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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】刃付角度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/22 20060101AFI20241111BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G01B21/22
G01B11/26 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021112933
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009551
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】沼田 明宗
(72)【発明者】
【氏名】月本 拓延
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0137201(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112229346(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0246933(US,A1)
【文献】特開平09-264725(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102735189(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
21/00-21/32
B24B 3/00-3/60
21/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃体を有する刃物を支持する支持部と、
前記刃体の刃先に向けて、前記刃体の延在面に対して一方側から第1レーザーを照射する第1レーザー照射部と、
前記刃先に向けて、前記延在面に対して他方側から第2レーザーを照射する第2レーザー照射部と、
前記第1レーザーが前記刃体に反射した第1反射レーザー及び前記第2レーザーが前記刃体に反射した第2反射レーザーのそれぞれの進行方向を視認可能に構成された角度表示板と、を備え
前記第1レーザー及び前記第2レーザーは、それぞれ前記刃体の延在面に対して垂直な方向から照射され、
前記第2レーザー照射部は、前記第2レーザーが、前記第1レーザーの進行方向と同一直線上の逆向きに進行するよう配置される、
刃付角度測定装置。
【請求項2】
前記角度表示板は、前記第1レーザーの進行方向と前記第1反射レーザーの進行方向とがなす角度を示す目盛りが設けられており、前記目盛りには前記角度の1/2を示す文字が表示される、
請求項に記載の刃付角度測定装置。
【請求項3】
前記角度表示板は、前記第1レーザー、前記第2レーザー、前記第1反射レーザー、及び前記第2反射レーザーのそれぞれの進行方向に平行な面に設けられる、
請求項1または請求項2に記載の刃付角度測定装置。
【請求項4】
前記角度表示板は、前記刃体を挿通可能なスリットを有する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の刃付角度測定装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記刃体に対して厚み方向に圧力を加えながら、前記刃体の刃先よりも背側を支持する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の刃付角度測定装置。
【請求項6】
前記第1レーザー及び前記第2レーザーの波長がいずれも500nm以上550nm以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の刃付角度測定装置。
【請求項7】
持ち運び可能な、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の刃付角度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、刃物の刃付角度を測定する刃付角度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刃物の刃先の刃付角度は、刃物の鋭利さを定量的に示すものであって、刃物の切れ味に繋がる重要な要素である。特許文献1には、平面状にした光を測定対象の刃に対して垂直に、かつ平面と刃線が角θをなすようにして刃先に投射し、刃物の両面に描かれる2本の輝線のなす角βを光の平面に直交する方向から測定することで刃先角αを測定する、光切断法による刃先角測定方法が記載されている。