(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】伸縮性シートの製造方法、及び該伸縮性シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20241111BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61F13/15 311Z
A61F13/15 340
A61F13/15 355B
A61F13/49 310
(21)【出願番号】P 2020153383
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-06-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-536659(JP,A)
【文献】特表2020-500661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0237576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シートと、第2シートと、これら両シート間に伸長状態で配置された弾性部材とを有する伸縮性シートの製造方法であって、
第1シートを、弾性部材固定部と弾性部材誘導部とを有するアンビルロール上に導入し、弾性部材を、伸長状態で第1シート上に導入する工程、及び
第2シートを、前記弾性部材上に導入し、第1シートと第2シートとの間を融着する工程を具備し、
前記アンビルロールは、前記弾性部材固定部と前記弾性部材誘導部とが周方向に隣り合って配置されてなる誘導固定部対が、該周方向に複数、該アンビルロールの軸長方向に沿う方向に位置をずらして配置されている弾性部材の非直線状配置領域を有しており、
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれにおいて、
前記弾性部材固定部は、第1凸部間に形成された固定溝部を備え、前記弾性部材誘導部は、第2凸部間に形成された誘導溝部を備えており、該第1凸部の高さが該第2凸部の高さよりも高く、
前記アンビルロールの軸長方向に沿う方向において、前記誘導溝部の開口幅が該誘導溝部の底部幅及び前記固定溝部の開口幅それぞれよりも広く、且つ前記誘導溝部の幅方向の中心位置が、前記固定溝部の最小幅部の幅内に位置しており、
前記弾性部材を、第1シートとともに、前記非直線状配置領域に存する複数の前記誘導固定部対における前記誘導溝部内及び前記固定溝部内に挿入されるように導入し、第1シートと第2シートとの間を、該弾性部材の両側に位置する第1凸部及び第2凸部のうちの少なくとも第1凸部とエネルギー付加部材との間に挟んで融着させる、伸縮性シートの製造方法。
【請求項2】
前記誘導固定部対における前記弾性部材固定部及び前記弾性部材誘導部は、前記弾性部材誘導部の方が前記弾性部材固定部よりも前記アンビルロールの回転方向の前方に位置する、請求項1に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項3】
前記弾性部材誘導部及び前記弾性部材固定部が、前記アンビルロールの周方向に交互に形成されている、請求項1又は2に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項4】
前記誘導溝部の前記開口幅が、前記弾性部材の、前記アンビルロール上に導入されるときの幅の2倍以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項5】
前記誘導溝部の深さが、前記固定溝部の深さより深い、請求項1~4のいずれか1項に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項6】
第1シートと、第2シートと、これら両シート間に伸長状態で配置された弾性部材とを有し、該弾性部材が非直線状に配された伸縮部を有する伸縮性シートの製造装置であって、
弾性部材固定部と弾性部材誘導部とを有するアンビルロールと、該アンビルロールの凸部との間に挟んで、第1シートと第2シートとを融着させるエネルギー付加部材とを具備しており、
前記アンビルロールは、前記弾性部材固定部と前記弾性部材誘導部とが周方向に隣り合って配置されてなる誘導固定部対が、該周方向に複数、該アンビルロールの軸長方向に沿う方向に位置をずらして配置されている弾性部材の非直線状配置領域を有しており、
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれにおいて、
前記弾性部材固定部は、第1凸部間に形成された固定溝部を備え、前記弾性部材誘導部は、第2凸部間に形成された誘導溝部を備えており、該第1凸部の高さが該第2凸部の高さよりも高く、
前記アンビルロールの軸長方向に沿う方向において、前記誘導溝部の開口幅が該誘導溝部の底部幅及び前記固定溝部の開口幅それぞれよりも広く、且つ前記誘導溝部の幅方向の中心位置が、前記固定溝部の最小幅部の幅内に位置している、伸縮性シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮性シートの製造方法、該伸縮性シート、及び該伸縮性シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ等の吸収性物品に用いられるシートとして、2枚のシート間に糸ゴム等の弾性部材を伸長状態で接合してなる伸縮性シートが知られている。例えば特許文献1には、不織布どうしの間に平行に並べた複数の弾性伸縮部材を挟み込んだ状態で、該不織布どうしを間欠的に溶着することにより、弾性伸縮部材を固定した伸縮性シートが記載されている。
【0003】
また特許文献2には、一対のシート状部材間において伸長状態の弾性部材の端部を各シート状部材に接着剤で固定し、該一対のシート状部材の対向面同士を溶着した後、これを切断することにより得られる伸縮性シートが記載されている。この伸縮性シートにおいて弾性部材は、前記切断に伴いCD方向に拡大して、該弾性部材の両側の溶着部分によって挟圧され、一対のシート状部材間に取り付けられる。
また特許文献3には、おむつ等の吸収性物品に用いられるシートとして、弾性部材をシートの搬送方向と直交する方向に揺動させながらシート間に固定して得られる伸縮性シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-154998号公報
【文献】国際公開第2018/122970号
【文献】特開平08-132576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の伸縮性シートは、弾性部材がシートどうしの融着部によって挟圧された構成を有し、該弾性部材がその表面とシートとの摩擦力によって、該シートに固定されている。
斯かる伸縮性シートは、従来、次のようにして製造されている。先ず、搬送方向に連続する2枚のシート間に同方向に引張力がかけられた伸長状態の弾性部材が配置された長尺の積層体を作製する。この積層体を搬送させながら、該積層体における該弾性部材の延在方向の両側近傍に対して、熱を伴うエンボス加工、超音波融着加工等の融着加工を施し、該弾性部材の伸長方向に沿って該2枚のシートどうしの融着部を複数形成する。そして、積層体を所定の製品単位長さに切断する。これにより弾性部材はその伸長状態が解除され、該弾性部材が融着部間に挟圧されて2枚のシート間に固定される。このようにして、伸縮性シートが得られている。
しかしながら、上述した従来の伸縮性シートの製造方法では、2枚のシート間において弾性部材が意図しない方向に蛇行することがあり、融着加工時に弾性部材が切断されてしまうという問題があった。
【0006】
また特許文献3のように、弾性部材を搬送されるシートの幅方向に揺動させながら該シートに固定する場合には、非直線状に配された弾性部材の形状を安定に維持させる観点から、弾性部材を挟むシートの一方又は両方のシートに接着剤を塗工しておき、シート間に弾性部材を挟んで挟圧する方法が一般に採用されている。これに対して、シート間に非直線状に配する弾性部材を、該弾性部材を挟む両側に融着部を形成して該シート間に固定することは容易ではない。
【0007】
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る伸縮性シートの製造方法、該伸縮性シート、及び該伸縮性シートの製造装置を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1シートと、第2シートと、これら両シート間に伸長状態で配置された弾性部材とを有する伸縮性シートの製造方法を提供するものである。
