(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】遮音構造及び建物
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20241111BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20241111BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20241111BHJP
E04B 1/98 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
E04B9/00 A
E04B9/18 N
E04B1/82 R
E04B1/98 E
(21)【出願番号】P 2020146907
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和良
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-160997(JP,A)
【文献】特開平10-096292(JP,A)
【文献】特開2000-257205(JP,A)
【文献】特開2001-107503(JP,A)
【文献】特開2003-336345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小口面同士が対向して配置される長軸状の2つの天井下地部材と、
前記小口面同士が離間した状態で2つの前記天井下地部材を支持する下地受部材と、を備え、
前記下地受部材は、
一方の前記天井下地部材の長手方向における端部を支持する第一支持体と、
他方の前記天井下地部材の長手方向における端部を支持する第二支持体と、
前記第一支持体と前記第二支持体との間に配置されている遮音材と、を有し、
前記第一支持体及び前記第二支持体は、前記小口面同士の間に配置されており、
一方の前記天井下地部材の長手方向に沿う方向視で見た場合に、前記第一支持体、前記遮音材及び前記第二支持体がこの順で重複するように配置され、
前記遮音材は、前記第一支持体と前記第二支持体とに挟み込まれており、
前記第一支持体と前記一方の前記天井下地部材の前記小口面との間に空間が形成されており、
前記第二支持体と前記他方の前記天井下地部材の前記小口面との間に空間が形成されている遮音構造。
【請求項2】
前記第一支持体は、前記一方の前記天井下地部材の前記小口面と離間しており、
前記第二支持体は、前記他方の前記天井下地部材の前記小口面と離間している請求項1に記載の遮音構造。
【請求項3】
前記下地受部材は、前記第一支持体と前記第二支持体とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、
天井裏に吊下げ固定され、
前記第一支持体と前記第二支持体との間に配置されている請求項1又は2に記載の遮音構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の遮音構造を備えた建物。
【請求項5】
請求項3に記載の遮音構造を備えた建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二重天井下地構造及びその施工方法が記載されている。この二重天井下地構造は、野縁を支持する野縁受けと野縁受け金具を備えている。野縁受けは、2本1組の断面略コ字状鋼部材で構成されている。断面略コ字状鋼部材は、互いを背合わせで配向し、対面する背面板の間にスペーサを介在させて背面板間にスリット状溝を形成している。野縁受け金具は通孔が形成された水平面状の固定座板部と、鉛直面状の挿入板部とを備えている。野縁受け金具は、固定座板部の通孔にネジボルトを挿通される。そして、固定座板部を跨ぐ両側に螺設された固定調整用ナットによりネジボルトに固定される。野縁受けと野縁受け金具とは、野縁受けのスリット状溝に野縁受け金具の挿入板部を挿入した状態で、外側から螺入されたビスによって相互に連結される。野縁は、野縁受けの開口溝部にその端部を挿入することにより、野縁受けに直交する方向に横架させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような構造では、野縁受けの断面略コ字状鋼部材のそれぞれに野縁が挿入されて、一対の野縁の小口面同士が対向して配置された状態で、一対の野縁が野縁受けを介して近接した状態で接続される。このように野縁が接続されると、音などの振動が、野縁受けを介して一方の野縁から他方の野縁へ容易に伝達してしまう。そのため、このような構造を採用した建物では、十分な遮音性能を実現できない場合があった。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、建物内の遮音性の向上を実現する遮音構造及び遮音性が向上された建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る遮音構造は、
