(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】電池ユニットの放熱構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6562 20140101AFI20241111BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/623 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20241111BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20241111BHJP
【FI】
H01M10/6562
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/623
H01M10/627
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/6555
H01M10/6557
(21)【出願番号】P 2020109086
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】児島 正規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135173(JP,A)
【文献】特開2020-004683(JP,A)
【文献】特開2012-084551(JP,A)
【文献】特開2007-109547(JP,A)
【文献】特開2012-174972(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6562
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 10/623
H01M 10/627
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6551
H01M 10/6555
H01M 10/6557
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートでパックされたバッテリーセルと、これに面接触させて放熱する平板形状の放熱体とを複数積層させたバッテリー積層体、およびこのバッテリー積層体を収納した筐体を備えた、ファンレスの電池ユニットであって、
前記バッテリー積層体は、その積層方向が重力方向に対して傾倒して載置され、前記バッテリー積層体の外周面と筐体内壁面間には、筐体内自然空冷の通路となる対流空間部が設けられて
おり、
前記バッテリー積層体の傾倒した載置により、前記筐体内部の空気において、前記通路を通じて前記筐体の一方から他方へ自然対流を発生させる、電池ユニットの放熱構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記バッテリー積層体は、前記バッテリーセル内の両極層の巻回軸方向に長い直方体形状で、前記重力方向に対して、その積層方向が前記巻回軸方向における前後に傾倒されている、電池ユニットの放熱構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記積層方向と前記重力方向とがなす角度は、5度以上で45度以下の範囲内である、電池ユニットの放熱構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1項において、
前記放熱体は、前記積層方向に直交する方向に貫通する1または複数の貫通孔を有するか、または、前記複数の貫通孔を有するハニカム構造に形成されている、電池ユニットの放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型セルを積層させたバッテリー積層体を有する電池ユニットの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の流れを最適化するスマートグリッドが、太陽光などの再生可能エネルギー導入のためのシステムとして注目されている。また、このようなシステムも含めて、災害等による停電対策として、繰り返し充電が可能な蓄電池のような電池ユニットの設置が有用とされており、その性能も向上している。
【0003】
この電池ユニットとしては、電力容量の小さい携帯電子機器から、電力容量の大きい電気自動車用電池や電力貯蔵用電池等まで、例えばリチウムイオン電池が多く用いられている。
【0004】
図11は、比較的電力容量の大きい電池ユニットの一例として、リチウムセルをラミネートでパックしたラミネート型セルを複数用いたものを示す。この電池ユニットは、ラミネータ型のバッテリーセル51に面接触させて充放電時の温度上昇を抑える放熱体52を複数積層させたバッテリー積層体50を有している。
【0005】
この場合、積層方向の中央部(積層中央部)が積層方向の外側部(積層外側部)よりも積層中央部の発熱が大きくなって、前記中央部の劣化を招き、この結果、バッテリー積層体全体のバランスがくずれて電力容量が減少することがある。
【0006】
このため、従来から、積層中央部の放熱効果を大きくするため、積層外側部の放熱体の積層方向の厚さよりも、積層中央部の積層方向の厚さを厚くした電池ユニットが知られている(例えば、特許文献1)。この電池ユニットは、放熱板はアルミニウム製で側壁プレート部を有するコの字状で、冷却ファンで強制空冷するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-225432号公報
【文献】特開2020-4683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、冷却ファンで強制空冷するため、電圧ユニットが大型化する一方、アルミニウム製の放熱板をコの字状に加工することは容易でなく、高コスト化するという問題があった。