前記製造方法は、第1シートを、弾性部材固定部と弾性部材誘導部とを有するアンビルロール上に導入し、弾性部材を、伸長状態で第1シート上に導入する工程、及び
第2シートを、前記弾性部材上に導入し、第1シートと第2シートとの間を融着する工程を具備することが好ましい。
前記アンビルロールは、前記弾性部材固定部と前記弾性部材誘導部とが周方向に隣り合って配置されてなる誘導固定部対が、該周方向に複数、該アンビルロールの軸長方向に沿う方向に位置をずらして配置されている弾性部材の非直線状配置領域を有していることが好ましい。
【0009】
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれにおいて、前記弾性部材固定部は、第1凸部間に形成された固定溝部を備え、前記弾性部材誘導部は、第2凸部間に形成された誘導溝部を備えていることが好ましい。
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれは、前記アンビルロールの軸長方向に沿う方向において、前記誘導溝部の開口幅が該誘導溝部の底部幅及び前記固定溝部の開口幅それぞれよりも広いことが好ましい。また前記誘導溝部の幅方向の中心位置が、前記固定溝部の最小幅部の幅内に位置していることが好ましい。
前記弾性部材を、第1シートとともに、前記非直線状配置領域に存する複数の誘導固定部対における前記誘導溝部内及び前記固定溝部内に挿入されるように導入し、第1シートと第2シートとの間を、該弾性部材の両側に位置する第1凸部及び第2凸部のうちの少なくとも第1凸部との間に挟んで融着させることが好ましい。
【0010】
また本発明は、第1シートと、第2シートと、これら両シート間に伸長状態で配置された弾性部材とを有し、該弾性部材が、第1方向に対して非平行に配された伸縮部を有する伸縮性シートを提供するものである。
第1シートと第2シートとは、前記弾性部材を挟んで該弾性部材の両側に位置する一対の融着部からなる融着部対を複数有していることが好ましい。複数の前記融着部対は、第1方向と直交する第2方向の位置が、前記弾性部材の配置位置に沿って変化していることが好ましい。
【0011】
また本発明は、第1シートと、第2シートと、これら両シート間に伸長状態で配置された弾性部材とを有し、該弾性部材が非直線状に配された伸縮部を有する伸縮性シートの製造装置を提供するものである。
前記製造装置は、弾性部材固定部と弾性部材誘導部とを有するアンビルロールと、該アンビルロールの凸部との間に挟んで、第1シートと第2シートとを融着させるエネルギー付加部材とを具備していることが好ましい。
前記アンビルロールは、前記弾性部材固定部と前記弾性部材誘導部とが周方向に隣り合って配置されてなる誘導固定部対が、該周方向に複数、該アンビルロールの軸長方向に沿う方向に位置をずらして配置されている弾性部材の非直線状配置領域を有していることが好ましい。
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれにおいて、前記弾性部材固定部は、第1凸部間に形成された固定溝部を備え、前記弾性部材誘導部は、第2凸部間に形成された誘導溝部を備えていることが好ましい。
前記非直線状配置領域に存する前記誘導固定部対のそれぞれは、前記アンビルロールの軸長方向に沿う方向において、前記誘導溝部の開口幅が該誘導溝部の底部幅及び前記固定溝部の開口幅それぞれよりも広いことが好ましい。また前記誘導溝部の幅方向の中心位置が、前記固定溝部の最小幅部の幅内に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伸縮性シートの製造方法及び製造装置によれば、弾性部材が任意の形状に配された伸縮部を有する伸縮性シートを、弾性部材の意図しない切断や接着剤の使用による不都合を抑制しつつ安定して製造することができる。
また、本発明の伸縮性シートによれば、製造時のシート搬送方向と非平行に配された弾性部材の配置形状が安定に維持されるようにすることと、優れた伸縮性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の伸縮性シートの一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す伸縮性シートの誘導固定部対を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は、製造時のシート搬送方向と非平行に配された弾性部材の配置形状の例を示す伸縮性シートの模式平面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示す伸縮性シートの第1融着部間におけるY方向に沿う断面図であり、
図4(b)は、該伸縮性シートの第2融着部間におけるY方向に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の伸縮性シートの製造方法に好適に用いられる製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す製造装置におけるアンビルロールに、弾性部材を揺動しながら導入する様子を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す製造装置におけるアンビルロールの周面部の一部を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7に示すA-A線断面図であり、
図8(b)は、
図7に示すB-B線断面図である。
【
図9】
図9(a)~(c)は、本発明の伸縮性シートの製造方法及び製造装置の作用効果を説明するための模式図である。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、本発明に係る弾性部材誘導部の別の実施形態を示す
図8(b)相当図である。
【
図11】
図11は、
図5の符号P2で示す位置(超音波処理位置)における弾性部材固定部〔
図11(a)〕及び弾性部材誘導部〔
図11(b)〕を示す図であって、流れ方向(MD)と直交する方向(CD)に沿う断面を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12(a)は、弾性部材弛緩工程の実施前の弾性部材の状態を模式的に示す図、
図12(b)は、弾性部材弛緩工程の実施後の弾性部材の状態を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、本発明に係る伸縮性シートの別の実施形態を示す
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の伸縮性シートの一実施形態が示されている。同図は、伸縮性シート10を引き伸ばして最大伸長状態にしたときの平面図である。最大伸長状態とは、後述する各弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法)となるまで伸縮性シート10を構成する第1シート11及び第2シート12を引き伸ばした状態のことである。
【0015】
伸縮性シート10は、第1シート11と、第2シート12と、これら両シート11,12間に伸長状態で配置された弾性部材13とを有している。
伸縮性シート10において第1シートと第2シート12とは互いに対向配置されている。これら2枚のシート11,12の間には糸ゴム等の線状の弾性部材13が配置されている。弾性部材13は、製造時におけるシートの搬送方向である第1方向Xに対して非平行に配されている。製造時におけるシートの搬送方向が不明な場合は、繊維の配向度が最も高い方向を第1方向とする。
弾性部材13は、2枚のシート11,12の間に伸長状態で固定されている。弾性部材13が伸長状態で固定されていることによって、自然状態の伸縮性シート10においては、弾性部材13が2枚のシート11,12の一方又は双方に襞又はシワを形成しながら収縮してギャザーを形成し、弾性部材13が配されている領域及びその近辺が、弾性伸縮性を発現する伸縮部となっている。
以下の説明において、製造時におけるシートの搬送方向である第1方向Xを単にX方向ともいう。また、製造時におけるシートの搬送方向と直交する方向である、第1方向と直交する第2方向Yを単にY方向ともいう。
【0016】
弾性部材13が、製造時におけるシートの搬送方向である第1方向Xに対して非平行に配されている態様としては、第2方向Yの一方又は他方に向けて凸の湾曲形状〔
図3(a)及び(b)参照)、第2方向Yの一方に向けて凸の湾曲部分と他方に向けて凸に湾曲部分とがサインカーブ状に連なった形状(
