(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電力管理装置および電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241111BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20241111BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241111BHJP
【FI】
H02J3/00 180
F24F11/47
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020095721
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、2019年5月31日及び2019年8月9日において、自社HP内で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】516180955
【氏名又は名称】株式会社HR
(74)【代理人】
【識別番号】100115510
【氏名又は名称】手島 勝
(72)【発明者】
【氏名】網島 弘幸
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6205475(JP,B1)
【文献】特開昭61-031860(JP,A)
【文献】特開2005-044320(JP,A)
【文献】特開2005-020861(JP,A)
【文献】特開2002-049723(JP,A)
【文献】特許第6300391(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00
F24F 11/47
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器の電気代を節約する電力管理装置であって、
空調室外機におけるインバータモータに制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタと、
前記制御周波数アダプタに接続され、前記制御周波数アダプタに前記制御周波数の信号を送る電力調整部と
を備え、
前記電力調整部は、
前記制御周波数の信号を切り替えるダイヤル部と、
前記ダイヤル部の切り替えに基づいた信号を伝える配線部と
を備えており、
前記配線部は、前記制御周波数アダプタに接続されるものであ
り、
さらに、前記電力管理装置は、
前記ダイヤル部が配置される筐体部と、
前記ダイヤル部が設けられた前記筐体部の上方を覆うカバー部と
を備えており、
前記筐体部には、前記ダイヤル部の切り替えに基づいて前記インバータモータへの制御周波数の信号を発生させる制御信号発生部が設けられており、
前記ダイヤル部が位置する箇所の下方の空間には、前記制御信号発生部が設けられている、電力管理装置。
【請求項2】
前記カバー部の一端は、前記筐体部の一部に開閉可能なように接続されており、
前記カバー部の他端は、前記配線部が通過する開口部が形成されている、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記ダイヤル部は、手動式で、少なくとも三段階の切り替えを行う構造を有している、請求項
1に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記ダイヤル部は、遠隔操作で切り替えを行う構造を有している、請求項
1に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記電力管理装置は、デマンドレスポンス指示を受信してデマンドレスポンス制御装置として機能する、請求項1から4の何れか一つに記載の電力管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理方法および電力管理装置に関する。特に、店舗(パチンコ店、ホームセンター、カーディーラー、コンビニエンスストアーなど)の空調を制御することによって消費電力を節約する電力管理方法および電力管理装置(省エネルギーシステム)に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、冷房目的としても暖房目的としても、様々な場所で多くの空調機器が使用されている。これらの空調機器は、一般住居だけでなく、オフィス、工場、店舗、公共施設などの様々な場所に設置されている。このように設置される場所の特性、空間の広さなどに応じて、様々な能力や特徴を有する空調機器が製造・販売されている。このような空調機器は、非常に大きな電力を消費する。例えば、一般家庭や店舗などでは、全ての電気設備が消費する電力の2~3割を空調機器が消費しているとのデータもある(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
今日、化石燃料の枯渇、原子力発電に対する規制や反対の増加などから、発電業界や発電事情には困難が生じている。加えて、地球温暖化防止のために、化石燃料を用いた発電に対する規制や厳しい視線も増加する傾向にある。これに対して、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いた発電の技術進歩や普及はまだまだである。このため、世界的に電力消費を抑える省エネが叫ばれている。そして、このような状況においては、空調機器による消費電力を軽減することが世界各国および様々な分野で求められている。
【0004】
現在市販されている空調機器は、冷房時の所定温度以下への低下や、暖房時の所定温度以上への上昇に対応して、インバータ機能が設けられている。インバータ機能は、例えば冷房時に使用者が設定している温度で冷風を送出している間に、設定温度を所定よりも下回った温度となると、冷風の送出を低減または停止させる。空調機器が暖房として使用されている場合は逆である。このインバータ機能によって、設定温度を乖離した冷風または温風の送出を抑えることができ、その結果、消費電力を削減することができると考えられている。
【0005】
しかしながら、消費電力の削減ひいては電気料金の削減を図るには、空調機器のインバータ機能の動作だけでなく、電力会社との間の契約電力にも注意をする必要がある。ここで、契約電力とは、電力会社(例えば、東京電力、関西電力など)と電力需要家(例えば、店舗の運営者)との間で結ばれる電力供給の契約値のことをいう(例えば、特許文献2参照)。この契約電力の監視用計器として用いられるものが最大需要電力計である。なお、電気供給契約でその計測時間が30分と規定されていることから、これを30分最大需要電力計と呼んでいる。また、需要電力(デマンド)とは、電気供給契約によって定められた30分間の平均電力をいい、一ヶ月の最大値を最大需要電力(最大デマンド)という。
【0006】
契約電力が500kW未満の電力需要家は、いわゆる実量値契約が適用され、その月の契約電力は、最大需要電力計によって測定されたその月を含む過去1年間の最大需要電力(最大デマンド)に自動的に決定される。したがって、契約電力が500kW未満の電力需要家は、デマンドが契約を超えないようにする必要があり、また、毎月の最大デマンドを制御することによって契約電力を下げることができる。そして、契約電力が下がれば、それに応じて電気料金を節約することが可能となる。
【0007】
一方、最大需要電力計の値が500kW以上となった場合は、使用する負荷設備および受電設備の内容、同一業種の負荷率、操業度などを基準として、電力需要家と電力会社との間で協議して契約電力を決定することになる。現在、スーパーマーケット、専門店、百貨店、百貨店などの大型店舗当は、契約電力が500kW以上の場合が多い。このような電力需要家にとっては、電気料金の低減のためにデマンド制御を行うことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-4444号公報
【文献】特開2001-197661号公報
【文献】特許第6205475号明細書
【文献】特許第6300391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の技術において、インバータ機能やデマンド制御によって、空調機器における消費電力の削減または電気料金の削減が試みられている。しかしながら、本願発明者の検討によれば、どのようにインバータ機能・デマンド制御を駆使しても、それ以上は電気料金を低下できない壁があった。もちろん、その壁は、電力会社や電力需要家などにとっては技術的に想定される常識的なものであるので、それよりも電気代が低下できるとは思いもよらないものであった。
【0010】
