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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K15/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140617
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021027596
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北原 誠
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】三浦 みちる
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-016834(JP,A)
【文献】特開2016-136828(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199527(WO,A1)
【文献】特開平11-041871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイを有する下型と、前記ダイに対して進退可能に設けられるパンチを有する上型との間に、少なくとも一方の面に光硬化性の樹脂を含む樹脂層が形成された板状のワークを間欠的に搬送するとともに、前記ダイと前記パンチとにより前記ワークから鉄心片を打ち抜く打ち抜き工程と、
複数の前記鉄心片を前記下型に設けられた貫通孔の内部において積層する積層工程と、
前記鉄心片の前記樹脂層に対して、照射装置により前記貫通孔の内周面側から光を照射して前記樹脂を硬化させる硬化工程と、を備え、
前記硬化工程では、同一平面上において前記貫通孔の周方向に等間隔にて離れた複数の箇所から前記光を照射する、
積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程では、前記鉄心片の積層方向において、少なくとも1つの前記鉄心片の厚みよりも大きい範囲に前記光を照射する、
請求項1に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
前記打ち抜き工程では、コイル状に巻回されるとともに前記樹脂層が予め形成されている前記ワークを前記下型と前記上型との間に搬送するとともに、当該ワークから複数の前記鉄心片を打ち抜く、
請求項1または請求項2に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
前記下型と前記上型との間に搬送された前記ワークのうち、前記鉄心片が打ち抜かれる予定の打ち抜き予定部の少なくとも一方の面に前記樹脂層を形成する樹脂層形成工程を備える、
請求項1または請求項2に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
ダイを有する下型と、前記ダイに対して進退可能に設けられるパンチを有する上型と、を備え、前記ダイと前記パンチとにより、少なくとも一方の面に光硬化性の樹脂を含む樹脂層が形成された板状のワークから鉄心片を打ち抜くとともに、複数の前記鉄心片を前記下型に設けられた貫通孔の内部において積層し、互いに隣り合う前記鉄心片同士を接合することにより積層鉄心を製造する積層鉄心の製造装置であって、
前記下型に設けられ、前記鉄心片の前記樹脂層に対して前記貫通孔の内周面側から光を照射する照射部を有する照射装置を備え、
前記照射部は、同一平面上において前記貫通孔の周方向に等間隔にて複数設けられている、
積層鉄心の製造装置。
【請求項6】
前記下型内における前記ダイの直下には、前記鉄心片に対して前記パンチの進退方向に直交する方向から側圧を付与することで前記鉄心片を保持するスクイズリングが前記ダイと隣接して設けられており、
前記貫通孔は、前記ダイと前記スクイズリングとにより構成されており、
前記照射部は、前記スクイズリングの前記貫通孔の内周面側から前記光を照射する、
請求項5に記載の積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のモータコアは、電磁鋼板から打ち抜かれた複数の鉄心片が積層された積層鉄心を備えている。こうした積層鉄心の製造装置においては、ダイ及びパンチにより電磁鋼板から鉄心片を打ち抜くとともに、打ち抜かれた鉄心片に対してパンチとは反対側から背圧を付与する背圧装置を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
