(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241111BHJP
F16H 57/035 20120101ALI20241111BHJP
【FI】
F16H57/04 F
F16H57/04 J
F16H57/035
(21)【出願番号】P 2024509226
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011610
(87)【国際公開番号】W WO2023182447
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022047606
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 智也
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 太平
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-134368(JP,A)
【文献】特開2006-097767(JP,A)
【文献】特開2013-249958(JP,A)
【文献】特開2021-105424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構を支持すると共に、前記ハウジング内を区画する隔壁部と、
前記ハウジングの下部に配置されたストレーナと、
前記隔壁部に支持されたポンプと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記ハウジング内には、
前記動力伝達装置の回転軸方向における前記隔壁部の一方側に位置する第1室と、
前記動力伝達装置の回転軸方向における前記隔壁部の他方側に位置する第2室が、設けられており、
前記ストレーナは、
前記ポンプに接続する第1接続口と、前記隔壁部内の第2油路に接続する第2接続口と、を有し、
前記第2接続口は、前記ポンプの前記隔壁部への組付け方向から、前記第2油路に接続される、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ストレーナでは、前記第2接続口から見て前記隔壁部側に、前記隔壁部との干渉を避けるための凹部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項
1において、
前記第1接続口と前記ポンプとの組付け方向は、
前記ポンプの前記隔壁部への組付け方向に交差する方向である、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項
2において、
前記第1接続口と前記ポンプとの組付け方向は、
前記ポンプの前記隔壁部への組付け方向に交差する方向である、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4の何れか一項において、
前記第1室内には、
前記動力伝達機構を構成する第1回転要素の外周を囲む周壁部と、
前記周壁部の下側を前記回転軸に沿って前記隔壁部まで及ぶ範囲に設けられた収容部が、設けられており、
前記ストレーナは、前記収容部に設けられており、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記隔壁部における前記収容部と重なる領域に、連通孔が設けられている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項
5において、
前記第1室内には、
前記第1回転要素の車両後方側の下側に設けられた第2回転要素と、
前記第2回転要素の外周を囲むカバーが設けられており、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て前記ストレーナは、前記第1回転要素の回転軸と、前記第2回転要素の回転軸との間に位置している、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項
6において、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て前記ストレーナは、前記第1回転要素の下側の外周と前記第2回転要素の下側の外周とを結ぶ接線と交差する位置に配置されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この駆動装置では、機械式オイルポンプと電動オイルポンプに吸引されるオイルを濾過するためのストレーナが、機械式オイルポンプに片持ち支持された状態で設けられている。
動力伝達装置を搭載した車両の走行時には、車両の走行に起因する振動がストレーナに伝播する。そのため、ストレーナの支持安定は、より高いほうが好ましい。
しかし、ストレーナの支持安定性を確保しようとすると、部品点数の増加などにより、動力伝達装置のハウジングが大型化する可能性がある。
そこで、ハウジングを大型化させることなく、ストレーナの支持安定を確保することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構を支持すると共に、前記ハウジング内を区画する隔壁部と、
前記ハウジングの下部に配置されたストレーナと、
前記隔壁部に支持されたポンプと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記ハウジング内には、
前記動力伝達装置の回転軸方向における前記隔壁部の一方側に位置する第1室と、
前記動力伝達装置の回転軸方向における前記隔壁部の他方側に位置する第2室が、設けられており、
前記ストレーナは、
