(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】陰圧治療での肉芽形成を促進し浸軟を低減させる複合ドレッシング
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20241111BHJP
A61F 13/02 20240101ALI20241111BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F13/02 A
A61F13/02 310D
A61F13/02 310H
A61F13/02 310M
A61F13/02 390
(21)【出願番号】P 2019567269
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 US2018035945
(87)【国際公開番号】W WO2018226616
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-14
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハーパー,ジョン,アール.
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】安井 寿儀
【審判官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/193257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
ポリマーフィルムを備える第1層であって、前記ポリマーフィルムが、
前記ポリマーフィルムを貫通する複数の流体制限部であって、前記ポリマーフィルムにわたる圧力勾配に応答して
より広く開くように構成されている
スロットを備えた流体制限部を有する、第1層と、
前記第1層に結合された第2層であって、
フォームを含むマニホールドを備え、前記第1層は、前記マニホールドと組織部位との間に挿入さ
れるように構成される
、第2層と、 前記第1層とは反対側で前記第2層に結合された第3層であって、ポリマードレープを備える第3層と、
前記第2層とは反対側で前記第1層に結合され、複数のアパーチャを有する
封止材料を備える第4層と、
を備え、
前記流体制限部の
うちの少なくとも1つ及び前記ポリマーフィルムの一部は、前記複数のアパーチャの少なくとも1つ
を通して露出することを特徴とするドレッシング。
【請求項2】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記ポリマーフィルムは液体不透過性材料を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドレッシングにおいて、前記第4層
の前記封止材料が、疎水性ゲルを備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項4】
請求項3に記載のドレッシングにおいて、前記第3層及び前記第4層が、前記第1層及び前記第2層を封入することを特徴とするドレッシング。
【請求項5】
請求項3に記載のドレッシングにおいて、前記第3層及び前記第4層が、前記第1層及び前記第2層を封入し、前記第4層が、前記組織部位と接触するように適合されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項6】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記第4層が、前記マニホールドと前記組織部位との間に挿入されるように構成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項7】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記流体制限部の少なくとも1つの周囲の前記ポリマーフィルムの一部は、前記複数のアパーチャの少なくとも1つを自由に横切って延在することを特徴とするドレッシング。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のドレッシングにおいて、前記第4層が、300グラム/平方メートル未満の面密度を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項9】
請求項3に記載のドレッシングにおいて、前記疎水性ゲルがシリコーンゲルであることを特徴とするドレッシング。
【請求項10】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記ポリマードレープが、前記第1層及び前記第2層を超えて延在する外縁部と、前記外縁部に配置された接着剤層とを備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項11】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記ポリマーフィルムが疎水性であることを特徴とするドレッシング。
【請求項12】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記ポリマーフィルムが、30グラム/平方メートル未満の面密度を有するポリエチレンフィルムであることを特徴とするドレッシング。
【請求項13】
請求項1に記載のドレッシングにおい
て、前記スロットの各々が、4ミリメートル未満の長さと2ミリメートル未満の幅とを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、
前記流体制限部が、平行な行及び列で前記ポリマーフィルムにわたって分散されており、
前記行が中心において約3ミリメートル間隔を空けて配置され、
前記行の各々における前記流体制限部が、中心において約3ミリメートル間隔を空けて配置されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項15】
請求項14に記載のドレッシングにおいて、隣接する行における前記流体制限部がずれていることを特徴とするドレッシング。
【請求項16】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記第4層が、約5ショアOO~約80ショアOOの硬度を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記第2層が前記第1層に隣接し、前記第3層が、前記第1層とは反対側で前記第2層に隣接していることを特徴とするドレッシング。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記第3層に結合された流体ポートをさらに備え、前記流体ポートが流体伝導体に結合されるように構成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項19】
組織部位を治療するためのシステムにおいて、
請求項1乃至18の何れか一項に記載のドレッシングと、
前記ドレッシングに流体的に結合された陰圧源と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記ドレッシングと前記陰圧源との間に流体的に結合された流体容器をさらに備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月7日に出願された、「TISSUE CONTACT INTERFACE」と題する米国仮特許出願第62/516,540号明細書、2017年6月7日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/516,550号明細書、及び2017年6月7日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/516,566号明細書の出願の利益を主張し、これらの出願の各々は、すべての目的に対して参照により本明細書に援用される。
【0002】
添付の特許請求の範囲に示す本発明は、概して組織治療システムに関し、より詳細には、ただし限定なしに、陰圧を用いた組織治療用のドレッシングと陰圧を用いた組織治療のためにドレッシングを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験及び診療により、組織部位に近接して減圧することにより、組織部位における新たな組織の増殖を高め加速させることができることが示された。この現象の適用は多数あるが、この現象は創傷の処置に特に有利であることが分かった。外傷であるか、手術であるか、又は別の原因であるか、創傷の病因に関わらず、創傷の適切なケアは、転帰に対して重要である。創傷又は他の組織の減圧による治療は、一般に、「陰圧療法」と呼ぶことができるが、たとえば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「真空補助閉鎖」及び「局所陰圧」を含む他の名称によっても知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移動、血流の改善、並びに創傷部位における組織の微小変形を含む、多くの利点を提供することができる。これらの利点により、合わせて、肉芽組織の発生を増大させ、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
陰圧療法の臨床的利益は広く知られているが、治療システム、構成要素及びプロセスの改善は、医療提供者及び患者に利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0005】
添付の特許請求の範囲において、陰圧療法環境において組織を治療する新たな且つ有用なシステム、装置及び方法を示す。当業者が請求項に係る主題を作成し使用することができるように、例示的な実施形態も提供する。
【0006】
たとえば、いくつかの実施形態では、組織を治療するためのドレッシングは、ポリエチレン剥離フィルム、穿孔シリコーンゲル、開窓ポリエチレンフィルム、フォーム及び接着ドレープを含む、ドレッシング層の複合物であり得る。ポリエチレンフィルムの開窓パターンは、シリコーンゲルの少なくとも中心領域の穿孔パターンと位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、中心領域における穿孔の各々は、約2ミリメートルの幅又は直径を有することができ、ポリエチレンフィルムにおける開窓の各々は、約3ミリメートルの長さと約0.5ミリメートル~約1ミリメートルの幅とを有するスロットであり得る。フォームは、網状フォーム等、連続気泡フォームであり得る。フォームはまた、ドレッシングの流体保持容量を低減させるように比較的薄く且つ疎水性とすることも可能であり、それにより、滲出物及び他の流体が外部貯蔵場所に迅速に進むのを促進することができる。フォーム層はまた、ドレッシングの厚さを低減させ且つ可撓性を増大させるように薄くすることも可能であり、それにより、ドレッシングは、陰圧下で創傷床及び他の組織部位に沿うのを可能にすることができる。複合ドレッシングにより、浸軟の可能性を最小限にし、肉芽形成を促進し、優れたマニホールド化を提供することができる。
【0007】
より全体的に、いくつかの実施形態は、積層関係で組み立てられた少なくとも3つの層を有するドレッシングを備えることができる。第1層は、複数の流体制限部を有するポリマーフィルムを備えるか又はそうしたポリマーフィルムから本質的に構成され得る。流体制限部は、不完全なエラストマー弁と述べることができ、それは、完全に閉鎖することができず、陰圧が印加された場合に変形するか又は幅を増大させて、流体に与える制限を低減させることができる。陰圧が停止又は低減した場合、流体制限部は、概してそれらの元の状態に戻るか又は近づき、流体流に対してより高い制限を与える。第2層はマニホールドを備えることができ、第3層は、ポリマードレープを備えるか又はポリマードレープから本質的に構成され得る。第2層とは反対側で第1層に結合することができる第4層は、複数のアパーチャを有するシリコーンゲルを備えるか又はそうしたシリコーンゲルから本質的に構成され得る。いくつかの例では、第4層における複数のアパーチャは、第1層の流体制限部と整列することができ、いくつかの実施形態では、流体制限部と一対一で整列することができる。第1層及び第3層のうちの少なくとも一方は、第1層と組織部位との間に挿入されるように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、マニホールドは、フォーム、より詳細には網状ポリマーフォームを含むことができる。7ミリメートル未満の厚さと少なくとも90%の自由体積とを有する疎水性マニホールドが、多くの治療応用に対して好適であり得る。