本願発明者は、パチンコ店の空調機器においてより一層の電気料金の削減に取り組み、快適性を損なわずに、電気代を削減できる装置・方法(電力管理装置および電力管理方法)を完成し、そのアイデアを製品化するとともに特許権を取得した(特許文献3、特許文献4)。本願発明者が完成した電力管理装置および電力管理方法は、非常に優れたものであったので広く普及し、日本全国において年間の電力料金換算で約13億円(2019年度の電力料金単価で試算)の削減に成功している。
【0011】
一方で、快適性を損なわずに電気代を削減できるという優れた当該装置・方法でありながら、本願発明者の営業・説明において、導入を決めかねている顧客に出会った。導入を決めかねている大きな理由の一つは、装置費用であり、節電の効果はわかるものの、導入するほど手持ちの資金がないというものであった。本願発明者は、節電の効果および環境負荷低減を理解してくれる顧客だけと話を進めた方がよいと判断して、そのように活動(営業、説明)を進めていたところ、2020年2月頃から日本においても新型コロナウイルス感染の拡大に伴って、経済活動の自粛および緊急事態宣言の発令がされるようになり、これは、単なる電力削減の問題でなく、日本全体の経済活動にかかわる問題であることを自覚した。すなわち、経済活動の自粛により、全ての業種において売上増の達成が極めて厳しくなり、コスト削減の重要性が、それ以前とは比べものにならないほど高まっている。そして、ここ1~2ヶ月のことだけでなく将来のことまで含めて経営判断すると、安易な人員削減も行うことができず、また、店舗の縮小や閉鎖を行うことも容易ではない。
【0012】
このような中、本願発明者は、快適性を損なわずに電気代を削減できるという優れた装置・方法こそ、この新型コロナの状況下で役に立つことを再認識し、いままでその装置・方法の導入に躊躇していた顧客にも、安心して導入してもらえるような新規の電力管理装置および電力管理方法を開発し、本発明に想到した。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、店舗(特に、小規模な店舗)において消費電力を節約する電力管理方法および電力管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電力管理方法は、空調機器の電気代を削減する電力管理方法であり、小売電気事業者である新電力会社に電力見積を求める新電力インターネットサイトを表示する工程と、前記新電力インターネットサイトにおいて電力見積を依頼する送信ボタンの操作によって電力見積データを送信する工程と、前記電力見積に基づいて選択した新電力会社への電力契約変更の依頼データを送信する工程と、前記電力契約変更の後において、インバータモータを備えた空調室外機に対して電力管理装置を取り付ける工程とを含む。前記電力管理装置は、前記インバータモータに制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタを備えており、前記電力管理装置を取り付ける工程においては、前記制御周波数アダプタは、前記インバータモータを制御する回路基板に接続される。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記電力管理装置は、前記制御周波数の信号を切り替えるダイヤル部と、前記ダイヤル部の切り替えに基づいた信号を伝える配線部とを備えている。前記配線部の一端には、接続端子が設けられている。前記電力管理装置を取り付ける工程において、前記接続端子は、前記制御周波数アダプタに接続される。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記ダイヤル部は、手動式で、少なくとも三段階の切り替えを行う構造を有している。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記ダイヤル部は、遠隔操作で切り替えを行う構造を有している。
【0018】
本発明に係る電力管理装置は、空調機器の電気代を節約する電力管理装置であり、空調室外機におけるインバータモータに制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタと、前記制御周波数アダプタに接続され、前記制御周波数アダプタに前記制御周波数の信号を送る電力調整部とを備えている。前記電力調整部は、前記制御周波数の信号を切り替えるダイヤル部と、前記ダイヤル部の切り替えに基づいた信号を伝える配線部とを備えている。前記配線部は、前記制御周波数アダプタに接続されるものである。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記ダイヤル部は、手動式で、少なくとも三段階の切り替えを行う構造を有している。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記ダイヤル部は、遠隔操作で切り替えを行う構造を有している。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、新電力インターネットサイトで電力見積を依頼した後、電力見積データを送信して、電力見積に基づいて選択した新電力会社への電力契約変更の依頼データを送信し、次いで、電力契約変更の後において、インバータモータを備えた空調室外機に対して電力管理装置を取り付ける。電力管理装置は、インバータモータに制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタを備えており、電力管理装置を取り付ける工程においては、制御周波数アダプタは、インバータモータを制御する回路基板に接続される。本発明によれば、まず、現在契約している電力契約よりも有利な新電力会社の電力契約に切り替えた後、電気代の中で最も占める大きい空調機器(エアコン)の電気代の節約を、外付け可能な電力管理装置を取り付けてその電力管理装置でインバータモータの回転数を制御することにより、店舗の電気代を大幅に下げることができる。一度、新電力会社による電力契約の見直しを行っていることで、比較的高額な電力管理装置(技術的に高度な制御装置)を用いなくても、比較的簡単な構造で安価な電力管理装置を使用しても、大幅な電気代の節約を行うことが可能となる。その結果、いままで費用的な面から、エアコン節電が可能な電力管理装置の導入に躊躇していた店舗にも広めることができ、したがって、大幅なコスト削減ができるとともに、地球環境の負荷の低減、および、経済活動の自粛の要請下(特に、新型コロナ感染自粛、または、新型インフルエンザ感染自粛の状況下)でも大きなコスト負担を抑えて役に立つものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る電力管理装置100および空調機器20を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電力管理装置100(本体部10)の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電力管理装置100(本体部10)の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電力管理装置100(本体部10)の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る電力管理装置100(本体部10)のダイヤル部15の構成を示す図である。
【
図6】(a)から(c)は、それぞれ、ダイヤル部15のスイッチ動作を示す図である。
【
図7】設置前と設置後の期間消費電力料金比較のグラフである。
【
図8】電力管理装置100を取り付ける場合における室外機29の内部の様子を模式的に示す図である。
【
図9】室外機29の外面に電力管理装置100を配置した様子を示す図である。
【
図10】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係る電力管理装置100を用いた省エネルギー化方法を説明するための説明図である。
【
図11】最大デマンド値との関係において契約電力を説明するためのグラフである。
【
図12】電気料金の算出方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る電力管理方法(省エネルギー化方法)を説明するためのフローチャートである。
【
図14】新電力会社に電力見積をできる新電力インターネットサイト200を説明するための図である。
【
図15】(a)および(b)は、それぞれ、電力管理装置100の導入前の電気料金301、および、電力管理装置100の導入後の電気料金302を示すグラフである。
【
図16】(a)および(b)は、それぞれ、電気契約が負荷設備契約および主開閉器契約であるときの店舗50の設備構成を示している。
【
図17】電力管理装置100(本体部10)のスイッチング部16を示した回路を示している。
【