また、上記特許文献以外にも、いくつかの刃付角度測定装置が存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-281434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包丁の刃付角度は肉眼では判断することができない。一方で、包丁などの刃物を開発する際、試作または量産で製造した刃物の刃付角度を簡易的に測定し、その結果を受けて、試作品または量産品の改良のサイクルをスピードアップさせたいというニーズがある。また、取引先で包丁を販売するために商品説明を行う際、包丁の刃付角度を取引先の担当者の目の前で測定したうえで切れ味を試してもらうことで、商品の特徴の理解を早めたいというニーズがある。さらに、自社の社員または取引先の担当者に包丁砥ぎの研修会を行う際、研ぐ感覚と刃付角度との関係を体感して包丁砥ぎの技術を身に付けるため、研いだ後の包丁の刃付角度をその場ですぐに測定したいというニーズがある。このようなニーズに対応するためには、刃物の刃先の刃付角度を簡易かつ迅速に測定する装置が必要となる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の刃先角測定方法では、刃先角を測定するために三角関数を用いた計算が必要となり、刃付角を簡易に測定することができなかった。また、測定装置が比較的大きくなっていた。また、特許文献1以外の従来の刃付角度測定装置では、刃先の両面を同時に測定することができなかったり、刃物を手で保持したまま測定する必要があるため不安定であったり、操作が複雑であったりするなど、刃先の両面を簡易に測定可能な装置が存在しなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決可能な刃付角度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を提供する。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記する場合があるが、本発明の各構成要素はこれらの具体的な構成に限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0008】
本発明の一の手段は、
刃体を有する刃物を支持する支持部(3)と、
前記刃体の刃先に向けて、前記刃体の延在面に対して一方側から第1レーザーを照射する第1レーザー照射部(41)と、
前記刃先に向けて、前記延在面に対して他方側から第2レーザーを照射する第2レーザー照射部(42)と、
前記第1レーザーが前記刃体に反射した第1反射レーザー及び前記第2レーザーが前記刃体に反射した第2反射レーザーのそれぞれの進行方向を視認可能に構成された角度表示板(5)と、を備える、
刃付角度測定装置(1)である。
【0009】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、刃付角度を簡単に確認することができる。特に、従来の刃付角度測定装置と比較すると、小型であるにもかかわらず高精度で刃付角度の測定が可能であるため、装置を持ち運ぶことでどこでも刃付角度の測定ができる。そのため、例えば、客先に装置を持参し、商品である包丁の使用テストを客先で行って刃付角度と切れ味との関係の実体験を提供することで、商品の特徴の理解を促進し、商品に対する納得感を高めることができる。また、客先で複数の包丁を用いて比較テストを行う場合には、刃付角度の違いに起因する切れ味の違いを理解しやすくできる。
【0010】
また、刃付角度測定装置の支持部により安定的に刃物を支持しつつ、簡易な操作で容易かつ迅速に刃先の両面の刃付角度を同時に測定することができる。また、刃先の両面の刃付角度をそれぞれ独立して測定することができるため、刃付角度のバランスを容易に確認することができる。
【0011】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
第1レーザー及び第2レーザーは、それぞれ刃体の延在面に対して垂直な方向から照射される。
【0012】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、第1レーザーの進行方向と第1反射レーザーの進行方向とがなす角度、及び第2レーザーの進行方向と第2反射レーザーの進行方向とがなす角度を確認しやすくすることができる。
【0013】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記第2レーザー照射部は、前記第2レーザーが、前記第1レーザーの進行方向と同一直線上の逆向きに進行するよう配置されるよう構成する。
