(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/28 20060101AFI20241111BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B25B27/28
F16J15/00 D
(21)【出願番号】P 2021088752
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 修平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝志
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-053971(JP,U)
【文献】特開昭57-107784(JP,A)
【文献】特開2005-074529(JP,A)
【文献】特開2017-024162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/00 - 27/30
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材の溝に装着されたシールリングを取外すための治具であって、
本体部と、前記本体部から延びる鉤部と、を有し、
前記鉤部は、前記本体部から下方に延びる基部と、該基部の下端から正面に向けて湾曲形成された屈曲部と、該屈曲部の先端から正面に向けて延びる先端部と、から構成されており、
前記先端部の底面が幅方向に弧状をなし
、
前記先端部における前記底面の反対側には、先端側の第1平坦面と、上方に向けて傾斜する後端側の第2平坦面と、が形成されており、
前記第1平坦面と前記第2平坦面とで幅方向に延びる谷部を構成する治具。
【請求項2】
前記先端部の底面は、幅方向に長い径を有する長円弧である請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記先端部の底面は、
前記屈曲部まで延びており、前記屈曲部における前記先端部の底面と連続する面は長手方向に弧状をなしている請求項1
または2に記載の治具。
【請求項4】
前記先端部の底面が長手方向に弧状をなしている請求項1ないし
3のいずれかに記載の治具。
【請求項5】
少なくとも前記先端部が合成樹脂製である請求項1ないし
4のいずれかに記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリングを取外すための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で対向配置された2つの部材の間の密封し、流体の漏れや侵入を防ぐためにシールリングが用いられている。例えば、シールリングは一つの部材の環状溝に装着された状態でその一部が他の部材に圧接されることで安定した密封性を発揮している。
【0003】
シールリングが用いられた機器・機械のメンテナンス時などには、シールリングは溝から取外され、点検、清掃等が行われる。シールリングをハウジングの溝から取外す際には、例えば、特許文献1のような治具が用いられる。特許文献1の治具においては、線状の部材である本体部の一端に該本体部の軸に対して適宜の角度で傾斜して鉤状に延びる偏平状の係合片が形成されている。この係合片は薄板状かつ平面視で長円形を成している。
【0004】
シールリングを溝から取外す際には、治具の係合片の先端を溝の底面とシールリングとの間に差し込んだ後、本体部をハウジングの上面に平行に近づくように回転させる。係合片の底面が溝の上縁に当たった後、さらに本体部を回転させることで、当該接触点を支点としてシールリングは溝から引き出されるように持ち上げられる。また、経年変化等でハウジングにシールリングが貼り付いている場合には、本体部を軸周りに僅かに動かしてシールリングをハウジングの溝から離間させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実願昭60-142858(実開昭62-53971号)のマイクロフィルム(第5、6頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような治具にあっては、係合片が平面視で長円形を成す偏平形状であるため、係合片の先端がシールリングや溝の底面を引っ掻いて、シールリングや溝が損傷することが防止されている。しかしながら、係合片の先端をシールリングと溝の底面との間に差し込むときおよび差し込んだ状態において、係合片の先端の底と溝の底面とが幅方向に線接触、または面接触する。これにより、係合片と溝の底面との間で生じる摩擦力が大きくなる。また、本体部を軸周りに僅かに動かす際に、係合片の幅方向の縁が溝の底面に当たって溝を傷つけることがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、シールリングおよび被取付部材を傷つけにくい治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の治具は、