同文献1に記載の製造装置では、鉄心片に側圧を付与するスクイズリングがダイの直下に設けられている。鉄心片には、電磁鋼板から打ち抜かれるよりも前に板厚方向に凹凸が形成されている。そして、スクイズリング内において、パンチ及び背圧装置により互いに隣り合う鉄心片同士の凹凸部がかしめられることで鉄心片同士が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5859715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄心片同士の凹凸部をかしめることで鉄心片同士を接合する場合、当該凹凸部を介して鉄心片同士が導通することで短絡が生じるおそれがある。これにより、鉄心片に渦電流が生じやすくなり、積層鉄心の鉄損が増大するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、鉄損を低減できる積層鉄心の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための積層鉄心の製造方法は、ダイを有する下型と、前記ダイに対して進退可能に設けられるパンチを有する上型との間に、少なくとも一方の面に光硬化性の樹脂を含む樹脂層が形成された板状のワークを間欠的に搬送するとともに、前記ダイと前記パンチとにより前記ワークから鉄心片を打ち抜く打ち抜き工程と、複数の前記鉄心片を前記下型に設けられた貫通孔の内部において積層する積層工程と、前記鉄心片の前記樹脂層に対して、照射装置により前記貫通孔の内周面側から光を照射して前記樹脂を硬化させる硬化工程と、を備える。
【0008】
同方法によれば、少なくとも一方の面に光硬化性の樹脂を含む樹脂層が形成されたワークから鉄心片が打ち抜かれるとともに、複数の鉄心片が下型の貫通孔の内部において積層される。そして、同貫通孔の内周面側から、鉄心片の樹脂層に対して光が照射される。これにより、積層された各鉄心片同士の間に介在する樹脂層が硬化する。このため、各鉄心片同士が互いに接着されるとともに、樹脂層により各鉄心片を構成する電磁鋼板同士が絶縁されることで、各鉄心片同士が短絡することを抑制できる。したがって、積層鉄心の鉄損を低減することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するための積層鉄心の製造装置は、ダイを有する下型と、前記ダイに対して進退可能に設けられるパンチを有する上型と、を備え、前記ダイと前記パンチとにより、少なくとも一方の面に光硬化性の樹脂を含む樹脂層が形成された板状のワークから鉄心片を打ち抜くとともに、複数の前記鉄心片を前記下型に設けられた貫通孔の内部において積層し、互いに隣り合う前記鉄心片同士を接合することにより積層鉄心を製造するものであって、前記下型に設けられ、前記鉄心片の前記樹脂層に対して前記貫通孔の内周面側から光を照射する照射装置を備える。
【0010】
同構成によれば、上記積層鉄心の製造方法の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】積層鉄心の製造方法及び製造装置の第1実施形態について、製造装置の構成を示す断面図。
図2】同実施形態の製造装置の下型を中心に拡大して示す拡大断面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4】積層鉄心の製造方法及び製造装置の第2実施形態について、製造装置の構成を示す断面図。
図5】同実施形態の製造装置の下型を中心に拡大して示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図1図3を参照して、積層鉄心の製造方法及び製造装置の第1実施形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、積層鉄心の製造装置(以下、製造装置10)は、図示しないフィーダにより間欠的に搬送される板状のワーク50から鉄心片51を打ち抜くとともに、複数の鉄心片51を積層して積層鉄心を製造するためのものである。製造装置10は、ワーク50の穴抜き工程や打ち抜き工程などの複数の工程を1つの装置内で行うように構成されている。なお、以降において、積層鉄心における各鉄心片51の積層方向を単に積層方向と称する。
【0014】
まず、ワーク50について説明する。
図2に示すように、ワーク50は、電磁鋼板60の両面に樹脂層70が予め形成されたものである。したがって、ワーク50から打ち抜かれた鉄心片51は、電磁鋼板60と、当該電磁鋼板60の両面に形成された樹脂層70とにより構成されている。
【0015】
樹脂層70は、光硬化性の樹脂、より詳しくは、紫外線硬化性の樹脂を含んでいる。樹脂層70は、絶縁性を有している。
本実施形態では、こうしたワーク50が、円柱状のボビン90にコイル状に巻回されている。なお、上記穴抜き工程において、ワーク50には鉄心片51に対応する部分に貫通孔50aが形成されている。
【0016】
次に、製造装置10について説明する。
図1及び図2に示すように、製造装置10は、略円筒状をなすダイ21を有する下型20と、ダイ21に対して進退可能に設けられ、略円柱状をなすパンチ31を有する上型30とを備えている。
【0017】
図2に示すように、ダイ21は、断面略円形状の透孔21aを有している。