【0009】
ところで、特許文献1において自然空冷とした場合、放熱板がコの字状の側壁を有するため、バッテリーセル全体が当該側壁に囲まれて熱がこもってしまい、自然対流が阻まれる結果、積層中央部の放熱板を厚くして放熱する効果が低くなってしまうことが想定される。
【0010】
他方、積層させたバッテリー本体を傾倒させて設置する電池ユニットも知られている(例えば、特許文献2)。しかし、特許文献2は、放熱を考慮して放熱板を挟んで積層したものでなく、バッテリー本体の傾倒設置によって雨等がバッテリー本体に付着するのを防止したものである。
【0011】
本発明は、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体を使用したバッテリー積層体を有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニットの性能を向上できる電池ユニットの放熱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池ユニットの放熱構造は、ラミネートでパックされたバッテリーセルと、これに面接触させて放熱する平板形状の放熱体とを複数積層させたバッテリー積層体、およびこのバッテリー積層体を収納した筐体を備えた、ファンレスの電池ユニットであって、前記バッテリー積層体は、その積層方向が重力方向に対して傾倒して載置され、前記バッテリー積層体の外周面と筐体内壁面間には、筐体内自然空冷の通路となる対流空間部が設けられている。
【0013】
この構成によれば、平板形状の放熱体を使用したバッテリー積層体は、その積層方向が重力方向に対して傾倒して載置され、前記バッテリー積層体の外周面と筐体内壁面間には、筐体内自然空冷の通路となる対流空間部が設けられているので、筐体内の一方から他方へ自然対流を発生させるから、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体を使用したバッテリー積層体を有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニットの性能向上が可能となる。
【0014】
本発明では、前記バッテリー積層体は、前記バッテリーセル内の両極層の巻回軸方向に長い直方体形状で、前記重力方向に対して、その積層方向が前記巻回軸方向における前後に傾倒されていてもよい。この場合、左右に傾倒させた場合よりも傾斜に伴う側面の体積変化分が小さいので、筐体をその分小さくできることから、電池ユニットをより小型化できる。
【0015】
好ましくは、前記積層方向と前記重力方向とがなす角度は、5度以上で45度以下の範囲内である。したがって、筐体内の一方から他方へ自然対流をより発生させることができる。
【0016】
また、好ましくは、前記放熱体は、前記積層方向に直交する方向に貫通する1または複数の貫通孔を有するか、または、前記複数の貫通孔を有するハニカム構造に形成されている。したがって、放熱体内部も筐体内自然空冷の通路となるので、放熱効果をより向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、平板形状の放熱体を使用したバッテリー積層体は、その積層方向が重力方向に対して傾倒して載置され、前記バッテリー積層体の外周面と筐体内壁間には、筐体内自然空冷の通路となる対流空間部が設けられているので、筐体の一方から他方へ自然対流を発生させるから、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体を使用したバッテリー積層体を有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニットの性能向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池ユニットを示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の電池ユニットを示す組立斜視図である。
【
図3】バッテリーセルの一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る電池ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るファンレスの電池ユニット1を示す分解斜視図である。
図1の電池ユニット1は、ラミネートでパックされた複数のバッテリーセル2と、これに面接触させて充放電時のバッテリーセルから発する熱を吸収し、外部に放熱する放熱体3とが複数積層されたバッテリー積層体5、およびこのバッテリー積層体5を収納した筐体7(
図2)を備えている。放熱体3は隣接する2つのバッテリーセル2、2の間に配置されている。
【0020】
バッテリー積層体5の積層方向S両端には例えばアルミニウム製の一対の加圧板6、6が配置されている。
図2の組立図のように、バッテリー積層体5は、一対の加圧板6、6に上下挟まれた状態で、図示しない拘束用バンド、バー等で加圧、保持されている。バッテリー積層体5の最外側の放熱体3はアルミニウム製の加圧板6、6に面接触しており、これにより外側の方が中央に比べて放熱されやすくなっている。バッテリー積層体5は架台9(
図5)に支持されて、筐体7に対して水平に設置されており、積層方向Sは垂直方向Zに一致している。
【0021】
図3のように、バッテリーセル2は扁平型電池であり、例えば陰極(負極)層11の塗工領域11aにグラファイト(炭素)が塗布され、陽極(正極)層12の塗工領域12aに、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどのリチウム化合物が塗布されて、各電極間の絶縁のためのセパレータ13を挟んでシート状とし、このシートを複数回巻回した巻回積層体を形成している。巻回軸方向Xに陽極層12よりも陰極層11が長く、陰極層11よりもセパレータ13が長く設定されている。
