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  • -ゴム発泡体、及び積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ゴム発泡体、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241111BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241111BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20241111BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20241111BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08L23/16
C08L23/08
C08K3/20
C08K5/10
C08K3/011
C08K5/14
C08K5/16
C08K5/49
C08K5/23
B32B25/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020143674
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038938
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】眞中 将一
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172907(JP,A)
【文献】特開2014-180818(JP,A)
【文献】特開2003-041038(JP,A)
【文献】特開2012-017452(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
C08L 23/16
C08L 23/08
C08K 3/20
C08K 5/10
C08K 3/011
C08K 5/14
C08K 5/16
C08K 5/49
C08K 5/23
B32B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EPDMと、EVAと、発泡剤と、架橋剤と、金属水酸化物と、脂肪酸エステルと、窒素系難燃剤と、を含有する組成物の発泡体であり、
前記組成物には、プロセスオイルが含まれ
前記プロセスオイルの量は、前記EPDMと前記EVAとの合計を100質量部とした場合に、3質量部以上30質量部以下である、ゴム発泡体。
【請求項2】
前記組成物は、更に、リン系難燃剤を含有する、請求項1に記載のゴム発泡体。
【請求項3】
ASTM D 1056に準じて測定した吸水率が0%以上30%以下であり、
独立気泡構造を有する、請求項1又は請求項2に記載のゴム発泡体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のゴム発泡体に、粘着剤層が積層された積層体。
【請求項5】
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有している、請求項4に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム発泡体、積層体、及びゴム発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃性を有するゴム発泡体には、クロロプレンゴム(CR)等のハロゲン系のポリマーや、臭素系ハロゲンを分子内に有するハロゲン系難燃剤が用いられてきた。ハロゲン系難燃剤は、その配合量が少なくても、高い難燃性が得られる。このため、ハロゲン系難燃剤を用いれば、低密度で、高い難燃性を備えたゴム発泡体を得ることは、比較的容易であった。
例えば、特許文献1では、ハロゲン系難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテルと、三酸化アンチモンと、を併用したゴム発泡体が知られている。
ところが、このようなハロゲン系難燃剤を用いたゴム発泡体は、火災の際、有毒ガスを発生するおそれがある。
そこで、近年は、ハロゲン系難燃剤を含まないノンハロゲン系難燃剤のゴム発泡体が望まれている。
ノンハロゲン系難燃剤のゴム発泡体においては、低密度にすることと、難燃性を高めることは、以下の理由から相反することが知られている。すなわち、ノンハロゲン系難燃剤の配合量を少なくすれば、高密度のノンハロゲン系難燃剤の少量配合によってゴム発泡体を低密度にできるが、難燃剤が少なく難燃性は低くなる。他方、ノンハロゲン系難燃剤の配合量を多くすれば、難燃剤が多く配合されるので難燃性は高くなるが、高密度のノンハロゲン系難燃剤の多量配合によってゴム発泡体は高密度となってしまう。
従って、ノンハロゲン系充填剤を用いて、低密度で、かつ高い難燃性を備えたゴム発泡体を得ることは困難とされていた。
ところで、ゴム発泡体をシール材として用いる場合には、車両又はパネル等へ貼りつけて固定するために、ゴム発泡体にアクリル系樹脂を含有する粘着剤層を形成する接着加工を施している。
従来、シール材に用いるゴム発泡体には、ゴム成分としてクロロプレンゴムが一般的に用いられてきた。ところが、昨今の環境問題への配慮のため、クロロプレンゴムに代わるハロゲンフリーのゴム発泡体を用いることが検討されている。このようなゴム発泡体のゴム成分としては、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)が検討されている。
しかし、EPDMを用いたゴム発泡体は、アクリル系樹脂(アクリル系ポリマー)を含有する粘着剤層に対して密着性(接着性)が良くなく、剥離するおそれがあった。