ダイ21の直下には、鉄心片51に対してパンチ31の進退方向に直交する方向から側圧を付与することで鉄心片51を保持するスクイズリング22がダイ21と隣接して設けられている。スクイズリング22は、ダイ21の透孔21aの直径よりも僅かに直径が小さい透孔22aを有している。
【0018】
ダイ21の透孔21aと、スクイズリング22の透孔22aとは同一軸線上に位置している。このため、下型20には、透孔21aと透孔22aとにより構成される貫通孔20aが形成されている。
【0019】
下型20には、紫外線を照射する照射部41を有する照射装置40が設けられている。照射部41は、スクイズリング22の内部において透孔22aの内周面から露出するように設けられている。照射部41は、透孔22aの内周面と面一に設けられている。照射部41の積層方向における厚みは、1つの鉄心片51の厚み、すなわち、1つの電磁鋼板60の厚みと、当該電磁鋼板60の両面に形成された2つの樹脂層70の厚みとの総和よりも大きい。
【0020】
図3に示すように、本実施形態では、4つの照射部41が透孔22aの周方向に90度間隔にて設けられている。
次に、積層鉄心の製造方法について説明する。
【0021】
まず、ワーク50をボビン90から引き出すとともに、上記フィーダによりワーク50を下型20と上型30との間に搬送する。
次に、下型20及びダイ21に載置されたワーク50に向けて上型30及びパンチ31が降下されると、ダイ21及びパンチ31によってワーク50から鉄心片51が打ち抜かれる(打ち抜き工程)。なお、本実施形態では、打ち抜き工程に先立ち、ワーク50に貫通孔50aを形成する穴抜き工程が行われている。
【0022】
打ち抜かれた鉄心片51は、パンチ31により、ダイ21の透孔21aを通じてスクイズリング22の透孔22a内に押し込まれる。このとき、鉄心片51には、スクイズリング22によりパンチ31の進退方向に直交する方向から側圧が付与されるため、鉄心片51は、スクイズリング22の透孔22a内において保持されることとなる。
【0023】
そして、上記鉄心片51と、当該鉄心片51の次に打ち抜かれた鉄心片51とがスクイズリング22の透孔22aの内部において積層される。このようにして、鉄心片51がスクイズリング22の透孔22a内に1枚ずつ押し込まれて積層されることにより、積層体80が形成される(積層工程)。
【0024】
なお、透孔22a内において既に積層されている複数の鉄心片51は、新たに1つの鉄心片51が積層されることによって、1つの鉄心片51の厚み分だけ変位する。
ここで、スクイズリング22の透孔22a内には、各照射部41が露出しているため、積層体80には、透孔22aの内周面側から紫外線が照射される。このとき、積層方向において、1つの鉄心片51の厚みよりも大きい範囲に紫外線が照射される。これにより、積層体80のうち、照射部41を通過した樹脂層70が硬化する(硬化工程)。
【0025】
なお、照射部41から照射された紫外線は、樹脂層70内において拡散することで樹脂層70の全体に到達する。
このようにして、積層鉄心が製造される。
【0026】
本実施形態の作用について説明する。
光硬化性の樹脂を含む樹脂層70が形成されたワーク50から鉄心片51が打ち抜かれるとともに、複数の鉄心片51が下型20の貫通孔20aの内部において積層される。そして、各照射部41により、貫通孔20aの内周面側から、鉄心片51の樹脂層70に対して紫外線が照射される。これにより、積層された各鉄心片51同士の間に介在する樹脂層70が硬化する。このため、各鉄心片51同士が互いに接着されるとともに、樹脂層70により各鉄心片51を構成する電磁鋼板60同士が絶縁されることで、各鉄心片51同士が短絡することを抑制できる。
【0027】
本実施形態の効果について説明する。
(1)打ち抜き工程では、ダイ21を有する下型20と、パンチ31を有する上型30との間に、光硬化性の樹脂を含む樹脂層70が形成された板状のワーク50を間欠的に搬送するとともに、ダイ21とパンチ31とによりワーク50から鉄心片51を打ち抜くようにした。積層工程では、複数の鉄心片51を下型20に設けられた貫通孔20aの内部において積層するようにした。硬化工程では、鉄心片51の樹脂層70に対して、照射装置40により貫通孔20aの内周面側から紫外線を照射して樹脂を硬化させるようにした。
【0028】
こうした方法によれば、上述した作用を奏することから、積層鉄心の鉄損を低減することができる。
また、このように下型20の内部において各鉄心片51を積層するとともに接着することにより、各鉄心片51を金型外において接着剤などにより接着する場合に比べて、積層鉄心を容易に製造することができる。したがって、積層鉄心の生産性を向上させることができる。
【0029】
(2)硬化工程では、鉄心片51の積層方向において、少なくとも1つの鉄心片51の厚みよりも大きい範囲に紫外線を照射するようにした。
貫通孔20aの内部において新たに1つの鉄心片51が積層される度に、既に積層されている複数の鉄心片51は、新たに積層される1つの鉄心片51によって押圧されることによって、1つの鉄心片51の厚み、すなわち鉄心片51を構成する電磁鋼板60の厚みと、各樹脂層70の厚みとの総和の分だけ変位する。
