(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】回生ブレーキを有する車両のブレーキシステムのためのブレーキペダル特性曲線の決定
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20241111BHJP
B60T 8/172 20060101ALI20241111BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/172 Z
B60L7/24 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020052670
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 204 687.8
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フロイデンベルガー,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シュン
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0241611(US,A1)
【文献】特開2017-061293(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016214593(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第103863283(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60L 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)のブレーキシステム(25)を操作するためのブレーキペダル(12)についてのブレーキペダル特性曲線(30)を修正する方法において、前記ブレーキシステム(25)は車両(10)のためのブレーキ作用を生成するためにセットアップされ、
前記ブレーキシステム(25)は、
液圧コンポーネント(22)によって電気機械式のアクチュエータ(21)と液圧接続された摩擦ブレーキ(20)と、
回生ブレーキ(15)とを有し、
前記ブレーキペダル特性曲線(30)は前記電気機械式のアクチュエータ(21)のストロークに依存する前記液圧コンポーネント(22)における圧力の関数であり、アイドルストロークと剛性係数とを有し、
前記方法は次の各ステップを有し、
事前定義された回数の前記ブレーキシステム(25)の操作の後に前記電気機械式のアクチュエータ(21)によってブレーキペダル特性曲線(30)の測定が実行され、このときブレーキ作用の少なくとも一部が前記摩擦ブレーキ(20)によって生成されるとともに残りの部分が前記回生ブレーキ(15)によって生成され、
測定されたブレーキペダル特性曲線(31)によって前記ブレーキペダル特性曲線(30)が置き換えられる方法。
【請求項2】
さらに別のステップを有し、
前記測定されたブレーキペダル特性曲線(31)が保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに別のステップを有し、
前記車両(10)が動かされ、前記車両(10)のためのブレーキ作用が生成されたとき、実行されたブレーキプロセスの回数を含むカウンタが増分され、
このとき多くともブレーキ作用の一部は前記摩擦ブレーキ(20)によって生成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに別のステップを有し、
前記車両(10)が動かされ、前記車両(10)のためのブレーキ作用が生成されたときに前記カウンタがゼロにセットされ、
このときブレーキ作用全体が前記摩擦ブレーキ(20)により生成される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
さらに別のステップを有し、
前記車両(10)がスイッチオフされたときに不揮発性メモリ(37)に前記カウンタが保存され、
前記車両(10)がスイッチオンされたときに前記不揮発性メモリ(37)から前記カウンタが読み込まれる、請求項
3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記車両(10)が停止しているときに、前記ブレーキペダル特性曲線(30)の測定が前記電気機械式のアクチュエータ(21)によって実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ブレーキペダル特性曲線(30)の測定は、前記車両(10)が停止しているときの前記ブレーキペダル特性曲線(30)の測定にあたって、前記車両(10)が動いているときの測定と比べたときのシステム上の差異を考慮する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレーキペダル特性曲線(30)がヒステリシスを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定されたブレーキペダル特性曲線(30)と前記保存されているブレーキペダル特性曲線(31)の間の差異(33)が判定され、
前記差異(33)に依存して前記ブレーキシステムの操作の事前定義された回数が変更される、請求項