そこで、EPDMを用いたゴム発泡体において、アクリル系樹脂を含有する粘着剤層に対する密着性を改良する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-211119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、高い難燃性を有し、低密度であり、アクリル系樹脂を含有する粘着剤層に対する高い密着性を有するゴム発泡体を提供することを目的とする。また、本開示は、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、高い難燃性を有し、低密度であり、ゴム発泡体と粘着剤層との密着性が高い積層体を提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕EPDMと、EVAと、発泡剤と、架橋剤と、金属水酸化物と、脂肪酸エステルと、窒素系難燃剤と、を含有する組成物の発泡体である、ゴム発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本開示のゴム発泡体は、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、高い難燃性を有し、低密度であり、アクリル系樹脂を含有する粘着剤層に対する高い密着性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ゴム発泡体及び積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記組成物は、更に、リン系難燃剤を含有する、〔1〕に記載のゴム発泡体。
【0009】
〔3〕前記窒素系難燃剤は、メラミン系難燃剤であり、
前記EPDMと前記EVAとの合計を100質量部とした場合に、前記窒素系難燃剤は、50質量部以上150質量部以下である、〔1〕又は〔2〕に記載のゴム発泡体。
【0010】
〔4〕ASTM D 1056に準じて測定した吸水率が0%以上30%以下であり、
独立気泡構造を有する、〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のゴム発泡体。
【0011】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のゴム発泡体に、粘着剤層が積層された積層体。
【0012】
〔6〕前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有している、〔5〕に記載の積層体。
【0013】
〔7〕前記粘着剤層と前記ゴム発泡体との剥離強度は、5N/25mm以上である、〔5〕又は〔6〕に記載の積層体。
【0014】
〔8〕EPDMと、EVAと、発泡剤と、架橋剤と、金属水酸化物と、脂肪酸エステルと、窒素系難燃剤と、を含有する組成物を発泡及び架橋する、ゴム発泡体の製造方法。
【0015】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0016】
1.ゴム発泡体1
ゴム発泡体1は、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)と、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)と、発泡剤と、架橋剤と、金属水酸化物と、脂肪酸エステルと、窒素系難燃剤と、を含有する組成物の発泡体である。
【0017】
(1)ゴム発泡体1の見かけ密度
ゴム発泡体1の見かけ密度は、シール部の隙をなくし、止水性、気密性等を確保するための柔軟性を得る観点から、0.05g/cm以上0.3g/cm以下が好ましく、0.06g/cm以上0.2g/cm以下がより好ましく、0.07g/cm以上0.09g/cm以下が更に好ましい。
なお、ゴム発泡体1の見かけ密度は、JIS K 6767に準じた測定方法で測定される。
【0018】
(2)組成物
組成物は、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)と、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)と、発泡剤と、架橋剤と、金属水酸化物と、脂肪酸エステルと、窒素系難燃剤と、を含有する。組成物の各成分について説明する。
【0019】
(2.1)EPDM
EPDMは、エチレン、プロピレン及びジエン類の共重合によって得られるゴムである。EPDMは、エチレン-プロピレン共重合体に、更にジエン類を共重合させて不飽和結合を導入することにより、加硫剤による加硫を可能としている。ジエン類は、特に限定されないが、非共役ジエンが好ましく、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が用いられる。本発明の特性を得る観点から、ジエン類として5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、特に限定されない。ジエン類の含有量は、架橋(加硫)反応及び、機械物性の影響の観点から、4質量%以上17質量%以下が好ましく、7質量%以上15質量%以下がより好ましい。
EPDMにおけるエチレン含有量は、特に限定されない。エチレン含有量は、耐熱性、耐永久歪性の観点から、40質量%以上80質量%以下が好ましく、45質量%以上60質量%以下がより好ましい。
EPDMは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(2.2)EVA
EVAは、柔軟性があり、伸びに優れる。ゴム発泡体1がEVAを含むことで、反り、ワレ、ピンフォール等の欠陥が抑制される。
EVAの融点(DSC法)は、特に限定されない。EVAの融点は、成形後のゴム発泡体1の反り改善に好ましいという観点から、80℃以上90℃以下が好ましい。なお、EVAの融点は、DSC法で、JIS K 7121によるものである。
EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、特に限定されない。酢酸ビニルの含有量は、ゴム発泡体1を適度に軟化させて、反り、ワレ、ピンフォール等の欠陥を抑制する観点から、EVAの質量を100質量%とした場合に、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。他方、酢酸ビニルの含有量は、軟化しすぎることに起因する発泡のバラツキを抑制する観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。これらの観点から、酢酸ビニルの含有量は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。なお、酢酸ビニルの含有量は、JIS K 6924-2によるものである。