【0014】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、刃体の両面の刃付角度を簡易かつ確実に測定することができる。
【0015】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記角度表示板は、前記第1レーザーの進行方向と前記第1反射レーザーの進行方向とがなす角度を示す目盛りが設けられており、前記目盛りには前記角度の1/2を示す文字が表示される構成とする。
【0016】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、目盛りに付された文字を読むだけで両面の刃付角度を容易に測定することができる。
【0017】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記角度表示板は、前記第1レーザー、前記第2レーザー、前記第1反射レーザー、及び前記第2反射レーザーのそれぞれの進行方向に平行な面に設けられた構成とする。
【0018】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、第1レーザー、第2レーザー、第1反射レーザー及び第2反射レーザーの光が角度表示板に投影されやすくなり、それぞれの進行方向を視認しやすくなる。これによって、測定対象の刃体の両面の刃付角度を測定しやすくできる。
【0019】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記角度表示板が、前記刃体を挿通可能なスリットを有する構成とする。
【0020】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、刃体の挿入方向をスリットによってガイドすることができるため、刃付角度の測定をさらに容易に行うことができる。
【0021】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記支持部が、前記刃体に対して厚み方向に圧力を加えながら、前記刃体の刃先よりも背側を支持する構成とする。
【0022】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、刃先を確実に支持し、安定的に刃付角度を測定可能となる。
【0023】
上記刃付角度測定装置において、好ましくは、
前記第1レーザー及び第2レーザーの波長がいずれも500nm以上550nm以下である。
【0024】
上記構成の刃付角度測定装置によれば、人間が視認しやすいグリーンレーザーを使用しているため、従来のレッドレーザーを使用した構成と比較して、比較的明るい場所でも刃付角度の測定を行うことができる。
【0025】
上記刃付角度測定装置は、客先または社内の任意の場所などでも使用しやすくするため、持ち運び可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態の刃付角度測定装置を表側から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態の刃付角度測定装置を裏側から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態の刃付角度測定装置を側方かつ上方から見た図である。
図4図4は、実施形態の刃付角度測定装置のレーザー照射部を配置する貫通孔近傍の拡大側面図である。
図5図5は、実施形態の刃付角度測定装置を用いて刃付角度を測定している状態を示す図である。
図6図6は、刃付角度を測定する際のレーザー光の進行方向等を示す概念図である。
図7図7は、実施形態の角度表示板の平面図である。
図8図8は、変形例の角度表示板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一形態の刃付角度測定装置は、刃体の一方側と他方側とから向かい合うようにレーザーを刃先に照射し、角度表示板に投影されたレーザーの反射光が示す進行方向に沿った角度表示板の目盛りを読むことで、ユーザが容易に刃物の刃付角度を測定可能にしている点を特徴のひとつとする。
【0028】
以下、本発明の一形態の刃付角度測定装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0029】
本明細書で「刃先」とは、刃の先端のみを指すのではなく、刃の先端近傍の、研磨され断面が先細りとなった部分を含む。
【0030】
本明細書の各図面には、x軸、y軸及びz軸を示している。重力と平行な方向を「y軸」と定義する。y軸に対して垂直な方向を「x軸」とし、x軸及びy軸に垂直な方向を「z軸」とする。図面におけるx軸の矢印方向をx軸+側、矢印とは逆方向をx軸-側と呼ぶことがあり、y軸及びz軸についても同様である。z軸+側及びz軸-側を、それぞれ「裏側」及び「表側」と呼ぶことがある。x軸+側及びx軸-側を、それぞれ「右側」及び「左側」と呼ぶことがある。y軸+側及びy軸-側を、それぞれ「上側」及び「下側」と呼ぶことがある。