前記ポンプに接続する第1接続口と、前記隔壁部内の第2油路に接続する第2接続口と、を有し、
前記第2接続口は、前記ポンプの前記隔壁部への組付け方向から、前記第2油路に接続される、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、ストレーナの支持安定が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ケースを第2カバー側から見た図である。
【
図4】
図4は、ケースを第1カバー側から見た図である。
【
図9】
図9は、隔壁部におけるメカオイルポンプの支持構造を説明する図である。
【
図10】
図10は、ストレーナとメカオイルポンプの隔壁部への取付過程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向(鉛直線VL方向)、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0013】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0015】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0016】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁(弁体)を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0017】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0018】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0019】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0020】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両Vにおける動力伝達装置1の配置を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0022】
図1に示すように、車両Vの前部において動力伝達装置1は、左右のフレームFR、FRの間に配置される。動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部に、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0023】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0024】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0025】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0026】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合しており、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0027】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0028】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た平面図である。
図4は、ケース6を、第1カバー7側から見た平面図である。なお、
図3の拡大図では、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの図示を省略して、隔壁部62に設けた接続部625、627周りを示している。さらに、
図3の拡大図と
図4では、開口部620の位置を判り易くするために、開口部620の領域に交差したハッチングを付して示している。
【0029】
図5は、ケース6を
図3におけるA-A線に沿って切断した断面を拡大した要部断面図である。
図6は、ケース6を
図5におけるA-A線に沿って切断した断面を拡大した要部断面図である。
図7は、ストレーナ10をアッパケース101側の上方から見た平面図である。
図7の拡大図では、ストレーナ10における排出路107と排出路109の位置関係を判り易くするために、排出路107と排出路109の周囲を断面で示している。
図8は、ストレーナ10を、アッパケース101側の斜め上方から見た斜視図である。
【0030】
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第2室S2である。
【0031】
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第2室S2には、バリエータ3が収容される。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止される。第2室S2側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止される。
ケース6では、第1カバー7と第2カバー8との間の空間(第1室S1、第2室S2)の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルが貯留される。
【0032】
図3に示すように、ケース6は、第2カバー8側(紙面手前側)の端面が、第2カバー8との接合部611となっている。接合部611は、隔壁部62の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部611には、第2カバー8側の接合部811(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