EPDMとEVAとのブレンド比は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、ゴム発泡体1の粘着剤層3に対する剥離強度を十分に確保し、かつゴム発泡体1の反りを抑制する観点から、EVAの量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。他方、EVAは、発泡時のガス抜けを抑え、かつピンフォール等の欠陥を抑制する観点から、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、EVAの量は、5質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上35質量部以下がより好ましく、15質量部以上30質量部以下が更に好ましい。
【0021】
(2.3)発泡剤
発泡剤は、特に限定されない。発泡剤として、有機系発泡剤、無機系発泡剤等の公知の発泡剤を使用できる。発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
発泡剤として、例えば、ジニトロペンタジエンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、及び炭酸水素ナトリウムのうち少なくとも一種を用いることができる。
発泡剤の量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、発泡剤は、低密度性に影響が大きく、ゴム発泡体1とする発泡ガス量の調整の観点から、10質量部以上が好ましく、13質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。他方、発泡剤は、見栄え確保(ワレ、ピンフォール等の欠陥)の観点から、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、発泡剤の量は、10質量部以上35質量部以下が好ましく、13質量部以上30質量部以下がより好ましく、15質量部以上25質量部以下が更に好ましい。
【0022】
(2.4)架橋剤(加硫剤)
架橋剤は、特に、限定されない。架橋剤として、例えば、硫黄、硫黄化合物、セレン、酸化マグネシウム、過酸化物系架橋剤、p-キノンジオキシム系架橋剤等の公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
架橋剤の量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、架橋剤は、架橋後の物性確保、及び発泡成形性(発泡と架橋のタイミング制御)の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が更に好ましい。他方、架橋剤は、耐ブルーム性の観点から、3.5質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、架橋剤の量は、0.5質量部以上3.5質量部以下が好ましく、1.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上2.5質量部以下が更に好ましい。
【0023】
(2.5)パラフィン系プロセスオイル
組成物は、パラフィン系プロセスオイルを含有してもよい。
パラフィン系プロセスオイルは、市販品を用いることができる。市販品として、例えば、出光興産社製 ダイアナプロセスオイル「PS-430」、「PS-32」、「PS-90」、「PW-32」、「PW-90」、「PW-150」、「PW-380」等が挙げられる。
パラフィン系プロセスオイルの量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、パラフィン系プロセスオイルは、混練り時に、コンパウンドとしてのまとまり性を確保し、その粘土質のコンパウンド中のフィラーの分散性を高めることができる。これら混練り加工性の観点から、0質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。他方、パラフィン系プロセスオイルは、オイルブリードによる粘着阻害を抑制してゴム発泡体1の粘着剤層3に対する密着性を確保する観点から、80質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、パラフィン系プロセスオイルの量は、0質量部以上80質量部以下が好ましく、3質量部以上30質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下が更に好ましい。
パラフィン系プロセスオイルを含んだゴム発泡体は、燃焼性が悪化するため、できるだけ、少ないほうが好ましい。
【0024】
(2.6)金属水酸化物
金属水酸化物としては、公知の金属水酸化物を用いることができる。金属水酸化物は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びアルミ酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
金属水酸化物の量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、金属水酸化物は、ゴム発泡体1の粘着剤層3に対する密着性を確保する観点から、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましい。他方、金属水酸化物は、フィラーの分散性を高める観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、金属水酸化物の量は、20質量部以上100質量部以下が好ましく、30質量部以上90質量部以下がより好ましく、50質量部以上80質量部以下が更に好ましい。
【0025】
(2.7)脂肪酸エステル
脂肪酸エステル(RCOOR’、RとR’は、同一であっても異なっていてもよい)は、親水性、疎水性併せ持つ。脂肪酸エステルは、その界面活性剤的な作用として、金属水酸化物とEVAの凝集を緩和し、ゴム中(ゴム発泡体1中)の分散剤として作用すると推測される。
脂肪酸エステルとして、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン系脂肪酸エステル、プロピレン系脂肪酸エステル、n-ブチルステアレート等を挙げることができる。
脂肪酸エステルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
