(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】発光装置及び該発光装置を備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20241111BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20241111BHJP
H04N 1/036 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B41J2/447 101D
G03G15/04
H04N1/036
(21)【出願番号】P 2020124707
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019152969
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019152970
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰友
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴央
(72)【発明者】
【氏名】小山 勇人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英史
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-081081(JP,A)
【文献】特開2013-152226(JP,A)
【文献】特開2011-024004(JP,A)
【文献】特開2017-183436(JP,A)
【文献】特開2007-210277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0141731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
G03G 15/04
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
回転軸線を中心に回転駆動される感光体と、
発光装置と、前記発光装置が実装された回路基板と、前記発光装置から出射された光を感光体表面に導くレンズアレイと、を含む露光ヘッドと、
前記回路基板に対して前記発光装置を駆動するための画像データを出力するコントローラと、を備え、
前記発光装置は、
前記発光装置を駆動する駆動回路を含むシリコンウェハと、
前記感光体の前記回転軸線に略平行な方向に配列され、複数の電極を含む第1の電極層と、光が透過可能な層状の第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に層状に形成され、電圧が印加されることによって発光する発光層と、を含み、前記シリコンウェハの表面に形成された層状体と、を備え、
前記駆動回路は、駆動電圧を生成する電圧生成回路と、前記画像データに基づいて前記複数の電極それぞれに対するパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、を含み、前記駆動回路は、前記パルス信号に応じて前記電圧生成回路が生成する前記駆動電圧を前記複数の電極にそれぞれ印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の電極層は前記シリコンウェハの表面に分離して形成され、前記発光層は前記第1の電極層の上に層状に形成され、前記第2の電極層は前記シリコンウェハが配置された側とは前記発光層を間に挟んで反対側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記複数の電極それぞれに対応し、前記画像データを格納するための複数のフリップフロップ回路を含むシフトレジスタと、前記複数の電極それぞれに対応し、前記シフトレジスタの前記複数のフリップフロップ回路それぞれに対して個別に接続された複数のフリップフロップ回路を含むレジスタと、を有し、
前記パルス信号生成
回路は、前記レジスタのフリップフロップ回路に格納された画像データに基づいて前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コントローラはクロック信号とライン同期信号を生成し、
前記シフトレジスタは前記クロック信号に同期して前記コントローラが出力する画像データをサンプリングおよび前記複数のフリップフロップ回路においてシフトさせ、
前記ライン同期信号に応じて前記シフトレジスタの前記
複数の電極に対応するフリップフロップ回路それぞれに格納された画像データが前記レジスタの前記フリップフロップ回路に転送されることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回転軸線に略平行な方向に沿って前記回路基板に複数の前記発光装置が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コントローラと前記複数の発光装置とは
前記画像データを伝送する共通の信号線で接続されており、
前記コントローラは複数の発光装置の一つの発光装置に対して前記画像データのサンプリングを許可するための許可信号を出力し、前記複数の発光装置それぞれは前記一つの発光装置を起点として前記許可信号を遅延させて順に受け渡すことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の発光装置は、前記画像データを送信するための共通の信号線で前記コントローラと接続された第1の発光装置の群と、前記画像データを送信するための共通の第2の信号線で前記コントローラと接続された第2の発光装置の群と、に分けられ、
前記コントローラは、前記第1の発光装置の群に含まれる複数の発光装置の一つの発光装置、および前記第2の発光装置の群に含まれる複数の発光装置の一つの発光装置それぞれに対して前記画像データのサンプリングを許可するための許可信号を出力し、ぞれぞれの発光装置の群に含まれる前記複数の発光装置それぞれは前記一つの発光装置それぞれを起点として前記許可信号を遅延させて順に受け渡すことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
感光体を露光する光を発する発光装置であって、
発光を制御する駆動回路を含むシリコンウェハと、
複数の電極を含む第1の電極層と、光が透過可能な層状の第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に層状に形成され、電圧が印加されることによって発光する発光層と、を含み、前記シリコンウェハの表面に形成された層状体と、を備え、
前記駆動回路は、駆動電圧を生成する電圧生成回路と、駆動データに基づいて前記複数の電極それぞれに対するパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、を含み、前記駆動回路は、前記パルス信号に応じて前記電圧生成回路が生成する前記駆動電圧を前記複数の電極にそれぞれ印加することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
前記第1の電極層は前記シリコンウェハの表面に分離して形成され、前記発光層は前記第1の電極層の上に層状に形成され、前記第2の電極層は前記シリコンウェハが配置された側とは前記発光層を間に挟んで反対側に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記駆動回路は、前記複数の電極それぞれに対応し、前記駆動データを格納するための複数のフリップフロップ回路を含むシフトレジスタと、前記複数の電極それぞれに対応し、前記シフトレジスタの前記複数のフリップフロップ回路それぞれに対して個別に接続された複数のフリップフロップ回路を含むレジスタと、を有し、
前記パルス信号生成
回路は、前記レジスタのフリップフロップ回路に格納された画像データに基づいて前記パルス信号を生成することを特徴とする請求項8または9に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び画像形成装置に関し、特に電子写真方式のプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置であるプリンタでは、露光ヘッドを使用して感光ドラムを露光し、潜像形成を行う方式が一般的に知られている。ここで、露光ヘッドには、例えばLED(Light Emitting Diode)や有機EL(Organic Electro Luminescence)などが用いられる。露光ヘッドは、感光ドラムの長手方向に配列された発光素子列と、発光素子列からの光を感光ドラム上に結像させるロッドレンズアレイと、から構成される。LEDや有機ELは、発光面からの光の照射方向がロッドレンズアレイと同一方向となる面発光形状を有する構成が知られている。ここで、発光素子列の長さは、感光ドラム上における画像領域幅に応じて決まり、プリンタの解像度に応じて発光素子間の間隔が決まる。例えば、1200dpiのプリンタの場合、画素の間隔は21.16μmであり、そのため、発光素子間の間隔も21.16μmに対応する間隔となる。このような露光ヘッドを使用したプリンタでは、レーザビームを回転多面鏡によって偏向されたレーザビームによって感光ドラムを走査するレーザ走査方式のプリンタと比べて、使用する部品数が少ないため、装置の小型化、低コスト化が容易である。
【0003】
特許文献1は、回路基板上に発光チップと発光チップを駆動するための駆動回路としての信号発生回路が個別に実装されている露光ヘッドを開示している。信号発生回路は、プリント基板上の配線を介して発光チップに発光信号を送信して発光チップの発光素子を発光させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特許文献1が開示する発光チップと駆動回路の構造を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)画像形成装置であって、回転軸線を中心に回転駆動される感光体と、発光装置と、前記発光装置が実装された回路基板と、前記発光装置から出射された光を感光体表面に導くレンズアレイと、を含む露光ヘッドと、前記回路基板に対して前記発光装置を駆動するための画像データを出力するコントローラと、を備え、前記発光装置は、前記発光装置を駆動する駆動回路を含むシリコンウェハと、前記感光体の前記回転軸線に略平行な方向に配列され、複数の電極を含む第1の電極層と、光が透過可能な層状の第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に層状に形成され、電圧が印加されることによって発光する発光層と、を含み、前記シリコンウェハの表面に形成された層状体と、を備え、前記駆動回路は、駆動電圧を生成する電圧生成回路と、前記画像データに基づいて前記複数の電極それぞれに対するパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、を含み、前記駆動回路は、前記パルス信号に応じて前記電圧生成回路が生成する前記駆動電圧を前記複数の電極にそれぞれ印加することを特徴とする画像形成装置。
(2)感光体を露光する光を発する発光装置であって、発光を制御する駆動回路を含むシリコンウェハと、複数の電極を含む第1の電極層と、光が透過可能な層状の第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に層状に形成され、電圧が印加されることによって発光する発光層と、を含み、前記シリコンウェハの表面に形成された層状体と、を備え、前記駆動回路は、駆動電圧を生成する電圧生成回路と、駆動データに基づいて前記複数の電極それぞれに対するパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、を含み、前記駆動回路は、前記パルス信号に応じて前記電圧生成回路が生成する前記駆動電圧を前記複数の電極にそれぞれ印加することを特徴とする発光装置。
【発明の効果】
【0007】
シリコンウェハに設けた駆動回路によってシリコンウェハの表面に形成した発光層を含む層状体を発光させる発光装置、およびそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】画像コントローラ部及びプリント基板のブロック図
【
図8】各信号の波形及び画像データのシフトを示す図
【
図9】パルス信号生成部の説明図、各信号の波形を示す図
【
図12】パルス信号生成部の説明図、各信号の波形を示す図
【
図14】短手方向の下部電極の位置を示す図、各信号の波形を示す図
【
図16】変形例としての発光領域の断面図、発光装置の構成図
【
図19】多重露光における各信号の波形及び画像データを示す図
【
図20】発光順序を切り替えるための発光装置内の回路の変形例を示す図
【
図21】チップセレクト信号を説明するためのタイミングチャート
【
図22】画像コントローラ部及びプリント基板の変形例を示すブロック図
【
図23】変形例としてのチップセレクト信号を説明するためのタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
[画像形成装置の構成]
図1は、実施例1における電子写真方式の画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
図1に示す画像形成装置は、スキャナ機能とプリンタ機能を備える複合機(MFP)であり、スキャナ部100、作像部103、定着部104、給紙/搬送部105、及びこれらを制御するプリンタ制御部(不図示)から構成される。スキャナ部100は、原稿台に置かれた原稿に照明を当てて原稿画像を光学的に読み取り、読み取った画像を電気信号に変換して画像データを作成する。
【0011】