被取付部材の溝に装着されたシールリングを取外すための治具であって、
本体部と、前記本体部から延びる鉤部と、を有し、前記鉤部の先端部の底面が幅方向に弧状をなしている。
これによれば、鉤部の先端部をシールリングと溝の底面との間に差し込むとき、または差し込んだ状態において、先端部の底面と溝の底面との接触面積が小さいため、鉤部を幅方向に円滑に傾けることができる。これにより、シールリングを取外す際にシールリングおよび被取付部材は傷つきにくい。
【0009】
前記先端部の底面は、幅方向に長い径を有する長円弧であってもよい。
これによれば、先端部の幅方向の傾動を円滑にしつつ、先端部を幅広く確保することができる。
【0010】
前記先端部における前記底面と反対側の面は、平坦面であってもよい。
これによれば、先端部は幅方向に平坦であるから、先端部をシールリングと溝の底面との間に差し込みやすい。
【0011】
前記先端部における前記底面と反対側の面は、幅方向に延びる谷部を有していてもよい。
これによれば、谷部においてシールリングは確実に保持される。
【0012】
前記先端部の底面は、前記鉤部の屈曲部まで延びており、前記屈曲部における前記先端部の底面と連続する面は長手方向に弧状をなしていてもよい。
これによれば、屈曲部を支点として治具を回動させたときに、屈曲部の支点は溝の上縁、または治具挿入凹部の上縁に沿って滑る。そのため、治具の回動に伴って、シールリングが径方向に過剰に引っ張られることを防止できる。
【0013】
前記先端部の底面が長手方向に弧状をなしていてもよい。
これによれば、先端部の底面を溝の底面に沿って滑らせることができるため、溝の底面を傷つけることなく、先端部をシールリングと溝の底面との間に差し込みやすい。
【0014】
少なくとも前記先端部が合成樹脂製であってもよい。
これによれば、先端部の剛性が低いため、シールリングおよび被取付部材を傷つけにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例におけるハウジングの一例を示す側断面図である。
【
図5】第1鉤部の構造を示す要部拡大斜視図である。
【
図7】(a)は先端部を治具挿入凹部に挿入した状態を側方から見た概略断面図、(b)は先端部をシールリングと溝の底面との間に差し込んだ状態を側方から見た概略断面図である。
【
図8】(a)は先端部がシールリングと溝の底面との間に小さく差し込まれた状態を正面から見た概略図、(b)は(a)の状態から治具を傾動させた状態を正面から見た概略図である。
【
図9】(a)はシールリングを持ち上げた状態を側方から見た概略断面図、(b)は(a)の状態よりもさらにシールリングを持ち上げた状態を側方から見た概略断面図である。
【
図10】シールリングを持ち上げた状態を正面から見た概略図である。
【
図11】実施例における変形例1のハウジングを示す側断面図である。
【
図12】実施例における変形例2のハウジングを示す側断面図である。
【
図13】実施例における変形例3の溝を示す側断面図である。
【
図14】実施例における変形例4の溝を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る治具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
実施例に係る治具につき、
図1から
図10を参照して説明する。尚、本実施例では、
図4の紙面左側を治具の正面として説明し、
図4の紙面手前側を治具の右面として説明する。また、実施例では、治具の前後方向を長手方向、治具の左右方向を幅方向ということもある。
【0018】
図4に示される本発明の治具1は、被密封流体を密封するハウジング2におけるハウジング本体21の溝21cに装着されたシールリング3(
図1~3参照)を取外すために用いられるものである。
【0019】
先ず、本実施例のハウジング2を説明する。