図18】電力管理装置100(本体部10)のスイッチング部16及び16Bを示した回路を示している。
【
図19】インセンティブベースのデマンドレスポンス300の内容(負荷遮断・抑制)を説明するためのブロック図である。
【
図20】インセンティブベースのデマンドレスポンス300の内容(需要調整市場)を説明するためのブロック図である。
【
図21】(a)から(d)は、それぞれ、電気料金ベースのデマンドレスポンスの内容を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の詳細を説明する前に、既存の空調制御装置(エアコン電気代の節電装置・省エネ装置)について説明する。本願発明者は、エアコンを運転しながら(エアコンの運転を止めることなく)、エアコン電気代を節約することができ、すなわち、快適性を損なわずにエアコン電気代を大幅に抑えることができる電力管理装置(商品名「エコミラ」(登録商標))を開発・販売し、そして特許権も取得しており(例えば、特許文献3、特許文献4参照)、この装置の優れた効果もあって、日本全国に普及している。一方で、本願発明者が、店舗のオーナー・運営者(社長、店長、部長など)と話をする上で、すでにその店舗に、エアコン電気代節約装置が設置されていることもあった。そのエアコン電気代節約装置の大半は、デマンドコントローラー(いわゆる「デマコン」)と呼ばれるもので、エアコンの電気代が高くなりそうになると、強制的にエアコンを停止して、それによってエアコンの電気代の上昇を抑えるものである。このようなデマンドコントローラーを使用したエアコン電気代の削減は、店舗内が熱くなったり・寒くなったりするので、快適性が損なわれるものであり、そのような不快を嫌って、店舗の運営者がデマンドコントローラーの運転を切っていたケースも散見された。
【0024】
また、店舗のオーナー・運営者は、デマンドコントローラーがエアコンに設置されていたことを知らないこともあった。そして、デマンドコントローラーを単に勧められて設置しただけで、デマンドコントローラーによる電力削減効果を知らないことも多々あった。さらには、エアコンのデマンドを監視だけするデマンド監視システムと、デマンドコントローラーとを混同しているケースもあり、デマンド監視システムだけを取り付けて、エアコンの電力削減を行っていないケースもあった。
【0025】
既存のデマンドコントローラーの取付は、新型の省エネタイプのエアコンと同時に行われることが多い。これは、新型エアコンの入れ替えと、デマンドコントローラーの取付とを組み合わせると、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金が利用できるためであり、この補助金の利用自体は悪くないものであるが、節電効果や地球環境の負荷低減の認識・確認が緩くなりがちである。そして、地球環境の負荷低減を考慮するのであれば、新型のエアコンに切り替えるよりも、既存のエアコンを活かして、既存のエアコンの外付け(後付け)の空調制御装置を取り付けて、エアコンの節電を達成する方が遥かに地球環境の負荷低減に貢献する。そして、デマンドコントローラーはエアコンの運転を強制的に切るものであるため快適性を損ねてしまい、そのような快適性の低下から、デマンドコントローラーが設置されていても、デマンドコントローラーの運転が切られてしまっていて、節電効果が得られておらず、それゆえに地球環境の負荷低減にも貢献していないことが散見される。
【0026】
本願発明者が開発・販売している電力管理装置(商品名「エコミラ」(登録商標))は、エアコンを運転しながら(エアコンの運転を止めることなく)、エアコン電気代を節約することができるものであり、快適性が損なわれないので、評判が良かった一方で、当該電力管理装置(エコミラ)の購入費用が高く、導入を躊躇されるケースが出ていた。エアコンの節電費用を考慮すると、もちろん、当該電力管理装置(エコミラ)の購入・導入費用は十分安いものであるが、それでも店舗オーナー・運営者からしたら、初期投資額だけで判断されてしまい、その結果、その店舗オーナー達に対して節電効果や地球環境の負荷低減の効果を与えることができないことがあった。また、当該電力管理装置(エコミラ)の設置による節電効果は、店舗が大きければ大きいほど大きい(使用する電気代が多いので)のであるが、それゆえに、小・中規模の店舗に、当該電力管理装置(エコミラ)の普及が進みにくいこともあった。
【0027】
そのような中、本願発明者は、新型エアコンの入れ替えとデマンドコントローラーの取付とを同時にしなくても、既存のエアコンへの後付けで節電効果をえることができ、さらには、小・中規模の店舗においても節電効果を感じてもらえる電力管理方法・装置を開発し、本発明に至った。
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る電力管理方法および電力管理装置100(省エネルギーシステム100)を説明する構成模式図である。本実施形態の電力管理装置100は、インバータモータ24を備えた空調室外機29に取り付けられるものである。そして、電力管理装置100は、インバータモータ24に制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタ22を備えている。電力管理装置100の本体部(電力調整部)10は、配線部19を通じて制御周波数アダプタ22に接続されている。さらに、制御周波数アダプタ22は、インバータモータ24を制御する回路基板23に接続されている。
【0030】
本実施形態の構成において、インバータモータ24を含む空調機器装置20は、店舗50に事前に取り付けられたものであり、典型的には、店舗50の新築時に設置されたものである。本実施形態の電力管理装置100(または、インバータ周波数調整システム)は、すでに設置されている空調機器装置20(ここでは、空調室外機29)に後から取り付けることが可能である。もちろん、店舗50の新築時に、空調機器装置20とともに電力管理装置100を取り付けることも可能である。
【0031】
本実施形態の空調機器装置20は、店舗50内に配置された空調室内機60と、インバータモータ24を含む空調室外機29とから構成されている。空調室内機60は、店舗50内に空気調和された空気(所定温度の冷房または暖房の空気)を送り出すことができる。空調室内機60と空調室外機29とは、冷媒ガスが通過するパイプ60aによって接続されている。インバータモータ24は、パイプ60a内の冷媒ガスを移動させることができる。また、空調室外機29には、ファン21が取り付けられており、そのファン21によって、冷房の場合には温められた空気を空調室外機29から外部へ放出することができる。
【0032】
本実施形態の電力管理装置100(インバータ周波数調整システム)は、インバータモータ24を含む空調機器装置20のインバータモータ24の周波数を制御することができる。具体的には、電力管理装置100は、インバータモータ24の周波数を制御することによって、実質的に同じ冷房(または暖房)の効果を与えながら、電気代を節約するような動作を行うように指令を行う。なお、空調機器装置20においても、空調室外機29内の回路基板(23)にインバータモータ24の周波数を制御する回路が含まれているが、本実施形態の電力管理装置100は、それとは別に、電気代を節約するような動作としてインバータモータ24の周波数を制御するものである。
【0033】
本実施形態の電力管理装置100は、制御周波数アダプタ22を介して、インバータモータ24に接続されている。なお、インバータモータ24は、当該インバータモータ24を制御する回路基板23に電気的に接続されており、本実施形態の構成では、制御周波数アダプタ22は、回路基板23に電気的に接続されている。そして、電力管理装置100からの制御周波数の信号は、制御周波数アダプタ22を経て、インバータモータ24に伝えることができる。電力管理装置100は、配線部19を介して、制御周波数アダプタ22に接続されている。本実施形態の構成では、制御周波数アダプタ22は、室外機29の内部に取り付けられている。そして、電力管理装置100の本体部10は、室外機29の外側(外壁、外枠など)に取り付けされている。
【0034】
本実施形態の店舗50は、パチンコ店舗、ゲームセンター店舗、レストラン店舗、喫茶店店舗、ドラックストアー店舗、本屋店舗、レンタルビデオ店舗、カーディーラー店舗(車販売店)、ホームセンター店舗、コンビニエンスストアー店舗、スポーツジム、介護施設(老人ホーム)、病院、学校、映画館、劇場、ボウリング場、カプセルホテル、ホテル、スーパーマーケット、家電量販店、大規模又は中小規模の工場、食品工場、パン工場、菓子工場・工房、商業施設、保育園、エステサロン、美容院・ヘアーサロン、ゴルフ場(クラブハウス、ゴルフ練習場)、葬儀場などである。ただし、それ以外の店舗であっても構わない。
【0035】
次に、
図2から
