(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】パルスアーク溶接における溶接ガンの損傷を軽減するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/09 20060101AFI20241111BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B23K9/09
B23K9/095 515B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019192533
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ユダ ビー.ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ジェイ.チャントリー
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073022(JP,A)
【文献】特開2015-229175(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073184(WO,A1)
【文献】特表2015-532212(JP,A)
【文献】特開平01-154874(JP,A)
【文献】特開2013-146763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスアーク溶接システムであって、
パルス溶接波形を生成するよう構成される波形発生器と、
前記パルス溶接波形に応じて
、特定数の溶接出力パルスを生成するよう構成される電力供給装置と、
コンタクトチップを有する溶接ガンを介して溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給するよう構成されるワイヤ送給装置であって、該ワイヤ送給装置は、前記電力供給装置からの信号に基づいて前記溶接ワイヤ電極のワイヤ送給速度を調整する、ワイヤ送給装置と、
少なくとも1つのプロセッサを有するコントローラであって、
該コントローラは、
(a)
前記ワイヤ送給装置によって前記溶接ワイヤ電極が前記母材に向かって送給されるにつれて、前記溶接ワイヤ電極と前記母材との間にアークを形成する
ために、前記波形発生器に前記パルス溶接波形を生成させ、前記電力供給装置に、前記コントローラによって計算された前記パルス溶接波形に基づいて、一連の
前記特定数の溶接出力パルスを生成及び出力
させることと、
(b)前
記特定数の溶接出力パルスを生成及び出力した後、
前記電力供給装置に、前記
特定数の溶接出力パルスの生成を停止
させる一方で、前記母材に対して電気的に短絡させるために前記溶接ワイヤ電極を前記母材に向かって送給し続けさせることを可能に
することと、
(c)
前記コントローラが前記電力供給装置から受信した溶接出力電圧及び溶接出力電流のうちの少なくとも1つに関するフィードバック情報を処理することにより前記
特定数の溶接出力パルスの生成
が停止
された後、前記溶接ワイヤ電極が
前記コントローラによって計算された特定されたエラー期間内に前記母材に対して電気的に短絡したことを
前記コントローラが確認
するよう試み
ることと、
(d)前記溶接ワイヤ電極の電気的短絡が前記特定されたエラー期間内に確認された場合は、ステップ(a)から(c)を繰り返
すことと、
を行うことにより、パルス溶接作業中に前記波形発生器、前記電力供給装置、及び前記ワイヤ送給装置の動作を制御して前記溶接ワイヤ電極の絡まりによる前記溶接ガンの損傷を軽減するか、
そうでなければ、
システム障害を表現し、前記パルスアーク溶接システムをシャットダウンして前記溶接ガンの損傷を
軽減するよう構成され
ている、コントローラと、を備える、
パルスアーク溶接システム。
【請求項2】
溶接出力電圧の指示を前記コントローラに提供するよう構成される電圧フィードバック回路、又は溶接出力電流の指示を前記コントローラに提供するよう構成される電流フィードバック回路のうちの少なくとも1つを更に備え、前記コントローラは、前記溶接ワイヤ電極が前記母材に対して電気的に短絡したことを確認するために、前記溶接出力電圧の前記指示又は前記溶接出力電流の前記指示のうちの少なくとも1つを用いるよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、コンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)、特定数の出力パルスの周波数(f
パルス)、及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、前記特定数の溶接出力パルスを計算するよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、コンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、前記特定されたエラー期間を計算するよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電力供給装置は、少なくとも電力変換ユニット及び出力インバータ回路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電力供給装置は、少なくとも電力変換ユニット及び出力チョッパ回路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記溶接ワイヤ電極は、アルミニウム、銅、又はケイ素青銅のうちの少なくとも1つでできている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記特定数の溶接出力パルスは30パルスから40パルスの範囲内にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記母材にわたる前記溶接