【0009】
いくつかの例において、ポリエチレンが、第3層のポリマーフィルムに対して好適な材料であり得る。より具体的な例では、ポリマーフィルムは、40グラム/平方メートル未満の面密度を有するポリエチレンであり得る。第3層のポリマーフィルムが疎水性であることもまた有利であり得る。いくつかの例では、ポリマーフィルムは、90度を超える水接触角を有することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、流体制限部は、複数の直線状スリット又はスロットを備えることができる。たとえば、流体制限部は、約4ミリメートル以下の長さと約2ミリメートル以下の幅とを有する複数の直線状スロットを備えることができる。多くの治療応用に対して、約3ミリメートルの長さ及び約1ミリメートルの幅が好適であり得る。いくつかの実施形態では、流体制限部は、平行な行及び列の格子等、均一なパターンでポリマーフィルムにわたって分散させることができる。いくつかの実施形態では、流体制限部は、平行な行及び列でポリマーフィルムにわたって分散させることができ、行は、互いに約3ミリメートル間隔を空けて配置することができる。行の各々における流体制限部もまた、いくつかの例では、互いに約3ミリメートル間隔を空けて配置することができる。
【0011】
さらに、第3層のいくつかの実施形態は、流体ポートを備えるか又は流体ポートに結合することができ、流体ポートは、流体伝導体に結合されるか又は結合されるように構成することができる。いくつかの例では、陰圧治療を提供するために、ドレッシングに陰圧源を流体的に結合することができる。
【0012】
ドレッシング又は装置のいくつかの実施形態は、封止層と、封止層に隣接した流体制御層と、流体制御層に隣接したマニホールド層と、マニホールドに隣接したカバーとを備えることができる。流体層は、圧力勾配に応答するように構成された複数の不完全な弁を有することができる。封止層は、複数の不完全な弁をドレッシングの下面に露出させるように位置決めされた複数のアパーチャを有することができる。
【0013】
いくつかの実施形態は、第1層と、第1層に結合された第2層と、第1層とは反対側で第2層に結合された第3層と、第2層とは反対側で第1層に結合された第4層とを備えることができる。第1層は、疎水性材料から形成されたフィルムと、フィルムを貫通する複数の流体通路とを備えることができる。流体通路は、フィルムにわたる圧力勾配に応答して拡張するように構成することができる。第2層は、疎水性材料から形成されたマニホールドを備えるか又はそうしたマニホールドから本質的に構成され得る。第3層はポリマードレープを備えることがき、第4層は、300グラム/平方メートル未満の面密度を有する疎水性ゲルから形成することができる。第4層を貫通する複数のアパーチャを、フィルムを貫通する複数の流体通路のうちの少なくともいくつかと流体的に結合することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングは、平坦な表面性状を有するフィルムを備える第1層と、フィルムを貫通する複数の流体制限部とを含むことができる。流体制限部は、フィルムにわたる圧力勾配に応答するように構成することができる。第1層に第2層を結合することができ、第2層は、マニホールドを備えるか又はマニホールドから本質的に構成され得る。第1層とは反対側で第2層に第3層を結合することができ、第3層はポリマードレープを備える。第2層とは反対側で第1層に第4層を結合することができ、第4層は、300グラム/平方メートル未満の面密度と、約5ショアOO~約80ショアOOの硬度とを有するゲルを備える。第4層を貫通する複数のアパーチャが、フィルムを貫通する複数の流体制限部と位置合わせされ得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、陰圧を用いて組織部位を治療するための装置は、1センチメートルに対して0.2ミリメートル未満の高さのばらつきと、90度を超える水接触角とを備えた表面を有するポリエチレンフィルムを備える第1層を含むことができる。第1層を貫通する複数の流体通路が、通常は制限され、第1層にわたる圧力勾配に応答して拡張するように構成され得る。第1層に第2層を結合することができ、第2層は、少なくとも90%の自由体積と7ミリメートル未満の厚さとを有する網状ポリウレタンエーテルフォームを含む。第1層とは反対側で第2層に第3層を結合することができ、第3層はポリマードレープを備える。第2層とは反対側で第1層に第4層を結合することができ、第4層は、300グラム/平方メートル未満の面密度と、約5ショアOO~約80ショアOOの硬度とを有するシリコーンゲルを備える。第4層を貫通する複数のアパーチャが、第1層における複数の流体通路と位置合わせされ得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、組織部位を治療するためのドレッシングは、カバーと、マニホールドと、実質的に平坦な面を有する穿孔ポリマーフィルムと、実質的に平坦な面を有する穿孔シリコーンゲルとを備えることができる。カバー、マニホールド、穿孔ポリマーフィルム及び穿孔シリコーンゲルは、カバー及び穿孔シリコーンゲルがマニホールド及び穿孔ポリマーフィルムを封入した状態で、積層関係で組み立てることができ、穿孔シリコーンゲルは、組織部位と接触するように構成することができる。穿孔ポリマーフィルムの実質的に平坦な面は、いくつかの実施形態では、1センチメートルに対して0.2ミリメートルを超えない高さのばらつきを有することができ、穿孔シリコーンゲルの実質的に平坦な面は、いくつかの実施形態では、1センチメートルに対して0.2ミリメートルを超えない高さのばらつきを有することができる。いくつかの実施形態では、穿孔ポリマーフィルム及び穿孔シリコーンゲルのうちの少なくとも一方は、マニホールドと組織部位との間に挿入されるように構成することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ドレッシングは、マニホールドを備える第1層と、疎水性フィルムを備える第2層であって、疎水性フィルムが、疎水性フィルムにわたる圧力勾配に応答して開放するように構成されている複数のエラストマー弁を有する、第2層と、第1層とは反対側で第2層に結合された第3層と、第2層とは反対側で第1層に結合されたカバーとを含むことができる。第3層は、複数のアパーチャを有する疎水性ゲルを備えるか又はそうした疎水性ゲルから本質的に構成され得る。
【0018】
陰圧源を用いて表面創傷を治療する方法は、記載したようなドレッシングを表面創傷に適用するステップと、ドレッシングを表面創傷に隣接する表皮に封止するステップと、ドレッシングを陰圧源に流体的に結合するステップと、陰圧源からの陰圧をドレッシングに印加するステップとを含むことができる。いくつかの例では、ドレッシングを、切断することも切り落とすこともなく、表面創傷の縁にわたって適用することができる。
【0019】
表面創傷において肉芽形成を促進する方法は、ドレッシングを表面創傷に適用するステップを含むことができ、ドレッシングは、カバーと、マニホールドと、実質的に平坦な面を有する穿孔ポリマーフィルムと、実質的に平坦な面を有する穿孔シリコーンゲルとを備える。表面創傷に隣接する創傷周囲に穿孔シリコーンゲルを封止することができ、穿孔シリコーンゲルの周囲の表皮にカバーを取り付けることができる。ドレッシングに陰圧源を流体的に結合することができ、陰圧源からの陰圧をドレッシングに印加することができる。いくつかの実施形態では、ドレッシングは、少なくとも5日間、いくつかの実施形態では少なくとも7日間、表面創傷の上に残ることができる。いくつかの実施形態では、穿孔シリコーンゲルと表面創傷との間に創傷充填材を配置することができる。たとえば、創傷周囲の内側の表面創傷にフォーム創傷充填材を付与することができる。
【0020】
最新技術と比較した請求項に係る主題の利点としては、(1)肉芽組織の形成の促進(すなわち、より急速な治癒)、(2)ドレッシングを除去するために必要な響き力の低減(すなわち、使いやすさ、ドレッシング交換中の痛みの低減)、(3)ドレッシングを適用するための時間の短縮(すなわち、使いやすさ)及び/又は(4)処置中の創傷周囲領域の浸軟のリスクの低減が挙げられ、それらのうちの任意のもの又はすべてにより、(48時間でのドレッシング交換に対して)7日間ドレッシングを可能にし、治療のコンプライアンスを向上させ、ケアのコストを削減することができる。請求項に係る主題を作成し使用する他の目的、利点及び好ましい形態は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明と併せて添付図面を参照することにより最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本明細書による、組織治療を提供することができる治療システムの実施形態例の機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の治療システムのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す、ドレッシングの例の組立図である。
【
図3】
図3は、
図2のドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができる、1つの層における流体制限部の構成例の概略図である。
【
図4】
図4は、
図2のドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す、別の層におけるアパーチャの構成例の概略図である。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す、別のドレッシング層の別の例の概略図である。
【
図7】
図7は、
図2のドレッシングの層のいくつかの実施形態に関連付けることができる流体制限部の他の構成例を示す。
【
図8】
図8は、
図2のドレッシングの層のいくつかの実施形態に関連付けることができる流体制限部の他の構成例を示す。
【
図9】
図9は、各試験ドレッシング及び対照ドレッシングのドレッシング適用及び除去に続く7日目の最大剥離力測定値(N)のグラフ表現である。
【
図10】
図10は、組織内部成長測定値のグラフ表現である。各試験ドレッシング及び対照ドレッシングに対して厚さ(mm)が測定される。
【
図11】
図11は、各試験ドレッシング及び対照ドレッシングに対する肉芽組織厚さを実証する光学顕微鏡写真図である。
【
図12】
図12は、各試験ドレッシング及び対照ドレッシングに対する定量的形態計測肉芽組織厚さを実証する、
図11のグラフ表現である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態例の以下の説明は、当業者が、添付の特許請求の範囲に示す主題を作成し使用することを可能にする情報を提供するが、当技術分野においてすでに周知のいくつかの詳細は省略している場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定的ではなく例示的なものとして解釈されるべきである。
【0023】
本明細書では、添付図面に示すさまざまな要素間の空間的な関係又はさまざまな要素の空間的な向きに関連して、実施形態例を記載している場合もある。概して、こうした関係又は向きは、処置を受けるために適所にある患者に一致するか又はそうした患者に対する基準系を想定する。しかしながら、当業者であれば認識されるはずであるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、単に説明上の好都合な手段である。
【0024】
図1は、本明細書による、組織部位に対し局所処置溶液の滴下とともに陰圧療法を提供することができる治療システム100の実施形態例の簡易機能ブロック図である。
【0025】
