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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241111BHJP
【FI】
F16H57/04 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024509235
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011619
(87)【国際公開番号】W WO2023182456
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022047616
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 雅康
(72)【発明者】
【氏名】湯本 泰章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 務
(72)【発明者】
【氏名】若月 諭
(72)【発明者】
【氏名】沼田 和也
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-296169(JP,A)
【文献】特開2012-057498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構に供給するオイルを調圧するコントロールバルブと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記動力伝達機構の入力軸と、
前記動力伝達機構の中間軸と、
前記動力伝達機構の出力軸と、
チャージングパイプの挿入口と、を有し、
前記出力軸は、前記入力軸よりも車両後方側に位置しており、
前記中間軸が、前記出力軸の上方に位置しており、
前記コントロールバルブは、前記入力軸の車両前方側で縦置きされており、
前記ハウジングでは、前記出力軸よりも車両後方側であって前記中間軸の下側の領域に、前記ハウジングを内側に窪ませた凹部が設けられており、
前記上方から見た前記凹部の底部に、前記挿入口が設けられている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記出力軸と同軸に設けられて、前記出力軸と前記中間軸との間の回転伝達に関与する回転体と、
前記出力軸の軸方向における前記回転体の一方側を覆うカバーと、を有しており、
前記出力軸の径方向から見て、前記挿入口は、前記カバーと重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記中間軸は、前記出力軸よりも前記車両後方側に位置しており、
前記挿入口は、当該挿入口の開口方向に沿う直線が、前記中間軸と前記出力軸とを結ぶ直線と、前記出力軸の下側で交差する位置に設けられている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項において、
前記回転体は、
デフケースと、
前記デフケースの外周に固定されたファイナルギアであり、
前記中間軸は、前記ファイナルギアに噛合する伝達ギアと、他の中間軸との間の回転伝達に関与するアイドラギアと、を有しており、
前記中間軸の軸方向において前記アイドラギアは、前記伝達ギアから見て前記カバーが位置する前記一方側に位置しており、
前記車両後方側から見て前記挿入口は、前記アイドラギアと重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記出力軸の軸方向から見て、前記凹部は、前記アイドラギア側に第1壁部を備えており
前記車両後方側から見て前記第1壁部の下縁は、前記アイドラギアの下縁よりも下側に位置している、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項において、
前記車両後方側から見て、前記凹部は、前記ファイナルギア側に第2壁部を備える、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項において、
前記車両後方側から見て前記カバーは、
前記ファイナルギアの前記デフケース側の側面を覆う第1カバー部と、
前記デフケースの下側の外周を覆う第2カバー部と、を有している、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項において、
前記ハウジングは、
前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケースのトルクコンバータ側の開口を覆うトルコンカバーと、を有し、
前記凹部は、前記トルコンカバーに設けられている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記出力軸の軸方向から見て、前記凹部は、前記ケースと重なる位置関係で設けられている、動力伝達装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原動機や駆動装置の内部の油量を計測するオイルレベルゲージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-161224号公報
【0004】
特許文献1では、駆動装置のケースの側面にガイドパイプが固定されている。ガイドパイプの下端は、ケースに設けた貫通孔に嵌め込まれている。ガイドパイプの上端はケースの上部で、開口を上方に向けて設けられている。オイルレベルゲージは、ガイドパイプの上端から挿入されて、先端側のゲージ部をケース内に配置させると共に、ガイドパイプの開口を封止する。
【0005】
ケース内においてゲージ部は、少なくとも一部が、ケース内に貯留されたオイルに浸漬される位置に配置される。
使用に際してオイルレベルゲージは、ガイドパイプから引き抜かれる。そして、ゲージ部に付着したオイルの位置から、ケース内に充填されたオイルの高さ位置を特定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ガイドパイプの一種であるチャージングパイプは、ケース内に充填されたオイルの高さの測定と、ケース内へのオイルの充填に用いられる。