2に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキシステムのパラメータの長期的な変化が短期的な変化よりも強く考慮される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実施するためにセットアップされた車両(10)の制御装置(35)。
【請求項12】
請求項11に記載の制御装置(35)を有する車両。
【請求項13】
車両(10)のブレーキペダル特性曲線(30)を決定するための、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法の利用法。
【請求項14】
請求項11に記載の制御装置(35)で実行されたときに、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記制御装置(35)に指示するプログラム要素。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラム要素が保存されているコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキを有する車両のブレーキシステムに関する。特に本発明は、ブレーキシステムのためのブレーキペダル特性曲線を修正する方法に関する。さらに本発明は、制御装置、利用法、プログラム要素、およびコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、特に電動車両やハイブリッド車両では、エネルギー効率がいっそう意義を増している。それ故に、ブレーキをかけたときに電動車両やハイブリッド車両の電気モータをできる限り頻繁に発電機として作動させ、それに伴ってブレーキプロセスをエネルギー回収のために利用することが試みられている。このことはしばしば回生とも呼ばれる。多くのケースにおいて、ブレーキペダルの操作によってブレーキングを開始しようとする運転者に、従来型の液圧式の摩擦ブレーキによってブレーキをかけたときに受けるようなブレーキペダル感覚を伝えることが試みられている。それにより、ブレーキ作用が類似するときに運転者がそのつど類似する、ないしは同等のブレーキペダル感覚を受けることが実現される。この目的のために車両に、たとえば制御システムに、当該ブレーキシステムについてのブレーキペダル特性曲線が格納される。しかし、摩擦ブレーキのブレーキ機構や液圧系は車両の耐用期間を通じて変化していき、そのため、格納されているブレーキペダル特性曲線が、摩擦ブレーキの現実のブレーキペダル特性曲線と一致しなくなる。したがって少なくともいくつかの車両では、摩擦ブレーキだけが減速のために寄与するブレーキングを定期的に実行することができる。その際にブレーキペダル特性曲線の測定を実行し、ブレーキペダル特性曲線を更新することができる;というのも、そうしないとブレーキペダル感覚がブレーキ作用に適合しなくなるからである。すなわちブレーキペダル特性曲線の頻繁な測定によって、格納されているブレーキペダル特性曲線と現実のブレーキペダル特性曲線との間の大筋での一致を実現することができる。しかし、特に電動車両やハイブリッド車両ではこれと逆の事情があり、測定のために必要なブレーキをかけることで潜在的な回生エネルギーが失われ-すなわちブレーキでの摩擦によって-、したがって摩擦ブレーキによる減速ができる限り稀に行われるほうがよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、一方における格納されているブレーキペダル特性曲線と現実のブレーキペダル特性曲線の間のできる限り少ない差異と、他方におけるできる限り稀な摩擦ブレーキによるブレーキングとの間のバランスをもたらす方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は独立請求項の対象物によって解決される。本発明の発展例は、従属請求項および以下の説明から明らかとなる。
【0005】
第1の態様は、車両のブレーキシステムを操作するためのブレーキペダルについてのブレーキペダル特性曲線を修正する方法に関し、ブレーキシステムは車両のためのブレーキ作用を生成するためにセットアップされる。ブレーキシステムは、液圧コンポーネントによって電気機械式のアクチュエータと液圧接続された摩擦ブレーキと、回生ブレーキとを有する。ブレーキペダル特性曲線は、電気機械式のアクチュエータのストロークに依存する、液圧コンポーネントにおける圧力の関数である。ブレーキペダル特性曲線はアイドルストロークと剛性係数とを有する。
【0006】
ブレーキペダル特性曲線は、ブレーキペダルのペダルストロークに対する、ブレーキペダルで感知することができる圧力を反映する特性曲線である。ブレーキペダル特性曲線は、たとえば運転者によってブレーキペダル感覚として感知することができる。ブレーキペダル特性曲線は車両の単一の(部分)システムにおいて、たとえばブレーキペダルシミュレータにおいて、実装されていてよい。ブレーキペダル特性曲線は、車両の複数の(部分)システムの協同作用によって、たとえばブレーキ倍力装置、ブースタ、ブレーキペダルシミュレータ、および/または電気機械式のアクチュエータなどの(部分)システムのうちの少なくとも1つにおいて、実装されていてもよい。それに応じてブレーキペダル特性曲線は単一の(部分)システムに格納されていてよく、あるいは複数の(部分)システムに格納されていてもよい。車両のためのブレーキ作用を生起するために、ブレーキペダルによって車両のブレーキシステムが操作される。
【0007】