図1に示されるように、本実施例のハウジング2は、被取付部材としてのハウジング本体21と、蓋体22と、シールリング3と、から主に構成されている。
【0020】
図1~
図3に示されるように、ハウジング本体21は、アルミやステンレスなどの金属製であり、筒状部21aと、フランジ部21bと、を主に備えている。
【0021】
フランジ部21bは、筒状部21aの上端から外径方向に延びている。
【0022】
筒状部21aの上面には、該筒状部21aの上端の開口部21eを囲うように溝21cが環状に形成されている。溝21cは、上方に開口するとともに、断面視で略三角形を成すアリ溝状に形成されている。詳しくは、溝21cは、内側面211、外側面212、底面213により画成されている。底面213の幅方向両端から立ち上がる内側面211および外側面212は、その上端同士が近接するように傾斜している。
【0023】
溝21cの外周には、拡張する治具挿入凹部21d(以下、単に凹部21dという。)が1箇所設けられている。凹部21dは、上面視略半円状をなしている。凹部21dの深さは溝21cの深さと同一である。凹部21dの底面は、溝21cの底面213と面一に連続している。以下、凹部21dの底面を底面213として説明する。
【0024】
尚、本実施例では、凹部21dが溝21cの周方向に1箇所設けられる形態を例示したが、溝21cの周方向に複数箇所設けられていてもよい。
【0025】
図1に戻って、蓋体22は、アルミやステンレスなどの金属製の円板であり、フランジ部21bと略同径を成している。蓋体22はハウジング本体21のフランジ部21bに対して図示しないボルトナット等により固定されている。
【0026】
シールリング3は、ゴムなどの弾性部材により構成されたOリングである。シールリング3は、溝21c内に嵌入して設置されている。シールリング3は、ハウジング本体21に蓋体22が接続されていない状態(特に
図3参照)にあっては、シールリング3の上端部が溝21cよりも上方に突出している。
【0027】
ハウジング本体21に蓋体22が固定された状態(
図1参照)にあっては、シールリング3はハウジング本体21と蓋体22とで狭圧されている。この状態において、シールリング3は、溝21cの内側面211、外側面212、底面213、蓋体22の下面221に圧接されている。
【0028】
筒状部21aの貫通孔に被密封流体が導入されており、被密封流体はハウジング本体21と蓋体22とで狭圧されたシールリング3により、ハウジング本体21と蓋体22との間から外部空間に漏れることが防止されている。
【0029】
次いで、治具1の構造について
図4~
図6を用いて説明する。
【0030】
図4に示されるように、治具1は、本体部10の両端に第1鉤部11と第2鉤部12とが設けられている。この治具1は、ナイロン6、ナイロン66等の合成樹脂から構成されている。また、治具1はハウジング本体21よりも柔らかい構成である。尚、治具1は、ハウジング2の周辺温度や被密封流体の温度が高温である場合に対応できるように耐熱性材料で構成されることが好ましい。
【0031】
本体部10は、断面六角形状の棒状を成している。この本体部10は使用者が把持する部位である。尚、本体部10は、断面形状が六角形以外の多角形であってもよいし、円形や楕円形などであってもよい。
【0032】
図4~
図6に示されるように、第1鉤部11は、本体部10の下端に設けられている。第1鉤部11は、基部13と、屈曲部14と、先端部15と、を備えている。
【0033】
基部13は、断面略円形状を成し本体部10の下端から背面側に向けて略20度傾斜して下方に延びている。
【0034】
屈曲部14は、断面略円形状を成し基部13の下端から正面に向けて湾曲して逆C字状を成している。すなわち、屈曲部14において、後述する先端部15の底面15aと長手方向に連続する面14aは、側面視において後下方に凸を有する弧状をなしている。
【0035】
先端部15は屈曲部14から正面に向けて、本体部10に対して略直交するように延びている。
【0036】
特に
図4の拡大部を参照して、先端部15の底面15aは、前方の第1底面15bと、後方の第2底面15cとからなっている。第1底面15bは、正面視前下方に凸となる曲面をなしている。また、第2底面15cは正面視本体部10の軸に対して直交するように前後方向に延びている。
【0037】
特に
図5を参照して、先端部15の上面、すなわち底面15aと反対側の面は、先端側の第1平坦面15eと、後端側の第2平坦面15fにより形成されている。第1平坦面15eと第2平坦面15fとは上面視楕円状の係合部15dをなしている。第1平坦面15eは略前後方向に延びている。一方、第2平坦面15fは後端が上方に向けて傾斜するように延びている。
