(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
A45D40/04 B
(21)【出願番号】P 2021030961
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020095006
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050884(JP,A)
【文献】特開2017-136307(JP,A)
【文献】特開2003-104463(JP,A)
【文献】特開平08-187123(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/02-40/06
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に繰り出し口を備えるケース筒と、
外周面が雄ねじで形成されるねじ軸を備え、前記ケース筒の径方向内側に回り止めされた状態で上下方向に移動可能に配置され、内容物を支持する繰り出し部材と、
前記ねじ軸の径方向外側に配置される螺合筒、及び前記螺合筒の外周面に嵌合によって一体化される外装筒を備える操作部材とを有し、
前記螺合筒が、筒状の螺合筒本体と、前記螺合筒本体から上方に延び、前記雄ねじに螺合する弾性片とを有し、
前記外装筒の内周面が、前記弾性片を径方向外側から支持する支持面と、前記螺合筒よりも上方で上方に向けて段差状に縮径する段差面とを有し、
前記ケース筒が、前記弾性片の上面と前記外装筒の前記段差面との間に配置されることで前記操作部材を相対回転可能に保持する保持部を有
し、
前記ねじ軸が、上下方向に延びる縦帯状のねじ間欠部を有し、
前記ケース筒が、前記ねじ間欠部に係合することで前記繰り出し部材を回り止めされた状態で上下方向に移動するように案内可能な案内部を有し、
前記保持部が、全周に亘って縦断面形状がU字状をなす拡径部で構成され、
前記案内部が、前記拡径部の下端に連なることを特徴とする繰り出し容器。
【請求項2】
前記案内部が、前記ねじ間欠部に対して摺動することで前記ケース筒に対する前記繰り出し部材の上下方向への移動に対して抵抗を与える摺動抵抗部を有する、請求項
1に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布可能な固形状の内容物を収納する容器として、繰り出し容器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、上端に繰り出し口を備えるケース筒と、ケース筒の径方向内側に配置され、内容物を支持する繰り出し部材と、内周面が雌ねじで形成され、ケース筒に相対回転可能に保持される操作部材とを有し、繰り出し部材が、ケース筒に設けられた上下方向に延びるスリットを介して操作部材の雌ねじに螺合する螺合部を有する繰り出し容器が記載されている。
【0004】
この繰り出し容器によれば、操作部材をケース筒に対して相対回転させることにより、繰り出し部材をケース筒内で上昇させて、内容物を繰り出し口から繰り出して使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来の繰り出し容器は、少なくともスリットが設けられた高さ範囲に亘って操作部材、ケース筒及び繰り出し部材が径方向に並べて配置された構成となっているので、径方向に小型化しにくかった。また、繰り出し容器の組み立て時には、操作部材を繰り出し部材と螺合させるために多くの回転操作が必要であり、手間であった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とし、その目的は、径方向に小型化し易く組立てが容易な繰り出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の繰り出し容器は、上端に繰り出し口を備えるケース筒と、外周面が雄ねじで形成されるねじ軸を備え、前記ケース筒の径方向内側に回り止めされた状態で上下方向に移動可能に配置され、内容物を支持する繰り出し部材と、前記ねじ軸の径方向外側に配置される螺合筒、及び前記螺合筒の外周面に嵌合によって一体化される外装筒を備える操作部材とを有し、前記螺合筒が、筒状の螺合筒本体と、前記螺合筒本体から上方に延び、前記雄ねじに螺合する弾性片とを有し、前記外装筒の内周面が、前記弾性片を径方向外側から支持する支持面と、前記螺合筒よりも上方で上方に向けて段差状に縮径する段差面とを有し、前記ケース筒が、前記弾性片の上面と前記外装筒の前記段差面との間に配置されることで前記操作部材を相対回転可能に保持する保持部を有し、前記ねじ軸が、上下方向に延びる縦帯状のねじ間欠部を有し、前記ケース筒が、前記ねじ間欠部に係合することで前記繰り出し部材を回り止めされた状態で上下方向に移動するように案内可能な案内部を有し、前記保持部が、全周に亘って縦断面形状がU字状をなす拡径部で構成され、前記案内部が、前記拡径部の下端に連なることを特徴とする。