【0033】
図3に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を間隔をあけて囲む周壁部641が、設けられている。
図3において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
【0034】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0035】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0036】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。
図3において支持壁部632は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0037】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0038】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、支持穴623を囲む円筒状の支持壁部633が設けられている。
図3において支持壁部633は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部633は、支持穴623の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部633の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(
図2参照)の一端側が、回転可能に支持されている。
【0039】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0040】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。
図3において支持壁部634は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部634は、貫通孔624の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(
図2参照)が、回転可能に支持されている。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0041】
図3に示すように、隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624の下側にバッフルプレート66が取り付けられている。回転軸X4方向から見てバッフルプレート66は、曲面を下方に向けた半円形状を成しており、ファイナルギア45の回転軸X4方向の両方の側面を覆う側板部661と、回転軸X4の径方向の外周を覆う弧状壁部662とを有している(
図10参照)。なお、
図3では、紙面手前側の側板部661の図示を省略している。
【0042】
ケース6では、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域が、樹脂性のストレーナ10の収容部67となっている。
図5に示すように、収容部67は、開口を第1室S1側(
図5における右側)に向けた有底の空間である。
隔壁部62は、ケース6の周壁部61側の下部領域Rxが、収容部67の回転軸X1方向での底壁部となっている。回転軸X1方向において下部領域Rxは、隔壁部62よりも第2室S2側(図中、左側)に位置している。すなわち、回転軸X1の径方向から見て、隔壁部62と下部領域Rxは、回転軸X1方向に位置をずらして設けられている。
【0043】
そのため、ケース6の下部において収容部67は、前後進切替機構2が収容される領域651(凹部)の下方を回転軸X1方向に横切る範囲に形成されている。
【0044】
下部領域Rxには、当該下部領域Rxを回転軸X1方向に貫通する開口部620が形成されている。ケース6内の第1室S1と第2室S2は、この開口部620を介して互いに連通している。
【0045】
図3に示すように、回転軸X1方向から見て開口部620は、接線Lmと交差する位置に設けられている。接線Lmは、周壁部641の外周と、バッフルプレート66の弧状壁部662の外周とを結ぶ直線である。
開口部620は、周壁部641と弧状壁部662との間の領域から、直線Lnに沿って、接線Lmを上方から下方に横切ってケース6の下部まで及ぶ範囲に形成される。ここで、直線Lnは、周壁部641と弧状壁部662との間を通り、接線Lmに直交する直線である。
動力伝達装置1では、周壁部641と弧状壁部662との間の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高いが、デッドスペースを有効に利用して、開口部620を設けている。
【0046】
図5に示すように、下部領域Rxでは、回転軸X1の径方向で周壁部641に隣接する位置に、ストレーナ10の接続部625が設けられている。接続部625は、接続口625aを第2カバー8側(第1室S1)に向けた筒状の部位である。
図3に示すように、回転軸X1方向から見て接続部625は、下部側の一部の領域が、開口部620と重なる位置関係で設けられている。回転軸X1方向から見て接続部625の下部側の一部の領域は、開口部620内に突出している。
【0047】
図5に示すように、接続部625の奥側に油路626が開口している。