小口面同士が対向して配置される長軸状の2つの天井下地部材と、
前記小口面同士が離間した状態で2つの前記天井下地部材を支持する下地受部材と、を備え、
前記下地受部材は、
一方の前記天井下地部材の長手方向における端部を支持する第一支持体と、
他方の前記天井下地部材の長手方向における端部を支持する第二支持体と、
前記第一支持体と前記第二支持体との間に配置されている遮音材と、を有する。
【0007】
本発明に係る遮音構造では、更に、
前記第一支持体及び前記第二支持体は、前記小口面同士の間に配置されていてもよい。
【0008】
本発明に係る遮音構造では、更に、
前記下地受部材は、前記第一支持体と前記第二支持体とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、
天井裏に吊下げ固定され、
前記第一支持体と前記第二支持体との間に配置されていてもよい。
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る建物は、
小口面同士が対向して配置される長軸状の2つの天井下地部材と、
前記天井下地部材の長手方向と交差する方向に延在し、前記小口面同士が離間した状態で2つの前記天井下地部材の長手方向における端部を支持する長軸状の支持体と、
前記支持体の長手方向に沿って立設されている間仕切壁と、を備えている。
【0010】
本発明に係る建物では、更に、
前記間仕切壁は、上端部が前記天井下地部材に固定された界壁であってもよい。
【0011】
本発明に係る建物では、更に、
前記天井下地部材に支持された天井材を更に備え、
前記間仕切壁は、上端部が前記天井材を介して前記天井下地部材固定されている住戸内仕切壁であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
建物内の遮音性の向上を実現する遮音構造及び遮音性が向上された建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】建物における遮音構造及び界壁の側断面図である。
【
図3】建物の構造を説明する、
図1のIII-III断面図である。
【
図4】野縁、支持体、及び連結具の態様を説明する斜視図である。
【
図5】建物における遮音構造及び住戸内仕切壁の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る遮音構造及び建物について説明する。
【0015】
(全体構成の説明)
図1、
図2には、本実施形態に係る遮音構造100を採用した建物Bを示している。建物Bは、例えば鉄骨造の骨組みを有する複数階建ての住宅である。建物Bには、複数の居室が形成される。建物Bは、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの骨組部材で構成された骨組架構と、壁や床などを形成するパネルとを有し、基礎(図示せず)に固定された上部構造体とで構成される。骨組部材やパネルは、予め規格化(標準化)されたものとすることができる。この場合、骨組部材などを予め工場にて製造して建築現場に搬入し、建物Bを組み立てることができる。以下の説明では、鉛直方向における上向き側を単に、上もしくは上方などといい、その逆を下もしくは下方などと言う。
【0016】
図1に示すように、建物Bは、居室となる空間Sを区画する床材73、天井材83及び間仕切壁6と、床材73や間仕切壁6を下方から支持する床下地材72と、床下地材72が載置された床スラブ71と、天井材83を支持する長軸状の部材である野縁5(天井下地部材の一例)と、野縁5を支持する下地受部材1と、下地受部材1が吊下げられ、上階の床スラブである天井スラブ81を下方から支持する梁部80と、を備えている。下地受部材1は、対になる(少なくとも二つの)野縁5,5を支持する支持体10や遮音材3を有する。野縁5及び天井材83の上部には、これらの上面を覆うようにロックウールなどの吸音材84が敷かれている。なお、
図1は、野縁5の長手方向(延在方向)に沿う、遮音構造100の断面を含む建物Bの側断面図である。
【0017】
図1、
図2に示すように、遮音構造100は建物Bの一部の構造部分である。
図2に示すように、遮音構造100には、対になる野縁5,5と、下地受部材1とが含まれる。野縁5,5は、その小口面51,51同士が、離間し、かつ、対向して配置されている。遮音構造100は、小口面51,51同士を離間させることで、野縁5を介した天井における音の伝達(伝播)、例えば、隣接する居室間の音の伝達を低減もしくは遮断し、建物Bでの居室間の遮音性の向上を実現する。小口面51,51の間には遮音材3が配置されており、野縁5,5間の音の振動の伝達が低減もしくは遮断される。これにより遮音構造100は、野縁5を介した隣接する居室間の音の伝達を低減もしくは遮断し、建物Bでの室間の遮音性の向上を実現する。なお、