この文脈において「組織部位」という用語は、限定されないが、表面創傷、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱又は靭帯を含む、組織上に又は組織内に位置する創傷、欠損又は他の処置標的を広く指す。「組織部位」という用語はまた、必ずしも創傷及び欠損していないが、代わりに、さらなる組織を追加するか又はその増殖を促進することが望ましい可能性がある領域である、任意の組織の領域を指す場合もある。たとえば、採取し移植することができるさらなる組織を増殖させるために、組織部位に陰圧を印加することができる。本明細書で用いる表面創傷は、表皮、真皮及び/又は皮下層に対する負傷又は損傷等、身体の外面に露出している身体の表面上の創傷である。表面創傷としては、たとえば、潰瘍又は閉鎖切開部を挙げることができる。本明細書で用いる表面創傷は、腹腔内の創傷は含まない。創傷としては、たとえば、慢性、急性、外傷性、亜急性及び離開した創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、圧迫潰瘍又は静脈不全潰瘍等)、弁及びグラフトを挙げることができる。
【0026】
治療システム100は、たとえば、陰圧源102等の陰圧の供給源又は供給部、ドレッシング104、容器106等の流体容器、及びコントローラ108等の調節器又はコントローラを含むことができる。さらに、治療システム100はセンサを含むことができ、センサは、動作パラメータを測定し、動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ108に提供する。たとえば、
図1に示すように、治療システム100は、コントローラ108に結合された圧力センサ110、電気センサ112、またはその両方を含むことができる。
図1の例に示すように、ドレッシング104は、いくつかの実施形態では組織インタフェース114、カバー116又は両方等、1つ又は複数のドレッシング層を備えるか又はそうしたドレッシング層から本質的に構成され得る。
【0027】
治療システム100は生理食塩水等の滴下溶液の供給源も含むことができる。たとえば、溶液源118は、
図1の実施形態例に示すように、ドレッシング104に流体的に結合することができる。溶液源118は、いくつかの実施形態では、陽圧源120等の陽圧源、陰圧源102等の陰圧源又は両方に、流体的に結合することができる。組織部位への滴下溶液(たとえば生理食塩水)の適切な投与量を確実にするために、滴下調節器122等の調節器もまた、溶液源118及びドレッシング104に流体的に結合することができる。たとえば、滴下調節器122はピストンを備えることができ、ピストンは、陰圧間隔中に溶液源から滴下溶液を引き出し、排出間隔中に溶液をドレッシングに滴下するように、陰圧源102によって空気圧式に作動させることができる。さらに又は別法として、コントローラ108は、組織部位への滴下溶液の投与量を制御するために、陰圧源102、陽圧源120又は両方に結合することができる。いくつかの実施形態では、滴下調節器122はまた、
図1の例に示すように、ドレッシング104を通して陰圧源102に流体的に結合することも可能である。
【0028】
治療システム100のいくつかの構成要素は、センサ、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、又は治療をさらに容易にするユーザインタフェース等、他の構成要素内に収容し、又は他の構成要素とともに使用することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、陰圧源102は、溶液源118、コントローラ108及び他の構成要素と結合して治療ユニットにすることができる。
【0029】
概して、治療システム100の構成要素は、直接結合される場合もあれば間接的に結合される場合もある。たとえば、陰圧源102は、容器106に直接結合することができ、容器106を通してドレッシング104に間接的に結合することができる。結合としては、文脈により、流体結合、機械的結合、熱的結合、電気的結合若しくは化学的結合(化学結合等)、又は結合の何らかの組合せも挙げることができる。たとえば、陰圧源102は、コントローラ108に電気的に結合することができる。陰圧源は、組織部位に流体路を提供する1つ又は複数の分配構成要素に、流体的に結合することができる。いくつかの実施形態では、構成要素はまた、物理的に近接し、単一構造体に一体化されており、又は同じ材料片から形成されることによって、結合することも可能である。
【0030】
分配構成要素は、好ましくは着脱可能であり、使い捨て、再使用可能又はリサイクル可能であり得る。ドレッシング104及び容器106が、分配構成要素の実例である。流体伝導体が、分配構成要素の別の例示的な例である。この文脈における「流体伝導体」は、チューブ、パイプ、ホース、導管、又は、2つの端部の間で流体を搬送するように適合された1つ又は複数の内腔若しくは開放経路を備えた他の構造体を含む。通常、チューブは、幾分かの可撓性がある長尺状の円筒状構造体であるが、幾何学的形状及び剛性は変更することができる。さらに、いくつかの流体伝導体を他の構成要素内にはめ込むか又は他の構成要素と他の方法で一体的に結合することができる。分配構成要素はまた、センサ及びデータ通信デバイスを含む他の構成要素の結合及び分離を容易にするインタフェース又は流体ポートも含むか又は備えることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、ドレッシングインタフェースは、ドレッシング104への流体伝導体の結合を容易にすることができる。たとえば、こうしたドレッシングインタフェースは、San Antonio、TexasのKCIから入手可能なSENSAT.R.A.C.(商標)パッドであり得る。
【0031】
陰圧源102等の陰圧供給部は、陰圧での空気の貯蔵部であり得るか、又は、たとえば、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁面吸込みポート、又はマイクロポンプ等、手動又は電動式の装置であり得る。「陰圧」は、一般に、密閉された治療環境の外部の局所環境における周囲圧力等、局所的な周囲圧力を下回る圧力を指す。多くの場合、局所的な周囲圧力はまた、組織部位が位置する場所の大気圧でもあり得る。別法として、圧力は、組織部位における組織に関連する静水圧未満であり得る。別段の指示がない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。陰圧の上昇と言及する場合、それは、一般に絶対圧の低下を指し、一方、陰圧の低下は、一般に絶対圧の上昇を指す。組織部位に印加される陰圧の量及び性質は、治療要件に従って変更することができるが、圧力は、概して、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の一般に低真空(rough vacuum)とも呼ばれる低真空(low vacuum)である。一般的な治療範囲は、-50mmHg(-9.9kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0032】
容器106は、組織部位から引き出される滲出物及び他の流体を管理するために使用することができる、容器、キャニスタ、パウチ又は他の貯蔵構成要素を表す。多くの環境では、流体の収集、貯蔵及び廃棄のために、剛性容器が好ましいか又は望まれる可能性がある。他の環境では、剛性容器貯蔵なしに流体を適切に廃棄することができ、再使用可能な容器が、陰圧療法に関連する廃棄物を低減させコストを削減ことができる。
【0033】
コントローラ108等のコントローラは、陰圧源102等、治療システム100の1つ又は複数の構成要素を動作させるようにプログラムされたマイクロプロセッサ又はコンピュータであり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、コントローラ108はマイクロコントローラとすることができ、マイクロコントローラは、一般に、治療システム100の1つ又は複数の動作パラメータを直接又は間接的に制御するようにプログラムされた、プロセッサコア及びメモリを含む集積回路を備える。動作パラメータは、たとえば、陰圧源102に印加される電力、陰圧源102によって生成される圧力、又は組織インタフェース114に分配される圧力を含むことができる。コントローラ108はまた、好ましくは、フィードバック信号等の1つ又は複数の入力信号を受け取るように構成され、入力信号に基づいて1つ又は複数の動作パラメータを変更するようにプログラムされる。
【0034】
圧力センサ110又は電気センサ112等のセンサは、一般に、当技術分野において、物理現象又は特性を検出又は測定し、概して、検出又は測定される現象又は特性を示す信号を提供するように動作可能な、任意の装置として知られている。たとえば、圧力センサ110及び電気センサ112は、治療システム100の1つ又は複数の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサ110は、空気圧経路における圧力を測定し、測定値を、測定された圧力を示す信号に変換するように構成された、トランスデューサであり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、圧力センサ110は、ピエゾ抵抗ひずみゲージであり得る。電気センサ112は、任意選択的に、いくつかの実施形態では、電圧又は電流等、陰圧源102の動作パラメータを測定することができる。好ましくは、圧力センサ110及び電気センサ112からの信号は、コントローラ108への入力信号として好適であるが、いくつかの実施形態ではいくつかの信号調節が適切であり得る。たとえば、信号は、コントローラ108によって処理することが出来る前に、フィルタリングするか又は増幅させる必要がある場合がある。典型的には、信号は電気信号であるが、光信号等、他の形態で表すことができる。
【0035】
組織インタフェース114は、概して、組織部位と接触するように適合させることができる。組織インタフェース114は、組織部位と部分的に又は完全に接触することができる。たとえば、組織部位が創傷である場合、組織インタフェース114は、創傷を部分的に又は完全に充填することができ、又は創傷の上に配置することができる。組織インタフェース114は、多くの形態をとり、いくつかの実施形態では2つ以上の層を有することができる。組織インタフェース114はまた、実施されている治療のタイプ又は組織部位性質及びサイズ等、種々の要素に応じて、多くのサイズ、形状又は厚さも有することができる。たとえば、組織インタフェース114のサイズ及び形状は、深く且つ不規則な形状の組織部位の輪郭に適合させることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、カバー116は、細菌バリア及び身体的外傷からの保護を提供することができる。カバー116はまた、蒸発損失を低減させ、2つの構成要素、又は治療環境と局所外部環境との間等、2つの環境の間に流体シールを提供することができる材料から、構成することも可能である。カバー116は、たとえば、所与の陰圧源に対して組織部位において陰圧を維持するのに適切なシールを提供することができる、エラストマーフィルム又は膜であり得る。カバー116は、いくつかの応用では、高水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。たとえば、MVTRは、いくつかの実施形態では、24時間あたり少なくとも300g/m2であり得る。いくつかの実施形態例では、カバー116は、水蒸気には透過性であるが液体には不透過性である、ポリウレタンフィルム等のポリマードレープであり得る。こうしたドレープは、通常、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料の場合、透過率は、概して、所望の陰圧を維持することができるのに十分低くなければならない。カバー116は、たとえば、以下の材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。すなわち、親水性ポリウレタン、セルロース誘導体、親水性ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性アクリル樹脂、親水性シリコーンエラストマー、たとえば、14400g/m2/24時間のMVTR(逆カップ技法)と約30ミクロンの厚さとを有する、Wrexham、United KingdomのCoveris Advanced CoatingsのINSPIRE2301材料、薄いコーティングされていないポリマードレープ、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン(PU)、EVAフィルム、コポリエステル、シリコーン、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、Glendale、CaliforniaのAvery Dennison Corporationから入手可能なもの等のポリウレタン(PU)ドレープ、たとえばFranceのArkemaのポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(PEBAX)、INSPIRE2327、又は他の適切な材料である。