作像部103は、無端の搬送ベルト111の回転方向(反時計回り方向)に沿って、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の順に並べられた、4連の画像形成ステーションを備える。4つの画像形成ステーションは同じ構成を有し、各画像形成ステーションは、矢印方向(時計回り方向)に回転する感光体である感光ドラム102、露光ヘッド106、帯電器107、現像器108を備えている。なお、感光ドラム102、露光ヘッド106、帯電器107、現像器108の添え字a、b、c、dは、それぞれ画像形成ステーションのブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)に対応する構成であることを示す。なお、以下では、特定の感光ドラム等を指す場合を除き、符号の添え字を省略することとする。
【0012】
作像部103では、感光ドラム102を回転駆動し、帯電器107によって感光ドラム102を帯電させる。露光手段である露光ヘッド106は、発光装置を画像データに応じて発光させ、発光装置によって生成される光を、ロッドレンズアレイによって感光ドラム102上(感光体上)に集光し、静電潜像を形成する。現像手段である現像器108は、感光ドラム102に形成された静電潜像をトナーで現像する。そして、現像されたトナー像は、記録紙を搬送する搬送ベルト111上の記録紙に転写される。このような一連の電子写真プロセスが各画像形成ステーションで実行される。なお、画像形成時には、シアン(C)の画像形成ステーションでの画像形成が開始されて所定時間が経過した後に、順次、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各画像形成ステーションで、画像形成動作が実行される。これにより、フルカラーの画像が形成される。
【0013】
図1に示す画像形成装置は、記録紙を給紙するユニットとして、給紙/搬送部105が有する本体内給紙ユニット109a、109b、大容量の給紙ユニットである外部給紙ユニット109c、及び手差し給紙ユニット109dを備えている。画像形成時には、このうち、予め指示された給紙ユニットから記録紙が給紙され、給紙された記録紙はレジストレーションローラ110まで搬送される。レジストレーションローラ110は、上述した作像部103において形成されたトナー像が記録紙に転写されるタイミングで、搬送ベルト111に記録紙を搬送する。搬送ベルト111により搬送される記録紙には、各画像形成ステーションの感光ドラム102上に形成されたトナー像が順次転写される。未定着のトナー像が転写された記録紙は、定着部104へと搬送される。定着部104は、ハロゲンヒータ等の熱源を内蔵し、記録紙上のトナー像を、2つのローラにより加熱・加圧することによって記録紙に定着させる。定着部104によりトナー像が定着された記録紙は、排出ローラ112により画像形成装置の外部に排出される。
【0014】
ブラック(K)の画像形成ステーションの記録紙搬送方向の下流側には、搬送ベルト111に対向する位置に、検知手段である光学センサ113が配置されている。光学センサ113は、各画像形成ステーション間のトナー像の色ずれ量を導出するため、搬送ベルト111上に形成されたテスト画像の位置検出を行う。光学センサ113により導出された色ずれ量は、後述する画像コントローラ部700(
図6参照)等に通知され、記録紙上に色ずれのないフルカラートナー像が転写されるように、各色の画像位置が補正される。また、プリンタ制御部(不図示)は、複合機(MFP)全体を制御するMFP制御部(不図示)からの指示に応じて、上述したスキャナ部100、作像部103、定着部104、給紙/搬送部105等を制御しながら、画像形成動作を実行する。
【0015】
ここでは、電子写真方式の画像形成装置の例として、搬送ベルト111上の記録紙に各画像形成ステーションの感光ドラム102に形成されたトナー像を直接転写する方式の画像形成装置について説明した。本発明は、このような感光ドラム102上のトナー像を直接、記録紙に転写する方式のプリンタに限定されるものではない。例えば、感光ドラム102上のトナー像を中間転写ベルトに転写する1次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像を記録紙に転写する2次転写部を備える画像形成装置についても、本発明は適用することができる。
【0016】
[露光ヘッドの構成]
次に、感光ドラム102に露光を行う露光ヘッド106について、
図2を参照して説明する。
図2(a)は、露光ヘッド106と感光ドラム102との位置関係を示す斜視図であり、
図2(b)は、露光ヘッド106の内部構成と、露光ヘッド106からの光束がロッドレンズアレイ203により感光ドラム102に集光される様子を説明する図である。
図2(a)に示すように、露光ヘッド106は、矢印方向に回転する感光ドラム102の上部の、感光ドラム102に対向する位置に、取付け部材(不図示)によって画像形成装置に取り付けられている(
図1)。
【0017】
図2(b)に示すように、露光ヘッド106は、プリント基板202と、プリント基板202に実装された発光装置群400と、ロッドレンズアレイ203と、ハウジング204から構成されている。ハウジング204には、ロッドレンズアレイ203とプリント基板202が取り付けられる。
図2に示すようにロッドレンズアレイ203は、発光装置群400と感光ドラム102の間に配置されている。ロッドレンズアレイ203は、プリント基板202の長手方向に沿って設けられ、発光装置群400がそれぞれ出射する光束を感光ドラム102上に集光させる。工場では、露光ヘッド106単体で組立て調整作業が行われ、ピント調整、光量調整が行われる。ここで、感光ドラム102とロッドレンズアレイ203との間の距離、及びロッドレンズアレイ203と発光装置群400との間の距離が、所定の間隔となるように組立て調整が行われる。これにより、発光装置群400からの光が感光ドラム102上に結像される。そのため、工場でのピント調整時においては、ロッドレンズアレイ203と発光装置群400との距離が所定の値となるように、ロッドレンズアレイ203の取付け位置の調整が行われる。また、工場での光量調整時においては、後述する発光装置401の下部電極を駆動し、ロッドレンズアレイ203を介して感光ドラム102上に集光させた光が所定光量になるように、発光装置401に印加する後述の電圧の調整が行われる。
【0018】
[発光装置群の構成]
図3は、プリント基板202及びプリント基板202に実装された発光装置群400を説明する図である。
図3(a)は、プリント基板202の発光装置群400が実装された面の構成を示す模式図であり、
図3(b)は、プリント基板202の発光装置群400が実装された面(第1面)とは反対側の面(第2面)の構成を示す模式図である。
【0019】
図3(a)に示すように、第2の基板であるプリント基板202に実装された発光装置群400は、20個の独立したチップである発光装置401-1~401-20が、プリント基板202の長手方向に沿って、千鳥状に2列に配置された構成を有している。すなわち、プリント基板202上(第2の基板上)には、奇数番目の発光装置401-1・・・(401-2n+1:n≧0)と偶数番目の発光装置401-2・・・(401-2n:n≧1)とが感光ドラム102の回転方向において異なる位置に配列されている。発光装置401-1~401-20を総称して発光装置401ということもある。なお、
図3(a)において、上下方向は第1の方向である感光ドラム102の回転方向を示し、水平方向は、第1の方向と直交する第2の方向である長手方向を示す。長手方向は、感光ドラム102の回転方向と交差する交差方向でもある。各々の発光装置401の内部には、計748個の後述する下部電極を有する。本実施例では、下部電極は21.16μm(≒2.54cm/1200ドット)に1つ配置されている。その結果、1つの発光装置401内における748個の下部電極の端から端までの配列距離は、約15.8mm(≒21.16μm×748)である。発光装置群400は、20個の発光装置401から構成されている。発光装置群400における露光可能な下部電極の数は14,960個(=748個の電極×20チップ)となり、発光装置群400によって約316mm(≒約15.8mm×20チップ)の長手方向の画像幅に対応した露光が可能となる。
【0020】
また、
図3(b)に示すように、発光装置群400が実装された面とは反対側のプリント基板202の面には、コネクタ305が実装されている。コネクタ305は、後述する画像コントローラ部700(
図6参照)から発光装置群400を制御する制御信号及び電源ラインを接続するためのコネクタであり、コネクタ305を介して各発光装置401-1~401-20が駆動される。
【0021】
図3(c)は、長手方向に2列に配置された発光装置401のチップ間の境界部の様子を示す図であり、水平方向は、
図3(a)の発光装置群400の長手方向であり、発光装置401が複数配置されている。
図3(c)に、発光装置401のチップ間の境界部(長手方向においてチップ同士の端部が重なっている部分(重なり部))を示す。発光装置401-nと発光装置401-n+1間の境界部においても、異なる発光装置401間における端部の下部電極のピッチ(2つの下部電極の中心点と中心点の間隔(L))は、1200dpiの解像度のピッチである略21.16μmとなっている。
【0022】
また、短手方向の上下2列に並んだ発光装置401は、次のように配置されている。すなわち、上下の発光装置401の後述する下部電極の間隔(図中、矢印Sで示す)が約105μm(1200dpiで5画素分、2400dpiで10画素分の各解像度の整数倍の距離)となるように配置されている。また、露光ヘッド106の長手方向の発光点の間隔(図中、矢印Lで示す)は、約21.16μm(1200dpiで1画素分)となっている。なお、本発明においては、発光装置401間の間隔S、Lは、前述した値に限定する必要はないものとする。
【0023】
[発光装置の構成]
図4は発光装置401の内部構成を示す概略図である。ここで、
図4に示すように、発光装置401の長手方向をX方向、短手方向をY方向とする。ここで、Y方向は感光ドラム102の回転方向、言い換えれば回転する感光ドラム102の感光面(感光体表面)の移動方向である。X方向は、Y方向すなわち感光ドラム102の回転方向に略直交する方向である。感光ドラム102の回転方向に略平行な方向でもある。なお、略直交は角度90°に対して±1°程度の傾きを許容し、略平行は互いのなす角度が0°を基準に±1°程度の傾きを許容する。発光装置401は第1の基板であるシリコン基板402の上にワイヤボンディング用パッド(以下、WBパッドという)601-1、601-2、601-3、601-4が形成されている。なお、シリコン基板402には駆動部である回路部602(破線)が内蔵されている。回路部602としてはアナログ駆動回路、デジタル制御回路、又はその両方を含んだ構成を用いることができる。回路部602の電源供給や発光装置401外からの信号等の入出力はWBパッド601を介して行われる。
【0024】
本実施例の発光装置401は、感光ドラム102の回転軸線方向に沿って延びるライン状の発光領域604を含む。発光領域604は、後述する陽極と陰極と発光層450(
図5参照)とを含み、陽極と陰極に電位差が生じることによって発光する領域である。
【0025】
シリコン基板402としては、シリコンウェハを用いる。これは、次のようなメリットがあるからである。すなわち、シリコン基板については、集積回路形成用のプロセス技術も発達しており、既に様々な集積回路の基板として用いられているため、高速かつ高機能な回路を高密度に形成できるというメリットがある。また、シリコン基板については、大口径のウェハが出回っており、安価に入手することができるというメリットがある。
【0026】
本実施例では、回路部602に発光領域604を駆動する駆動回路として、発光領域604を発光させるための信号(以下、発光信号という)を生成するためのデータ転送、発光信号生成部、下部電極に印加する駆動電圧を生成する駆動電圧生成回路などを設ける。そして、回路部602をシリコン基板402に集積回路として形成する。これらのシリコン基板402上に下部電極が電気的に接続されるように蒸着されている。これにより、発光周期の高速化や下部電極に対するワイヤボンディングの数を削減することが可能となる。
【0027】
[発光領域の構成]
図5を用いて発光装置401をさらに詳しく説明する。
図5におけるX方向は、露光ヘッド106の長手方向を示している。Z方向は、後述する層構造の各層が重なる方向(積層方向)である。
図5(a)は、
図4中のA-A断面の概略図の要部拡大図である。
図5(a)は、Y方向から見た後述する下部電極410-1~410-748の概略図である。
図5(a)、
図5(c)に示すように、発光装置401は、シリコン基板402、下部電極410-1~410-748、発光層450、上部電極460を備える。シリコン基板402は製造プロセスにおいて後述する下部電極410-1~410-748それぞれに対応する駆動部を含む駆動回路が形成された駆動基板である。
【0028】
図5(a)、
図5(c)に示すように、下部電極410-1~410-748(陰極)は、シリコン基板402上に層状(第1の電極層)に形成された複数の電極である。各下部電極410-1~410-748は、シリコン基板402を製造する製造プロセスとともにSi集積回路加工技術を用いてシリコン基板402に内蔵されている複数の駆動部上に形成される。下部電極410-1~410-748は、後述する発光層450の発光波長に対して反射率の高い金属が好ましい。そのため、下部電極410-1~410-748には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、またはこれらの合金、銀・マグネシウム合金など含有することが好ましい。
【0029】