図6を参照しながら、本実施形態の電力管理装置(省エネルギーシステム)100について説明する。
【0036】
図2及び
図3は、本実施形態の電力管理装置100の本端部10(又は、インバータ周波数調整器、エアコン電力調整部)の構成を示している。
図2は、電力管理装置100の本端部10の全体構成を正面から示した斜視図であり、
図3は、その本端部10の全体構成を斜めからみた斜視図である。また、
図4は、本端部10(エアコン電力調整部)の蓋部11を閉じた状態を示している。
図5は、本端部10(エアコン電力調整部)のダイヤル部15の様子を示している。また、
図6(a)から(c)は、それぞれ、ダイヤル部15が「標準」、「切」、「強」の位置に切り替えられた様子を示している。
【0037】
本実施形態の電力管理装置100(本端部10)は、筐体部10aと、筐体部10a内に配置されたダイヤル部15と、制御信号発生部16とから構成されている。制御信号発生部16は、ダイヤル部15の切り替えに基づいて、インバータモータ24への制御周波数の信号を発生させる回路部である。本実施形態では、制御信号発生部16は、リレー回路から構成しているが、他の構成例のものを採用してもよい。
【0038】
本実施形態の構成では、制御信号発生部16から配線部19が延びている。配線部19の一端には、接続端子(コネクタ部)18が設けられている。接続端子(コネクタ部)18は、制御周波数アダプタ22(
図1参照)に接続される。また、本実施形態の構成では、ダイヤル部15が設けられた筐体部10aの上方を覆うカバー部11が形成されている。本実施形態のカバー部11の一端11aは、筐体部10aの一部に開閉可能なように接続されている(図示した例では、ヒンジ構造)。そして、カバー部11の他端11bは、配線部19が通過する開口部13が形成されている。
図4に示すように、カバー部11を閉じた時において、配線部19は開口部13を通じて外部に延びることができる。カバー部11は、例えば、樹脂(一例として、エンジニアリングプラスチック製)から構成されているが、その他の材料(金属(例えば、ステンレス、アルミニウム)、セラミック、木製など)でも構わない。カバー部11を構成する材料としては、電力管理装置100(本端部10)は、室外機29の外面に配置されて、雨風に曝されるものであるので、さびにくく、強度があるものが好ましい(例えば、樹脂、ステンレスなど)。また、本実施形態の構成では、
図4に示すように、カバー部11にリブ部11c(凸部、または、それ以外の箇所の凹部)を設けて、リブ部のない平坦な構造のものと比較して、強度を向上させた構造にしている。
【0039】
本実施形態の構成例(特に
図3参照)では、ダイヤル部15は、台座部12の上に載置されている。本実施形態のダイヤル部15は、手動式の回転(回動)の構造のものである。なお、ダイヤル部15は、回転式のものでなく、スイッチできるものであれば、特に限定されない。例えば、ボタン式のものであってもよいし、デジタル的に入力(例えば、「1」「2」「3」(あるいは、「A」「B」「C」などの入力)に対応してスイッチできる構造・機構のものであってもよい。図示した例では、手動式のダイヤル部15を示したが、電動式のダイヤル部15でもよいし、遠隔操作でスイッチングできるダイヤル部15であってもよい。なお、図示したような手動式のダイヤル部15は、その構造が簡単でコストを安くすることができるというメリットがある。
【0040】
また、本実施形態の構成例では、台座部12は、上部(上面12a)にダイヤル部15を配置し、台座部12の下(下方)の空間に、制御信号発生部16(リレー回路の構造体)が配置されている。図示した例では、台座部12は、ダイヤル部15が配置された上面12aと、上面12aから鉛直方向(直角方向)に延びた壁部12bとから構成されている。そして、台座部12は、壁部12bの下部で、筐体部10a内に配置された基板構造体10bに接続されている。このように台座部12が、L字形状(または、略L字構造体)となっていることから、簡単な構造で、ダイヤル部15を配置することができるともに、空間的に効率良く、制御信号発生部16を収納することができるという利点がある。本実施形態の台座部12は、金属材料から構成されている(例えば、真鍮、ステンレス、アルミニウムなど)が、その他の材料(他の金属(例えば、鉄、銅など)、樹脂、セラミック、木製など)でも構わない。
【0041】
図示した例(特に
図5参照)では、ダイヤル部15のスイッチ15aが、節電強度目印14の「標準」を指している場合を示している。スイッチ15aは、つまんで回すことができる構造となっており、スイッチ15aの切り替えによって、節電の強度を変更することができる。
図6(a)は、スイッチ15aを「標準」にしたものである。そして、
図6(b)は、スイッチ15aを「切」にしたもので、
図6(c)は、スイッチ15aを「強」にしたものである。
【0042】
本実施形態の構成の一例(
図6(a)参照)では、節電強度目印14が「標準」のときは、一律で、空調機器20の運転(ここでは、インバータモータ24の回転数)を30%削減(または、25%削減)する設定にしてある。すなわち、ダイヤル15が「標準」のときは、運転(インバーターモータ24の回転数)を抑制することにより、電気代を削減することができる。さらに説明すると、ダイヤル15を「標準」にすると、制御信号発生部16から、インバータモータ24への制御周波数の信号(ここでは、一例として、インバータモータ24の回転(運転)を30%削減する制御信号)が発信される。その制御信号(例えば、30%低減のインバータモータ24への制御周波数の信号)が配線部19を通り、そして、制御周波数アダプタ22(
図1参照)、および、インバータモータ用の制御回路基板23を介して、インバータモータ24の回転(運転)を制御する(ここでは、30%カットの運転に制御する)。
【0043】
本実施形態の構成の一例(
図6(b)参照)では、節電強度目印14が「切」のときは、空調機器20の運転(ここでは、インバータモータ24の回転数)を0%削減する設定、すなわち、回転数の削減の制御しないようにしてある。したがって、この「切」の設定のときは、節電効果は得られない。一方で、インバータモータ24の回転数に制限がかけられていないので、インバータモータ24(および空調機器20)の運転は最大値を出すことができる。
【0044】
節電強度目印14が「切」の設定が必要性について次に説明する。空調機器(エアコン)20の効きが悪いときは、いろいろな要因がある。例えば、空調機器(エアコン)20のスイッチを入れたばっかりとか、直射日光(例えば、西日)がさしているとか、発熱するものが持ち込まれたとか、通常よりも多くの人数が瞬間的に店舗に押しかけてきたとか等である。この時、しばらくすると、空調機器(エアコン)20が効いてきて、エアコン設定の温度になるケースが多いのであるが、人間はせっかちであるので、店舗の運営者(または、店員、スタッフ)は、エアコンの効きが悪いのは、電力管理装置100が原因に違いないと決めつけて、電力管理装置100を取り外したり、動作しないようにしてしまう可能性がある。この電力管理装置100の取り外し等を、店舗のオーナーが知らないと、節電効果がない状態での運転にもかかわらず、節電の効果が得られていないと勘違いしてしまうおそれがある。そのようなことを防止するために、節電強度目印14が「切」の設定を設けて、空調機器(エアコン)20の本来の運転に回復できる状態にできるようにしている。
【0045】
本実施形態の構成の一例(
図6(c)参照)では、節電強度目印14が「強」のときは、一律で、空調機器20の運転(ここでは、インバータモータ24の回転数)を50%削減する設定にしてある。すなわち、ダイヤル15が「強」のときは、運転(インバーターモータ24の回転数)を大幅に抑制することにより(すなわち、半分程度)、電気代を大幅に削減することができる。さらに説明すると、ダイヤル15を「強」にしたら、制御信号発生部16から、インバータモータ24への制御周波数の信号(ここでは、一例として、インバータモータ24の回転(運転)を50%削減する制御信号)が発信される。その制御信号(例えば、50%低減のインバータモータ24への制御周波数の信号)が配線部19を通り、そして、制御周波数アダプタ22(
図1参照)、および、インバータモータ用の制御回路基板23を介して、インバータモータ24の回転(運転)を制御する(ここでは、50%カットの運転に制御する)。
【0046】
ここで、節電強度目印14を「強」にしたときの節電の効果について説明する。
図2に示したような本実施形態の電力管理装置100を1台設置したときにおける期間消費電力料金の比較グラフを