図3に示すように油路626は、隔壁部62内を開口部620から離れる方向に直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路を介して、後記する収容部68内に収容された電動オイルポンプEOPに接続されている。
【0048】
収容部67では、油路626の下側に、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。接続部627の接続口627aは、前記したストレーナ10との接続部625と同一方向を向いて開口している。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628(第1油路)に連絡している。
油路628は、前記した油路626の下側を、油路626に沿って収容部68側(図中、右側)に延びている。油路628は、ケース6内の油路を介して、後記する収容室S3内に設置されたコントロールバルブCV(
図2参照)に連絡している。
【0049】
図2に示すように、ケース6の車両前方側の側面には、開口を車両前方側に向けた収容部68が付設されている。収容室S3は、収容部68の開口を第3カバー9で封止して形成される。
収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の車両前方側の側面に、閉じられた収容室S3が形成される。
収容室S3には、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが、縦置き配置されている。
【0050】
コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁SP(スプール弁)が設けられている。
【0051】
収容室S3内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、上下方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
収容室S3では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ(
図3参照)、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる(
図3参照)。
【0052】
これにより、調圧弁SP(スプール弁)の進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが収容室S3内で縦置きされる。よって、収容室S3が車両前後方向に大型化しないようにされている。
なお、電動オイルポンプEOPは、モータ(図示せず)の回転軸を、鉛直線VL方向に沿わせた向きで縦置き配置されている。
図2に示すように、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVは、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいる。
【0053】
図3に示すように、ケース6の下部では、開口部620が、周壁部641の下側に設けられている。開口部620は、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側で、周壁部61(接合部611)の内周に沿って設けられている。回転軸X1方向から見て開口部620は、ストレーナ10との少なくとも一部を挿入可能な大きさで形成されている。
【0054】
図4に示すように、ケース6の第1カバー7側の面では、第2室S2を囲む周壁部61の内側に隔壁部62が位置している。隔壁部62の下部に、開口部620が位置しており、開口部620の上側で、貫通孔621、622が開口している。
【0055】
周壁部61における第1カバー7側の端面には、第1カバー7との接合部612が設けられている。接合部612は、隔壁部62の第1カバー7側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部612の内側が、隔壁部62となっている。
接合部612には、第1カバー7側の接合部711(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第1カバー7は、互いの接合部612、711同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第1カバー7で封止されて、閉じられた第2室S2が形成される。
【0056】
図4に示すように、貫通孔621は、開口部620から見て車両前方側の斜め上方に位置している。貫通孔622は、貫通孔621から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
周壁部61の内側では、鉛直線VL方向における上側の領域に、バリエータ3のプライマリプーリ31とセカンダリプーリ32とが位置している。
周壁部61は、プライマリプーリ31が設けられた領域の下部側が、ケース6の下部側に大きく膨らんでおり、この膨らんだ領域の最下部に開口部620が位置している。
【0057】
動力伝達装置1の駆動時には、図示しない油路を介して供給されるオイルOLが、第2室S2内のバリエータ3のベルト30に向けて噴射されて、バリエータ3のベルト30を潤滑する。
ベルト30を潤滑したオイルOLは、自重により、第2室S2内を開口部620が設けられた下部に向けて移動して、開口部620を通って、ストレーナ10が配置された第1室S1の下部に戻されるようになっている。
【0058】
図5および
図6に示すように、ストレーナ10は、アッパケース101とロアケース102との間に形成した空間S10内に、フィルタ100を配置した基本構成を有している。