図3(c)参照)、第1方向Xに対して傾斜する直線形状(
図3(d)参照)、第1方向Xに対して第2方向Yの一方の側に傾斜した傾斜部分と第2方向Yの他方の側に傾斜した傾斜部分とが第1方向Xに連なったジグザグ形状(
図3(e)参照)等が挙げられる。
弾性部材13が第1方向Xに対して非平行に配されている領域は、伸縮性シート10の第1方向Xに連続して形成されていてもよいし、弾性部材13が存在しない部分又は弾性部材13が第1方向Xと平行に配されている部分を介して、断続的に形成されていてもよい。
【0017】
第1シート11は繊維シートからなる。第1シート11は親水性の繊維シート又は疎水性の繊維シートであり得る。親水性の繊維シートは、該繊維シートの任意の箇所から採取した構成繊維の水との接触角が90度未満となるものである。疎水性の繊維シートは、該繊維シートの任意の箇所から採取した構成繊維の水との接触角が90度以上となるものである。繊維の水との接触角の測定は、例えば特開2015-142721号公報の記載の方法に従って行うことができる。後述する融着部の形成を容易にする観点から、第1シートは、熱融着性の樹脂からなる合成繊維に親水性を付与した繊維を構成繊維として含む親水性不織布であることが好ましい。熱融着性の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。繊維シートを構成する繊維は、表面のみが熱融着性の樹脂からなる芯鞘型の複合繊維等であってもよい。
【0018】
第2シート12も繊維シートからなる。第2シート12は、第1シート11と同様に、親水性の繊維シートであってもよく、あるいは疎水性の繊維シートであってもよい。疎水性の繊維シートは、該繊維シートの任意の箇所から採取した構成繊維の水との接触角が90度以上となるものである。前記と同様の観点から、第2シート12は、前述した熱融着性の樹脂からなる合成繊維を構成繊維として含むシートであることが好ましい。第1シート11と第2シート12とでは、形成材料が同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0019】
図1に示すとおり、第1シート11及び第2シート12は複数の融着部によって接合されている。融着部において両シート11,12は融着している。「融着」とは、熱によって両シート11,12に溶融部分が生じ、該溶融部分どうしが混ざり合った後に冷却することで当該部分が一体的に結合することをいう。
本実施形態の伸縮性シート10は、融着部として、弾性部材13を挟んで該弾性部材13の両側に位置する一対の第1融着部15a,15b及び一対の第2融着部17a,17bとを有している。
第1融着部15a,15b及び第2融着部17a,17bの各融着部は、弾性部材13の延びる方向、すなわちX方向に沿って間隔を置いて形成されている。
弾性部材13の両側に位置する一対の第1融着部15a,15bは、第1融着部対15を形成し、弾性部材13の両側に位置する一対の第2融着部17a,17bは、第2融着部対17を形成している。第1融着部対15を形成する一対の第1融着部15a,15bどうしは、Y方向に離間しており、第1融着部15a,15bどうし間に弾性部材13が位置している。第2融着部対17を形成する一対の第2融着部17a,17bどうしも、Y方向に離間しており、第2融着部17a,17bどうし間に弾性部材13が位置している。
【0020】
第1融着部対15及び第2融着部対17は、X方向に沿って交互に配されている。
本実施形態の伸縮性シート10は、一対の融着部からなる融着部対として、第1融着部対15及び第2融着部対17を有している。
そして、弾性部材13が、第1方向Xと非平行に配された伸縮部においては、
図1に示すように、第1融着部対15及び第2融着部対17のいずれについても、第2方向Yにおける配置位置が、弾性部材13の配置位置に沿って変化している。第1融着部対15及び第2融着部対17は、
図2に示すように、一つの第1融着部対15とそれに隣接する一つの第2融着部対17とが一まとまりの融着部群16となって、第2方向Yにおける配置位置が、弾性部材13の配置位置に沿って変化していることが好ましい。
【0021】
第1融着部対15及び第2融着部対17からなる融着部群16は、弾性部材13の長手方向に沿って複数配置されている。第1融着部対15と第2融着部対17との間の距離は、融着部群16どうし間の距離と比較して大きくても小さくても同じでもよいが、同じか小さいことが好ましい。ここでいう距離は、伸縮性シート10の最大伸長状態において、第1方向Xに沿って測定した距離である。
【0022】
1個の第1融着部対15を構成する2個の第1融着部15a,15bは、1本の弾性部材13を挟んでY方向に対向配置され、各第1融着部15a,15bは、該弾性部材13に接触している。より具体的には
図2に示すように、該弾性部材13に食い込んでこれを押圧している。
【0023】
1個の第2融着部対17を構成する2個の第2融着部17a,17bは、1本の弾性部材13を挟んでY方向に対向配置され、各第2融着部17a,17bは該弾性部材13に接触しているか、又は第2融着部17a,17bのいずれか一方が該弾性部材13に接触している。これら第2融着部17a,17bは、該弾性部材13に食い込むようにして配置されていない。すなわち、第2融着部対17は、弾性部材13の両側から該弾性部材13を押圧していない。
【0024】
弾性部材13は、第1融着部対15によって両シート11,12の間に挟圧されている(
図2参照)。すなわち、第1融着部対15を構成する一方の第1融着部15aと他方の第1融着部15bとの間において、弾性部材13が両融着部15a,15bによってY方向の両側から押圧されて塑性変形しており、これにより弾性部材13が第1シート11及び第2シート12に固定されている。
より詳細には、第1融着部15a,15b間では、Y方向に沿う断面において、該第1融着部15a,15b、第1シート11、及び第2シート12によって画成された第1空間S1が形成されている〔
図4(a)参照〕。この第1空間S1において弾性部材13は、該弾性部材13の表面と、第1シート11及び第2シート12との摩擦のみによって、これら両シート11,12間に固定されている。斯かる固定は、第1融着部15aにおける弾性部材13側の側縁151aと、他方の第1融着部15bにおける弾性部材13側の側縁151bとの間の間隔である第1融着部間隔D(
図2参照)を、伸縮性シート10の最大伸長状態における弾性部材13の直径d1(図示せず)よりも狭くすることによってなされる。この伸縮性シート10の自然状態(外力を加えていない状態)では、弾性部材13の伸長状態が解除されて該弾性部材13が弛緩してY方向に膨張する。これにより、第1融着部対15の配置位置(第1空間S1)では、第1融着部15a,15bによって弾性部材13の膨張が規制されて、弾性部材13が第1融着部15a,15bによって挟圧された状態となる(
図2参照)。
なお、
図2及び
図4(a)では、弾性部材13が一対の第1融着部15a,15bに接合されているように見えるが、実際は、弾性部材13は一対の第1融着部15a,15bと非接合状態になっている。
【0025】
第2融着部17a,17b間では、Y方向に沿う断面において、該第2融着部17a,17b、第1シート11、及び第2シート12によって画成された第2空間S2が形成されている〔
図4(b)参照〕。
本実施形態の第2空間S2において、弾性部材13の表面と、第1シート11及び第2シート12との摩擦力は、該弾性部材13が第1シート11及び第2シート12間に固定されるほど強くはない。より具体的には、弾性部材13は、第2空間S2において、第1シート11及び第2シート12間に固定されていない。これに代えて、弾性部材13は、第2空間S2において、第1シート11及び第2シート12間に第1空間S1よりも弱く固定されていてもよい。第2空間S2において、弾性部材13が、両シート11,12間に固定されていないか又は第1空間S1における摩擦力よりも弱く両シート11,12間に固定されていると、製造時のシート搬送方向と非平行に配された弾性部材13の平面視における配置形状が安定に維持されるようにすることと優れた伸縮性と両立させることが容易となる。
【0026】
本実施形態の伸縮性シート10の伸縮部において、弾性部材13は、これと接触する第1融着部15a,15b、第1シート11及び第2シート12との摩擦力のみ、又はそれと、弾性部材13と、第2融着部17a,17b、第1シート11及び第2シート12との摩擦力のみによって固定されている。より具体的には、弾性部材13は、接着剤や融着等の接合手段によっては第1シート11及び第2シート12に固定されていない。伸縮性シート10の伸縮部において、弾性部材13及び第1シート11、並びに弾性部材13及び第2シート12は、互いに融着していない。これにより、伸縮性シート10は、第1シート11及び第2シート12が本来的に有する良好な風合いや通気性が維持される上、伸縮性に富んだものとなる。