図7に示す。室外機29として、店舗・オフィス用エアコン(10馬力)が1台設置されている店舗50を想定している。電力料金試算条件は次の通りである。規格はJIS B8616:2015で、地区は東京、建物用途は戸建て店舗である。使用期間は冷房5月7日から10月17日まで、暖房11月17日から4月3日までで、使用日数は7日、使用時間は8:00~20:00である。電力料金単価は、22円/kWhである。電力管理装置100の設置前は、期間消費電力量7,510kWhであるが、電力管理装置100の設置後は、期間消費電力量3,840kWhまで低下させることができる。これを電気料金で表すと、
図7に示すように、電力管理装置100の設置前は165,220円/月であったものが、電力管理装置100の設置後は84,480円/月まで下がり、年になおすと、約80,000円/年の電気代を削減することができる。店舗・オフィス用エアコン(10馬力)が1台での年間約8万円も節約できるコストカットのメリットは非常に大きいものである。
【0047】
なお、店舗・オフィス用エアコン(10馬力)の出力(インバータモータの回転数)を50%もカットしたら(5馬力の出力)、店舗50の空調の効きが悪くなるのではないかという懸念があるが、それは錯覚であることが多い。空調機器(エアコン)20は、始動にエネルギ(電力)が多くかかるが、10馬力の半分の出力(5馬力)でも、時間を少しだけ長くかけてあげたら(例えば、2時間で設定温度になるところを、2時間半かける)、出力を落とした状態でも、ちゃんと設定温度に到達させることができる。設定が「強」であると効きが悪いという店舗50だとしたら、設定を「標準」にすれば、設定が「切」の時(制御は0%カット)と比較しても、違和感はない。逆に、デマンドコントローラーの使用のように、急にエアコンをオフにして、送風状態にする方が違和感が出て、店舗50内の人(スタッフ、客)に不快感を与えてしまう。
【0048】
図8は、室外機29の内部に制御周波数アダプタ22を取り付けた様子を示している。ここでは、室外機29の蓋(または扉)を開いて、所定箇所に制御周波数アダプタ22を配置する。制御周波数アダプタ22の端子22aに対して、電力管理装置100の本体部10から延びた配線部19の一端(端子)を接続する。そして、制御周波数アダプタ22の端子22bに連結配線26を繋いで、その連結配線26を、インバータモータ用の制御回路基板23の端子23a(具体的には、室外機基盤の回部外部入力端子)に接続する。最後は、室外機29の蓋(または扉)を閉めたら、元通りになる。室外機29の蓋の隙間
に配線部19を通すことができれば、室外機29に穴を空けることなく、電力管理装置100(本体部10)の取付を完了することができる。このようにして、電力管理装置100の本体部10を、制御周波数アダプタ22およびインバータモータ用の制御回路基板23を介して、インバータモータ24に電気的に接続することができる。言い換えると、電力管理装置100の本体部10(制御信号発生部16)から、インバータモータ24への制御周波数の信号(一例として、インバータモータ24の回転(運転)を50%削減する制御信号(設定「強」))が発信され、その制御信号(50%低減の制御周波数の信号)によって、インバータモータ24の回転を制御することができる。
【0049】
図9は、本実施形態の電力管理装置100(本体部10)を室外機29に取り付けた様子を示している。本実施形態の構成では、本体部10の筐体10aの裏面は磁石になっており、したがって、本体部10を室外機29の表面に取り付けることができて便利である。
【0050】
次に、
図10(a)および(b)を参照しながら、本実施形態の電力管理装置100(省エネルギーシステム)による空調電気代の節約(低下)の効果についてさらに説明する。
【0051】
図10(a)は、空調室内機60および空調室外機29を含む空調機器装置20の構成を示している。
図10(b)は、空調室外機29に備え付けられているコンプレッサ25内のインバータモータ24を示している。
【0052】
ここでは、店舗50の空調の例として、真夏にできるだけ早く室温を設定温度(冷房温度)にする場合について説明する。エアコンが起動していない時の店舗内温度を30℃として、起動しているときの温度を26℃(エアコン設定温度)の場合を想定して説明する。なお、真冬に暖房する場合は、この逆の説明として理解することができる。
【0053】
まず、
図10(a)に示すように、店舗50内の空気を冷房(空調)する場合は、空調室内機60によって店舗内空気(室温)を吸い込み(矢印91)、そして、室温よりも5℃程度温度を下げた冷房空気を店舗内に排出する(矢印92)。そして、空調室内機60から店舗50外へ延びるパイプ60a内の冷媒は、奪った熱をコンプレッサ25の方に運ぶ(矢印93)。
図10(b)に示すように、コンプレッサ25内のインバータモータ(圧縮機用インバータモータ)24の動作によって冷媒(94)は(下流へと)移動し、次いで、
図10(a)に示すように、奪った熱はファン21を通じて外部に放出される(矢印95)。その後、熱を放出した冷媒(冷たい冷媒)は矢印96に示すようにパイプ60a内を進み、続いて、矢印97に示すように店舗50内に入る。そして、再び、空調室内機60の中を通って熱を奪い、その奪った熱を矢印93に示すように店舗50外に持ち出す。この動作の繰り返しによって、店舗50内は冷却される。
【0054】
空調装置(エアコン)の電気代節約で一番重要なのはインバータモータ24の電力(エネルギー消費)であり、インバータモータ24がエアコン電力の90%を占めている。しかしながら、家庭用のエアコンであれば、真夏であっても我慢してエアコンを付けない(またはエアコンの設定温度を下げる)という手法が使えるが、お客さんが訪問する店舗50(特に、パチンコ店舗、コンビニエンストアなど)において、真夏にもかかわらずエアコンの冷房を付けないこと(または、設定温度を快適温度よりも上げること)は、集客・売上・お客の評判にも影響するので、事実上、エアコンの設定温度を変更すること(すなわち、高めの設定温度にすること)はできない。そこで、節電効果の高い業務用エアコンを導入するのであるが、それでも節電効果はある程度は得られるものの、大幅な効果は得られないのが実情であった。
【0055】
一方、本実施形態の電力管理装置100(インバータ周波数調整システム)をインバータモータ24に接続して制御した場合は、次の通りになる。
図10(a)に示すように、空調室内機60によって店舗内空気(室温)を吸い込む(矢印91)。この時、電力管理装置100で制御されていないときは(通常のエアコンの出力のとき)、外気よりも5℃程度低い温度の冷房空気92を排出していたが、本実施形態の電力管理装置100を用いた時は、インバータモータ24の運転(回転)が抑えられているので、例えば4.2℃程度低い温度の冷房空気92を排出する。すなわち、制御していない時と比較して、0.8℃程度だけ高い冷房空気92を排出する。この僅かな差が、大きな節電効果をもたらす鍵となる。
【0056】
本実施形態の電力管理装置100を用いて制御しているときは、0.8℃程度だけ高い冷房空気92を排出する動作を行い、そして、インバータモータ24の回転数(制御周波数)は若干低くなる。それにより、開店時間に向けて、少しだけ長い間、エアコンを動作させておくことで、店舗50内をエアコン設定温度にすることができる。午前8時にエアコンのスイッチをオンすると、エアコン設定温度に向けて、インバータモータ24は、少しセーブした回転数で(例えば、30%セーブした回転の制御を行ったもの)、2時間30分後の午前10時半に設定温度に達する。すなわち、制御されていない時の動作と比較すると、30分だけ遅く設定温度に到達する。午前10時半が店舗の開店時間であれば、そこからは設定温度で店舗50内の空気は調和されているので、お客さんは快適に過ごすことができる。また、午前10時が開店時間であれば、午前7時半にスイッチオンをしておけばよい。ここで両者の違い車に例えると、制御されていない時は通常モードであって、スピード重視で早く目的地に到達する(エアコンに言い換えると、早く設定温度に到達する)。一方、制御されている時の動作はエコモード(省エネモード)であって、ゆっくりでも到達距離は変わらずに燃費重視(エアコンに言い換えると、設定温度には到達するが、通常モードよりも少しだけ時間がかかる)。そして、本実施形態の電力管理装置100で制御した動作を行うと、最大デマンド値を抑制することができ、その結果、電気料金を大幅に下げることができる。この点の詳細は次に説明する。
【0057】
次に、
図11および
図12も参照して、本実施形態の電力管理装置100(省エネルギーシステム)による空調電気代の節約の効果について引き続き説明する。
図11は、1年の月を横軸にとり、最大デマンド値(kw)を縦軸にとったグラフである。そして、
図12は、電気料金が、基本料金と電力量料金の和であることを示した式である。
【0058】