脂肪酸エステルは、融点が50℃以上80℃以下であり、混練中に分散しやすいという観点から、グリセリン脂肪酸エステル、及び高級アルコール脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベへネート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノラウレート、ステアリンジステアレート、グリセリンジベへネート、グリセリンジオレート等が挙げられる。
高級アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリルステアレート、ラウリルステアレート、ラウリルラウリレート、ステアリルベへネート等が挙げられる。
脂肪酸エステルの量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、脂肪酸エステルは、金属水酸化物とEVAを凝集なく均一に分散させ、かつゴム発泡体1の粘着剤層3に対する密着の均一性を確保する観点から、1質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上が更に好ましい。他方、脂肪酸エステルは、オイルブリードによる粘着阻害を抑制してゴム発泡体1の粘着剤層3に対する密着性を確保する観点から、10.0質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましく、7.0質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、脂肪酸エステルの量は、1.0質量部以上10.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、5.0質量部以上7.0質量部以下が更に好ましい。
【0026】
(2.8)窒素系難燃剤
窒素系難燃剤は、特に限定されない。窒素系難燃剤として、例えば、メラミン系難燃剤、トリアジン化合物、グアニジン化合物等が挙げられる。メラミン系難燃剤としては、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、メラミンシアヌレートが好ましい。メラミンシアヌレートは、高充填してもゴムコンパウンドの加工性を損ないにくい特性がある。
窒素系難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
窒素系難燃剤の量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、窒素系難燃剤は、高い難燃性を確保する観点から、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、65質量部以上が更に好ましい。他方、窒素系難燃剤は、練加工性、成形加工性の観点から、150質量部以下が好ましく、110質量部以下がより好ましく、90質量部以下が更に好ましい。詳細には、窒素系難燃剤は、カーボンブラックのように、ゴムへの補強性がないので、多量添加により、耐久性、強度の低下になるため、150質量部以下が好ましい。また、組成物の粘度が上がると発泡性が制御され低密度を確保できないため、150質量部以下が好ましい。
これらの観点から、窒素系難燃剤の量は、50質量部以上150質量部以下が好ましく、60質量部以上110質量部以下がより好ましく、65質量部以上90質量部以下が更に好ましい。
【0027】
(2.9)リン系難燃剤
組成物は、更に、リン系難燃剤を含有してもよい。窒素系難燃剤の単独使用によって、垂直燃焼試験における厚み10mm以上の試験片でのV0合格を達成できるが、厚み10mm未満(例えば3mm)の試験片でのV0合格を達成するためには、窒素系難燃剤とリン系難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
リン系難燃剤としては、分子中にリン原子を含むものであれば特に限定されない。リン系難燃剤として、例えば、赤燐系難燃剤(赤燐を含む難燃剤)、有機リン化合物が挙げられる。赤燐系難燃剤は、公知のものが使用できる。赤燐は、難燃化と低発煙性、低有毒ガス性で、近年注目を集めている。赤燐は、一般的にマトリックスの炭化を促進し、表面炭化層を形成することにより、酸素を遮断し難燃性をもたらす。更に、麟がメタン酸を経て、ポリリン酸になり、この過程で保護被膜ができ、酸素を遮断し、難燃性をもたらすというメカニズムが提唱されている。赤燐の難燃効果は、炭化促進と被膜効果の併用で発現するものと考えられている。赤燐として、例えば、水酸化アルミニウム等を表面処理し平均粒径15μm程にしたヒシガードCP(日本化学社製)や、1140T(麟化学工業製)等を使用できる。また、ゴムへの分散性を考慮し、赤燐として、マスターバッチタイプ(EVA等)も好適に使用できる。
有機リン化合物としては、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ホスファゼン化合物、ピロリン酸メラミン、リン酸、オルトリン酸メラミン、リン酸メラミン、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンが挙げられる。ホスファゼン化合物とは、下記一般式で表される環状フェノキシホスファゼンが好ましい。有機リン化合物として、例えば、アデカスタブEP-2500、BUDIT667(ブーデンハイム)、ホスファゼンとして、Rabitle FP-100 (伏見製薬所)を用いることができる。
【0028】
【化1】

〔式中nは3~25の整数を示す。〕
【0029】
リン系難燃剤の量は、特に限定されない。EPDMとEVAとの合計を100質量部とした場合に、リン系難燃剤は、垂直燃焼試験においてより高い難燃性を確保する観点から、0質量部よりも多いことが好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。他方、リン系難燃剤は、コンパウンド(混練物)の粘度上昇を抑制し、発泡性を制御して低密度のゴム発泡体とする観点から、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、17質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、リン系難燃剤の量は、0質量部よりも多く20質量部以下が好ましく、3質量部以上18質量部以下がより好ましく、5質量部以上17質量部以下が更に好ましい。