【0022】
また、バッテリーセル2は、巻回積層体から巻回軸方向X外方に突出して、各極層の未塗工領域11b、12bに各々接続された一対の電極端子15、16を有し、これら巻回積層体と電極端子15、16の一部とを内部に収容させたうえで、電解液を封入して外包構造を形成する外装体14内に封止している。外装体14は、例えばアルミニウム箔と樹脂を接着剤で貼り合わせたものである。外装体14と電極端子15、16の間にはそれぞれ樹脂製の絶縁シート19が設けられて、外装体14のアルミニウム箔と電極端子15、16との絶縁をより強固にしている。
【0023】
陰極の電極端子15は、陰極層11の未塗工領域11bを介してその一端が陰極集電体17に接続され、他端が外装体14の一方の開口部14aから外方に突出されている。陽極の電極端子16は、陽極層12の未塗工領域12bを介してその一端が陽極集電体18に接続され、他端が外装体14の他方の開口部14bから外方に突出されている。
図5のバッテリー積層体5は、図示しないが、各電極端子15、16がそれぞれ、直列に接続されている。
【0024】
図4のように、放熱体3は、平板形状であって、各板厚は積層体外側の板から積層体中央の板に向かって漸次厚くなって、積層体中央部が最も厚くなるように形成されており、積層体中央部が最も放熱効果が高くなっている。
【0025】
この例では、放熱体3は、同一板厚の1または複数の薄板からなり、複数の板を重ねることにより、所望の板厚に設定する。例えば積層体両外側の板a、b、j、kはそれぞれ1枚、中央に向かって板c、iは2枚、板d、e、g、hはそれぞれ3枚、積層中央の板fは4枚で最も厚くなっている。なお、これに何ら限定されず、放熱体3の各板厚は、電圧ユニット1の特性、仕様に応じて、容易かつ任意に変更することができる。この例のように同一板厚の薄板を複数重ねるのに代えて、板厚の異なる板を複数用意してもよい。
【0026】
図2のように、バッテリー積層体5の外周面と筐体7内壁面間には、筐体内自然対流の通路となる対流空間部10が設けられている。
【0027】
各バッテリーセル2の全周面は、従来のように放熱体側壁で取り囲まれることなく、筐体7の内壁面から離間して、この内壁面に対向している。これにより、バッテリーセル2の発熱が従来の放熱体側壁内でこもることを少なくできる。
【0028】
上記構成によって、
図5に示すように、各板厚の放熱体3からバッテリーセル2の発熱が放出され、板厚の厚い板fにおける積層中央部からの放熱量が最も大きくなっており、熱気流HAは対流空間部10を通って筐体上部へ上昇し、筐体内自然対流を生じさせて空冷させることができる。
【0029】
このように、放熱体3は平板形状で、各板厚は積層体外側の板から積層体中央の板に向かって漸次大きくなって、積層体中央部が最も板厚が厚くなるように形成されて、積層体中央部が最も放熱効果が高くなっている。これとともに、バッテリー積層体5の外周面と筐体7の内壁面間には、筐体内自然対流の通路となる対流空間部10が設けられている。これにより、自然対流によって空冷するので、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5を有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニット1の性能向上が可能となる。
【0030】
この例では、
図5のように、筐体7内壁上部に例えば熱気流HAの流れ方向に沿った平板状のフィン20が設けられて、上昇する熱気流を冷却しているが、このフィン20は設けなくてもよい。
【0031】
図6のように、放熱体3に積層方向S(
図5)に直交する方向、つまり巻回軸方向Xに貫通する貫通孔25を設けてもよい。この場合、
図5の破線で示すように、放熱体3内部も筐体内自然対流の通路となるので、放熱効果をより向上することができる。なお、貫通孔25を各放熱体3の全てに設けてもよいし、その一部、例えば積層体中央部近傍の放熱体3にのみ設けてもよい。また、貫通孔25を、薄板を複数重ねる際に板幅の大きい板と小さい板を組合せて形成するようにしてもよい。
【0032】
この例では、放熱体3の各板厚を積層中央部が最も厚くなるように形成しているが、
図7のように、放熱体3の表面積を積層中央部で最も大きくなるように形成してもよい。この図では、巻回方向Xに直交する横方向Yの放熱体3の幅が積層中央部で最も大きくなって表面積が最も大きくなっている。
【0033】
これにより、同様に、放熱体3は平板形状を有し積層体中央部で最も放熱効果を高くし対流空間部10を設けて、自然対流によって空冷するので、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5を有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニットの性能向上が可能となる。
【0034】
図8のように、上記構成の放熱体3は、外装体14直下における少なくとも陰極層11の塗工領域11aを覆う長さに形成されている。好ましくは、放熱体3の巻回軸方向Xの長さは、巻回軸方向Xの陰極層11の塗工領域11aの長さL1以上に長く、外装体14の両端部14a、14b間の長さL2以下に短い範囲に設定される。
【0035】
これにより、陽極層12の塗工領域12aは陰極層11の塗工領域11aよりも長さが短いことから、平板形状の放熱体3のエッジで両極層11、12の塗工領域11a、12aがつぶれることを防止できる。
【0036】
放熱体3が突出する電極端子15、16と短絡することを防止するために、放熱体3の巻回軸方向Xの長さは、放熱体3の両端が陰極層11の塗工領域11aの両端から巻回軸方向Xの外側へ0mm以上で50mm以内の範囲に位置するように長く設定されていることが好ましい。つまり、長さL1以上でL1+100mm以内である。
