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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20241111BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C23C14/35 D
C23C14/08 E
C23C14/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021026682
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128251
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 尚之
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118028(JP,A)
【文献】特開昭53-088676(JP,A)
【文献】特開昭59-197570(JP,A)
【文献】特開2002-370722(JP,A)
【文献】特開2008-088472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する容器の内部に不活性ガスを供給するとともに、前記容器の内部に配置した金属製の内部電極と前記容器の外部に配置した外部電極との間に高電圧をかけることで、前記容器の内面に、前記内面を被覆する金属酸化物の薄膜を形成する成膜方法であって、 前記内部電極として、内部に、複数の磁石が、前記口部の軸線の方向に隣り合う一方の前記磁石のN極と他方の前記磁石のS極とが前記軸線の方向に隣り合うように前記軸線の方向に整列して配置されたものを用いるとともに、
前記磁石として、前記軸線を挟んだ径方向の一方側の外周面がN極、他方側の外周面がS極となるものを用いることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記内部電極として、アルミニウム製またはチタン製のものを用い、
前記容器の内部に、前記不活性ガスとともに酸素を供給する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いる、請求項に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内面に金属酸化物の薄膜を形成する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料等の清涼飲料、水、酒、醤油等の調味液などを収容する容器として、安価で搬送、廃棄、リサイクル等が容易であることから、例えばポリエチレンテレフタレート製ボトル(ペットボトル)などの合成樹脂製の容器が多く用いられている。
【0003】
合成樹脂製の容器は、ガラス製の容器と比べてガスバリア性が低いため、酸素の侵入により内容物の品質維持期間(シェルフライフ)が低下し易く、また、炭酸飲料等を収容したときに炭酸ガスが消失し易いなどの欠点を有している。
【0004】
上記欠点を解消するために、合成樹脂製容器の内面に、真空蒸着(プラズマCVD法)により、当該内面を被覆する、例えばDLC(Diamond Like Carbon)膜やシリカ膜などの薄膜を設けて、合成樹脂製の容器のガスバリア性を高めることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5012761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂製の容器の内面に、真空蒸着(プラズマCVD法)により、DLC膜やシリカ膜を設けたものは、酸素バリア性に優れるが、例えばアルカリ性に弱いなど、内容物への適正に劣る場合があるという問題点があった。
【0007】
これに対し、合成樹脂製の容器の内面に、アルカリに対する耐性が高い酸化アルミニウムや酸化チタンなどの金属酸化物の薄膜を設けることが考えられる。
【0008】
