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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】エキセンディン(9-39)の緩衝製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20241111BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241111BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241111BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/26
A61P3/08
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019527188
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017062838
(87)【国際公開番号】W WO2018094404
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/424,979
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/517,065
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516326575
【氏名又は名称】アイガー・バイオファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Eiger Biopharmaceuticals, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・シオン
(72)【発明者】
【氏名】デブラ・オディンク
(72)【発明者】
【氏名】コリーン・エム・クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・エム・エヌ・スミス
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・エル・マクローリン
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0269130(US,A1)
【文献】特表2002-534450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
REGISTRY, MEDLINE, EMBASE, BIOSIS, CAPLUS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.5~6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中に、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩と等張化剤とを含む液体医薬製剤であって、生理学的に許容される緩衝液が10mMの濃度で酢酸ナトリウムを含み、50℃でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、前記製剤中に検出可能な凝集を呈示しない、液体医薬製剤。
【請求項2】
前記pHが、5.5である、請求項1に記載の液体医薬製剤。
【請求項3】
前記等張化剤が、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、又はトレハロースを含む、請求項1または2に記載の液体医薬製剤。
【請求項4】
前記等張化剤が、マンニトールを含む、請求項に記載の液体医薬製剤。
【請求項5】
前記等張化剤が、20~60mg/mlの量で存在する、請求項又はに記載の液体医薬製剤。
【請求項6】
前記等張化剤が、290mOsm/kgの浸透圧を達成する量で存在する、請求項に記載の液体医薬製剤。
【請求項7】
前記エキセンディン(9-39)の薬学的に許容される塩が、エキセンディン(9-39)酢酸塩又はエキセンディン(9-39)トリフルオロ酢酸塩である、請求項1~のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項8】
前記エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、10mg/ml~120mg/mlの濃度である、請求項1~のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項9】
前記エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、少なくとも15mg/mlの濃度である、請求項に記載の液体医薬製剤。
【請求項10】
前記エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、30mg/mlの濃度である、請求項に記載の液体医薬製剤。
【請求項11】
前記エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、60mg/mlの濃度である、請求項に記載の液体医薬製剤。
【請求項12】
前記エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩が、100mg/mlの濃度である、請求項8に記載の液体医薬製剤。
【請求項13】
皮下投与のために製剤化される、請求項1~12のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項14】
前記液体医薬製剤が、ヒト対象に投与されるとき、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物と比較して、向上した薬物動態プロフィールを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項15】
前記液体医薬製剤が、ヒト対象に投与されるとき、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物よりも高いエキセンディン(9-39)のCmaxを呈示する、請求項14に記載の液体医薬製剤。
【請求項16】
前記液体医薬製剤が、ヒト対象に投与されるとき、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物よりも高いエキセンディン(9-39)の12時間AUCを呈示する、請求項14に記載の液体医薬製剤。
【請求項17】
前記液体医薬製剤が、ヒト対象に投与されるとき、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物よりも高いエキセンディン(9-39)のトラフ血漿濃度を呈示する、請求項14に記載の液体医薬製剤。
【請求項18】
対象の高インスリン性低血糖症を治療又は予防するための、請求項1~17のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項19】
前記対象が、上部消化管処置を以前受けたことがある、請求項18に記載の液体医薬製剤。
【請求項20】
前記対象が、肥満処置を以前受けたことがある、請求項19に記載の液体医薬製剤。
【請求項21】
エキセンディン(9-39)を45mg~90mgの用量で1日1回(QD)皮下投与するための、請求項1820のいずれか1項に記載の液体医薬製剤。
【請求項22】
エキセンディン(9-39)を90mgQDの用量で皮下投与するための、請求項21に記載の液体医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月21日に提出された米国仮出願第62/424,979号明細書、及び2017年6月8日に提出された米国仮出願第62/517,065号明細書に対する優先権を主張する。なお、これら文献の各々の全内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩及び等張化剤の改善された医薬製剤、並びに肥満手術後の低血糖症(PBH)を含む高インスリン性低血糖症を治療若しくは予防するためにエキセンディン(9-39)の製剤を使用する方法に関し、従って、医学、医薬品化学、薬理学、化学、及び生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
インスリンは、高血糖値を制御するために分泌されるホルモンである。インスリン分泌の異常な上昇は、重度の低血糖症を引き起こす恐れがあり、これは、発作、脳損傷及び死を招き得る。グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、消化管ホルモンであり、これは、腸管L-細胞から食後に放出され、膵臓のβ細胞上のGLP-1受容体に結合し、これによってインスリン放出を増大する。PBHを有する患者の場合、GLP-1媒介性インスリン分泌が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国では毎年約150,000~200,000件の肥満外科手術が実施されている。重度の肥満を治療するための肥満手術の件数が増えるにつれ、PBHを経験する個体の数も増加する。従って、高インスリン性低糖症及びPBHを安全且つ有効に緩和する治療法のアンメットニーズがますます高まっている。
【0005】
エキセンディン(9-39)は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を選択的にターゲティングし、遮断して、PBH患者の膵臓によるインスリン分泌を正常化することにより、低血糖症を軽減する31-アミノ酸ペプチドである。静脈内又は皮下投与のために食塩水中で再構成されるエキセンディン(9-39)が、PBHの治療薬として現在進行中のヒト臨床試験である(Stanford Clinical Trials,Clinicaltrials.gov.,clinical trials identifiers:NCT02771574及びNCT02550145)。しかし、効力、純度及び安定性の向上を提供するエキセンディン(9-39)の改善された液体医薬製剤に対するニーズは依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的緩衝液中にエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む液体医薬製剤が提供される。一部の実施形態では、液体医薬製剤は、薬学的に許容される塩のエキセンディン(9-39)酢酸塩又はエキセンディン(9-39)トリフルオロ酢酸塩を含む。
【0007】
一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、又はヒスチジン緩衝液である。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウムである。一部の実施形態では、緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム)は、約5mM~約30mMの濃度で製剤中に存在する。一部の実施形態では、緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム)は、約10mM~約30mM(例えば、10mM~20mM)の濃度で製剤中に存在する。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mM、約20mM、又は約30mMの濃度で酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mMの濃度で酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mMの濃度でクエン酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、少なくとも約10mMの濃度で酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、少なくとも約10mMの濃度でクエン酸ナトリウムを含む。
【0008】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、等張化剤を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、トレハロース、又はこれらの混合物を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトールである。一部の実施形態では、等張化剤は、約20~約60mg/mlの濃度で存在する。一部の実施形態では、等張化剤は、約45mg/mlの濃度で存在する。一部の実施形態では、等張化剤は、約20mg/mlの濃度で存在する。一部の実施形態では、等張化剤は、約290mOsm/kgの等生理学的(isophysiological)浸透圧を目標に添加する。