駆動装置において、ケースの車両前方側の側面にコントロールバルブの収容部を設けようとすると、ケースにおける回転軸方向の両側面と、車両前方側の側面には、チャージングパイプを設置できないことになる。かかる場合、他の構成部品との関係で、ケースの他の側面においても、チャージングパイプを設置する場所を確保できない場合がある。
【0007】
この場合、チャージングパイプをケース内に設けて、チャージングパイプとの連絡口をケースの上部で開口させることが考えられる。しかし、ケースの内部には、回転要素などが位置しているため、回転要素との干渉を避けつつチャージングパイプを設けようとすると、チャージングパイプが複数箇所で湾曲した複雑な形状となることがある。
【0008】
そうすると、オイルレベルゲージをチャージングパイプから引き抜く際に、ゲージ部がチャージングパイプの内周に干渉して、付着したオイルが削ぎ落とされる可能性がある。かかる場合、オイルレベルが判り難くなる。
そこで、オイルレベルを適切に判定できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記動力伝達機構に供給するオイルを調圧するコントロールバルブと、を有する車両用の動力伝達装置であって、
前記動力伝達機構の入力軸と、
前記動力伝達機構の中間軸と、
前記動力伝達機構の出力軸と、
チャージングパイプの挿入口と、を有し、
前記出力軸は、前記入力軸よりも車両後方側に位置しており、
前記中間軸が、前記出力軸の上方に位置しており、
前記コントロールバルブは、前記入力軸の車両前方側で縦置きされており、
前記ハウジングでは、前記出力軸よりも車両後方側であって前記中間軸の下側の領域に、前記ハウジングを内側に窪ませた凹部が設けられており、
前記上方から見た前記凹部の底部に、前記挿入口が設けられている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、オイルレベルを適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
図2図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
図3図3は、ケースを第2カバー側から見た図である。
図4図4は、第2カバーをケース側から見た図である。
図5図5は、第2カバーをエンジン側から見た図である。
図6図6は、第2カバーの断面図である。
図7図7は、チャージングパイプの挿入口の配置を説明する断面図である。
図8図8は、チャージングパイプを挿入口に挿入した後のチャージングパイプの配置を説明する断面図である。
図9図9は、第2カバーの下部領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0013】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0015】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0016】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0017】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0018】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0019】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0020】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁(弁体)が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0021】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0022】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0023】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
図1に示すように、動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部には、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
ここで、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5が、発明における動力伝達機構の構成要素である。
【0024】
図2に示すように、動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0025】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0026】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0027】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0028】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
前後進切替機構2の入力軸20と、プライマリプーリ31の入力軸34とが、回転軸X1上で、同芯に配置されている。 前後進切替機構2の入力軸20は、発明における動力伝達機構の入力軸に相当する。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3(第3軸)上で同軸に配置される。アイドラギア42とリダクションギア43を有するアイドラ軸44が、発明における動力伝達機構の中間軸に相当する。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸)上で同軸に配置される。駆動軸55A、55Bは、発明における動力伝達機構の出力軸に相当する。
動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0029】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た状態を示す模式図である。