しかし、この場合、内部電極の周囲に生じるプラズマにより容器が受ける熱による損傷(熱ダメージ)を考慮すると、プラズマを生じさせる電力を低くする必要があり、そのため薄膜の成膜の速度を十分に高めることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、合成樹脂製容器の内面に、内容物への適正が高い薄膜を効率よく形成することが可能な成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜方法は、口部を有する容器の内部に不活性ガスを供給するとともに、前記容器の内部に配置した金属製の内部電極と前記容器の外部に配置した外部電極との間に高電圧をかけることで、前記容器の内面に、前記内面を被覆する金属酸化物の薄膜を形成する成膜方法であって、前記内部電極として、内部に、複数の磁石が、前記口部の軸線の方向に隣り合う一方の前記磁石のN極と他方の前記磁石のS極とが前記軸線の方向に隣り合うように前記軸線の方向に整列して配置されたものを用いるとともに、前記磁石として、前記軸線を挟んだ径方向の一方側の外周面がN極、他方側の外周面がS極となるものを用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の成膜方法は、上記構成において、前記内部電極として、アルミニウム製またはチタン製のものを用い、前記容器の内部に、前記不活性ガスとともに酸素を供給するのが好ましい。
【0014】
本発明の成膜方法は、上記構成において、前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、合成樹脂製容器の内面に、内容物への適正が高い薄膜を効率よく形成することが可能な成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態である成膜方法を実施可能な成膜装置の一例を示す縦断面図である。
図2図1に示す成膜装置の、内部電極の内部構造を示す断面図である。
図3図2に示す磁石の磁極の配置を示す斜視図である。
図4】変形例の磁石の磁極の配置を示す斜視図である。
図5】変形例の磁石を用いた内部電極の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0018】
図1に示す成膜装置1は、本発明の一実施の形態である成膜方法を実施可能なものである。より具体的には、成膜装置1は、本発明の一実施の形態である成膜方法により、合成樹脂製の容器2の内面2aに、当該内面2aを被覆する金属酸化物の薄膜Cを形成することができる。
【0019】
本発明の一実施の形態である成膜方法は、スパッタリング法で行うのが好ましい。スパッタリング法を用いることで、成膜の材料を個体金属のままで使用することができ、原料の取扱いを容易にすることができる。また、スパッタリング法を用いることで、容器2の内面2aへの薄膜Cの密着性、薄膜Cの厚みの制御性を高めることができるとともに、高融点の金属や合金の成膜を可能とすることができる。
【0020】
容器2はポリエチレンテレフタレート製のブロー成形ボトルであり、軸線Oを中心とした円筒状の口部2bと有底筒状の胴部2cとを有するボトル形状となっている。容器2は、例えば、炭酸飲料等の清涼飲料、水、酒、醤油等の調味液などの液体を内容物として収納する用途に用いることができる。なお、容器2は、内容物として、例えば化粧品など、液体ないし個体(粉体)等の他の内容物を収納する用途に用いることもできる。
【0021】
容器2は、ポリエチレンテレフタレート製のブロー成形ボトルに限らず、口部2bを有する合成樹脂製のものであれば、他の材質や形状のものであってもよい。
【0022】
成膜装置1は、容器2を支持する支持台10を備えている。支持台10は、2つのブロック11、12を組み合わせて構成されており、内側のブロック11には上方に向けて開口する断面円形の凹部11aが設けられている。支持台10は、口部2bを凹部11aに篏合させることで、容器2を倒立姿勢(胴部2cに対して口部2bが下方に位置する姿勢)で支持することができる。
【0023】
支持台10の外側のブロック12は金属材料で形成されており、外側のブロック12の上部にある外部電極20は装置側に固定され、外部電極20に対して支持台10が上下動する構造になっている。外部電極20は、例えばステンレス鋼などの通電可能な金属材料により有頂筒状に形成されており、支持台10が上昇することで、支持台10に支持された容器2を外部電極20が覆うことができるようになっている。外部電極20の頂壁部分には、支持台10に支持された容器2の底部分を保持する円筒状の保持筒21が設けられている。
【0024】
支持台10には内部電極30が支持されている。内部電極30は、ターゲットとも呼ばれる金属製のものであり、口部2bの内径よりも小径の細長い円筒状に形成されている。
【0025】
内部電極30は、例えばアルミニウム製、チタン製とすることができる。本実施の形態では、薄膜Cとして酸化アルミニウム膜を形成するために、内部電極30はアルミニウム製となっている。
【0026】
内部電極30は、凹部11aと同軸に配置されて凹部11aから上方に向けて突出しており、支持台10に支持された容器2に対し、その口部2bから挿入されて容器2の内部に配置されるようになっている。内部電極30の上端と容器2の底面との間には所定の間隔が空けられている。
