(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20241111BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241111BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20241111BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20241111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K31/455
A61K8/49
A61K8/9789
A61K36/28
A61K36/53
A61P17/00
A61P43/00 105
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020141481
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】高原 佑輔
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269712(JP,A)
【文献】特開2002-138027(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158908(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/066623(WO,A1)
【文献】特開2008-024622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A61K 36/00-36/9068
A61P 1/00-43/00
A61Q 1/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含有する
FLG遺伝子
、SMPD1遺伝子、SGMS1遺伝子、GBA遺伝子
、COL7A1遺伝子及びCOL17A1遺伝子発現促進剤
並びにMME遺伝子発現抑制剤から選択される1種又は2種以上の剤。
(A)ナイアシンアミド
(B)エーデルワイス抽出物
(C)オドリコソウ抽出物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは加齢に伴い、シミ、しわ、たるみといった様々な老化現象があらわれる。これらの原因として、皮膚のバリア機能の低下、水分量の低下、ターンオーバーの乱れ、コラーゲンおよびエラスチン等の産生量の減少または分解や変質が知られている。これらを予防、改善するために、多種多様な提案がされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
ナイアシンアミドは水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つであり、ニコチン酸アミドとも呼ばれる。肌荒れ改善効果、美白効果、抗老化効果等が知られており、ナイアシンアミドを配合した化粧料等は多く上市されている。
【0004】
エーデルワイス(Leontopodium alpinum)は、キク科ウスユキソウ属に分類される高山植物であり、その抽出物を皮膚外用剤に配合すること(特許文献4)は既に開示されている。オドリコソウ(Lamium album)は、シソ科オドリコソウ属に分類される多年草の植物であり、その抽出物を皮膚外用剤に配合すること(特許文献5)は既に開示されている。
【0005】
また、植物抽出物を併用して化粧料に配合することも数多く検討されている。しかしながら、植物抽出物は単に併用すれば効果が相乗的に向上するものではなく、相加的に効果が向上するもの、効果を相殺するものなど、その併用による効果は、予測不可能な効果であり、より少量で、より高い効果の得られる植物抽出物の併用に関するニーズは非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4780817号公報
【文献】特開2001-261568号公報
【文献】特開2005-8571号公報
【文献】特開2001-288032号公報
【文献】特開平10-330221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ナイアシンアミドと、特定の植物抽出物を含有する高い老化防止効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(A)~(C)を含有する皮膚外用剤を提供する。
(A)ナイアシンアミド
(B)エーデルワイス抽出物
(C)オドリコソウ抽出物
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミドと、特定の植物抽出物を併用することにより高い老化防止効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
[ナイアシンアミド]
ナイアシンアミドは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つであり、ニコチン酸アミドとも呼ばれる。
【0012】
本発明で使用するナイアシンアミドは通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。
【0013】
本発明で使用する皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、さらに好ましくは0.1質量%~10質量%である。
【0014】
[エーデルワイス]
エーデルワイス(学名:Leontopodium alpinum)は、キク科ウスユキソウ属に属する高山植物である。
【0015】
本発明で使用するエーデルワイス抽出物は、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。植物から直接抽出したものを用いても、市販のエーデルワイス抽出物を用いてもよい。市販のエーデルワイス抽出物としては、EDELWEISS GC(アルバフロール社)、EDELWEISS EP、EDELWEISS B(以上、DSMニュートリションジャパン社)等が挙げられる。
【0016】
本発明で使用する皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%~5質量%が好ましく、0.00001質量%~1質量%がさらに好ましい。
【0017】
使用し得るエーデルワイスの構成部位としては、例えば、葉、茎、花、蕾、地上全草等が挙げられるが、好ましくは地上全草である。
【0018】
[オドリコソウ]
オドリコソウ(学名:Lamium album)は、シソ科オドリコソウ属に分類される多年草の植物である。
【0019】
本発明で使用するオドリコソウ抽出物は、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。植物から直接抽出したものを用いても、市販のオドリコソウ抽出物を用いてもよい。市販のオドリコソウ抽出物としては、ファルコレックス オドリコソウB(一丸ファルコス社)等が挙げられる。
【0020】
本発明で使用する皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%~5質量%が好ましく、0.00001質量%~1質量%がさらに好ましい。
【0021】
使用し得るオドリコソウの構成部位としては、例えば、葉、茎、花、蕾、地上全草等が挙げられるが、好ましくは地上全草である。
【0022】