【0037】
取付デバイスを使用して、無傷の表皮、ガスケット又は別のカバー等の取付面に、カバー116を取り付けることができる。取付デバイスは、多くの形態をとることができる。たとえば、取付デバイスは、表面創傷等、組織部位の周囲の表皮にカバー116を接着するように構成された、医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、カバー116の一部又はすべてを、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有することができるアクリル接着剤等の接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ漏れを低減させるように、より厚い接着剤、又は接着剤の組合せを付与することができる。取付デバイスの他の実施形態例としては、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0038】
溶液源118はまた、滴下療法のための溶液を提供することができる、容器、キャニスタ、パウチ、バッグ又は他の貯蔵構成要素も表すことができる。溶液の組成は、指示される療法に従って変更することができるが、いくつかの指示に対して好適であり得る溶液の例としては、次亜塩素酸塩系溶液、硝酸銀(0.5%)、硫黄系溶液、ビグアニド、陽イオン溶液及び等張液が挙げられる。
【0039】
密閉された治療環境内等、別の構成要素又は場所において減圧するために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑である可能性がある。しかしながら、陰圧療法及び滴下に適用可能な流体力学の基本原理は、一般に、当業者には周知であり、本明細書では、減圧するプロセスは、たとえば、陰圧を「送達する」、「分配する」又は「発生させる」として例示的に記載するものとする。
【0040】
概して、滲出物及び他の流体は、流体路に沿って圧力の低い方に向かって流れる。したがって、「下流」という用語は、通常、流体路において、相対的に陰圧源により近いか又は陽圧源からより離れることを意味する。逆に、「上流」という用語は、相対的に陰圧源からより離れるか又は陽圧源により近いことを意味する。同様に、こうした基準系における流体「入口」又は「出口」に関していくつかの特徴を記載することが好都合である場合がある。この向きは、概して、本明細書におけるさまざまな特徴及び構成要素を説明する目的で想定されている。しかしながら、流体路は、いくつかの応用では(陰圧源の代わりに陽圧源を用いること等により)反転させることも可能であり、この説明的な慣例は限定的な慣例として解釈されるべきではない。
【0041】
図2は、
図1のドレッシング104の例の組立図であり、組織インタフェース114が2つ以上の層を備えるいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。
図2の例では、組織インタフェース114は、第1層205、第2層210及び第3層215を備える。いくつかの実施形態では、第1層205は、第2層210に隣接して配置することができ、第3層215は、第1層205とは反対側で第2層210に隣接して配置することができる。たとえば、第1層205、第2層210及び第3層215は、第1層205が第2層210と接触し、第2層210が第1層205及び第3層215と接触するように、積層することができる。いくつかの実施形態では、第1層205、第2層210及び第3層215のうちの1つ又は複数はまた、隣接する層に接合することも可能である。
【0042】
第1層205は、圧力下で組織インタフェース114にわたり流体を収集するか又は分配する手段を提供する、マニホールド又はマニホールド層を備えるか又はマニホールド又はマニホールド層から本質的に構成され得る。たとえば、第1層205は、陰圧源から陰圧を受け取り、組織インタフェース114にわたって複数のアパーチャを通して陰圧を分配するように適合させることができ、これには、組織部位から流体を収集し、陰圧源に向かって流体を引き込む効果があり得る。いくつかの実施形態では、組織インタフェース114にわたる滴下溶液源等からの流体の送達を容易にするために、流体路を反転させることができ、又は第2流体路を設けることができる。
【0043】
いくつかの例示的な実施形態では、第1層205は複数の経路を備えることができ、それらを相互接続して、流体の分配又は収集を促進することができる。いくつかの実施形態では、第1層205は、相互接続された流体経路を有する多孔質材料を含むか又はそうした多孔質材料から本質的に構成され得る。たとえば、連続気泡フォーム、網状フォーム、多孔質組織の集合体、及びガーゼ若しくはフェルトマット等の他の多孔質材料は、概して、相互接続された流体流路を形成するように適合された、細孔、縁及び/又は壁を含むことができる。液体、ゲル及び他のフォームもまた、アパーチャ及び流体経路を含むか又は含むように硬化させることができる。いくつかの実施形態では、第1層205は、さらに又は別法として、相互接続された流体経路を形成する突出部を備えることができる。たとえば、第1層205は、相互接続された流体経路を画定する表面突出部を提供するように成形することができる。第1層205の表面のうちの任意のもの又はすべてが、不均一な、粗い又はぎざぎざした輪郭を有することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1層205は、指示される療法の必要に従って変更することができる細孔径及び自由体積を有する網状フォームを含むか又はそうした網状フォームから本質的に構成され得る。たとえば、少なくとも90%の自由体積を有する網状フォームは、多くの治療の応用に対して好適である可能性があり、400~600ミクロン(40~50細孔/インチ)の範囲の平均細孔径を有するフォームが、いくつかのタイプの療法に対して特に好適である可能性がある。第1層205の引張強度もまた、指示される療法の必要に従って変更することができる。たとえば、フォームの引張強度は、局所治療溶液の滴下のために増大させることができる。第1層205の25%圧縮荷重たわみは、少なくとも0.35ポンド/平方インチとすることができ、65%圧縮荷重たわみは、少なくとも0.43ポンド/平方インチとすることができる。いくつかの実施形態では、第1層205の引張強度は、少なくとも10ポンド/平方インチであり得る。第1層205は、少なくとも2.5ポンド/インチの引裂強度を有することができる。いくつかの実施形態では、第1層205は、ポリエステル又はポリエーテル等のポリオール、トルエンジイソシアネート等のイソシアネート、並びにアミン及び錫化合物等の重合調整剤から構成されたフォームであり得る。1つの非限定的な例では、第1層205は、ともにSan Antonio、TexasのKCIから入手可能なGRANUFOAM(商標)ドレッシング又はV.A.C.VERAFLO(商標)ドレッシング等の網状ポリウレタンエーテルフォームであり得る。
【0045】
第1層205の厚さもまた、指示される療法の必要に従って変更することができる。たとえば、他の層に対する応力を緩和するように、且つ周囲組織への張力を低減させるように、第1層205の厚さを低減させることができる。第1層205の厚さはまた、第1層205の快適さにも影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、約5ミリメートル~10ミリメートルの範囲の厚さが好適であり得る。
【0046】
第2層210は、流体流を制御又は管理する手段を備えるか又はそうした手段から本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、第2層は、液体不透過性、エラストマー材料を含むか又はそうした材料から本質的に構成され得る。たとえば、第2層210は、ポリマーフィルムを含むか又はポリマーフィルムから本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、第2層210はまた、平滑又は艶消しの表面性状も有することができる。いくつかの応用に対して、SPI(米国プラスチック産業協会)標準規格による等級B3より優れた又はそれに等しい艶出し又は光沢仕上げが特に有利であり得る。いくつかの実施形態では、表面高さのばらつきを許容可能な許容差に制限することができる。たとえば、第2層の表面は、実質的に平坦な面を有することができ、高さのばらつきが1センチメートルに対して0.2ミリメートルに制限される。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2層210は疎水性であり得る。第2層210の疎水性は、変更することができ、いくつかの実施形態では少なくとも90度の水接触角を有することができる。いくつかの実施形態では、第2層210は、150度以下の水接触角を有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第2層210の接触角は、少なくとも90度~約120度の範囲、又は、少なくとも120度~150度の範囲であり得る。水接触角は、任意の標準装置を使用して測定することができる。接触角を視覚的に近似するために手動のゴニオメータを使用することができるが、接触角測定器具は、多くの場合、特に、水平ステージ、シリンジ等の液体滴下器、カメラ、及び接触角をより正確に且つ精密に計算するように設計されたソフトウェアを必要とする一体化システムを含む可能性がある。こうした一体化システムの非限定的な例としては、すべてPortsmouth、VAのFirst Ten Angstroms、Inc.,から市販されているFTÅ125、FTÅ200、FTÅ2000及びFTÅ4000システムと、すべてHamburg、GermanyのKruss GmbHから市販されているDTA25、DTA30及びDTA100システムとを挙げることができる。別段の指定がない限り、本明細書における水接触角は、20~25℃及び20~50%の相対湿度の空気中で5cm以下の高さから追加された静滴に対して、水平サンプル面上の脱イオン・蒸留水を使用して測定される。本明細書で報告する接触角は、最高測定値及び最低測定値をともに捨てた、5~9の測定値の平均を表す。第2層210の疎水性は、液体からコーティングされるか又はプラズマコーティングされるものとして、シリコーン及びフルオロカーボン等の他の材料の疎水性コーティングによってさらに強化することができる。
【0048】
第2層210はまた、第1層205を含む他の層に溶接するのにも好適であり得る。たとえば、第2層210は、熱、高周波(RF)溶接、又は超音波溶接等、熱を発生させる他の方法を使用して、ポリウレタンフォームに溶接されるように適合させることができる。ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル及びアクリル酸塩等、より極性の高い材料に対して、RF溶接は特に好適であり得る。ポリエチレン等のより極性の低いフィルム材料のRF溶接を容易にするために、犠牲極性インタフェースを使用することができる。
【0049】
第2層210の面密度は、指示される療法又は応用に従って変更することができる。いくつかの実施形態では、40グラム/平方メートル未満の面密度が好適である可能性があり、いくつかの応用に対して、約20~30グラム/平方メートルの面密度が特に有利であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、たとえば、第2層210は、ポリエチレンフィルム等の疎水性ポリマーを含むか又はそうした疎水性ポリマーから構成され得る。ポリエチレンの単純且つ不活性構造は、生体組織及び流体とあるとしてもごくわずかに相互作用する面を提供し、液体の自由な流れと低い付着力とを促進することができる表面を提供することができ、これは、多くの応用に対して特に有利であり得る。ポリエチレンフィルムに貼り合わせるのに好適なより極性の高いフィルムとしては、ポリアミド、コポリエステル、イオノマー及びアクリル樹脂が挙げられる。ポリエチレンと極性フィルムとの接合に役立つために、エチレンビニルアセテート又は変性ポリウレタン等の層を使用することができる。エチルメチルアクリレート(EMA)フィルムもまた、いくつかの構成に対して好適な疎水性及び溶接特性を有することができる。
【0051】