【0009】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、5を超えるpH、例えば、少なくともpH5.1~約pH6.0を有する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、5.2~5.8の範囲のpHを有する緩衝液を含む。一部の実施形態では、バッファーは、約5.5のpHを有する。
【0010】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約10~約60mg/ml(例えば、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、若しくは約60mg/ml)の濃度(例えば、ペプチド濃度)で、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約30~約180mg/ml、例えば、約30mg/ml~約150mg/ml、約30mg/ml~約120mg/ml、約50mg/ml~約150mg/ml、又は約60mg/ml~約120mg/ml(例えば、約30mg/ml、約40mg/ml、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約120mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、約150mg/ml、約160mg/ml、約170mg/ml、若しくは約180mg/ml)の濃度で、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約15mg/ml、30mg/ml、45mg/ml、若しくは60mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、少なくとも15mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約30mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、30mg/mlを超える濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、少なくとも60mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約60mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約90mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約120mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0011】
一部の実施形態では、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤は、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩の検出可能な凝集を呈示しない。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、50℃で18、24、36、48若しくは72時間にわたって保存されるとき、緩衝液体製剤が非ゼラチン状溶液として残るか否かによって決定される場合、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩の検出可能な凝集を呈示しない。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、50℃で18、24、36、48若しくは72時間にわたって保存されるとき、凝集又は沈殿について緩衝液体製剤の視覚又は光学顕微鏡検査により決定される場合、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩の検出可能な凝集を呈示しない。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤は、皮下投与のために製剤化される。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)の皮下投与のために製剤化される。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、朝、夕方、又はその両方に投与される。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、朝(例えば、朝食の少なくとも60分前)に、皮下注射によりQD投与される。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、皮下注射によりBID(例えば、朝及び夕方)投与される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤は、ヒト対象に投与されるとき、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物と比較して、向上した薬物動態プロフィールを示す。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物よりも高いエキセンディン(9-39)のCmax(例えば、製剤を投与された対象からの血漿サンプル中で測定して)を呈示する。
【0014】
別の態様では、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤を用いた治療方法が提供される。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症を治療又は予防する方法が提供される。一部の実施形態では、肥満手術後の低血糖症を治療又は予防する方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、約5mg~約30mgの範囲の用量で1日2回(BID)、例えば約7.5mg~約30mgBID又は約10mg~約30mgBIDで、例えば約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、若しくは約30mgBIDの用量で対象に投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、約20mg~約75mgの範囲の用量で1日1回(QD)、例えば約30mg~約75mgQD、30~60mgQD、40~70mgQD、又は30~60mgQDで、例えば約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、若しくは約75mgQDの用量で対象に投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、約60mgQDの用量で対象に投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、約30mgBIDの用量で対象に投与する。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症を治療又は予防する方法は、上部消化管処置、例えば、肥満手術又は代謝処置(例えば、胃バイパス術)を以前受けたことがある対象に対する緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤の投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】50℃で一晩静置した、0.9%通常生理食塩水中で調製されたエキセンディン(9-39)製剤のアリコートを示す光学顕微鏡画像である。左側パネル:24時間後に形成され、顕微鏡下でゼラチン状に見える凝集体。右側パネル:36時間後、溶液は、ゼリー状の粘性液体の外観を有した。
図2A-2B】エキセンディン(9-39)製剤の効力及び純度データである。(A)様々なイオン強度を有する酢酸又はクエン酸緩衝液中で調製された15mg/mlに相当する濃度のエキセンディン(9-39)を含む製剤について、50℃で5日間にわたり観察された効力データを示すグラフ。(B)様々なイオン強度を有する酢酸又はクエン酸緩衝液中で調製された15mg/mlに相当する濃度のエキセンディン(9-39)を含む製剤について、50℃で5日間にわたり観察された純度データを示すグラフ。
図3】50℃で5日間にわたり、10mM酢酸ナトリウム中で調製された15mg/mlに相当するエキセンディン(9-39)濃度を有する製剤の純度及び効力に対するpHの作用を示すグラフである。
図4】10mM酢酸ナトリウム中で調製された15mg/mlに相当するエキセンディン(9-39)濃度を有する製剤に観察される不純物に対するpHの作用を示すグラフである。
図5A-5B】エキセンディン(9-39)を含む製剤の血漿薬物動態プロフィールである。(A)0.72mg/kgの用量(総用量7.2mg、30mgのヒト用量に相当する)でイヌへの皮下投与により送達される、0.9%通常生理食塩水中で製剤化されたエキセンディン(9-39)酢酸塩粉末の血漿薬物動態プロフィール。(B)pH5.5の10mM酢酸ナトリウム中で製剤化され、45mg/mlのマンニトールを含み、ヒトにおける15mg/ml、30mg/ml、又は45mg/mlに相当するエキセンディン(9-39)の濃度でイヌへの皮下投与により送達される、エキセンディン(9-39)酢酸塩(総用量7.2mg)の血漿薬物動態プロフィール。
図6】再構成された凍結乾燥エキセンディン(9-39)(「パートA」)及び緩衝液体エキセンディン(9-39)(「パートB」)製剤の各々についての参加者の人数、投与、並びに経口グルコース負荷試験時点を含む、試験の概略図である。
図7A-7D】食塩水中で再構成された約30mgの凍結乾燥エキセンディン(9-39)(「Lyo Ex9-39」)(A、C)、n=6、又は30mgの緩衝液体エキセンディン(9-39)(「Liq Ex9-39」)(B、D)、n=4を用いた処置のベースライン及び最終日のOGTTに対する平均代謝応答を示す。時間に対する血漿濃度(平均±SEM)及び挿入図のAUCレベル(平均±SEM)をグルコース(A、B)及びインスリン(C、D)について示す。ベースライン(BL):丸を含む実線、黒いバー(挿入図)。Lyo Ex9-39:正方形を含む破線、赤いバー(挿入図)。Liq Ex9-39:三角を含む破線、青いバー(挿入図)。ベースライン試験は全て、グルコース<50mg/dLで停止し、IVデキストロースを投与した。120分以降に示すベースラインデータは、最終観察値による外挿(Last observation carried forward)(LOCF)を表し、それによって、処置とベースライン結果の間の真の差を過小評価している。ペアード両側ペアードスチューデントt検定によるP値:*≦0.05;**≦0.01。
図8A-8C】食塩水中で再構成された凍結乾燥エキセンディン(9-39)(「Lyo Ex9-39」)の複数漸増用量(緑、黄、オレンジ、赤)及び30mgの緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤(「Liq Ex9-39」)(青)による処置のベースラインと最終日との間のOGTTに対する応答の改善を示す。変化率(%)(平均±SEM)をグルコース最下点(A)、インスリンピーク(B)、及び低血糖症状スコア(C)について示す。症状は、エジンバラ低血糖症状尺度(Edinburgh Hypoglycemia Symptom Scale)に従う5点リッカート尺度(Likert scale)(0=なし;5=重度)に基づき等級付けした:自律型(発汗、震え、動悸、空腹感);神経低糖症(目のかすみ、錯乱、眠気、奇妙な行動、言語障害、協調不能、眩暈、集中不能);不快感(吐き気、頭痛)。ペアード両側ペアードスチューデントt検定によるP値:*≦0.05;**≦0.01。ベースライン試験は全て、グルコース<50mg/dLで停止した後、IVデキストロースを投与したため、改善率(%)を過小評価している。エキセンディン(9-39)<18mgを受けた対象は、IVデキストロースによるレスキューを必要とした。
図9A-9B】エキセンディン(9-39)を含む製剤の薬物動態プロフィールである。(A)食塩水で再構成された複数漸増用量の凍結乾燥エキセンディン(9-39)(「Lyo Ex9-39」)(赤)又は30mgの緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤(「Liq Ex9-39」)(青)の、最終日での19人のPBH対象における用量及び製剤別の12時間薬物動態プロフィール。用量(mg)別の時間に対する血漿濃度(平均±SEM)。(B)複数漸増用量のLyo Ex 9-39(赤)又はLiq Ex9-39(青)の、最終日での19人のPBH対象における用量及び製剤別のAUCエキセンディン(9-39)濃度。用量(mg/kg)に対する個別の血漿AUC濃度。
図10A-10B】エキセンディン(9-39)を含む製剤の24時間薬物動態プロフィールである。(A)7.5~90mgの範囲の用量の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤の単回皮下投与後のPKプロフィール。用量(mg)別の時間に対する血漿濃度(平均)。S1=単一漸増用量試験、7.5mg用量;S2=単一漸増用量試験、15mg用量;S3=単一漸増用量試験、30mg用量;S4=単一漸増用量試験、45mg用量;M1=複数漸増用量試験、60mg用量;M2=複数漸増用量試験、75mg用量;M3=複数漸増用量試験、90mg用量。(B)3日間の30mgBID投与(実施例3のスタンフォード(Stanford)MAD試験)後、及び60mgQD投与(実施例4の第1相試験)後の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤の複数回皮下投与後の薬物動態プロフィール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.概論