【0010】
本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記案内部が、前記ねじ間欠部に対して摺動することで前記ケース筒に対する前記繰り出し部材の上下方向への移動に対して抵抗を与える摺動抵抗部を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、径方向に小型化し易く組立てが容易な繰り出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態である繰り出し容器を内容物を繰り出す前の状態で示す一部断面側面図である。
【
図2】
図1に示すケース筒の一部断面側面図である。
【
図4】
図1に示す繰り出し部材を周方向に90°ずれた方向から視たときの側面図である。
【
図9】
図1に示す繰り出し容器を内容物を繰り出したときの状態で示す一部断面側面図である。
【
図10】
図1に示す繰り出し容器を組み立てるために、治具に繰り出し部材を取り付けたときの状態を示す一部断面側面図である。
【
図11】
図10に示す状態からケース筒を組み付けたときの状態を示す一部断面側面図である。
【
図12】
図11に示す状態から螺合筒を組み付けたときの状態を示す一部断面側面図である。
【
図13】
図12に示す状態から治具を取り除き、外装筒を組み付けたときの状態を示す一部断面側面図である。
【
図14】
図1に示す繰り出し容器の変形例を示す一部断面側面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態である繰り出し容器を内容物を繰り出す前の状態で示す縦断面図である。
【
図18】(a)は
図15における繰り出し部材を左から視たときの側面図であり、(b)は
図15における繰り出し部材を正面から視たときの側面図であり、(c)は
図15における繰り出し部材を右から視たときの側面図である。
【
図19】
図15に示す繰り出し容器を内容物を繰り出したときの状態で示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である繰り出し容器1を例示説明する。
【0015】
なお、本明細書において、繰り出し容器1について、上下方向はケース筒10の中心軸線Oに沿う方向を意味し、上方は内容物2が繰り出される方向を意味し、下方はその反対方向を意味し、径方向は中心軸線Oと直交する直線に沿う方向を意味し、周方向は中心軸線Oを周回する方向を意味し、縦断面は中心軸線Oを含む断面を意味し、横断面は中心軸線Oに垂直な断面を意味している。
【0016】
また、本明細書において、治具3について、上下方向は治具3を正立姿勢にしたときの上下方向を意味している。
【0017】
図1に示す本発明の第1実施形態である繰り出し容器1は、ケース筒10、繰り出し部材20、操作部材30及びオーバーキャップ40で構成されている。また、操作部材30は、螺合筒50及び外装筒60で構成されている。さらに、ケース筒10内には固形状の内容物2が収容されている。
【0018】
本実施形態では、ケース筒10、繰り出し部材20、螺合筒50、外装筒60及びオーバーキャップ40は、共通の中心軸線Oを有している。
【0019】
ケース筒10、繰り出し部材20及び螺合筒50は、それぞれ、合成樹脂材料による射出成形で一体に形成されている。なお、これらの部材の材料及び形成方法はこれに限らない。しかし、これらの部材はそれぞれ一体成形物であるのが好ましい。また、外装筒60及びオーバーキャップ40は、それぞれ、金属製であるが、合成樹脂製であってもよい。
【0020】
内容物2としては、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布可能なものを採用することができる。本実施形態では、内容物2は、略円柱状の口紅である。なお、固形状の内容物2とは、形状を留めておける程度の堅さを有するものを意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。ケース筒10に収納された内容物は、繰り出し口11においてケース筒10の外部に露出している。