図2の例に示すように、第2層210は、1つ又は複数の流体制限部220を有することができ、流体制限部220は、第2層210にわたって均一に又はランダムに分散させることができる。流体制限部220は、双方向であり且つ感圧式であり得る。たとえば、流体制限部220は、概して、液体流を実質的に低減させるように通常は歪んでいない弾性通路を備えるか又はそうした弾性通路から本質的に構成することができ、圧力勾配に応答して拡張することができる。いくつかの実施形態では、流体制限部220は、第2層210に穿孔を備え又は穿孔から本質的に構成され得る。穿孔は、第2層210から材料を除去することによって形成することができる。たとえば、穿孔は、第2層210を切り込むことによって形成することができ、そうした切込みにより、いくつかの実施形態では、穿孔の縁も変形させることができる。穿孔にわたって圧力勾配がないとき、通路は、シール又は流体制限を形成するのに十分小さくすることができ、それにより、液体流を実質的に低減させるか又は防止することができる。さらに又は別法として、流体制限部220のうちの1つ又は複数はエラストマー弁とすることができ、それは、歪んでいないときは液体流を実質的に防止するために通常閉鎖されており、圧力勾配に応じて開放することができる。いくつかの応用に対して、第2層210における開窓が、好適な弁であり得る。開窓もまた、第2層210から材料を除去することによって形成することができるが、除去される材料の量と開窓の結果としての寸法とは、穿孔より桁が小さいものとすることができ、縁を変形させる可能性はない。
【0052】
たとえば、流体制限部220のいくつかの実施形態は、第2層210に1つ又は複数のスロット又はスロットの組合せを備え、又はそうしたものから本質的に構成され得る。いくつかの例では、流体制限部220は、4ミリメートル未満の長さと1ミリメートル未満の幅とを有する直線状スロットを備え又はそうした直線状スロットから構成され得る。いくつかの実施形態では、長さは、少なくとも2ミリメートルとすることができ、幅は、少なくとも0.4ミリメートルとすることができる。約3ミリメートルの長さ及び約0.8ミリメートルの幅は、多くの応用に対して特に好適である可能性があり、約0.1ミリメートルの許容差も許容可能であり得る。約0.1ミリメートルの許容差もまた許容可能であり得る。こうした寸法及び許容差は、たとえば、レーザカッタを用いて達成することができる。こうした構成のスロットは、通常は閉鎖した又は休止状態で液体流を実質的に低減させる不完全な弁として機能することができる。たとえば、こうしたスロットは、完全に閉鎖又は封止されることなく流体制限部を形成することができる。スロットは、圧力勾配に応答してより広く拡張又は開放して、液体流の増大を可能にすることができる。
【0053】
第3層215は、組織部位との流体シールを提供するのに好適な軟質の柔軟な材料を含むか又はそうした材料から構成される封止層とすることができ、実質的に平坦な面を有することができる。たとえば、第3層215は、限定なしに、シリコーンゲル、軟質シリコーン、親水コロイド、ヒドロゲル、ポリウレタンゲル、ポリオレフィンゲル、水素化スチレンコポリマーゲル、発泡ゲル、接着剤、ポリウレタン、ポリオレフィン又は水素化スチレンコポリマーでコーティングされた、ポリウレタン及びポリオレフィン等の軟質独立気泡フォームを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3層215は、約200ミクロン(μm)~約1000ミクロン(μm)の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、第3層215は、約5ショアOO~約80ショアOOの硬度を有することができる。さらに、第3層215は、疎水性又は親水性材料から構成することができる。たとえば、第3層215は、疎水性材料又は親水性材料から構成することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、第3層215は、疎水性のコーティングされた材料であり得る。たとえば、第3層215は、たとえば、織布、不織布、成形又は押出メッシュ等の間隔の空いた材料を疎水性材料でコーティングすることによって形成することができる。コーティングのための疎水性材料は、たとえば、軟質シリコーンであり得る。
【0055】
第3層215は、内側部分230を包囲するか又はその周囲の周縁部225と、周縁部225及び内側部分230を通して配置されたアパーチャ235とを有することができる。内側部分230は、幾つかの例では、第1層205の表面領域に対応することができる。第3層215は、角部240及び縁部245も有することができる。角部240及び縁部245は、周縁部225の一部であり得る。第3層215は、内側部分230と周縁部225との間に配置された、内側部分230の周囲の内側境界部250を有することができる。
図2の例に示すように、内側境界部250には、実質的にアパーチャ235がないものとすることができる。いくつかの例では、
図2に示すように、内側部分230は、対称であり、第3層215において中心に配置することができる。
【0056】
アパーチャ235は、たとえば、切断により、若しくは局所RF若しくは超音波エネルギーの印加により、又は、開口部を形成するための他の好適な技法により、形成することができる。アパーチャ235は、均一分布パターンを有することができ、又は第3層215の上でランダムに分散させることができる。第3層215におけるアパーチャ235は、たとえば、円形、正方形、星形、卵形、多角形、スリット、複雑な曲線、直線形状、三角形を含む、多くの形状を有することができ、又はこうした形状の何らかの組合せを有することができる。
【0057】
アパーチャ235の各々は、一様の又は同様の幾何学的特性を有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、アパーチャ235の各々は、実質的に同じ直径を有する円形アパーチャであり得る。いくつかの実施形態では、アパーチャ235の各々の直径は、約1ミリメートル~約50ミリメートルであり得る。他の実施形態では、アパーチャ235の各々の直径は、約1ミリメートル~約20ミリメートルであり得る。
【0058】
他の実施形態では、アパーチャ235の幾何学的特性は変更することができる。たとえば、
図2に示すように、第3層215におけるアパーチャ235の位置に応じて、アパーチャ235の直径を変更することができる。いくつかの実施形態では、第3層215の周縁部225におけるアパーチャ235の直径は、第3層215の内側部分230におけるアパーチャ235の直径より大きくすることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、周縁部225に配置されたアパーチャ235は、約9.8ミリメートル~約10.2ミリメートルの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、角部240に配置されたアパーチャ235は、約7.75ミリメートル~約8.75ミリメートルの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、内側部分230に配置されたアパーチャ235は、約1.8ミリメートル~約2.2ミリメートルの直径を有することができる。
【0059】
第3層215の周縁部225におけるアパーチャ235のうちの少なくとも1つは、周縁部225の縁部245に位置決めすることができ、縁部245と横方向に流体連通している、縁部245において開放した又は露出された内部切取部を有することができる。横方向は、縁部245に向かう、第3層215と同じ平面における方向を指すものとする。
図2の例に示すように、周縁部225におけるアパーチャ235は、縁部245に近接して又は縁部245に、縁部245と横方向に流体連通して位置決めすることができる。縁部245に近接して又は縁部245に位置決めされるアパーチャ235は、
図2の例に示すように、周縁部225の周囲に実質的に等距離に間隔を空けて配置することができる。別法として、縁部245に近接する又は縁部245におけるアパーチャ235の間隔は、不規則であり得る。
【0060】
図2の例において、ドレッシング104は、接着剤255等の取付デバイスをさらに含むことができる。接着剤255は、たとえば、カバー116の周縁部、一部又はカバー116全体に延在する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、接着剤255は、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有するアクリル接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ漏れを低減させるように、より厚い接着剤、又は接着剤の組合せを付与することができる。接着剤255は、周縁部225と実質的に同じ形状を有する層であり得る。いくつかの実施形態では、接着剤255のこうした層は、連続的である場合もあれば不連続である場合もある。接着剤255における不連続性は、接着剤136におけるアパーチャ又は孔(図示せず)によって提供することができる。接着剤255におけるアパーチャ又は孔は、接着剤255の付与の後に、又は、たとえばカバー116の一方の側等、キャリア層の上にいくつかのパターンで接着剤255をコーティングすることにより、形成することができる。接着剤255におけるアパーチャ又は孔は、いくつかの実施形態例では、ドレッシング104のMVTRを向上させるようなサイズとすることも可能である。
【0061】
図2の例に示すように、いくつかの実施形態では、使用の前に接着剤255を保護するために、リリースライナ260を第3層215に取り付けるか又は第3層215に隣接して位置決めすることができる。リリースライナ260はまた、たとえば、ドレッシング104の展開に役立つスチフネスも提供することができる。リリースライナ260は、たとえば、工程紙、フィルム又はポリエチレンであり得る。さらに、いくつかの実施形態では、リリースライナ260は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル材料、又は同様の極性半結晶性ポリマーであり得る。リリースライナ260に対する極性半結晶ポリマーの使用により、ドレッシング104のしわ又は他の変形を実質的に排除することができる。たとえば、極性半結晶ポリマーは、高配向性であり、ドレッシング104の構成要素と接触したとき、又は温度若しくは環境の変動又は滅菌を受けたときに発生する可能性がある軟化、膨張又は他の変形に耐性があり得る。いくつかの実施形態では、リリースライナ260は、第3層215等の隣接する層の上に刻み込むことができる表面性状を有することができる。さらに、リリースライナ260の、第3層215と接触するように構成される側に、剥離剤を配置することができる。たとえば、剥離剤は、シリコーンコーティングとすることができ、手で、ドレッシング104に損傷を与えることもドレッシング104を変形させることもなく、リリースライナ260の除去を容易にするのに好適な剥離因子を有することができる。いくつかの実施形態では、剥離剤は、たとえば、フルオロカーボン又はフルオロシリコーンであり得る。他の実施形態では、剥離ライナ260は、コーティングされず、又は他の方法で剥離剤なしに使用することができる。
【0062】
図2はまた、流体伝導体265及びドレッシングインタフェース270の一例も示す。
図2の例に示すように、流体伝導体265は、一端においてドレッシングインタフェース270に流体的に結合することができる可撓性チューブであり得る。ドレッシングインタフェース270は、
図2の例に示すように、流体伝導体265と組織インタフェース114との間に流体路を提供するようにカバー116のアパーチャ275の上に配置することができる、エルボコネクタであり得る。
【0063】
図3は、第2層210の例の概略図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。
図3の例に示すように、流体制限部220は、各々、約3ミリメートルの長さを有する1つ又は複数の直線状スロットから本質的に構成され得る。
図3は、流体制限部220の均一な分散パターンの例をさらに示す。
図3において、流体制限部220は、第2層210と実質的に同一の広がりを有し、平行な行及び列の格子で第2層210にわたって分散され、そこでは、スロットはまた互いに対して相互に平行である。いくつかの実施形態では、