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。
【0030】
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止されて、閉じられた第1室S1が形成される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止されて、閉じられた第3室S3が形成される。
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
【0031】
ケース6では、周壁部61の車両前方側の外周に、第2室S2を形成する収容部68が付設されている。収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68の開口が第3カバー9で封止されて、閉じられた第2室S2が形成される。
第2室S2には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが設けられている。
【0032】
図2に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁SP(スプール弁)が設けられている。
【0033】
第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向に沿わせた向きで、縦置きされている。
図3に示すように、収容部68内に形成される第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)スプール弁の進退移動方向が水平線方向に沿う向きとなる。
本明細書における用語「縦置き」とは、コントロールバルブ内のスプール弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される向きでコントロールバルブCVが設置されている状態をいう。この状態で、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の積層方向が水平線方向(車両前後方向)に沿う向きとなる。
【0034】
このように、スプール弁の進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが第2室S2内で縦置きされる。よって、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0035】
図3に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~回転軸X4)に対して略直交する向きで設けられている。
【0036】
隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を、間隔をあけて囲む周壁部641とが、設けられている。図2において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(図1における第2カバー8側)に突出している。
【0037】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(図2参照)が回転可能に支持される。
【0038】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0039】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0040】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0041】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50が、回転可能に支持されている。貫通孔624を、デフケース50から延びる駆動軸55A(図2参照)が貫通する。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0042】
図3に示すように、隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624の下側にバッフルプレート66が取り付けられている。回転軸X4方向から見てバッフルプレート66は、曲面を下方に向けた半円形状を成している。バッフルプレート66は、ファイナルギア45の回転軸X4方向の側面を覆う側板部661、661(図9参照)と、デフケース50の回転軸X4の側面を覆う弧状壁部662と、ファイナルギア45の外周を覆う周壁部663と、を有している。
【0043】
ケース6では、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域が、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの収容部67となっている。
収容部67は、ケース6(ハウジングHS)内の下部に位置している。そのため、収容部67には、動力伝達機構の構成要素の駆動や冷却に用いられるオイルOLが貯留される。
【0044】
収容部67は、有底の空間であり、収容部67では、図2における紙面奥側に底壁となる隔壁部62が位置している。
収容部67では、ストレーナ10が、オイルOLの吸込口13を、ケース6の底壁部613に対向させて設けられている。
動力伝達装置1では、ポンプ(メカオイルポンプMOP、電動オイルポンプEOP)が駆動されると、第1室S1の下部(収容部67)に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して吸引されて、ポンプ側に供給されるようになっている。
【0045】
図4は、第2カバー8を、ケース6側から見た平面図である。図4では、接合部811の領域に交差したハッチングを付して示している。
図5は、第2カバー8の第2領域826側をエンジンENG側から見た平面図である。図5では、エンジンENG側との接合部812の領域に交差したハッチングを付して示している。さらに、隔壁部82の紙面奥側に位置するファイナルギア45とアイドラギア42の外周の位置と、凹部を構成する底壁部891と第1壁部895の位置を仮想線で示している。
図6は、第2カバー8を、図4におけるA-A線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
【0046】