ガンの動きを制御する一方で、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)を維持するよう構成されるロボットサブシステムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記波形発生器、前記電力供給装置、及び前記ワイヤ送給装置を制御して、前記溶接ワイヤ電極の前記電気的短絡が確認された後及びステップ(a)から(c)を繰り返す前に、前記溶接ワイヤ電極及び前記母材に印加される短絡溶接出力電力波形を生成するよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記特定されたエラー期間は120ミリ秒から1200ミリ秒の範囲内にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記パルス溶接作業は、パルス位相及び短絡位相を含み、前記コントローラは、前記ワイヤ送給装置のワイヤ送給速度(WFS)を制御するよう構成され、前記WFSは前記パルス位相中よりも前記短絡位相中の方が遅い、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記パルス溶接作業はパルス位相及び短絡位相を交互に行うことを含み、前記コントローラは前記ワイヤ送給装置を制御して、
前記溶接ワイヤ電極の送給を前記短絡位相の終わりの第1の期間中に停止し、
前記溶接ワイヤ電極のワイヤ送給速度(WFS)を前記パルス位相の終わりの第2の期間中に増加させるよう構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
ロボット溶接システムであって、
コンタクトチップを有する溶接トーチの動きを母材にわたって制御する一方で、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)をパルス溶接作業中に維持するよう構成されるロボットサブシステムと、
溶接ワイヤ電極の絡まりにより前記溶接トーチが損傷するのを軽減するために、前記パルス溶接作業中に前記溶接トーチを介して前記母材に向かって
前記溶接ワイヤ電極を送給するよう構成されるワイヤ送給装置と、
前記ロボットサブシステム及び前記ワイヤ送給装置に動作可能に接続される溶接電源であって、
(a)前記溶接ワイヤ電極が前記パルス溶接作業中に前記母材に向かって送給されるにつれて、
コントローラによって計算されたパルス溶接波形に基づいて、前記溶接ワイヤ電極と前記母材との間にアークを形成するよう一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力し、
(b)前記一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力した後、前記溶接出力パルスの生成を停止する一方で、前記パルス溶接作業中に前記母材に対して電気的に短絡させるために前記溶接ワイヤ電極を前記母材に向かって送給し続けることを可能にし、
(c)
前記コントローラが該溶接電源から受信した溶接出力電圧及び溶接出力電流のうちの少なくとも1つに関するフィードバック情報を処理することにより、前記パルス溶接作業中に前記
特定数の溶接出力パルスの生成
が停止
された後、前記溶接ワイヤ電極が
前記コントローラによって計算された特定されたエラー期間内に前記母材に対して電気的に短絡したことを確認しようと試み、
(d)前記溶接ワイヤ電極の電気的短絡が前記特定されたエラー期間内に確認された場合は、ステップ(a)から(c)を繰り返し、
そうでなければ、
システム障害を表現し、前記ロボット溶接システムをシャットダウンして前記溶接トーチの損傷を
軽減するよう構成される溶接電源と、を備え、
前記ロボットサブシステム、前記ワイヤ送給装置又は前記溶接電源のうちの少なくとも1つは、前記設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)、前記特定数の出力パルスの周波数(f
パルス)、及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、前記特定数の溶接出力パルスを計算するよう構成され、前記WFSは短絡位相の間はより遅く、パルス位相の間はより速い、ロボット溶接システム。
【請求項15】
前記溶接電源は、
パルス溶接波形を生成するよう構成される波形発生器と、
前記パルス溶接波形に応じて前記特定数の溶接出力パルスを生成するよう構成される電力供給装置と、
前記パルス溶接作業中に前記波形発生器、前記電力供給装置、及び前記ワイヤ送給装置の動作を制御するよう構成されるコントローラと、を含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
溶接出力電圧を検知する電圧検知構成又は溶接出力電流を検知する電流検知構成のうちの少なくとも1つを備え、前記溶接電源は、前記溶接ワイヤ電極が前記母材に対して電気的に短絡したことを確認するために、前記溶接出力電圧の指示又は前記溶接出力電流の指示のうちの少なくとも1つを用いるよう構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記溶接ワイヤ電極は、アルミニウム、銅、又はケイ素青銅のうちの少なくとも1つでできている、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記特定数の溶接出力パルスは30パルスから40パルスの範囲内にある、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記溶接電源は、前記溶接ワイヤ電極の前記電気的短絡が確認された後及びステップ(a)から(c)を繰り返す前に、前記溶接ワイヤ電極及び前記母材に印加される短絡溶接出力電力波形を生成するよう構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記特定されたエラー期間は120ミリ秒から1200ミリ秒の範囲内にある、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願/参考文献の相互参照