図3の例に示すように、行は、中心において約3ミリメートル間隔を空けて配置することができ、行の各々における流体制限部220は、中心において約3ミリメートル間隔を空けて配置することができる。隣接する行における流体制限部220は、整列する場合もあればずれている場合もある。たとえば、
図3に示すように隣接する行をずらすことができ、その結果、流体制限部220は、1つおきの行で整列し、約6ミリメートル間隔が空けられる。流体制限部220の間隔は、いくつかの実施形態では、治療要件に従って流体制限部220の密度を増大させるように変更することができる。
【0064】
図4は、アパーチャ235の構成例の概略図であり、第3層215のいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。いくつかの実施形態では、
図4に示すアパーチャ235は、内側部分230にのみ関連付けることができる。
図4の例では、アパーチャ235は、概して円形であり、約2ミリメートルの直径を有する。
図4はまた、内側部分230におけるアパーチャ235の均一な分散パターンの例も示す。
図4において、アパーチャ235は、平行な行及び列の格子で内側部分230にわたって分散されている。
図4の例に示すように、各行及び列内で、アパーチャ235は、互いから等距離であり得る。
図4は、多くの応用に対して特に好適であり得る1つの構成例を示し、そこでは、アパーチャ235は、各行及び列に沿って約6ミリメートル離れて間隔が開けられ、3ミリメートルずれている。
【0065】
図5は、
図3の第2層210の上に重ね合わされた
図4の例としての第3層215の概略図であり、組織インタフェース114のいくつかの実施形態例に関連付けることができるさらなる詳細を示す。たとえば、
図5に示すように、幾つかの実施形態では、流体制限部220は、アパーチャ235と整列し、アパーチャ235にオーバーラップし、アパーチャ235と位置合わせされ、又は他の方法でアパーチャ235に流体結合することができる。いくつかの実施形態では、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、内側部分230においてのみアパーチャ235と位置合わせするか、又はアパーチャ235と部分的にのみ位置合わせすることができる。
図5の例における流体制限部220は、概して、流体制限部220の各々がアパーチャ235のうちの1つのみと位置合わせされるように構成される。他の例では、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの2つ以上と位置合わせすることができる。たとえば、流体制限部220のうちの任意の1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの2つ以上にわたって延在する穿孔又は開窓であり得る。さらに又は別法として、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの任意のものと位置合わせされない場合もある。
【0066】
図5の例に示すように、アパーチャ235は、第2層210、流体制限部220又は両方の一部を、第3層215を通して露出させるようなサイズであり得る。いくつかの実施形態では、アパーチャ235のそれぞれは、流体制限部220のうちの2つ未満を露出させるようなサイズとすることができる。いくつかの例では、流体制限部220の各々の長さは、実質的に、アパーチャ235の各々の直径以下とすることができる。いくつかの実施形態では、流体制限部220の平均寸法は、アパーチャ235の平均寸法と実質的に同様である。たとえば、アパーチャ235は、いくつかの実施形態では楕円形とすることができ、流体制限部220の各々の長さは、長軸又は短軸と実質的に等しくすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、流体制限部220の寸法は、アパーチャ235の寸法を超えることができ、アパーチャ235のサイズは、ドレッシング104の下面に露出された流体制限部220の有効サイズを制限することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ドレッシング104の構成要素のうちの1つ又は複数に対して、抗菌剤を用いてさらに処理することができる。たとえば、第1層205は、抗菌剤でコーティングされた、フォーム、メッシュ又は不織布であり得る。いくつかの実施形態では、第1層は、抗菌剤でコーティングされた繊維等、抗菌要素を備えることができる。さらに又は別法として、第2層210のいくつかの実施形態は、抗菌剤でコーティングされ又は抗菌剤が混合されたポリマーであり得る。他の例では、流体伝導体265は、さらに又は別法として、1つ又は複数の抗菌剤を用いて処理することができる。好適な抗菌剤としては、たとえば、金属銀、PHMB、ヨウ素又はその錯体、及びポビドンヨード、銅金属化合物、クロルヘキシジン又はこれらの物質の何らかの組合せ等の混合物を挙げることができる。
【0068】
ドレッシング104の個々の構成要素は、たとえば、溶剤接着剤若しくは非溶剤接着剤で、又は熱溶接で、流体管理に悪影響を与えることなく、互いに接合し又は他の方法で固定することができる。さらに、第2層210又は第1層205は、たとえば、溶接又は接着剤による等、任意の好適な方法で、第3層215の境界部250に結合することができる。
【0069】
カバー116、第1層205、第2層210、第3層215又はさまざまな組合せは、適用前に又はインサイチュで組み立てることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、カバー116は第1層205に貼り合わせることができ、第2層210は、カバー116の反対側で第1層205に貼り合わせることができる。いくつかの実施形態では、第3層215もまた、第1層205とは反対側で第2層210に結合することができる。いくつかの実施形態では、組織インタフェース114の1つ又は複数の層は同一の広がりを有することができる。たとえば、
図2の実施形態に示すように、第1層205は、第2層210と同一の広がりを有することができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング104は、単一の複合ドレッシングとして提供することができる。たとえば、第1層205及び第2層210を封入するように、第3層215をカバー116に結合することができ、第3層215は組織部位に面するように構成される。
【0070】
使用時、リリースライナ260(含まれる場合)を除去して第3層215を露出させることができ、第3層215は、組織部位、特に表面組織部位及び隣接する表皮内に、それにわたり、その上に又は他の方法でそれに近接して配置することができる。第3層215及び第2層210は、第1層205と組織部位との間に挿入することができ、それにより、第1層205との不都合な相互作用を実質的に低減させるか又はなくすことができる。たとえば、第1層205との直接的な接触を防止するために、表面創傷(創傷の縁を含む)と無傷の表皮との上に第3層215を配置することができる。表面創傷の治療又は表面創傷上のドレッシング104の配置は、ドレッシング104を身体の表面にすぐ隣接して配置し、又は、身体の表面の少なくとも一部の上に広げることを含む。表面創傷の治療は、ドレッシングを腹腔内に配置すること等、ドレッシング104を体内に完全に又は身体の表面の下に完全に配置することは含まない。いくつかの応用では、第3層215の内側部分230は、組織部位に隣接して、近接して、又は組織部位を覆って位置決めすることができる。いくつかの応用では、第2層210、流体制限部220又は両方の少なくとも何れかの部分は、第3層215を通して組織部位に露出させることができる。第3層215の周縁部225は、組織部位の周囲の又は組織部位を包囲する組織に隣接して又は近接して位置決めすることができる。第3層215は、ドレッシング104を適所に保持するために十分粘着性であり得る一方で、組織部位に対する外傷なしに、ドレッシング104が除去され又は再配置されるのも可能にする。
【0071】
リリースライナ260を除去することによって、接着剤255も露出させることができ、取付面にカバー116を取り付けることができる。たとえば、カバーは、第1層205及び第2層210の周囲で、組織部位の周縁の表皮に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、接着剤255は、第3層215の少なくとも周縁部225において、アパーチャ235を通して取付面と流体連通することができる。接着剤255はまた、縁部245において露出されたアパーチャ235を通して縁部245と流体連通することも可能である。
【0072】
ドレッシング104が所望の位置になると、接着剤255をアパーチャ235に押し通して、ドレッシング104を取付面に接着することができる。縁部245におけるアパーチャ235により、縁部159の取付面への付着を促進するために、接着剤255は縁部245の周囲を流れることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、第3層215におけるアパーチャ又は孔は、アパーチャ235と流体連通する接着剤255の量を制御するようなサイズとすることができる。角部240の所与の幾何学的形状に対して、アパーチャ235の相対的なサイズは、露出した、且つ角部240においてアパーチャ235を通して連通する接着剤255の表面積を最大化するように構成することができる。たとえば、
図2に示すように、縁部245は、実質的に直角すなわち約90度で交差して、角部240を画定することができる。いくつかの実施形態では、角部240は、約10ミリメートルの半径を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、約7.75ミリメートル~約8.75ミリメートルの直径を有するアパーチャ235のうちの3つを、角部240において三角形構成で位置決めして、接着剤255に対する露出した表面積を最大化することができる。他の実施形態では、角部240の選択された幾何学的形状に応じて、接着剤255の露出した表面積を最大化するように、角部240におけるアパーチャ235のサイズ及び数を必要に応じて調整することができる。さらに、角部240におけるアパーチャ235は、第3層215内に完全に収容することができ、角部240の外側への横方向の流体連通を実質的に妨げる。角部240においてアパーチャ235が第3層215内に完全に収容されることにより、角部240の外側の接着剤255の流体連通を実質的に妨げることができ、組織部位における展開中のドレッシング104の取扱いを改善することができる。さらに、角部240の外側に実質的に接着剤136がないことにより、快適さを向上させるように角部240の可撓性を増大させることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、接着剤255の接着強度は、ドレッシング104の異なる場所で変更することができる。たとえば、接着剤255は、アパーチャ235が相対的に大きい第3層215に隣接する場所では、相対的に低い接着強度を有することができ、アパーチャ235が相対的に小さい場所では、相対的に高い接着強度を有することができる。相対的に大きいアパーチャ235と組み合わせて相対的に低い接着強度を有する接着剤255は、相対的に小さいアパーチャ235を有する場所における相対的に高い接着強度を有する接着剤255と匹敵する接着を提供することができる。
【0075】
組織インタフェース114、カバー116又は両方の幾何学的形状及び寸法は、特定の応用又は解剖学的構造に適合するように変更することができる。たとえば、組織インタフェース114及びカバー116の幾何学的形状又は寸法は、組織部位における且つ組織部位の周囲の、肘又は踵等、封止が困難な解剖学的構造に対して有効且つ確実なシールを提供するように適合させることができる。さらに又は別法として、組織部位における上皮細胞の移動及び増殖を促進し、肉芽組織の内部成長の可能性を低減させるように、第3層215に対する表面積を増大させるように寸法を変更することができる。
【0076】
さらに、ドレッシング104は、再適用又は再配置により、ドレッシング104及び組織部位における折目又は他の不連続性によってもたらされる可能性がある漏れを低減させるか又はなくすのを可能にすることができる。漏れを修正することができることにより、いくつかの実施形態では、治療の信頼性を向上させ、電力消費量を低減させることができる。
【0077】
したがって、