図4に示すように、第2カバー8は、筒状の周壁部81と、隔壁部82と、を有する。隔壁部82は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
周壁部81は、ケース6側(紙面手前側)の端面が、ケース6との接合部811となっている。第2カバー8では、接合部811の内側に、隔壁部82が位置している。
隔壁部82には、貫通孔821、824と、支持穴822、823が設けられている。
隔壁部82は、第1領域825と、第2領域826と、を有する。
第1領域825は、回転軸X1を中心とした略円形の領域である。第1領域825は、紙面手前側(第1室S1側)に膨出している。第1領域825の反対側(エンジンENG側)には、トルクコンバータT/Cが収容される(図6参照)。
【0047】
図4に示すように、第1領域825の略中心に位置する貫通孔821は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部82における第1室S1側(紙面手前側)の面には、貫通孔821を囲む円筒状の支持壁部831が設けられている。
【0048】
第2領域826は、隔壁部82における第1領域825を除く領域である。回転軸X1から見て車両後方側に位置している。
第2領域826には、支持穴822、823と、貫通孔824が設けられている。
支持穴822は、回転軸X2を中心として形成された有底穴である。支持穴822の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(図2参照)が回転可能に支持される。
【0049】
支持穴823は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。第2領域826では、支持穴823を囲む円筒状の支持壁部833が設けられている。図4において支持壁部833は、紙面手前側に突出している。
支持壁部833の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(図2参照)が、回転可能に支持される。
【0050】
貫通孔824は、回転軸X4を中心として形成されている。第2領域826では、貫通孔824を囲む円筒状の支持壁部834が設けられている。図4において支持壁部834は、紙面手前側に突出している。
支持壁部834の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(図2参照)が、回転可能に支持される。
【0051】
第2領域826では、回転軸X4よりも車両後方側であって、回転軸X3よりも下側の領域に、後記する凹部89を構成する第2壁部896が位置している。第2壁部896は、第2領域826よりも紙面前側に位置している。回転軸X4方向から見て第2壁部896の領域は、第2カバー8の第2領域826の一部を、紙面手前側(ケース6側)に窪ませたことにより形成される。
【0052】
図5に示すように、第2カバー8のエンジンENG側の面では、トルクコンバータT/Cの外周に沿って、エンジンENGとの接合部812が設けられている。接合部812の内側が、トルクコンバータT/Cの収容部85となっている(図5図6参照)。
【0053】
図5に示すように、第2領域826は、収容部85から見て車両後方側に位置している。第2領域826では、回転軸X1を通る水平線HLよりも下側で、貫通孔824が開口している。この貫通孔824を、デフケース50から延びる駆動軸55Bが貫通する(図2参照)。
貫通孔824から見て車両後方側の斜め上方には、アイドラ軸44の支持部828が位置している。支持部828は、前記した支持穴823(図4参照)の裏側に位置している。回転軸X3を中心として設けられている。支持部828は、紙面手前側に膨出している。
【0054】
貫通孔824から見て車両後方側には、凹部89が設けられている。凹部89は、第2領域826の車両後方側に位置する領域の一部を、紙面奥側(ケース6側)と、図中右側(車両前方側)に窪ませることで形成される。
回転軸X4方向から見て凹部89は、鉛直線VL方向の幅W89が、車両前方側に向かうにつれて狭くなる先細り形状で形成されている。
【0055】
凹部89は、3つの壁部(底壁部891、第1壁部895、第2壁部896)で囲まれた空間である。凹部89は、エンジンENG側(紙面手前側)と、車両後方側に開口を向けて設けられている。
図6に示すように、凹部89は、隔壁部82(第2領域826)の外側に位置している。
鉛直線VL方向の上側から見ると、車両前後方向において第1壁部895は、凹部89のバッフルプレート66(弧状壁部662)側に位置している。
鉛直線VL方向の上側から見ると、車幅方向において第2壁部896は、凹部89の、バッフルプレート66(側板部661)およびファイナルギア45側に位置している。
【0056】
図5に示すように、回転軸X4方向から見て、底壁部891と第1壁部895の接続部897が、ファイナルギア45と重なる位置に配置されている。
さらに、回転軸X4方向から見て、第1壁部895は、アイドラギア42の車両後方側の斜め下側を、斜めに延びている。回転軸X4方向から見て、第1壁部895は、底壁部891から離れて上側に向かうにつれて、車両後方側に位置する向きで傾斜している。回転軸X4方向から見て第1壁部895は、アイドラギア42と重ならない位置関係で設けられている。
【0057】
図6に示すように、車両上方側から見ると、凹部89では、第1壁部895と第2壁部896の外側で、第1壁部895と第2壁部896に跨がって底壁部891が位置している。
底壁部891には、チャージングパイプCPの挿入口890が設けられている。
図7に示すように挿入口890は、底壁部891を厚み方向に貫通している。
本実施形態では、挿入口890は、次の条件を満たすように設けられている。(a)挿入口890の開口方向に沿う直線L891が、回転軸X4よりも下側で、回転軸X3と回転軸X4を結ぶ直線Lxと交差する(図7参照)。(b)回転軸X4の径方向(図6における矢印B側)から見て、挿入口890が、バッフルプレート66(弧状壁部662)と重なる位置関係で設けられる(図6参照)。
【0058】
図9は、図6におけるA-A線に沿って第2カバー8を切断した断面を模式的に示した図である。図9では、第1室S1内の下部において、切断面よりも紙面手前側に位置するデフケース50とバッフルプレート66の位置を仮想線で示している。