【0031】
[刃付角度測定装置1の構成]
図1図3は本実施形態の刃付角度測定装置1を、それぞれ異なる方向から見た図である。図1は刃付角度測定装置1を表側から見た斜視図、図2は刃付角度測定装置1を裏側から見た斜視図、図3は刃付角度測定装置1を側方(x軸-側)から見た斜視図である。
【0032】
図1図3に示されるように、刃付角度測定装置1は、本体部2、支持部3、第1レーザー照射部41、第2レーザー照射部42、角度表示板5、スイッチング電源71、スイッチ72、及び送電線73を含んで構成される。
【0033】
本体部2は、樹脂等で形成された本体であって、支持部3、第1レーザー照射部41、第2レーザー照射部42、角度表示板5、スイッチング電源71、スイッチ72、及び送電線73を支持する。本体部2は、樹脂以外で形成されてもよい。本体部2のy軸-側は載置面に載置される刃付角度測定装置1の底面となる。本体部2は、底面に対して垂直であってxy平面に沿った面であり、z軸-側の面であるおもて面を有する。本体部2のおもて面には、角度表示板5が設けられる。本体部2の裏側には、y軸+側の搭載面に、スイッチング電源71及びスイッチ72が搭載される。本体部2には、おもて側から裏側に向かって刃物8の刃体82を挿通可能に形成された貫通孔であって、y軸方向に延びるスリット21を有する。スリット21の上端は、第1レーザー照射部41から照射される第1レーザー及び第2レーザー照射部42から照射される第2レーザーが進行する直線よりも上側に位置する。
【0034】
なお、スリット21の上端が、第1レーザー及び第2レーザーが進行する直線より1mm以上10mm以下、上側に位置する構成とし、スリット21の上端が刃物8の刃先84のストッパとして機能する構成としてもよい。このような構成とすると、刃付角度を測定する際に微妙な位置調整を行うことなく、より簡易かつ迅速に刃付角度を測定できる。
【0035】
本体部2の左右側面には、それぞれ第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42に給電する送電線73を挿通して収容可能な、ケーブル挿通孔22及び23が設けられる。すなわち、ケーブル挿通孔22は、本体部2の右側の側面上に配置され、ケーブル挿通孔23は本体部2の左側の側面上に配置される。
【0036】
スイッチ72は、ユーザの操作によって、電源からスイッチング電源71への電力の供給をオンオフするよう作動する。スイッチング電源71は、例えば、入力された100Vの交流電圧を、第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42で用いられる所定の電圧に降圧して、送電線73を介して第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42に与える。なお、スイッチング電源71に代えて、電池から供給される電力を所定の電圧に降圧または昇圧して電圧を出力する電源装置を用いてもよいし、電池の電圧をそのまま出力する構成としてもよい。
【0037】
支持部3は、刃付角度を測定する対象の刃物8を支持する。本実施形態の支持部3は、ハンドル31を回転して挟持部32及び33を左右に移動させることにより開閉可能であって、閉じることで刃物8の刃体82を押圧しながら挟持して支持可能な万力である。支持部3は、刃物8の刃体82の背側83の近傍を支持する。支持部3は、刃物8の柄81を支持する構成であってもよいが、刃体82を支持するほうが刃体82が安定するため好ましい。
【0038】
なお、支持部3は刃物8を支持可能なものであれば万力に限定されない。支持部3は、例えば強磁性体で形成された刃物8の刃体82を吸着することで支持する磁石で構成されてもよい。
【0039】
第1レーザー照射部41は、おもて側から見てスリット21の右側に配置される。第1レーザー照射部41は、送電線73を介してスイッチング電源71から電圧が印加されることでレーザーを発生させ、左側に向かって第1レーザーを照射するレーザー発振器である。第1レーザーは、x軸に沿って、x軸+側からx軸-側に向かって進行する。第1レーザー照射部41から照射される第1レーザーは、例えば520nmの可視光のグリーンレーザーである。
【0040】
また、第1レーザー照射部41は、x軸に延びるよう本体部2に形成された円筒状の貫通孔25に配置される。図4の側面図に示されるように、貫通孔25は、x軸+側からx軸-側に向かって円筒状に形成される。平面視で、貫通孔25の中心よりz軸+側寄りであって貫通孔25の径の内側の位置に、角度表示板5が設置された設置面24が位置する。角度表示板5の設置面24と貫通孔25とをこのような位置関係にすることで、第1レーザー、及び後述の第1反射レーザーを視認しやすくすることができる。なお、貫通孔25は円筒状に限定されず、任意の形状としてよい。