2006年6月27日発行の米国特許第7,067,767号明細書の全てを引用して本明細書中に組み込む。
【0002】
本発明の実施形態はパルスアーク溶接に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、パルスアーク溶接における溶接ガン/トーチの損傷を軽減することに関する。
【背景技術】
【0003】
消耗溶接ワイヤが母材に向かって送給されるパルスアーク溶接作業(特に、ロボットパルスアーク溶接作業)中、送給されたワイヤが溶接システム内で絡まる(「鳥の巣状になる」)ことがある。かかる絡まりは、軟線の適用(例えば、アルミニウム線の適用)において発生する可能性が高い。ワイヤは送給を停止し、溶接ガン/トーチのコンタクトチップまで完全に溶融する。コンタクトチップは溶け始める可能性があり、それによりコンタクトチップは破損する。溶接ガン/トーチの他のコンポーネント(例えば、ディフューザ)でも同様に、過度の加熱及び溶融を受ける恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、パルスアーク溶接に関するシステム及び方法を含み、パルスアーク溶接プロセス中の消耗溶接ワイヤの絡まり(「バードネスティング」)による溶接ガン又はトーチへの損傷を軽減する。用語「溶接ガン」、「溶接トーチ」、及び「溶接ガン/トーチ」は、本明細書中では区別なく用いる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、パルスアーク溶接システムを含む。パルスアーク溶接システムは、パルス溶接波形を生成するよう構成される波形発生器と、パルス溶接波形に応じて溶接出力パルスを生成するよう構成される電力供給装置とを含む。パルスアーク溶接システムは、また、コンタクトチップを有する溶接ガンを介して溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給するよう構成されるワイヤ送給装置を含んでいる。パルスアーク溶接システムは、更に、パルス溶接作業中に波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置の動作を制御するよう構成されるコントローラを含む。例えば、コントローラは、パルス溶接作業中に波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置の動作を制御して、(a)溶接ワイヤ電極が母材に向かって送給されるにつれて、溶接ワイヤ電極と母材との間にアークを形成するよう一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力し、(b)一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力した後、溶接出力パルスの生成を停止する一方で、母材に対して電気的に短絡させるために溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給し続けることを可能にし、(c)溶接出力パルスの生成を停止した後、溶接ワイヤ電極が特定されたエラー期間内に母材に対して電気的に短絡したことを確認しようと試み、(d)溶接ワイヤ電極の電気的短絡が特定されたエラー期間内に確認された場合は、ステップ(a)から(c)を繰り返し、そうでなければ、システム障害を表現し、パルスアーク溶接システムをシャットダウンして溶接ガン/トーチの損傷を防ぐよう構成される。一実施形態において、システムは、溶接出力電圧の指示をコントローラに提供するよう構成される電圧フィードバック回路、又は溶接出力電流の指示をコントローラに提供するよう構成される電流フィードバック回路のうちの少なくとも1つを含む。コントローラは、溶接ワイヤ電極が母材に対して電気的に短絡したことを確認するために、溶接出力電圧の指示又は溶接出力電流の指示のうちの少なくとも1つを用いるよう構成される。一実施形態において、コントローラは、コンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)、特定数の出力パルスの周波数(fパルス)、及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、特定数の溶接出力パルスを計算するよう構成される。また、コントローラは、コンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、特定されたエラー期間を計算するよう構成される。一実施形態において、電力供給装置は、少なくとも電力変換ユニットと、出力インバータ回路又は出力チョッパ回路のうちの少なくとも1つとを含む。溶接ワイヤ電極は、例えば、アルミニウム、銅、又はケイ素青銅のうちの少なくとも1つでできていてもよい。一実施形態において、特定数の溶接出力パルスは30パルスから40パルスの範囲内にあり、特定されたエラー期間は120ミリ秒から1200ミリ秒の範囲内にある。一実施形態において、システムは、母材にわたる溶接ガンの動きを制御する一方で、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)を維持するよう構成されるロボットサブシステムを含む。一実施形態において、コントローラは、波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置を制御して、溶接ワイヤ電極の電気的短絡が確認された後及びステップ(a)から(c)を繰り返す前に、溶接ワイヤ電極及び母材に印加される短絡溶接出力電力波形を生成するよう構成される。一実施形態によれば、パルス溶接作業は、パルス位相及び短絡位相を含む。コントローラは、ワイヤ送給装置のワイヤ送給速度(WFS)を制御するよう構成され、WFSはパルス位相中よりも短絡位相中の方が遅い。一実施形態によれば、パルス溶接作業はパルス位相及び短絡位相を交互に行うことを含む。コントローラは、ワイヤ送給装置を制御して、溶接ワイヤ電極の送給を短絡位相の終わりの第1の期間中に停止し、溶接ワイヤ電極のワイヤ送給速度(WFS)をパルス位相の終わりの第2の期間中に増加させるよう構成される。