エキセンディン(9-39)は、膵臓細胞上に存在するGLP-1受容体を選択的に遮断し、これにより、インスリン分泌のGLP-1媒介性増大を阻止するグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アンタゴニストである。通常生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム、本明細書では、「0.9%通常生理食塩水」とも呼ばれる)中で製剤化されたエキセンディン(9-39)は、高インスリン性低血糖症の治療のための動物及びヒト臨床試験で投与されている。しかし、通常生理食塩水中で再構成されたエキセンディン(9-39)の皮下注射を含む最初の臨床試験では、注入液の濃度漸増と共に逆用量線形性が実証され、これは、濃度依存性ペプチド凝集及び沈殿を示唆し、濃度が高いほど薬物動態曝露及び臨床活性が低くなる。参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/191395号パンフレットの実施例3を参照されたい。さらに、本明細書の実施例1及び2に記載するように、通常生理食塩水中のエキセンディン(9-39)は、特定の保存条件、又は特定のエキセンディン(9-39)の濃度といった特定の条件下で、エキセンディン(9-39)の曝露低下を招く凝集を呈示することが明らかにされた。
【0017】
従って、一態様では、本開示は、0.9%通常生理食塩水中に同じ濃度のエキセンディン(9-39)製剤を含む組成物と比較して低い凝集を呈示する、改善されたエキセンディン(9-39)の液体医薬製剤を提供する。別の態様では、本発明は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、改善された薬物動態プロフィールを示すエキセンディン(9-39)の製剤を提供する。一部の実施形態では、例えば、実施例2に示すように、本開示の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、対象に投与されると、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物よりも高いエキセンディン(9-39)のCmaxを呈示する。さらに、実施例3に記載するように、本開示の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、0.9%通常生理食塩水中に製剤化されたエキセンディン(9-39)と比較して、より長い作用期間と共に、より高い薬物動態曝露を賦与することが見い出された。従って、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)の液体医薬製剤は、薬物動態の向上という利点も提供する。加えて、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)の液体医薬製剤は、高インスリン性低血糖症の治療又は予防のためのより低用量及び/若しくは低頻度の投与を支持することもできる。
【0018】
II.定義
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とし、限定を意図するものではない。別に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者には一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書及びそれに続く特許請求の範囲では、反対の意図が明らかではない限り、以下の意味を有することが定義されるいくつかの用語を参照するものとする。いくつかのケースでは、一般的に理解される意味を有する用語が、明瞭化及び/又は参照しやすさの目的で本明細書において定義され、本明細書におけるこうした定義の包含が、当技術分野で一般に理解される用語の定義に対して実質的な相違を表すものとして解釈すべきではない。
【0019】
本明細書に記載するものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書に引用される全ての技術及び特許公報は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0020】
全ての数値表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、及び分子量は、範囲を含め、必要に応じて、適宜、0.1若しくは1.0の増分により変動(+)又は(-)する近似値である(例えば、pH5.4又は5.5)。常に明示されているわけではないが、全ての数値表示は、「約」という用語が先に付けられることが理解される。範囲の指示対象は、別に記載のない限り、端点を含む。例えば、15mg/ml~45mg/mlの範囲のエキセンディン(9-39)の用量の投与は、15mg/ml又は45mg/mlの投与を含む。
【0021】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別の解釈を要求しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つの化合物」と言うとき、複数の化合物を含む。
【0022】
「含む」という用語は、化合物、組成物及び方法が、記載される要素を含むが、他を排除しないことを意味することが意図される。「~から構成される」は、化合物、組成物及び方法を定義するために使用される場合、請求される発明の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響し得る他の要素を排除しないことを意味する。「~から構成される」は、特許請求の範囲に記載されないあらゆる要素、ステップ、又は成分を除外することを意味する。これらの転換用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
「エキセンディン(9-39)」又は「Ex(9-39)」は、C1492344047Sの実験式及び3369.8ダルトンの分子量を有する31アミノ酸ペプチドを指す。エキセンディン(9-39)は、GLP-1受容体アゴニストエキセンディン-4の残基9~39を含み、GLP-1受容体アンタゴニストである。Montrose-Rafizadeh et al.,Journal of Biological Chemistry,272:21201-21206(1997)を参照されたい。エキセンディン(9-39)のアミノ酸配列は、次のように示される:H-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH(配列番号1)。エキセンディン(9-39)は、4.69の予測等電点を有し、pH6で-1の正味電荷を有し、これは、pH3.0で+4の正味電荷に増加する。本明細書で使用される場合、「エキセンディン(9-39)」という用語は、エキセンディン(9-39)の薬学的に許容される塩も包含し、そうしたものとして、限定されないが、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びキナ酸塩が挙げられる。一部の実施形態では、エキセンディン(9-39)は、エキセンディン(9-39)酢酸塩又はエキセンディン(9-39)トリフルオロ酢酸塩の形態である。本明細書で別に指定されない場合には、エキセンディン(9-39)酢酸塩を使用する。エキセンディン(9-39)及びその薬学的に許容される塩は、市販されている(例えば、Bachem(Clinalfa,Laeufelfingen,Switzerland))。
【0024】
本明細書で使用される場合、「等張化剤」という用語は、生理液の張度と有意に異なる溶液の投与時に、起こり得る有害な作用を予防するために溶液の張度(浸透圧勾配)を調節する化合物又は薬剤を指す。一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、トレハロース、又はそれらの混合物を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「生理学的に許容される緩衝液」という用語は、対象への投与のための製剤での使用に好適であり、且つ製剤のpHをその製剤に要望されるpH範囲内に維持又は制御する作用を有する溶液を指す。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、製剤のpHを約5~約6のpH範囲内に維持する。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、製剤のpHを5超のpHに維持する。許容される緩衝液としては、限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「医薬製剤」又は「医薬製剤」という用語は、対象への投与に好適な組成物を指す。一般に、医薬製剤は、滅菌されており、好ましくは、対象において望ましくない応答を誘発することができる混入物が存在しない(例えば、医薬製剤中の化合物は、医薬品グレードである)。医薬製剤は、それを必要とする対象又は患者に対し、経口、静脈内、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、筋肉内、皮下、吸入などをはじめとするいくつかの異なる投与経路を介した投与のために設計することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載する医薬製剤は、皮下投与のために製剤化される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、それが投与される対象である症状を排除、改善、緩和する、若しくはその軽減又は臨床転帰をもたらす活性成分(例えば、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩)の量である。
【0028】
「治療」、「治療すること」、及び「治療する」という用語は、高インスリン性低血糖症を治療するためのエキセンディン(9-39)の投与に関して本明細書で使用される場合、ヒト対象の疾患のあらゆる治療を対象とし、以下:(a)高インスリン性低血糖症の病歴を有する患者における低血糖症エピソードのリスク、頻度又は重症度を低減すること、(b)疾患に罹患しやすいと判断された対象、例えば、肥満手術を受けたことがあるが、まだ疾患を有すると診断されていない人における低血糖症の発生のリスクを低減すること、(c)疾患の発症を防ぐこと;並びに/又は(d)疾患を軽減する、すなわち、疾患の退行をもたらす、及び/若しくは1若しくは複数の疾患症状を軽減することを含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、及び「投与」という用語は、ヒトなどの対象又は患者に化合物(例えば、エキセンディン(9-39))、組成物、若しくは薬剤を導入することを指す。本明細書で使用される場合、この用語は、直接の投与、(例えば、自己投与又は医療専門家による患者への投与)及び間接的投与(例えば、対象に対して化合物又は組成物を処方する行為)の両方を包含する。
【0030】
「QD」及び「BID」は、それぞれ、1日1回又は1日2回のエキセンディン(9-39)の緩衝液体製剤の投与というそれらの通常の意味を有する。一部の実施形態では、1日1回(QD)の投与は、投与の間に、少なくとも20時間、少なくとも22時間、又は約24時間経過することを意味する。一部の実施形態では、1日1回の投与は、24時間毎の投与を意味する。一部の実施形態では、1日2回(BID)の投与は、投与の間に、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、又は約12時間が経過することを意味する。一部の実施形態では、1日2回の投与は、約12時間毎の投与を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「患者」及び「対象」という用語は、置き換え可能に、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)製剤の投与により治療又は予防することができる状態を有する、又はそれに罹患しやすい個体(例えば、ヒト若しくはヒト以外の哺乳動物)を指す。一部の実施形態では、患者又は対象は、高インスリン性低血糖症を有する。一部の実施形態では、患者又は対象は、以前、肥満処置(例えば、胃バイパス手術)を受けたことがある。
【0032】