なお、窒素系難燃剤や、リン系難燃剤のノンハロゲン系難燃剤は、難燃性効果は高いが、ハロゲン系難燃剤ほど高い効果をえることはできないため、複数種組み合わせて、使用することが好ましい。
【0030】
(2.10)その他の成分
組成物には、上述のEPDM、EVA、発泡剤、架橋剤、パラフィン系オイル、金属水酸化物、脂肪酸エステル、窒素系難燃剤、リン系難燃剤以外の成分として、架橋促進剤(加硫促進剤)、尿素系発泡助剤、充填剤、軟化剤、難燃剤、ガラス繊維、木粉、繊維、脱水剤、老化防止剤、酸化防止剤、各種マイクロ・ナノカプセル、顔料、着色剤、防カビ剤、補強材(各種カーボンブラック)、膨張黒鉛等の添加剤を含むことができる。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
(2.10.1)架橋促進剤(加硫促進剤)
架橋促進剤としては、例えば、酸化亜鉛(滑性亜鉛華)、チアゾール類(例えば、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、ジチオカルバミン酸類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン等)、スルフェンアミド類(例えば、ベンゾチアジル-2-ジエチルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等)、チウラム類(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、キサントゲン酸類(例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等)、アルデヒドアンモニア類(例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメンチレンテトラミン等)、アルデヒドアミン類(例えば、n-ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミン等)、チオウレア類(例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなど)、ジチオフォスファイド系架橋促進剤等が用いられる。このような架橋促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。発泡速度と加硫速度のタイミング調整などの観点から、好ましくは、酸化亜鉛、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸類、スルフェンアミド類が用いられる。
また、架橋促進剤の配合割合は、耐ブルーム性、耐久性、発泡成形性、架橋速度調整、などの観点から、例えば、EPDMとEVAとの合計を100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0032】
(2.10.2)尿素系発泡助剤
尿素系発泡助剤は、尿素を主成分とするものであり、例えば、永和化成工業社製のセルペーストK-5、セルペースト101等が例示される。なお、主成分とは、含有率(質量%)が90質量%以上(100質量%以下)の物質をいう。
尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡成形時の発泡剤の分解開始温度を調整する観点から、EPDMとEVAとの合計を100質量部に対して、0.5質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.7質量部以上以1.3質量部以下が好ましい。
【0033】
(2.10.3)充填剤
充填剤は、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、ケイ酸、及びその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、ファーネスブラック、アルミニウム粉等の無機系充填剤、例えば、コルクなどの有機系充填剤、その他公知の充填剤が用いられる。これら充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。好ましくは、炭酸カルシウム、クレー、シリカが用いられる。
充填剤の配合割合は、特に限定されないが、例えば、EPDMとEVAとの合計を100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上900質量部以下がより好ましい。
【0034】
(2.10.4)軟化剤
軟化剤は、特に限定されない。本開示では、例えば、可塑剤、流動パラフィン、ロジン、クロマン樹脂、ポリブテン、アスファルト等、公知のものを使用することができる。これら軟化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。好ましくは、石油系オイル類やアスファルト類が用いられる。
軟化剤の配合割合は、柔軟性確保、練加工性の確保、及び粘着剤の密着性確保の観点から、例えば、EPDMとEVAとの合計を100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0035】
(2.11)ゴム発泡体1と粘着剤層3の接着メカニズム
ゴム発泡体1と粘着剤層3の接着メカニズムは明らかでないが、次のように推定される。但し、本開示は、この推定メカニズムによって何ら限定解釈されるものではない。
まず、ゴム発泡体1に脂肪酸エステル(RCOOR’)が含まれない場合について説明する。この場合には、ゴム発泡体1中では、金属水酸化物は、EVAが自己凝集しやすいことから、EVAの周囲を金属水酸化物が取り巻くように存在していると考えられる。そして、EVAが凝集した状態の金属水酸化物のうち、粘着剤層3側に面した金属水酸化物の水酸基のみが、粘着剤層3に含まれる樹脂のカルボキシ基等の極性基と水素結合することによって、ゴム発泡体1と粘着剤層3が接着していると推測される。この態様では、金属水酸化物のうち接着に関与するのは、凝集した状態の金属水酸化物のごく一部である。また、この態様では、EVAは、金属水酸化物により囲まれているため、ほとんど接着に関与しない。よって、ゴム発泡体1に脂肪酸エステルが含まれない場合は、ゴム発泡体1と粘着剤層3の密着性が低く、接着力が弱いと推定される。