【0006】
一実施形態は、ロボット溶接システムを含む。ロボット溶接システムは、コンタクトチップを有する溶接トーチの動きを母材にわたって制御する一方で、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)をパルス溶接作業中に維持するよう構成されるロボットサブシステムを含む。ロボット溶接システムは、また、パルス溶接作業中に溶接トーチを介して母材に向かって溶接ワイヤ電極を送給するよう構成されるワイヤ送給装置も含む。ロボット溶接システムは、更に、ロボットサブシステム及びワイヤ送給装置に動作可能に接続される溶接電源を含む。溶接電源は、(a)溶接ワイヤ電極がパルス溶接作業中に母材に向かって送給されるにつれて、溶接ワイヤ電極と母材との間にアークを形成するよう一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力し、(b)一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力した後、溶接出力パルスの生成を停止する一方で、パルス溶接作業中に母材に対して電気的に短絡させるために溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給し続けることを可能にし、(c)パルス溶接作業中に溶接出力パルスの生成を停止した後、溶接ワイヤ電極が特定されたエラー期間内に母材に対して電気的に短絡したことを確認しようと試み、(d)溶接ワイヤ電極の電気的短絡が特定されたエラー期間内に確認された場合は、ステップ(a)から(c)を繰り返し、そうでなければ、システム障害を表現し、ロボット溶接システムをシャットダウンして溶接ガン/トーチの損傷を防ぐよう構成される。一実施形態において、溶接電源は、パルス溶接波形を生成するよう構成される波形発生器と、パルス溶接波形に応じて所定数の溶接出力パルスを生成するよう構成される電力供給装置と、パルス溶接作業中に波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置の動作を制御するよう構成されるコントローラと、を含む。一実施形態において、システムは、溶接出力電圧を検知する電圧検知構成又は溶接出力電流を検知する電流検知構成のうちの少なくとも1つを含む。溶接電源は、溶接ワイヤ電極が母材に対して電気的に短絡したことを確認するために、溶接出力電圧の指示又は溶接出力電流の指示のうちの少なくとも1つを用いるよう構成される。一実施形態において、ロボットサブシステム、ワイヤ送給装置、又は溶接電源のうちの少なくとも1つは、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)、特定数の出力パルスの周波数(fパルス)、及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、特定数の溶接出力パルスを計算するよう構成される。一実施形態において、ロボットサブシステム、ワイヤ送給装置、又は溶接電源のうちの少なくとも1つは、設定されたコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)及びワイヤ送給速度(WFS)に基づいて、特定されたエラー期間を計算するよう構成される。溶接ワイヤ電極は、例えば、アルミニウム、銅、又はケイ素青銅のうちの少なくとも1つでできていてもよい。一実施形態において、特定数の溶接出力パルスは30パルスから40パルスの範囲内にあり、特定されたエラー期間は120ミリ秒から1200ミリ秒の範囲内にある。一実施形態において、溶接電源は、溶接ワイヤ電極の電気的短絡が確認された後及びステップ(a)から(c)を繰り返す前に、溶接ワイヤ電極及び母材に印加される短絡溶接出力電力波形を生成するよう構成される。
【0007】
一般的発明概念の多数の態様は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明から、特許請求の範囲から、及び添付の図面から、容易に明らかとなるであろう。
【0008】
明細書の一部に組み込まれ、それらを構成する添付の図面は、開示の様々な実施形態を示している。図面内に図示する構成要素の境界(例えば、ボックス、ボックスの群、又は他の形状)は境界の一実施形態を表していることは、正しく認識されるであろう。幾つかの実施形態において、1つの構成要素は多数の構成要素として設計されてもよいか、又は、多数の構成要素が1つの構成要素として設計されてもよい。幾つかの実施形態において、別の構成要素の内部コンポーネントとして示す構成要素は外部コンポーネントとして実装されてもよく、その逆もまた可能である。更に、構成要素は正確な縮尺で描かれなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ロボット溶接システムとして構成されるパルスアーク溶接システムの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、
図1のパルスアーク溶接システムによって生成される電圧及び電流溶接出力の一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、
図1のパルスアーク溶接システムによって実行される方法の一実施形態のフロー図を示す。
【
図4】
図4は、コントローラ(例えば、
図1のパルスアーク溶接システムのコントローラ)の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