【0059】
図9に示すように、第2カバー8の下部では、第2領域826の下端部826cが、周壁部81との間に回転軸X4の径方向に間隔を開けて設けられている。第2カバー8の下部では、オイル捕捉部S4が、デフケース50が位置する下部領域に形成されている。
図6に示すように、オイル捕捉部S4は、車両前後方向に延びている。オイル捕捉部S4は、ケース6側(図中、右側)に開口を向けた空間である。そのため、オイル捕捉部S4は、第1室S1に連絡しており、第1室S1の一部を構成する。
【0060】
ここで、図9に示すように、オイル捕捉部S4は、挿入口890の開口方向に沿う直線L891の延長上に位置している。そのため、図8に示す挿入口890からチャージングパイプCPを挿入すると、チャージングパイプCPの先端側がオイル捕捉部S4を向いて配置される。
【0061】
そのため、チャージングパイプCPの内側を通してオイルレベルゲージGを挿入すると、オイルレベルゲージGのゲージ部G1が、オイル捕捉部S4に向けて真っ直ぐにと挿入される(図8、9参照)。
図9に示すように、オイル捕捉部S4では、ケース6側(図中、左側)にバッフルプレート66が位置しているので、挿入したオイルレベルゲージGが、デフケース50やファイナルギア45等の回転体に干渉しないようになっている。
【0062】
このように、チャージングパイプCPの挿入口890は、バッフルプレート66よりもエンジンENG側で開口している(図6参照)。そのため、チャージングパイプCPの中を通してオイルレベルゲージGを挿入すると、デフケース50とファイナルギア45の側面がバッフルプレート66で覆われているので、オイルレベルゲージGが、デフケース50やファイナルギア45と干渉しないようになっている(図8参照)。
さらに、挿入口890の車両前方側にアイドラギア42が位置している(図6参照)。挿入口890は、アイドラギア42の下縁よりも下側で開口しているので、チャージングパイプCPの中を通してオイルレベルゲージGを挿入しても、オイルレベルゲージGがアイドラギア42と干渉しないようになっている。
【0063】
このように、第2カバー8の車両後方側の下部に空間的な余裕があるので、この空間を利用すべく凹部89を設けて、凹部89の底壁部891にチャージングパイプCP用の挿入口890を設けている。そして、挿入口890から、オイルOLの貯留空間である収容部67に最短距離でアクセスできるので、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPを、湾曲の少ないシンプルな形状とすることができる。これにより、オイルレベルゲージGをチャージングパイプCPから引き抜く際に、ゲージ部G1がチャージングパイプCPの内周に干渉して、付着したオイルが削ぎ落とされる事態の発生を好適に防止できる。よって、オイルレベルを適切に判定できることになる。
【0064】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)車両V用の動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)からの駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
動力伝達機構に供給するオイルを調圧するコントロールバルブCVと、
動力伝達機構の入力軸20(入力軸)と、
前記動力伝達機構のアイドラ軸44(中間軸)と、
前記動力伝達機構の駆動軸55A、55B(出力軸)と、
チャージングパイプCPの挿入口890と、を有する。
駆動軸55A、55Bは、入力軸20よりも車両Vの後方側に位置している。
アイドラ軸44(第3軸)が、駆動軸55A、55Bの上方に位置している。
コントロールバルブCVは、入力軸20の車両前方側で縦置きされている。
ハウジングHSでは、駆動軸55A、55Bよりも車両後方側であってアイドラ軸44の下側の領域に、ハウジングHSを内側に窪ませた凹部89が設けられている。
鉛直線VL方向における上方から見た凹部89の底壁部891(底部)に、挿入口890が設けられている。
【0065】
ハウジングHS内では、出力軸である駆動軸55A、55Bの車両後方側であってアイドラ軸44(中間軸)よりも下側に、チャージングパイプCPの挿入を許容する空間的な余裕がある。駆動軸55A、55Bよりも下側は、動力伝達機構の駆動と潤滑に用いられるオイルOLの貯留空間(収容部67)である。
上記のように挿入口890を設けると、オイルOLの貯留空間である収容部67に最短距離でアクセスできるので、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPを、湾曲の少ないシンプルな形状とすることができる。例えば、チャージングパイプが複数箇所で湾曲した複雑な形状のチャージングパイプの場合、オイルレベルゲージGをチャージングパイプCPから引き抜く際に、ゲージ部G1がチャージングパイプCPの内周に干渉して、付着したオイルが削ぎ落とされる可能性がある。上記のように構成することで、かかる事態が発生する可能性を低減できる。よって、オイルレベルを適切に判定できることになる。
【0066】
(2)駆動軸55A、55Bと同軸に設けられて、駆動軸55A、55Bとアイドラ軸44との間の回転伝達に関与する回転体(デフケース50、ファイナルギア45)と、
駆動軸55A、55Bの軸方向における回転体の一方側を覆うバッフルプレート66(カバー)と、を有している。
駆動軸55A、55B(第4軸)の径方向から見て、挿入口890は、バッフルプレート66と重なる位置関係で設けられている。
【0067】
このように構成すると、図6に示すように車両前後方向に沿う水平線方向(矢印B方向)から見ると、挿入口890とバッフルプレート66とが重なる位置関係で配置される。
これにより、バッフルプレート66(カバー)が、挿入口890から挿入されたチャージングパイプCPと回転体(デフケース50、ファイナルギア45)との干渉を防ぐことができる。また、回転体の回転で撹拌されたオイルOLが、チャージングパイプCPの挿入先である収容部67に移動することを、バッフルプレート66で防ぐことができる。