ロアケース102には、ストレーナ10の内部の空間S10と、ストレーナ10の外部とを連通させる開口103が設けられている。ロアケース102の外側面には、開口103を全周に亘って囲む周壁104が突出して形成されている。
【0059】
図7に示すように、上面視においてストレーナ10は、略矩形形状を成している。アッパケース101の一側部101aでは、円筒状の第1接続部105が設けられている。上面視において第1接続部105は、一側部101aの長手方向(
図7における上下方向)の略中央部で、一側部101aに直交する向きで設けられている。
【0060】
第1接続部105は、直線L1に沿って、一側部101aから離れる方向に直線状に延びている。第1接続部105の先端105aは、一側部101aから所定距離La離間した位置に達している。ここで、直線L1は、一側部101aの長手方向(図中、上下方向)の略中間を通り、一側部101aに直交する直線である。
【0061】
第1接続部105の先端105a側には、第1接続部105の外周を全周に亘って囲むリング溝106が設けられている。
図6に示すように、第1接続部105の先端105a側は、ストレーナ10をメカオイルポンプMOPに接続する際に、メカオイルポンプMOP側の接続口120に挿入される。この際にリング溝106に外嵌したシールリングSLが、第1接続部105の外周と接続口120の内周との隙間を封止する。
第1接続部105の内部は、ストレーナ10におけるオイルの排出路107となっており、排出路107の開口が、ストレーナ10におけるオイルOLの第1排出口である。
【0062】
図7に示すように、第1接続部105の基部105b側には、第2接続部108が設けられている。第2接続部108は、内部にオイルOLの排出路109を有する有底筒状を成している。第2接続部108は、排出路109の開口を、直線L1に直交する直線L2方向に向けて設けられている。排出路109の開口が、ストレーナ10におけるオイルOLの第2排出口である。
【0063】
第1接続部105の基部105b側において第2接続部108は、当該第2接続部108の上端が、第1接続部105よりも上側に位置するように上方に向けて膨出している(
図8参照)。
図7に示すように、第2接続部108内の排出路109の開口方向と、第1接続部105内の排出路107の開口方向は、上面視において直交している。
【0064】
図6に示すように、第1接続部105内の排出路107は、直線L2と交差する水平線HLに対して所定角度θ1傾斜しており、第1接続部105は、先端105a側に向かうにつれて鉛直線VL方向の上側に位置する向きで傾斜している。
【0065】
図6に示すように、第2接続部108内の排出路109と、第1接続部105内の排出路107は、ストレーナ10の内部の空間S10に開口している。
図7に示すように、第2接続部108は、アッパケース101の略中心を通る直線L1の近傍に位置している。
【0066】
アッパケース101では、第2接続部108内の排出路109の延長上に位置する領域に、ロアケース102側(
図7における紙面奥側)に窪んだ凹部110(切欠部)が設けられている。
すなわち、ストレーナ10を側方から見ると、第2接続部108の排出路109が完全に露出している。そのため、
図5に示す筒状部材130を、ストレーナ10の側方から、アッパケース101に干渉させることなく、排出路109内に挿入できるようになっている。
ここで、排出路109の途中には、排出路109よりも内径が小さい小径部109a(
図7参照)が設けられている。排出路109に挿入された筒状部材130は、小径部109aに当接する位置まで、排出路109内に挿入される。
【0067】
図5に示すように、本実施形態では、ストレーナ10の第2接続部108と、隔壁部62側の接続部625とが、排出路109と接続口625aに挿入された筒状部材130を介して接続されている。
この状態において、ストレーナ10の排出路109は、筒状部材130と、接続部625の接続口625aと、を介して、隔壁部62内の油路626に連通している。
そのため、ストレーナ10側の排出路109に筒状部材130を挿入したのち、ストレーナ10を、第1室S1側から隔壁部62に近づけて、筒状部材130を接続部625の接続口625aに挿入することで、排出路109と油路626とが、接続部625を介して連絡するようになっている。
なお、この際に、接続部625の接続口625aの方に、筒状部材130を先に挿入しても良い。
【0068】
図6に示すように、ストレーナ10は、第1接続部105の先端105a側を、メカオイルポンプMOP側の接続口120に挿入して、メカオイルポンプMOPに組み付けられる。メカオイルポンプMOPは、隔壁部62に組み付けられるようになっており、ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPを介して隔壁部62に支持される。
【0069】
図9は、隔壁部62におけるメカオイルポンプMOPの支持構造を説明する図である。この
図9は、
図6におけるA-A線に沿って、メカオイルポンプMOPを切断した断面を模式的に示している。
図9に示すように、メカオイルポンプMOPにおける隔壁部62との対向部には、位置決め用の突起150と、オイルOLの排出口140とが設けられている。
隔壁部62では、メカオイルポンプMOPとの対向面に、挿入孔629と、接続部627が開口している。
【0070】
メカオイルポンプMOPは、隔壁部62の挿入孔629に、突起150を挿入することで、隔壁部62上の所定位置に位置決めされる。この状態で、メカオイルポンプMOPは、図示しないボルトにより、隔壁部62に固定される。