本明細書で使用される場合、「凝集体」、「凝集」、及び「沈殿」という用語は、置き換え可能に、オリゴマーの形成をもたらす製剤中のエキセンディン(9-39)ポリペプチド同士の物理的相互作用を指し、これにより、大きな凝集体が形成されて、溶液から沈殿し得る。一部の実施形態では、エキセンディン(9-39)の大きな凝集体は、裸眼で見ることができるか、又は光学顕微鏡などの当技術分野で公知の検出方法を用いて見ることができる。一部の実施形態では、例えば製剤の保存中などに、ポリペプチドによる凝集体形成が、ポリペプチドの生物活性に悪影響を及ぼし、医薬製剤の治療効果の喪失を招く恐れがある。一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む製剤は、例えば、保存又は対象への投与時に、「検出可能な凝集」を呈示せず、その際、凝集体は、光学顕微鏡検査によって見ることができない(例えば、24、36、又は48時間などの時間の経過後)。
【0033】
本明細書で使用される場合、「保存される」又は「保存」という用語は、製剤、例えば、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤の、指定温度で指定期間にわたる保存を指す。一部の実施形態では、製剤は、長期(例えば、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月若しくはそれ以上)にわたって保存される。一部の実施形態では、製剤は、約5℃、25℃、30℃、37℃、40℃、又は50℃の温度で保存される。一部の実施形態では、製剤は、製剤の1つ又は複数の特性を試験する、例えば、製剤が凝集を呈示するか否かを試験する目的のために、規定された期間(例えば、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、若しくは72時間)にわたって、規定期間にわたり規定温度(例えば、50℃)で製剤を保存する。
【0034】
III.エキセンディン(9-39)製剤
一態様では、pH5.0超の生理学的に許容される緩衝液中にエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤が提供される。一部の実施形態では、pHが約5~約6の範囲の生理学的に許容される緩衝液中にエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤が提供される。一部の実施形態では、製剤は、等張化剤をさらに含む。
【0035】
本明細書に記載するように、驚くべきことに、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤の特定の特性及び薬物動態パラメータは、適切なエキセンディン(9-39)濃度、等張化剤、生理学的に許容される緩衝液、及びpHを選択することによって調節することができることが見い出された。例えば、以下の実施例1に記載するように、エキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤は、エキセンディン(9-39)濃度、等張化剤、生理学的に許容される緩衝液、及びpHの選択により、所定期間の保存後のエキセンディン(9-39)凝集、所定期間の保存後のエキセンディン(9-39)の効力、及び所定期間の保存後のエキセンディン(9-39)の純度などの特性に関して改善することができる。
【0036】
また、以下の実施例2及び3に記載するように、5を超えるpH、例えば、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中にエキセンディン(9-39)を含む製剤は、当技術分野で公知の再構成された凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比較して、向上した薬物動態特性を示すことが見い出された。例えば、実施例2は、緩衝エキセンディン(9-39)製剤の皮下注射によって、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物と比べ、血漿中エキセンディン(9-39)の高いCmaxがもたらされたことを示す。図5A及び図5Bを参照されたい。実施例3は、緩衝エキセンディン(9-39)製剤の皮下注射により、再構成された凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比較して、エキセンディン(9-39)の高いCmax、高い12時間AUC、及び高いトラフ血漿濃度がもたらされたことを示す。
【0037】
エキセンディン(9-39)
一部の実施形態では、緩衝製剤は、エキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、エキセンディン(9-39)の薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、製剤は、薬学的に許容される塩、エキセンディン(9-39)酢酸塩又はエキセンディン(9-39)トリフルオロ酢酸塩を含む。
【0038】
一部の実施形態では、製剤は、約4~90mg/ml、約4~60mg/ml、約4~45mg/ml、約10~90mg/ml、約10~60mg/ml、約10~45mg/ml、約10~40mg/ml、約10~35mg/ml、約10~30mg/ml、約12~25mg/ml、約12~20mg/ml、約12~15mg/ml、約30~90mg/ml、約30~60mg/ml、約30~70mg/ml、約45~90mg/ml、約45~75mg/ml、約60~90mg/ml、又は約30~70mg/ml(例えば、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、若しくは約90mg/ml)の濃度でエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、製剤は、約15mg/ml~約45mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約15mg/mの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約25mg/ml~約35mg/mlの範囲の濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約30mg/mの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約40mg/ml~約50mg/mlの範囲の濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約45mg/mの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約30mg/ml~約60mg/mlの範囲の濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約30mg/ml~約90mg/mlの範囲の濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約45mg/ml~約90mg/mlの範囲の濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約60mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。一部の実施形態では、製剤は、約75mg/mlの濃度でエキセンディン(9-39)を含む。
【0039】
生理学的に許容される緩衝液
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中にエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、緩衝液は、皮下投与と適合性である。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、生理学的pH若しくはほぼ生理学的pH、又は生理学的pH付近の比較的狭いpH範囲内(例えば、約5.0~約8.0)のpHを有する液体製剤をもたらす緩衝液である。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、保存又は対象への投与時に、液体医薬製剤中のエキセンディン(9-39)凝集体の形成を防止、制限、又は低減するpHである。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、5.0を超えるpHを有する。
【0040】
一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、長期(例えば、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約3日、約5日、約7日、約10日、約14日、約1ヵ月、又はそれ以上)にわたって安定なpHを有する溶液を含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、長期にわたる保存の間、エキセンディン(9-39)の機能性を安定化する溶液を含む。一実施形態では、保存は、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約3日、約5日、約7日、約10日、約14日、約1ヵ月、又はそれ以上を含み得る。
【0041】
一実施形態では、緩衝液体製剤は、約5~約6の範囲(例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、及び6.0を含む範囲)のpHを有する生理学的に許容される緩衝液を含む。一実施形態では、緩衝液体製剤は、約5.0超から約6までのpHを有する生理学的に許容される緩衝液を含む。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5.0超及び最大約5.5のpHを有する。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5.2~5.8の範囲(例えば、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、又は5.8)のpHを有する。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5.0~5.5の範囲(例えば、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5)のpHを有する。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5.5~約6の範囲のpHを有する。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5.5のpHを有する。
【0042】
一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、又はこれらの混合物を含む。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、又はこれらの混合物を含む。一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5mM~約30mM、約10mM~約30mM、約15mM~約30mM、約20mM~約30mM、又は約25mM~約30mM(例えば、約5mM、約8mM、約10mM、約12mM、約15mM、約18mM、約20mM、約22mM、約25mM、約28mM、又は約30mM)の濃度で緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム)を含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、少なくとも10mMの濃度で緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム)を含む。
【0043】
一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、酢酸緩衝液を含む。一部の実施形態では、緩衝剤は、酢酸ナトリウムである。一部の実施形態では、緩衝剤は、酢酸カリウムである。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5mM~約30mM、例えば約10mM~約20mMの濃度で、酢酸緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム)を含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mMの濃度で、酢酸緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウム)を含む。
【0044】
一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、クエン酸緩衝液を含む。一部の実施形態では、緩衝剤は、クエン酸三ナトリウムである。一部の実施形態では、緩衝剤は、クエン酸マグネシウムである。一部の実施形態では、緩衝剤は、クエン酸カリウムである。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5mM~約30mM、例えば約10mM~約20mMの濃度で、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、又はクエン酸カリウム)を含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mMの濃度で、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、又はクエン酸カリウム)を含む。