【0021】
ケース筒10は、中心軸線Oに沿って延びる円筒状をなしており、上端に繰り出し口11を有している。なお、ケース筒10は、円筒状以外の筒状をなすものであってもよい。また、本実施形態では、繰り出し口11は、中心軸線Oに垂直な面に対して斜めに傾斜しているが、中心軸線Oに垂直であってもよい。
【0022】
図2~
図3に示すように、ケース筒10の下端付近には保持部12が設けられている。保持部12は、ケース筒10の外周面が拡径した拡径部13で構成されている。また、拡径部13は、環状の上壁13aと、上壁13aの外周縁から垂下する円筒状の周壁13bと、周壁13bの下端から径方向内側に延びる環状の下壁13cとで構成され、周方向に全周に亘って縦断面形状がU字状をなしている。なお、周壁13bは円筒状以外の筒状をなしていてもよい。
【0023】
下壁13cの内周縁には、中心軸線Oを挟んで互いに対向する2つの案内部14の上端が連なっている。各々の案内部14は、下壁13cの内周縁からケース筒10の下端まで上下方向に延び、全長に亘って横断面形状が径方向内側に突出するU字状をなす縦リブ15で構成されている。各々の縦リブ15は、周方向に互いに対向する2つの側壁15aと、2つの側壁15aの径方向内側端縁同士を連ねる中間壁15bとで構成されている。
【0024】
図1、
図4及び
図5に示すように、繰り出し部材20は、ケース筒10の中心軸線Oと同軸状に配置される円筒状をなしており、内容物支持部21、ねじ軸22及び抜け止め部23を有している。
【0025】
内容物支持部21は、繰り出し部材20の上端を形成している。内容物支持部21の上端は、繰り出し口11と平行に傾斜している。なお、繰り出し口11を中心軸線Oに垂直に設ける場合には、内容物支持部21の上端も中心軸線Oに垂直に設けるのが好ましい。また、内容物支持部21は、ケース筒10の内周面上を上下方向に摺動可能である。なお、内容物支持部21は円筒状に限らず、ケース筒10の形状に合わせて適宜その形状を変更可能である。
【0026】
内容物2は、繰り出し口11と繰り出し部材20の内容物支持部21との間においてケース筒10に収納されており、その下部は内容物支持部21の内周面に固着し、支持されている。繰り出し部材20は、
図1に示す位置から上昇することで、ケース筒10の内部に収納されている内容物2を押し上げて、繰り出し口11から外部に繰り出すことができる。
【0027】
ねじ軸22は、外周面が雄ねじ22aで形成されており、中心軸線Oを挟んで互いに対向する位置に、上下方向に雄ねじ22aの全長に亘って延びる縦帯状をなす2つのねじ間欠部22bを有している。各々のねじ間欠部22bは、上下方向に雄ねじ22aの全長に亘って延びる縦溝22cで構成されている。各々の縦溝22cは、雄ねじ22aのねじ山底部と同等の径方向高さの溝底面22dと、雄ねじ22aのねじ山の周方向端面で構成される2つの溝側面22eとで構成されている。
【0028】
2つのねじ間欠部22bには、ケース筒10の対応する案内部14が係合しており、これにより、案内部14は、繰り出し部材20を回り止めされた状態で上下方向に移動するように案内することができる。また、各々の案内部14の縦リブ15の中間壁15bの内周面は、対応するねじ間欠部22bの溝底面22dに対して摺動することでケース筒10に対する繰り出し部材20の上下方向への移動に対して抵抗を与える摺動抵抗部16を構成している。
【0029】
抜け止め部23は、周方向に延びる横溝23aで構成されている。横溝23aは、雄ねじ22aのねじ山底部と同等の径方向高さの溝底面23bと、雄ねじ22aのねじ山の下端面で構成される上側の溝側面23cと、雄ねじ22aのねじ山と同等の径方向高さを有する下側の溝側面23dとで構成されている。
【0030】
内容物支持部21の内周面とねじ軸22の内周面との間には、下方に向けて段差状に縮径する段部24が設けられている。
【0031】
図1、
図6及び
図7に示すように、螺合筒50は、ケース筒10の中心軸線Oと同軸状にねじ軸22の径方向外側に配置される円筒状をなしており、螺合筒本体51と、螺合筒本体51からそれぞれ上方に延びるとともに周方向に並べて設けられた複数(4つ)の弾性片52とを有している。なお、弾性片52の数及び配置は適宜変更が可能である。
【0032】