上記抽出物を調製する際には、生の植物をそのまま、若しくは乾燥させて用いる。抽出溶媒としては、水、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。上記溶媒による抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、抽出物を酸、アルカリ、酵素などを用いて加水分解したものを用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~30倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0023】
本発明に使用する皮膚外用剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0024】
本発明に使用する皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0025】
本発明に使用する皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0026】
本発明に使用する皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0028】
まず、実施例等に用いる植物抽出物の調製方法を示す。
【0029】
[エーデルワイス抽出物]
乾燥させたエーデルワイスの地上部を70容量%のエタノール水溶液に浸漬後、ろ過し、溶媒を留去した。凍結乾燥させたものをエーデルワイス抽出物とした。
【0030】
[オドリコソウ抽出物]
乾燥させたオドリコソウの地上部を水に浸漬後、ろ過し、溶媒を留去した。凍結乾燥させたものをオドリコソウ抽出物とした。
【0031】
[ヒト表皮角化細胞を用いた試験]
ヒト表皮角化細胞を3×105細胞/ウェルの細胞密度にて6ウェルプレートに播種し、Humedia-KG2培地中で一晩培養した。植物抽出物乾燥粉末を任意の濃度で溶解した新鮮培地に交換し、37°C、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。内部標準としてGAPDHを使用した。mRNA発現量は、各植物抽出物無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。各作用は表3~表5に示した。
【0032】
[ヒト皮膚線維芽細胞を用いた試験]
ヒト皮膚線維芽細胞を5×105細胞/ウェルの細胞密度にて6ウェルプレートに播種し、5%のFBSを含有するDMEM培地にて一晩培養した。植物抽出物乾燥粉末を任意の濃度で溶解した0.5%のFBSを含有するDMEM培地に交換し、37°C、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。内部標準としてGAPDHを使用した。mRNA発現量は、各植物抽出物無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。各作用は表6に示した。
【0033】
使用したプライマー配列を表1に示す。
【0034】
【0035】
実施例は各抽出物の濃度(w/v%)が表2に示す量になるように培地に溶解した。
【0036】
【0037】
【0038】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、エーデルワイス抽出物、オドリコソウ抽出物を併用した実施例1ではそれぞれ単独で用いた比較例1~3よりも、フィラグリン産生関連遺伝子FLGの発現が相乗的に増加した。
【0039】
【0040】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、エーデルワイス抽出物、オドリコソウ抽出物を併用した実施例1ではそれぞれ単独で用いた比較例1~3よりも、セラミド産生関連遺伝子SMPD1、SGMS1、GBAの発現が相乗的に増加した。
【0041】
【0042】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、エーデルワイス抽出物、オドリコソウ抽出物を併用した実施例1ではそれぞれ単独で用いた比較例1~3よりも、コラーゲン産生関連遺伝子COL7A1、COL17A1の発現が相乗的に増加した。
【0043】
【0044】
上記に示したように、ナイアシンアミドと、エーデルワイス抽出物、オドリコソウ抽出物を併用した実施例1ではそれぞれ単独で用いた比較例1~3よりも、エラスチン分解関連遺伝子MMEの発現が相乗的に減少した。
【0045】
以上の結果より、フィラグリン産生関連遺伝子、セラミド産生関連遺伝子、コラーゲン産生関連遺伝子の発現を相乗的に増加、およびエラスチン分解関連遺伝子の発現を相乗的に減少させる本発明の皮膚外用剤は高い老化防止効果を発揮する。
【0046】
[実施例2]乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)ナイアシンアミド 4.0
(13)エーデルワイス抽出物 0.01
(14)オドリコソウ抽出物 0.01
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)~(14)を順次加え、均一に混合する。
【0047】
[実施例3]化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残部
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)ナイアシンアミド 6.0
(10)エーデルワイス抽出物 0.005
(11)オドリコソウ抽出物 0.005
製法:(1)に(2)および(3)を溶解する。さらに(4)~(11)を順次添加した後、十分に攪拌し、均一に混合する。
【0048】
[実施例4]クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)ナイアシンアミド 0.4
(13)エーデルワイス抽出物 0.05
(14)オドリコソウ抽出物 0.05
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(11)を添加して攪拌後、冷却し40℃にて(12)~(14)を加え、均一に混合する。
【0049】
[実施例5]美容液
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル-2-オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3-ブチレングリコール 10.0
(15)L-アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)ナイアシンアミド 2.0
(17)エーデルワイス抽出物 0.1
(18)オドリコソウ抽出物 0.1
製法:(1)~(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)~(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後50℃にて(15)を、40℃にて(16)~(18)を加え、均一に混合する。
【0050】
[実施例6]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)グリセリン 10.0
(5)1,3-ブチレングリコール 10.0
(6)エタノール 10.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)香料 0.1
(9)ナイアシンアミド 4.0
(10)エーデルワイス抽出物 0.01
(11)オドリコソウ抽出物 0.01
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)~(11)を加え、均一に攪拌混合する。
【配列表】