次に、ゴム発泡体1に脂肪酸エステル(RCOOR’)が含まれる場合について説明する。この場合には、脂肪酸エステルの親水性部位(C=O)が、金属水酸化物の水酸基(-OH)と水素結合する。他方、脂肪酸エステルの疎水性部位(-R,-OR’)は、EVAの疎水性のセグメントと親和性が高い。このような親水性部位と疎水性部位を有する脂肪酸エステルは、金属水酸化物の分散剤として作用すると考えられる。この作用により、EVAは、自己凝集せずに、分散状態を保つと推測される。ゴム発泡体1中では、金属水酸化物がEVAの周囲に凝集しないと推測される。このように、金属水酸化物は凝集していないため、凝集した場合に比べて、多くの金属水酸化物の分子がゴム発泡体1と粘着剤層3の接着に関与すると推測される。また、この態様では、EVAは、金属水酸化物により囲まれていないため、EVA自体も接着に関与する。よって、ゴム発泡体1に脂肪酸エステルが含まれている場合は、ゴム発泡体1と粘着剤層3の密着性が高く、接着力が強いと推定される。
なお、ゴム発泡体1に粘着剤をロールで圧着積層することで粘着剤層3を形成する場合には、次のようにEVA自体も接着に寄与していると考えられる。脂肪酸エステルの作用によって、EVAはゴム発泡体1中で略均一に分散している。このゴム発泡体1に粘着剤(アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤等)をロールで熱(例えば70℃以上80℃以下)をかけながら圧着溶着する。すると、ゴム発泡体1の表面付近のEVAが熱溶融し、このEVA自体が圧着接着に寄与すると推測される。
【0036】
(2.12)ゴム発泡体1がUL-94に規定された94V-0の規格に適合する難燃性を有する推定メカニズム
本開示のゴム発泡体1は、EPDMにEVAと金属水酸化物が配合されており、粘着剤層3に対する密着性が良好であるとともに、優れた難燃性を有している。本開示のゴム発泡体1が優れた難燃性を有している理由は、以下のように推測される。
金属水酸化物は、脱水作用で、自己消化性を示し、難燃性を示す。また、EVAは、オレフィン系樹脂の中でも、酸化指数が比較的高い。このため、EVAも、難燃化に寄与する。
本開示のゴム発泡体1では、上述の(2.11)の欄で説明したように、脂肪酸エステルの作用により、EVAと金属水酸化物が良好に分散するため、ゴム発泡体1と粘着剤層3の密着性が高くなるとともに、EVA及び金属水酸化物が難燃化に有効に寄与すると推測される。
本開示のゴム発泡体1では、更に窒素系難燃剤が配合されているので、高発泡化(低密度化)しても、高い難燃性が確保される。
【0037】
2.積層体5
(1)積層体5の構成
積層体5は、ゴム発泡体1に、粘着剤層3が積層されてなる(図1参照)。
粘着剤層3は、アクリル系ポリマーを含有している。
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体として、重合開始剤を用いて重合(例えば、溶液重合、エマルジョン重合、UV重合)したポリマーである。すなわち、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する化合物(樹脂)である。
ここで「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
アクリル系ポリマーには、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体も用いてもよい。アクリル系ポリマーは、架橋剤により形成された架橋構造を有していてもよい。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、特に限定されない。アルキル基の炭素原子数は、1~20が好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独で、又は2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0039】
アクリル系ポリマー100質量%中、炭素原子数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。炭素原子数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、100質量%であってもよい。
【0040】
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体に由来する構成単位も含むことができる。他の単量体は、限定されない。公知の単量体を使用できる。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤等の重合開始剤をもちいた熱や紫外線による重合反応を利用して、アクリル系ポリマーを容易に形成できる。重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、特に制限されない。重合開始剤の使用量は、例えば次のように適宜調整される。すなわち、ロールコーター等で粘着剤を塗布して粘着剤層3を形成する場合には、塗布前には、重合しないように使用量が調整される。
【0042】
粘着剤層3は、ゴム発泡体1との密着性を改善するための化合物等の種々の公知の配合剤(添加剤)を含有できる。
配合剤としては、金属粒子、金属酸化物、炭化物粒子、セラミック粒子、炭化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ、各種樹脂ビーズ、ナイロン系樹脂、有機・無機中空体、中空ガラスバルーン等を用いることができる。
金属粒子としては、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の粒子が挙げられる。
炭化物粒子としては、炭化ケイ素、炭化窒素等が挙げられる。
セラミック粒子としては、窒化物、ガラス、アルミナ、ジリコニウム等、酸化物等の粒子が挙げられる。
配合剤は、1種又は2種以上組み合わせて含有することができる。
【0043】
積層体5におけるゴム発泡体1の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜変更できる。ゴム発泡体1の厚みは、例えば0.1mm以上2.0mm以下とされる。
積層体5における粘着剤層3の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜変更できる。