メカオイルポンプMOPが隔壁部62に固定されると、メカオイルポンプMOPの排出口140が、隔壁部62側の接続部627に対向する位置に配置されて、排出口140と、接続部627とが連通する。接続部627は、隔壁部62内の油路628に連絡している。そのため、メカオイルポンプMOPの排出口140から吐出されるオイルOLが、接続部627を通って、油路628内に供給されるようになっている。
【0071】
図10は、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの隔壁部62への取付過程を説明する図である。
始めに、ストレーナ10の第1接続部105を、メカオイルポンプMOPの接続口120に直線L1方向から挿入して、ストレーナ10をメカオイルポンプMOPに組み付ける。
この際のストレーナ10の挿入方向(変位方向)は、隔壁部62の取付面640に沿う方向であり、隔壁部62に対するメカオイルポンプMOPの取付方向(直線L2方向)に直交する方向である。
【0072】
続いて、ストレーナ10が組み付けられたメカオイルポンプMOPのサブアッセンブリを、直線L1に直交する直線L2方向に変位させて、メカオイルポンプMOPの突起150を、隔壁部62の挿入孔629に挿入して位置決めする。
この際に、接続部625の接続口625aに筒状部材130を挿入しておき、挿入孔629への突起150の挿入に並行して、筒状部材130を、ストレーナ10の第2接続部108に挿入する。
【0073】
これにより、ストレーナ10は、接続部625とメカオイルポンプMOPの二箇所で支持される。ストレーナ10がメカオイルポンプMOPのみで支持されている場合には、動力伝達装置1を搭載した車両Vの走行時の振動などにより、ストレーナ10が直線L1回りに回転する可能性がある。
ストレーナ10は、直線L2方向から第2接続部108に挿入される筒状部材130により、直線L1回りの回転が規制される。
【0074】
この状態においてストレーナ10は、当該ストレーナ10の一部の領域が、隔壁部62の下方に及んで配置される。特に、
図5に示すように、ストレーナ10の一部の領域が、開口部620内に及んで配置される。
開口部620が設けられていない場合には、周壁部61側の下部領域Rxとの干渉を避けてストレーナ10を配置するため、ストレーナ10の位置が、回転軸X1方向で、下部領域Rxから離れる方向(
図5における右方向)にズレることになる。かかる場合には、ハウジングHS(ケース6)が回転軸X1方向に大型化する可能性がある。
上記の通り、ストレーナ10の一部の領域を、開口部620内に及んで配置できるので、ハウジングHS(ケース6)が回転軸X1方向に大型化することを好適に抑制できる。
【0075】
以上の通り、本実施形態にかかる車両用の動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)の駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
動力伝達機構の回転軸を支持すると共に、ハウジングHS内を区画する隔壁部62と、
ハウジングHS内の下部に配置されたストレーナ10と、
隔壁部62に支持されたメカオイルポンプMOP(ポンプ)と、を有する。
ハウジングHS内には、
動力伝達装置の回転軸X方向における隔壁部62の一方側に位置する第1室S1と、
動力伝達装置の回転軸X方向における隔壁部62の他方側に位置する第2室S2が、設けられている。
ストレーナ10は、
メカオイルポンプMOPに接続する第1接続部105(第1接続口)と、隔壁部62内の油路626(第2油路)に接続する第2接続部108(第2接続口)と、を有する。
第2接続部108は、メカオイルポンプMOPの隔壁部62への組付け方向から油路626に接続される。
【0076】
このように構成すると、ストレーナ10は、隔壁部62に取り付けられたメカオイルポンプMOPと、隔壁部62の2箇所で支持されるので、ストレーナ10の支持安定性が確保される。
さらに、ストレーナ10をメカオイルポンプMOPに組み付けた後、メカオイルポンプMOPを隔壁部62に組み付けることで、ストレーナ10の第2接続部108と、隔壁部62側の油路626との接続が完了する。
これにより、ストレーナ10と、油路626との接続構成を簡単にできる。ケース6の隔壁部62内の油路626(ケース内油路)を利用して、油路626の先にあるユニット、例えば電動オイルポンプEOPやコントロールバルブCVなどに、ストレーナ10を介して吸引したオイルOLを供給できる。
【0077】
すなわち、ストレーナ10を組み付けたメカオイルポンプMOP(ポンプ)を隔壁部62に組み付けることで、メカオイルポンプMOPとストレーナ10のハウジングHS内での配置が完了する。
すなわち、ストレーナ10をメカオイルポンプMOPに組み付けてサブアッセンブリ化しておくことで、ハウジングHS内へのストレーナ10およびメカオイルポンプMOPの配置を簡単に行える。さらに、ストレーナ10の支持構造を簡素化できる。
【0078】
さらに、ハウジングHS内に、ストレーナ10の第2接続部108とユニットとを接続する配管を別途用意する必要が無い。よって、ストレーナ10の第2接続部108とユニットとを接続する部品の総数を減らすことができる。また、配管を別途設ける場合には、ハウジングHS内の他の要素との干渉を避けるために配管を屈曲させて設ける必要などが生じる。配管を必要としないので、ストレーナ10の第2接続部108からユニットまでの油路長を短くすることが可能になる。
【0079】
(i)隔壁部62の下部には、第1室S1と第2室S2とを連通させる開口部620(連通孔)が設けられている。
