SLEEP」が16時間であることを表されている。そして、活動、昼寝、睡眠の内訳が視覚的に理解できるように、1日の長さを示すゲージに対して、各行動が色分けして表示されている。さらに、食事を示す「MEAL」の回数が2回、食事を吐いたことを示す「Vomit」がゼロであることが表されている。本ユーザインターフェース用画面は例示であって、行動データを構成する他のデータ、例えば、各々の行動が行われた日時(例えば、食事の時間)を表示したり、トイレにいった回数等を表示することも可能である。
【0073】
図11は、本発明の第1の実施の形態によるネコの動作をトラッキングする処理を概念的に示した図である。ペットの中で、特にネコの特徴的な動作として、上下方向に軽快に移動することが挙げられる。こうした動作はネコの健康状態を測る一つのバロメータになったり、飼い主が遠隔にいながらネコの動作を実感し得る指標になったりする。例えば、図11に示すように、加速度センサ5のz軸方向の加速度情報を活用することで、ネコが4Aに示すフロアの位置から、4Bに示すソファ上端の位置にジャンプしたことを行動データとして表示したり、その旨をリアルタイムに飼い主に知らせることもできる。さらに、その後、4Cに示すソファの椅子の位置に移動したことを検出し、行動データに表すこともできる。さらに、加速度センサとGPS装置とを併用することで、宅内におけるネコの位置を把握し、上下方向の位置も併せてネコの正確な位置をトラッキングすることも可能である。
【0074】
以上、本実施の形態の見守り方法によれば、加速度センサを利用して、飼い主が不在となる所定期間におけるペットの行動や健康状態を把握することが可能となる。本実施の形態による見守り方法によれば、特にネコの活発な行動をも把握することができ、より正確な行動や健康状態の把握が可能になる。
【0075】
図12は、本発明の第2の実施の形態によるシステムの構成図である。特に、言及のない限り、本実施の形態におけるサーバ及び端末の構成は、第1の実施の形態と同じであり、以下においては説明を省略する。
【0076】
本実施の形態の特徴は、サーバと接続される端末が、属性の異なる各種業種セグメントに属する端末である点である。第1の実施の形態において、ペット、例えばネコから検出され、サーバ1に蓄積された行動データや基本データは、データベース化され、サーバ1に接続し、サービス提供を受ける各種端末の要求に応じて共有される。
【0077】
図12に示すように、サービス提供システムは、サービスを提供するサーバ1と、サーバ1に、インターネット等のネットワークを介して接続される、動物病院端末40、メーカ端末41、保険会社端末42及びシッター会社端末43とを含む。図12には、説明の便宜のために、業種端末毎に1つの端末が図示されているが、各々複数の端末が、本システムのネットワークに接続可能であり、また、他の業種の端末も必要に応じて本システムを構成することもできる。
【0078】
図13は、本発明の第2の実施の形態による行動データ提供処理の例を示したフローチャート図である。本処理は、例えば、前述の第1の実施の形態同様、サーバ1のメモリ11に格納されたプログラムを制御部10において実行することで実現される。また、各種行動データは、前述の第1の実施の形態のとおり、ストレージ12に格納される行動データ管理テーブル600で管理される行動データを共通のIDにより管理することで、本実施の形態において利用される行動データとすることができる。
【0079】
まず、サーバ1の制御部10の行動データ管理部23は、行動データの取得要求を受信する(S301)。
【0080】
行動データ管理部23は、本取得要求がいずれの端末からの要求であるかを確認する(S302)。本確認処理は、例えば、各端末のユーザIDまたは機器ID等を確認することで実行される。
【0081】