車両はたとえば陸上走行車両であってよく、特に乗用車、トランスポータ、トラック、陸上用の専用車両、または水陸両用の車両であってよい。車両は電動車両またはハイブリッド車両であってよい。車両は少なくとも1つの大型の電気モータを含むことができる。大型の電気モータは、車両を動かすのに寄与する電気モータである。このような種類の大型の電気モータは高い回生ポテンシャルを有することができ、すなわち、ブレーキプロセスのときのエネルギー回収に主要な貢献を果たすことができる。
【0008】
ブレーキシステムの摩擦ブレーキは、摩擦によって車両の減速に寄与するブレーキである。摩擦ブレーキは、電気機械式のアクチュエータによって少なくとも部分的に操作することができる。電気機械式のアクチュエータは制御システムを通じて制御することができ、たとえばブレーキバイワイヤシステムの一部であってよい。摩擦ブレーキは液圧コンポーネントによって電気機械式のアクチュエータと液圧接続される。液圧コンポーネントは、たとえば各々の電気機械式のアクチュエータがそれぞれ車両のホイールと接続されるケースでは、単純な液圧配管であってよい。液圧コンポーネントは多重回路ブレーキシステムを含むことができ、および/または多重回路ブレーキシステムの一部であってよい。いくつかの実施形態では液圧コンポーネントは、たとえばブレーキペダルと接続されたマスタブレーキシリンダを介して、ブレーキペダルと接続されていてよい。
【0009】
ブレーキシステムの回生ブレーキは、車両を動かすために寄与する少なくとも1つの電気モータを発電機として作動させるブレーキである。回生ブレーキは制御システムを通じて制御することができ、たとえばブレーキバイワイヤシステムの一部であってよい。ブレーキングの際に車両のためのブレーキ作用を生成するために、回生ブレーキだけを使用することができ、または摩擦ブレーキだけを使用することができ、またはこの両方の部分ブレーキシステムを原則として自由に選択可能な比率で使用することができる。それぞれの部分ブレーキシステムへのブレーキ作用の配分は、たとえば所望の減速、または走行状況、ブレーキアシスト-たとえばABS(アンチロックシステム)やESC(エレクトロニックスタビリティコントロール)-が使用されるべきか、および/または電気モータと部分ブレーキシステムがどのように車両に実装されているかに依存していてよい。
【0010】
1つの実施形態では、回生ブレーキに代えて、またはこれに加えてモータブレーキ、渦電流ブレーキ、またはこれらに類するブレーキを有するブレーキシステムに、本発明の少なくとも一部を適用することが可能であり、このことは少なくともいくつかのトラックの場合に該当する。このようなシステムが関与している場合にも、ブレーキプロセスに占める摩擦ブレーキの割合を低減することができ、特定の減速についてそのつど類似するブレーキペダル感覚が得られるように保たれる。
【0011】
ブレーキペダル特性曲線は、電気機械式のアクチュエータのストロークに依存する、液圧コンポーネントにおける圧力の関数である。すなわちブレーキペダル特性曲線-およびこれに伴っていわゆるブレーキペダル感覚-は、液圧コンポーネントでの圧力状況に呼応し、および/または液圧コンポーネントにおける圧力状況の一種の「模倣」である。単純化して表現すると、たとえば純粋に液圧式のブレーキ(場合によりサーボブレーキ設備を含む)が操作された場合に運転者が受けるはずのブレーキペダル感覚が運転者に伝えられるべきである。この目的のために車両に、たとえば制御システムに、当該ブレーキシステムについてのブレーキペダル特性曲線が格納される。ブレーキペダル特性曲線はたとえば関数として格納されていてよく、および/またはそれぞれの間で補間がなされる補間点の集合として格納される。ブレーキペダル特性曲線は、ブレーキシステムの「旧来型の」pV特性曲線(圧力・容積特性曲線)に類似し得る。ブレーキペダル特性曲線はアイドルストロークと剛性係数とを有する。アイドルストロークは、オリフィス穴が閉じられる前のブレーキ作用が中でまだ生じない、純粋に液圧式のブレーキシステムが有するアイドルストロークに相当する。剛性係数は、事前定義された個所での、たとえばマスタブレーキシリンダで測定される圧力の上方での、またはおよそ10バール近辺の圧力での、あるいはたとえば液圧コンポーネントで測定される低い圧力での(たとえば約5バール)、ブレーキペダル特性曲線の勾配にほぼ相当する。
【0012】
このようなブレーキペダル特性曲線がブレーキペダルシミュレータに適用される。ブレーキペダルシミュレータはたとえば独立した部材として製作されていてよく、ばね、機械的な抵抗(たとえば緩衝部材)、および/またはその他の部材を含むことができる。ブレーキペダルシミュレータは車両のサーボブレーキ設備の一部として製作されていてもよい。すなわち、ブレーキペダルがもはや直接的にブレーキシステムの液圧コンポーネントに対してだけ作用するのではなく、ブレーキペダルシミュレータを通じてブレーキシステムを制御する。それに伴い、特定の減速をするときのブレーキペダル感覚は実質的に、純粋に摩擦ブレーキによって、または純粋に回生ブレーキによって、またはこれらのブレーキの「ミキシング」によって車両が減速されるときのブレーキペダル感覚であり得る。ただし、それでもブレーキペダル感覚は(液圧式の)摩擦ブレーキないし液圧コンポーネントにおける圧力状況に即しているべきである;このことは、ブレーキペダル特性曲線とブレーキペダルシミュレータによって実現される。
【0013】
ブレーキペダル特性曲線を修正する方法は次の各ステップを有する:
-事前定義された回数のブレーキシステムの操作の後に電気機械式のアクチュエータによってブレーキペダル特性曲線の測定が実行され、このときブレーキ作用の少なくとも一部が摩擦ブレーキによって生成されるとともに残りの部分が回生ブレーキによって生成され、