動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向から見て、ストレーナ10は、一部が開口部620内に位置しており、隔壁部62と重なる領域を持って配置されている。
【0080】
隔壁部62を避けてストレーナ10を配置すると、動力伝達機構の回転軸方向におけるハウジングHSの幅が大型化する可能性がある。
鉛直線VL方向から見て隔壁部62と重なるように設けられた収容部67にストレーナ10を配置すると、ストレーナ10を、鉛直線VL方向から見て隔壁部62に重なるように配置できる。これにより、ハウジングHS内にストレーナを収容できるコンパクトなストレーナ10の配置構造となる。よって、動力伝達機構の回転軸方向におけるハウジングHSの幅が大型化する可能性を低減できる。
【0081】
(2)樹脂製のストレーナ10では、第2接続部108から見て隔壁部62側に、隔壁部62との干渉を避けるための凹部110が設けられている。
【0082】
このように構成すると、隔壁部62に対するメカオイルポンプMOPの組付け方向から見て、ストレーナ10における第2接続部108の領域が、隔壁部62と重なるように配置される。この状態において、ストレーナ10が隔壁部62との干渉を避けるための凹部110を有しているので、隔壁部62の下側を回転軸X1方向に横切って、ストレーナ10の本体部を配置できる。
これにより、鉛直線VL方向から見たストレーナ10の面積を確保しつつ、ストレーナ10を鉛直線方向の上側に寄せて配置できるので、ストレーナ10の容積を確保できる。
【0083】
(3)ストレーナ10の第1接続部105と、メカオイルポンプMOPとの組付け方向(直線L1方向)は、
メカオイルポンプMOPの隔壁部62に対する組付け方向(直線L2方向)に交差する方向で、より好ましくは直交する方向である。
【0084】
ストレーナ10の他の構成要素との接続部が、第1接続部105のみであると、ストレーナ10の直線L1回りの回転を規制する必要があり、そのために部品点数が増加する可能性がある。
ストレーナ10の第2接続部108が隔壁部62に接続することで、ストレーナ10の他の構成要素との接続部を2箇所にすることができる。これにより、メカオイルポンプMOPに組み付けたストレーナ10の回転をより確実に抑制できる。ストレーナ10の回転を抑制するための部品を別途用意する必要が無いので、部品点数の増加に起因するコストの増加を抑えることができる。
【0085】
(4)第1室S1内には、
動力伝達機構を構成する第1回転要素(前後進切替機構2)の外周を囲む周壁部641と、
動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線方向で、周壁部641の下側を、回転軸Xに沿って隔壁部62まで及ぶ範囲に設けられた収容部67が設けられている。
ストレーナ10は、収容部67に設けられている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、隔壁部62における収容部67と重なる領域に、第1室S1と第2室S2とを連通させる開口部620(連通孔)が設けられている。
【0086】
このように構成すると、ハウジングHSにおいて収容部67が、第1室S1の下部と第2室S2の下部とを連通させる貫通部(貫通孔)として機能する。これにより、第1室S1内のオイルOLと第2室S2内のオイルOLが、ハウジングHSの下部に位置する収容部67に回収されるので、ストレーナ10を介して吸引されるオイルOLの量を増やすことができる。
また、収容部67と前後進切替機構2(第1回転要素)を収容する領域651との間に周壁部641が位置しているので、前後進切替機構2に含まれる回転要素の回転により、収容部67内のオイルOLの油面が変動する程度を抑えることができる。収容部67内のオイルOLの油面変動が大きいと、ストレーナ10でエア吸いなどが生ずる可能性があるが、エア吸いが起こる可能性を低減できるので、ストレーナ10を介してオイルOLを安定的に吸引できる。
ストレーナ10を介して吸引したオイルOLが、動力伝達機構の作動や潤滑に用いられる場合には、油圧制御回路側にオイルOLを安定的に供給できるので、動力伝達機構の作動や潤滑を適切に行うことができる。
【0087】
(5)第1室S1内には、
前後進切替機構2(第1回転要素)の車両後方側の下側に設けられたファイナルギア45(第2回転要素)と、
ファイナルギア45の外周を囲むバッフルプレート66が、設けられている。
動力伝達装置1の回転軸X方向から見てストレーナ10は、前後進切替機構2の回転軸X1と、ファイナルギア45の回転軸X4との間に位置している。
【0088】
動力伝達装置1では、前後進切替機構2の回転軸X1と、ファイナルギア45の回転軸X4との間には、空間的な余裕がある。この空間にストレーナ10を配置すると、ストレーナ10を鉛直線方向の上側に寄せて配置できる。これにより、動力伝達装置1の鉛直線VL方向への大型化を好適に抑制できる。
【0089】
(6)動力伝達装置1の回転軸X方向から見てストレーナ10は、接線Lmと交差する位置に配置されている。
接線Lmは、前後進切替機構2(第1回転要素)の下側の外周に沿う周壁部641と、ファイナルギア45(第2回転要素)の下側の外周に沿うバッフルプレート66の弧状壁部662とを結ぶ接線である。
【0090】
動力伝達装置1では、周壁部641と弧状壁部662との間の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高いが、デッドスペースを有効に利用して、開口部620とストレーナ10を設けることができる。特に、ストレーナ10を、周壁部641と弧状壁部662との間の領域に近づけて配置することで、ストレーナ10を設けるためにケース6が上下方向に大型化することを好適に抑制できる。