【0027】
内部電極30の軸心にはガス供給路31が設けられている。ガス供給路31はガス供給源32に接続されるとともに内部電極30の上端に開口しており、ガス供給源32から供給された不活性ガスを内部電極30の上端から容器2の内部に供給することができる。すなわち、本実施の形態では、内部電極30は、容器2の内部に不活性ガスを供給するための機能を兼ねた構成となっている。
【0028】
なお、容器2の内部に不活性ガスを供給するためのガス供給路31を、内部電極30とは別に設けた構成としてもよい。この場合、内部電極30は、円筒状ではなく、円柱状であってもよい。
【0029】
本実施の形態では、ガス供給源32からガス供給路31を通して容器2の内部に供給される不活性ガスはアルゴンガスである。また、本実施の形態では、ガス供給源32は、ガス供給路31を通して容器2の内部に、アルゴンガスに加えて酸素を供給するように構成されている。
【0030】
なお、内部電極30を、例えばアルミニウム、チタンなどの酸化していない金属で形成されたものとした場合には、容器2の内部にアルゴンガスなどの不活性ガスに加えて、金属を酸化させるための酸素を供給する構成とするが、内部電極30を、例えば酸化アルミニウム(Al)や酸化チタン(TiO)などの金属酸化物で形成されたものとした場合には、容器2の内部にアルゴンガスなどの不活性ガスのみを供給する構成とすることができる。
【0031】
内部電極30は、内部電極接続棒33に接続される。内部電極30に高電圧(電力)を供給するため、内部電極接続棒に電源34が接続されている。本実施の形態では、電源34は、内部電極30に高電圧として高周波電力を供給する高周波電源である。一方、外部電極20は、装置側に固定されることで接地されている。
【0032】
詳細は図示しないが、外部電極20には真空ポンプが接続されており、この真空ポンプにより、支持台10に支持された容器2の内部及び外部電極20と容器2の間の空間を真空にすることができるようになっている。
【0033】
図1図2に示すように、内部電極30の内部には、複数(本実施の形態では13個)の磁石40が、隣り合う磁石40のN極とS極とが容器2の口部2bの軸線Oの方向に向けて交互に並ぶように整列して配置されている。
【0034】
本実施の形態では、複数の磁石40は、それぞれ内部電極30と同軸の円筒状となっており、軸線Oの方向に間隔を空けずに並べて配置されている。複数の磁石40の内側の空間は、ガス供給路31の一部を構成している。なお、複数の磁石40は、互いに軸線Oの方向に所定の間隔を空けて配置されてもよい。
【0035】
図3に示すように、複数の磁石40は、それぞれ軸線を挟んだ径方向の一方側の外周面がN極、他方側の外周面がS極となっており、図2に示すように、軸線Oの方向で隣り合う一方の磁石40のN極と他方の磁石のS極とが隣り合うように軸線Oの方向に整列して配置されている。なお、本実施の形態では、複数の磁石40として、軸線Oを挟んだ径方向の一方側と他方側にそれぞれN極とS極が径方向に重ねて設けられた多重筒状のものを用いているが、軸線Oを挟んだ径方向の一方側にN極のみが設けられ、他方側にS極のみが設けられた単筒状のものを用いるようにしてもよい。
【0036】
本実施の形態では、それぞれの磁石40はネオジム磁石となっている。なお、磁石40は、ネオジム磁石に限らず、他の永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。
【0037】
内部電極30の内部に、図2に示す配置で複数の磁石40が設けられることで、内部電極30の外部には、隣り合う一方の磁石40におけるN極の外周面から他方の磁石40におけるS極の外周面に向かう磁力線(図2において矢印で示す)が生じることになる。これにより、内部電極30の周囲には集中した磁界が形成される。
【0038】
複数の磁石40としては、図3に示すものに限らず、図4に示すように、それぞれ軸線Oの方向の一方側の端面がN極、他方側の端面がS極となるものを用いてもよい。この場合においても、複数の磁石40は、図5に示すように、隣り合う一方の磁石40のN極と他方の磁石のS極とが軸線Oの方向に隣り合うように軸線Oの方向に整列して配置される。
【0039】
内部電極30の内部に、図5に示す配置で複数の磁石40が設けられる場合には、内部電極30の外部には、軸線Oの方向の上方側の端部に配置された磁石40の上端面から、軸線Oの方向の下方側の端部に配置された磁石40の下端面に向かう磁力線(図5において矢印で示す)が生じることになる。これにより、図2に示す場合よりは広くなる傾向はあるが、内部電極30の周囲に集中した磁界が形成される。