【0027】
本実施形態の伸縮性シート10は、製造時のシート搬送方向と非平行に弾性部材13が配された伸縮部を備えており、且つその弾性部材13の配置形状が安定に維持される。そのため、その伸縮部は、柔軟な風合いと、優れた伸縮性とを呈するものとなる。斯かる伸縮性シート10を、例えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成部材、特に着用者の肌と当接し得る部材として好適に用いることができる。
【0028】
前述したように、第2空間S2において弾性部材13は、第1空間S1よりも弱く固定されていてもよい。この場合、製造時のシート搬送方向と非平行に配された弾性部材13の平面視における配置形状が安定に維持されるようにすることと優れた伸縮性とを両立させることが一層容易となる。
第2空間S2において弾性部材13が固定されている場合、第2融着部間の最小長さをD3(
図2参照)とし、伸縮性シート10の弛緩状態における弾性部材13の直径をd2(図示せず)としたとき、D3に対するd2の比d2/D3の値が、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.95以上であり、また好ましくは1.08以下、より好ましくは1.05以下であり、また好ましくは0.90以上1.08以下、より好ましくは0.95以上1.05以下である。
【0029】
弾性部材13の伸縮性をより向上させる観点から、第2融着部対17を構成する一対の第2融着部17a,17b間の距離が、第1融着部対15を構成する一対の第1融着部15a,15b間の距離よりも長いことが好ましい。
上記と同様の観点から、Y方向に沿う第1融着部15a,15bどうし間の最大間隔は、Y方向に沿う第2融着部17a,17bどうし間の最小間隔に対して、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上であり、また好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下であり、また好ましくは20%以上90%以下、より好ましくは40%以上80%以下である。
【0030】
第1空間S1において弾性部材13をより確実に固定する観点から、第1融着部間隔をD(
図2参照)とし、伸縮性シート10の弛緩状態における弾性部材13の直径をd2(図示せず)としたとき、Dに対するd2の比d2/Dの値が1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.3以上であることが一層好ましい。
前記d2/Dの値は高ければ高いほど、弾性部材13の表面と、第1シート11及び第2シート12との摩擦力が高くなる点から好ましい。伸縮性シート10の弛緩状態における弾性部材13の直径d2とは、該弛緩状態において、弾性部材13が挟圧されていない部位での該弾性部材13の直径のことである。
【0031】
前記のd2を繊度で表した場合、該繊度は、伸縮性シート10の伸縮性を確実なものとする観点から、155dtex以上であることが好ましく、310dtex以上であることが更に好ましい。また1240dtex以下であることが好ましく、940dtex以下であることが更に好ましい。弾性部材13の繊度は155dtex以上1240dtex以下であることが好ましく、310dtex以上940dtex以下であることが一層望ましい。
【0032】
第2融着部17a,17bの接合強度は、第1融着部15a,15bの接合強度と同じであってもよいが、肌触りや通気性をより向上させる観点から、第2融着部17a,17bの接合強度は、第1融着部15a,15bよりも小さいことが好ましい。
前記と同様の観点から、第2融着部17a,17bの接合強度は、第1融着部15a,15bの接合強度に対して好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは60%以上90%以下、更に好ましくは70%以上80%以下である。
融着部の接合強度は、以下の方法により測定される。
【0033】
<接合強度の測定方法>
伸縮性シートから、第1融着部又は第2融着部を含むように20mm×100mmの測定片を切り出す。次いで、測定片における測定対象の融着部以外の融着部を剥離させる。次いで、測定片の第1シートの20mm側を、テンシロン万能試験装置 RTG1310(株式会社エー・アンド・デイ)の一方のチャックに固定し、測定片の第2シートを他方のチャックに固定して、これらチャック間に測定片をセットする。チャック間の距離は、20mmとする。次いで、チャックを、180°方向に沿って300mm/minの速度で移動させ、第1シートと第2シートとを剥離させる。このときに観察される力の最大値を測定する。斯かる測定を5回繰り返し、それらの平均値を剥離強度とする。
【0034】
本実施形態の伸縮性シート10は、例えば、使い捨ておむつ及び生理用ナプキン等の吸収性物品の構成材料として用いることができ、吸収性物品の伸縮部形成用に特に好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品としては、例えば、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有する吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に位置する外装体とを具備するものが挙げられる。本実施形態の伸縮性シートは、外装体に好適に用いられ、その場合、外装体における脚周りに配される部分に、円弧状に弾性部材が配された伸縮部を配することで、着用者の脚周りに対するフィット性を向上させることもできる。吸収性物品は更に、その具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。
【0035】
伸縮性シート10を構成する材料について詳述する。第1シート11及び第2シート12としては、それぞれ、例えばエアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布等、及びこれら2以上を積層一体化させてなる積層体等を用いることができる。見た目に美しく、感触のよい柔軟な襞を形成させる観点から、両シート又は一方のシートとして用いられる繊維シートは、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等であることが好ましい。
第1融着部、又は第1融着部及び第2融着部の各融着部の接合強度をより向上させ、おむつを着用する際に発生し得る弾性部材の固定の解除をより抑制する観点から、第1シート及び第2シートは、スパンボンド不織布層を有する積層不織布であることが好ましい。斯かる積層不織布としては、スパンボンド不織布層(S)とメルトブローン不織布層(M)との積層不織布であるSM不織布やSMS不織布などが挙げられる。
【0036】
前述したように、第1シート11及び第2シート12としては好ましくは不織布が用いられる。不織布の坪量は、好ましくは5g/m2以上50g/m2以下、特に好ましくは8g/m2以上30g/m2以下である。
【0037】
第1シート11及び第2シート12は、別体の2枚のシートに限られるものではなく、1枚のシートを折り曲げて相対向する2面を形成し、一方の面を構成する部分を1枚のシート、他方の面を構成する部分をもう1枚のシートとすることもできる。第1シート11及び第2シート12が1枚のシートから構成される場合、該1枚のシートは、親水性の繊維シートであることが好ましい。
【0038】
弾性部材13の形成材料としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる各種公知の弾性材料を特に制限なく用いることができる。例えば素材としては、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、あるいはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0039】
次に、
図1に示す伸縮性シート10の好適な製造方法を、
図5を参照しながら説明する。同図には伸縮性シート10の製造に好適に用いられる製造装置20が示されている。
製造装置20は、超音波処理部21を備えている。