粘着剤層3の厚みは、0.2mm以上1.0mm以下が好ましく、0.3mm以上0.8mm以下がより好ましい。
【0044】
積層体5における粘着剤層3とゴム発泡体1との剥離強度は、5N/25mm以上であることが好ましい。剥離強度の上限値は特に限定されないが、通常50N/25mm以下である。なお、剥離強度は、後述するように、JIS K 0237に基づく方法(90°剥離試験方法)に準拠して測定された剥離強度(N/25mm)である。
【0045】
(2)積層体5の製造方法
積層体5の製造方法は、特に限定されない。
積層体5は、例えば、以下のように製造される。
例えば、アクリル系粘着剤混合物(熱重合開始剤、フィラー含有)を剥離紙の上にロールコーター等でコーテイングした後、熱風槽にて熱硬化させて粘着剤層3を形成する。その後、粘着剤層3の上に、ロールにてゴム発泡体1を圧着加工し、放冷することで、積層体5が製造できる。
コーテイングには、ロールコーターの他、コンマコーター等のコーテイングロール、スロットダイ等も好適に使用できる。
特に、ゴム発泡体1の両面(表裏の2面)に粘着剤層3を形成する場合、又は粘着剤層3を多層構造とする場合には、多層スロットダイが好適に使用される。
また、粘着剤層3の粘着面には、ライナーとして剥離ライナーを貼り付けてもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0047】
1.ゴム発泡体の作製(実施例1-15、及び比較例1-4)
表1-3に示す配合割合で、各種ゴム発泡体を作製した。表1-3において、主要な原料の詳細を以下に示す。
・EPDM:三井化学(株)製 三井EPT4021を用いた。
・EVA:日本ポリエチレン(株)製 ノバテック LV440(エチレン/酢酸エチル=85wt%(mass%)/15wt%(mass%)、融点89℃)を用いた。
・脂肪酸エステル:
脂肪酸エステル(1)として、理研ビタミン(株)製 リケマールSL-800 (ステアリルステアレート)を用いた。
脂肪酸エステル(2)として、理研ビタミン(株)製 リケマールS-100 (グリセリンモノステアレート)を用いた。
・パラフィン系プロセスオイル(表中では、「パラフィン系オイル」と略して記載):出光興産(株)製 ダイアナプロセスPS-430を用いた。
・加硫促進剤:
無機系加硫促進剤として、酸化亜鉛(井上石灰工業(株)酸化亜鉛2種(5質量部)を用いた。
チアゾール系加硫促進剤として、大内新興化学(株)製 ノクセラーM(0.7質量部)を用いた。
チウラム系加硫促剤として、大内新興化学(株)製 ノクセラーTT(1.4質量部)を用いた。
・架橋剤(加硫剤):硫黄(ランクセス(株)製 レノグランS-80 E、 2.5質量部)を用いた。
・発泡助剤:尿素系発泡助剤(永和化成工業(株)製 セルペーストK-5、 4.6質量部)を用いた。
・発泡剤:アゾジカルボンアミド(永和化成工業(株)製 ビニフォールAC#3W、 15質量部)を用いた。
・金属水酸化物:
水酸化アルミニウムは、C-301N(住化アルケム(株)製)を用いた。
水酸化マグネシウムは、キスマ5A(協和化学工業(株)製)を用いた。
・カーボンブラック:旭カーボン(株)製 旭カーボン#50G(20質量部)を用いた。
・窒素系難燃剤:
窒素系難燃剤(1)として、メラミンシアヌレート MC-4500(日産化学(株)製)を用いた。
窒素系難燃剤(2)として、メラミン(日産化学(株)製)を用いた。
・リン系難燃剤:
リン系難燃剤(1)として、赤麟系難燃剤(特殊表面処理コート赤燐 1140T、麟化学工業(株)製)を用いた。
リン系難燃剤(2)として、アデカスタブFP-2500 (ポリリン酸メラミン、(株)アデカ製)を用いた。
リン系難燃剤(3)として、BUDIT667(ポリリン酸アンモニウム複合体、ブーデンハイム製)を用いた。
リン系難燃剤(4)として、Rabitle FP-100(フェノキシホスファゼンオリゴマー、(株)伏見製薬所製)を用いた。
【0048】
各ゴム発泡体は、具体的には以下のように作製した。
<実施例1-15>
EPDM、EVA、カーボンブラック、パラフィン系プロセスオイル、難燃剤、酸化亜鉛、脂肪酸エステル、金属水酸化物をバンバリーミキサーに一括投入し、130℃に達した時点で、コンパウンドを排出した。
次に、そのコンパウンドに、硫黄、アゾジカルボンアミド、尿素系発泡助剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤を加え、 ミキシングロールで混練りして、シート状に分出しをおこなった。
シートを130℃の金型にセットし、一次プレス成形を15分行い、その後、二次プレス成形を160℃、15分で行い、架橋発泡させることにより、ゴム発泡体を得た。
【0049】
<比較例1>
EVAを用いなかったこと以外は実施例1-15と同様にしてゴム発泡体を作製した。
<比較例2>
金属水酸化物を用いなかったこと、難燃剤を用いなかったこと以外は実施例1-15と同様にしてゴム発泡体を作製した。比較例2では、窒素系難燃剤は用いられていない。
<比較例3>
金属水酸化物を用いなかったこと以外は実施例1-15と同様にしてゴム発泡体を作製した。比較例3では、窒素系難燃剤は用いられていない。
<比較例4>
金属水酸化物を用いなかったこと、膨張黒鉛を用いたこと以外は実施例1-15と同様にしてゴム発泡体を作製した。
【0050】
各ゴム発泡体(実施例1-15、比較例1-4)は、吸水率が1~12%と低いことから、独立気泡構造を有すると考えられる。なお、独立気泡構造のゴム発泡体は、一般的には、止水性能は高いが粘着剤層に対する密着性(接着性)が劣る。他方、連続気泡構造(吸水率が100~300%)のゴム発泡体は、一般的には、止水性能は低いが粘着剤層に対する密着性(接着性)が高い。
【0051】
2.積層体の作製(実施例1-15、比較例1-4)
アクリル系コポリマーは、酢酸エチル含有粘着剤である綜研化学(株)製 SKダイン 1717DTを使用した。架橋剤として、E-AX(総研化学(株)製)を使用した。本ポリマー100質量部に架橋剤0.05質量部を配合し、アクリルモノマー(4ヒドロキシブチレート;大阪有機化学工業(株)製:4HBA)10質量部と熱重合開始剤としてt-ブチルペルオキシー2-エチルヘキサレート(日油(株)製 パーブチルO)0.02質量部を加えて、粘着剤層の原材料組成物を調製した。