【0040】
なお、容器2の内部に不活性ガスを供給するためのガス供給路31を、内部電極30とは別に設けた構成とした場合には、複数の磁石40は、それぞれ円筒状に限らず、円柱状ないし円板状であってもよい。
【0041】
次に、上記の構成を有する成膜装置1を用いた場合における、合成樹脂製の容器2の内面2aに酸化アルミニウムの薄膜Cを形成する方法、すなわち本発明の一実施の形態である成膜方法について説明する。
【0042】
まず、外部電極20に対して支持台10を下降させ、成膜の対象となる合成樹脂製の容器2を倒立姿勢で支持台10に支持させる。このとき、内部電極30は、容器2の口部2bに挿通され、容器2の内部に配置される。次に、外部電極20に向けて支持台10を上昇させ、容器2を外部電極20で覆う。
【0043】
次に、真空ポンプを作動させ、容器2の内部及び外部電極20と容器2の間の空間を真空引きして所定の真空度に減圧させる。
【0044】
容器2の内部及び外部電極20と容器2の間の空間が所定の真空度にまで減圧されると、当該真空引きを継続しつつガス供給路31を通して容器2の内部に不活性ガス(アルゴンガス)と酸素の混合ガスを供給して、容器2の内部を所定の圧力とする。
【0045】
次に、電源34から内部電極30に高電圧(高周波電力)を供給し、外部電極20と内部電極30との間に電圧を印加する。これにより、容器2の内部の不活性ガスがプラズマ化し、当該プラズマP中のイオン(アルゴンイオン)がターゲットである金属製(アルミニウム製)の内部電極30に衝突することで、内部電極30から外部電極20の側に向けて金属の粒子(原子)が飛び出す。内部電極30から飛び出した粒子は、容器2の内部に供給された酸素と反応して酸化されて金属酸化物(酸化アルミニウム、Al)となり、容器2の内面2aに付着する。電源34から内部電極30に所定の成膜時間(例えば10秒)、高電圧を供給することで、容器2の内面2aに、所定の厚みの金属酸化物(酸化アルミニウム)の薄膜Cが形成される。
【0046】
所定の成膜時間の経過後、電源34から内部電極30への高電圧の供給を停止するとともに、ガス供給路31から容器2の内部への不活性ガス及び酸素の供給を停止する。次いで、図示しない真空ポンプによる真空引きを遮断するとともに、容器2の内部及び外部電極20と容器2の間の空間に外気を供給して大気圧に戻し、外部電極20に対して支持台10を下降させて、内面2aに金属酸化物の薄膜Cが形成された容器2を取り出す。
【0047】
このように、本実施の形態の成膜方法では、口部2bを有する容器2の内部に不活性ガスを供給するとともに、容器2の内部に配置した金属製の内部電極30と容器2の外部に配置した外部電極20との間に高電圧をかけることで、容器2の内面2aに、当該内面2aを被覆する金属酸化物の薄膜Cを形成するにあたり、内部電極30として、内部に、複数の磁石40が、隣り合う磁石40のN極とS極とが口部2bの軸線Oの方向に向けて交互に並ぶように整列して配置されたものを用いるようにしたので、容器2の内面2aに、内容物への適正が高い(例えば耐アルカリ性に優れた)金属酸化物の薄膜Cを容易に形成することができる。
【0048】
特に、本実施の形態の成膜方法では、内部電極30として、内部に、複数の磁石40が、隣り合う磁石40のN極とS極とが口部2bの軸線Oの方向に向けて交互に並ぶように整列して配置されたものを用いるようにしたので、内部電極30に磁石40が設けられない場合に比べて、内部電極30の周囲に集中して磁界が形成されるようにして、成膜を行う際に、内部電極30の周囲における不活性ガスのイオン化を促進することができるとともに当該内部電極30の周囲にプラズマPを集中させることができる。これにより、容器2の内面2aへの金属酸化物の薄膜Cの成膜の速度を向上させることができるとともに、容器2がプラズマPから受ける熱量を低減して、容器2が熱により損傷を受けることを抑制することができる。よって、容器2の内面2aに、内容物への適正が高い金属酸化物の薄膜Cを効率よく形成することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、磁石40として、軸線Oを挟んだ径方向の一方側の外周面がN極、他方側の外周面がS極となるものを用いるようにしたので、磁石40が設けられない場合に比べて、内部電極30の周囲における不活性ガスのイオン化をさらに促進することができるとともに内部電極30の周囲のより集中した範囲に磁界が形成されるようにすることができる。