超音波処理部21は、超音波振動する超音波ホーン31を備えた超音波処理機30と、該超音波ホーン31の先端部の振動印加面31tと対向する位置に配置されたアンビルロール40とを備えている。製造装置20においては、超音波ホーン31が、本発明に係るエネルギー付加部材である。
超音波処理部21は、処理対象物である第1シート11と第2シート12と弾性部材13との積層体14を、超音波ホーン31の振動印加面31tと、アンビルロール40の周面部40tに設けられた凸部、具体的には、後述する凸部41a,41b,45a,45bの先端面との間に挟んで超音波振動を印加することで、積層体14に融着部である第1融着部15a,15b(第1融着部対15)及び第2融着部17a,17b(第2融着部対17)を形成し、両シート11,12を接合する。
【0040】
伸縮性シート10の製造時における流れ方向(機械流れ方向、以下「MD」ともいう。)は、前述した製造時におけるシートの搬送方向を意味し、製造結果物である伸縮性シート10の第1方向X及び製造中間体である積層体14の流れ方向と一致する。MDに直交する方向(以下、「CD」ともいう。)は、伸縮性シート10の製造時におけるシートの搬送方向と直交する方向であり、伸縮性シート10の第2方向Y及び製造中間体である積層体14の流れ方向と直交する方向と一致する。
アンビルロール40の回転軸の方向、すなわち軸長方向Y1は、CDに平行で、MDに直交している。このアンビルロール40の軸長方向Y1(CD)は、製造される伸縮性シート10におけるY方向に一致している。また、アンビルロール40の周方向R1は、アンビルロール40の回転方向Rに一致している。
以下、アンビルロール40の軸長方向Y1を単に「軸長方向Y1」ともいう。
【0041】
超音波処理機30は、超音波発振器(図示せず)、コンバーター(図示せず)、ブースター(図示せず)及び超音波ホーン31を備え、これらは互いに接続されている。
前記超音波発振器は、前記コンバーターと電気的に接続されており、該超音波発振器により発生された周波数15~50kHz程度の波長の高電圧の電気信号が、該コンバーターに入力される。
前記コンバーターは、ピエゾ圧電素子等の圧電素子を内蔵し、前記超音波発振器から入力された電気信号を、圧電素子により機械的振動に変換する。
前記ブースターは、前記コンバーターから発せられた機械的振動の振幅を調整、好ましくは増幅して超音波ホーン31に伝達する。
超音波ホーン31は、アルミ合金やチタン合金などの金属でできており、使用する周波数帯で正しく共振するように設計されている。超音波ホーン31の先端部の振動印加面31tは、処理対象物の一方の面(本実施形態では第2シート12)に当接する。
前記ブースターから超音波ホーン31に伝達された超音波振動は、超音波ホーン31の内部においても増幅、又は減衰されて、処理対象物に印加される。
超音波処理機30としては、市販の超音波ホーン、コンバーター、ブースター、超音波発振器を組み合わせて用いることができる。
【0042】
超音波処理機30は、可動台(図示せず)に固定されており、該可動台の位置を、アンビルロール40の周面部40tに近づく方向に沿って進退させることで、超音波ホーン31の振動印加面31tと、アンビルロール40の周面部40t(具体的には後述する凸部対41,45の先端面)との間のクリアランス、及び処理対象物に対する押圧力を調節可能とされている。
【0043】
製造装置20は、弾性部材13の揺動導入装置50を備えている。
揺動導入装置50は、弾性部材13をアンビルロール40の周面上に導入する際に、弾性部材13の導入位置を、アンビルロール40の軸長方向Y1に変更する装置であり、好ましくは、任意に設定可能な揺動パターンで、弾性部材13の導入位置を軸長方向Y1に変化させながら、弾性部材13をアンビルロール40周面上に導入可能である。
図7に、弾性部材が、サインカーブ状ないし連続波状の平面視形状を形成するように、弾性部材を揺動しながらアンビルロール40の周面上に導入する場合を示す。
揺動導入装置50は、弾性部材13と接触して、弾性部材13を、アンビルロール40の軸長方向Y1に沿う方向に変位させる揺動ガイド51を備えている。
揺動導入装置50としては、各種公知のものを用いることができ、例えば、特開平08-132576号公報に記載のもの等を用いることができる。
揺動導入装置50は、アンビルロールの周面に位置する凸部を認識可能なセンサーを備えることも好ましく、センサーで認識した凸部の軸長方向Y1における位置に応じて、弾性部材13の導入位置を変位させることも好ましい。センサーは、画像解析により位置を検出するものでもよい。
【0044】
図7に示すように、アンビルロール40の周面部40tには、弾性部材の非直線状配置領域R2が形成されている。弾性部材13の非直線状配置領域R2は、
図7に示すように、弾性部材13が、アンビルロール40の周方向R1と平行ではない状態に導入される領域である。
非直線状配置領域R2には、弾性部材固定部42と弾性部材誘導部47とがそれぞれ複数設けられている。弾性部材固定部42は、第1融着部対15を形成して弾性部材13を固定するために用いられる。弾性部材誘導部47は、弾性部材13を、弾性部材固定部42の適正位置に誘導するものである。本実施形態においては、弾性部材誘導部47によって、第2融着部対17が形成される。
本実施形態の非直線状配置領域R2において、弾性部材固定部42と弾性部材誘導部47とは、アンビルロール40の回転方向R(周方向R1)に隣り合って配置されてなる誘導固定部対Pを形成している。非直線状配置領域R2には、誘導固定部対Pが、アンビルロール40の周方向R1に複数形成されており、その複数の誘導固定部対Pは、アンビルロールの軸長方向Y1に沿う方向に位置をずらして配置されている。
【0045】
以下、個々の誘導固定部対Pを構成する弾性部材固定部42及び弾性部材誘導部47について説明する。
弾性部材固定部42は、それぞれ、軸長方向Y1(CD)に間隔を置いて配置された一対の第1凸部41a,41bと、両凸部41a,41b間に形成された固定溝部43とを有する。
弾性部材誘導部47は、それぞれ、軸長方向Y1(CD)に間隔を置いて配置された一対の第2凸部45a,45bと、両凸部45a,45b間に形成された誘導溝部46とを有する。
第1凸部41a,41b及び第2凸部45a,45bは、アンビルロールの周面上で、超音波ホーン31側に突出した凸部をなしている。これら凸部41a,41b,45a,45bは、超音波ホーン31に近い側に位置している。このように、本実施形態のアンビルロール40は、処理対象物が巻きかけられる周面部40tに凹凸を有する。
【0046】
融着部におけるシール性をより向上させる観点から、これら凸部41a,41b,45a,45bは、その先端面が平坦であることが好ましい。斯かる先端面には、外接円と同じ曲率の略平坦な凸曲面等も含まれる。曲率は、凸部が突出する基面の位置が異なる場合は、アンビルロールの中心位置からの距離で比較することができる。
【0047】
弾性部材固定部42における固定溝部43、及び弾性部材誘導部47における誘導溝部46それぞれには、弾性部材13が挿入される。
なお
図7では、説明の便宜上、第1シート11の記載を省いているが、伸縮性シート10の製造時には、固定溝部43及び誘導溝部46それぞれに、弾性部材13に先立って第1シート11が導入されている。そのため、弾性部材13はアンビルロール40と非接触である。
【0048】
図8(a)には、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う弾性部材固定部42の断面図が示されている。
図8(b)には、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う弾性部材誘導部47の断面図が示されている。
固定溝部43及び誘導溝部46それぞれは、表面が開口した溝部となっており、該溝部に弾性部材13が挿入できるようになされている。
本実施形態の固定溝部43は、前記断面視において略矩形状をなしている。本実施形態の固定溝部43は、軸長方向Y1(CD)に沿う開口幅W1〔
図8(a)参照)と該軸長方向Y1(CD)に沿う底部幅とが同じ長さとなっている。「軸長方向Y1(CD)に沿う開口幅」は、溝部43,46の開口の軸長方向Y1に沿う長さである。「軸長方向Y1(CD)に沿う底部幅」は、溝部43,46の底部の軸長方向Y1(CD)に沿う長さである。「開口」は、固定溝部43及び誘導溝部46におけるアンビルロール40の中心から最も遠い位置の部分である。「底部」は、固定溝部43及び誘導溝部46におけるアンビルロール40の中心に最も近い位置の部分である。以下、「軸長方向Y1(CD)に沿う開口幅」を単に「開口幅」ともいい、「軸長方向Y1(CD)に沿う底部幅」を単に「底部幅」ともいう。