図2の例におけるドレッシング104は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する密閉された治療環境を提供することができ、陰圧源102は、密閉された治療環境において減圧することができる。第3層215は、組織部位において又はその周囲において、肘又は踵等、封止が困難な解剖学的表面に対して有効且つ確実なシールを提供することができる。さらに、ドレッシング104は、たとえば、再適用又は再配置により、ドレッシング104の折目及び他の不連続性によってもたらされる空気漏れを修正するのを可能にすることができる。漏れを修正することができることにより、いくつかの実施形態では、治療の効力を増大させ、電力消費量を低減させることができる。
【0078】
まだ構成されていない場合、ドレッシングインタフェース270は、アパーチャ275の上に配置し、カバー116に取り付ける。流体伝導体265は、ドレッシングインタフェース270に且つ陰圧源102に流体的に結合することができる。
【0079】
組織インタフェース114を通して印加される陰圧により、第2層210における流体制限部220にわたって負の差圧をもたらすことができ、それにより、流体制限部220をそれらの静止状態から開放又は拡張することができる。たとえば、流体制限部220が第2層210を通る実質的に閉鎖された開窓を備えることができるいくつかの実施形態では、開窓にわたる圧力勾配により、ダックビル弁の動作と同様に、第2層210の隣接材料をひずませ、開窓の寸法を増大させて、そこを通る液体の移動を可能にすることができる。流体制限部220を開放することにより、流体制限部220を通る第1層205及び容器106内への滲出物及び他の液体の移動を可能にすることができる。圧力の変化によってまた、第1層205を拡張及び収縮させることも可能であり、内側境界部250は、刺激から表皮を保護することができる。第2層210及び第3層215はまた、第1層205への組織の露出を実質的に低減させるか又は防止することも可能であり、それにより、第1層205内への組織の成長を阻止することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1層205は、ドレッシング104における液体の保持又は貯蔵を最小限にするために疎水性であり得る。他の実施形態では、第1層205は親水性であり得る。第1層205が親水性であり得る例では、第1層205はまた、組織部位に陰圧を分配し続けている間、組織部位から流体を吸い取ることも可能である。第1層205のウィッキング特性は、たとえば、毛細管流又は他のウィッキング機構により、組織部位から流体を引き離すことができる。親水性の第1層205の例は、San Antonio、TexasのKCIから入手可能なV.A.C.WHITEFOAM(商標)ドレッシング等のポリビニルアルコール、連続気泡フォームである。他の親水性フォームとしては、ポリエーテルから作製されたものを挙げることができる。親水性の特徴を示すことができる他のフォームとしては、親水性を提供するように処理され又はコーティングされた疎水性フォームが挙げられる。
【0081】
陰圧源102が除去されるか又はオフにされると、流体制限部220にわたる差圧は消失することができ、それにより、流体制限部220は、それらの静止状態に移動し、滲出物又は他の液体が第2層210を通って組織部位まで戻るのを防止するか又はその戻り速度を低減させることができる。
【0082】
いくつかの応用では、組織部位と第3層215との間に充填材も配置することができる。たとえば、組織部位が表面創傷である場合、創傷周囲の内側に創傷充填材を適用することができ、創傷周囲及び創傷充填材の上に第3層215を配置することができる。幾つかの実施形態では、充填材は、連続気泡フォーム等のマニホールドであり得る。いくつかの実施形態では、充填材は、第1層205と同じ材料を含むか又は同じ材料から本質的に構成され得る。
【0083】
さらに又は別法として、ドレッシング104に滴下溶液又は他の流体を分配することができ、それにより、組織インタフェース114内の圧力を上昇させることができる。組織インタフェース114内の圧力の上昇により、第2層210における流体制限部220にわたる正の差圧をもたらすことができ、それにより、流体制限部220をそれらの静止状態から開放又は拡張し、滴下溶液又は他の流体が組織部位に分配されるのを可能にすることができる。
【0084】
図6は、第3層215の別の例の概略図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。
図6の例に示すように、第3層215は、内側部分230におけるアパーチャ235の代わりに又はそれに加えて、弁605等、1つ又は複数の流体制限部を有することができる。さらに、弁605は、第2層210における流体制限部220に加えて又はその代わりに、第3層215に含めることができる。第3層215が弁605のうちの1つ又は複数を含むいくつかの実施形態では、第2層210を省略することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、組織インタフェース114は、
図6の第1層205及び第3層215から本質的に構成することができ、弁605は内側部分230に配置される。
【0085】
図7及び
図8は、弁605の他の構成例を示し、そこでは、弁605は、各々、交差スリット又は十字スリットの組合せを備える。
【0086】
治癒及び組織肉芽形成を促進するために表面創傷を治療する方法は、ドレッシング104を表面創傷に適用するステップと、ドレッシング104を表面創傷に隣接する表皮に封止するステップとを含む。たとえば、表面創傷の上に第3層215を、表面創傷の縁の少なくとも一部と表面創傷に隣接する創傷周囲とを覆って配置することができる。カバーもまた、第3層215の周囲の表皮に取り付けることができる。ドレッシング104は、陰圧源102等の陰圧源に流体的に結合することができる。ドレッシング104に、陰圧源からの陰圧を印加して、流体制限部220を開放することができる。陰圧を遮断し、停止し、又は低減させることにより、流体制限部220を閉鎖することができる。第2層210及び第3層215は、表面創傷における組織の第1層205への露出を実質的に防止し、第1層205内への組織の成長を阻止することができる。ドレッシング104はまた、創傷周囲の浸軟も実質的に防止することができる。
【0087】
本明細書に記載するシステム、装置及び方法は、従来のドレッシングと比較して著しい利点を提供することができる。たとえば、陰圧療法用のいくつかのドレッシングは、良好なフィット及び封止を達成するように適切にサイズを決め且つ適用するために時間及び技能が必要である可能性がある。対照的に、ドレッシング104のいくつかの実施形態は、簡単に適用することができ、適用し除去する時間を短縮する、陰圧ドレッシングを提供する。いくつかの実施形態では、たとえば、ドレッシング104は、あるサイズに切断することなく1回のステップで組織部位(創傷周囲上を含む)に適用することができ、一方で、サイジングを必要とする他の陰圧療法ドレッシングの多くの利点を依然として提供するか又は改善する、完全に一体化された陰圧療法ドレッシングであり得る。こうした利点としては、優れたマニホールド化、有利な肉芽形成、浸軟からの周囲組織の保護、並びに低外傷及び高封止結合を挙げることができる。これらの特徴は、適度な深さ及び中~高レベルの滲出物を有する表面創傷に対して特に有利であり得る。ドレッシング104のいくつかの実施形態は、少なくとも5日知間、組織部位の上に残ることができ、いくつかの実施形態は少なくとも7日間残ることができる。ドレッシング104における抗菌剤は、長期の使用、特に、感染した又は大量に滲出している創傷での使用に関連する可能性がある感染のリスクを低減させるか又はなくすことにより、ドレッシング104の使用可能な寿命を延長することができる。
【実施例】
【0088】
本明細書に記載するシステム、装置及び方法に関連する利点のうちのいくつかは、以下の非限定的な実施例によってさらに実証することができる。
【0089】
実施例1-全層欠損創のSwine Modelにおけるドレッシングの評価
目的
この調査の主な目的は、GRANUFOAM(商標)ドレッシングを用いる従来のV.A.C.(登録商標)療法及びV.A.C.(登録商標)療法なしでの他の高度創傷ケア(Advanced Wound Care)ドレッシングと比較した、V.A.C.(登録商標)療法及びV.A.C.VERAFLO(商標)療法に関連して、(調査の目的で「GM」と示す)上述した特徴を有するドレッシングの実施形態を評価することであった。創傷は、以下によって確定される、肉芽組織形成、創傷周囲皮膚における浸軟の存在、及びドレッシング除去の容易さに対して評価した。
i.肉芽組織の厚さに対する組織学的評価
ii.剥離強度試験
iii.出血の視覚的評価
iv.ドレッシングの除去後に創傷床に残ったドレッシング粒子の視覚的評価
v.ドレッシング粒子、壊死、出血、浮腫及び炎症に対する組織学的評価
vi.無傷の皮膚の浸軟(組織含水量)
vii.細菌、浮腫及び炎症に対する無傷の皮膚の組織学的評価
【0090】
【0091】
動物モデル
この調査は、以下に概説する動物モデルを使用して行った。
【0092】
【0093】
【0094】
外科処置
欠損創傷生成-0日目
初期パイロット動物(グループ1)は、さらなるグループ2及び3の動物に対する処置をスケジューリングする前にすべての創傷生成及び治療を受けた。滅菌テンプレートを用いて各動物に最大10の全層皮膚欠損創傷(約3×7.5cm)(脊柱の各側に最大5つの創傷)を生成した。創傷の各々の間に間隔があった(隣接する創傷の間の創傷縁から創傷縁まで約6cm以上、ドレッシング及びドレープを適切に配置するために十分な空間を提供するためにすべての創傷の間に十分な間隔)。動物の背中の長さが10個の創傷及びドレッシングに対して十分な空間を提供しなかった場合(0日目に確定)、8個の創傷(脊椎の各側に4つ)を生成した。外科用メス刃を使用して、皮下筋膜層(筋肉のすぐ上)までただしそれを破壊することなく外科的に創傷を生成した。皮下筋膜層の破壊が発生した場合、調査記録に記録した。創傷生成中、創傷の周囲を削り取らないように注意した。肩の頂点と尾骨隆起との間の脊柱を維持するように努力して、2つの傍脊柱に創傷を作成した。滅菌ガーゼを用いる直接圧迫を利用して止血を得た。直接圧迫で収まらなかった過度の出血の場合、止血鉗子を使用して出血源を締め付けた。他の創傷の生成中、滅菌0.9%生理食塩水浸漬ガーゼを用いて湿気があるように維持した。創傷を撮影した。
【0095】
ドレッシング及び陰圧療法の適用
創傷の生成(0日目)に続き、すべての創傷に対して試験品又は対照品を与えた。4日目(グループ3のみ)、ドレッシングが除去されている創傷に対し、試験品又は対照品を与えた。
【0096】
指示されたドレッシング交換日(剥離試験、TEWL、視覚的観察及び写真の後)、滅菌0.9%生理食塩水浸漬ガーゼで創傷周囲領域をきれいにふき取り、乾燥させた。無作為化方式によって、個々の創傷部位にドレッシングを適用した。
【0097】
特定の創傷に対するドレッシングのタイプに関わらず、試験品縁の最も外周部を包囲して、皮膚の上にベンゼン等の接着剤を配置し、創傷周囲の約1cmの外周部にベンゼンがないままにして、創傷周囲領域を接着剤で囲った。これは、ベンゼン接着剤がEpiD読取値に影響を与える可能性があるため、中間の創傷周囲皮膚にはベンゼン接着剤が塗布される可能性がないことを意味する。接着剤は、V.A.C.(登録商標)ドレープが適用された任意の領域において皮膚の上に配置した。別法として(又はさらに)、密閉性の維持に役立つように、追加の接着剤としてHollister(医療グレードシリコーン接着剤)を塗布した。
【0098】
試験品創傷対(V.A.C.(登録商標)療法を行う試験品)及び/又はV.A.C.VERAFLO(商標)療法を行う試験品(生理食塩水を用いるV.A.C.VERAFLO(商標)療法を使用する試験品)創傷に対して、一対の電極(たとえば、アルミニウムシート又はワイヤ)を、創傷周囲領域(試験品の下であるが創傷周囲皮膚の上部)に位置するように適用した。
【0099】
適用可能である場合、フォームブリッジのストリップの真下の皮膚を、保護するためにV.A.C.(登録商標)ドレープで覆った。ドレッシングキットに含まれるV.A.C.(登録商標)ドレープで、各架橋した創傷グループを覆い、ドレープに1つの孔をあけ、使用説明書(IFU)の通りに孔の上に直接SENSAT.R.A.C.(商標)パッド又はV.A.C.VERAT.R.A.C.(商標)パッド(適用できる場合)を取り付けた。パッドの各々を適所に維持し、密閉性があることを確実にするために、パッドの各々を各側部に沿ってV.A.C.(登録商標)ドレープで囲った。
【0100】