店舗50の中で電気料金に一番影響を与えるのは、空調機器(エアコン)の電気代であり、そして、空調機器(エアコン)の電気代の90%は、インバータモータ24に関するものである。そして、店舗50の電気料金を抑えようとすると、通常は、空調機器(エアコン)の使用量を減らすか、設定温度を冷房であれば高めにする(暖房であれば低めにする)ことが行われる。ただ、電気料金に影響を与える重要な要素に最大デマンド値がある。高圧電力のメータは30分毎の電力の平均値を計算しており、これをデマンド値といい、1ヶ月の中で最大のデマンド値(最大デマンド値)が次の1年間の契約電力となる。
【0059】
したがって、
図11に示したグラフの使用状態においては、左側の8月の最大デマンド値が150kw(D1ポイント)であるので、契約電力は150kWとなる。しかし、右側の8月の最大デマンド値は160kw(D2ポイント)であるので、それから1年間の契約電力は160kWになる。すなわち、
図12に示すように、基本料金は、契約電力(過去1年間の最大デマンド値)と料金単価の積で決まり、その基本料金に電力量料金(1か月に使用した電力)を加えた額が、その月の電気料金になる。
【0060】
それゆえに、
図11に示した使用状態において、基本料金(最大デマンド値に基づく契約電力)が160kWにしないことが重要であり(150kWに留めておくことが重要)、それに比べると、電力量料金(1か月に使用した電力)を抑えることに重点をおいてしまうのは電気料金削減の効果を限定的なものにしかねない。そして、最大デマンド値を無理矢理抑えるために、最大デマンド値が設定値(例えば、150kW)を超えようとするような電力上昇カーブが検出されたら、空調機器(または、他の電気機器(冷蔵庫など))を強制的にオフにしてしまうような動作をすると、真夏なのにエアコン(空調機器)がとまってしまい、不快な店舗50になってしまうか、他の電気機器の不具合(例えば、冷蔵庫の停止)などがもたらされてしまい好ましくない。
【0061】
本実施形態の電力管理装置(省エネルギーシステム)100では、この最大デマンド値のコントロールを、事前に店舗のデマンド値(特に、1年間を通じての最大デマンド値、そして、毎月ないし季節変動の傾向)を予測または実測しておき、最大デマンド値が、契約電力を超えないような制御周波数の信号(すなわち、インバータモータ24への制御周波数の信号、例えば、インバータモータ24の回転(運転)を30%削減する制御信号)を、「標準」の設定にしておく。小規模の店舗(例えば、コンビニエンスストアーなど)は、客・スタッフの増減が激しくなく、店舗50内の空調の予測を行いやすく、最大デマンド値を超えてしまわないような設定を「標準」にしておけば、「標準」からスイッチを変えることなしで、電力量料金の削減(例えば、30%削減)とともに、最大デマンド値の上昇による契約電力アップを抑制することができる。もちろん、電力量料金の削減については、設定を「強」にすれば、より多くの効果を得ることができる。その一方で、設定を「切」にするときは、電力量料金の増大だけでなく、最大デマンド値の上昇による契約電力アップが発生しないように注意が必要である。
【0062】
次に、
図13を参照しながら、本実施形態の電力管理装置100を用いた電力管理方法(エアコンの省エネ方法)について説明する。
図13は、本実施形態の電力管理装置100を説明するためのフローチャートである。
【0063】
本実施形態の電力管理装置100は、大規模の店舗50よりも、小規模の店舗50でも導入しやすいように、装置の構造を簡単にして、また、ダイヤル式のスイッチ15にし、スイッチ切り替えも3つ(「切」「標準」「強」)にして操作も簡単にしている。電力管理装置100の装置コストは比較的低いものにすることができている。一方で、大規模の店舗50では年間の電気代が高額であるので、節電によって生まれる効果が数百万円から1千万円以上になり得るが、小規模の店舗50の場合、その年間の電気代は、大規模店舗の電気代ほど高くはならないので、その分、節電によって生まれる効果が小さく見えることが多い(節約できる割合としては一緒でも、絶対額が小さくみえる)。そのことを踏まえて、小規模の店舗50でも電気代節約の効果を確実に実感してもらって、本実施形態の電力管理装置100を用いた電力管理方法を実行してもらうために次のような手法にしている。すなわち、まず、店舗50が契約している現在の電力契約を、より安い電力契約に変更を行って、その後で、電力管理装置100の設置を行う。このような手法(2ステップ電気代削減法)を行うと、より安い電力契約に変更の節電効果と、電力管理装置100による節電効果で、50%以上(最大59.61%)の電気代を削減できるケースがあり、この電気代削減は、大規模の店舗50だけでなく、中規模・小規模の店舗50でも魅力的である。
【0064】
本実施形態の電力管理方法では、小売電気事業者である新電力会社に電力見積を求める新電力インターネットサイトを表示し、そして、その新電力インターネットサイトにおいて電力見積を依頼する送信ボタンの操作によって電力見積データを送信する。次いで、その電力見積に基づいて選択した新電力会社への電力契約変更の依頼データを送信して、電力契約の変更を行う。電力契約変更の後、インバータモータ24を備えた空調室外機29に対して電力管理装置100を取り付ける。その後、取り付けた電力管理装置100によってインバータモータ24の制御(回転数の抑制)を行って節電しながら、空調機器(エアコン)20を動かす。電力管理装置100の構造および取付は、上述した通りである。具体的には、電力管理装置100は、インバータモータ24に制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタ22を備えており、電力管理装置100を取り付ける際に、制御周波数アダプタ22は、室外機29の内部に設けられた回路基板23(すなわち、インバータモータ24を制御する回路基板23)に接続されることになる。
【0065】
次に、店舗50のオーナー・運営者(いわゆるユーザー)から見た場合の本実施形態の電力管理方法を、
図13に基づいて説明する。
【0066】
まず、ユーザが新電力会社への変更見積を行う(工程S100)。このような新電力会社への変更見積は、ユーザが一つ一つ確認しながら行ってもよいが、本実施形態の構成では、
図14に示すような、新電力会社に電力見積を求める新電力インターネットサイト200にアクセスして、そこで電力見積を行うことができる。
【0067】
図14に示した新電力インターネットサイト200では、新電力会社の見積のための条件項目210と、一括見積の送信ボタン220とが含まれている。条件項目210において適切なもの(必要項目)を選択し(または、書き込んで)、次いで、その選択した条件項目210に基づいて、一括見積の送信ボタン220を押すと、新電力会社の見積の依頼が完了する。その後は、新電力会社の見積を待つことになる。具体的には、条件項目210に登録したメールアドレスに、新電力会社の見積が届くことになる。新電力インターネットサイト200では、電話問い合わせボタン230、SNS(LINEなど)による相談ボタン240も用意されている。加えて、新電力インターネットサイト200には、商品説明欄250なども設けられている。
【0068】
図13に示すように、変更見積りをした後(S100)は、新電力へ変更した後の見積りを確認する(S120)。複数の見積りがある時は、最適なものを選択する。また、AI(人工知能)を導入して、複数の見積りのうち、適切なものを選択するような処理を行ってもよい。その後、新電力への変更申請を行う(工程S140)。新電力への変更申請が許可されると、新電力での電気契約になり、まずは、この段階で電気代が減る。
【0069】
次に、新電力での電気代契約に基づいて、その状態で電力管理装置100を設置した後の想定される電気代の見積り(電気代の算出)を行う(工程S150)。その後は、電力管理装置100を室外機29に設置する(工程S170)。設置後は電力管理装置100を動作させながら、エアコン20を動かし、節電を行う(工程S190)。
【0070】
なお、上述した説明は、ユーザ(例えば、店舗50のオーナー)からみたプロセスであり、その表現は、電力管理装置100の提供者からみたプロセス、新電力会社からみたプロセス、新電力インターネットサイト200の運営者(サーバー管理者を含む)からみたプロセスに変更可能である点を補足しておく。
【0071】
また、電力管理装置100の導入にあたっては、初期費用を気にするユーザ(例えば、店舗50のオーナー)も多い。一方で、電気代の削減は、ユーザにメリットがあるだけでなく、地球環境の負荷低減(CO2削減含む)にも繋がるので、初期費用を気にすることなく電力管理装置100が導入されていくことが好ましい。そのようなケースを想定して、
図15に示すようなプランを提供することが可能である。
【0072】
図15(a)は、電力管理装置100の導入前(設置前)の電気料金301(毎月の電気代の基準)を表しており、一方、
図15(b)は、電力管理装置100の導入後(設置後)の電気料金302(毎月の電気代)の推移を模式的に表している。