図2は、野縁5の長手方向に沿う、遮音構造100及びその周囲の側断面図である。以下では、音の振動の伝達の低減及び遮断を包括して、単に、音の伝達の抑制、と記載する場合がある。
【0018】
(各部の説明)
図1に示すように、床スラブ71及び天井スラブ81は、スラブ材として例えば軽量気泡コンクリート(ALC)などのパネル材(板材)を用いて形成されている。床スラブ71上には、断熱材や捨て貼りなどの床下地材72が敷設される。床下地材72にはフローリング材などの床材73が敷設されて居室の床面が形成されている。
【0019】
図1、
図2に示すように、天井材83は居室の天井を形成する板材であり、例えば石膏ボードやベニヤ板が用いられる。天井材83は、天井スラブ81の下面側に配置されている。天井材83と天井スラブ81とで区画された空間を以下では天井裏と称する場合がある。天井材83は、天井スラブ81に対向する面側(天井裏側)に位置する野縁5により支持されている。天井材83は、例えばネジやボルトで野縁5に固定される。天井材83の室内側の表面には塗装や壁紙などの装飾が施されている。天井裏には、梁部80、下地受部材1及び野縁5が配置されている。
【0020】
梁部80は、鋼材等で形成された長軸状の部材である。本実施形態では、梁部80はH鋼である。天井スラブ81は、その下面を、水平方向に沿って延在する梁部80の上フランジの上面に当接させた状態で、梁部80に支持されている。建物Bでは、梁部80は複数本配置されている。建物Bの複数本の梁部80は、その長手方向が互いに平行する複数本の梁部80を含む。
【0021】
野縁5は、天井材83の背面側(天井裏側)に配置され、天井材83を支持する長軸状の部材である。野縁5は、例えば鋼材で形成された金属製で中空の角材である。野縁5は、長手方向を所定長さに規格化して形成することが好ましい。野縁5は、その長手方向が水平方向に沿い、且つ、下地受部材1を介して支持される梁部80の長手方向に交差(本実施形態では直交)する方向になるように配置されている。
【0022】
野縁5は、
図3に示すように、天井裏において複数本が組み合わされて対になり、それらの対の列が複数列配置されている。野縁5のそれぞれの列は互いに、例えば等間隔で長手方向が平行に配列されている。なお、
図3は、鉛直方向における野縁5と梁部80との間の位置から下方を見た建物Bの水平断面図(
図1のIII-III断面図)である。
図3では、吸音材84の図示は省略している。
【0023】
建物Bでは、
図2に示すように、二つの野縁5,5が、その小口面51,51同士を対向させた状態で隣接する一対となり、支持体10で支持されている。対になる野縁5,5の小口面51,51同士は離間して配置されている。このように小口面51,51同士が離間されることで、対になる野縁5,5の一方から他方への音の伝達(以下、野縁5,5間の音の伝達と記載する)が抑制される。これにより、野縁5を介した天井における音の伝達が抑制される。以下では、離間する小口面51,51同士の間の部分を、単に野縁5,5の離間部分と記載する場合がある。
【0024】
本実施形態では、対になる野縁5,5の長手方向は略平行であり、その小口面51,51は、対になる野縁5,5の長手方向に略直交する面であり、小口面51,51同士は略平行に配置されている。本実施形態では、対になる野縁5,5それぞれの長手方向が一直線上になるように配置されている。
【0025】
下地受部材1は、
図2に示すように、複数の対になる野縁5,5を支持する支持体10、対になる野縁5,5間の音の伝達を抑制する遮音材3及び支持体10を吊り下げる連結具2(連結部の一例)を有する。下地受部材1は、対になる野縁5,5を離間した状態で支持することで、野縁5,5間の音の伝達を抑制できる。更に、下地受部材1は、遮音材3を備えることで、野縁5,5間の音の伝達を、より抑制できる。
【0026】
連結具2は、
図2に示すように、支持体10を梁部80に吊下げて固定するための吊下具である。連結具2は、
図4に示すように、例えば鋼材等で形成された矩形状の板をL字形状に折り曲げて形成した部材である。連結具2は、板面が鉛直方向に沿うように配置される支持板部21と、支持板部21の板面と交差する方向(本実施形態では水平方向)に沿うように板面が配置される固定板部22とを有する。
【0027】
図2に示すように、固定板部22には、厚み方向に貫通する貫通孔22aが形成されている。連結具2は、固定板部22と梁部80の下フランジ(
図2参照)とを、貫通孔22aに挿通されるボルトなどの締結部材を用いて締結して固定することで、梁部80に支持される。なお、連結具2の固定はボルト固定に限られず、溶接やクランプ、嵌め込みなどによる固定でもよい。
【0028】
支持板部21には、厚み方向に貫通する貫通孔21aが形成されている。連結具2は、貫通孔21aに挿通される固定ボルト29及び当該固定ボルト29と螺合接続されるナット30で支持体10と接続されることにより、支持体10を吊り下げ固定する。貫通孔21aなどによる支持体10の吊下げ固定については後述する。
【0029】
図1、