図5に示すように、下部電極410-1~410-748は、X方向における各画素に対応して設けられた電極である。すなわち、下部電極410-1~410-748はそれぞれ1画素を形成するために設けられた電極である。下部電極410-1~410-748を第1の電極列とする。
【0030】
本実施例におけるX方向における下部電極410-1~410-748の幅Wは1画素の幅に対応する幅である。間隔dはX方向における下部電極間距離(配列間隔)である。下部電極410-1~410-748はシリコン基板402上に間隔dを開けて形成されているため、シリコン基板402に形成された複数の駆動部はそれぞれ個別に下部電極410-1~410-748の電圧を制御することができる。間隔dには発光層450の有機材料が充填されており、下部電極は有機材料によって仕切られている。
【0031】
本実施例における発光装置401において、下部電極410-1~410-748の幅Wは称呼寸法として20.90μm、間隔dは称呼寸法として0.26μmに設定されている。つまり、本実施例の発光装置401は、X方向において21.16μm毎に1つの下部電極410を備える。21.16μmは1200dpiにおける1画素の大きさであるので、各下部電極410のX方向における下部電極410の幅は本実施例の画像形成装置の出力解像度に対応する1画素相当の大きさを有することになる。なお、本実施例の発光装置401におけるプロセス・ルールは0.2μm程度と高精度であり、dの幅を0.26μmの分解能で形成することは可能である。
【0032】
また、
図5(b)に示すように、感光ドラム102の回転方向であるY方向における下部電極410-1~410-748の幅もWである。つまり、本実施例の下部電極410-1~410-748は20.90μm四方の形状をなしており、下部電極410の面積は436.81μm
2の大きさとなる。これは、1画素の面積447.7456μm
2に対して約97.6%を占める。有機発光材料はLEDに比較して光量が少ない。それに対して、上記のように下部電極410を正方形として隣接する下部電極間の距離を小さくしてシリコン基板402上に形成することで、感光ドラム102の電位を変化させ得る程度の光量を得るための発光面積を確保することが可能となる。なお、1画素の占有面積に対して90%以上の下部電極面積を確保することが望ましい。したがって、1200dpiの出力解像度の画像形成装置に対しては下部電極410の一辺の幅を約20.07μm以上で形成することが望ましく、2400dpiの出力解像度の画像形成装置に対しては下部電極410の一辺の幅を約10.04μm以上で形成することが望ましい。
【0033】
一方で、下部電極410の占有面積の上限値は、ロッドレンズアレイ203や後述する上部電極460の透過率に基づいて設定されるべきであるが、本実施例では、1画素の占有面積に対して110%を上限として設定する。1画素の占有面積に対して110%より大きく設計すると、感度の高い感光ドラム102を露光する際に形成される画素のサイズが解像度を大きく超えてしまう可能性があるため、下部電極410の占有面積の上限値を110%に設定する。したがって、1200dpiの出力解像度の画像形成装置に対しては下部電極410の一辺の幅を約22.19μm以下で形成することが望ましく、2400dpiの出力解像度の画像形成装置に対しては下部電極410の一辺の幅を約11.10μm以下で形成することが望ましい。すなわち、1画素の占有面積に対する下部電極410の占有面積の範囲は90%以上110%以下であることが好ましい。
【0034】
なお、下部電極410の形状は正方形に限られず、画像形成装置の出力解像度に対応する露光領域サイズの光を出射し、その光によって出力画像の画質が画像形成装置の設計仕様を満たすレベルであれば四角形以上の多角形、円形、楕円形などの形状でも良い。
【0035】
次に、発光層450について説明する。発光層450は下部電極410-1~410-748が形成されたシリコン基板402に積層されて形成される。すなわち、下部電極410-1~410-748が形成された部分において発光層450は下部電極410-1~410-748上に積層される。下部電極410-1~410-748が形成されていない部分においてシリコン基板402上に積層される。本実施例では、発光装置401において発光層450は、下部電極410-1~410-748すべてに跨るように形成されているが、実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、下部電極410-1~410-748と同様に発光層450を各下部電極上に分離して積層するように形成しても良いし、下部電極410-1~410-748を複数のグループに分割して、分割したグループ毎にそのグループに属する下部電極上に一つの発光層を積層させても良い。
【0036】
発光層450は、例えば有機材料を用いることができる。有機EL膜である発光層450は、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能層を含む積層構造体である。発光層450には、有機材料以外でも発光特性を有する無機材料を用いても良い。
【0037】
発光層450には上部電極460(陽極)が積層(第2の電極層)とされている。下部電極410、発光層450、上部電極460は層状体を形成している。上部電極460は、発光層450の発光波長の光を透過させることが可能(透過可能)な電極である。そのため、本実施例の上部電極460は酸化インジウムスズ(ITO)を含有する材料を透明電極として採用している。酸化インジウムスズの電極は、可視光領域の光に関して80%以上の透過率を有するため、有機ELの電極としては好適である。
【0038】
上部電極460は、少なくとも発光層450を挟んで下部電極410-1~410-748の反対側に形成されている。すなわち、Z方向において、上部電極460と下部電極410-1~410-748の間に発光層450が配置されており、Z方向において下部電極410-1~410-748を上部電極460に投影したときに下部電極410-1~410-748が形成された領域は上部電極460が形成された領域に収まる。なお、透明電極は発光層450全体に積層されていなくても良いが、発光層450で生じた光を効率良く発光装置401の外部に出射するためには、1画素の占有面積に対して上部電極460の占有面積が100%以上であることが好ましく、より好ましくは120%以上であることが好ましい。上部電極460の占有面積の上限値はシリコン基板402、発光層450の面積によって任意に設計される。上部電極460において光を透過させる部分以外は配線を設けても良い。
【0039】
本実施例の上部電極460は、各下部電極410-1~410-748に対して共通に設けられた陽極であるが、各下部電極410-1~410-748それぞれに対して個別に設けても良いし、複数の下部電極毎に一つの上部電極を設けても良い。
【0040】
駆動回路は、上部電極460と、下部電極410-1~410-748のうちの任意の下部電極と、に電位差を生じさせるために画像データに基づいて各下部電極410-1~410-748の電位を制御する。
【0041】
本実施例における発光装置401は所謂トップエミッション型の出射方式のデバイスである。陽極である上部電極460と陰極である下部電極410それぞれに電圧を印加して両者に電位差が生じると、陰極から電子が発光層450に流れ込み、陽極から正孔が発光層450に流れ込む。そして、発光層450において電子と正孔が再結合することによって発光層450が発光する。発光層450が発光することによって上部電極460に向かう光は上部電極460を透過して発光装置401から
図5に示す矢印A方向に出射される。また、発光層450から下部電極410に向かう光は下部電極410よってそれぞれ上部電極460に向けて反射され、その反射光も上部電極460を透過して発光装置401から出射される。発光層450から直接上部電極460に向かって出射される光と、下部電極410それぞれによって反射されて上部電極460から出射される光と、の上部電極460からの出射タイミングに時間差は生じるが、発光装置401の層の厚さは極小さいため、ほぼ同時の出射と見做すことができる。なお、本実施例の発光装置はボトムエミッション型の出射方式でも良い。
【0042】
上部電極460として酸化インジウムスズなどの透明電極を用いることによって電極の光の透過割合を示す開口率を実質的に上部電極460の透過率と同等とすることができる。すなわち、実質的に上部電極460以外に光を減衰させる、あるいは光を遮蔽する部分がないため、発光層450の発光が極力減衰する、あるいは遮蔽されることなく出射光となる。
【0043】
また、前述した様に下部電極410-1~410-748を高精度なSi集積回路加工技術を用いて形成することで下部電極410-1~410-748を高密度に配置することができる。そのため、発光領域604の面積(ここでは下部電極410-1~410-748の面積と、互いに隣接する下部電極間の領域の面積の合計)のほとんどを下部電極410-1~410-748に割り当てることができる。すなわち、単位面積当たりの発光領域の利用効率が高い露光ヘッドとなる。
【0044】
なお、発光層450として有機EL層や無機EL層などの水分に弱い発光材料を用いる際は発光領域604への水分侵入を阻止するために封止しておくことが望ましい。封止方法としては、例えば、シリコンの酸化物、シリコンの窒化物、アルミの酸化物などの薄膜の単体あるいは積層した封止膜を形成する。封止膜の形成方法としては段差などの構造の被覆性能に優れた方法が好ましく、例えば、原子層堆積法(ALD法)などを用いることができる。なお、封止膜の材料、構成、形成方法などは一例であり、上述した例には限定されず、適宜好適なものを選択すればよい。
【0045】
[制御ブロック]
図6に、画像コントローラ部700、プリント基板202のブロック図を示す。以下、チップセレクト信号をcs_x、ライン同期信号をlsync_x、クロック信号をclk、画像データ信号をdataとする。実施例1では、説明を簡易化するために単色の処理について説明するが、同様の処理を4色について並列に処理するものとする。
【0046】
(画像コントローラ部)
少なくとも一つのICであるプロセッサーとしての画像コントローラ部700には、スキャナ部100が生成した画像データが入力される。画像コントローラ部700は、プリント基板202を制御するための制御信号をフレクシブルフラットケーブルなどのケーブルを介してプリント基板202に送信する。なお、画像コントローラ部700に入力される画像データは、前述したようにスキャナ部100で生成したデータでも良いし、パーソナルコンピューターよりネットワーク機器(不図示)を介して転送されたデータでもよい。制御信号は、画像データの有効範囲を表すチップセレクト信号cs_x、クロック信号clk、画像データ信号data、画像データの1ライン毎の区切りを表すライン同期信号lsync_x、CPU703との通信信号である。各々の信号は、チップセレクト信号線705、クロック信号線706、画像データ信号線707、ライン同期信号線708、通信信号線709を介してプリント基板202内の発光装置401に送信される。画像コントローラ部700では、画像データに対する処理と、印刷タイミングに対する処理が行われる。画像データ生成部701は、スキャナ部100又は画像形成装置外部から受信した画像データに対して、CPU703により指示された解像度でディザリング処理を行いプリント出力のための画像データを生成する。実施例1では、例えば1200dpiの解像度でディザリング処理を行うものとする。
【0047】
同期信号生成部704は、第2の信号であるライン同期信号lsync_xを生成する。CPU703は、予め定められた感光ドラム102の回転速度に対して、1ライン周期として、同期信号生成部704に信号周期の時間間隔を指示する。ここで、1ライン周期とは、感光ドラム102表面が回転方向に1200dpiの画素サイズ(約21.16μm)分移動する周期である。例えば、記録紙の搬送方向に200mm/sの速度で印刷が行われる場合、CPU703は1ライン周期を105.8μs(小数点2桁以下省略)として時間間隔を同期信号生成部704に指示する。搬送方向の速度については、感光ドラム102の速度を制御する制御部(不図示)に設定される印刷速度(画像形成速度)の設定値(固定値)を用いてCPU703が算出するものとする。なお、印刷速度は例えば記録紙の種類に応じて設定される。
【0048】
チップデータ変換部702は、同期信号生成部704で生成したライン同期信号lsync_xに同期して1ライン分の画像データを発光装置401毎に分割する。チップデータ変換部702は、発光装置401毎に分割した画像データをクロック信号clkとチップセレクト信号cs_xとともにプリント基板202へ送信する。クロック信号clkは、制御の基準となる信号である。
【0049】
(プリント基板)
次にプリント基板202の構成について説明する。ヘッド情報格納部710は各発光装置401の発光量や実装位置情報といったヘッド情報を格納する記憶装置であり、通信信号線709を介してCPU703と接続されている。画像コントローラ700から延びるクロック信号線706、画像データ信号線707、ライン同期信号線708、通信信号線709は、分岐して発光装置401それぞれに接続されている。画像コントローラ700から延びる、チップセレクト信号を送信するためのチップセレクト信号線705は発光装置401-1に接続されている。また、発光装置401-1の出力が信号線711-1を介して発光装置401-2の入力に接続され、発光装置401-2の出力が信号線711-2を介して発光装置401-3の入力に接続される。このように、チップセレクト信号線705(又は信号線711)は、各発光装置401を介していわゆる数珠つなぎに接続(カスケード接続)されている。各発光装置401は、チップセレクト信号線705、クロック信号線706、ライン同期信号線708、画像データ信号線707、通信信号線709で設定された設定値に基づいて各発光装置401の下部電極の電圧を制御する。また、各発光装置401-nは、次の(後段の)発光装置401-n+1用のチップセレクト信号を生成する。