【0030】
こうした方法によれば、鉄心片51の積層方向において、鉄心片51の厚みよりも大きい範囲に紫外線が照射される。このため、ダイ21とパンチ31とにより1つの鉄心片51が打ち抜かれてから、次の鉄心片51が打ち抜かれるまでの間であって既に積層されている複数の鉄心片51が貫通孔20a内において静止している間に、少なくとも1つの鉄心片51の各樹脂層70全体に対して紫外線が照射されるようになる。これにより、上記樹脂層70に対して紫外線を効果的に照射することができる。したがって、鉄心片51同士を好適に接着することができる。
【0031】
(3)打ち抜き工程では、コイル状に巻回されるとともに樹脂層70が予め形成されているワーク50を下型20と上型30との間に搬送するとともに、当該ワーク50から複数の鉄心片51を打ち抜くようにした。
【0032】
こうした方法によれば、コイル状に巻回されるとともに樹脂層70が予め形成されているワーク50から複数の鉄心片51が打ち抜かれるため、樹脂層70を形成するための機構を下型20や上型30に個別に設ける必要がない。したがって、下型20及び上型30の構成を簡単にすることができる。
【0033】
また、上記方法によれば、ワーク50に樹脂層70を形成する工程を省略することができるため、積層鉄心の製造における生産性を向上させることができる。
(4)製造装置10は、ダイ21とパンチ31とにより、樹脂層70が形成された板状のワーク50から鉄心片51を打ち抜くとともに、複数の鉄心片51を下型20に設けられた貫通孔20aの内部において積層し、互いに隣り合う鉄心片51同士を接合することにより積層鉄心を製造するものである。製造装置10は、下型20に設けられ、鉄心片51の樹脂層70に対して貫通孔20aの内周面側から紫外線を照射する照射装置40を備える。
【0034】
こうした構成によれば、上記(1)に準じた効果を奏することができる。
(5)下型20内におけるダイ21の直下には、鉄心片51に対してパンチ31の進退方向に直交する方向から側圧を付与することで鉄心片51を保持するスクイズリング22がダイ21と隣接して設けられている。下型20の貫通孔20aは、ダイ21の透孔22aとスクイズリング22の透孔22aとにより構成されている。照射装置40は、スクイズリング22の透孔22aの内周面側から紫外線を照射する照射部41を有しており、照射部41は、透孔22aの周方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。
【0035】
こうした構成によれば、ダイ21とパンチ31とによりワーク50から打ち抜かれた鉄心片51は、スクイズリング22により、パンチ31の進退方向に直交する方向から側圧が付与されることで保持される。
【0036】
ここで、例えば、照射装置40の照射部41が、スクイズリング22の透孔22aの周方向全体にわたって設けられている場合には、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、スクイズリング22の内周面を構成する部分と照射部41とでは、鉄心片51に付与される側圧が異なる。このため、上記照射部41が全周にわたって設けられている部分と、当該部分と積層方向において隣り合う部分であって上記照射部41が設けられていない部分との境界部分を鉄心片51が通過する際に、鉄心片51に付与される側圧が大きく変化する。その結果、鉄心片51が径方向に変形することで上記境界部分に鉄心片51の外周縁が引っかかるおそれがある。
【0037】
この点、上記構成によれば、照射部41が透孔22aの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。すなわち、周方向における各照射部41同士の間の部分には、スクイズリング22の透孔22aの内周面が存在する。このため、上述した不都合が生じることを抑制できる。
【0038】
<第2実施形態>
以下、図4及び図5を参照して、積層鉄心の製造方法及び製造装置の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成または対応する構成については、第1実施形態の符号「**」に100を加算した符号「1**」を付すことにより重複する説明を省略する場合がある。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、電磁鋼板60からなるワーク150がボビン90にコイル状に巻回されている。
製造装置110における下型120の内部には、樹脂層形成装置200が設けられている。樹脂層形成装置200は、ダイ21よりもワーク150の搬送方向における上流側に配置されている。
【0040】
樹脂層形成装置200は、下型120内に埋設された円柱状の本体部201と、本体部201に対して出没可能に設けられた複数の吐出部202とを備えている。各吐出部202は、ワーク150のうち、鉄心片151が打ち抜かれる予定の打ち抜き予定部152の下面に向けて紫外線硬化性の樹脂を吐出する。本実施形態では、4つの吐出部202が、本体部201の積層方向に沿う軸線を中心とする周方向に90度間隔にて設けられている。