【0045】
一実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、リン酸緩衝液を含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、リン酸カリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約5mM~約30mM、例えば約10mM~約20mMの濃度で、リン酸カリウムを含む。一部の実施形態では、生理学的に許容される緩衝液は、約10mMの濃度で、リン酸緩衝液(例えば、リン酸カリウム)を含む。
【0046】
等張化剤
一部の実施形態では、緩衝製剤は、等張化剤を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、トレハロース、又はそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトールである。等張化剤の使用は、医学分野では公知であり、当業者であれば、本明細書に開示される1若しくは複数種の等張化剤を使用して、皮下投与に好適な液体医薬製剤を提供する。例えば、Pramanick et al.,Pharma Times.,Vol 45,No.3,(2013)を参照されたい;また、Formulating Poorly Water Soluble Drugs,Williams,Watts,and Miller,eds.,Springer Science and Business Media(2011)を参照されたい。
【0047】
一部の実施形態では、等張化剤又は等張化剤の組合せは、約20~75mg/ml、約20~60mg/ml、約25~55mg/ml、約30~75mg/ml、約30~50mg/ml、約35~45mg/ml、約40~45mg/ml、約45~75mg/ml、又は約45~60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約22mg/ml、約25mg/ml、約28mg/ml、約30mg/ml、約32mg/ml、約35mg/ml、約38mg/ml、約40mg/ml、約42mg/ml、約45mg/ml、約48mg/ml、約50mg/ml、約52mg/ml、約55mg/ml、約58mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、又は約75mg/ml)の濃度で、製剤中に存在する。一部の実施形態では、製剤は、約30~約60mg/mlの濃度範囲で等張化剤を含む。
【0048】
一部の実施形態では、等張化剤又は等張化剤の組合せは、等生理学的浸透圧を有する製剤をもたらす量で、製剤中に存在する。一部の実施形態では、等張化剤又は等張化剤の組合せは、約275~300mOsm/kg(例えば、約275mOsm/kg、約280mOsm/kg、約285mOsm/kg、約290mOsm/kg、約295mOsm/kg、又は約300mOsm/kg)の浸透圧を有する製剤をもたらす量で、製剤中に存在する。一部の実施形態では、等張化剤又は等張化剤の組合せ(例えば、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、トレハロース、又はこれらの組合せ)は、約290mOsm/kgの浸透圧を有する製剤をもたらす量で、製剤中に存在する。
【0049】
一部の実施形態では、等張化剤は、マンニトールを含む。一部の実施形態では、マンニトールは、約40~50mg/mlの濃度で存在する。一部の実施形態では、マンニトールは、約40mg/ml~約45mg/mlの範囲の濃度で存在する。一部の実施形態では、マンニトールは、約45mg/mlの濃度で存在する。一部の実施形態では、マンニトールは、少なくとも45mg/mlの濃度で存在する。
【0050】
一実施形態では、等張化剤は、デキストロースを含む。一実施形態では、デキストロースは、約20mg/ml~約60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、又は約60mg/ml)の濃度で存在する。
【0051】
一実施形態では、等張化剤は、グリセリンを含む。一部の実施形態では、グリセリンは、約20mg/ml~約60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、又は約60mg/ml)の濃度で存在する。
【0052】
一実施形態では、等張化剤は、ラクトースを含む。一態様では、ラクトースは、約20mg/ml~約60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、又は約60mg/ml)の濃度で存在する。
【0053】
一実施形態では、等張化剤は、スクロースを含む。一部の実施形態では、スクロースは、約20mg/ml~約60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、又は約60mg/ml)の濃度で存在する。
【0054】
一実施形態では、等張化剤は、トレハロースを含む。一態様では、トレハロースは、約20mg/ml~約60mg/ml(例えば、約20mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、又は約60mg/ml)の濃度で存在する。
【0055】
一部の実施形態では、緩衝製剤は、2種以上の等張化剤を含む。一部の実施形態では、緩衝製剤は、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ラクトース、スクロース、及びトレハロースからなる群から選択される2種以上の等張化剤を含む。一部の実施形態では、緩衝製剤は、マンニトール、少なくとも1種の他の等張化剤を含む。
【0056】
別の賦形剤
一部の実施形態では、製剤は、保存料、界面活性剤(例えば、ポリソルベート若しくはポリオキサマー)、又は着色料(例えば、薬学的に許容される色素、無機顔料、及び天然着色料)などの1種又は複数種の別の賦形剤をさらに含む。非常に多様な薬学的に許容される賦形剤が当技術分野では公知である。薬学的に許容される賦形剤は、様々な刊行物に詳細に記載されており、そうしたものとして、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assoc.が挙げられ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
IV.治療方法
別の態様では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む緩衝液体製剤を投与するステップを含む治療方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、高インスリン性低血糖症の症状を予防又は軽減するのに有効な量で、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)の緩衝液体製剤を投与するステップを含む。一部の実施形態では、この方法は、肥満手術後の低血糖症の症状、代謝転帰、及び/又は臨床転帰を予防又は軽減するのに有効な量で、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)の緩衝液体製剤を投与するステップを含む。
【0058】
患者集団
一部の実施形態では、本明細書に記載する方法に従って治療しようとする対象は、高インスリン性低血糖症(HH)を有する対象である。特定の実施形態では、高インスリン性低血糖症を有する対象は、以前、肥満手術(例えば、Roux-en-Y胃バイパス術)及び/又は関連代謝処置を受けたことがある。特定の実施形態では、対象は、以前、肥満手術(例えば、Roux-en-Y胃バイパス術)及び/又は関連代謝処置を受けたことがあり、高インスリン性低血糖症を発症するリスクを有する。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症を有する対象は、以前、胃切除術又は食道切除術などの上部消化管処置を受けたことがある。
【0059】
本明細書で使用する場合、「高インスリン性低血糖症」は、ダンピング症候群、後期ダンピング症候群、膵島細胞症、非インスリノーマ低血糖症候群(NIPHS)、及び/又は食後反応性低血糖症を包含する。高インスリン性低血糖症は、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)若しくは垂直方向スリーブ胃切除術(VSG)などの胃、肥満、又は代謝処置に起因するか、或いは、先天的、後天的、又は誘発性原因を有し得る。
【0060】
高インスリン性低血糖症を有する対象は、あらゆる好適な方法によって識別され得る。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、ウィップルの三徴(Whipple’s triad)の存在によって診断され、これは、下記の基準を有する:(1)低血糖症の症状の発生;(2)症状のタイプについて記録されている低血漿グルコースレベル;及び(3)血漿グルコースが上昇した後の症状の分利。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、対象による報告又は医療記録による毎月少なくとも1回の細管グルコース≦50mg/dLの発生によって定義される。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、血漿グルコースの自己モニタリング、少なくとも20分間の連続的なグルコースモニタリング、又は血漿グルコースの実験室測定により検出される血漿グルコース濃度<54mg/dLによって定義される。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、グルコースが≦55mg/dLであったとき、不適切に上昇した血漿インスリン(≧3uU/mL)若しくはc-ペプチド(>0.3mg/dL)に関連する経口グルコース負荷試験又は食事負荷試験中の血漿グルコース濃度≦55mg/dLによって定義される。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、グルコースが≦60mg/dLであったとき、不適切に上昇した血漿インスリン(≧3uU/mL)若しくはc-ペプチド(>0.3mg/dL)に関連する経口グルコース負荷試験又は食事負荷試験中の血漿グルコース濃度≦60mg/dLによって定義される。一部の実施形態では、高インスリン性低血糖症は、誘発試験、例えば、経口グルコース負荷試験(OGTT)又は混合食負荷試験(MMTT)によって診断される。Eisenberg et al.,Surgery for Obesity and Related Diseases,2017,13:371-378;また、Diabetes Care,2016,doi:10.2337/dc16-2215も参照されたい。
【0061】
一実施形態では、治療しようとする対象は、以前、Roux-en-Y胃バイパス術などの肥満手術及び/又は関連代謝処置を受けたことがある。肥満及び/又は関連代謝処置として、限定されないが、Roux-en-Y胃バイパス術、垂直方向スリーブ胃切除術、エンドスリーブデバイス、例えば、「腔内ライナー」とも呼ばれるEndoBarrier Gastrointestinal Liner Systemの配置、十二指腸アブレーションとも呼ばれる十二指腸粘膜焼灼術、十二指腸-回腸若しくは十二指腸-空腸吻合を伴う十二指腸の部分バイパス、迷走神経遮断及び/又は幽門形成)が挙げられる。
【0062】
肥満処置(すなわち、肥満手術)は、典型的に、以下:十二指腸の部分的若しくは完全なバイパス形成及び/又は十二指腸に対する栄養素曝露の低減、腸の下部(多くの場合、特に回腸)に対する栄養素輸送の迅速性の増大、及び/又はそれ以外に回腸への栄養素曝露の増加、のいずれかを伴う。肥満手術は、減量若しくは代謝利益(例えば、糖尿病の分利)、又はその両方を目的とし得る。こうした減量若しくは代謝処置は、本明細書で「肥満処置」と呼ばれ、遠位小腸、特に回腸からのGLP-1の分泌を増大し得るが、これは、インスリン分泌の上昇、また、一部の対象においては低血糖症を招く。一部の実施形態では、対象は、「肥満手術後の」患者又は「RYGB後」と呼ぶこともある。
【0063】
別の実施形態では、治療しようとする対象は、以前、関連代謝処置を受けたことがある。一例に過ぎないが、一実施形態では、治療しようとする対象は、以前、消化管系に関する非肥満手術(限定されないが、例えば、食道癌の治療のための食道切除術、例えば、胃食道逆流症の治療のためのニッセン(Nissen)噴門形成術、又は例えば、胃癌の治療若しくは予防のための胃切除術を含む)を受けたことがあり、従って、本明細書では「消化管手術後」と呼ばれることもある。
【0064】
別の実施形態では、治療しようとする対象は、前糖尿病及び/又はインスリン耐性であり、食後低血糖症を招く炭水化物の経口摂取に起因する膵臓の過刺激の予防から利益を被り得る。別の実施形態では、治療しようとする対象は、例えば、先天性高インスリン症(又は時として、先天性膵島細胞症とも呼ばれる)などの先天性、後天性、又は誘導型の高インスリン性低血糖症を有する。