【0091】
(ii)ハウジングHSにおいて収容部67は、前後進切替機構2(第1回転要素)の回転軸X1と、ファイナルギア45(第2回転要素)の回転軸X4から見て、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向で、下部側に位置している。
第1室S1側に、ファイナルギア45(第2回転要素)の外周を囲むバッフルプレート66が設けられている。
前後進切替機構2を囲む弧状の周壁部641の外周と、ファイナルギア45の外周を囲むバッフルプレート66の弧状壁部662の外周とを結ぶ接線Lmと交差する位置に、開口部620が位置している。
開口部620は、周壁部641と弧状壁部662との間の領域から、接線Lmを上方から下方に横切ってケース6の下部まで及ぶ範囲に形成される。
ストレーナ10は、回転軸X1、X4方向から見て、開口部620と重なる範囲を持って配置される。
【0092】
動力伝達装置1では、周壁部641と弧状壁部662との間の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高いが、デッドスペースを有効に利用して、開口部620とストレーナ10を設けることができる。特に、ストレーナ10を、周壁部641と弧状壁部662との間の領域に近づけて配置することで、ストレーナ10を設けるためにケース6が上下方向に大型化することを好適に抑制できる。
【0093】
(iii)メカオイルポンプMOPは、ストレーナ10の車両前方側の側方に位置している。
【0094】
前後進切替機構2(第1回転要素)は、ファイナルギア45(第2回転要素)の車両前方側の上側に位置している。そのため、ストレーナ10の車両前方側では、車両後方側よりも鉛直線VL方向に空間的な余裕がある。
ストレーナ10の車両前方側の側方にメカオイルポンプMOPを配置することで、動力伝達装置1のケース6が上下方向に大型化することを好適に抑制できる。
【0095】
(iv)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
動力伝達機構に供給するオイルOLの圧力を制御するコントロールバルブCVと、
コントロールバルブCVにオイルOLを供給するポンプ(電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP)と、を有する。
ハウジングHSは、
動力伝達機構の回転軸を支持する隔壁部62と、
動力伝達機構の回転軸X方向における隔壁部62の一方側に位置する第1室S1と、
動力伝達機構の回転軸X方向における隔壁部62の他方側に位置する第2室S2と、
第1室S1と第2室S2の車両前方側に位置する収容室S3と、を有する。
コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、収容室S3内で縦置き配置されている。コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPは、収容室S3内で、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいる。
動力伝達機構の回転軸X方向から見て、第1室S1内では、動力伝達機構の入力軸(回転軸X1)と出力軸(回転軸X4)の間に、メカオイルポンプMOPに支持されたストレーナ10が位置している。
ストレーナ10は、
メカオイルポンプMOPに接続する第1接続部105(第1接続口)と、隔壁部62内の油路626(第2油路)に接続する第2接続部108(第2接続口)と、を有する。
第2接続部108は、メカオイルポンプMOPの隔壁部62への組付け方向から油路626に接続される。
【0096】
また、例えば、コントロールバルブCVが、ハウジングHSの下部で水平線方向に沿わせた向きで配置された動力伝達装置の場合には、ストレーナ10は、コントロールバルブCVに取り付けられていた。
コントロールバルブCVが、ハウジングHSの車両前方側で縦置き配置されている動力伝達装置1の場合、コントロールバルブCVは、ストレーナ10が配置される第1室S1とは別の収容室S3に配置される。
そのため、ストレーナ10の支持に、コントロールバルブCVを利用することができない。
上記のように構成すると、ストレーナ10は、隔壁部62に取り付けられたメカオイルポンプMOPと、隔壁部62の2箇所で支持されるので、ストレーナ10の支持安定性が確保される。
【0097】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOPと共に、収容室S3に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0098】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 動力伝達装置(動力伝達機構)
2 前後進切替機構(動力伝達機構:第1回転要素)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
45 ファイナルギア(第2回転要素)
5 差動装置(動力伝達機構)
6 ケース
61 周壁部
62 隔壁部
66 バッフルプレート
662 弧状壁部
67 収容部
7 第1カバー
8 第2カバー
9 第3カバー
10 ストレーナ
105 第1接続部(第1接続口)
107 排出路
108 第2接続部(第2接続口)
109 排出路
110 凹部
120 接続口
620 開口部(連通孔)
626 油路(第2油路)
628 油路(第1油路)
641 周壁部
HS ハウジング
MOP メカオイルポンプ(ポンプ)
OL オイル
S1 第1室
S2 第2室
X1~X4 :回転軸