原材料組成物を剥離紙の上にロールコーターでコーテイングした後、熱風槽(90℃、10分)にて熱硬化させて粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層の上に、ロールにてゴム発泡体を圧着加工し、放冷することで、積層体を作製した。なお、積層体における粘着層は0.3mmであった。
【0052】
3.評価方法
(1)見かけ密度
見かけ密度は、JIS-K 6767に準じて測定した。
【0053】
(2)50%圧縮荷重
ゴム発泡体の圧縮荷重をJIS-K 6767に準じて測定した。
ゴム発泡体のスキン層を除去して、厚み10mmの試験片を作製した。その後、圧縮試験機を用いて、圧縮速度10mm/分で50%圧縮してから、10秒後の圧縮荷重を測定した。
【0054】
(3)吸水率の測定
ゴム発泡体の吸水率をASTM D 1056に準じて測定した。ゴム発泡体のスキン層を除去して、厚み12.5mm,大きさ50mm×50mmの試験片を作製した。
試験片の重量を測定した後に、試験片を水面下50mmに浸漬し、3分間17kPaの減圧下におき、その後3分間大気圧で浸漬した。浸漬後、表面に付着した水滴を拭き取り、浸漬後の試験片の重量を測定し、次式を用いて吸水率を算出した。
【0055】
【数1】

A :吸水率(%)
W1:浸漬前の試験片の重量(g)
W2:浸漬後の試験片の重量(g)
【0056】
(4)90度剥離強度の測定方法
粘着剤を積層したゴム発泡体から25mm×250mmの試験片を切り取り、粘着面のうち25mm×125mmをステンレス板に圧着した。
その後、引張試験機を用い、試験片をステンレス板に対して90度の方向に剥離速度300mm/分で剥離を行い、90度剥離強度を測定した。
90度剥離強度は、JIS K 0237に基づく方法(90°剥離試験方法)に準拠して測定された剥離強度(N/25mm)である。
【0057】
(5)UL94 垂直燃焼試験
各厚みのゴム発泡体について、UL94規格に基づく、垂直燃焼試験に順じて、試験を行った。燃焼時間は、燃焼時間50秒以下をV0規格に基づき、V0合格と評価した。また、燃焼時間250秒以下をV1規格に基づき、V1合格と評価した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
4.結果
結果を表1-3に併記する。
表1-3において、ゴム発泡体(成形体)の状態の欄のA,B,C,Dは以下の通りである。
<ゴム発泡体の状態>
A:ゴム発泡体の反り、ピンホール、ワレなし。良好。
B:ゴム発泡体の反り及びワレがややある。ピンホールなし。
C:ゴム発泡体の反り、ワレ、及びピンホールがやや多い。
D:ゴム発泡体の反り、ワレ、及びピンホールが多い。エア抱き込み多い。
【0062】
表1-3において、総合判定の欄のA,B,C,Dは以下のことを意味する。
A:粘着剤層の密着性は良好で、ゴム発泡体の状態が良い。
B:粘着剤層の密着性は良好だが、ゴム発泡体の反り、及びワレがややある
C:粘着剤層の密着性は、やや悪く、ゴム発泡体の反り、及びワレがややある。
D:粘着剤層の密着性が低い。ゴム発泡体の反り、ワレ、ピンフォールが多い。
【0063】
(1)実施例1-15の各要件の充足状況
実施例1-15のゴム発泡体を構成する組成物は、下記要件(a)-(f)を全て満たしている。
・要件(a):EPDMを含む。
・要件(b):EVAを含む。
・要件(c):パラフィン系プロセスオイルを含む。
・要件(d):金属水酸化物を含む。
・要件(e):脂肪酸エステルを含む。
・要件(f):窒素系難燃剤を含む。
【0064】
(2)比較例1-4の各要件の充足状況
これに対して、比較例1-4のゴム発泡体は、以下の要件を満たしていない。
比較例1では、要件(b)を満たしてない。
比較例2では、要件(d)(f)を満たしてない。
比較例3では、要件(d)(f)を満たしてない。
比較例4では、要件(d)を満たしてない。
【0065】
(3)結果及び考察
実施例1-15のゴム発泡体は、良好な状態で有り、総合判定も良好であった。すなわち、実施例1-15のゴム発泡体は、成形性がよく、しかも、アクリル系粘着剤との密着力が高いことを確認した。また、実施例1-15のゴム発泡体は、UL94規格に基づく垂直燃焼試験において燃焼時間が短く、高い難燃性を有していた。また、実施例1-15のゴム発泡体は、低見かけ密度(0.08g/cm~0.25g/cm)で、独泡セル構造(吸水率 4%以下)を有しているため止水性が良好であった。
また、実施例1-15のゴム発泡体から作製した積層体は、ゴム発泡体と粘着剤層とが十分に密着しており、実用的であった。
これに対して、EVAを含まない比較例1は、ゴム発泡体の状態、90度剥離強度、及び垂直燃焼試験の結果が、実施例より劣っており、総合判定も実施例より劣っていた。
また、金属水酸化物及び窒素系難燃剤を含まない比較例2は、90度剥離強度、及び垂直燃焼試験の結果が、実施例より劣っており、総合判定も実施例より劣っていた。
また、金属水酸化物及び窒素系難燃剤を含まない比較例3は、ゴム発泡体の状態、及び90度剥離強度が、実施例より劣っており、総合判定も実施例より劣っていた。
また、金属水酸化物を含まない比較例4は、ゴム発泡体の状態、及び90度剥離強度が、実施例より劣っており、総合判定も実施例より劣っていた。
次に窒素系難燃剤を単独で用いた実施例2と、窒素系難燃剤及びリン系難燃剤を併用した実施例8,9,10,11,12とを比較検討する。実施例2は、厚み10mm,5mmの試験片ではV0合格であったが、厚み5mm未満(3mm,1mm)の試験片ではV1合格であった。実施例8,9,10,11,12は、厚み10mm,5mmの試験片ではV0合格であり、厚み5mm未満(3mm,1mm)の試験片でもV0合格であった。これらの結果から、窒素系難燃剤及びリン系難燃剤を併用すると、より高い難燃性を確保できることが確認された。
【0066】
5.実施例の効果
以上の実施例によれば、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、高い難燃性を有し、低密度であり、アクリル系樹脂を含有する粘着剤層に対する高い密着性を有するゴム発泡体を提供できる。また、実施例によれば、ハロゲン系難燃剤を用いることなく、高い難燃性を有し、低密度であり、ゴム発泡体と粘着剤層との密着性が高い積層体を提供できる。
【0067】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ゴム発泡体
3…粘着剤層
5…積層体
図1