-任意選択のステップとして:測定されたブレーキペダル特性曲線が保存され、
-測定されたブレーキペダル特性曲線によってブレーキペダル特性曲線が置き換えられる。
【0014】
ブレーキペダル特性曲線は、電気機械式のアクチュエータのストロークに依存する液圧コンポーネントにおける圧力の関数であるので、ブレーキペダル特性曲線の測定-「剛性決定」とも呼ぶ-は1つのセンサ(または複数のセンサ)によって、アクチュエータストロークと液圧コンポーネントで実行することができる。電気機械式のアクチュエータとブレーキペダルの間に液圧結合が存在するブレーキシステムでは、アクチュエータストロークのセンサの代替または追加として、ブレーキペダルの1つのセンサ(または複数のセンサ)を利用することもできる。測定時には、事前定義された補間点で、および/または連続的に、電気機械式のアクチュエータないしブレーキペダルのストロークと、その際に液圧コンポーネントで生じる圧力が決定される。そのために、ブレーキ作用の少なくとも1つの部分が摩擦ブレーキによって生成される。ブレーキ作用の残りの部分は回生ブレーキによって生成される。すなわち剛性決定がしばしば実行されると、摩擦ブレーキで破棄されるエネルギーが回生に利用されない(されなくなる)ので、エネルギー効率が不必要に損なわれる。その一方で、現実の特性曲線と格納されている特性曲線の間の大きい差異を回避するためには、剛性決定をしばしば実行するのが有意義である。これらの相反する要請の間でできる限り良好な妥協を図るために、ブレーキペダル特性曲線の測定は、電気機械式のアクチュエータにより、事前定義された回数のブレーキシステムの操作の後で初めて実行される。
【0015】
その代替または追加として、別の動的な基準を選択することもでき、それはたとえば最新の測定および/または加速度センサ、高度測定器、温度測定器の履歴をベースとするブレーキ摩減の見積り、および/またはその他の基準である。それに伴い、たとえば市街地交通や山道走行のときには、たとえばほぼ障害のない高速道路走行のときよりも頻繁に剛性決定を行うことができる。ブレーキシステムの事前定義される操作の回数(ないしその他の基準)を動的に判定することができる。たとえばこのような操作の回数は、車両の型式および/または年数および/またはブレーキの構成-たとえばパッド(たとえば“Non Asbestos Organic”、NAO、その他)、ブレーキシュー、ブレーキピストンのサイズと個数などに関する-に依存していてよい。事前定義される操作の回数は、たとえばストップアンドゴー交通状況や山道走行では少なくすることができ、高速道路走行では増やすことができ、および/またはその他の基準を選択することができる。
【0016】
ブレーキペダル特性曲線の測定が実行された後、任意選択のステップで、測定されたブレーキペダル特性曲線を保存することができる。たとえばこれを車両の制御システムに格納することができ、それに伴い、回生ブレーキが関与するブレーキングのときにも利用することができる(「回生式のブレーキング」)。その場合、測定された各々のブレーキペダル特性曲線を保存するのではなく、たとえば測定が不安定なときや十分に完全でないケースでは保存しないのが有意義であり得る。たとえば測定が不安定であると認定できるのは、たとえば電磁両立性の障害に原因が帰せられるピークまたはその他の差異が測定された場合である。たとえば測定が十分に完全でないと認定できるのは、アクチュエータストロークのわずかな部分だけが測定され、および/または大きすぎる動的効果が測定された場合である。
【0017】
最終的に、ブレーキシステムでそれまで利用されていたブレーキペダル特性曲線が、測定されたブレーキペダル特性曲線によって置き換えられる。ここで「置き換えられる」とは多くのケースにおいて、ブレーキペダル特性曲線の劇的な変更が行われることではなく、現実のシステムでどちらかというと複数の小さなステップでブレーキペダル特性曲線を適合化することができる(「穏やかな」または「漸増的な」変更)ことを意味する。測定されたブレーキペダル特性曲線の大きな差異は、少なくとも時折は(ネガティブな)妥当性確認基準として利用することもできる;たとえば、それまで使用されていたブレーキペダル特性曲線からの大きな差異は、測定されたブレーキペダル特性曲線を妥当性がないとして破棄することを必要にする場合がある。測定されたブレーキペダル特性曲線への置き換えについて、その他の事前定義された基準を適用することもできる。このような基準は、たとえば差異が他のメカニズムによって捕捉されたのか否かを考慮することができる。たとえばブレーキシステムのフェーディング(たとえば急峻な山道走行をしたとき)を、車両の他の(部分)システムによって補うことができ、それにより、このような種類の差異の場合にはブレーキペダル特性曲線を適合化する必要はない。このような基準では、たとえば差異が(恐らく、または実際に)ブレーキシステムにおける短期的な変化によって引き起こされたのか、それとも長期的な変化によって引き起こされたのかを考慮することもできる。置き換えは、アイドルストロークと剛性係数を通じての漸増的な適合化を含むことができる。
【0018】