パルスアーク溶接プロセス中の消耗溶接ワイヤの絡まり(「バードネスティング」)による溶接ガン又はトーチへの損傷を軽減するためのシステム及び方法の実施形態を開示する。例えば、一実施形態は、パルス溶接波形を生成するよう構成される波形発生器と、パルス溶接波形に応じて溶接出力パルスを生成するよう構成される電力供給装置とを有するパルスアーク溶接システムを含む。パルスアーク溶接システムは、また、コンタクトチップを有する溶接ガンを介して溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給するよう構成されるワイヤ送給装置を含んでいる。パルスアーク溶接システムは、更に、パルスアーク溶接作業中に波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置の動作を制御するよう構成されるコントローラを含む。例えば、コントローラは、パルスアーク溶接作業中に波形発生器、電力供給装置、及びワイヤ送給装置の動作を制御して、(a)溶接ワイヤ電極が母材に向かって送給されるにつれて、溶接ワイヤ電極と母材との間にアークを形成するよう一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力し、(b)一連の特定数の溶接出力パルスを生成及び出力した後、溶接出力パルスの生成を停止する一方で、母材に対して電気的に短絡させるために溶接ワイヤ電極を母材に向かって送給し続けることを可能にし、(c)溶接出力パルスの生成を停止した後、溶接ワイヤ電極が特定されたエラー期間内に母材に対して電気的に短絡したことを確認しようと試み、(d)溶接ワイヤ電極の電気的短絡が特定されたエラー期間内に確認された場合は、ステップ(a)から(c)を繰り返し、そうでなければ、システム障害を表現し、パルスアーク溶接システムをシャットダウンして溶接ガン/トーチの損傷を防ぐよう構成される。溶接ワイヤ電極は様々な材料でできていてもよい。しかし、アルミニウム、銅、又はケイ素青銅でできた溶接ワイヤ電極は、特に絡まり易い比較的軟質のワイヤである。
【0011】
本明細書中の実施例及び図は説明するためだけのものであり、特許請求の範囲の適用範囲及び精神によって判断される主題発明を制限することを意味するものではない。ここで図面を参照すると、示されているのは、主題発明の例示的な実施形態を示すことだけを目的とし、それらを制限することを目的としておらず、
図1は、ロボット溶接システムとして構成されるパルスアーク溶接システム100の一実施形態を示している。
【0012】
図1を参照すると、パルスアーク溶接システム100は、溶接電源110及びロボットサブシステム160を含む。溶接電源110は、溶接アークAを生成するよう溶接ワイヤ電極Eを介して溶接ガン/トーチ130(ロボットサブシステム160によって位置決めされる)及び母材Wに溶接波形出力を送出する。溶接ワイヤ電極Eは、ワイヤ送給装置150を介して溶接作業に対して送出される。ワイヤ送給装置150は、電極Eを溶接部に送出することができるような任意の公知の構造であってもよく、幾つかの実施形態において、ワイヤ送給装置150は電源110からの信号に基づいて電極Eのワイヤ送給速度を調整することができる。
【0013】
電源110の一般的な構造は、電源110が本明細書中で説明するように機能し、動作することができる限り、例えば、GMAW/MIG型の溶接作業が可能な公知の電源の構造と類似していてもよい。例えば、電源110は、Ohio州ClevelandのThe Lincoln Electric Companyによって製造されたPower Wave(登録商標)型電源と同様に構成することができる。無論、本発明の実施形態はかかる構造に限定されず、これは単なる例示であることを目的としている。ロボットサブシステム160の一般的な構造は、例えば、パルスアーク溶接作業中に母材に沿って溶接ガン/トーチを案内することができる公知のロボットサブシステムの構造と類似していてもよい。一実施形態によれば、ロボットサブシステム160は、溶接ガン/トーチ130を保持するロボットアームの動きを制御するモーションコントローラを含む。
【0014】
図1に示すように、電源110は、L1、L2、及びL3を介して入力信号を受信するよう構成される。
図1は3相入力を示しているが、他の実施形態は単相入力を利用してもよい。電源110は、電源110の出力が溶接アークを持続することができるように、入力信号を受信し、出力相(出力インバータ114等)に信号を出力することができる電力変換ユニット112を含む。電力変換ユニット112は、多数の異なるコンポーネントで構成することができる。例えば、それは、整流回路と、整流された信号を受信し、出力インバータ114に定電圧を出力するバックブースト回路とから構成することができる。無論、他の例示的な実施形態において、出力インバータ114は、チョッパ、又は電力変換ユニット112と協働して溶接信号を出力することができる他の任意の種類の出力回路とすることができる。一実施形態によれば、電力変換ユニット112及び出力インバータ/チョッパ114は共に、本明細書中で溶接電力供給装置又は単に電力供給装置と称される。
【0015】
電源110は、また、電力変換ユニット112及び出力インバータ114のうちの少なくとも一方又は両方の出力の制御を支援して、アークAを生成するために用いられる所望の溶接波形を提供する回路である波形発生器116も含む。例えば、波形発生器116は、溶接中にアークAを生成し、維持するために用いられる所望の電流波形を生成するために用いられ、電力変換ユニット112及び出力インバータ114のうちの一方又は両方(又は、どのような出力コンポーネントが用いられてもよい)と結合することができる。加えて、電源110は、例えば、電源110の機能及び動作を制御することができる任意の種類のCPU又はプロセッサ型デバイスであってもよいコントローラ118を有する。例えば、本明細書中の
図4のコントローラ400を参照されたい。例えば、様々な種類の電子回路(例えば、論理回路)及びメモリを有する他の種類のコントローラも同様に可能である。
【0016】