【0041】
第2レーザー照射部42は、おもて側から見てスリット21の左側に配置される。第2レーザー照射部42は、送電線73を介してスイッチング電源71から電圧が印加されることでレーザーを発生させ、右側に向かって第2レーザーを照射するレーザー発振器である。第2レーザーは、x軸に沿って、x軸-側からx軸+側に向かって進行する。第2レーザー照射部42から照射される第2レーザーは、例えば520nmの可視光のグリーンレーザーである。なお、第1レーザー及び第2レーザーの波長は、ユーザが視認しやすい500nm以上550nm以下の範囲のものを用いることが好ましいが、これに限定されない。また、第1レーザーと第2レーザーとは、互いに異なる波長のものを採用してもよい。
【0042】
第2レーザー照射部42は、上述の貫通孔25に対向する位置に設けられた図示しない貫通孔に、第1レーザー照射部41と対向するよう配置される。
【0043】
第1レーザーと第2レーザーとは、互いに同一直線上の逆向きに進行する。第1レーザー及び第2レーザーは、支持部3によって支持されスリット21に配置された刃物8の刃先84に照射される。第1レーザーは、刃物8によって反射されて第1反射レーザーとなる。第2レーザーは、刃物8によって反射されて第2反射レーザーとなる。第1レーザー、第1反射レーザー、第2レーザー、及び第2反射レーザーは、少なくともそれぞれの一部が角度表示板5に投影されることで、それぞれの進行方向をユーザが視認可能となる。
【0044】
角度表示板5は、本体部2のおもて側の面に、xy平面に沿って配置される。角度表示板5には、上記のように第1レーザー、第1反射レーザー、第2レーザー、及び第2反射レーザーが投影されて、それぞれの進行方向が視認可能となっている。角度表示板5には、第1レーザー及び第2レーザーと、スリット21の中心線との交点を中心として放射状に描画された目盛り51が設けられる。目盛り51は、角度表示板5に投影される第1反射レーザー及び第2反射レーザーの進行方向に沿うように描画された複数の直線と、それぞれの位置に第1反射レーザー及び第2反射レーザーが投影された際の刃付角度を示すよう描画された数値を有する。後述するように、刃付角度は、第1レーザーと第1反射レーザーとがなす角度、及び第2レーザーと第2反射レーザーとがなす角度の1/2の角度となるので、目盛り51には、第1レーザーと第1反射レーザーとがなす角度、及び第2レーザーと第2反射レーザーとがなす角度の1/2の数値を示す文字が表示されている。角度表示板5には、本体部2のスリット21と同じ形状のスリット52が形成される。
【0045】
なお、第1反射レーザーは、刃体82の中心線となるスリット21の中心線よりも右側、すなわち第1レーザー照射部41に近い側で刃体82の刃先84に照射され反射される。そのため、目盛り51に描画された直線は、実際の第1反射レーザーとは若干の位置のずれがあるが、刃付角度を測定するうえで大きな問題とはならない。目盛り51の放射状の直線は、この位置ずれを考慮して、第1レーザーとスリット21との中心線との交点よりも右側を基準として放射状に描画されてもよい。
【0046】
[刃付角度の測定]
図5は、刃付角度測定装置1を用いて刃付角度を測定している状態を示す図である。図に示されるように、刃付角度の測定時には、刃物8の刃先84に第1レーザー41a及び第2レーザー42aが照射される。刃先84で反射されることで、第1レーザー41aは第1反射レーザー41bとなり、第2レーザー42aは第2反射レーザー42bとなる。このとき、第1反射レーザー41bによって投影された線を角度表示板5の目盛り51で読むことで、刃先84の右側の刃付角度を測定できる。同様に、第2反射レーザー42bによって投影された線を角度表示板5の目盛り51で読むことで、刃先84の左側の刃付角度を測定できる。刃先84の右側の刃付角度と左側の刃付角度とを加算することで、刃先84の刃付角度を比較的簡単に求めることができる。
【0047】
図6は、刃付角度を測定する際のレーザー光の進行方向等を示す概念図である。図6に示されるのは、正確には第1レーザー41aにより投影された光線と、第1反射レーザー41bにより投影された光線であるが、説明の便宜上、これらの光線を指して第1レーザー41a及び第1反射レーザー41bという場合がある。以下の説明では、第1レーザー照射部41から照射されるレーザーについて説明するが、第2レーザー照射部42から照射されるレーザーについても同様である。なお、以下の説明はxy平面における平面視におけるものである。
【0048】