螺合筒本体51は、円筒状の筒壁51aと、筒壁51aの下端から径方向内側に延びる円環状の底壁51bとを有している。筒壁51aの外周面における上端付近から下部に跨る部分は、上下方向にそれぞれ延びるとともに周方向に並ぶ複数の凸リブ51cで構成される嵌合案内部51dを形成している。また、筒壁51aの外周面における下部は、嵌合案内部51dと同等の外径を有する円柱面51eで構成される嵌合面51fを形成している。
【0033】
各々の弾性片52は、雄ねじ22aに螺合する螺合部52aを内周面における上側部分に有している。各々の螺合部52aは、雌ねじ52bで構成されている。また、各々の弾性片52は、螺合部52aの上端から弾性片52の上端に跨る部分の内周面が、雌ねじ52bのねじ山底部よりも拡径された拡径内周面52cで構成されている。各々の弾性片52の外周面における螺合部52aよりも上方の部分には、突起52dが設けられている。
【0034】
図1及び
図8に示すように、外装筒60は、ケース筒10の中心軸線Oと同軸状に配置される円筒状をなしており、螺合筒50の外周面に嵌合によって一体化されている。外装筒60は、ケース筒10の保持部12(拡径部13)よりも径方向外側に配置されるとともに螺合筒50の嵌合面51fに嵌合する円筒状の外装筒本体61と、外装筒本体61の上端に段差部62を介して連なるとともに保持部12(拡径部13)よりも縮径した円筒状の縮径部63とを有している。
【0035】
外装筒本体61の内周面は、弾性片52が径方向外側に弾性変形することで雄ねじ22aと弾性片52の螺合部52aとの螺合が外れることを防止するために、弾性片52を突起52dを介して径方向外側から支持する支持面64を有している。外装筒本体61の外周面は、把持部65を構成しており、回転操作を受けることができる。また、段差部62の下面は、螺合筒50よりも上方で上方に向けて段差状に縮径する段差面62aを構成している。縮径部63には、オーバーキャップ40に嵌合する複数の凸部63aが周方向に並べて設けられている。
【0036】
図1に示すように、ケース筒10の保持部12は、複数の弾性片52の上端面と外装筒60の段差面62aとの間に配置されることで操作部材30を相対回転可能に保持している。また、各々の弾性片52の拡径内周面52cとねじ軸22の外周面との間には、ケース筒10における保持部12よりも下方に位置する部分、つまりケース筒10の下端が配置されている。
【0037】
内容物2を繰り出す前の状態である
図1に示す状態では、ケース筒10の案内部14がねじ軸22のねじ間欠部22bの上端に位置している。またこのとき、繰り出し部材20の下端面は螺合筒50の底壁51bの上面付近に位置している。
【0038】
繰り出し容器1は、操作部材30とねじ軸22の内部を通って内容物支持部21の内部まで延び、後述する中空棒状の充填ノズルを挿入可能なノズル挿入路Pを有している。つまり、ノズル挿入路Pは、螺合筒50の底壁51bの内周面と、ねじ軸22の内周面とによって区画されている。なお、ノズル挿入路Pの下端を、螺合筒50の底壁51bの下面にラベルを貼ることで閉塞してもよい。
【0039】
図1に二点鎖線で示すように、オーバーキャップ40は、周壁部41と頂壁部42とを備えた有頂円筒状となっており、外装筒60に着脱可能に装着されることで、ケース筒10の繰り出し口11を覆うように構成されている。オーバーキャップ40が外装筒60に装着された
図1に示す状態では、周壁部41の内周面が外装筒60の縮径部63の外周面に嵌合するとともに、周壁部41の下端面が外装筒60の段差部62の上面に当接している。
【0040】
上記構成を有する本実施形態の繰り出し容器1は、
図9に示すように、オーバーキャップ40を取り外した状態で、ケース筒10を一方の手などで保持しつつ他方の手などで操作部材30の把持部65を把持して周方向一方側に回転操作するなどして、操作部材30をケース筒10に対して周方向一方側に相対回転させることで、内容物2をケース筒10の繰り出し口11から外部に繰り出すことができる。
【0041】
すなわち、操作部材30をケース筒10に対して周方向一方側に相対回転させると、操作部材30の一部である螺合部52aがケース筒10に対して周方向一方側に相対回転する。螺合部52aに螺合する雄ねじ22aを備えたねじ軸22は、ケース筒10に回り止めされているので、操作部材30をケース筒10に対して周方向一方側に相対回転させると、螺合部52aと雄ねじ22aのねじ作用によりねじ軸22が内容物支持部21と一体にケース筒10に対して上昇する。これにより、内容物2は、上昇する内容物支持部21によって押し上げられ、繰り出し口11からケース筒10の外部に繰り出される。内容物2のケース筒10からの繰り出し量(突出量)は、操作部材30を相対回転させる量によって調整することができる。よって、操作部材30をケース筒10に対して周方向一方側に所望の量だけ相対回転させることで、ケース筒10の繰り出し口11から、所望の量の内容物2を繰り出して、使用することができる。