【0038】
第1平坦面15eと第2平坦面15fとは折接しており、第1平坦面15eと第2平坦面15fとの間には幅方向に延びる谷部15gが形成されている。このように係合部15dはいわゆる返し形状をなしている。
【0039】
第1平坦面15eの長手方向の寸法L1は、第2平坦面15fの長手方向の寸法L2よりも短くなっている。すなわち、谷部15gは、係合部15dの先端側に寄せて配置されている。
【0040】
また、係合部15dの縁には、微小なテーパ面15hが環状に形成されている。テーパ面15hは、第1平坦面15eと第2平坦面15fから外方に向けて下方に傾斜している。言い換えると、係合部15dの縁は面取りされた形状をなしている。
【0041】
また、特に
図6を参照して、先端部15の断面は正面側から見て下方に凸を成す略半月状を成している。先端部15の底面15aは幅方向に弧状を成し、幅方向中央が最も下方に突出している。具体的には、底面15aは、仮想線で示す楕円の楕円弧である。当該楕円は高さ方向の径L3よりも幅方向の径L4が長くなっている。尚、先端部15は長手方向に亘って縦断面が略半月状を成している。
【0042】
また、係合部15dは、先端部15の幅方向に張り出さない形状となっている。
【0043】
本実施例の第1鉤部11は、断面円形状をなして本体部10の下端から略L字状に延びる部位の自由端側の上面を切断し、係合部15d及びテーパ面15hを形成することで製造されている。尚、第1鉤部11を本体部10とともに成型により製造してもよい。
【0044】
図4に戻って、第2鉤部12は、本体部10の上端に設けられている。第2鉤部12は、基部16と、屈曲部17と、先端部18と、を備えている。基部16は、本体部10の上端から該本体部10の軸に沿って上方に延びている。先端部18は基部16に対して正面に向けて略60度傾斜して上方に延びている。屈曲部17は基部16と先端部18とを繋ぐように湾曲して延びている。尚、先端部18の構造は、第1鉤部11の先端部15と略同一構成であるため、その説明を省略する。
【0045】
次に、治具1を用いて実際に溝21cに装着されたシールリング3を取外す様子を
図7~
図10を用いて説明する。ここでは、第1鉤部11を用いてシールリング3を取外す形態を例示する。
【0046】
シールリング3を取外す際には、先ずハウジング本体21から蓋体22を取外す。その後、
図7(a)に示されるように、第1鉤部11の先端部15を凹部21dに挿入する。このとき、先端部15の係合部15dをシールリング3側に向け、底面15aにおける第1底面15bを溝21cの底面213に当接させる。
【0047】
次いで
図7(b)に示されるように、先端部15をシールリング3に向けてスライドさせる。これにより、先端部15の一部がシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込まれる。
【0048】
前述したように、先端部15の底面15aにおける第1底面15bは、長手方向に円弧状をなしている。さらに、第1底面15bおよび係合部15dの先端面は平面視で正面側に凸となる曲面形状をなしている。そのため、先端部15をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込む際に、底面213やシールリング3が損傷することを防止できる。
【0049】
また経年変化等で溝21cの底面213にシールリング3が貼り付いている場合には、
図8(a)に示されるように、シールリング3と溝21cの底面213との間に先端部15を差し込みにくく、先端部15の挿入量が小さくなる場合がある。
【0050】
このような場合には、
図8(b)に示されるように、先端部15を長手方向の軸周りに左右に傾動させることでシールリング3と溝21cの底面213との離間幅を広げつつ、先端部15の挿入量を徐々に大きくすることができる。
【0051】
上述のように、先端部15の底面15aは幅方向に弧状を成していることから、先端部15の底面15aと溝21cの底面213との接触面積が小さい。そのため、第1鉤部11を幅方向に円滑に傾けることができる。
【0052】
先端部15における第1平坦面15eの大部分をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込んだ後は、溝21cの底面213に接触した第1底面15bを支点として、本体部10を時計回りに回転させることで、第2底面15cが溝21cの上縁21fに接触する。