第1レーザー照射部41から照射された第1レーザー41aは、刃体82の中心Aに対して垂直に進行し、刃体82の刃先84の表面82aに照射される。刃先84の表面82aで反射された第1レーザー41aは、第1反射レーザー41bとなって直線状に進行する。このとき、第1レーザー41aが刃先84の表面82aに照射された点における表面82aの法線Cに対する第1レーザー41aの角度である入射角θ1は、法線Cに対する第1反射レーザー41bの角度である反射角θ2と等しくなる。また、刃体82の中心線Aと表面82aとがなす角度θ3は、入射角θ1及び反射角θ2と等しくなる。刃体82の中心線Aと表面82aとがなす角度θ3は、刃体82の刃先84の右側面の刃付角度である。このように、第1レーザー41aと第1反射レーザー41bとがなす角度θ1+θ2は、刃付角度を示すθ3の2倍となる。逆に、刃付角度θ3は、第1レーザー41aと第1反射レーザー41bとがなす角度θ1+θ2の1/2となる。したがって、図7に示すように、角度表示板5の目盛り51に、第1レーザー41aと第1反射レーザー41bとがなす角度の1/2の数値を示す文字を表示することで、ユーザは第1反射レーザー41bにより投影された光線と目盛り51とを確認するだけで、容易に刃先84の右側の刃付角度を確認することができる。
【0049】
図7で示す本実施形態の角度表示板5の右側では、x軸方向に進行する第1レーザーの投影位置に対して20°を超える10°毎に、当該角度を1/2にした数値が描画される。すなわち、第1レーザーに対して20°の位置に「10」の数値が描画され、30°、40°、50°、60°の位置にそれぞれ「15」、「20」、「25」、「30」の数字が描画される。もちろん、第1レーザーに対して70°の位置に「35」の数字が描画されてもよい、それ以上の数字についても同様である。目盛り51には、10°毎の目盛線に加え、2°毎の補助目盛線が描画される。角度表示板5の左側でも同様に目盛り51が設けられる。
【0050】
角度表示板5は、図8の変形例の角度表示板5aに示すような目盛り51aを有するものであってもよい。図8の角度表示板5aでは、x軸方向に進行する第1レーザーの投影位置に対して20°を超える5°毎に、当該角度を1/2にした数値が描画される。すなわち、第1レーザーに対して20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、及び60°の位置に、それぞれ「10」、「12.5」、「15」、「17.5」、「20」、「22.5」、「25」、「27.5」、及び「30」の数字が描画される。目盛り51aには、5°毎の目盛線に加え、2.5°毎の補助目盛線が描画される。角度表示板5aの左側でも同様に目盛り51aが設けられる。
【0051】
なお、角度表示板5及び5aにおける目盛り51及び51aの内容はあくまで一例であって、これらに限定されるものではない。すなわち、目盛り51の目盛線を含む描画は、任意に変更してよい。例えば、角度を示す数字に代えて、漢字やギリシャ数字などの文字を表示してもよいし、目盛線に代えて点を描画するなどしてもよい。
【0052】
[その他の変形例]
刃付角度測定装置1では、第1レーザー及び第2レーザーを照射するために、スイッチング電源71と、レーザー発振器である第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42を用いたが、これに限定されない。刃付角度測定装置1は、スイッチング電源71及び第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42に代えて、レーザー発振器及び光ファイバーを用いる構成としてもよい。
【0053】
また、第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42は、必ずしも同一直線上に進行する構成に限定されず、異なる方向から刃先84に照射される構成としてもよい。このような構成であっても、2つのレーザーを用いる構成とすることで、刃先84の刃付角度を簡易かつ同時に測定可能となる。
【0054】
刃付角度測定装置1を、分解及び組立容易な構成としてもよい。また、刃付角度測定装置1を、折りたたみ可能な構成としてもよい。このような構成とすることで、刃付角度測定装置1を簡単に持ち運ぶことが可能となり、取引先または包丁砥ぎの研修会の会場などへの持ち込みを容易にすることができる。
【0055】
また、刃付角度測定装置1の外面に、レーザー光を遮蔽するためのカバーを設けることが好ましい。具体的には、第1反射レーザー及び第2反射レーザーが進行する先であって、刃付角度の測定に影響しないよう、角度表示板5の外縁からおもて側に向かって突出する遮蔽版を設けた構成としてもよい。このような構成にすると、レーザーが装置外に漏出することを防止することができる。
【0056】