【0050】
[発光装置内の回路構成]
図7(a)に発光装置401内の回路ブロック図を示す。発光装置401内の回路部602はデジタル部800とアナログ部806とを有する。デジタル部800は、クロック信号clkに同期して、通信信号によって予め設定された設定値や各種信号に基づいて下部電極410-nを駆動するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をパルス信号線907を介してアナログ部806へ送信する機能を有する。ここで、各種信号とは、チップセレクト信号cs_x、画像データ信号data、ライン同期信号lsync_xをいう。またデジタル部800は、入力されてきたチップセレクト信号cs_xから次の発光装置401用のチップセレクト信号を生成する機能を有する。
【0051】
[デジタル部]
通信IF部801は、CPU703からの通信信号に基づいて、レジスタ部802に対する設定値のライト及びリードを制御する。レジスタ部802は、動作に必要な設定値(予め設定された設定値)を格納する。この設定値には、データ格納部804で使用される露光タイミング情報、パルス信号生成部805で生成されるパルス信号の幅及び位相情報、アナログ部806で設定される駆動電圧の設定情報等がある。なお、駆動電圧は下部電極と上部電極間の抵抗値から導出でき、かつこの抵抗値のレンジは予め判っているため、駆動電圧の設定情報に代えて駆動電流に関する情報が格納されていても良い。レジスタ部802はこれらの情報の少なくとも1つを格納する。第1の生成部であるチップセレクト信号生成部803は、入力されてきた第1の信号であるチップセレクト信号cs_xを遅延させ、次の発光装置401用のチップセレクト信号を生成し、信号線711を介して送信する。チップセレクト信号は発光装置401に対して画像データのサンプリングを許可する許可信号である。データ格納部804は、入力されてきたチップセレクト信号cs_xが有効な期間に画像コントローラ700が出力する画像データをデータ信号線707を介して受け取って保持し、ライン同期信号lsync_xに同期して画像データをパルス信号生成部805に出力する。詳細は後述する。
【0052】
パルス信号生成部805は、データ格納部804から入力された画像データに応じて、レジスタ部802で設定されたパルス信号の幅情報及び位相情報に基づきパルス信号を生成し、アナログ部806に出力する。詳細は後述する。アナログ部806はデジタル部800で生成されたパルス信号に基づいて、下部電極を駆動するために必要な信号を生成する。詳細は後述する。
【0053】
(画像データ格納部)
次にデータ格納部804の動作について説明する。実施例1のデータ格納部804は、発光装置401に内蔵されている。チップセレクト信号cs_x及びライン同期信号lsync_xは負論理信号である例を説明するが、正論理であってもよい。
図7(b)はデータ格納部804の回路構成図である。クロックゲート回路810はチップセレクト信号cs_xの反転信号とクロック信号clkとの論理積を出力とする。クロックゲート回路810は、チップセレクト信号cs_xが有効なときのみフリップフロップ回路811にクロック信号s_clkを出力する。
【0054】
フリップフロップ回路811は、データ格納部804へ入力されてきた画像データ信号dataを大元の入力とする。フリップフロップ回路811は発光装置401の長手方向に設けられた下部電極410の数と同じ数(実施例1では748)が直列に接続されており、シフトレジスタを構成する。フリップフロップ回路811は、クロックゲート回路810から送られてきたクロック信号s_clkに応じて動作する。具体的には、クロック信号s_clkに応じて画像コントローラ700が出力する画像データをシフトレジスタの最上位のフリップフロップ回路811がサンプリングし、かつ各フリップフロップ回路811はサンプリングした画像データを後段のフリップフロップ回路にシフト処理する。フリップフロップ回路811及びフリップフロップ回路812は下部電極410の長手方向において下部電極410の数(本実施例では748個)分設けられている。
【0055】
レジスタとしてのフリップフロップ回路812は、フリップフロップ回路811の出力を入力とし、ライン同期信号lsync_xに応じて動作する。フリップフロップ回路812の出力は、画像データbuf_data_0_000~buf_data_0_747として、パルス信号生成部805に出力される。
【0056】
図8はデータ格納部804の発光装置401の長手方向の動作を表すタイミングチャートである。
図8は、(i)にクロック信号clkの波形を示し、(ii)にライン同期信号lsync_xの波形を示し、(iii)にチップセレクト信号cs_xの波形を示し、(iv)に画像データ信号dataを000~747で示す。ここで、「000」は、例えば下部電極410-1に対応する画像データを示し、「747」は下部電極410-748に対応する画像データを示す。画像データ信号dataについて斜線で示す部分は、画像データとしては無効なデータを示す。(v)はフリップフロップ回路811の出力である画像データdly_data_000等を示し、(vi)はフリップフロップ回路812の出力である画像データbuf_data_0_000等を示す。
【0057】
チップセレクト信号cs_xが0(cs_x=0(ローレベル))である時刻T0から時刻T1までの間、直列に接続されたフリップフロップ回路811を介して画像データは次のようにシフトしていく。時刻T1はcs_x=0をクロック信号clkの立ち上がりで捕らえた時刻である。すなわち、data→dly_data_000→dly_data_001→…→dly_data_747といった具合に順にシフトしていく。チップセレクト信号cs_xがローレベルとなっている期間(cs_x=0)には、クロック信号clkが、発光装置401の長手方向の下部電極410の数と同じ数、すなわち748だけ入力されるものとする。こうすることで、1ライン分の画像データがdly_data_000~dly_data_747に保持されることとなる。
【0058】
時刻T1以降はチップセレクト信号cs_xが1(cs_x=1(ハイレベル))であるためにシフト動作は行われずに時刻T1の画像データが保持される。例えば、1つ目のフリップフロップ回路811で時刻T1以降に保持される画像データdly_data_000は747である。時刻T2でライン同期信号lsync_xが0(lsync_x=0(ローレベル))となると、1ライン分の画像データが一斉にbuf_data_0_000~buf_data_0_747として、パルス信号生成部805に出力される。時刻T2はlsync_x=0をクロック信号clkの立ち上がりで捕らえた時刻である。すなわち、フリップフロップ回路811で保持されていた画像データdly_data_000等がフリップフロップ回路812を介して画像データbuf_data_0_000等としてパルス信号生成部805に出力される。
【0059】
(パルス信号生成部)
パルス信号生成部805について説明する。下部電極410の数がn個の場合、パルス信号生成部805も下部電極410の数と同数のn個、存在する。実施例1では、下部電極410-1~410-748に対してパルス信号生成部805-1~805-748が存在する。なお、下部電極410毎に有するパルス信号生成部805の構造はそれぞれ同じである。そのためここではパルス信号生成部805-1を例に挙げて説明する。
【0060】
図9(a)にパルス信号生成部805-1のブロック図を示す。パルス信号生成部805-1は、パルス幅選択部901、出力決定部903及びカウンタ部904を有する。パルス幅選択部901は、レジスタ部802によって設定されるパルス信号のパルス幅Tableに従ってデータ格納部804から入力される画像データをパルス幅bに変換する。表1に画像データからパルス幅bに変換する際の変換表であるパルス幅Tableを示す。
【0061】
【表1】
表1は、1列目に画像データを示し、2列目に画像データに対応するパルス信号のパルス幅bを示す。例えば画像データは4ビット([3:0])(0~15)とする。
【0062】
例えば画像データの入力が2である場合、パルス幅選択部901(パルス幅決定部)は、レジスタ部802によって設定された表1のパルス幅Tableに基づいてパルス幅bを8として出力決定部903に出力する。ただし表1に示したパルス幅Tableは一例であり、画像データ及びパルス幅のビット幅は表1の例と異なっていてもよいし、パルス幅bの値に関しても任意に設定可能である。レジスタ部802に格納されるパルス幅Tableは、下部電極410ごとに個別に設定しても良いし、共通としても良い。
【0063】
下部電極410に対応する発光層450はプロセスばらつきなどにより、パルス信号を同じパルス幅とした場合でも光量が異なる場合がある。下部電極410-1~410-748に対応する発光層450毎の光量のばらつきによって、感光ドラム102上に形成される静電潜像にムラが生じ、印刷画像上のムラとなる。この静電潜像のムラを無くすために、測定した光量に応じて下部電極410-1~410-748ごとにパルス幅Tableの設定を行うことで、入力された画像データに適合したドット幅の画像が形成されるように出力するパルス信号のパルス幅を変化させる。以上の制御により、下部電極410-1~410-748ごとにパルス幅Tableを設定することで、下部電極410-1~410-748に対応する発光層450毎の光量ばらつきによって生じる印刷画像のムラを補正することが可能である。なお、下部電極410-1~410-748に対応する発光層450の光量測定は工場で測定する又は露光ヘッド106に対向する位置に光量測定装置(不図示)を設置して行う。
【0064】
カウンタ部904は、クロック信号線706を介して画像コントローラ700から入力されるクロック信号clkをカウントし、ライン同期信号lsync_xの周期(以下、ライン同期信号周期という)cごとにカウントを1にリセットをする(
図9(b)中タイミングC-1、タイミングC-2)。ライン同期信号周期は、後述する
図9(b)にタイミングC-1、C-2として表示している。カウンタ部904の出力をcountと表記し、countは出力決定部903に入力される。実施例1ではリセットによりcountを1としているが、1でなくともよい。また実施例1ではクロック信号clkのカウント方法をアップカウントとしているが、ダウンカウントとしてもよい。カウンタ部904は各下部電極410に対応するパルス信号生成部805ごとに持ってもよいし、共通としてもよい。
【0065】
出力決定部903の動作について
図9(b)を用いて説明する。
図9(b)において、(i)はクロック信号clkの波形を示し、(ii)はライン同期信号lsync_xの波形を示す。(iii)はカウンタ部904の出力であるcountの値を示し、(iv)はパルス信号生成部805によって生成されたパルス信号の波形を示す。
【0066】
出力決定部903は、カウンタ部904から入力されるcount及びパルス幅選択部901から出力されるパルス幅bに応じたパルス信号を生成する。出力決定部903は、クロック信号clkの立ち上がり時にライン同期信号lsync_xがローレベルであるタイミング(タイミングC-1、C-2)で、出力であるパルス信号をハイレベルとする。出力決定部903は、その後、クロック信号clkの立ち上がり時にcountがパルス幅bと一致したタイミング(タイミングB)で出力であるパルス信号をローレベルにする。これにより、出力決定部903はパルス信号を生成する。
【0067】
[デジタル部の変形例]
なお、パルス信号生成部805で用いるクロック信号clk及びライン同期信号lsync_xは、次のようにしてもよい。例えば、それぞれ個別に画像コントローラ部700で生成し、
図10に示すようにパルス生成クロック信号線910及びパルス生成ライン同期信号線912を介してパルス信号生成部805に入力してもよい。ただし
図7(a)に示すように、パルス信号生成部805で用いられるクロック信号clk及びライン同期信号lsync_sの入力に、クロック信号線706、ライン同期信号線708を用いることで、プリント基板202上の配線を減らすことが可能である。
【0068】
[アナログ部]
図11(a)に、アナログ部806のブロック図を示す。実施例1では説明を簡略化するため、下部電極410-1~410-748における2つの下部電極410-1、410-2を駆動する駆動部1001-1、1001-2を図示して説明する。しかし、同様の駆動部1001-3~1001-748が下部電極410-3~410-748に対応して形成されているものとする。また、上述したように、下部電極410-1、410-2を駆動することにより実際に発光するのは、下部電極410-1、410-2のそれぞれに対応する領域の発光層450である。
【0069】
パルス信号生成部805-1、805-2は、下部電極410-1、410-2の発光(ON)タイミングを制御するパルス信号を生成する。パルス信号生成部805-1、805-2は、パルス信号線907-1、907-2を介して駆動部1001-1、1001-2にパルス信号を入力する。
【0070】
デジタルアナログ変換器(以下、DACとする)1002は、レジスタ部802に設定されたデータに基づき信号線1003を介して、駆動電流を決定するアナログ電圧を駆動部1001-1、1001-2に供給する。すなわち、デジタルアナログ変換器1002は、下部電極410-3~410-748に印加する駆動電圧を生成する電圧生成部として機能する。駆動部選択部1007は、レジスタ部802に設定されたデータに基づき、駆動部1001-1、1001-2を選択する駆動部セレクト信号を、信号線1004、1005を介して、駆動部1001-1、1001-2に供給する。駆動部セレクト信号は、選択された駆動部1001に接続されている信号のみがハイレベルとなるように生成される。例えば、駆動部1001-1が選択される場合、信号線1004にのみハイレベルの駆動部セレクト信号が供給され、信号線1005など他の駆動部1001-2等に接続されている信号線1005等にはローレベルの駆動部セレクト信号が供給される。実施例1では駆動部セレクト信号は正論理としているが、負論理であってもよい。