【0053】
尚、本実施例は、シールリング3の取外し工程の一例を示しており、適宜変更してもよい。例えば、シールリング3が谷部15gに配置されるまで先端部15をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込んでもよい。
【0054】
次に、
図9(a)に示されるように、凹部21dの上縁21fと接触する第2底面15cを支点Pとして先端部15を上昇させるように本体部10を回転させる。このように本体部10を回転させると、係合部15dによりシールリング3が持ち上げられ溝21cから引き出される。
【0055】
このとき、シールリング3は、溝21cの内側面211に沿って外径側に誘導されて外径側に移動することにより、係合部15dにおける谷部15gに配置される。これによれば、シールリング3は、持ち上げられる際に、谷部15gを構成する第1平坦面15eおよび第2平坦面15fにより前後に移動することが規制される。
【0056】
また、
図10に示されるように、係合部15dの縁部は、テーパ面15hが形成されて面取りされているので、シールリング3が係合部15dに持ち上げられた状態において、係合部15dの縁部がシールリング3に食い込むことがなく、シールリング3の損傷を防止できる。
【0057】
図9(b)に示されるように、屈曲部14の面14aが凹部21dの上縁21fに接触する位置まで本体部10を回転させた後、さらに本体部10を回転させると、屈曲部14の面14aが凹部21dの上縁21fに沿って内径側に滑る。これにより第1鉤部11が内径側に移動するため、シールリング3は本体部10の回動に伴って外径方向に過剰に引っ張られることが防止される。
【0058】
その後、凹部21dの上縁21f上を周方向に移動させ、シールリング3に対する第1鉤部11の位置を周方向にずらし、凹部21dから周方向に外れた位置で先端部15を上昇させるように本体部10をさらに回転させる。
【0059】
以上説明したように、第1鉤部11の先端部15の底面15aが幅方向に弧状をなしている。これによれば、第1鉤部11の先端部15をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込むとき、または差し込んだ状態において、先端部15の底面15aと溝21cの底面213との接触面積が小さいため、第1鉤部11を幅方向に円滑に傾けることができる。これにより、シールリング3を取外す際にハウジング本体21は傷つきにくい。
【0060】
また、先端部15の底面15aは、高さ方向の径L3に比べ幅方向に長い径L4を有する楕円弧である。これによれば、先端部15の幅方向の傾動を円滑にしつつ、先端部15を幅広く確保することができる。言い換えれば、先端部15は偏平状に構成されるので、シールリング3と溝21cの底面213との間に差し込みやすく、シールリング3を保持しやすい。
【0061】
また、先端部15の上面に設けられる係合部15dは、平坦面である第1平坦面15e及び第2平坦面15fにより構成されている。このように先端部15の係合部15dは幅方向に平坦であるから、先端部15をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込みやすい。
【0062】
また、係合部15dは、幅方向に延びる谷部15gを有しており、シールリング3は、係合部15dに持ち上げられた状態において、谷部15gを構成する第1平坦面15eおよび第2平坦面15fにより前後に移動することが規制されている。そのため、谷部15gにおいてシールリング3は確実に保持される。
【0063】
また、屈曲部14における先端部15の底面15aと連続する面14aは長手方向に弧状をなしている。これによれば、屈曲部14を支点として治具1を回動させたときに、該支点が凹部21dの上縁21fに沿って内径側に滑る。そのため、治具1の回動に伴って、シールリング3が径方向に過剰に引っ張られることを防止できる。
【0064】
また、先端部15の底面15aが長手方向に弧状をなしている。これによれば、先端部15の底面15aを溝21cの底面213に沿って滑らせることができるため、溝21cの底面213を傷つけることなく、先端部15をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込みやすい。
【0065】