また、刃付角度測定装置1を持ち運び可能な構成にしてもよい。例えば、角度表示板5の上面または本体部2の側面に取手を設け、ユーザが取手に手をかけて持ち運びやすい構成としてもよい。また、刃付角度測定装置1とともに、刃付角度測定装置1を収容可能なケースを提供してもよい。また、本体部2と連結されることで本体部2の底面部分以外を覆うことができるカバーであって、上面に取手を設けたカバーをさらに備える構成としてもよい。また、持ち運んだ先が安定しづらい場所であっても刃付角度測定装置1を使用可能にするため、本体部2の底面に吸盤などの滑り止め機構を設けてもよい。また、刃付角度測定装置1の底面に、三脚のような三点支持機構を設けてもよい。
【0057】
[刃付角度測定装置の特徴]
本実施形態の刃付角度測定装置1は、以下のような特徴を有する。
【0058】
刃付角度測定装置1は、第1レーザー照射部41、及び第2レーザー照射部42を備え、これらが支持部3に支持された刃物8の刃先84に反射した第1反射レーザー及び第2反射レーザーの進行方向を視認可能な角度表示板5を備える構成としている。第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42は、おもて側から見て、刃物8の刃体82の延在面に対して右側と左側とにそれぞれ配置される。これにより、支持部3により安定的に刃物8を支持しつつ、簡易な操作で容易に刃先84の両面の刃付角度を同時に測定することができる。また、刃付角度測定装置1を比較的小型な構成にすることができる。
【0059】
また、刃付角度測定装置1では、第1レーザー及び第2レーザーが、刃体82の延在面に対して垂直な方向から、刃体82の刃先84に照射される構成としている。これにより、第1レーザーの進行方向と第1反射レーザーの進行方向とがなす角度、及び第2レーザーの進行方向と第2反射レーザーの進行方向とがなす角度を確認しやすくすることができる。
【0060】
また、刃付角度測定装置1では、第1レーザーと第2レーザーとが同一直線上の逆向きに進行するよう、第1レーザー照射部41及び第2レーザー照射部42が配置されている。これにより、刃体82の刃先84の両面の刃付角度を簡易かつ確実に測定可能である。
【0061】
また、刃付角度測定装置1では、角度表示板5が、第1レーザー、第2レーザー、第1反射レーザー、第2反射レーザーのそれぞれの進行方向に平行な面に設けられている。これにより、第1反射レーザー及び第2反射レーザーの光が角度表示板に投影されやすくなるため、刃体82の刃先84の両面の刃付角度を測定しやすい構成となっている。
【0062】
また、刃付角度測定装置1では、角度表示板5に、第1レーザーの進行方向と第1反射レーザーの進行方向とがなす角度を示す目盛り51が設けられており、目盛り51には第1レーザーの進行方向と第1反射レーザーの進行方向とがなす角度の1/2を示す数値が描画されている。これにより、角度表示板5に描画された数値を読むだけで刃物8の刃先84の右側の刃付角度を容易に確認することができる。さらに第2レーザーを利用すると、刃物8の刃先84の左側の刃付角度を容易に確認することができ、刃先84の全体の刃付角度も容易に求めることができる。
【0063】
また、刃付角度測定装置1は、刃付角度の測定対象の刃物8の刃体82を挿通するスリット21を有する構成としている。これにより、刃体82の挿入方向をスリット21によってガイドすることができるため、刃先84の刃付角度の測定をさらに容易に行うことができる。
【0064】
また、刃付角度測定装置1の支持部3は、刃体82を厚み方向に圧力を加えながら、刃体82の刃先84よりも背側を支持する構成としている。これにより、支持部3によって刃物8の刃先84を確実に支持し、安定的に刃付角度を測定可能となる。
【0065】
また、刃付角度測定装置1では、第1レーザー及び第2レーザーの波長をいずれも500nm以上550nm以下としている。すなわち、第1レーザー及び第2レーザーとして人間が視認しやすいグリーンレーザーを使用しているため、従来のレッドレーザーを使用した構成と比較して、比較的明るい場所でも刃付角度の測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の刃付角度測定装置は、両刃の刃物の刃付角度を測定する装置として特に好適に適用される。
【符号の説明】
【0067】
1…刃付角度測定装置
2…本体部
21…スリット
22、23…ケーブル挿通孔
24…設置面
25…貫通孔
3…支持部
31…ハンドル
32…挟持部
5、5a…角度表示板
51、51a…目盛り
71…スイッチング電源
72…スイッチ
73…送電線
8…刃物
81…柄
82…刃体
83…背側
84…刃先
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