図15(b)と比較して
図15(b)をみるとわかるように、導入後の電気料金302は大幅に低下する。そして、低下した電気料金の一部(310)を電力管理装置100の導入費用として、残りの電気代節約分320をユーザ(例えば、店舗50のオーナー)のものとするプランであれば、ユーザの負担(初期費用も、ラインニング費用も)が一切ない。したがって、このようなプランであれば、初期費用(およびランニング費用)を気にするユーザにも導入することができ、地球環境負荷低減に資することができる。
【0073】
次に、店舗50の電気契約が、負荷設備契約のときと、主開閉器契約のときとの違いについて説明する。
図16(a)は、店舗50における電気契約が負荷設備契約であるときのものを示している。この場合の算定対象は契約負荷設備であるので、設備容量の総合計で契約電力が決まり、設備の最大消費電力で決まるので契約電力が高くなる。一方、
図16(b)は、店舗50における電気契約が主開閉器契約であるときのものを示している。この場合の算定対象は、主開閉器(メインブレーカ)であり、すなわち、メインブレーカの設定で電気契約が決まります。ここで、メインブレーカを電子ブレーカに変更して、メインブレーカが落ちてしまわないように電子ブレーカの容量を設定すると、その容量が契約電力になる。全ての設備が長時間同時に使用されなければブレーカが落ちることはないので、この契約(主開閉器契約)の方が、契約電力を下げることができる。
【0074】
本実施形態の電力管理方法では、新電力会社への契約変更とあわせて、電子ブレーカを用いた形態での主開閉器契約の変更によってもさらに電気代を節約することが可能となる。
【0075】
本実施形態の電力管理装置100は、次のように改変することができる。まず、
図17は、
図1及び
図2に示した電力管理装置100(本体部10)のリレー部16を示した回路(スイッチング回路、リレー回路)である。
図2に示した構成では、手動でスイッチする構成にしている。そして、
図18は、遠隔でスイッチ可能な構成を有する電力管理装置100(本体部10)を示している。
【0076】
図18に示した電力管理装置100(本体部10)では、第2リレー部16B(リレー回路)を設けて、その第2リレー部16Bの信号に基づいて、第1リレー部16を動作(スイッチング)させる構成にしている。第2リレー部16Bへの信号は、通信ネットワーク90(例えば、インターネット、電話回線網、LANなど)を介して、情報端末91(例えば、サーバ、PC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、携帯電話など)からの信号(動作指示)によって動作させることができる。
【0077】
さらには、
図18に示した構成において、デマンドレスポンス指示(電力会社の端末91からの指示)を、通信ネットワーク90を介して、電力管理装置100に入れて、電力管理装置100をデマンドレスポンス制御装置(デマンドレスポンス受信装置)として使用することが可能である。なお、「デマンドレスポンス」について以下に説明する。
【0078】
「デマンドレスポンス」とは、「市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払いに応じて、需要家側が電力の使用を抑制するように電力消費パターンを変化させること」である。デマンドレスポンスの背景として、電力会社の基本方針の一つである「同時同量の原則」がある。これは、電力の需要量と供給量とを瞬時瞬時で一致させなければならないというものであり、電力の需要量と供給量を一致させて、電力を安定供給するという義務である。この需給バランスを保つためには、「供給量を需要量に合わせる」と「需要量を供給量に合わせる」との2つの考え方がある。前者の「供給量を需要量に合わせる」ことは、これまで電力会社が行ってきたことがあるが、各電力会社は供給量よりも過剰に発電設備を用意しておく必要がある。この過剰な発電設備は、低い稼働率にもかかわらず運営費用が嵩むために、結果的に電気料金の高騰につながる。一方、後者の「需要量を供給量に合わせる」ことは、新しい考え方であり、これが「デマンドレスポンス」の考え方である。これは、供給側が電力状況に応じて需要家側に協力を募ることで、余剰電力を生み出すことによって容易に需要量を供給量に一致させることができるものである。
【0079】
デマンドレスポンスは、需要制御の仕方によって大きく2つに分類される。一つは、電気料金ベースのデマンドレスポンス(電気料金型)である。これは、需要量がピークとなる時間帯に電気料金を値上げすることで、各家庭や事業者に電力需要の抑制を促す仕組みである。この利点は、比較的簡便であり、大多数に適用することができる。そして、この欠点は、余剰電力が需要者の反応に左右されるため、どれほどの効果があるか不確実である。
【0080】
もう一つは、インセンティブベースのデマンドレスポンスである。これは、電力会社との間であらかじめ節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る仕組みである。この利点は、予め契約しているので、ある程度の節電の効果が見込めることができる。そして、この欠点は、比較的手間がかかり、小口需要家への適用が困難である。
【0081】
図19および
図20は、インセンティブベースのデマンドレスポンス300の仕組みを説明するブロック図である。なお、ここで、「デマンドレスポンス(300)」は、電力抑制の仕組み(方式)であるとともに、その仕組みを構築しているシステムの両方の意味で使用している。
【0082】
図19におけるインセンティブベースのデマンドレスポンス300は、電気事業者99(または、プログラム設置者(電気事業者、系統運用者))が需要家95と契約を締結して、卸電力価格が高騰又は電力需給が逼迫した際に、負荷抑制・遮断を実施する枠組みである。需要家95から電気事業者99へは、負荷抑制・負荷遮断の申出(契約)301を行うとともに、電気事業者99から需要家95へは、定額付与や負荷遮断期間中の割引などのメリット(金銭的メリット)302を与える。これにより、ピーク時の負荷を抑制することができる。すなわち、負荷平準化(ピークカット)による経済性の向上を図ることができる。
【0083】
図20におけるインセンティブベースのデマンドレスポンス300は、ネガワット取引の仕組みを利用しており、需要家95(95A~95D)による需要削減量を供給量と見立てて、需要調整市場97を介して取引をする形態である。複数の需要家95(95B~95D)の調整量を纏めるのが、アグリゲータ96である。需要家95は、ネガワット取引(311、312、313)を行う。ここでは、需要家95Aは、発電事業者(系統運用者)98にネガワット取引311を行うか、または、需要調整市場97にネガワット取引312を行う。そして、需要家95B~95Dは、アグリゲータ96にネガワット取引313を行う。アグリゲータ96は、需要調整市場97にネガワット取引314を行うか、発電事業者98にネガワット取引316を行う。そして、需要調整市場97は、発電事業者98にネガワット取引315を行う。
【0084】
一方で、発電事業者98は、需要家95Aにメリット(金銭的メリット)321を付与するか、需要調整市場97にメリット325を付与するか、あるいは、アグリゲータ96にメリット326を付与する。また、需要調整市場97は、需要家95Aにメリット322を付与するか、アグリゲータ96にメリット324を付与する。そして、アグリゲータ96は、複数の需要家95B~95Dにメリット323を付与する。
【0085】
このような仕組み(デマンドレスポンス300)により、サービスの流れ(ネガワット取引)とお金の動きをバランスさせることにより、言い換えると、需給調整市場(及び/又はアグリゲータ)を通じて、系統信頼性を確保するとともに、経済性を向上させることができる。
【0086】
インセンティブベースにおけるデマンドレスポンスの手法(メニュー、プログラム)として、次のものを挙げることができる。
(1)Direct Load Control
プログラム設置者が直前の通知により、顧客のエアコン等の電気機器を遠隔で遮断もしくは循環運転する手法
(2)Interruptible Load
システムの不測の事態時に需要家に負担軽減に同意させる代わりに、料金割引等を提供する契約の下で、電気の使用料が軽減または遮断されるメニュー
(3)Load as Capacity Resource
システムに不測の事態が起こった際に、需要家に予め規定された負荷削減量を約束させるメニュー
(4)Spinning Reserves
緊急時の最初の数分間、供給と需要のインバランスの解決策を需要家に同期させることによっていつでも提供できるようにするプログラム
(5)Non-Spinning Reserves
すぐには利用できないが、10分程度の遅れで供給と需要とのインバランスの解決策を需要家に提供できるようにするプログラム