【0071】
駆動部1001-1、1001-2は、各々駆動部選択部1007によって選択されたタイミング(駆動部セレクト信号がハイレベルになるタイミング)で、信号線1003を介して入力されるアナログ電圧が設定される。CPU703はレジスタ部802を介して駆動部1001-1、1001-2を順次選択し、選択した駆動部1001-1、1001-2に対応した電圧を設定する。これにより、CPU703は1つのDAC1002で全ての駆動部1001のアナログ電圧(駆動電圧)を設定する。前述した動作により駆動部1001-1、1001-2には、駆動電流を決定するアナログ電圧とパルス信号とが入力され、以降に説明する駆動回路によって各下部電極410-1、410-2が独立して電圧が印加される。
【0072】
(駆動部)
図11(b)に、下部電極410-1を駆動する駆動部1001-1の回路について示す。なお、他の下部電極に対する駆動部1001についても、同様の回路で駆動するものとする。MOS型電界効果トランジスタ(以下、MOSFETとする)1102は、ゲート電圧値に応じて下部電極410-1に駆動電流を供給し、ゲート電圧がローレベルのときには、駆動電流がオフ(消灯)するように電流を制御する。
【0073】
MOSFET1104のゲート端子には、パルス信号線907-1が接続されており、パルス信号がハイレベルのときにコンデンサ1106に充電された電圧を、MOSFET1102に受け渡す。MOSFET1107は、駆動部選択部1007から送信された駆動部セレクト信号(信号線1004より伝送)がゲート端子に接続されている。MOSFET1107は、受信した駆動部セレクト信号がハイレベルのときにオンし、DAC1002から出力されたアナログ電圧(信号線1003より伝送)を、コンデンサ1106に充電する。実施例1においては、画像形成前のタイミングで、DAC1002はコンデンサ1106にアナログ電圧を設定し、画像形成期間中はMOSFET1107をオフ状態にすることで、電圧レベルを保持し続けるものとする。
【0074】
このような動作により、MOSFET1102は、設定されたアナログ電圧とパルス信号とに応じて駆動電流を下部電極410に供給する。下部電極410-1の入力容量が大きく、オフ時の応答速度が遅い場合は、MOSFET1103によりオフの速度を速めることが可能である。MOSFET1103はゲート端子にインバータ1105によりパルス信号を論理反転させた信号が入力されている。パルス信号がローレベルのときに、MOSFET1103のゲート端子はハイレベルになり、下部電極410-1の入力容量に充電された電荷を強制的に放電する。
【0075】
以上のように、実施例1では、同一のシリコン基板402内に発光領域604と回路部602とを備える構成である。これにより、ワイヤボンディングや配線基板の面積にかかるコストを抑制しつつ、下部電極ごとに駆動信号生成回路を有し、パルス信号のパルス幅及び発光タイミングを微小な時間の単位で制御することが可能となる。
【0076】
以上、実施例1によれば、ワイヤボンディングや配線基板の面積にかかるコストを抑制することができる。
【実施例2】
【0077】
[パルス信号生成部]
実施例2でも、画像形成装置全体の構成、露光ヘッド106の構成、シリコン基板402の構成は実施例1と同様である。実施例1と異なるのは、パルス信号生成部805の構成であるため、パルス信号生成部805のうち実施例1と異なる点について説明する。下部電極410の数がn個の場合、パルス信号生成部805も下部電極410の数と同数のn個存在するが、下部電極410毎に有するパルス信号生成部805の構造はそれぞれ同じである。そのため、ここではパルス信号生成部805-1を例に挙げて説明する。
【0078】
図12(a)に実施例2のパルス信号生成部805-1のブロック図を示す。実施例1の
図9(a)に示したパルス信号生成部805-1と異なるのは、入力にレジスタ部802から送信される第1の時間であるパルス遅延時間aを設けた点である。実施例2のカウンタ部904は、パルス遅延時間カウンタ1201とパルス幅カウンタ1203とを有している。パルス遅延時間カウンタ1201の出力をcount_a、パルス幅カウンタ1203の出力をcount_bとする。カウンタ部904及び出力決定部903の動作について
図12(b)を用いて説明する。ここで、
図12(b)の(i)、(ii)、(v)は、
図9(b)の(i)、(ii)、(iv)と同様のグラフであり説明を省略する。
図12(b)の(iii)はパルス遅延時間カウンタ1201の出力であるcount_aの値を示し、(iv)はパルス幅カウンタ1203の出力であるcount_bの値を示す。
【0079】
パルス遅延時間カウンタ1201は、クロック信号clk及びライン同期信号lsync_xを入力とする。パルス遅延時間カウンタ1201は、クロック信号clkをカウントし、クロック信号clkの立ち上がり時にライン同期信号lsync_xがローレベルであるタイミング(タイミングC-1、C-2)でカウントを1にリセットする。
【0080】
パルス幅カウンタ1203は、クロック信号clk、count_a及びパルス遅延時間aを入力とする。パルス幅カウンタ1203は、クロック信号clkをカウントし、クロック信号clkの立ち上がり時にcount_aがパルス遅延時間aと一致したタイミング(タイミングA)でカウントを1にリセットする。カウンタ部904は、count_a及びcount_bを出力決定部903に出力する。
【0081】
出力決定部903は、クロック信号clkの立ち上がり時にcount_aがパルス遅延時間aと一致したタイミング(タイミングA)でパルス信号をハイレベルとする。一方、出力決定部903は、クロック信号clkの立ち上がり時にcount_bがパルス幅bと一致したタイミング(タイミングB)でパルス信号をローベルにする。これにより、出力決定部903はパルス遅延時間aに応じて遅延したパルス信号を生成する。
【0082】
パルス遅延時間aは、レジスタ部802のメモリを書き換えることによりそれぞれクロック信号clkの周期(以下、クロック信号周期という)単位で値を変更することが可能である。実施例2ではリセットによりcount_a及びcount_bの値を1としているが、1でなくともよい。また実施例2ではクロック信号clkのカウント方法をアップカウントとしているが、ダウンカウントとしてもよい。更にカウンタ部904でカウンタを2つ有する場合を示したが、カウンタの数は2つでなくともよく、例えば1つのカウンタでパルス遅延時間カウンタ1201及びパルス幅カウンタ1203の動作を行ってもよい。
【0083】
[発光装置の位置に応じた発光タイミング制御]
実施例2の構成を用いて、プリント基板202上の発光装置401の位置に応じて発光タイミングを制御する方法について説明する。プリント基板202上に発光装置401-1~401-20を千鳥状に配置する際に実装精度の影響により本来の実装位置からずれが生じる場合がある。そのため下部電極410は発光装置401の短手方向にそれぞれ位置が異なっている場合がある。下部電極410の位置がずれている場合、印刷画像上でずれが生じるため、下部電極410の位置に応じて発光タイミングの補正を行う必要がある。以降、下部電極410の位置に応じて発光タイミングの補正を行う方法について説明する。各発光装置401-1~401-20において行う発光タイミングの補正は同じであるため、ここでは発光装置401-1を例に説明する。
【0084】
図13(a)にプリント基板202の下部電極実装面の拡大図の一部を示す。発光装置401-1をプリント基板202上に実装した後に次の値を測定する。すなわち、発光装置401-1の一方の端部の下部電極410-1、他方の端部の下部電極410-748の基準となる位置(以下、基準位置という)に対する第1の距離である位置y1及び第2の距離である位置y748を測定する。測定した位置y1及び位置y748は、ヘッド情報格納部710に位置データとして格納される。位置y1及び位置y748の基準となる位置(以下、基準位置という)は、例えば発光装置401-1~401-20を実装する際に下部電極410が配置される感光ドラム102の回転方向の最も上流側の位置とする。実施例2では、
図13(a)における発光装置401-5の右端の下部電極410-748の位置を破線で示す基準位置とした。
【0085】
CPU703は、ヘッド情報格納部710から発光装置401-1両端の下部電極410-1、410-748の位置y1及び位置y748の情報を読み出し、下部電極410ごとの補正量を計算する。例えば
図13(a)における発光装置401-1の左端からm番目の下部電極410-mの第3の距離である位置ymは以下の式(1)により求めることができる。
ym=y1+(m-1)(y748-y1)/747 式(1)
【0086】
なお、発光装置401-1内の全ての下部電極410の基準位置に対する位置y1~y748を測定し、ヘッド情報格納部710に下部電極410ごとの補正量として格納してもよい。また、発光装置401の両端又は全ての下部電極410の位置の測定は、工場で行ってもよいし、露光ヘッド106を画像形成装置に取り付けた後に行ってもよい。
【0087】
CPU703は、下部電極410ごとの補正量を発光装置401の短手方向の1ライン単位の量と1ライン未満の量とに分割する。ここで、求めた補正量のうち1ライン単位の量を画像コントローラ部700で補正する補正量pとし、1ライン未満の量をパルス信号生成部805で補正を行う補正量qとする。例えば、CPU703が、ある下部電極410の補正量を110.8μmと求めた場合について説明する。ここで、発光装置401の短手方向の解像度が1200dpiの場合、補正量110.8μmのうち5ラインに当たる105.8μmを画像コントローラ部700において補正する補正量pとする(p=105.8μm)。すなわち、補正量pは第1の解像度(例えば1200dpi)に相当する量(例えば21.16μm)の整数(=1、2、・・・)倍(例えば、5倍)の量(例えば105.8μm)である。また、補正量110.8μmのうち1ライン未満の量(第1の解像度に相当する量未満の量)である5μmをパルス信号生成部805において補正する補正量qとする(q=5μm)。
【0088】
画像コントローラ部700は、CPU703において各下部電極410の補正量pに応じた画像データの読み出しタイミング信号を生成し、信号線709を介してチップデータ変換部702に出力する。チップデータ変換部702は、読み出しタイミング信号に応じて画像データを1ライン単位で遅延させて出力する。
【0089】
画像コントローラ部700で行う補正量pに応じた画像データの出力タイミング制御を、
図13(b)を用いて説明する。画像コントローラ部700は、画像データ生成部701によって生成された画像データを記憶部(不図示)に複数ライン分格納している。
図13(b)は記憶部に保持されている画像データを模式的に示した図である。
図13(b)の左右は発光装置401の長手方向を示す。
図13(b)中、長方形の各ブロックは記憶部に格納された画素ごとの画像データを表し、色のついたブロックが出力される画像データを表す。例えば、左から2つめ(下部電極410-2)では、補正量pが1であり、画像コントローラ部700によって1ライン補正され、色がついている1ライン目に画像データが出力される。
【0090】
CPU703は、発光装置401の長手方向のある下部電極410の補正量pがnラインである場合、nラインだけ遅延した
図13(b)中nライン目の画像データを出力するような読み出しタイミング信号を生成する。チップデータ変換部702は、読み出しタイミング信号に応じた画像データ(
図13(b)の色つきのブロック)を読み出して出力する。これにより、
図13(b)のように下部電極410ごとに補正量pに応じたラインの画像データを出力することができる。ただし、
図13(b)では例として記憶部(不図示)に保持する画像データを5ライン(0~4ライン)としているが、5ラインでなくともよい。以上のように、画像コントローラ部700は補正部として機能する。
【0091】
パルス信号生成部805では、各下部電極410の補正量qに応じて発光タイミングを遅延させることにより補正を行う。CPU703は、パルス信号生成部805での補正量qを発光タイミングの遅延時間に変換する際、式(2)を用いて遅延時間を求める。
遅延時間=(補正量q/感光ドラム表面速度)/クロック信号周期 式(2)
CPU703は、遅延時間を下部電極410ごとに求め、レジスタ部802にパルス遅延時間aとして格納する。パルス信号生成部805は、レジスタ部802に格納されたパルス遅延時間aに応じた発光タイミングのパルス信号を生成することで、クロック信号周期×感光ドラム表面速度の精度で下部電極410ごとの基準位置からの差(実装時の位置ずれ)を補正する。
【0092】
例として
図14(a)に示すある発光装置401内の下部電極410-i及び下部電極410-jの位置を補正する方法について説明する。ただし
図14(a)において発光装置401内の下部電極数は省略している。発光装置401の短手方向の解像度を1200dpi(略21.16μm)、感光ドラム102の表面速度を200mm/sとする。また、ライン同期信号周期をc、クロック信号周波数を40MHzとし、いずれの下部電極410に対応するパルス信号のパルス幅もbとする。
【0093】
(下部電極410-i)