すなわちこの方法により、車両の動作時間中に多くの場合に、またはしばしば、現実に近いブレーキペダル特性曲線をブレーキシステムで利用することができる。それと同時に、不必要な測定の回数-およびこれに伴って不必要な摩擦ブレーキング-が低減される;それにより、車両のエネルギー効率を明らかに改善することができる。さらに、それによって摩擦ブレーキの負荷、およびそれに伴って摩擦ブレーキの摩耗とその他の摩減を低減することができる。さらに、差異のあるブレーキペダル特性曲線に基づくNVHの影響(NVH:Noise,Vibration,Harshness、すなわち騒音、振動、ハーシュネス)を低減することができる。また、それに伴っていわゆるブレーキペダルでのいらだちも回避することができる。このような種類のブレーキペダルでのいらだちは、たとえばペダルの押し返し(たとえば誤った、もしくは不十分に適合化されたブレーキペダル特性曲線の場合)を含むことがあり得る。さらに、たとえば工場を訪れてブレーキ交換をした後、新しいブレーキペダル特性曲線をいっそう迅速に記録して運転者に提供することも可能であり、それにより、いっそう迅速および/または頻繁に現実に即したペダル感覚が提供される。
【0019】
さらに別の欠点も、説明している方法によって回避することができる:たとえば特にハイブリッド・エレクトリック式のクロスオーバーブレーキシステム(hev-X)の場合、現実とは相違するブレーキペダル特性曲線-たとえば誤って決定された剛性値-が減速障害につながることがあり、それは、たとえば運転者が一定にブレーキを踏んでいて、発電機が要求されるブレーキ出力を果たすことができなくなっているが、またはそうするべきになっているが、移送されれる容積によっては、判定された液圧コンポーネントの目標圧力を達成できないという状況においてである。たとえばハイブリッド・エレクトリック式のパラレルブレーキシステム(hev-II)においても、ブレーキペダル特性曲線が十分に正確に決定されていないと、液圧シリンダのオリフィス穴の過圧が起こることがあり、このことは、たとえば液圧的な短絡、NVH問題、および/またはコンポーネント負荷の増大-たとえば液圧ポンプの負荷など-につながりかねない。
【0020】
1つの実施形態では、本方法はさらに別のステップを有する:
-車両が動かされ、車両のためのブレーキ作用が生成されたとき、実行されたブレーキプロセスの回数を含むカウンタが増分され、このとき多くともブレーキ作用の一部は摩擦ブレーキによって生成される。
【0021】
たとえばブレーキペダル特性曲線の測定が実行されるべきか否かを示す動的な基準としてのカウンタを、選択することができる。たとえばブレーキペダル特性曲線の測定を実行することができなかったブレーキングが実行されときに、カウンタの計数を増やすことができる。このことがたとえば該当し得るのは、摩擦ブレーキがブレーキングに関与しなかったとき、または十分に関与しなかったときや、ブレーキペダル特性曲線の測定を十分な品質で実行できなかったとき、たとえば測定が不安定なときや、十分に完全でなかったときである。このことは、たとえばコントローラの介入(たとえばブレーキアシストシステムによる)の場合、ダイナミックすぎる走行の場合、および/またはダイナミックすぎるブレーキをかけた場合に該当し得る。カウンタのレベル(カウンタ値)は、たとえばブレーキペダル特性曲線の測定がその後に実行される、ブレーキシステムの操作の事前定義された回数-またはその関数-を反映することができる。ブレーキペダル特性曲線の測定なしにどれだけ多くブレーキがかけられるべきかというこの回数は車両固有であってよく、および/またはたとえば現在および/または過去の交通状況を考慮することができる。初期のカウンタ値は、たとえば車両もしくは車両シリーズの納入前に、車両および/または車両シリーズについて判定することができる。事前定義されたカウンタ値を上回った後に、たとえば回生ブレーキの発電機トルクの制限によって、摩擦ブレーキによる測定を強制することができる。ブレーキペダル特性曲線を測定することができ、利用することができるとただちにカウンタがリセットされて、そのブレーキペダル特性曲線が以後の回生式のブレーキングについて保存される。
【0022】
1つの実施形態では、本方法はさらに別のステップを有する:
-車両(10)が動かされ、車両(10)のためのブレーキ作用が生成されたときにカウンタがゼロにセットされ、このときブレーキ作用全体が摩擦ブレーキ(20)により生成される。
【0023】
ブレーキ作用全体が摩擦ブレーキによって生成され、成功した測定を行うことができたとき、カウンタがゼロにセットされる(リセット)。発電機トルクが利用されなかったブレーキングが行われ、それによりブレーキペダル特性曲線の成功した測定を-たとえば摩擦ブレーキのみによって-実行できたときにも、カウンタをリセットすることができる。このことは、車両のエネルギー効率のさらなる改善につながり得る。
【0024】
1つの実施形態では、本方法はさらに別の次のステップを有する:
-車両がスイッチオフされたときに不揮発性メモリにカウンタが保存され、
-車両がスイッチオンされたときに不揮発性メモリからカウンタが読み込まれる。
【0025】
それに伴い、「カウンタの最新レベル」という基準を車両の新規スタートを超えて維持できるという利点がある。
【0026】
1つの実施形態では、車両が停止しているときに、ブレーキペダル特性曲線の測定が電気機械式のアクチュエータによって実行される。1つの実施形態では、ブレーキシステムの操作の事前定義された回数に関わりなく-かつ、たとえばカウンタのレベルにも関わりなく-、ブレーキペダル特性曲線の測定を実行することもできる。
【0027】
車両が「停止している」のは、車両が止まっており、ないしは停車しており、かつスイッチオフされているときである。このとき運転者は車両から離れることができる。たとえばハンドブレーキおよび/またはオートマチックトランスミッションのP位置などの機械的な固定が入っているか否かを(場合より追加的に)チェックすることができる。停止時のこのような測定では、ブレーキペダルの操作が必要ないという利点がある;特に、運転者がブレーキペダルを操作するよう要請されなくてすむ。