固定溝部43の開口幅は、伸縮性シート10における第1融着部間隔D(
図2参照)に概ね相当し、誘導溝部46の開口幅は、該伸縮性シート10における第2融着部間隔D3〔
図2参照〕に概ね相当する。
【0049】
本実施形態の誘導溝部46は、前記断面視においてV字形状をなしている。本実施形態の誘導溝部46は、その高さ方向Z1における開口から底部に向かって、すなわちアンビルロール40の表面から中心に向かって、軸長方向Y1(CD)に沿う長さが漸次減少している。
このようにアンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う方向において、誘導溝部46の開口幅W6〔
図7(b)参照〕は、該誘導溝部46の底部幅(図示せず)よりも広い。
【0050】
固定溝部43及び誘導溝部46それぞれは、伸長状態の弾性部材13の少なくとも一部が収容される容積を有している。固定溝部43及び誘導溝部46それぞれは、弾性部材13が収容された状態において、該弾性部材13が、該溝部を形成する凸部対41,45の上面から一部突出し得るような容積を有していてもよい。
【0051】
本実施形態において、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う方向において、誘導溝部46の開口幅W6〔
図8(b)参照〕は、固定溝部43の開口幅W1〔
図8(a)参照〕よりも広い。これにより、弾性部材13が、第1シート11及び第2シート12に第1融着部15a,15b間において固定されている一方、第2融着部17a,17b間においては固定されていないか、又は第1融着部15a,15b間におけるよりも弱く固定されている構成の伸縮性シート10の製造が容易となる。
【0052】
アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う方向において、誘導溝部46の中心位置は、固定溝部43の最小幅部の幅内に位置している。「最小幅部」は、溝部43,46において、軸長方向Y1に沿う長さが最も短くなる位置における該軸長方向Y1に沿う長さである。
本実施形態の固定溝部43は、凸部対41の高さ方向Z1及び回転方向R(周方向R1)それぞれにおいて、軸長方向Y1に沿う長さが同じであり、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿って視たとき、誘導溝部46の中心位置が、固定溝部43と重なっている。凸部対41は、固定溝部43を挟んで対向する一対の第1凸部41a,41bであり、凸部対45は、誘導溝部46を挟んで対向する一対の第2凸部45a,45bである。
【0053】
また本実施形態においては、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿って視たとき、誘導溝部46の中心位置と固定溝部43の中心位置とが重なっている。
【0054】
本実施形態の製造装置20は、第1シート11をアンビルロール40上に導入し、弾性部材13を伸長状態で該アンビルロール40上に導入した後、さらに第2シート12を該弾性部材13上に導入して、第1シート11、弾性部材13、及び第2シート12からなる積層体14を形成する。
本実施形態のアンビルロール40は、固定溝部43及び誘導溝部46に弾性部材13を挿入しながら、該アンビルロール40に弾性部材13を導入することができる。この弾性部材13の導入時、誘導溝部46の開口幅W6が固定溝部43の開口幅W1よりも広いので、弾性部材13がY方向にズレて導入されたとしても誘導溝部46内に捉えやすい〔
図9(a)参照〕。しかも、誘導溝部46の開口幅W6は、該誘導溝部46の底部幅よりも広く、且つ誘導溝部46の中心位置が、固定溝部43の最小幅部の幅内に位置しているので、誘導溝部46に挿入された弾性部材13が固定溝部43へ収容されるように誘導することができる〔
図9(b)及び(c)参照〕。
【0055】
このように、本実施形態の製造装置20及びそれを用いた伸縮性シートの製造方法によれば、アンビルロール40に任意の形状に導入される弾性部材13を、誘導溝部46及び隣接する弾性部材固定部42の固定溝部43に確実に導入できるので、弾性部材13の意図しない切断を効果的に抑制できる。また、融着部により弾性部材を固定できるので、接着剤の使用による不都合を抑制しつつ、伸縮性に優れた伸縮性シート10を安定して製造することができる。なお、接着剤の使用による不都合としては、柔軟性や通気性の低下等が挙げられる。また本発明において、非直線状配置領域R2や非直線状配置領域R2以外の部位に、接着剤を併用することは許容される。
【0056】
導入される弾性部材13が、誘導溝部46により固定溝部43内に一層確実に誘導されるようにする観点から、誘導溝部46の中心位置は、固定溝部43における最小幅部の開口幅W6を5等分して固定溝部43を幅方向に、中央の3領域とその両側の側部域とに分割したときに、中央の3領域と重なっていることが好ましく、最小幅部の開口幅W6を4等分して、固定溝部43を中央の2領域とその両側の側部域とに分割したときに、中央の2領域と重なっていることが好ましく、最小幅部の開口幅W6を3等分して、固定溝部43を中央の領域とその両側の側部域とに分割したときに、中央の領域と重なっていることが好ましい。本実施形態においては、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿って視たとき、誘導溝部46の中心位置は、固定溝部43の最も深さの深い位置とも重なっている。
【0057】
弾性部材13が、誘導溝部46及び隣接する弾性部材固定部42の固定溝部43により確実に導入されるようにする観点から、誘導溝部46の開口幅W6〔
図8(b)参照〕は、弾性部材13の、アンビルロール40上に導入されるときの幅a〔
図8(b)参照〕の好ましくは2.0倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、また好ましくは4.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下であり、また好ましくは2.0倍以上4.0倍以下、より好ましくは2.5倍以上3.0倍以下である。弾性部材13の、アンビルロール40上に導入されるときの幅a〔
図7(b)参照〕は、該アンビルロール40上に導入されるときの伸長状態における弾性部材13の直径aと同義である。
【0058】
本実施形態における誘導固定部対Pにおいては、弾性部材誘導部47の方が弾性部材固定部42よりもアンビルロールの回転方向Rの前方に位置している。そのため、弾性部材13を、弾性部材誘導部47の誘導溝部46により弾性部材固定部42の固定溝部43に、一層効率的に誘導できる。アンビルロール40はその周面部40tに、弾性部材13等の処理対象物が巻き掛けられるので、弾性部材13等のアンビルロール40への導入位置が、回転方向Rの後方側となる。すなわち、誘導固定部対Pにおいては、弾性部材固定部42の方が弾性部材誘導部47よりもアンビルロールの回転方向Rの後方に位置している。
【0059】
本実施形態における弾性部材誘導部47及び弾性部材固定部42は、アンビルロールの周方向R1に交互に形成されている。斯かる構成により、前述の弾性部材13の位置ズレをより抑制することができる。
これに代えて、前記周方向R1に沿って、複数の弾性部材固定部42が隣り合って形成されていてもよく、複数の弾性部材誘導部47が隣り合って形成されていてもよい。例えば、アンビルロール40の周方向R1に沿って、2個以上の弾性部材固定部42と単数又は2個以上の弾性部材誘導部47が並んで形成されていてもよい。
【0060】
弾性部材13の配置形状の維持と得られる伸縮性シート10の柔軟性とをより確実に両立させる観点から、第1凸部41a,41bの高さH1〔
図8(a)参照〕が、第2凸部45a,45bの高さH2〔
図8(b)参照〕よりも高いことが好ましい。これら凸部の高さH1,H2は、アンビルロール40における凸部以外の周面から該凸部の頂部までの高さである。
上記と同様の観点から、第1凸部41a,41bの高さH1〔
図8(a)参照〕は、第2凸部45a,45bの高さH2〔
図8(b)参照〕に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上であり、また好ましくは140%以下、より好ましくは130%以下であり、また好ましくは110%以上140%以下、より好ましくは120%以上130%以下である。
第2凸部45a,45bの高さH2〔
図8(b)参照〕と第1凸部41a,41bの高さH1〔