下部電極410-iの基準位置に対する位置yiを4μmとする。このときパルス信号生成部805-iでの補正量qは4μmとなり、式(2)よりパルス遅延時間aは800clkと求められる。パルス信号生成部805-iは、
図14(b)のタイミングチャートで表されるパルス信号を生成する。ここで、
図14(b)の(i)~(v)は
図12(b)の(i)~(v)と同様であり、説明を省略する。
【0094】
(下部電極410-j)
同様に下部電極410-jの基準位置に対する位置yjを23.16μmとする。補正量23.16μmは補正量p(1ライン)と補正量q(=2μm=23.16μm-21.16μm)とに分けられる。このとき、パルス信号生成部805が23.16μmに相当する発光タイミング補正を行うとすると、パルス遅延時間aがライン同期信号周期より大きくなり、正しいパルス信号が出力されない。そのため、発光装置401の短手方向の1ライン単位の補正量pである1ライン分の21.16μmは画像コントローラ部700において補正される。これによりパルス信号生成部805での補正量qは2μmとなり、式(2)よりパルス遅延時間aは400clkと求められる。パルス信号生成部805-jは、
図14(c)のタイミングチャートで表されるパルス信号を生成する。ここで、
図14(c)の(i)~(v)は
図12(b)の(i)~(v)と同様であり、説明を省略する。
【0095】
なお、発光装置401-1~401-20の実装位置だけでなく、露光ヘッド106の取り付け位置に関しても同様に測定、計算及び補正を行ってもよい。また測定及び計算はそれぞれ工場で行ってもよいし、画像形成装置本体内で行ってもよい。以上の各下部電極410に応じた補正に関する制御は下部電極410毎に行ってもよいし、いくつかの下部電極410をまとめた単位で行ってもよい。更に、各下部電極410に対応する発光層450の発光量のばらつきをパルス信号生成部805で生成するパルス信号(発光タイミング信号)によって補正してもよい。以上のように、各下部電極410の位置に応じて、画像コントローラ部700で1ライン単位の補正を行い、パルス信号生成部805において1ライン未満の補正を行う。これにより、クロック信号周期×感光ドラム表面速度の精度で、各下部電極410の位置による印刷画像のずれを補正することができる。
【0096】
以上、実施例2によれば、ワイヤボンディングや配線基板の面積にかかるコストを抑制することができる。
【実施例3】
【0097】
実施例3は、露光ヘッド106の構成、シリコン基板1502の構成が実施例1とは異なる。特に、実施例3は、下部電極の配列の点で実施例1と異なり、下部電極のシリコン基板に設けられた駆動回路の構成が実施例1および実施例2と一部異なる。以下、実施例1および実施例2と異なる点について実施例を説明する。
【0098】
[発光装置群の構成]
図15は、長手方向に2列に配置された発光装置1501のチップ間の境界部の様子、および電極の配列を示す図である。本実施例の各発光装置1501は、長手方向に沿って配列された2列の下部電極を備える。隣接する下部電極同士の間隔は実施例1と同様である。
【0099】
[発光領域の構成]
図16を用いて発光装置1501をさらに詳しく説明する。
図16におけるX方向は、露光ヘッド106の長手方向を示している。Z方向は、後述する層構造の各層が重なる方向(積層方向)である。
図16(a)は、
図4中のA-A断面の概略図の要部拡大図である。
図16(a)は、Y方向から見た後述する下部電極410-1~410-748の概略図である。
図16(a)、
図16(c)に示すように、発光装置1501は、シリコン基板1502、下部電極410-1~410-748、下部電極420-1~420-748、発光層450、上部電極460を備える。シリコン基板1502は製造プロセスにおいて後述する下部電極410-1~410-748それぞれに対応する駆動部を含む駆動回路が形成された駆動基板である。
【0100】
図16(a)、
図16(c)に示す下部電極410-1~410-748(陰極)は
図5に記載された下部電極に相当するため説明を省略する。
【0101】
図16に示すように、本実施例の発光装置1501は、下部電極410-1~410-748に加えて、下部電極420-1~420-748を備える。下部電極420-1~420-748は、下部電極410-1~410-748と同様に、シリコン基板1502上に層状(第1の電極層)に形成された複数の電極である。下部電極420-1~420-748を第2の電極列とする。すなわち、発光装置1501は、2次元配列された下部電極を備える。下部電極420-1~420-748のサイズ、形状、X方向における配列は下部電極410-1~410-748と同様であるので説明を省略する。
【0102】
下部電極420-1~420-748(第2の電極列)はY方向において下部電極410-1~410-748(第1の電極列)に対して間隔dを開けて配置されている。Y方向において下部電極420-1は下部電極410-1に隣接して配置され、同様に下部電極420-2~下部電極420-748は、それぞれ下部電極410-2~410-748に隣接して配置される。なお、本実施例のように、必ずしもX方向における下部電極間距離とY方向における下部電極間距離とを等しく設計する必要はないが、所定面積内に効率よく下部電極を配列するために双方向における下部電極間距離を等しく設計することが望ましい。また、本実施例では説明を簡易にするために2列の電極列を備える発光装置を例示するが、
図16(d)に示すように、電極列は3列以上の任意の数の列であっても良い。例えば、上記と同様に、下部電極420-1~420-748それぞれに対して下部電極430-1~430-748を隣接して配置し、さらに、下部電極430-1~430-748に対して下部電極440-1~440-748を隣接して配置しても良い。以下では、説明を簡易にするために、下部電極410-1~410-748、および下部電極420-1~420-748を有する発光装置1501を例に説明を進める。
【0103】
下部電極410-1および下部電極420-1を同時に駆動したときに、感光ドラム102上における両電極の駆動により露光される中心位置間の距離は感光ドラム102の回転方向においてW+dずれる。本実施例の画像形成装置は、感光ドラム102の回転方向において隣接する複数の下部電極(例えば、下部電極410-1と下部電極420-1)を駆動することによって画像形成装置の出力解像度におけるある1画素に相当する領域を露光する。そのため、感光ドラム102の回転速度に応じて下部電極410-1への電圧印加のタイミングと下部電極420-1への電圧印加のタイミングとに時間差を設けることによって1画素に相当する領域を複数回露光することができる(多重露光)。
【0104】
次に、本実施例における発光層450について説明する。発光層450は下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748が形成されたシリコン基板1502に積層されて形成される。すなわち、下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748が形成された部分において発光層450は下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748上に積層される。下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748が形成されていない部分においてシリコン基板1502上に積層される。本実施例では、発光装置1501において発光層450は、下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748すべてに跨るように形成されているが、実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、下部電極410-1~410-748および下部電極420-1~420-748と同様に発光層450を各下部電極上に分離して積層するように形成しても良いし、下部電極410-1~410-748、下部電極420-1~420-748を複数のグループに分割して、分割したグループ毎にそのグループに属する下部電極上に一つの発光層を積層させても良い。
【0105】
[多重露光の露光領域形状]
図17に、多重露光時の露光領域(スポット)の位置関係を示す。
図17において、下部電極410-n(nは1≦n≦748の自然数)およびY方向においてそれに隣接する下部電極420-nを駆動することによって露光される露光ヘッド106上の露光領域を示している。すなわち、
図17は、X方向に配列された748個の下部電極のうちのn番目の下部電極について、Y方向に並ぶ2つの下部電極410-nと下部電極420-nの露光領域を示す。シリコン基板1502のY方向における下部電極410-n、および下部電極420-nに略同時に発光層450を発光させるための電圧を印加した場合、下部電極410-nに対応する露光領域と下部電極420-nに対応する露光領域は
図17(a)のようにY方向の異なる位置となる。各露光領域の位置は、Y方向における下部電極410-nおよび下部電極420-nとの配置関係と同様になる。つまり、Y方向における各露光領域の中心間距離はW(μm)+d(μm)となる。
【0106】
図17(b)は、感光ドラム102の回転方向と回転速度Vdr(mm/s)に応じて、感光ドラム102の回転方向において下部電極410-nよりも下流側を露光するように配置された下部電極420-nに電荷を印加するタイミング(以下、点灯タイミングという)を、式(3)に従い遅延させたときの露光領域の様子を示す。感光ドラム102上に形成される露光領域の位置が一致するタイミングTは、式(3)で求められる遅延時間Tdelayに基づき制御される。
Tdelay=((W+d)÷1000)÷Vdr 式(3)
また本実施例では、各画素に対応する各下部電極の発光時間の最大値Twは、Y方向の1ラインの間隔に相当する時間に等しくなるように発光信号が生成され、解像度(例えば1200dpi)と回転速度Vdrとにより式(4)で表される。
Tw=(25.4÷1200)÷Vdr 式(4)
多重露光により、下部電極410-nおよび下部電極420-nを用いて感光ドラム102上の略同一位置での露光が可能となり、感光ドラム102が受光する光量は、Y方向に配列される下部電極の数に比例して大きくすることが可能となる。なお、このような効果を維持するためには、多重露光する各下部電極の感光ドラム102上での露光領域の位置のずれが小さいことが好ましい。
【0107】
図17(c)に、多重露光において感光ドラム102上の露光領域の位置がずれている例を示す。この例では、多重露光による2つの露光領域は完全には重なっていないが、部分的に重なった状態となっている。理想的には、
図17(b)のように2つの露光領域が略一致している(完全に重なっている)方が、ドットが鮮鋭に形成されるため好ましい。しかし、
図17(c)のように一部でも露光領域が重なっている場合においても、ドットの鮮鋭性は
図17(b)に比べて劣化するものの必要な濃度を得ることができる。
【0108】
このため、時間Tdelayは、制御上のバラツキがあった場合でも、露光領域のサイズWs(μm)に対して式(5)の範囲内に収まるように、発光タイミングの許容誤差量ΔT以内で発光タイミングが制御されるものとする。
ΔT=(Ws÷1000)÷Vdr 式(5)
【0109】
[制御ブロック]
画像コントローラ部700、プリント基板202について説明する。以下、チップセレクト信号をcs_x、ライン同期信号をlsync_x、クロック信号をclk、画像データ信号をdataとする。本実施例では、説明を簡易化するために単色の処理について説明するが、同様の処理を4色について並列に処理するものとする。
【0110】
[発光装置内の回路構成]
発光装置1501内の回路ブロック図は
図7(a)と同様であるため、
図7(a)を援用する。発光装置1501内の回路部602はデジタル部800とアナログ部806とを有する。デジタル部800は、クロック信号clkに同期して、通信信号によって予め設定された設定値や各種信号に基づいて下部電極410-n、420-nを駆動するためのパルス信号を生成し、生成したパルス信号をパルス信号線907を介してアナログ部806へ送信する機能を有する。ここで、各種信号とは、チップセレクト信号cs_x、画像データ信号data、ライン同期信号lsync_xをいう。またデジタル部800は、入力されてきたチップセレクト信号cs_xから次の発光装置1501用のチップセレクト信号を生成する機能を有する。
【0111】
[デジタル部]
通信IF部801は、CPU703からの通信信号に基づいて、レジスタ部802に対する設定値のライト及びリードを制御する。レジスタ部802は、動作に必要な設定値(予め設定された設定値)を格納する。この設定値には、データ格納部804で使用される露光タイミング情報、パルス信号生成部805で生成されるパルス信号の幅及び位相情報、アナログ部806で設定される駆動電圧の設定情報等がある。なお、駆動電圧は下部電極と上部電極間の抵抗値から導出でき、かつこの抵抗値のレンジは予め判っているため、駆動電圧の設定情報に代えて駆動電流に関する情報が格納されていても良い。レジスタ部802はこれらの情報の少なくとも1つを格納する。第2の生成部であるチップセレクト信号生成部803は、入力されてきた第1の信号であるチップセレクト信号cs_xを遅延させ、次の発光装置1501用のチップセレクト信号を生成し、信号線711を介して送信する。データ格納部804は、入力されてきたチップセレクト信号cs_xが有効な期間に画像コントローラ700が出力する画像データをデータ信号線707を介して受け取って保持し、ライン同期信号lsync_xに同期して画像データをパルス信号生成部805に出力する。詳細は後述する。
【0112】