【0042】
また、操作部材30を、ケース筒10に対して、内容物2の繰り出し時とは反対側となる周方向他方側に相対回転させると、螺合部52aと雄ねじ22aのねじ作用によりねじ軸22が内容物支持部21と一体にケース筒10に対して下降する。これにより、内容物2は、下降する内容物支持部21によって引き下げられ、繰り出し口11からケース筒10の内部に繰り入れられる。したがって、内容物2の塗布後に内容物2をケース筒10の内部に繰り入れて、内容物2をケース筒10によって保護することができる。また、内容物2を繰り出しすぎたときに内容物2を繰り入れて、ケース筒10からの繰り出し量を調節することができる。
【0043】
操作部材30への回転操作に応じて繰り出し部材20を上下方向に動作させる際には、摺動抵抗部16によってケース筒10と繰り出し部材20との間に適度な摺動抵抗が与えられる。このように摺動抵抗部16を設けることにより、操作部材30への回転操作に応じた繰り出し部材20の動作に適度な抵抗を容易に設定することができる。
【0044】
図9に示すように、内容物2を最大量まで繰り出した時には、螺合部52aがねじ軸22の抜け止め部23内に到達し、螺合部52aと雄ねじ22aの螺合が外れるため、操作部材30をケース筒10に対して周方向一方側にそれ以上相対回転させたとしても、ねじ軸22はそれ以上上昇することはなく、これにより繰り出し部材20がケース筒10の繰り出し口11から抜け落ちてしまうことが防止される。
【0045】
本実施形態の繰り出し容器1は、例えば、
図10~
図13に示す要領で組み立てることができる。
【0046】
まず、
図10に示すように、治具3に繰り出し部材20を取り付ける。治具3は、底面3aが載置面となる円板状の台座3bと、台座3bより縮径し台座3bの上面から上方に延びる円柱状の軸部3cとを有している。また、軸部3cは、上方に向けて段差状に縮径する段差部3dを有している。したがって、正立姿勢の治具3に倒立姿勢とした繰り出し部材20を上方から組み付け、繰り出し部材20の段部24を治具3の段差部3dに当接させることにより、治具3に繰り出し部材20を取り付けることができる。
【0047】
次いで、
図11に示すように、倒立姿勢としたケース筒10を上方から組み付ける。具体的には、ケース筒10の案内部14を、繰り出し部材20のねじ間欠部22bを構成する縦溝22cの上端(この組み付け時は鉛直方向下端)に当接させることで、ケース筒10を組み付けることができる。
【0048】
そして、
図12に示すように、倒立姿勢とした螺合筒50を上方から組み付ける。螺合筒50は、ねじ軸22の雄ねじ22aと螺合する螺合部52aを有しているが、各々の螺合部52aは、弾性片52の弾性変形により径方向に変位し、雄ねじ22aへの螺合を外すことができる。したがって、螺合筒50を下方に回転させずに真っすぐ押下げるだけで、弾性片52のの上端面(この組み付け時は鉛直方向下端面)がケース筒10の拡径部13(保持部12)に当接するまで螺合筒50を押し下げて、螺合筒50の組み付けを完了することができる。
【0049】
そして、
図13に示すように、治具3を取り除き、組み立て品を正立姿勢にしてから、正立姿勢とした外装筒60を上方から組み付ける。具体的には、外装筒60の段差面62aをケース筒10の拡径部13(保持部12)の上面に当接させることで、外装筒60を組み付けることができる。この組み付けにより、外装筒60は、螺合筒本体51の嵌合案内部51dと嵌合面51fに嵌合し、螺合筒本体51に一体化する。その際、外装筒60は下降に伴ってまず嵌合案内部51d上を下方に摺動するが、嵌合案内部51dが複数の凸リブ51cで構成されていることにより摺動抵抗が抑えられているので、外装筒60をスムーズに下降させて嵌合面51fに嵌合させることができる。
【0050】
外装筒60を組み付けることにより、弾性片52が突起52dを介して外装筒60の支持面64に当接し、径方向外側から支持される。これにより、弾性片52が径方向外側に弾性変形して螺合部52aと雄ねじ22aとの螺合が外れることが防止される。
【0051】
このようにして繰り出し容器1が組み立てられると、オーバーキャップ40を装着する前に、内容物支持部21とケース筒10のそれより上方の部分との内部に内容物2が充填される。この充填工程は、例えば次の要領で行うことができる。