【0028】
この実施形態では、ブレーキペダル特性曲線および特にブレーキシステムの剛性を高い品質で判定できるという利点がある。そのために、たとえば次のような側面が寄与する:
-車両が停止しているときには、左右方向加速度が発生しない。左右方向加速度は、動的効果に基づいて測定の品質を損なうことがある。
-車両が停止しているときには、ブレーキディスクのディスク衝撃がないので、それによっても測定精度の誤差が生じることがない。
-アクチュエータが準静的に作動することができるので、たとえば作動液の質量による、液圧コンポーネントで測定される圧力の動的効果も発生しない。
【0029】
さらに、車両が動いているときには、ブレーキペダル特性曲線の測定を狂わせる可能性があるさまざまな影響が車両に対して起こり得る。たとえば短時間の影響-たとえば温度やフェーディング-が剛性係数に取り込まれず、もしくはわずかしか取り込まれないのが望ましいことがあり得る。その代わりに、長時間の効果がいっそう正確に、および/またはいっそう早期に測定に取り込まれるのがよい。このことは、静的ないし準静的な測定のときにいっそう高い範囲で該当することがあり得る。車両が停止しているときの測定は、測定を走行中に実行する必要性は比較的稀にしか必要でなく、もしくは-たとえば比較的頻繁に停止される場合には-省略することさえできるという理由からも好ましくなり得る。特定のブレーキアーキテクチャでは、停止時の測定のときに改善された測定の枠組条件が成立する。たとえばハイブリッド・エレクトリック式のパラレルブレーキシステム(hev-II)では、オリフィス穴が閉じられ、ブレーキングの最初にアイドルストローク決定が成功裡に完了し、フロントアクスルでの容積ブレンドおよび/またはコントローラ介入が行われないことが要請されることがあり得る;これに関しては、たとえば下記の(図面の説明における)さらなる説明を参照。このような枠組条件は、どちらかというと車両の停止時に満たすことができる。
【0030】
1つの実施形態では、ヒステリシスを含めた一式のペダル特性曲線を記録することができる。ヒステリシスは多くの現実の液圧ブレーキシステムで発生し得る。したがってこの現象を反映させることは、現実的なペダル感覚のための別の1つの要素となる。
【0031】
1つの実施形態では、ブレーキペダル特性曲線の測定は、車両が停止しているときのブレーキペダル特性曲線の測定にあたって、車両が動いているときの測定に対するシステム上の差異を考慮する。これらの相違する測定での相違は上に詳細に説明している。
【0032】
1つの実施形態では、本方法は次の別のステップを有する:
-測定されたブレーキペダル特性曲線と保存されているブレーキペダル特性曲線の間の差異が決定され、
-差異に依存してブレーキシステムの操作の事前定義された回数が変更される。
【0033】
測定されたブレーキペダル特性曲線と保存されているブレーキペダル特性曲線の間の差異は、たとえば多数の測定点を参照して、および/または両方のペダル特性曲線のアイドルストロークと剛性係数の比較によって決定することができる。測定シリーズをベースとして差異を分析することもできる。測定シリーズは時間推移も考慮に入れることができる。1つの差異ないし複数の差異の分析に基づき、およびまたはこれに依存して、ブレーキシステムの操作の事前定義された回数が変更される。たとえば、大きい差異および/または差異の急な増大は、ブレーキシステムの操作の回数の低減につながり得る。このような変更についての閾値は、車両固有および/またはハードウェア固有に規定することができる。差異が変更につながることがない許容範囲を設けることもできる。このような許容範囲を上回り、現実の特性曲線と格納されている特性曲線の間の相違が、ハードウェア損傷および/またはNVH問題のリスクの高まりが生じるほど大きくなったとき、このことはブレーキシステムの操作の回数の低減につながり、それにより、ブレーキペダル特性曲線の測定が可能な限りすみやかに再び実行ないし強制される。
【0034】
1つの実施形態では、ブレーキシステムのパラメータの長期的な変化は、短期的な変化よりも強く考慮される。ブレーキシステムのパラメータはたとえばブレーキパッドの厚み、ブレーキパッドの材質、液圧コンポーネントのブレーキ液の量、および/または液圧系の組付(たとえば取付位置)であり得る。
【0035】
ブレーキシステムの長期的な変化は、たとえばライン生産以降の車両誤差、ブレーキシステムの経年劣化、摩耗などによって引き起こされ得る。短期的な変化は、たとえば温度、フェーディングなどによって引き起こされ得る。短期的な変化はしばしば車両の他のシステムによって補われる。ブレーキペダル特性曲線の急すぎる、および/または大きすぎる変更は、ハードウェア損傷および/またはNVH問題のリスクの高まりにつながりかねない。長期的な変化を強く考慮することは、たとえば測定のシリーズの比較によって、および/または停止時の測定をより強く重みづけすることによって実現することができる。
【0036】
別の態様は、以上および/または以下に説明する方法を実施するためにセットアップされた車両の制御装置に関する。
【0037】
別の態様は、上に説明した制御装置を有する車両に関する。
【0038】
別の態様は、以上および/または以下に説明する、車両のブレーキペダル特性曲線を決定するための、本方法の利用法に関する。
【0039】
別の態様は、上で説明した制御装置で実行されたときに、上で説明した方法を実施するように制御装置に指示するプログラム要素に関する。
【0040】