上記確認処理結果が、例えば、動物病院端末40からの要求であった場合、行動データ管理部23は、行動データ管理テーブル600を参照し、そのペットの行動データ、特に、動物の健康状態に関連する行動データ(例えば、運動量を示すデータ、睡眠、食事、トイレデータ)のほか、異常行動を示すデータを抽出し、要求元の端末に送信する(S303)。ここで、異常行動を示すデータとは、例えば、毎日の行動データを管理する中で、他の日にちの行動データと異なるデータを特定することで抽出され得る。例えば、過去7日間の行動データを参照し、平均的な食事回数が3回であるのに対し、最近の2日間の食事回数が平均を下回る2回であった場合、その旨が理解できるような形式でデータを提供することができる。または、前述の加速度データから行動データを生成する工程において、事前に登録された行動要素パターンには見られない行動が検出された場合、それを異常行動を示すデータとして登録することもできる。動物病院は、ペットの診断を行うに当たり、飼い主との問診を通じてペットの健康状態を把握することが通常であるところ、飼い主が自宅にいない時のペットの行動や健康状態を聞き出すことは困難である。かかる場合に、動物病院は、上記行動データ等を通じてペットの健康状態を把握し、適切な診断や処置行うことができる。図示しないが、動物病院端末40は、ペットの診断結果や投薬内容をサーバ1に送信し、サーバ1は、飼い主及び病院双方が後に確認することができるよう、これらの情報を管理することができる。
【0082】
上記確認結果が、例えば、メーカ端末41からの要求であった場合、行動データ管理部23は、行動データ管理テーブル600を参照し、行動データを抽出し、また、基本データ管理テーブル700を参照し、ペット基本情報(例えば、年齢、種別)や飼い主基本情報(例えば、年齢層)といったデータを抽出し、要求元の端末に送信する(S304)。ここでいう、メーカとして、例えば、ペットフードやペットグッズ等を製造、提供するメーカが挙げられる。例えば、ペットフードメーカは、現状マーケティング情報を効率的に得られる機会がない中で、本システムにより提供される、ペット基本情報から得られる年齢や種別といった情報を参考にしつつ、行動データにより、そのペットにパーソナライズされたフードのレコメンドを行うことができる。図示しないが、メーカ端末41は、このようなフードのレコメンデーション情報をサーバ1に送信し、サーバ1は、その情報を飼い主に対し共有することができる。
【0083】
上記確認結果が、例えば、保険会社端末42からの要求であった場合、行動データ管理部23は、行動データ管理テーブル600を参照し、行動データを抽出し、また、基本データ管理テーブル700を参照し、ペット基本情報(例えば、年齢、種別)や飼い主基本情報(例えば、年齢層)といったデータを抽出し、要求元の端末に送信する(S305)。保険会社は、現状ペットの普段の行動や健康に関する情報にアクセスする機会がない中で、飼い主に提案する保険商品を決定することが困難であったなかで、ペットの年齢や種別情報を参照し、また、そのペットの行動データを参照することにより、適切な保険をレコメンドしたり、そのペットの行動データや健康状態に応じて割引提案をすることもできる。図示しないが、保険端末42は、このような保険商品のレコメンデーション情報や見積り情報をサーバ1に送信し、サーバ1は、その情報を飼い主に対し共有することができる。
【0084】
その他、図示しないが、例えば、ペットシッター会社に対しては、ペット基本情報や飼い主基本情報を提供することで、シッター会社は、現状、ネコのように、届義務が無く、また、散歩をしないペットの種類について、周辺地域の飼い主情報を把握することが困難であったなかで、ペットや飼い主の基本情報にアクセスすることで、ネコの普段の状態を把握したり、マーケティング情報に活用することができる。また、シッター端末からシッターレポートやトリミングデータ等の情報をサーバに共有することもでき、飼い主はこうした情報にアクセスすることができる。
【0085】
以上、本実施の形態によれば、ペットに関する行動データや基本データを共通IDで管理し、各業者端末からの要求に応じて提供する仕組みを構築することで、一匹のペットの状態を、飼い主に限らず、飼い主・獣医師・周辺サービス等ネコを取り巻くステークホルダ皆が把握し、見守ることができる。
【0086】
<変形例1>