また、治具1は合成樹脂製である。これによれば、先端部15は金属製のハウジング本体21に比べて剛性が低いため、第1鉤部11の先端部15によりハウジング本体21を傷つけにくい。
【0066】
また、治具1は本体部10の両端に角度の異なる第1鉤部11、第2鉤部12を有している。これにより、被取付部材の形状、シールリングの形状、またはシールリングの装着強度等に応じて、第1鉤部11または第2鉤部12を使い分けることができるため、汎用性が高い。
【0067】
尚、図示しないが、第2鉤部12を用いてシールリング3を溝21cから取外す際には、第1鉤部11を用いた取外し工程と同様の工程で第2鉤部12を用いてシールリング3を溝21cから取外してもよい。または、先端部18(
図4参照)をシールリング3と溝21cの底面213との間に差し込んだ後、本体部10を回転させずに、そのまま上方に移動させることでシールリング3を持ち上げるようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0069】
例えば、前記実施例では、ハウジング本体21と蓋体22とが軸方向に対向しその対向面間にシールリング3が配置される形態を例示したが、これに限らない。一例として、前記実施例の変形例1を
図11に示す。蓋体220には、ハウジング本体210内に挿入可能な凸部220aが設けられ、径方向に対向する凸部220aの外周面とハウジング本体210の内周面との間にシールリング3が配置されてもよい。尚、本変形例1では、凸部220aの外周面に設けられた溝220bにシールリング3が装着されていたが、ハウジング本体210の内周面に設けられる溝にシールリングが装着されていてもよい。
【0070】
また、ハウジングを構成する2つの部材は、固定して対向配置されることに限らない。一例として、前記実施例の変形例2を
図12に示す。
図12に示されるように、ハウジングを構成する2つの部材は、シリンダチューブ310とピストンロッド320のように軸方向に相対移動可能に径方向に対向配置されるものであってもよい。
【0071】
また、溝21cは、断面視で略三角形を成すアリ溝状に限られない。一例として、前記実施例の変形例3を
図13に示す。
図13に示されるように、溝410は、底面410aの幅方向両端から側面410b,410cが垂直に立ち上がる矩形溝であってもよい。
【0072】
また、別の一例として、前記実施例の変形例4を
図14に示す。
図14に示されるように、溝510は、一方の側面510bがアリ溝を構成するように底面510aに対して傾斜し、他方の側面510cが矩形溝を構成するように底面510aに対して直交するような溝形状であってもよい。
【0073】
また、溝の内側面または外側面とシールリングとの間に治具を挿入可能なスペースがある場合には、治具挿入凹部の構成を省略することができる。
【0074】
また、前記実施例では、ハウジングの内部に被密封流体が封入されている形態を例示したが、ハウジングの外部に被密封流体が存在していてもよい。また、被密封流体は漏れ側の流体よりも高圧、低圧または同圧であってもよい。
【0075】
また、ハウジングの内外の空間に存在する流体は、それぞれ気体、液体または気体と液体の混合状態のいずれであってもよい。
【0076】
また、前記実施例では、先端部15の底面15aが楕円弧であったが、これに限られず、先端部の底面は、円弧または歪な曲面を有する長円弧でもよい。また、先端部の底面は、高さ方向に長い径を有していてもよい。
【0077】
また、前記実施例では、治具1全体が合成樹脂により形成されていたが、少なくとも先端部だけ合成樹脂製であればよい。
【0078】
また、前記実施例では、シールリングは断面円形状のOリングである形態を例示したが、これに限られず、例えば、断面矩形状や断面X字形状のシールリングであってもよい。
【0079】
また、前記実施例では、係合部が平坦面で構成される形態を例示したが、曲面や段を有する面で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 治具
2 ハウジング
3 シールリング
10 本体部
11 第1鉤部
13 基部
14 屈曲部
14a 面(先端部の底面と連続する面)
15 先端部
15a 底面
15b 第1底面
15c 第2底面
15d 係合部(先端部における底面と反対側の面)
15e 第1平坦面
15f 第2平坦面
15g 谷部
15h テーパ面
21 ハウジング本体(被取付部材)
21c 溝
21d 治具挿入凹部
21f 上縁
213 底面