パルス信号生成部805は、データ格納部804から入力された画像データに応じて、レジスタ部802で設定されたパルス信号の幅情報及び位相情報に基づきパルス信号を生成し、アナログ部806に出力する。詳細は後述する。アナログ部806はデジタル部800で生成されたパルス信号に基づいて、下部電極を駆動するために必要な信号を生成する。詳細は後述する。
【0113】
(データ格納部)
次にデータ格納部804の動作について説明する。実施例3のデータ格納部804は、発光装置1501に内蔵されている。チップセレクト信号cs_x及びライン同期信号lsync_xは負論理信号である例を説明するが、正論理であってもよい。
図18はデータ格納部804の回路構成図である。クロックゲート回路810はチップセレクト信号cs_xの反転信号とクロック信号clkとの論理積を出力とする。クロックゲート回路810は、チップセレクト信号cs_xが有効なときのみフリップフロップ回路811にクロック信号s_clkを出力する。
【0114】
フリップフロップ回路811は、データ格納部804へ入力されてきた画像データ信号dataを大元の入力とする。フリップフロップ回路811は発光装置1501の長手方向に設けられた下部電極410、420の数と同じ数(本実施例では748)が直列に接続されている。フリップフロップ回路811は、クロックゲート回路810から送られてきたクロック信号s_clkに応じて動作する。フリップフロップ回路811の出力は、画像データdly_data_000~dly_data_747として、隣接して接続された次のフリップフロップ回路811及びフリップフロップ回路812に出力される。フリップフロップ回路811及びフリップフロップ回路812は下部電極410、420の長手方向において下部電極の数(本実施例では748個)分設けられている。
【0115】
フリップフロップ回路812は、フリップフロップ回路811の出力を入力とし、ライン同期信号lsync_xに応じて動作する。フリップフロップ回路812の出力は、画像データbuf_data_0_000~buf_data_0_747として、パルス信号生成部805(805-1、805-3、805-5・・・)とフリップフロップ回路813に出力される。フリップフロップ回路812は各々がメモリ回路として機能し、1つの下部電極列(下部電極410-1~410-748)に対して設けられたフリップフロップ回路812はメモリ回路群(又は第1のメモリ回路群)として機能する。パルス信号生成部805-1、805-3、805-5・・・は第1のパルス信号を生成する第1のパルス信号生成部群として機能する。なお、パルス信号生成部805-1は下部電極410-1を駆動するためのパルス信号を生成し、パルス信号生成部805-3は下部電極410-2を駆動するためのパルス信号を生成する。また、パルス信号生成部805-5は下部電極410-3を駆動するためのパルス信号を生成する。
【0116】
フリップフロップ回路813は、フリップフロップ回路812の出力を入力とし、多重露光タイミング信号lshift_0に応じて動作する。フリップフロップ回路813の出力は、画像データbuf_data_1_000~buf_data_1_747として、パルス信号生成部805(805-2、805-4、805-6・・・)に出力される。フリップフロップ回路813は各々がメモリ回路として機能し、1つの下部電極列(420-1~420-748)に対して設けられたフリップフロップ回路813はメモリ回路群(又は第2のメモリ回路群)として機能する。パルス信号生成部805-2、805-4、805-6・・・は第2のパルス信号を生成する第2のパルス信号生成部群として機能する。なお、パルス信号生成部805-2は下部電極420-1を駆動するためのパルス信号を生成し、パルス信号生成部805-4は下部電極420-2を駆動するためのパルス信号を生成する。また、パルス信号生成部805-6は下部電極420-3を駆動するためのパルス信号を生成する。
【0117】
すなわち、フリップフロップ回路811、フリップフロップ回路812、およびフリップフロップ回路813は、下部電極に印加する電圧を制御するための駆動データを一時的に記憶するメモリとして機能する。
【0118】
第1の生成部である多重タイミング信号生成部814は、ライン同期信号lsync_x、クロック信号clk、多重タイミング設定信号lshift_startに基づいてタイミング信号である多重露光タイミング信号lshift_0を生成する。すなわち、多重タイミング信号生成部814は、パルス信号生成部805-2、805-4、…にパルス信号生成部805-1、805-3、…とは異なるタイミングでパルス信号を生成するための多重露光タイミング信号lshif_0を生成する。本実施例では、多重タイミング信号生成部814は、ライン同期信号lsync_xを多重タイミング設定信号lshift_startに設定された設定値分遅延させて、多重露光タイミング信号lshift_0を生成する。例えば、多重タイミング設定信号lshift_startが1(lshift_start=1)と設定されたとき、多重露光タイミング信号lshift_0は、ライン同期信号lsync_xがクロック信号clkで1サイクル分遅延した信号となる。多重タイミング信号生成部814は、感光ドラム102の回転速度に基づいて多重露光タイミング信号lshift_0を生成する。すなわち、多重タイミング設定信号lshift_startは、上述した式(3)で求められる遅延時間Tdelayに基づいて設定されている。
【0119】
図19はデータ格納部804のY方向の動作を示すタイミングチャートである。
図19は、(i)にライン同期信号lsync_xの波形を示し、(ii)にフリップフロップ回路812の出力である画像データbuf_data_0_000等を示す。(iii)に多重露光タイミング信号lshift_0の波形を示し、(iv)にフリップフロップ回路813の出力である画像データbuf_data_1_000等を示す。
図19では代表して
図18の最左端にあるフリップフロップ回路812の出力である画像データbuf_data_0_000及びフリップフロップ回路813の出力である画像データbuf_data_1_000について説明する。なお、画像データbuf_data_0_001~buf_data_0_747、buf_data_1_001~buf_data_1_747の全てにおいて同様である。
【0120】
図8で述べたとおり、
図8の時刻T0でライン同期信号lsync_x=0となったタイミングである
図19の時刻T10でフリップフロップ回路812に画像データdly_data_000が入力される。そうすると、画像データdly_data_000の値がフリップフロップ回路812から画像データbuf_data_0_000として出力される。時刻T11において、多重露光タイミング信号lshift_0がローレベル(lshift_0=0)としてフリップフロップ回路813に入力される。そうすると、フリップフロップ回路812から出力された画像データbuf_data_0_000の値がフリップフロップ回路813から画像データbuf_data_1_000として、パルス信号生成部805に出力される。このように、lsync_x=0でbuf_data_0_000としてパルス信号生成部805に出力されたデータが、次のlshift_0=0のタイミングでbuf_data_1_000として再びパルス信号生成部805に出力される。ここで、多重露光タイミング信号lshift_0がローレベルとなる時刻T11は、ライン同期信号lsync_xがローレベルとなった時刻T10から多重タイミング設定信号lshift_start分遅延したタイミングである。画像データbuf_data_0_000を感光ドラム102上でY方向において先の露光に用いられる方の下部電極に対応するパルス信号生成部805に出力する。また、画像データbuf_data_1_000を感光ドラム102上でY方向において後の露光に用いられる方の下部電極に対応するパルス信号生成部805に出力する。これにより、多重露光が実現される。
【0121】
本実施例では、Y方向に並ぶ2つの下部電極410-n及び下部電極420-nを用いて多重露光する構成を例にして説明したが、多重露光に用いる下部電極は2つに限定するものではない。多重露光に用いる下部電極を増やす場合(m=3列以上の多重露光用とする場合)は、
図18に示したフリップフロップ回路812(748個)、813(748)をm列分(m×748個)に増やせばよい。これにより、m列分(m×748個)の下部電極に対応する画像データを保持可能となる。また、m列分のフリップフロップ回路に接続されるパルス信号生成部805もm列分(m×748個)に増やすことで、m列分(m×748個)の各下部電極は発光タイミングが制御可能となり、m列分の多重露光が可能になる。
【0122】
本実施例では、各下部電極の画像データを保持する手段としてフリップフロップ回路を例にして説明した。この構成ではフリップフロップ回路を下部電極410-1~410-748に併走して配置することで、より簡易で配線面積の少ない回路が構成される。一方、フリップフロップ回路を用いないとしても、次のような構成とすることができる。すなわち、下部電極に対応するメモリ回路(例えばRAM等)と、メモリ回路への読み出しタイミングと書き込みタイミングとを制御する制御部とを有していれば、フリップフロップ回路を必ずしも用いる必要はない。
【0123】
多重露光に用いられる下部電極を増やし、かつ、多重露光に用いる下部電極列の数を選択可能にすることで、よりダイナミックな光量の制御が可能となる。例えば、下部電極列の数mをm=10とし、下部電極をY方向に配列した構成の場合、画像形成装置の画像形成速度に応じて、多重露光に用いる下部電極列を2列~10列まで選択することが可能となる。これにより、9段階の光出力の変更が可能となる。したがって、下部電極の1つ1つの駆動電流の制御範囲を小さくすることができ、常に略等しい駆動電流条件で下部電極を駆動することが可能となる。例えば、低い電流(すなわち低い光量)で下部電極を駆動した際に、下部電極の応答が遅くなり所定の光量が得られないようなケースがある。このようなケースに対して、本実施例の多重露光を用いることで下部電極の安定的な駆動が可能となる。このように、複数列のどの列の下部電極を用いるかの選択を行う場合は、フリップフロップ回路812、813等に、リセット端子を付加し、画像データの出力を選択的に停止する構成をとればよい。このような方法以外にも、パルス信号生成部805にパルス信号の出力を停止する手段を付加してもよい。
【0124】
図7(a)に示したアナログ部806に関して、各下部電極それぞれに対するアナログ部の構成は実施例1の
図11(b)と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0125】
[下部電極の駆動方向の切り替え(千鳥配置への対応)]
前述したように、本実施例では発光装置1501をプリント基板202上に千鳥状に配置(以下、千鳥配置という)する構成を例としている。発光装置1501を千鳥配置にする場合、ロッドレンズアレイ203の短手方向のレンズ中心に対して、下部電極を中心に近く配置することで良好な結像特性が得られる。安価なロッドレンズアレイを使用する場合、ロッドレンズの開口部に制限があるため、下部電極の配置がロッドレンズ中心より離れすぎるとロッドレンズの開口部に光が届かなくなり、感光ドラム102上に光が出射できなくなる場合がある。そのため、下部電極列は発光装置1501の中心より短手方向における片側に寄せて配置し、各下部電極列がロッドレンズ中心になるべく近く配置される構成が有効である。
【0126】
図15では、ロッドレンズアレイ203の短手方向の中心を破線でL_centerとして示している。ロッドレンズアレイ203の短手方向の中心線(以下、中心線という)L_centerと、千鳥配置された2つの発光装置1501の中心とが一致するようにロッドレンズアレイ203と発光装置1501とが実装されている。各発光装置1501の下部電極は、発光装置1501の中心より中心線L_centerに近い位置に寄せて配列されている。ここで、発光装置1501A(一方の第1の基板)において、発光装置1501Bから遠い側の面を端面311とし、発光装置1501Bに近い側の面を端面310とする。また、発光装置1501B(他方の第1の基板)において、発光装置1501Aから遠い側の面を端面311とし、発光装置1501Bに近い側の面を端面310とする。いずれの発光装置1501においても、下部電極410、420は端面310側に寄せて配置されている。
【0127】
下部電極410、420をこのように配置することで、いずれの下部電極もロッドレンズアレイ203の開口部に光が入射する配置となっている。また、本実施例では、発光装置1501内の下部電極が、発光装置1501の短手方向における中心より片側に寄った位置に配列されている。いずれの発光装置1501も端面310が、中心線L_center側になるように発光装置1501の実装方向が決定されている。すなわち、シリコン基板1502において、ロッドレンズアレイ203の短手方向における中央(中央線L_center)に近い側に複数の下部電極410、420が配置される。2列の千鳥配置で発光装置1501を配列する場合、発光装置1501Aと発光装置1501Bとの間で、互いに180°反転した状態で、中心線L_centerに発光点が近づくように配置される。
【0128】
このように、発光装置1501内で下部電極の位置を片側に寄せて、かつ、下部電極が中心線L_centerに近づくように発光装置1501の実装方向が決定される。これにより、良好な結像特性を得ることが可能となる。一方、前述したように発光装置1501毎に異なる実装方向で配置することで、下部電極のY方向の駆動の順番を、発光装置1501の方向に合わせて制御する必要がある。例えば、発光装置1501Aは端面311に近い側(図中上側)の下部電極が先に駆動され、発光装置1501Bは端面310に近い側(図中上側)の下部電極が先に駆動される。このような場合の制御方法を以下に説明する。
【0129】
(セレクタを有する回路)