【0037】
特に好ましくは、放熱体3の巻回軸方向Xの長さは、放熱体3の両端が陰極層11の塗工領域11aの両端から巻回軸方向Xの外側へ0mm以上で2mm以内の範囲に位置するように長く設定されている。つまり、長さL1以上でL1+4mm以内である。これにより、平板形状の放熱体3のエッジによる両極層11、12の塗工領域11a、12aのつぶれを確実に防止することができる。
【0038】
図9は本発明の第2実施形態に係る電池ユニット1Aを示す外観図である。このバッテリー積層体5Aは、その積層方向Sが重力(垂直)方向Zに対して傾倒して架台9Aに載置されている。バッテリー積層体5Aの外周面と筐体7内壁間には、筐体内自然対流の通路となる対流空間部10が設けられている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
バッテリー積層体5Aは、重力方向Zに対して、その積層方向Sが巻回軸方向Xにおける前後に傾倒されている。つまり、直方体の平面視長方形の短辺側となる側面21を傾倒させている。この例では、バッテリー積層体5Aは後傾されている(図では右下がりに傾倒)。
【0040】
好ましくは、積層方向Sと重力方向Zとがなす角度θは、例えば5度以上で45度以下の範囲内である。これにより、筐体7内の一方から他方へ自然対流をより発生させることができる。
【0041】
バッテリー積層体5Aの後傾により、熱気流HAは筐体7前側で上部へ上昇気流となり、筐体7後側へ下降する自然対流を発生させて空冷することができる。この例では、筐体7内壁下部にフィン20が設けられて、自然対流する熱気流を冷却しているが、必要に応じて設けなくてもよい。
【0042】
図6のように、放熱体3に積層方向S(
図5)に直交する方向、すなわち巻回軸方向Xに貫通する1または複数の貫通孔25を設けてもよい。または、当該複数の貫通孔25を有する図示しないハニカム構造に形成させてもよい。
図9の破線は、貫通孔25による対流を示す。これにより、放熱体3内部も筐体内自然対流の通路となるので、放熱効果をより向上することができる。
【0043】
なお、バッテリー積層体は、前記重力方向に対して、その積層方向が前記巻回軸方向回りに左右に傾倒させてもよい。つまり、直方体の平面視長方形の長辺側となる側面を傾倒させてもよい(
図9においては手前または向こうに傾倒)。この場合、
図6の放熱体3の貫通孔25は、積層方向Sと巻回軸方向Xに直交する横方向Yに貫通させる。
【0044】
前記したバッテリー積層体を前後に傾倒させた場合の方が、左右に傾倒させた場合よりも傾斜に伴う筐体7の体積増大を抑制できるので、電池ユニット1Aをより小型化できる。
【0045】
図10は他例を示す。この例では、
図9のバッテリー積層体5A自体を傾倒させるのと異なり、バッテリー積層体5Bにおけるバッテリーセル2および放熱体3を予め傾斜させた状態に形成し、この形状に対応した架台9Bに支持されている。
図10における積層方向Sと重力方向Zとがなす角度θは、
図9よりも若干大きくなっている。その他の構成は
図9と同様である。この場合も、放熱体3の傾斜により、筐体前側上部への上昇気流が生じ、筐体後側への自然対流を発生させて空冷することができる。
【0046】
こうして、本発明の実施形態では、放熱体3は平板形状を有し積層体中央部で最も放熱効果を高くしているとともに、バッテリー積層体5、5A、5Bの外周面と筐体7の内壁面間には筐体内自然対流の通路となる対流空間部10を設けているので、冷却ファンを有しない場合であっても、平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5、5A、5Bを自然対流により有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニット1、1A、1Bの性能を向上できる。
【0047】
また、平板形状の放熱体3は、外装体14直下における少なくとも巻回軸方向Xの陰極層11の塗工領域11aを覆う長さに形成されているので、陽極層12の塗工領域12aは陰極層11の塗工領域11aよりも長さが短いことから、平板形状の放熱体3のエッジで両極層の塗工領域11a、12aがつぶれることを防止できる。また、放熱体3が突出する電極端子15、16と短絡することを防止できる。したがって、バッテリー積層体5、5A、5Bを有効に放熱する平板形状の放熱体3の長さを適正に設定しているので、冷却ファンを有しない場合であっても、当該平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5、5A、5Bを有効に放熱して、小型かつ低コストで電池ユニット1、1A、1Bの性能向上が可能となる。
【0048】
さらに、平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5A、5Bは、その積層方向Sが重力方向Zに対して傾倒して載置され、バッテリー積層体5A、5Bの外周面と筐体内壁間には、筐体内自然空冷の通路となる対流空間部10が設けられているので、筐体7の一方から他方へ自然対流を発生させるから、平板形状の放熱体3を使用したバッテリー積層体5A、5Bを有効に放熱できる。
【0049】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、1B:電池ユニット
2:バッテリーセル
3:放熱体
5、5A、5B:バッテリー積層体
6:加圧板
7:筐体
8:貫通孔
9:架台
10:対流空間部
11:陰極層
11a:陰極層の塗工領域
11b:陰極層の未塗工領域
12:陽極層
12a:陽極層の塗工領域
12b:陽極層の未塗工領域
13:セパレータ
14:外装体
15:陰極の電極端子
16:陽極の電極端子
20:フィン
25:貫通孔
S:積層方向
X:巻回軸方向
Z:重力(垂直)方向
θ:積層方向と重力方向とがなす角度