これにより、容器2の内面2aへの金属酸化物の薄膜Cの成膜の速度をさらに向上させることができるとともに、容器2がプラズマPから受ける熱量をさらに低減して、容器2の熱により損傷を受けることをさらに効果的に抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態では、磁石40として、軸線Oの方向の一方側の端面がN極、他方側の端面がS極となるものを用いることによっても、磁石40が設けられない場合に比べて、内部電極30の周囲における不活性ガスのイオン化を促進することができるとともに内部電極30の周囲に集中した範囲に磁界が形成されるようにすることができる。これにより、容器2の内面2aへの金属酸化物の薄膜Cの成膜の速度を向上させることができるとともに、容器2がプラズマPから受ける熱量を低減して、容器2の熱により損傷を受けることを効果的に抑制することができる。
【0051】
本発明の効果を確認するために、内部電極として、アルミニウム製であるとともに、その内部に、それぞれ軸線を挟んだ径方向の一方側の外周面がN極、他方側の外周面がS極となる複数の磁石が、隣り合う磁石のN極とS極とが口部の軸線の方向に向けて交互に並ぶように整列して配置された構成のものを用いた実施例1の成膜方法、内部電極として、アルミニウム製であるとともに、その内部に、それぞれ軸線の方向の一方側の端面がN極、他方側の端面がS極となる複数の磁石が、隣り合う磁石のN極とS極とが口部の軸線の方向に向けて交互に並ぶように整列して配置された構成のものを用いた実施例2の成膜方法、及び、内部電極として、アルミニウム製であるとともに、その内部に磁石が設けられない構成のものを用いた比較例の成膜方法で、それぞれポリエチレンテレフタレート製の容器の内面に、酸化アルミニウムの薄膜を形成する試験を行った。
【0052】
それぞれの成膜方法においては、容器の内部へのアルゴンガスの供給量は、3.334×10-7/s(20sccm)とし、容器の内部への酸素の供給量は、3.334×10-7/s(20sccm))とし、外部電極と内部電極との間に供給する電力は、300Wとし、0.2秒間隔でオン、オフしながら10秒間、電力を供給するようにした。
【0053】
上記成膜条件による成膜を60回(10分間)行った結果、実施例1の方法では、容器の内面に膜厚15nmの酸化アルミニウムの薄膜が形成され、1nm当たりの成膜時間は40秒であり、実施例2の方法では、容器の内面に膜厚10nmの酸化アルミニウムの薄膜が形成され、1nm当たりの成膜時間は60秒であり、比較例の方法では、容器の内面に膜厚8nmの酸化アルミニウムの薄膜が形成され、1nm当たりの成膜時間は75秒であった。
【0054】
この結果から、内部電極として、内部に、複数の磁石が、隣り合う磁石のN極とS極とが口部の軸線の方向に向けて交互に並ぶように整列して配置されたものを用いることにより、容器の内面への金属酸化物の薄膜Cの成膜の速度を向上させて、容器の内面に、内容物への適正が高い金属酸化物の薄膜を効率よく形成することができることが確認された。
【0055】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0056】
例えば、内部電極30の形状は円筒状に限らず、立方体形状や直方体形状などの種々の形状とすることができる。さらに、磁石40の形状についても円筒状、円柱状に限らず、内部電極30の形状に合わせて、例えば立方体形状や直方体形状などの種々の形状とすることができる。また、磁石40の数も種々変更可能である。
【0057】
また、前記実施の形態においては、内部電極30に高周波電力を供給するようにしているが、プラズマを発生させることができれば、高周波電力に限られない。
【0058】
さらに、前記実施の形態においては、内部電極30としてアルミニウム製のものを用いて容器2の内面2aに酸化アルミニウムの薄膜Cを形成するようにしているが、これに限らず、例えば内部電極30としてチタン製またはケイ素製のものを用い、容器2の内部にアルゴンと酸素とを供給することで、容器2の内面2aに酸化チタン(TiO2)または二酸化ケイ素(SiO2)の薄膜を形成するなど、他の金属酸化物の膜を形成するよういしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 成膜装置
2 容器
2a 内面
2b 口部
2c 胴部
10 支持台
11 ブロック
11a 凹部
12 ブロック
20 外部電極
21 保持筒
30 内部電極
31 ガス供給路
32 ガス供給源
33 内部電極接続棒
34 電源
40 磁石
O 軸線
C 薄膜
P プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5