【0041】
図5に示すように、各吐出部202により、打ち抜き予定部152の下面には、4つの樹脂層170が、貫通孔150aの軸線を中心とする周方向に互いに間隔をおいて形成される。
【0042】
次に、積層鉄心の製造方法について説明する。
まず、ワーク150をボビン90から引き出すとともに、下型20と上型30との間であって、樹脂層形成装置200の上方にワーク150を搬送する。そして、各吐出部202により、ワーク150の打ち抜き予定部152の下面に4つの樹脂層170を形成する(樹脂層形成工程)。なお、本実施形態では、樹脂層形成工程に先立ち、ワーク150に貫通孔150aを形成する穴抜き工程が行われている。
【0043】
以降では、第1実施形態と同様に、打ち抜き工程、積層工程、及び硬化工程が行われる。
このようにして、積層鉄心が製造される。
【0044】
本実施形態の作用について説明する。
樹脂層形成装置200により、下型120と上型30との間に搬送されたワーク150の打ち抜き予定部152の下面には、各樹脂層170が形成される。このため、ワーク150のうち、打ち抜き予定部152同士、すなわち、鉄心片151同士の接着に寄与しない部分に樹脂層170が形成されることを抑制できる。
【0045】
本実施形態の効果について説明する。
本実施形態の積層鉄心の製造方法及び製造装置110によれば、第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)及び(5)に加えて、新たに以下に示す効果が得られるようになる。
【0046】
(6)樹脂層形成工程では、下型120と上型30との間に搬送されたワーク150のうち、鉄心片151が打ち抜かれる予定の打ち抜き予定部152の下面に樹脂層170を形成するようにした。
【0047】
こうした方法によれば、上述した作用を奏することから、積層鉄心の製造における樹脂の使用量を低減することができる。
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・第2実施形態において、樹脂層形成工程にて形成される樹脂層170の数は適宜変更することができる。
・第2実施形態において、樹脂層形成装置200に代えて、あるいは加えて、ワーク150の上面に樹脂層170を形成する樹脂層形成装置を上型30に設けることもできる。
【0049】
・第1実施形態において、ワーク50は、電磁鋼板60の少なくとも一方の面に樹脂層70が形成されたものであってもよい。この場合、照射部41による紫外線の照射範囲は、1つの鉄心片51の厚みと、当該鉄心片51の一方の面に形成された樹脂層70の厚みとの総和よりも大きければよい。
【0050】
・穴抜き工程は省略することもできるし、打ち抜き工程に先立ち、穴抜き工程に加えてその他の加工工程を行うこともできる。
・スクイズリング22は省略することもできる。この場合、ダイ21の内部に照射部41を設ければよい。
【0051】
・照射部41の数は適宜変更することができる。
・照射部41は、貫通孔20aの周方向の全体にわたって設けられていてもよい。
・複数の照射部41が、積層方向に互いに間隔をおいて設けられていてもよい。
【0052】
・製造装置10,110は、鉄心片51,151にパンチ31とは反対側から背圧を付与する背圧装置を備えるものであってもよい。
・硬化工程において、紫外線の照射範囲は、積層体80,180において互いに隣り合う2つの鉄心片51,151の間に介在する樹脂層70,170の厚みよりも大きければ、1つの鉄心片51,151の厚みよりも小さくてもよい。この場合、ワーク50,150から鉄心片51,151が打ち抜かれる度に、各樹脂層70,170が各照射部41に対向する位置に変位するように、各照射部41の位置を設定すればよい。
【0053】
・樹脂層70,170を構成する樹脂は、紫外線硬化性の樹脂に限られず、所定の波長の光が照射されることにより硬化するその他の光硬化性の樹脂であってもよい。
・硬化工程に加えて、所謂ダボ加工により、鉄心片51,151の下面から突出する結合部を形成し、積層方向において互いに隣り合う鉄心片51,151同士の結合部をかしめて結合するかしめ工程を行うようにしてもよい。また、積層方向において互いに隣り合う鉄心片51,151を溶接により接合する接合工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,110…製造装置、20,120…下型、20a…貫通孔、21…ダイ、21a…透孔、22…スクイズリング、22a…透孔、30…上型、31…パンチ、40…照射装置、41…照射部、50,150…ワーク、50a,150a…貫通孔、51,151…鉄心片、60…電磁鋼板、70,170…樹脂層、80,180…積層体、90…ボビン、152…打ち抜き予定部、200…樹脂層形成装置、201…本体部、202…吐出部。
図1
図2
図3
図4
図5