一実施形態において、コントローラ118は、溶接作業中に溶接アークAから電流及び電圧フィードバック(のそれぞれ)を提供する電流フィードバック回路120及び電圧フィードバック回路122からフィードバックを受信する。このフィードバックにより、コントローラ118は、電源110の性能を調整及び最適化して所望の出力を提供することができる。
図1に示すように、幾つかの実施形態において、コントローラ118は、また、ワイヤ送給装置150にも結合され、これにより、コントローラがワイヤ送給装置150からのフィードバックを受信するだけでなく、溶接作業中にワイヤ送給速度等のワイヤ送給装置150の動作を制御することを可能にする。代替の実施形態によれば、電源110のコントローラ118は、また、ロボットサブシステム160用のモーションコントローラとしても機能する。
【0017】
図2は、パルスアーク溶接プロセス中に
図1のパルスアーク溶接システム100によって生成される電圧(V)及び電流(I)溶接出力200の一実施形態を示している。
図1及び
図2を参照すると、波形発生器116はパルス溶接波形を生成し、電力供給装置(例えば、電力変換ユニット112及び出力インバータ114)は、パルス溶接波形に応じて溶接出力200を生成する。溶接出力200は、溶接ワイヤ電極E(溶接ガン/トーチ130のコンタクトチップを介して)及び母材Wに印加されて、例えば、ワイヤ送給装置150が溶接ガン/トーチ130を介して溶接ワイヤ電極を送給するにつれて、溶接ワイヤ電極Eの端部と母材Wとの間にアークAを形成する。一実施形態において、コントローラ118は、パルスアーク溶接プロセス中に波形発生器116、電力供給装置(例えば、電力変換ユニット112及び出力インバータ114)、及びワイヤ送給装置150の動作を制御する。
【0018】
図2に示すように、溶接出力200は、一連210の特定数Nの溶接出力パルスを有するパルス位相と、それに続く短絡位相を含んでいる。位相は、一実施形態に従って、パルスアーク溶接プロセス中に交互に繰り返される。一連210の特定数Nの溶接出力パルスの各パルスは、溶融金属ボール又は溶滴が溶接ワイヤ電極Eの先端に形成され、アークを横断して電極Eから母材Wに移行される原因となる。溶滴移行は、一実施形態に従って、母材Wへ、電極Eが短絡することなくアークを横断して行われる。特定数Nの溶接出力パルスは、例えば、30パルスから40パルスの範囲にあってもよい。しかし、他の範囲も同様に可能である。
【0019】
所定のパルス位相に対して、特定数Nの溶接出力パルスが出力されると、Nパルスの生成は停止するが、溶接ワイヤ電極Eは、母材Wに対して電気的に短絡させる目的で、同じワイヤ送給速度で母材Wに向かって送給し続けることが可能である。短絡位相に入り、Nパルスの出力を停止してから特定されたエラー期間T
エラー以内に、溶接ワイヤ電極Eが母材Wに対して実際に電気的に短絡したことを確認する試みが行われる。例えば、一実施形態において、電圧フィードバック回路122(ガン130及び母材Wに電気的に接続された電圧検知構成の一部)は、溶接出力電圧を監視し、溶接出力電圧の表示をコントローラ118に提供する。溶接出力電圧が所定の閾値レベル(例えば、10ボルト未満)を下回って降下する場合、コントローラ118は、電気的短絡が発生したこと(及びいつ発生したか)を「知る」(
図2の「ここで短絡が発生」を参照)。コントローラ118は、電気的短絡がT
エラー内に発生したかどうかを特定する。電気的短絡がT
エラー内に発生しなかった場合、コントローラ118は、一実施形態に従って、システム障害を表現し、パルスアーク溶接システム100をシャットダウンする。すなわち、コントローラ118は、溶接ワイヤ電極Eが、例えば、絡まり(「バードネスティング」)により適切に供給を停止し、従って、母材Wに対して下方に短く横断できなかったと想定する。T
エラーは、例えば、120ミリ秒から1200ミリ秒の範囲であってもよい。しかし、他の範囲も同様に可能である。
【0020】
電気的短絡がTエラー内に生じた場合、短絡位相は継続され、システム100は、例えば、短絡を解消する目的で、溶接出力200の一部として短絡位相電圧及び電流出力220を生成する(すなわち、短絡溶接出力電力波形が溶接ワイヤ電極E及び母材Wに印加される)。その後、次の一連230の特定数Nの溶接出力パルスが生成され、出力される。プロセスは、システム障害が発現するまで(例えば、溶接ワイヤ電極Eが絡まる場合)、又は溶接タスクが完了するまで繰り返される。
【0021】
他の実施形態によれば、溶接ワイヤ電極Eが母材Wに対して短絡されたことを検証する他の方法が採用されてもよい。例えば、一実施形態において、溶接出力電圧(電圧フィードバック回路122により監視される)と溶接出力電流(電流フィードバック回路120により監視される)の両方の表示は、電気的短絡が発生しているか否かを特定するために組み合わせて用いられてもよい。別の実施形態において、溶接出力電圧は用いなくてもよいが、溶接出力電流は、電気的短絡が発生しているか否かを特定するために用いられてもよい。一実施形態において、電流フィードバック回路120は、分流器121を含む電流検知構成の一部であり、ガン130に電気的に接続されている。短絡を特定する他の方法が、他の様々な実施形態により同様に可能であってもよい。
【0022】
図3は、
図1のパルスアーク溶接システム100によって実行される方法300の一実施形態のフロー図を示している。
図1、
図2、及び
図3を参照すると、方法300のブロック310において、溶接出力パルス(現在の一連210のN個の溶接出力パルスのうちの)がパルス位相中に生成され、出力されて、溶接ワイヤ電極Eの先端から母材Wへアークを横断する溶融金属液滴を形成し、移行させる。一実施形態において、コントローラ118は、生成及び出力された一連210内の溶接出力パルスnの数の計数を保持する。ブロック320において、現在の一連210に対するN個の溶接出力パルスの全てが生成され、出力されているかどうか(例えば、n>N?)を特定するために、チェックが実行される(例えば、コントローラ118によって)。そうでない場合、方法300はブロック310に戻って、次の溶接出力パルスを生成し、出力する。このようにして、N個の溶接出力パルスの全てが一連210において生成され、出力される。