V.A.C.ULTA(商標)ユニットが、創傷生成の日に外科セットに存在し、それを、各創傷グループが適用に続き適切に封止されていることを確認するために、各パッドに適切に接続した。
【0101】
創傷の周囲の密閉性を検査するために、V.A.C.ULTA(商標)ユニットにおけるSEAL CHECK(商標)機能を使用して、-125mmHgの連続真空圧で、陰圧創傷療法(NPWT)を開始した。適切な密閉性を確認すると、V.A.C.ULTA(商標)ユニットをオフにし、適用可能な場合は、この手順を繰り返した。すべての密閉性の確認に続き、密閉性を補強し漏れを防止するために縁の周囲にV.A.C.(登録商標)ドレープの追加の層を配置した。
【0102】
V.A.C.VERAFLO(商標)療法を受けている創傷に対して、Fill Assist(充填支援)機能を使用して、対の創傷においてドレッシングを飽和させるために必要な流体(すなわち、生理食塩水)の量を決定した。これらの決定は、適切に、各ドレッシング交換時に創傷対に対して行った。V.A.C.ULTA(商標)ユニットにおけるSEAL CHECK(商標)機能を用いて、-125mmHgの連続真空圧で、V.A.C.VERAFLO(商標)療法NPWTを開始した。適切な密閉性を確認すると、V.A.C.ULTA(商標)ユニットをオフにし、適用可能な場合はこの手順を繰り返した。すべての密閉性の確認に続き、密閉性を補強し漏れを防止するために縁の周囲にV.A.C.(登録商標)ドレープの追加の層を配置した。サイクル毎の浸漬/休止時間は10分間であり、サイクル毎のNPWT時間は、-125mmHgの目標圧力で3.5時間であった。
【0103】
ドレッシングの移動を防止するために、V.A.C.(登録商標)ドレープで覆われた領域全体を、V.A.C.(登録商標)ドレープ、Elastikon(登録商標)又は等価物で固定された耐引裂性メッシュ(たとえば、オーガンザ材料)で覆った。
【0104】
暫定的なドレッシング交換-4日目グループ3のみ
ドレッシングの下からの抵抗読取を行った。各治療対からの1つの創傷に対して、創傷に対する剥離力試験を行った。ドレッシングが適所に留まるように意図されない限り、各創傷対の他方の半分に対して、手でドレッシングを除去した(すなわち、TANPT及びTANPTI(n=2動物))。創傷評価を行い(適用できる場合)、写真撮影した。
【0105】
剥離試験及び観察
各治療対からの1つの創傷(適用可能な場合、ドレッシング交換と同じ創傷)に対して剥離力試験を行った。ドレッシングが除去された創傷に対して、TEWLを行い、創傷評価を行い、写真を撮影した。
【0106】
グループ1及び2(4日目)に対し、5つの創傷に対して、剥離力試験、TEWL及び評価を行った。残りの5つの創傷は、組織病理学処理及び評価のために、ドレッシングがインサイチュである状態で収集した。
【0107】
グループ3(7日目)に対して、5つの創傷に対して、剥離力試験、TEWL及び評価を行った。残りの5つの創傷は、組織病理学処理及び評価のために、ドレッシングがインサイチュである状態で収集した。
【0108】
傾斜手術台の上で剥離力試験を行った。剥離力試験は、剥離テスタに対して約180°の角度で創傷からドレッシングを剥離するために必要な力を測定しながら、試験材料の縁をめくる装置を使用して行った。デジタル分度器を使用して、角度を確認した。剥離強度値は、創傷床から試験材料を除去することができる容易さを示す。試験材料の除去は、Shimpo Motorized Test Standに取り付けられ且つLabViewを備えるコンピュータを介して制御される20N Shimpo Digital Force Gaugeを使用して行った。
【0109】
外科用メスにより、ドレッシングの側部内への組織内部成長を妨害しないように注意して、剥離試験に対する対象品の上のドレープに、静かに境界線を引いた。剥離試験に対する試験品での処置時、外科用メスを用いて、創傷と接触していない余分なドレッシングを除去した。これは、陰圧療法の後に創傷の外縁部が可視である場所で側部、底部及び上部に沿ってドレッシングを切断することによって行った。クリップを用いて、ドレッシング又はドレッシングタブの内側端部を力計に取り付けた(ドレッシングの境界線引きは行なわない)。そして、内側から外側方向に一定の速度で創傷から(内側から外側)ドレッシングを引っ張った。剥離力を測定した後、評価を行った。力計を介してLabViewにより連続剥離力読取値を記録し、各創傷に対して保存した。剥離試験に続き、ドレッシング内に残っている組織の分析のために、ドレッシングを保存した。
【0110】
図9は、試験品(「TANPT」及び「TANPTI」と示す)及び対照ドレッシングのドレッシング適用及び除去に続く、7日目の最大剥離力測定の結果(N)を実証している。図示するように、V.A.C.VERAFLO(商標)療法があってもなくても、試験品はそれほど剥離力を必要としなかった。
【0111】
剥離力試験及びTEWL測定の後、適用できる場合は、各創傷の中心から2つの生検パンチ(5mm、又は各々8mmを超えない)を収集した。
【0112】
経表皮水分蒸散量
Delfin Technologies(Kuopio、Finland)の水分計(Moisture Meter)EpiD Compactを使用して、ドレッシング-皮膚(無傷)界面における水分のレベルの決定を行った。この測定は、0日目の創傷生成の直後、ドレッシング交換日(適用できる場合)及び安楽死の前の終了時に行った。皮膚の比誘導率を測定するために、EpiD Compact器具を使用した。創傷生成日(0日目)、創傷と、試験品及び高度創傷ドレッシングがある場所の創傷パッドの縁との間の中間部に近い各動物の無傷の皮膚から、4つの連続的な水分測定値を収集した。ドレッシング交換日及び終了時(適用できる場合)、4つの連続的な水分測定値を収集した。各動物に対する利用可能な創傷部位の各々に対してこれらの測定を繰り返した。測定値/データのすべてを記録した。
【0113】
創傷評価
全体的な観察
ドレッシング交換時及び/又は終了手順時、以下のように、創傷観察を行い記録した。
・創傷出血-なし、軽微、中程度又は重篤
・全体的な観察-乾燥(鈍い/光沢がない)、湿っている(外観が光っている)、湿潤(流体の存在)、焼痂(薄黒く堅く見える組織)、腐肉(除去可能な黄色がかった層)及び創傷部位におけるその位置
・排出物-なし、漿液性(希薄、水っぽい、透明)、漿液血液状(希薄、淡赤色からピンク)、多血質(希薄、鮮紅)、膿状(不透明な黄褐色から黄色、希薄又は濃厚)
【0114】
ドレッシング及び組織残留性
ドレッシング除去又は剥離試験に続き、ドレッシング残留性(小粒子及び大切片)を評価した。創傷からのドレッシングの除去の後、創傷におけるドレッシング残留性を視覚的に評価して記録した。組織残留性に対してすべての除去されたドレッシングを視覚的に評価し、デジタルで撮影した。
【0115】
図10は、TANPT及びTANPTIにより、組織内部成長が著しく低減したことを実証している。
【0116】
組織病理学
創傷部位が70%エタノールにあった場合、即座に処理し、NBFに入れられた場合、組織病理学試験サイト標準手順によりさらに処理される前に、ある期間、創傷を70%エタノールに移した。創傷部位+ドレッシング(そのままである場合)は、特大のパラフィンブロックに包埋し、一括して部位全体を、約5μm厚さで1回横に切断し、結果としてのスライドをヘマトキシリン及びエオジン(H&E)で染色した。処理しパラフィンに包埋する前に、標本の切断面の全体的な画像を撮影した。影響を受けていない皮膚の境界部を含む組織断面全体を四方において収容するために、特大のスライドを使用した。
【0117】
認定された獣医病理学者が、半定量的に組織病理学的反応を、別段指定される場合を除き、1~5の等級(1=ごく軽度、2=軽度、3=中等度、4=重度、5=非常に重度)で評価した。限定されないが、病理学者によって判断される、肉芽組織厚さ及び特徴、ドレッシングに埋め込まれた肉芽組織の量(あり得る場合)、組織炎症、浮腫、血管分布(あり得る場合)、細菌の存在、壊死及び他の関連因子を含む、創傷に対する組織形態的変化に対するすべての染色断面の顕微鏡による評価。病理学者によって判断される浸軟と一貫する特徴に対して、創傷周囲領域を評価した。
【0118】
個々の創傷部位の2D写真
以下の時点で、個々の創傷部位の2次元(2D)写真を撮影した。
・0日目(新たに生成された創傷)-すべての創傷
・ドレッシング除去の後であり且つ新たなドレッシングの適用の前の4日目(ドレッシング交換の日又は適用可能な場合は終了の日)-すべての創傷
創傷に隣接する新たに除去されたドレッシングの2D写真を撮影した
・ドレッシング除去の後であり且つ安楽死の前の7日目
創傷に隣接する新たに除去されたドレッシングの2D写真を撮影した
【0119】
個々の創傷部位の組織病理学的評価
図11の光学顕微鏡写真図は、TANPTがNPT及びNPTIより著しく覆い肉芽形成があったことを実証している。
【0120】
さらに
図12は、試験治療と対照治療との間で7日目の肉芽組織厚さを比較するグラフ表現である。TANPT及びTANPTIは、相対的に著しく高い肉芽組織厚さを示した。
【0121】
調査結論
データは、試験品が意外なほどに肯定的な結果を有し、V.A.C.VERAFLO(商標)療法と組み合わせた場合に改善することを実証している。V.A.C.VERAFLO(商標)療法を伴う試験品は、肉芽組織厚さの増大、組織内部成長の低減、上皮化率及び平均血管新生スコアを示すことにより、相対的に優れた性能を発揮した。
【0122】
さらに、7日目まで、試験品によるすべての治療が、NPT及びNPTIより著しく大きい肉芽組織を示した。(7日の治療期間の後に測定された)試験品を使用する肉芽深さの増大率は、NPTの場合は少なくとも75%であり、NPTIの場合は200%であった。有害事象の証拠又は安全性問題は見出されなかった。創傷周囲組織の水分は経時的に低減し(すべての治療グループ)、浸軟のリスクが低減した。
【0123】
試験品によるすべての治療はまた、剥離力の著しい低減によって証明されるように、組織内部成長の意外なほどの低減も示した。ドレッシング交換なしでの連続V.A.C.(登録商標)療法又はV.A.C.VERAFLO(商標)療法V.A.C.(登録商標)療法のいずれもその7日後、試験品を除去するために必要な剥離力は2N未満であった。具体的には、TANPTI試験品を除去するために、1.8Nの剥離力が使用され、TANPT試験品を除去するために、1.5Nの剥離力が使用された。V.A.C.(登録商標)療法を伴うCA1と比較して、剥離力はそれぞれ87%及び89%低減した。
【0124】
いくつかの例示的な実施形態で示したが、当業者は、本明細書に記載したシステム、装置及び方法が、添付の請求項の範囲内にあるさまざまな変形及び変更が可能であることを理解するであろう。さらに、「又は」等の用語を使用するさまざまな代替例の記載は、文脈から明らかに必要でない限り、相互排他性を必要とせず、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という冠詞は、文脈から明らかに必要でない限り、対象を単一の例に限定するものではない。
【0125】
いくつかの実施形態に関連して記載した特徴、要素及び態様はまた、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、省略し、組み合わせ、又は、同じ、等価の又は同様の目的にかなう代替的な特徴に置き換えることも可能である。たとえば、いくつかの層の特徴のうちに1つ又は複数を他の層の特徴と組み合わせて、均等な機能を提供することができる。別法として又はさらに、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、弁605に対して例示するものとして記載した形状と同様の形状を有することができる。
【0126】
販売、製造、組立又は使用の目的で、構成要素をさまざまな構成で組み合わせるか又は除去することも可能である。たとえば、いくつかの構成では、ドレッシング104、容器106又は両方を、製造又は販売のためになくすか又は他の構成要素から分離することができる。他の構成例では、コントローラ108はまた、他の構成要素から独立して製造し、構成し、組み立て又は販売することも可能である。
【0127】
添付の特許請求の範囲は、上述した主題の新規性のある且つ進歩性のある態様を示すが、具体的に詳細に記載していないさらなる主題も包含することができる。当業者には既知であることから新規性のある且つ進歩性のある特徴を識別するために必要ではない場合、いくつかの特徴、要素又は態様を特許請求の範囲から省略している場合がある。