図8(a)参照〕との差は、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.04mm以上であり、また好ましくは0.08mm以下、より好ましくは0.06mm以下であり、また好ましくは0.02mm以上0.08mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.06mm以下である。
【0061】
誘導溝部46の深さH4〔
図8(b)参照〕は、固定溝部43の深さH3〔
図8(a)参照〕よりも深いことが好ましい。斯かる構成により、誘導溝部46に蛇行した弾性部材13を収容しやすくなり、該弾性部材13を意図する方向に誘導することができる。
弾性部材13が、誘導溝部46及び隣接する弾性部材固定部42の固定溝部43に確実に導入されるようにすること、及び第1融着部におけるシート間の接合性をより確実に両立させる観点から、固定溝部43及び誘導溝部46の寸法は以下の範囲内であることが好ましい。
誘導溝部46の深さH4〔
図8(b)参照〕は、固定溝部43の深さH3〔
図8(a)参照〕に対して好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上であり、また好ましくは300%以下、より好ましくは250%以下であり、また好ましくは130%以上300%以下、より好ましくは150%以上250%以下である。
溝部の深さは、弾性部材が挿入され得る部分の深さであり、凸部対の高さ方向Z1における凸部の頂部から該溝部の底部までの長さである〔
図8(a)及び(b)参照〕。
固定溝部43の深さH3〔
図8(a)参照〕は、弾性部材13の、アンビルロール40上に導入されるときの直径aに対して好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、また好ましくは120%以下、より好ましくは110%以下であり、また好ましくは70%以上120%以下、より好ましくは80%以上110%以下である。
固定溝部43の深さH3〔
図8(a)参照〕は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上であり、また好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下であり、また好ましくは0.01mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.02mm以上0.8mm以下である。
【0062】
誘導溝部46の深さH4〔
図8(b)参照〕は、弾性部材13の、アンビルロール40上に導入されるときの直径aに対して好ましくは80%以上、より好ましくは100%以上であり、また好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下であり、また好ましくは80%以上200%以下、より好ましくは100%以上150%以下である。
誘導溝部46の深さH4〔
図8(b)参照〕は、好ましくは0.015mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下であり、また好ましくは0.015mm以上5.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上4.0mm以下である。
誘導溝部46の開口幅W6〔
図8(b)参照〕は、上述した第2融着部間隔D3〔
図2参照〕と同じ範囲内であることが好ましい。
【0063】
固定溝部43の開口幅W1〔
図8(a)参照〕は、上述した第1融着部間隔D(
図2参照)と同じ範囲内であることが好ましい。
また、固定溝部43の開口幅W1〔
図8(a)参照〕は、アンビルロール40上に導入される伸長状態の弾性部材13の幅方向長さすなわち直径aに対して、好ましくは1.0倍超2.0倍以下である。
【0064】
本実施形態の誘導溝部46は、前述したようにアンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う断面視において、V字状の形状を有している。斯かる誘導溝部46は、前記断面視において第2凸部45a,45bの端縁から、軸長方向Y1における誘導溝部46の中央に連続する2つの傾斜面49,49で形成されており、該誘導溝部46の底部において該傾斜面49,49の一端どうしが接している。
誘導溝部46へ弾性部材13をより容易に収容する観点から、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う断面視において、誘導溝部46を形成する2つの傾斜面49,49からなる角度θ1〔
図8(b)参照〕は、好ましくは15°以上、より好ましくは30°以上であり、また好ましくは150°以下、より好ましくは120°以下であり、また好ましくは15°以上150°以下、より好ましくは30°以上120°以下である。
【0065】
導入される弾性部材13が、誘導溝部46により固定溝部43に一層確実に誘導されるようにする観点から、誘導固定部対Pを形成する弾性部材固定部42と弾性部材誘導部47との間の距離L1(
図7参照)は、誘導固定部対Pどうし間の距離L2(
図7参照)に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下であり、また好ましくは10%以上60%以下、より30%以上50%以下である。ここでいう距離は、アンビルロールの周方向R1の距離である。同様の観点から、前記距離L1(
図7参照)は、アンビルロールの周方向R1における誘導固定部対Pどうし間の距離よりも短いことが好ましく、同周方向R1における弾性部材固定部42どうし間の距離よりも短いことが好ましい。
【0066】
図10(a)及び(b)には、本発明に係る誘導溝部46の他の実施形態が示されている。後述する
図10(a)及び(b)に示す実施形態については、上述した実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、上述した実施形態についての説明が適宜適用される。
【0067】
図10(a)に示す誘導溝部46aは、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う断面視において、底部48aに向かって該軸長方向Y1に沿う長さが漸次減少する上部F1と、該上部F1よりもアンビルロール40の中心側に位置し該軸長方向Y1に沿う長さが一定である下部F2とを有する溝部である。斯かる下部F2の底部が、本実施形態の誘導溝部46aの最小幅部となっており、該誘導溝部46aの底部48aを形成している。このように、誘導溝部46aは、凸部対の高さ方向Z1において、該軸長方向Y1に沿う長さが一定となる部分を有していてもよい。
【0068】
図10(a)に示す実施形態において、誘導溝部46aの底部48aは軸長方向Y1(CD)に長さを有している。この場合、誘導溝部46aは以下の寸法であることが好ましい。
誘導溝部46aの開口幅W6〔
図10(a)参照〕は、該誘導溝部46aの底部幅W8〔
図10(a)参照〕に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは400%以下であり、また好ましくは110%以上500%以下、より好ましくは120%以上400%以下である。
誘導溝部46aの開口幅W6〔
図10(a)参照〕は、固定溝部43の開口幅W1〔
図10(a)参照〕に対して好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上であり、また好ましくは500%以下、より好ましくは400%以下であり、また好ましくは150%以上500%以下、より好ましくは200%以上400%以下である。
【0069】
図10(a)に示す誘導溝部46aの底部48aは平坦であったが、誘導溝部は斯かる形態に限定されない。
図10(b)に示す誘導溝部46bは、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う断面視において、円弧状の形状を有している。このように誘導溝部46bは、アンビルロール40の軸長方向Y1(CD)に沿う断面視において、該誘導溝部46の輪郭に曲線部分を有していてもよい。
図10(b)に示す誘導溝部46bは、底部48bが凹曲面となっている。
【0070】
図11(a)及び(b)には、
図5における超音波処理部21の要部が拡大して示されている。
前述したように、超音波処理部21におけるアンビルロール40の周面には、複数の凸部対41,45が形成されているのに対し、超音波ホーン31においては、これら凸部対41,45に当接する部位を有する面は凹凸のない平坦面になっている〔
図11(a)及び(b)参照〕。