【0023】
N個の溶接出力パルスの全てが出力されると、方法300はブロック320からブロック330に進み、そこで短絡位相に入る。短絡位相中、コントローラ118は、短絡が発生したという指示(例えば、電圧フィードバック回路122からの)を待機している。例えば、電圧フィードバック回路122からの1ボルト以下の測定値は、短絡が発生したという(例えば、閾値と比較する場合の)コントローラ118への指示であってもよい。コントローラ118が、N個の溶接出力パルスを停止してから時間tで短絡の指示を受信した場合、ブロック340において、コントローラ118は時間tをTエラー(特定されたエラー期間)と比較する。
【0024】
t≦Tエラーである場合、方法の短絡位相は、例えば、短絡を解消することを試みて、短絡位相電圧及び電流出力220を生成及び出力することにより継続される。すなわち、短絡溶接出力電力波形が溶接ワイヤ電極E及び母材Wに印加される。その後、方法300はブロック310に戻って、次の一連230のN個の溶接出力パルスの生成及び出力を開始する。このようにして、溶接ワイヤ電極Eがパルスアーク溶接プロセス中に適切に送給し続ける限り、連続する一連のN溶接出力パルスが短絡位相間で生成され、出力されて、溶接タスクを完了する。
【0025】
しかし、溶接ワイヤ電極Eが(例えば、絡まりにより)送給を停止した場合、短絡は全く生じない可能性がある。短絡がTエラー内で示されない場合、ブロック350において、コントローラ118はシステム障害を表現し、パルスアーク溶接システム100をシャットダウンして、溶接ガン/トーチ130のコンタクトチップ(及びその他の部品)の損傷を防ぐ。すなわち、システム100は、そうでなければ、溶接ワイヤ電極Eが溶接ガン/トーチまで完全に溶け落ちて、損傷(例えば、コンタクトチップ又はディフューザの溶融)の原因となる可能性があるため、次の一連のN個の溶接出力パルスの生成及び出力を開始しない。
【0026】
図3を参照すると、特定数Nの溶接出力パルスは(例えば、溶接電源110のコントローラ118によって)以下のように計算される。
N=(CTWD×f
パルス)/WFS
【0027】
CTWDは(例えば、ロボットサブシステム160によって制御されるように)所望の又は設定されたコンタクトチップからのワークディスタンスである。
【0028】
fパルスはパルス位相中の溶接出力パルスの繰り返し周波数である。
【0029】
WFSは、ワイヤ送給装置150によって送給されるような溶接ワイヤ電極Eのワイヤ送給速度である。
【0030】
このようにして、単一パルス位相に対する溶接出力パルスの数は、送給が停止した場合に母材からコンタクトチップまで絡まった溶接ワイヤ電極Eを燃焼させるために必要なパルス数であるN個のパルスに制限される。他の実施形態によれば、ロボットサブシステム160又はワイヤ送給装置150は、特定数Nの溶接出力パルスを計算するよう構成される。
【0031】
図3を参照すると、T
エラーは(例えば、溶接電源110のコントローラ118によって)以下のように計算される。
T
エラー=CTWD/WFS
【0032】
このようにして、Tエラーは、ワイヤ送給速度で送給される場合に、溶接ワイヤ電極E上の点を取り、コンタクトチップから母材に移動するのにかかる時間である。他の実施形態によれば、ロボットサブシステム160又はワイヤ送給装置150はTエラーを計算するよう構成される。
【0033】
従って、
図3のプロセス(アルゴリズム)を用いることによって、最大量の溶接ワイヤ電極Eは、短絡位相に進む前のパルス位相中に溶着されて、溶接ガン/トーチ130に対する損傷の原因となることなく、電気的短絡が生じたこと(すなわち、溶接ワイヤ電極Eがまだ送給されていること)を確認することができる。CTWD及びT
エラーを計算又は設定する他の方法も、他の実施形態に従って同様に可能である。
【0034】
他の実施形態によれば、ワイヤ送給速度(WFS)は(例えば、コントローラ118により)位相に同期させることができる。例えば、一実施形態において、WFSは、短絡位相の間はより遅く、パルス位相の間はより速い。例えば、WFSは、パルス位相の間は1分当たり400インチであってもよく、短絡位相の間は1分当たり200インチであってもよい。その結果、短絡位相中のスタブ又はスパッタの可能性が減少する。更に他の実施形態によれば、位相間の移行は同期したワイヤ送給により改善される可能性がある。例えば、溶接ワイヤ電極Eの送給は、アークがパルス溶接のために適切な長さに成長して戻ることを可能にするよう、短絡位相の終わりの第1の期間中に停止されてもよい。更に、ワイヤ送給速度(WFS)は、Tエラーの期間を短縮するよう、パルス期間の終わりの第2の期間中に(一時的に)高速化されてもよい。これらの方法で、パルスアーク溶接プロセスが改善されてもよい。
【0035】
図4は、コントローラ400の例示的な実施形態を示している。コントローラ400の1つ以上の構成要素は、例えば、本明細書中で説明するような
図1のコントローラ118(又は
図1のロボットサブシステム160のロボットコントローラ)を構成するために用いられてもよい。コントローラ400は、バスサブシステム412を介して多数の周辺装置と通信する少なくとも1つのプロセッサ414を含んでいる。これらの周辺装置は、例えば、メモリサブシステム428及びファイルストレージサブシステム426を含むストレージサブシステム424、ユーザインターフェース入力デバイス422、ユーザインターフェース出力デバイス420、及びネットワークインターフェースサブシステム416を含んでいてもよい。入出力デバイスはコントローラ400とのユーザの対話を可能にする。ネットワークインターフェースサブシステム416は外部ネットワークとのインターフェースを提供し、他のコンピュータシステム内の対応するインターフェースデバイスに接続される。例えば、