【0052】
まず、繰り出し口11を図示しないキャップ体で閉塞するとともに繰り出し容器1を倒立姿勢とする。次いで、図示しない中空棒状の充填ノズルを鉛直上方からノズル挿入路P内に挿入する。そして、充填ノズルの吐出口が例えば内容物支持部21内に位置する状態で、流動性を有する高温状態の内容物2を吐出し、内容物支持部21とケース筒10のそれより上方(鉛直下方)の部分との内部を満たす。その後、内容物2を冷却して固化させ、キャップ体を取り除く。
【0053】
本実施形態の繰り出し容器1は、繰り出し部材20と操作部材30とがケース筒10を介することなく螺合する構成であるため、繰り出し容器1の径方向の小型化を容易に実現することができる。また、本実施形態の繰り出し容器1は、組み立て時に、複数の弾性片52を径方向に弾性変形させて雄ねじ22aへの螺合部52aの螺合を外すことができる構成であるため、螺合筒50を回転させずに真っすぐ組み付けることにより、容易な組み立てを実現することができる。
【0054】
前述した本実施形態の繰り出し容器1は、内容物2を繰り出し口11の側からではなくその反対側である下方から充填するバック充填を可能にするためにノズル挿入路Pを有する構成であるが、これに限らず、例えば
図14に示す変形例のように、内容物支持部21が底面壁21aを有しており、したがってノズル挿入路Pを有しておらず、内容物2を繰り出し口11の側から充填される構成としてもよい。なお、
図14において、
図1~
図13に示した要素に対応する要素に同一の符号を付している。
【0055】
また、第1実施形態の繰り出し容器1は、保持部12が全周に亘って縦断面形状がU字状をなす拡径部13で構成され、各々の案内部14が縦リブ15で構成されているが、保持部12と各々の案内部14は、
図15~
図19に示す第2実施形態のような構成であってもよい。なお、
図15~
図19において、
図1~
図13に示した要素に対応する要素に同一の符号を付している。
【0056】
第2実施形態では、
図15に示すように、外装筒60及びオーバーキャップ40は、それぞれ合成樹脂製であるがその他の点では第1実施形態と同様の構成となっている。また、
図15及び
図18(a)~(c)に示すように、繰り出し部材20は、第1実施形態と同様の構成となっている。なお、本実施形態では2つのねじ間欠部22bは互いに周方向の幅が相違しており、これに合わせて2つの案内部14も互いに周方向の幅が相違している(
図17参照)が、これに限らず、2つのねじ間欠部22bと2つの案内部14はそれぞれ互いに幅が同一であってもよい。上記のように幅を相違させることにより、ケース筒10と繰り出し部材20を組み付ける際の上端部傾斜面が合わない誤組み付けを防止することができる。なお、第1実施形態においても本実施形態のように幅を相違させる構成としてもよい。また、螺合筒50は、第1実施形態と同様の構成となっている。ケース筒10は、保持部12と2つの案内部14を除いては、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0057】
図15~
図17に示すように、本実施形態では保持部12は、ケース筒10の下端に設けられている。保持部12は、ケース筒10の外周面が拡径した拡径部13で構成されている。本実施形態では拡径部13の内周面は、下部を除いた部分が拡径部13よりも上方におけるケース筒10の内周面と同一の内径となっており、下部において拡径している。また、拡径部13の外周面における上側部分には、周方向に間欠状に並ぶ複数の凹部13dが設けられている。拡径部13の外周面の下部には、周方向に間欠状に並ぶ複数の突起13eが設けられている。複数の凹部13dと複数の突起13eにより、拡径部13と外装筒60の間の摺動抵抗が低減されている。
【0058】
保持部12は、第1実施形態の場合と同様に、複数の弾性片52の上端面と外装筒60の段差面62aとの間に配置されることで操作部材30を相対回転可能に保持している。
【0059】
また、本実施形態では各々の案内部14は、拡径部13の内周面から径方向内側に突出するとともに下方に延びる突片17で構成されている。また、各々の突片17の下端の内周面で摺動抵抗部16が構成されている。
【0060】
各々の案内部14は、第1実施形態の場合と同様に、対応するねじ間欠部22bに係合しており、これにより、案内部14は、繰り出し部材20を回り止めされた状態で上下方向に移動するように案内することができる(
図15、