(6)Emergency Demand Response
システム運用者からのリアルタイム情報に呼応して、需要家が負荷を増減させるプログラム
(7)Demand Bidding and Buyback
需要家に、小売・卸売市場において、ある価格で負荷軽減を申し出たり、特定の単価でどれくらいの負荷を進んで削減するかを特定することを許可するプログラム。
【0087】
図21(a)から(d)は、それぞれ、電気料金ベースのデマンドレスポンスの仕組みを説明するためのグラフである。電気料金ベースのデマンドレスポンスは、電気事業者が時間帯(または時間)別に料金を設定することで、需要家に自らの判断で、割高な料金が設定された高負荷時に需要抑制を行って、割安な料金が設定された低負荷時に需要シフトを促す枠組みである。この枠組みにおいて料金シグナルは前日までに通知される。
【0088】
図21(b)は、ピーク別料金(CPP:Critical Peak Pricing)のメニューを示している。これは、クリティカルまたはピーク日のみに適用される料金単価332が設定されているものである。
【0089】
図21(c)は、ピーク日料金(PDP:Peak Day Pricing)のメニューを示している。これは、クリティカル・ピーク日以外の料金単価333とともに、クリティカル・ピーク日のみに適用される料金単価334(334a、334b)が設定されているものである
。
【0090】
図21(d)は、リアルタイム料金(RTP:Real Time Pricing)のメニューを示している。需給バランスに応じて一刻一刻と対応して料金単価が変動(335)するものである。
【0091】
デマンドレスポンス(または、デマンドレスポンスシステム)によって、電気事業者・発電事業者の負荷の軽減が図られるとともに、電気料金の適正化が行われるので、このデマンドレスポンスは、重要かつ好ましいシステムであるが、実際の運用においては、以下のような問題があることに、本願発明者は気がついた。まず、デマンドレスポンスの指示(発動)によって、空調機器の出力に制約がかかって、空調(エアコン)の効きが悪くなれば、店舗においては、快適性が損なわれる。すなわち、お客の快適性またはスタッフの快適性が損なわれると、それは売上の低下、評判の低下に繋がる。すると、電気料金が節
約できたとしても、売上や評判の低下を恐れて、デマンドレスポンスを導入しない店舗がでてくるものと想像される。
【0092】
本実施形態の電力管理装置100(特に、
図18に示したような遠隔で操作可能な構成のもの)においては、このようなデマンドレスポンスの使用条件下においても、動作は止まることがないので、快適性を損なわず、さらに、デマンドレスポンスを併用しながら電気料金を下げることができる。加えて、デマンドレスポンスの指令がないときは、エアコンの節電装置としての役割を果たすことができるので、その点でも、デマンドレスポンスの普及を促進することができる装置となる。そして、本実施形態の電力管理装置100は、上記で説明したようなデマンドレスポンスのプログラム・指令に対応した制御を行うことが可能である。さらに説明すると、電力管理装置100において、セレクトスイッチをリレーに変更したもの(第2リレー16Bを追加したもの)にして、それを遠隔で操作できるもの(
図18に示した構成のようなもの)であれば、デマンドレスポンス対応の電力管理装置100にすることができる。その電源(スイッチを行う電動動作のための電源)は、エアコンの電源を使用することで可能である。なお、
図2および
図17に示した構成では、手動で切り替えるだけなので電源は不要である。本実施形態の電力管理装置100(デマンドレスポンス対応の構成のもの)において、デマンドレスポンス指令がないときは、例えば30%カット(標準)の制御を行って、デマンドレスポンス指令があるときは、例えば50%カット(デマンドレスポンス動作時)の制御を行うようなことにすることが可能である。
【0093】
本実施形態の一つの手法では、新電力インターネットサイト200で電力見積を依頼した後(工程S100)、変更後の新電力での電力見積データを確認し(工程S120)、その後、電力見積に基づいて選択した新電力会社への電力契約変更の依頼データを送信して、電力契約変更の申請を行う(工程S140)。次いで、電力契約変更の後において、インバータモータ24を備えた空調室外機29に対して電力管理装置100を取り付ける。本実施形態の電力管理装置100は、インバータモータ24に制御周波数の信号を伝える制御周波数アダプタ22を備えており、電力管理装置100を取り付ける工程においては、制御周波数アダプタ22は、インバータモータ24を制御する回路基板23に接続される。本実施形態の手法によれば、まず、現在契約している電力契約よりも有利な新電力会社の電力契約に切り替えた後、電気代の中で最も占める大きい空調機器(エアコン)20の電気代の節約を、外付け可能な電力管理装置100を取り付けてその電力管理装置100でインバータモータ24の回転数を制御することにより、店舗50の電気代を大幅に下げることができる。一度、新電力会社による電力契約の見直しを行っていることで、比較的高額な電力管理装置(技術的に高度な制御装置)を用いなくても、比較的簡単な構造で安価な電力管理装置100を使用しても、大幅な電気代の節約を行うことが可能となる。その結果、いままで費用的な面から、エアコン節電が可能な電力管理装置の導入に躊躇していた店舗にも広めることができ、したがって、大幅なコスト削減ができるとともに、地球環境の負荷の低減、および、経済活動の自粛の要請下(特に、新型コロナ感染自粛、または、新型インフルエンザ感染自粛の状況下)でも大きなコスト負担を抑えて役に立つものを提供することができる。
【0094】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上述の実施形態では、スイッチ(ダイヤル)を3つ(切、標準、強)にしたが、4つ以上にしてもよいし、各設定の制御周波数(上述した例では、0%削減、30%削減、50%削減)は適宜好適なものを設定することが可能である。その設定は、電力管理システム100を、実際に取り付ける店舗50の空調装置(エアコン)20にあわせて(場合によっては実験・計測の後で)決定することが望ましい。スイッチ(ダイヤル)は、3つ(切、標準、強)の場合でも、(i)0%削減、40%削減、70%削減にしたり、または、(ii)0%削減、50%削減、70%削減、(iii)0%削減、50%削減、75%削減、(iv)0%削減、60%削減、80%削減にしたりすることができる。あるいは、2つの場合(2セレクト)にすることも可能であり、(v)0%削減、70%、(vi)0%削減、50%、(vii)10%削減、70%削減、(viii)0%削減、60%削減などにすることも可能である。または、4つの場合にして、(ix)0%削減、40%削減、60%削減、80%削減、(x)0%削減、30%削減、50%削減、70%削減などにすることも可能である。典型的には、0%削減から80%削減の範囲内(上限、下限含む)の中で適切な切り替え(複数の切り替え、4又は5以上の切り替えも含む)を設定するようにすることができる。
【0095】
加えて、上述の実施形態では、店舗50として、小規模の店舗に特に効果がある説明を行ったが、中規模・大規模の店舗にも好適に適用できるものである。そして、本実施形態の電力管理システム100は、有効な特徴を複数含んでおり、それぞれ単独でも十分な技術的効果を奏するものが含まれており、そのような単独の特徴の積極利用も技術的価値が高いものである。そして、上述した特徴は、互いに矛盾しないかぎりにおいて、相互に適用可能であり、さらに、システム・装置上の特徴をプロセス(または、そのプロセスをソフトウエアーに記述したプログラム)の特徴に組み合わせることも可能あるし、逆に、プロセス(または、プログラム)上の特徴をシステム・装置に組み合わせること可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、店舗(特に、小規模な店舗)において消費電力を節約する電力管理方法および電力管理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 本体部(電力調整部)
10a 筐体部
10b 基板構造体
11 カバー部
12 台座部
13 開口部
14 節電強度目印
15 ダイヤル部
16 制御信号発生部(スイッチング部)
16B 第2リレー
18 接続端子(コネクタ部)
19 配線部
20 空調機器(エアコン)
21 ファン
22 制御周波数アダプタ
23 制御回路基板
24 インバータモータ(圧縮機用インバータモータ)
25 コンプレッサ
26 連結配線
29 空調室外機
50 店舗
60 空調室内機
60a パイプ
90 通信ネットワーク
91 情報端末
100 電力管理装置