【0065】
好適な患者集団及び患者を識別する方法も、本明細書に参照により組み込まれるPCT特許出願第PCT/US2016/033837号明細書に記載されている。
【0066】
一部の実施形態では、患者は、ヒト患者である。一部の実施形態では、患者は、成人である。一部の実施形態では、患者は、青年である。一部の実施形態では、患者は、以前、肥満処置(例えば、胃バイパス手術)を受けた成人である。
【0067】
投与経路及び投与レジメン
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤は、皮下投与(例えば、皮下注射)により投与される。注射の部位は、限定されないが、大腿、腹部、上腕領域、又は上方臀部領域が挙げられる。
【0068】
一部の実施形態では、本開示の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、皮下投与のために製剤化される。一実施形態では、本発明の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)レジームに従う皮下投与のために製剤化される。
【0069】
注射液製剤
一部の実施形態では、緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、例えば、複数の単回使用プレフィルシリンジ(例えば、10、20、30、40、50、又は60本のプレフィルシリンジ)を含むキット内に、単回使用プレフィルシリンジとして製剤化される。一部の実施形態では、単回使用プレフィルシリンジは、約5~75mgのエキセンディン(9-39)、等張化剤、及び5.0~6.0の範囲のpHを有する緩衝液を含むエキセンディン(9-39)液体医薬製剤を含む。
【0070】
一部の実施形態では、緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、グルカゴン応急キットと同様に、シリンジを用いた投与用の単位若しくは多回用量ガラスバイアル若しくはアンプル中に滅菌、保存された等張液として製剤化される。一部の実施形態では、緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、本明細書に記載の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤(例えば、約5~75mgのエキセンディン(9-39)、等張化剤、及び約5.5のpHを有する緩衝液、並びに任意選択で適切な量の抗菌保存料を含む製剤)のバイアル、バイアルコネクター、シリンジ、及び1つ若しくは複数のニードルを含む単回用量トレー内の注射液として提供される。
【0071】
一部の実施形態では、緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、ガラスカートリッジペン型注射器装置中に滅菌、保存された等張液として製剤化する。非限定的例として、製剤は、約5~75mgのエキセンディン(9-39)(例えば、約5~45mg又は、約30~75mgのエキセンディン(9-39))、等張化剤、及び約5.5の範囲のpHを有する緩衝液、並びに任意選択で適切な量の抗菌性保存料を含む。
【0072】
一部の実施形態では、各用量は、0.25~2mlの範囲の注射液の総量で投与され、ほとんどの対象は、0.5~1.5ml、例えば0.7~1mlの範囲の注射量を投与する。
【0073】
治療パラメータ
一部の実施形態では、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中にエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩及び等張化剤を含む治療有効量の液体医薬製剤を含む組成物が、高インスリン性低血糖症の治療又は予防のために、それが必要な対象に投与される。
【0074】
一部の実施形態では、本方法は、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中の治療有効量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩及び等張化剤をそれが必要な対象に投与(例えば、皮下投与)するステップを含む。一部の実施形態では、治療有効量のエキセンディン(9-39)(又はその薬学的に許容される塩)は、約15mg/ml~約180mg/ml、例えば、約15mg/ml~約60mg/ml、約18mg/ml~約50mg/ml、約20mg/ml~約30mg/ml、約30mg/ml~約60mg/ml、約30mg/ml~約45mg/ml、約45mg/ml~約90mg/ml、約45mg/ml~約60mg/ml、約30mg/ml~約180mg/ml、約30mg/ml~約150mg/ml、約30mg/ml~約90mg/ml、約30mg/ml~約120mg/ml、約45mg/ml~約150mg/ml、又は約60mg/ml~約180mg/mlの範囲の量である。一部の実施形態では、治療有効量のエキセンディン(9-39)(又はその薬学的に許容される塩)は、約15mg/ml、約18mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約42mg/ml、約45mg/ml、約48mg/ml、約50mg/ml、約52mg/ml、約55mg/ml、約58mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、又は約90mg/mlの量である。
【0075】
一部の実施形態では、本方法は、約10mg~約90mgのエキセンディン(9-39)の総1日用量、例えば、約10mg~約75mg、約10mg~約60mg、約15mg~約90mg、約15mg~約75mg、約15mg~約60mg、約20mg~約90mg、約20mg~約75mg、約25mg~約75mg、約25mg~約60mg、約30mg~約90mg、約30mg~約75mg、約30mg~約60mg、又は約40mg~約90mgのエキセンディン(9-39)の総1日用量で、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)の緩衝液体製剤を投与(例えば、皮下投与)するステップを含む。一部の実施形態では、少なくとも約20mg、少なくとも約30mg、少なくとも約40mg、少なくとも約50mg、又は少なくとも約60mgのエキセンディン(9-39)の総1日用量で、緩衝製剤を投与する。一部の実施形態では、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、又は約90mgのエキセンディン(9-39)の総1日用量で、緩衝製剤を投与する。
【0076】
上記に記載の用量範囲は、例示的な成人用量であり、製剤分野の当業者には周知のように、患者の年齢及び体重に応じて変動し得る。一部の実施形態では、用量は、治療期間中に増減することができることを理解されたい。例えば、一部の医師は、低い、若しくは初期(開始)用量で治療して、初期用量が十分な治療利益をもたらさない場合には、より多い量に漸増し、初期用量が十分な治療利益をもたらす場合には、初期用量を維持することを望む。
【0077】
一部の実施形態では、治療有効量のエキセンディン(9-39)(又はその薬学的に許容される塩)を緩衝液体製剤として1日1回(QD)投与する。QD投与は、医学分野において公知である。一部の実施形態では、QD用量は、約24時間の間隔(例えば、連日7a.m.)で投与(例えば、自己投与)する。しかし、投与を少なくとも約18時間あけて行うという条件で、より短い(例えば、連日8a.m.及び6a.m.)又はより長い(例えば、連日7a.m.及び9a.m.)投与間隔も可能である。好ましくは、投与は、少なくとも約20時間、21時間、22時間、23時間、又は24時間の間隔をあける。好ましくは、投与は、30時間以下の間隔をあける。1日1回の投与が好ましいが、用量の投与は、より高頻度(例えば、1日2回)又はより低頻度(例えば、1日置き)であってもよい。
【0078】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤を1日2回(BID)投与する。BID(1日2回)投与は、医学分野において公知である。緩衝液体製剤は、1日又は対象のスケジュールの特定の時点で、例えば、午前中、午後、夕方、夜、食前若しくは食中若しくは食後、就寝前などに投与することができる。一部の実施形態では、12時間毎にほぼ1回液体医薬製剤を投与する。一部の実施形態では、BID用量は、約12時間の間隔(例えば、7a.m.及び7p.m.)で投与(例えば、自己投与)する。しかし、より短い(例えば、8a.m.及び6p.m.)又はより長い(例えば、7a.m.及び10p.m.)投与間隔も可能である。一部の実施形態では、投与は、少なくとも約4時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間又は11時間の間隔をあける。好ましくは、投与は、15時間以下の間隔をあける。BID用量投与の時間設定方法は、例えば、本明細書に参照により組み込まれるPCT特許出願第PCT/US2016/033837号明細書に記載されている。
【0079】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、5mg~30mgBID又は10mg~45mgBID、例えば、約7.5~30mgBID、約10~30mgBID、約15~45mgBID、約25~45mgBID、又は約30~45mgBIDの範囲のエキセンディン(9-39)の用量で投与(例えば、皮下投与)する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約7.5mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約10mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約15mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約20mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約30mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約45mgBIDの用量で投与する。一部の実施形態では、30mg/ml以上の濃度でエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤は、約30~45mgBIDの用量で、例えば、約30mgBIDの用量で投与する。
【0080】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、20mg~90mgQD、例えば、約30~90mgQD、約30~75mgQD、約45~90mgQD、又は約45~75mgQDの範囲のエキセンディン(9-39)の用量で投与(例えば、皮下投与)する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約20mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約30mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約45mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約60mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約75mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、約90mgQDの用量で投与する。一部の実施形態では、60mg/ml以上の濃度でエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤は、少なくとも45mgQDの用量、例えば、45~90mgQDの用量、約60mgQDの用量、又は約75mgQDの用量で投与する。
【0081】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、朝食及び夕食前(又はその日の2回の主食前)の約60分以内に1日2回(BID)投与(例えば、皮下投与)する。一部の実施形態では、朝食及び夕食前(又はその日の2回の主食前)の投与は、少なくとも約6時間の間隔をあける。一部の実施形態では、緩衝液体製剤の投与は、食事に合わせない。
【0082】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、朝食及び夕食を最大限カバーするために、朝又は夜に1日1回(QD)投与(例えば、皮下投与)する。例えば、一部の実施形態では、製剤は、夜、夕飯後に又は早朝、朝食前(例えば、朝食の少なくとも60分前)に投与する。
【0083】
一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、異なる用量で1日2回(BID)投与(例えば、皮下投与)する。一部の実施形態では、製剤は、朝及び午後に異なる用量で投与する。一部の実施形態では、製剤は、朝及び夕方又は夜に異なる用量で投与する。例えば、一部の実施形態では、製剤は、朝及び夕方又は夜に投与し、その場合、夕方又は夜の用量は、朝の用量より低い。