【0071】
本実施形態の製造装置20を用いた伸縮性シート10の製造方法は、導入工程及び融着部形成工程を具備する(
図5参照)。
導入工程は、第1シート11を、アンビルロール40上に導入し、弾性部材13を、誘導溝部46内及び固定溝部43内に挿入されるように、伸長状態で第1シート11上に導入する工程である。斯かる工程では、第1シート11とともに弾性部材13をアンビルロール40上に導入する。
具体的には、
図5に示すように、原反11aから長尺帯状の第1シート11を連続的に繰り出してアンビルロール40の周面部40t上に導入するとともに、複数の巻回体13aそれぞれから長尺の弾性部材13を連続的に繰り出し、該周面部40t上の第1シート11上に配置する。弾性部材13を第1シート11上に配置した段階(例えば、
図5中符号P1で示す位置)では、各弾性部材13は、伸長状態となっている。またこの段階において各弾性部材13は、アンビルロール40の周面部40tに設けられた誘導溝部46内及び固定溝部43内それぞれに導入された状態で搬送される。
弾性部材13をアンビルロール40に導入する際、該弾性部材13の伸長の程度は、伸縮性シート10の最大伸長状態における弾性部材13の伸長の程度よりも大きく、弾性部材13の直径は、固定溝部43の軸長方向Y1に沿う開口幅よりも小さい。これにより、前述した摩擦のみによって、伸縮性シート10の第1空間S1において弾性部材13を固定することができる。
弾性部材13をアンビルロール40に導入する際、揺動導入装置50により、弾性部材13の導入位置を、アンビルロール40の軸長方向Y1に沿う方向に変位させながら導入する。
【0072】
導入工程においては、前述した誘導溝部46を有するアンビルロール40に伸長状態の弾性部材13が導入されるので、該弾性部材13を適切な方向に沿うように誘導しながら該アンビルロール40に導入することができる。すなわち、弾性部材13が、弾性部材誘導部47の誘導溝部46及び弾性部材固定部42の固定溝部43から外れることを抑制しながら、該弾性部材13をアンビルロール40に導入することができる。
【0073】
融着部形成工程は、第2シート12を、弾性部材13上に導入し、第1シート11及び第2シート12を、該弾性部材13の両側に位置する第1凸部41a,41bと超音波ホーン31との間、及び該弾性部材13の両側に位置する第2凸部45a,45bと超音波ホーン31との間に挟んで融着させる工程である。
融着部形成工程においては、導入工程でアンビルロール40上に導入された第1シート11及び弾性部材13に、さらに第2シート12を導入することで、伸縮性シート10の製造中間体である積層体14を形成する。
具体的には、
図5に示すように、原反12aから長尺帯状の第2シート12を連続的に繰り出し、アンビルロール40の周面部40t上に導入する。これにより周面部40t上に、第1シート11と第2シート12との間に伸長状態の弾性部材13が配置された長尺の積層体14が形成される。次いで、積層体14は、アンビルロール40のR方向への回転によって、
図5中符号P2で示す、超音波ホーン31による処理対象物の押圧位置(超音波処理位置)へ搬送されるとともに、該押圧位置における超音波ホーン31によって超音波振動が印加され、複数の融着部対15,17が形成される(
図1参照)。
【0074】
超音波処理機30は、積層体14における第1シート11と第2シート12とを、弾性部材13を挟む両側の位置において、且つY方向に沿って間隔を置いた複数の位置において融着させる。これにより、前述した一対の第1融着部15a,15b、第2融着部17a,17bが形成される。
例えば、積層体14をアンビルロール40の弾性部材固定部42及び弾性部材誘導部47の先端面と超音波ホーン31の振動印加面31tとの間に挟んで加圧しつつ、両シート11,12に超音波振動を印加する。これら弾性部材固定部42及び弾性部材誘導部47を形成する第1凸部41a,41b及び第2凸部45a,45bの先端面と重なる部分が発熱して、第1シート11及び/又は第2シート12が溶融、再度固化することで、第1シート11及び第2シート12が融着し、これらシートを接合する第1融着部15a,15b及び第2融着部17a,17bが形成される。すなわち、第1融着部対15は、積層体14における弾性部材固定部42との接触部分に形成され、第2融着部対17は、積層体14における弾性部材誘導部47との接触部分に形成される。
【0075】
さらに、本実施形態の製造方法は、第1融着部対15及び第2融着部対17が形成された長尺帯状の積層体14を、製造装置20が備える切断部22にて、所定の製品単位長さに切断する工程(弾性部材弛緩工程)を具備する(
図5参照)。
【0076】
図12には、弾性部材弛緩工程の実施前後の弾性部材13の変化が示されている。
前記弾性部材弛緩工程の実施前、すなわち長尺帯状の積層体14を切断する前の状態において、複数の弾性部材13は、それぞれ、
図12(a)に示すように、伸長状態となっている。
弾性部材弛緩工程において積層体14を切断すると、弾性部材13の伸長状態が解除され、
図12(b)に示すように、弾性部材13が弛緩し、弾性部材13の長さが短くなるとともに、弾性部材13の幅方向長さ(直径)が増加する。このように直径が大きくなった弾性部材13は、
図2に示すとおり、2つの第1融着部15a,15bの間の間隔である第1融着部間隔Dを超える。それによって弾性部材13は2つの第1融着部15a,15bによって挟圧され、第1シート11及び第2シート12の摩擦によってのみ固定される。
このようにして、複数の枚葉の伸縮性シート10が得られる。
【0077】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態のアンビルロール40をその軸長方向Y1(CD)に沿って視たとき、誘導溝部46の中心位置と、固定溝部43の中心位置とは重なっていたが、誘導溝部46の中心位置は、固定溝部43の最小幅部の幅内に位置している限り、固定溝部43の中心位置とは重なっていなくともよい。
【0078】
また、弾性部材が収容される溝部を形成しない別の凸部を設けて、伸縮性シート10に、製造時のシートの搬送方向に対して傾斜した弾性部材を固定するのに寄与しない、第1融着部15a,15b及び第2融着部17a,17b以外の、融着部を設けてもよい。
また本発明の伸縮性シート、本発明の方法又は装置で製造される伸縮性シートは、
図13に示す伸縮性シート10Aのように、弾性部材固定部42が有する凸部によって形成された、第1融着部15a,15b及びそれを含む融着部対15を有する一方、弾性部材誘導部47が有する凸部によっては、融着部又は熱融着部対が形成されていないものであっても良い。
図13に示す伸縮性シート10Aにおいて部位17eは、製造時に、弾性部材誘導部47が有する第2凸部と重なったものの、第1シート11と第2シート12とが融着された融着部が形成されるまでは至らなかった部位である。
【0079】
また上述した実施形態における誘導固定部対Pは、弾性部材誘導部47の方が弾性部材固定部42よりもアンビルロールの回転方向Rの前方に位置していたが、これに代えて、弾性部材固定部42の方が弾性部材誘導部47よりも回転方向Rの前方に位置する誘導固定部対を有していてもよく、一部又は全部の誘導固定部対Pが、弾性部材固定部42の前後両方にアンビルロールの軸長方向Y1の位置が該弾性部材固定部42と同一の弾性部材誘導部47を有していてもよい。またアンビルロールの周方向R1に隣り合う誘導固定部対P間に、アンビルロールの軸長方向Y1の位置が、それらの誘導固定部対Pとは異なる弾性部材誘導部が配置されていてもよい。
【0080】
また、上述した製造装置20においては、超音波ホーン31が、本発明に係るエネルギー付加部材であったが、エネルギー付加部材として、加熱されたヒートロールを採用することもできる。エネルギー付加部材としては、弾性部材13の熱による切断を防止しつつ、弾性部材を挟む融着部対を形成して、弾性部材13の確実な固定と、伸縮性、風合い、通気性等の伸縮性シートの物性とを両立させる観点から、超音波ホーンであることが好ましい。
【符号の説明】
【0081】
10 伸縮性シート
11 第1シート
12 第2シート
13 弾性部材
15a,15b 第1融着部
17a,17b 第2融着部
16 融着部群
20 製造装置
21 超音波処理部
30 超音波処理機
31 超音波ホーン
40 アンビルロール
41a,41b 第1凸部
42 弾性部材固定部
43 固定溝部
45a,45b 第2凸部
46 誘導溝部
47 弾性部材誘導部
50 弾性部材の揺動導入装置
R2 非直線状配置領域
P 誘導固定部対
Y1 アンビルロールの軸長方向
Z1 凸部対の高さ方向