別の態様は、上に説明したプログラム要素が保存されているコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
【0041】
次に、本発明を改良するさらに別の方策について、本発明の好ましい実施例の説明とともに図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】1つの実施形態に基づく車両を示す模式図である。
【
図2】1つの実施形態に基づくブレーキペダル特性曲線を示す模式図である。
【
図3】1つの実施形態に基づく剛性決定をする装置を示す模式図である。
【
図4】1つの実施形態に基づくブレーキペダル特性曲線の測定を示す模式図である。
【
図5】1つの実施形態に基づく方法を示す模式図である。
【
図6】1つの実施形態に基づく別の方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、1つの実施形態に基づく車両10の模式図を示している。この車両は、ブレーキシステム25の制御部35を有している。制御部35は、ブレーキシステム25を操作するためのブレーキペダル12によって制御され、ブレーキシステム25は、車両10のためのブレーキ作用を生成するためにセットアップされている。ブレーキペダル12はブレーキペダルシミュレータ14を有していて、これに対してブレーキペダル特性曲線30(
図2参照)が適用される。ブレーキシステム25は4つの摩擦ブレーキ20を有していて、これらは電気機械式のアクチュエータ21と、それぞれ1つの液圧コンポーネント22-ここではブレーキ配管として模式的に示す-によって液圧接続されている。さらにブレーキシステム25は、同じく制御部35により制御される回生ブレーキ15を有している。制御部35は、たとえばブレーキペダル特性曲線30を保存することができる記憶装置37を有している。ブレーキングのときに車両10のためのブレーキ作用を生成するために、回生ブレーキ15だけを使用することができ、または摩擦ブレーキ20だけを使用することができ、またはこれら両方の部分ブレーキシステム15および20を原則として自由に選択可能な比率で使用することができる。
【0044】
図2は、1つの実施形態に基づくブレーキペダル特性曲線30,31の模式図を示している。ここではブレーキペダル特性曲線30は、電気機械式のアクチュエータ21のストロークに依存する、液圧コンポーネント22の圧力の関数である(
図1参照)。y軸には液圧コンポーネント22における圧力pが、x軸の電気機械式のアクチュエータ21のストロークsに依存して表示されている。圧力pは-ブレーキシステムの実施形態に応じて-追加または代替として、ブレーキペダル12により制御される、および/または機械的に連結される主シリンダ(マスタシリンダ)の圧力を考慮することができる。示している
図2では、第1のブレーキペダル特性曲線30が測定されたブレーキペダル特性曲線31と対比されている。両方のブレーキペダル特性曲線の間でアイドルストロークs0と剛性fの変化を明らかに認めることができる。ブレーキペダル特性曲線30,31の測定のために、複数回の個別測定-およびそれに伴ってブレーキング-が必要となり得る。
【0045】
図3は、1つの実施形態に基づく剛性決定をする装置50の模式図を示している。入力部51には、液圧コンポーネント22(
図1参照)の圧力pと、電気機械式のアクチュエータ21のストロークsが入力データとして印加される。圧力pとストロークs(
図2参照)は、剛性fの(新規)決定のためにコンポーネント52で利用される。ストロークsと剛性fは、アイドルストロークs0の見積りのために利用される。アイドルストロークs0はおよそ0から6mmであり得る。アイドルストロークs0はブレーキペダル特性曲線30とともに、目標圧力p
*の決定のために利用される。さらにブレーキペダル特性曲線30は、たとえば妥当性のない測定を破棄するために、剛性fの決定にも取り入れられる。目標圧力p
*と剛性fは、仮想的な目標圧力pvの決定のために利用される。仮想的な目標圧力pvと圧力pが、トランジションロジック54に伝送される。トランジションロジック54は、液圧式のブレーキングから回生式のブレーキへの移行およびこれと逆の移行が運転者にほとんど、またはまったく感知可能でないように作用する。これに加えてトランジションロジック54は信号「ブレンディングモード」bを考慮することができ、これによって純粋に液圧式に(すなわち摩擦ブレーキ20のみによって)ブレーキがかけられるべきか(もしくはかけられるか)、それとも発電機によって(回生ブレーキ15によって)ブレーキングが補助されるかが調整される。さらにトランジションロジック54は、ブレーキペダル運動56を考慮することができ、これによりブレーキペダル12の運動の動的な側面が制御部に取り入れられる。その結果として、トランジションロジック54は目標減速tdを供給する。これが仮想的な目標圧力pvとともに装置50の出力部59に印加される。
【0046】
図4は、1つの実施形態に基づくブレーキペダル特性曲線30の測定プロセスのグラフ60を示している。ここでは、ブレーキペダル12により制御される、および/または機械的に連結されている主シリンダ(マスタシリンダ)の圧力が考慮される、ブレーキシステムのアーキテクチャが採用される。グラフ60では、x軸に時間tがプロットされており、この時間中にブレーキペダル12(
図1参照)が操作され、その間に測定が実行される。ブレーキペダル12のストロークsが、上側の破線の曲線sとして表示されており、ブレーキペダル12の速度vが下側の曲線vとして表示されている。この実施形態では、(たとえばブレーキ液の)動的効果が測定を使い物にならなくしないようにするために、ブレーキペダル12の速度vが最高速度v