図19参照)。
【0061】
また、各々の摺動抵抗部16は、第1実施形態の場合と同様に、対応するねじ間欠部22bの溝底面22dに対して摺動することでケース筒10に対する繰り出し部材20の上下方向への移動に対して抵抗を与えることができる。したがって、操作部材30への回転操作に応じて繰り出し部材20を上下方向に動作させる際には、摺動抵抗部16によってケース筒10と繰り出し部材20との間に適度な摺動抵抗が与えられる。このように摺動抵抗部16を設けることにより、操作部材30への回転操作に応じた繰り出し部材20の動作に適度な抵抗を容易に設定することができる。
【0062】
本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様の要領で使用し、また、組み立てを行うことができる。また、本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0063】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0064】
したがって、前記実施形態の繰り出し容器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0065】
前記実施形態の繰り出し容器1は、上端に繰り出し口11を備えるケース筒10と、外周面が雄ねじ22aで形成されるねじ軸22を備え、ケース筒10の径方向内側に回り止めされた状態で上下方向に移動可能に配置され、内容物2を支持する繰り出し部材20と、ねじ軸22の径方向外側に配置される螺合筒50、及び螺合筒50の外周面に嵌合によって一体化される外装筒60を備える操作部材30とを有し、螺合筒50が、筒状の螺合筒本体51と、螺合筒本体51から上方に延び、雄ねじ22aに螺合する弾性片52とを有し、外装筒60の内周面が、弾性片52を径方向外側から支持する支持面64と、螺合筒50よりも上方で上方に向けて段差状に縮径する段差面62aとを有し、ケース筒10が、弾性片52の上面と外装筒60の段差面62aとの間に配置されることで操作部材30を相対回転可能に保持する保持部12を有する限り、種々変更可能である。
【0066】
しかし、前記実施形態の繰り出し容器1は、ねじ軸22が、上下方向に延びる縦帯状のねじ間欠部22bを有し、ケース筒10が、ねじ間欠部22bに係合することで繰り出し部材20を回り止めされた状態で上下方向に移動するように案内可能な案内部14を有するのが好ましい。
【0067】
また、前記実施形態の繰り出し容器1は、案内部14が、ねじ間欠部22に対して摺動することでケース筒10に対する繰り出し部材20の上下方向への移動に対して抵抗を与える摺動抵抗部16を有するのが好ましい。
【0068】
また、前記実施形態の繰り出し容器1は、保持部12が、全周に亘って縦断面形状がU字状をなす拡径部13で構成され、案内部14が、拡径部13の下端に連なるのが好ましい。
【0069】
前記実施形態では、ねじ間欠部22bと案内部14は2つずつ設けているが、これらの数は適宜変更が可能である。また、前記実施形態では、外装筒60の支持面64が弾性片52を突起52dを介して径方向外側から支持する構成としているが、弾性片52に突起52dを設けずに、支持面64が弾性片52を径方向外側から支持する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 繰り出し容器
2 内容物
3 治具
3a 底面
3b 台座
3c 軸部
3d 段差部
10 ケース筒
11 繰り出し口
12 保持部
13 拡径部
13a 上壁
13b 周壁
13c 下壁
13d 凹部
13e 突起
14 案内部
15 縦リブ
15a 側壁
15b 中間壁
16 摺動抵抗部
17 突片
20 繰り出し部材
21 内容物支持部
21a 底面壁
22 ねじ軸
22a 雄ねじ
22b ねじ間欠部
22c 縦溝
22d 溝底面
22e 溝側面
23 抜け止め部
23a 横溝
23b 溝底面
23c 上側の溝側面
23d 下側の溝側面
24 段部
30 操作部材
40 オーバーキャップ
41 周壁部
42 頂壁部
50 螺合筒
51 螺合筒本体
51a 筒壁
51b 底壁
51c 凸リブ
51d 嵌合案内部
51e 円柱面
51f 嵌合面
52 弾性片
52a 螺合部
52b 雌ねじ
52c 拡径内周面
52d 突起
60 外装筒
61 外装筒本体
62 段差部
62a 段差面
63 縮径部
63a 凸部
64 支持面
65 把持部
O 中心軸線
P ノズル挿入路