【0084】
本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤が投与される対象は、予定期間、不定期間、又はエンドポイントに達するまで、治療法を受けることができる。治療は、少なくとも2ヶ月~3ヵ月、6ヵ月、1年、若しくはそれ以上にわたって連続して日若しくは週単位で継続してよい。一部の実施形態では、治療法は、少なくとも30日、少なくとも60日、少なくとも90日、少なくとも120日、少なくとも150日、又は少なくとも180日に及ぶ。一部の実施形態では、治療は、少なくとも6ヵ月、少なくとも7ヵ月、少なくとも8ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも10ヵ月、少なくとも11ヵ月、又は少なくとも1年にわたって継続する。一部の実施形態では、治療は、患者の生涯にわたって、又は有意義な治療利益を提供する上で投与がもはや有効ではなくなるまで継続する。
【0085】
薬物動態特性の向上
一部の実施形態では、約5~約6の範囲のpHを有する生理学的に許容される緩衝液中のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩及び等張化剤を含む緩衝液体製剤は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)又はその薬学的に許容される塩を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)の吸収プロフィールの向上をもたらす。一部の実施形態では、緩衝液体製剤は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を投与された対象の同じ時間にわたる又は同じ時間のエキセンディン(9-39)の血漿濃度と比較して、対象への投与後約1~6時間にわたって(例えば、約1時間後、約2時間後、約3時間後、又は約4時間後、1~4時間にわたって)エキセンディン(9-39)のより高い血漿濃度をもたらす。
【0086】
一部の実施形態では、本開示の緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、対象に投与されると、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物を投与された対象の同じ時間にわたる血漿濃度の増加と比較して、対象への投与後約1~12時間にわたって(例えば、約1時間後、約2時間後、約3時間後、又は約4時間後、1~10時間、6~12時間、1~8時間、又は4~12時間にわたって)エキセンディン(9-39)のより大きな血漿濃度の増加をもたらす。一部の実施形態では、エキセンディン(9-39)の血漿濃度の変化は、エキセンディン(9-39)製剤を対象に投与してから約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、又は6時間後に測定する。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤の皮下注射は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)のより高いCmaxをもたらす。
【0088】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤の皮下注射は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)のより高いAUCをもたらす。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤の皮下注射は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)のより高い12時間AUCをもたらす。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤の皮下注射は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)のより遅いTmaxをもたらす。
【0090】
一部の実施形態では、本明細書に記載のエキセンディン(9-39)を含む緩衝液体製剤の皮下注射は、0.9%通常生理食塩水中で製剤化された同じ用量のエキセンディン(9-39)を含む組成物と比較して、エキセンディン(9-39)のより高いトラフ濃度をもたらす(例えば、少なくとも3日間の投与、少なくとも1週間の投与、少なくとも2週間の投与、又は少なくとも1ヵ月の投与などの反復投与後に測定したとき)。
【実施例
【0091】
V.実施例
以下の実施例は、例示のために記載するのであり、請求される発明を限定するためではない。
【0092】
実施例1:0.9%通常生理食塩水中で再構成したエキセンディン(9-39)及び緩衝エキセンディン(9-39)製剤の特性
この実施例は、エキセンディン(9-39)の緩衝製剤の特性と比較して、0.9%の通常生理食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)酢酸塩の物理的及び化学的特性を記載する。
【0093】
通常生理食塩水中で製剤化したエキセンディン(9-39)の特性
0.9%通常生理食塩水中で再構成することにより、様々な濃度(5、10.24、15.3、25.22、及び44.99mg/ml)の凍結乾燥エキセンディン(9-39)酢酸塩を調製して、5℃で保存した。再構成したエキセンディン(9-39)製剤各々のpHを第0日に記録し、最大14日間にわたってモニターした。再構成したエキセンディン(9-39)製剤の全ての濃度によって、初期pH4.4~4.5が得られた。再構成したエキセンディン(9-39)製剤各々の視覚検査も第0日に記録し、5℃に維持しながら、最大14日間にわたってモニターした。結果を以下の表1に示す。14日間にわたって5℃に維持したサンプルのいずれにおいても、再構成エキセンディン(9-39)製剤の凝集、ゲル化又は沈殿は観察されなかった。
【0094】
【表1】
【0095】
7日間にわたって5℃に維持した再構成エキセンディン(9-39)製剤(5、10.24、15.3、25.22、及び44.99mg/ml)の各々のアリコートを50℃で一晩配置した。再構成エキセンディン(9-39)製剤は全て、50℃で24時間以内に凝集を示し、凝集体は、光学顕微鏡下でゼラチン状の外観を呈した(図1、左側パネル)。50℃で36時間後、再構成エキセンディン(9-39)製剤は、さらに凝集した(図1、右側パネル)。
【0096】
0.9%生理食塩水中で再構成したエキセンディン(9-39)製剤が、沈殿及び/又は凝集し始める温度をさらに調べるために、15mg/mlの再構成エキセンディン(9-39)製剤のアリコートを5℃、25℃、30℃、37℃、及び40℃で一晩保存した。以下の表2に示すように、再構成エキセンディン(9-39)製剤の視覚検査によって、40℃まで一晩保存した15mg/ml再構成エキセンディン(9-39)製剤のいずれも溶液から沈殿しなかったことが明らかにされた。
【0097】
【表2】
【0098】
エキセンディン(9-39)の緩衝液体製剤の特性
様々なイオン強度(10mM~30mM)及び異なるpH(pH3.5~6.0)の2つのイオン緩衝液(酢酸緩衝液又はクエン酸緩衝液)の一方で、エキセンディン(9-39)酢酸塩を製剤化した。各サンプルを5℃又は50℃で最大5日間保存した。製剤を凝集について視覚的に検査し、純度及び効力を強カチオン交換(SCX)-HPLCにより試験した。
【0099】
以下の表3に示すように、試験した緩衝エキセンディン(9-39)製剤のいずれも5℃で溶液から沈殿しなかった。50℃で48時間以内に、pH4.5及び5.0の製剤は、目に見える凝集を示したが、他の製剤についてはいずれも凝集は見えなかった。
【0100】
【表3】
【0101】
純度及び効力について強カチオン交換-高性能液体クロマトグラフィー(SCX-HPLC)により5日間にわたって製剤を分析した。エキセンディン(9-39)緩衝液体製剤の純度及び効力に対する50℃で5日間の保存の影響を図2A及び図2Bに示す。
【0102】
図2A及び以下の表4に示すように、クエン酸及び酢酸緩衝液は、5日の保存期間の終了時にエキセンディン(9-39)の有効性に関して同等であった。pH3.5及びpH6.0で、最少のエキセンディン(9-39)喪失(すなわち、有効性に対する最後の影響)が観察された。これより高い緩衝強度は、5日の期間の終了時に、より多くのエキセンディン(9-39)喪失を伴った。図2B及び表4に示すように、pH4.0の製剤について最少の純度低下が観察されたのに対し、pH6.0の製剤では最大の純度低下が観察された。イオン緩衝強度が(例えば、10mMから20mM又は30mMに)増加すると、純度喪失が高くなった。クエン酸及び酢酸緩衝液は、同等の活性を呈示した。
【0103】
【表4】
【0104】
50℃で5日の保存後、様々なpHの10mM酢酸緩衝液中で製剤化したエキセンディン(9-39)の効力及び純度を図3に示す。図3に示すように、エキセンディン(9-39)の最小の減少が、4.0以下のpH又は5.5以上のpHで観察された。効力の喪失は、凝集が見えた場合(pH4.5及び5.0)に最大であった。
【0105】
10mM酢酸緩衝液中で製剤化したエキセンディン(9-39)のpHに対して純度の寄与をプロットした。図4は、純度に対するpHの作用を示し、これは、%面積寄与として測定した。
【0106】
特定の理論に拘束されることは意図しないが、エキセンディン(9-39)の予測等電点(pH4.7)を超える緩衝液中でエキセンディン(9-39)を製剤化するのが有利であることが提示されている。というのは、一旦この製剤が投与(例えば、注射)されると、製剤は、約7.4の生理学的pHへの移行中に等電pHを通過しないからである。さらに、こうしたpHの緩衝液中でエキセンディン(9-39)を製剤化すれば、効力、化学的安定性、及び凝集に対する低感受性の向上などの特性の向上がもたらされると予想される。対照的に、典型的には約4.5のpHを有する通常生理食塩水中でエキセンディン(9-39)を製剤化すると、こうした製剤は、生理学的pHに向かう途中でエキセンディン(9-39)の等電pHを通過しなければならないことから、沈殿又は凝集の可能性が高くなり得る。
【0107】
実施例2:緩衝エキセンディン(9-39)製剤の血漿濃度プロフィール
この実施例は、約5~6の範囲のpHを有する緩衝液中で製剤化されたエキセンディン(9-39)が、通常生理食塩水中で再構成したエキセンディン(9-39)と比較して、向上した薬物動態特性を示すことを示す。この実施例のために、7.2mgの用量(ヒトの場合、30mgの用量と同等)のエキセンディン(9-39)酢酸塩を10mM酢酸ナトリウム及び45mg/mlのマンニトール中で製剤化した。製剤は、5.5のpHを有した。3つの濃度:15mg/ml、30mg/ml、又は45mg/mlのうちの1つで皮下注射により製剤をイヌ(群当たり3匹の雄イヌ)に投与した。エキセンディン(9-39)の血漿濃度は、投与後、0~24時間の期間にわたってモニターした(図5B)。
【0108】
対照として、7.2mgの用量(ヒトの場合、30mgの用量と同等)のエキセンディン(9-39)酢酸塩を、約4.5のpHを有する0.9%通常生理食塩水中で再構成し、2匹のイヌ(1匹の雄及び1匹の雌)に対して皮下投与した。図5Aは、0.9%通常生理食塩水中で再構成したエキセンディン(9-39)を投与することによって得られた血漿濃度プロフィールを示す。
【0109】
図5A及び図5Bの比較から分かるように、緩衝液体製剤(10mM酢酸ナトリウム中にエキセンディン(9-39)と45mg/mlのマンニトールを含み、5.5のpHを有する)は、試験をした全ての濃度で、通常生理食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比較して、投与から最初の4時間にわたり、エキセンディン(9-39)のより高い血漿濃度をもたらした。
【0110】
実施例3:エキセンディン9-39の反復皮下投与は、肥満手術後の低血糖症を有する患者における高インスリン性低血糖症及び神経低血糖症状を軽減する
要約
肥満手術後の低血糖症(PBH)は、徴候的な食後低血糖症の一般的エピソードによって発現される肥満手術の稀だが、重篤な合併症であり、そのための承認された薬物療法はない。インスリン分泌の調節異常を伴うインクレチンホルモン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の食事誘導型分泌の増大の主要な役割が立証され、これによりGLP-1受容体拮抗は魅力的な標的治療手法となった。GLP-1受容体アンタゴニストのエキセンディン(9-39)の単回静脈内(IV)注入又は皮下(SC)注射の使用を評価する試験は、単回用量のエキセンディン(9-39)が、経口グルコース負荷試験(OGTT)中に、PBH患者における食後低血糖症を予防し、β細胞機能を正常化すると共に、神経低血糖症状を軽減することができることを実証した。
【0111】