maxを超えてはならない。測定62は開始時間tsと終了時間teの間で行われる。開始時間tsのとき、アイドルストロークs0(
図3参照)の決定が成功裡に完了していなければならない。開始時間tsの前の時点t0のとき、オリフィス穴が閉じていなければならない。測定62の間に、(たとえばフロントアクスルでの)容積ブレンドが行われてはならない。容積ブレンドと呼ばれるのは、ブレーキペダル12のペダル操作によって移送される容積がホイールブレーキキャリパに送られるのでなく別の場所に蓄えられ、それに伴って液圧ブレーキトルクの生成を防止し、そのようにして利用できる発電機トルクを完全に利用するプロセスである。さらに、コントローラ介入(Controller-Intervention、たとえばABSによる)が行われてはならない。
【0047】
図5は、1つの実施形態に基づく方法の模式図をフローチャート80として示している。ステップ81で、ブレーキペダル特性曲線30(
図2参照)の測定が実行される。ブレーキペダル特性曲線30の測定は、たとえば事前定義された回数のブレーキシステム25の操作(および/またはその他の動的に判定される基準)の後に実行される。測定は電気機械式のアクチュエータ21によって行われる。いくつかの実施形態では、ブレーキペダル12により制御される、および/または機械的に連結されている主シリンダ(マスタシリンダ)の圧力が代替的また追加的に考慮される、ブレーキシステムのアーキテクチャが利用される。測定時には、ブレーキ作用の少なくとも1つの部分が摩擦ブレーキ20によって生成される。ステップ82で、測定されたブレーキペダル特性曲線31が記憶装置に保存される。たとえばブレーキペダル特性曲線31を車両の制御システムに格納することができ、それに伴い、回生ブレーキが関与するブレーキングのときにも利用することができる。たとえば測定が不安定なときや完全でないときには、測定された各々のブレーキペダル特性曲線を保存しないのが有意義であり得る。ステップ83で、それまでブレーキシステムで使用されていたブレーキペダル特性曲線が、測定されたブレーキペダル特性曲線によって置き換えられる。その際に、測定されたブレーキペダル特性曲線への置き換えについての事前定義された基準を適用することができる。たとえば、それまで使用されていたブレーキペダル特性曲線からの大きい逸脱は妥当性がないとして破棄することができる。
【0048】
図6は、1つの実施形態に基づく別の方法の模式図をフローチャート100として示している。この方法はステップ101で開始される。ステップ102で、車両10(
図1参照)が停止しているか動いているかがチェックされる。車両10が停止しているとき、ステップ103で、上で詳細に説明したように停止時の測定が実行される。その際には、たとえば電気機械式のアクチュエータが制御され、そのようにして停止時にブレーキングを実行し、そのときに測定を実行し、場合により保存する。1つの実施形態では、停止時のブレーキペダル特性曲線の測定を、事前定義された回数のブレーキシステムの操作に関わりなく-かつ、たとえば測定がなされなかったブレーキングの回数を計数するカウンタのレベルにも関わりなく-実行することもできる。このような停止時の測定では、運転者は車両10の外にいることができる。ステップ104で、測定が特定の基準を満たしているか(上記参照)、それとも測定を破棄しなければならないかがチェックされる。測定が成功したと判断されると、ステップ105で、それまでブレーキシステムで使用されていたブレーキペダル特性曲線が測定されたブレーキペダル特性曲線で置き換えられ、カウンタがゼロにセットされる。引き続きステップ114で方法を終了することができ、またはステップ101であらためて開始することができる。
【0049】
車両10が停止していないとき、ステップ106で、車両10の新規始動が行われたか否かがチェックされる。イエスであれば、ステップ107でカウンタが読み込まれる。引き続きステップ108で、カウンタが事前定義された値を上回っているか否かがチェックされる。イエスであれば、ステップ109で次回のブレーキングのときに摩擦ブレーキ20(
図1参照)の関与が強制され、および/または次回のブレーキングが摩擦ブレーキ20のみによって実行される。その後にステップ112で、それまでブレーキシステムで使用されていたブレーキペダル特性曲線が測定されたブレーキペダル特性曲線によって置き換えられ、カウンタがゼロにセットされる。ステップ108で、カウンタが事前定義された値をまだ上回っていないことが確認されると、ステップ110で「通常の」ブレーキングが実行される。ステップ110で、このブレーキング中にブレーキペダル特性曲線の測定が首尾よく行われたときは、ステップ112で、それまでブレーキシステムで使用されていたブレーキペダル特性曲線が測定されたブレーキペダル特性曲線によって置き換えられ-ないしは複数の小さいステップで適合化され(「穏やかな」もしくは「漸増式の」変更)-カウンタがゼロにセットされる。そうでない場合、ステップ113でカウンタが増分される。引き続きステップ114で方法が終了され、またはステップ101であらためて開始される。
【符号の説明】
【0050】
10 車両
12 ブレーキペダル
15 回生ブレーキ
20 摩擦ブレーキ
21 電気機械式のアクチュエータ
22 液圧コンポーネント
25 ブレーキシステム
27 不揮発性メモリ
30 測定されたブレーキペダル特性曲線
31 保存されているブレーキペダル特性曲線
33 差異
35 制御装置
37 不揮発性メモリ