図20は、プリント基板202の短手方向において下部電極410-1~410-748の発光順番を切り替える発光装置1501内部の回路ブロック図である。
図18と同様、Y方向に2列の下部電極410-1~410-748及び下部電極420-1~420-748を有する場合について説明する。
図18で説明した回路構成に加えて、データ格納部804はセレクタ2200-12、2200-34、2200-56、…を有している。セレクタ2200-12は、フリップフロップ回路812及びフリップフロップ回路813とパルス信号生成部805-1及びパルス信号生成部805-2との接続の組み合わせを切り替える。セレクタ2200-34は、フリップフロップ回路812及びフリップフロップ回路813とパルス信号生成部805-3及びパルス信号生成部805-4との接続の組み合わせを切り替える。セレクタ2200-56は、フリップフロップ回路812及びフリップフロップ回路813とパルス信号生成部805-5及びパルス信号生成部805-6との接続の組み合わせを切り替える。
【0130】
セレクタ2200-12、2200-34、2200-56、…を総称してセレクタ2200とする。セレクタ2200は、フリップフロップ回路812、813の画像データの送信先であるパルス信号生成部805との接続関係を切り替え可能としている。すなわち、セレクタ2200は、第1のメモリ回路群及び第2のメモリ回路群と第1のパルス信号生成部群及び第2のパルス信号生成部群との接続の組み合わせを選択する選択部として機能する。
【0131】
例えば、千鳥配置の長手方向における一方の発光装置1501では、フリップフロップ回路812はパルス信号生成部805-1と接続し、フリップフロップ回路813はパルス信号生成部805-2と接続する。千鳥配列の長手方向における他方の発光装置1501では、フリップフロップ回路812はパルス信号生成部805-2と接続し、フリップフロップ回路813はパルス信号生成部805-1と接続する。セレクタ2200の接続情報は、CPU703からの通信信号に基づいて、レジスタ部802の所定のレジスタに設定される。セレクタ2200はレジスタ部802に設定された接続情報(レジスタ値)に基づいて接続を制御されるものとする。
【0132】
前述したように、下部電極の駆動の順番を切り替える手段を有することで、プリント基板202上への発光装置1501の配置方向によらず、多重露光を行うことが可能となる。本実施例では、千鳥配置についての有用性を説明したが、同じ露光ヘッドを複数の異なる画像形成装置に用いる際も有用である。感光ドラム102の回転方向と露光ヘッドの取り付け方向とに応じて、駆動の順番を選択する。これにより、感光ドラム102の回転方向が異なる画像形成装置においても、同一の露光ヘッドを使用することが可能となる。
【0133】
以上説明したように、本実施例では、Y方向に下部電極を配列し多重露光することで、露光ヘッドの光出力の高出力化が可能であり、画像形成装置の高速化や、より光量を必要とする感光体材料に対しても対応が可能となる。また、シリコン基板上に下部電極列や回路部602を構成することで、出力解像度の高精細化、発光装置の大規模なロジック回路を内蔵可能とすることによる制御の高性能化が可能となる。
【0134】
また、シリコン基板1502内に多重露光するための画像データを生成する手段を有する。これにより、発光装置1501のインターフェイスの配線(ワイヤボンディング)を増やすことなく、必要な画像データの生成が可能である。メモリ回路(フリップフロップ回路)を最適に配置することで、配線の面積を最適化することが可能となる。更に、画像形成装置の印字速度、解像度、発光装置1501の下部電極の間隔に応じて発光タイミングを制御することができる。これにより、感光ドラム102上での多重露光による露光領域を鮮鋭化できる。
【0135】
以上、本実施例によれば、より高い光出力で、高速に駆動することが可能な露光ヘッドを提案することができる。
【実施例4】
【0136】
実施例4では、上述のチップセレクト信号を用いた画像コントローラ部700から各発光装置401への画像データの転送方法について実施例1の構成を例に説明する。なお、本実施例の画像データ転送方法は実施例2および実施例3にも適用可能である。
【0137】
図21は、(i)クロック信号clk、(ii)ライン同期信号lsync_x、(iii)チップセレクト信号cs_x、cs_x_1~cs_x_19、(iv)画像データ信号dataの関係を表すタイミングチャートである。
【0138】
図21中cs_xは
図6のチップセレクト信号線705、cs_x_1は
図6の信号線711-1を介して発光装置401-2に入力されるチップセレクト信号、cs_x_2は
図6の信号線711-2を介して発光装置401-3に入力されるチップセレクト信号、cs_x_19は発光装置401-20に入力されるチップセレクト信号をそれぞれ表すものとする。また、n番目の発光装置401-n内の下部電極を1ライン分駆動するための画像データをdata(n-1)と表す。例えば、1番目の発光装置401-1内の下部電極を1ライン分駆動するための画像データはdata0である。画像コントローラ700は、発光装置401-1内の下部電極を1ライン分を駆動するための画像データを転送するのに必要なクロックサイクル数ΔT0サイクルだけチップセレクト信号cs_xをLowとする。本実施例ではクロック1サイクルあたり下部電極1個分の画像データを転送するものとし、ΔT0は748サイクルとする。なお、1サイクルで複数の下部電極の画像データを転送する構成や複数サイクルで1個分の画像データを転送する構成であっても良い。
【0139】
発光装置401-1に内蔵されたチップセレクト信号生成部803は、発光装置401-1に入力されたチップセレクト信号cs_xをΔT1サイクルだけ遅延したチップセレクト信号cs_x_1を出力する。ここで、ΔT1はΔT0にチップセレクト信号の生成に必要な分の遅延を加えた値とする。本実施例では信号生成に2サイクルかかるものとし、ΔT1=750サイクルとしている。こうすることで、チップセレクト信号生成部803はチップセレクト信号cs_x_1をcs_xと同時にLowとなることが無いように生成することができる。他の発光装置401-2以降に内蔵されたチップセレクト信号生成部803も同様に、前段の発光装置から入力されたチップセレクト信号を入力チップセレクト信号と同時にLowとなることが無いように新たなチップセレクト信号を生成し、後段の発光装置に順に転送する。すなわち、各発光装置は入力されたチップセレクト信号によって画像データをサンプリングし、かつ入力したチップセレクト信号を所定量遅延させて、後段の発光装置に受け渡す。この結果、各チップセレクト信号はcs_x→cs_x_1→cs_x_2→…→cs_x_19と順次Lowとなる。また、ライン同期信号lsync_xの周期ΔT2は、全ての発光装置401に画像データを送るため、発光装置401-20にcs_x_19が入力されるまでの時間よりも大きな値とする。式に表わすと以下のようになる。
ΔT2≧ΔT1×20
【0140】
画像コントローラ部700はcs_x_19がLowとなる区間と次にcs_xがLowとなる区間が重ならないように制御し、各チップセレクト信号に合わせて画像データdata0~data19を(ΔT1-ΔT0)サイクルずつ間を空けて画像データ信号線707に送る。各発光装置401に内蔵されたデータ格納部804にもチップセレクト信号が入力されている。データ格納部804はLowレベルのチップセレクト信号が入力されることによって画像データ信号707からの画像データを受け取ることができる。すなわち、Lsync_xの1周期中において発光装置401-1から発光装置401-20のうち一つの発光装置だけが画像データ信号線707を介して画像データを画像コントローラ700から受信することができる。チップセレクト信号を発光装置401-1から発光装置401-20まで順に受け渡すことによって、画像コントローラ部700は共通の画像データ信号線707と1本のチップセレクト信号線によって、各発光装置401向けにそれぞれの画像データを振り分けて送ることができる。
【0141】
以上のように、発光装置をチップセレクト信号でカスケード接続することで、画像データ信号線のビット幅を大きくしても、信号線数の増大を抑制することが出来る。
【0142】
(変形例)
図22、
図23を用いて実施例4の変形例を示す。
図22に変形例における、画像コントローラ部700、プリント基板202のブロック図を示す。実施例1の
図6と異なるのはチップデータ変換部702から画像データ信号線707(以降、区別のため第1画像データ信号線あるいは第1の信号線と呼称)に加えて、第2画像データ信号線1307(第2の信号線)が追加で出力されている点と、プリント基板202内での発光装置401への信号線接続である。
【0143】
本実施例のチップデータ変換部702では、同期信号生成部704で生成したライン同期信号に同期して1ライン分の画像データを
図22中のプリント基板202の下側に配置された発光装置401-2、401-4、…向けの第1画像データと、
図22中のプリント基板202の上側に配置された発光装置401-1、401-3、…向けの第2画像データに分割し、クロック信号とチップセレクト信号とともにプリント基板202へ送る。なお、第1画像データと第2画像データは個別にして送られる。画像コントローラ部700のその他の構成は実施例1と同様である。
【0144】
次にプリント基板202の構成について説明する。ヘッド情報格納部710は実施例1と同様である。クロック信号線706、ライン同期信号線708、通信信号線709は発光装置401の全てに接続されている。第1画像データ信号線707は図中のプリント基板202で下側に配置された発光装置401-2、401-4、…に接続さている。すなわち、第1画像データ信号線707は、画像データの送信のために発光装置401-2、401-4、…に対して共通に用いられる。第2画像データ信号線1307は図中のプリント基板202で上側に配置された発光装置401-1、401-3、…に接続されている。すなわち、第2画像データ信号線1307は、画像データの送信のために発光装置401-1、401-3、…に対して共通に用いられる。なお、発光装置401-2、401-4、…を第1の発光素子の群とし、発光装置401-1、401-3、…を第2の発光素子の群とする。
【0145】
チップセレクト信号線705は発光装置401-1の入力に接続され、発光装置401-1の出力が信号線711-1を介して発光装置401-3の入力に接続され、…といった具合に上側の発光装置がカスケード接続されている。また、チップセレクト信号線705は発光装置401-2の入力にも接続され、発光装置401-2の出力が信号線711-2を介して発光装置401-4の入力に接続され、…といった具合に下側の発光装置がカスケード接続されている。各発光装置401の動作は実施例1と同様である。
【0146】
次に、本実施例における画像コントローラ部700から発光装置401への画像データ転送について説明する。
図23は、(i)クロック信号clk、(ii)ライン同期信号lsync_x、(iii)チップセレクト信号cs_x、cs_x_1~cs_x_19と、(iv)第1画像データ信号data_1、第2画像データ信号data_2の関係を表すタイミングチャートである。
図23中cs_xは
図22のチップセレクト信号線705を介して発光装置401-1と発光装置401-2に入力されるチップセレクト信号、cs_x_1は
図22の信号線711-1を介して発光装置401-3に入力されるチップセレクト信号、cs_x_2は
図22の信号線711-2を介して発光装置401-4に入力されるチップセレクト信号、cs_x_3は
図23の信号線711-3を介して発光装置401-5に入力されるチップセレクト信号、cs_x_4は
図23の信号線711-4を介して発光装置401-6に入力されるチップセレクト信号、cs_x_18は発光装置401-19に入力されるチップセレクト信号、cs_x_19は発光装置401-20に入力されるチップセレクト信号をそれぞれ表すものとする。画像データの表記は
図21と同様である。
【0147】
チップセレクト信号cs_xのLow幅ΔT0、発光装置401内のチップセレクト信号の生成は実施例1と同様である。本実施例ではチップセレクト信号cs_xは発光装置401-1と401-2に入力され、それぞれ上側と下側でカスケード接続されている。この結果、各チップセレクト信号はcs_x→cs_x_1→cs_x_3→…→cs_x_19と順次Lowになる系と、cs_x→cs_x_2→cs_x_4→…→cs_x_18と順次Lowになる系が並行し、2つずつ同じチップセレクト信号が生成される。
【0148】
ライン同期信号lsync_xの周期ΔT2は、実施例1に比べてカスケード接続の段数が半分となるため、制約は下式の通りになる。
ΔT2≧ΔT1×10
【0149】
画像コントローラ部700はチップセレクト信号cs_x_18及びcs_x_19がLowとなる区間と次にチップセレクト信号cs_xがLowとなる区間が重ならないように制御し、各チップセレクト信号に合わせて画像データdata1、data3…、data19を第1画像データ信号線707に、data0、data2…、data18を第2画像データ信号線1307に、(ΔT1-ΔT0)サイクルずつ間を空けて送る。
【0150】
以上のように、チップセレクト信号による発光装置401のカスケード接続の系統を複数設け、画像データ信号線を並行させることにより、ライン同期信号lsync_xの周期の下限制約を緩和し、生産性を高めることが出来る。なお、本実施例では2系統に分割したが、3系統や4系統にしてもよい。
【0151】
以上、本実施例によれば、より高い光出力で、高速に駆動することが可能な露光ヘッドを提案することができる。
【符号の説明】
【0152】
202 プリント基板
401 発光装置
402 シリコン基板
410 下部電極
602 回路部
604 発光領域