回転体の回転で撹拌されたオイルOLは気泡を多く含んでいる。そのため、チャージングパイプCPの挿入先に、回転体の回転で撹拌されたオイルOLが移動すると、オイルOLに含まれる気泡が、オイルレベルゲージGのゲージ部G1に付着したオイルの位置に影響を及ぼす可能性がある。かかる場合、ハウジングHS内のオイルOLの位置の検出が不確かとなる可能性がある。
上記のように構成すると、気泡を含んだオイルOLのゲージ部G1への到達を抑制するので、オイルOLの位置をより適切に検出できるようになる。
【0068】
(3)アイドラ軸44(中間軸)は、駆動軸55A、55B(出力軸)よりも車両後方側に位置している。
挿入口890は、当該挿入口890の開口方向に沿う直線L891が、アイドラ軸44(中間軸)と、駆動軸55A、55B(出力軸)とを結ぶ直線Lxと、駆動軸55A、55Bの下側で交差する位置に設けられている。
【0069】
挿入口890は、挿入口890の開口方向に沿う直線L891が、アイドラ軸44(中間軸)と駆動軸55A、55B(出力軸)とを結ぶ直線Lxと、駆動軸55A、55B(出力軸)の下側で交差する位置に設けられている。
このように構成すると、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPを、回転体と干渉させることなく、オイルOLの貯留部である収容部67まで到達させることができる。特にアイドラ軸44(中間軸)が備えるアイドラギア42との干渉を防ぐことができる。
【0070】
(4)回転体は、デフケース50と、デフケース50の外周に固定されたファイナルギア45である。
アイドラ軸44は、ファイナルギア45に噛合するリダクションギア43(伝達ギア)と、セカンダリプーリ32の出力軸33(他の中間軸)との間の回転伝達に関与するアイドラギア42と、を有しており、
アイドラ軸44の軸方向においてアイドラギア42は、リダクションギア43から見てバッフルプレート66が位置する一方側に位置している。
車両後方側から見て挿入口890(凹部89)は、アイドラギア42と重なる位置関係で設けられている。
【0071】
リダクションギア43から見てバッフルプレート66は、アイドラギア42が位置する一方側(エンジン側)に位置している。バッフルプレート66は、鉛直線VL方向におけるアイドラギア42の下側に位置している(図7参照)。
そのため、車両後方側から見て挿入口890が、アイドラギア42およびバッフルプレート66と重なる位置関係で設けられていることで、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPを、デフケース50及びアイドラギア42との干渉を避けて設けることができる。
【0072】
(5)駆動軸55A、55Bの軸方向から見て、凹部89は、アイドラギア42側に第1壁部895を備える(図6参照)。
第1壁部895の下縁(接続部897)は、アイドラギア42の下縁を通る水平線HL3よりも下側に位置している(図5参照)。
【0073】
このように構成すると、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPは、アイドラギア42に干渉する方向(図6における下方向)への移動が、第1壁部895により規制される。
よって、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPが、アイドラギア42と干渉することを好適に防止できる。
【0074】
(6)車両後方側から見て、凹部89は、ファイナルギア45側に第2壁部896を備える。
【0075】
図6に示すように、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPは、ファイナルギア45に干渉する方向(図6における右方向)への移動が、第2壁部896により規制される。
よって、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPがファイナルギア45と干渉することを好適に防止できる。
【0076】
(7)車両後方側から見てバッフルプレート66(カバー)は、
ファイナルギア45のデフケース50側の側面45aを覆う側板部661(第1カバー部)と、
デフケース50の下側の外周を覆う弧状壁部662(第2カバー部)と、を有している。
【0077】
図9に示すように、バッフルプレート66が、ファイナルギア45の側面を覆う側板部661と、デフケース50の下側の外周を覆う弧状壁部662とから構成されているので、挿入口890から挿入されるチャージングパイプCPとの干渉から、ファイナルギア45とデフケース50を保護できる。
【0078】
(8)ハウジングHSは、動力伝達機構を収容するケース6と、
ケース6のトルクコンバータT/C側の開口を覆う第2カバー8(トルコンカバー)と、を有する。
凹部89は、第2カバー8に設けられている。
【0079】
第2カバー8(トルコンカバー)内の車両後方側には、空間的な余裕がある。そのため、凹部89を設けるに当たり、ケース6内の回転要素との干渉を避けた位置に挿入口890を設けることができる。
【0080】
(9)駆動軸55A、55B(出力軸)の軸方向から見て、凹部89は、ケース6と重なる位置関係で設けられている(図1参照)。
【0081】
このように構成すると、図5に示すように、チャージングパイプCPをケース6の車両後方側に大きく膨出させることなく、挿入口890に挿入できる。
これにより、動力伝達装置1を車両Vに搭載した状態でのオイルレベルゲージGの操作性が大きく損なわれることがない。
【0082】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0083】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
6 ケース
8 第2カバー(トルコンカバー)
V 車両
HS ハウジング
CV コントロールバルブ
20 入力軸
33 出力軸(他の中間軸)
42 アイドラギア
43 リダクションギア(伝達ギア)
44 アイドラ軸(中間軸)
45 ファイナルギア(回転体)
50 デフケース(回転体)
55A、55B 駆動軸(出力軸)
66 バッフルプレート(カバー)
661 側板部(第1カバー部)
662 弧状壁部(第2カバー部)
89 凹部
895 第1壁部
896 第2壁部
890 挿入口


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9