この複数漸増用量(MAD)試験では、PBHを有する参加者に、最大3日にわたりBIDで皮下投与した2つのエキセンディン(9-39)製剤の効果、耐容性、及び薬物動態プロフィールを評価した。この2部試験のパートAでは、PBHを有する14人の参加者が、ベースラインOGTTに続いて、0.9%通常生理食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)(「Lyo」)を最大3日間BIDで複数漸増用量を受け、投与最終日に反復OGTTを受けた。この試験のパートBでは、5人の参加者が、pH5.5の10mM酢酸ナトリウム中に30mgエキセンディン(9-39)と45mg/mlのマンニトールを含む緩衝液体製剤(「Liq」)による3日間のBID処置を受けた。SCエキセンディン(9-39)の両製剤の反復投与は、良好な耐容性を示し、PBH患者において用量依存的に、高インスリン性低血糖症を改善すると共に、関連症状を軽減した。緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)と同等又はそれより高い効率で、食後代謝及び臨床パラメータを改善し、より高い曝露及び作用持続時間を賦与することも分かった。結論として、緩衝液体エキセンディン(9-39)製剤は、エキセンディン(9-39)の皮下投与のための有望で、好都合な製剤を提供し、より低用量且つ/又は低頻度の投与を達成し得る。
【0112】
背景
PBHは、徴候的な食後低血糖症の一般的エピソードによって発現される肥満手術の稀だが、重篤な合併症であり、そのための承認された薬物療法はない。インスリン分泌の調節異常を伴うインクレチンホルモン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の食事誘導型分泌の増大の主要な役割が立証され、これによりGLP-1受容体拮抗は魅力的且つ標的化された治療手法となった。GLP-1受容体アンタゴニストEx-9-39のIV注入(Salehi et al.,Gastroenterology,2014,146:669-680;Craig et al.,Diabetologia,2017,60:531-540)又はSC注射(国際公開第2016/191395号パンフレットを参照)を評価する試験は、単回用量のエキセンディン(9-39)が、OGTT中に、PBH患者における食後低血糖症を予防し、β細胞機能を正常化すると共に、神経低血糖症状を軽減できることを実証した。本試験は、緩衝液体製剤中で製剤化された皮下投与エキセンディン(9-39)のヒトにおける最初の評価となることを示す。本発明者らは、PBH参加者に最大3日間BIDで投与した、皮下投与エキセンディン(9-39)の2つの製剤(食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)、又は緩衝液体製剤中のエキセンディン(9-39))の複数漸増用量の効果、耐容性、及び動態プロフィールを評価することを目的とするこの研究から得られた中間結果(参加者20人のうちの19人)を示す。
【0113】
方法
試験設計及び手順:
この第2相MAS試験を2つのパート、パートA及びBで実施した。パートAでは、14人の参加者が、ベースラインOGTTに続いて、2.5~32mgの範囲のエキセンディン(9-39)の再構成凍結乾燥製剤(「Lyo」)の最大3日間のBID投与を受け、また投与最終日に反復OGTTを受けた。パートBでは、5人の参加者が、ベースラインOGTTに続いて、10mM酢酸ナトリウム及び45mg/mlのマンニトールを含み、pH5.5を有する緩衝液中で製剤化した30mgBIDのエキセンディン(9-39)(「Liq」)を受け、処置の第3日の反復OGTTを受けた(図6を参照)。両方のパートで、代謝、臨床、及び薬物動態応答を評価し、耐容性及び安全性をモニターした。用量レベル及び頻度の決定は、PK、PD、及び安全性データの中間評価に基づいて行った。低血糖症の症状は、エジンバラ低血糖症状尺度(Edinburgh Hypoglycemia Symptom Scale)(EHSS)(4、5)を使用して、各OGTT中に評価した。血漿グルコース≦50mg/dLで、IVデキストロースを用いた治験責任医師レスキューによりOGTTを停止した。
【0114】
試験参加者:
適格参加者は、年齢18~65歳の男性又は女性で、少なくとも12ヵ月前にRoux-en Y胃バイパス(RYGB)手術を受けており、ウィップルの三徴の病歴を有し、低血糖症(≦55mg/dL)の際に不適切に上昇したインスリン濃度(>3μU/mL)及び患者の報告により最低限毎月1つの症状エピソードを有する。14人の試験参加者の特徴を以下の表5に記載する。
【0115】
【表5】
【0116】
結果
代謝及び臨床応答:
パートA:再構成したエキセンディン(9-39)の凍結乾燥製剤を用いた処置により、全ての用量レベルで低血糖症の存在及び程度を低減した。用量≧18mgを受けた参加者は、IVデキストロースレスキューを必要としなかった。再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)の場合、グルコース最下点、インスリンピーク、及び症状スコアにおいて徐々に増加する改善と共に、用量-応答関係が観察された(図8A~8C及び以下の表6)。3日にわたり平均して約30mgの再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)BIDを受けた上位2つの用量コホートは、グルコース最下点の平均37%増加、ピークインスリン濃度の50%低下、並びに全体的低血糖症状スコアの50%低下、及び神経低血糖症状の50%低下を示した(図7A及び7C並びに以下の表6)。全ての用量が、軽度の頭痛又は吐き気が報告されただけで、良好な耐容性を示し、薬剤関連有害事象(DRAE)は観察されなかった。
【0117】
中間効果、安全性、及び耐容性結果に基づき、30mgBIDの固定用量のエキセンディン(9-39)緩衝液体製剤をパートBについて選択した。
【0118】
パートB:30mgのエキセンディン(9-39)緩衝液体製剤のBID用量を用いた処置により、評価した全参加者において、投与の第3日のOGTT中に食後グルコース最下点が上昇し、IVデキストロースレスキューは必要とする者はなかった。平均して、参加者は、グルコース最下点の49%増加、ピークインスリン濃度の58%減少、並びに全体的低血糖症状スコアの56%低下、及び神経低血糖症状の12%低下を達成した(図7B、7D、8A~8C)。全ての用量が、良好な耐容性を示し、DRAEは一切観察されなかった。
【0119】
薬物動態応答:
パートA:再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)の用量の増加によって、Cmax及び12時間AUC濃度によって示されるように、エキセンディン(9-39)曝露が徐々に増加した(図9A~9B及び表6)。
【0120】
パートB:mg/kg基準で投与された同等用量のエキセンディン(9-39)緩衝液体製剤は、再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比べて、より高いCmax、より高い12時間AUC、及びより遅いTmaxをもたらした。エキセンディン(9-39)緩衝液体製剤は、投与の最終日に、より高いトラフ血漿濃度をもたらし、同等用量の再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)よりも持続的な吸収プロフィールを示した(図9A~9B及び表6)。
【0121】
【表6】
【0122】
結論
難治性PBH患者において、皮下投与エキセンディン(9-39)の反復投与は、OGTT誘発中に下記の結果をもたらした:(1)食後高インスリン性低血糖症の用量依存的改善及び関連症状の実質的な低減;(2)用量≧18mgで、レスキュー療法を必要としない神経低血糖症の予防;並びに(3)薬剤関連の有害事象又は耐容性に対する懸念がないこと。エキセンディン(9-39)緩衝液体製剤、すぐに使える製剤は、徴候的な高インスリン性低血糖症に対して少なくとも同等の防御をもたらし、より長い作用持続時間と共に、より高い薬物動態暴露を賦与し得る。
【0123】
実施例4:単一及び複数漸増用量の皮下投与緩衝エキセンディン(9-39)製剤の薬物動態プロフィール
単一及び複数漸増用量のエキセンディン(9-39)の皮下投与緩衝液体製剤の安全性、耐容性、薬物動態及び薬力学プロフィールを調べる第1相試験を実施した。この試験のために、10mM酢酸ナトリウムと45mg/mlマンニトールを含み、pH5.5を有する液体緩衝剤中30mg/mlの濃度で、エキセンディン(9-39)を製剤化した。健常なボランティアによるこの単一施設試験では、32人の対象に、7.5mg~45mgの範囲の単一漸増用量のエキセンディン(9-39)(24人のボランティア)又はプラセボ(8人のボランティア)のいずれかを皮下投与し(パートA);16人の対象が、3つの漸増用量のうちの1つ(連続した3日間60、75若しくは90mgのエキセンディン(9-39)を1日1回投与)を受けた。
【0124】
パートAの単一漸増用量群では、32人の健常な対象が、以下の通り各々8人の対象から成る4つの連続したコホートに登録された:6人の対象は、7.5、15、30又は45mgの用量でエキセンディン(9-39)を受け、2人の対象は、各コホートでプラセボを受けた。パートBの複数漸増用量群では、16人の健常な対象が、6、6及び4人の対象から成る3つの連続したコホートに登録され、連続した3日間1日1回投与されるエキセンディン(9-39)の60、75若しくは90mgのそれぞれ3つの用量レベルのうちの1つを受けた。

【0125】
以下の表7及び図10Aに示すように、平均全身曝露(Cmax、AUC0-tau及びAUC0-inf)は、ほぼ用量比例的に用量と共に増加した。
【0126】
【表7】
【0127】
図10Bに示すように、30mgBID投与の第3日の投与前トラフ血漿濃度は、治療的であると考えられるエキセンディン(9-39)の血漿濃度に近くなり(>220ng/ml)、日中時間(次の投与時間前のT=12時間)全体を通して比較持続的な血漿濃度を有した。60mgAM用量の投与から60分以内に、目標の予想治療濃度(>220ng/ml)を達成され、日中時間全体を通して、より高いピーク濃度及び持続的治療濃度が観察された。
【0128】
計画第2相試験のためのエキセンディン(9-39)の用量レベル及び投与間隔は、この第1相試験の結果(例えば、表7及び図10A~10Bに示す通り)並びにスタンフォード大学(Stanford University)で実施されたPBH患者における完了MAD試験の結果に基づいて選択した。スタンフォードMAD試験では、難治性PBH患者は、エキセンディン(9-39)の30mgBID投与後の経口グルコース負荷試験中にグルコース最下点及び神経低血糖症状の有意な改善を経験し、食塩水中で再構成した凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比較して、緩衝液体製剤後では食後代謝及び臨床パラメータが改善された。スタンフォードMAD試験では、最適な薬力学効果(食後グルコース最下点>50mg/dl及び少なくとも50%のピークインスリンの減少)が、少なくとも220ng/mlのピーク血漿濃度(Cmax)で達成された。対照的に、本明細書に記載する研究(例えば、この実施例及び実施例3に示す通り)では、緩衝液体製剤は、通常生理食塩水中で製剤化した再構成凍結乾燥エキセンディン(9-39)と比較して、より高い薬物動態及び薬力学的効果を示した。
【0129】
総合すると、表7及び図10A~10Bに示すように、健常なボランティアによるこの第1相試験からのPKデータ、並びに実施例3に記載するように、完了スタンフォードMAD試験からのPK及びPDデータは、30mgBIDの緩衝液体製剤の反復皮下投与が、投与後まで食事を待つ必要なく、食後低血糖症からの防御を賦与するのに十分なエキセンディン(9-39)の血漿濃度をもたらし得ることを示唆している。データはまた、60mgQDなどのより高い用量により賦与される長期且つより高い曝露が、より高い全身曝露が必要な患者及び/又は1日1回のレジメンの利便性を優先する患者に、約16時間にわたる治療血漿濃度をもたらし得ることも示唆している。1日1回の投与レジメンの下では、朝食前に、投与から少なくとも60分の間隔を置くこと、及び夜遅く食べることを回避するのが好ましいであろう。従って、60mgの総1日用量(12時間毎に30mg又は毎朝60mgのいずれかとして皮下投与される)を難治性PBH患者による次の第2相試験のために選択した。
【0130】
上述の発明を説明及び明瞭な理解のための例としてある程度詳細に記載してきたが、当業者には明らかなように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの改変及び変更を実施できることを当業者は理解されよう。本明細書に記載の具体的な実施形態は例として提供されるに過ぎず、何ら限定を意図するものではない。本明細書及び実施例は、あくまで例として考慮され、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0131】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、特許出願又は他の文献は、刊行物、特許、特許出願又は他の文献の各々が、あらゆる目的のために参照により組み込まれると個別に記載されているのと同じ範囲まであらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B