上述した実施の形態においては、一人のユーザが、受信装置7を一台利用して、一匹のネコを飼育している例を説明した。しかしながら、例えば、図13に示されるように、ユーザ数、ネコの数(即ち、センサ5の数)、通信端末(及び受信端末)の数は複数であってもよい。例えば、複数のネコを飼育している場合には、通信端末2は、センサ5、5’から信号を受信することとなる。また、一つの家の中で受信装置が複数ある場合(例えば1階と2階)には2つの受信端末が通信端末2に接続される。更には、別荘など、異なる拠点に通信端末2’が設置されていてもよい。複数のユーザが飼育している場合にはユーザ端末3、3’が同一のネコに関してサーバ1と通信することとなる。また、ユーザごとに表示可能な情報を制限することとしてもよい。買主ペットシッターとで情報を共有する場合などには、例えば、不在状況や決済情報などは買主のみに開示すべきだからである。
【0087】
<変形例2>
上述した実施の形態においては、主に屋内(室内)にて飼育しているペットなどの小動物の動作の活動を把握、記録、分析等行うこととしていたが、例えば、飼育の有無、屋内/屋外の別、動物の種類等、あらゆる動物の動作をモニタリングすることも可能である。例えば、野生の野生動物などの活動をモニタリングすることに適用してもよい。
【0088】
<変形例3>
更に、屋外においてモニタリングする場合には、例えば、屋外においては、3G回線等を利用することとしてデータを送受信することとしてもよい。更には、屋内と屋外を行き来する場合には、屋内においては、受信装置7及び通信端末2(ともに図2参照)を利用してサーバとの通信を行うこととすればよく、屋外に移動した場合には3G回線等を利用してサーバと通信を行うように通信を切替ることとしてもよい。この場合、例えば、受信装置7とセンサ5との信号強度等に基づいて、ペットが屋内/屋外のいずれにいるのか推測することとしてもよい。
【0089】
<変形例4>
また、例えば、各ユーザは、ペット6が現在何をしているのかについての記録を手動で入力・記録しサーバに送信してもよい。これにより、当該期間に得られていたセンサ5からの信号と、ユーザにより入力されたペットの行動に関する記録(歩いていた、食事をしていた、イスなどの家具に上っていた)とを突き合わせることとして精度を上げることもできる。これらの集積したデータは、自分のペット6のみならず、他のユーザが飼育しているペット6の行動の分析に役立てることとしてもよい。
【0090】
<表示例>
以下、図15乃至図18を参照して本実施の形態による表示例を説明する。図15に示されるように、本実施の形態によるアプリケーション・プログラムは、タイムライン表示形式で情報を表示する。図に示されるように。時間19:40には、「ブリ丸が寝ています」及び「ライ太が寝ています」という情報が表示されている。本表示形式においては、画面の上に行くほど最新の情報となるが、順序は適宜変更可能である。
【0091】
各ネコのアイコンを選択すると、図16に示されるように、現在の状態が表示される。現在の状態は「睡眠」状態であり、19:30~現在までその状態が継続していることを示す。
【0092】
また、図17に示されるように、各ネコの活動を視覚化して表示することとしてもよい。表示する項目としては、例えば、活動時間、急速した時間、ジャンプを何回したか、嘔吐を何回したか、等の項目を表示できるがこれに限られない。また、図18に示されるように、運動を強度(HI/LOW)別にグラフ化してもよい。
【0093】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0094】
例えば、本実施形態では、1つの行動種別の行動を判定するものとしたが、複数の行動を判定するようにしてもよい。例えば、確度が所定値以上の行動を全て生じたものとして行動データを生成するようにしてもよい。また、モデルの評価指標の高い順に複数の行動種別を並べるように判定してもよい。これにより再現率を向上させることができる。また、動物病院等に可能性のある行動を伝達することで、健康状態に関する判断の精度が向上されることも期待される。
【符号の説明】
【0095】
1 サーバ
2 通信端末
3 ユーザ端末
4 分析サーバ
5 センサ
6 ペット(ネコ)
7 受信装置
40 動物病院端末
41 メーカ端末
42 保険会社端末
43 シッター会社端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21