図1の溶接電源110のコントローラ118は、コントローラ400と1つ以上の特性を共有してもよく、また、例えば、従来のコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、及び/又は他のコンピューティングデバイスであってもよい。
【0036】
ユーザインターフェース入力デバイス422は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、又はグラフィックスタブレット等のポインティングデバイス、スキャナ、ディスプレイに組み込まれるタッチスクリーン、音声認識システム等のオーディオ入力デバイス、マイクロフォン、及び/又は他の種類の入力デバイスを含んでいてもよい。一般に、「入力デバイス」という用語の使用は、情報(例えば、ユーザが選択したコンタクトチップからのワークディスタンス(CTWD)及びユーザが選択したワイヤ送給速度(WFS))をコントローラ400内又は通信ネットワーク上へ入力する可能な全ての種類のデバイス及び方法を含むことを意図している。
【0037】
ユーザインターフェース出力デバイス420は、ディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機、又はオーディオ出力デバイス等の非視覚的表示を含んでいてもよい。ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネル装置、プロジェクション装置、又は可視画像を作成するための他の幾つかの機構を含んでいてもよい。ディスプレイサブシステムは、また、オーディオ出力デバイスを介するもの等の非視覚的表示を提供してもよい。一般に、用語「出力デバイス」の使用は、情報をコントローラ400からユーザ又は別の機械若しくはコンピュータシステムに出力する可能な全ての種類のデバイス及び方法を含むことを意図している。
【0038】
ストレージサブシステム424は、本明細書中で説明する幾つか又は全ての機能を提供又は支援するプログラミング及びデータ構造体を(例えば、ソフトウェアモジュールとして)格納している。例えば、ストレージサブシステム424は、
図1の溶接システム100を制御するためにコントローラで用いられるソフトウェアモジュールを含んでいてもよい。
【0039】
ソフトウェアモジュールは、一般に、プロセッサ414単体又は他のプロセッサと組み合わせることによって実行される。ストレージサブシステム内で用いられるメモリ428は、プログラム実行中に命令及びデータを格納するためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)430及び固定命令が格納される読出し専用メモリ(ROM)432を含む多数のメモリを含むことができる。ファイルストレージサブシステム426は、プログラム及びデータファイルのための持続性ストレージを提供することができ、ハードディスクドライブ、関連するリムーバブルメディアに加えてフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光学式ドライブ、又はリムーバブルメディアカートリッジを含んでいてもよい。ある特定の実施形態の機能を実装するモジュールは、ストレージサブシステム424内のファイルストレージサブシステム426によって、又は、プロセッサ414によってアクセス可能な他の機械内に格納されてもよい。
【0040】
バスサブシステム412はコントローラ400の種々のコンポーネント及びサブシステムに意図したような互いとの通信を行わせるための機構を提供する。バスサブシステム412を単一バスとして略図的に示しているが、バスサブシステムの代替実施形態は多重バスを用いてもよい。
【0041】
コントローラ400は、ワークステーション、サーバ、コンピューティングクラスタ、ブレードサーバ、サーバファーム、又はその他任意のデータ処理システム若しくはコンピューティングデバイスを含む様々な種類のものであってもよい。コンピューティングデバイス及びネットワークの絶えず変化する性質のため、
図4に示すコントローラ400の説明は幾つかの実施形態を示すための特定の実施例としてのみを目的としている。
図4に示すコントローラよりも多くの又は少ないコンポーネントを有するコントローラ400の他の多くの構成が可能である。
【0042】
開示する実施形態をかなり詳細に示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲の適用範囲をかかる詳細に制限するか、又は、何らかの方法で限定することは、意図するものではない。無論、主題の様々な態様を説明するために、コンポーネント又は手法の想定できる組み合わせの全てを説明することは不可能である。従って、開示は、図示し、説明した特定の詳細又は例示する実施例に限定されるものではない。それ故に、本開示は、米国特許法第101条(35U.S.C.§101)の法定主題要件を満足させる添付の特許請求の範囲の適用範囲に入る変更、改良、及び変形例を包含することを目的としている。特定の実施形態の上記の説明は、一例として与えられている。与えた開示から、当業者は、一般的発明概念及び付随する利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法に対する明白な、様々な変更及び修正を見出すであろう。従って、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるように、一般的発明概念の精神及び適用範囲に入るような全てのかかる変更及び修正をカバーすることが求められている。
【符号の説明】
【0043】
100 パルスアーク溶接システム
110 溶接電源
112 電力変換ユニット
114 出力インバータ/チョッパ
116 波形発生器
118,400 コントローラ
120 電流フィードバック回路
122 電圧フィードバック回路
130 溶接ガン/トーチ
150 ワイヤ送給装置
160 ロボットサブシステム
200 溶接出力
210 一連の特定数Nの溶接出力パルス
220 電流出力
230 次の一連のN個の溶接出力パルス