図2及び
図4に示すように、支持体10は、複数(二つ以上)の野縁5の端部を支持する、いわゆる野縁受部材である。支持体10は、長手方向が野縁5の長手方向と交差する方向、且つ、水平方向に沿う方向に延在するように配置されている。本実施形態では、支持体10の長手方向は野縁5の長手方向に直交しており、梁部80(
図1参照)と平行である。支持体10は、
図2、
図4に示すように、対になる野縁5,5の一方を支持する第一支持体11と、対になる野縁5,5の他方を支持する第二支持体12とを有する。
【0030】
図2、
図4に示すように、第一支持体11及び第二支持体12は、それぞれ長軸状の部材である。第一支持体11及び第二支持体12は、その長手方向に対する垂直断面の断面形状が角張ったU字状形状(カタカナのコの字型状形状)の溝形鋼により構成されている。第一支持体11及び第二支持体12それぞれにおけるU字状形状の谷底板部には、厚み方向に貫通する貫通孔11a,12a(
図2参照)が形成されている。
【0031】
第一支持体11及び第二支持体12は、それらの谷底板部の外側の面(以下、「谷底外面」と記載する。)同士を対向させて配置されている。本実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12はこれらの谷底外面に平行な面に対して対称(面対称)の形状である。
【0032】
図2に示すように、第一支持体11及び第二支持体12は、それぞれの谷底板部の内側の面(以下、「谷底内面」と記載する。)に野縁5,5の小口面51,51が対向する状態、且つ、小口面51,51同士が対向する状態になるように、溝空間に、野縁5,5において対向させる小口面51,51側の端部を嵌め込んで、対向させた小口面51,51側の端部で野縁5,5を支持している。本実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12の谷底外面及び谷底内面と小口面51,51とは平行であるが、平行である場合に限られない。
【0033】
野縁5,5の端部が第一支持体11及び第二支持体12に嵌め込まれた状態では、小口面51,51同士の間(野縁5,5の離間部分)に第一支持体11及び第二支持体12における谷底板部が配置される。
【0034】
本実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12の谷底板部と小口面51,51とは離間している。これにより、野縁5,5と第一支持体11や第二支持体12との間の音の伝達が抑制される。その結果、野縁5,5間の音の伝達が抑制されて、野縁5を介した天井における音の伝達が抑制される。実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12の谷底板部と小口面51,51との間に遮音材を配置していないが、第一支持体11及び第二支持体12の谷底板部と小口面51,51との間に遮音材を配置してもよい。
【0035】
貫通孔11a,12aには連結具2の固定ボルト29が挿通される。これにより、第一支持体11と第二支持体12とが接続されて支持体10として一体化すると共に、支持体10が梁部80に吊下げられる。詳細は後述する。
【0036】
図3、
図4に示すように、支持体10は、支持体10の長手方向におけるそれぞれ異なる位置で、一つ以上の対の野縁5,5を支持可能である。
図3では、支持体10が、支持体10の長手方向において等間隔に配置された複数の対の野縁5,5を支持する場合を示している。
【0037】
図2に示すように、第一支持体11と第二支持体12との間には連結具2の支持板部21が配置される。第一支持体11及び第二支持体12の谷底板部は、連結具2の支持板部21に対して、固定ボルト29及びナット30により固定される。これにより、第一支持体11及び第二支持体12は、支持体10として一体化され、この支持体10は、連結具2により、梁部80から吊り下げられる。支持体10は、一つ以上の連結具2を介して梁部80に吊下げ固定される。本実施形態の支持体10は、支持体10の長手方向において等間隔に配置された複数の連結具2によって吊下げ固定されるが、各支持体10が吊り下げ固定される連結具2の数は特に限定されない。
【0038】
遮音材3は、いわゆる吸音材、制震材ないしは防振材などの、人にとって可聴な音の周波数に対応する振動を減衰させる部材である。遮音材3は、柔らかいゴム状の弾性体や硬いスポンジ状の樹脂の発泡体などの、弾性力を有し、振動エネルギーを吸収して熱に変換可能な材料で形成可能である。遮音材3を形成する材料もしくは材質の具体例としては、弾性樹脂シート、ブチル系ゴムシート、オレフィン系ゴムシート、不織布シート及び発泡系樹脂シートが挙げられる。遮音材3は、例えば平板状に形成されている。遮音材3は、本実施形態では硬いスポンジ状のゴム材の板である。
【0039】
遮音材3にはその厚み方向に貫通する貫通孔3aが形成されている。遮音材3は、貫通孔3aに固定ボルト29が挿通されることで、支持体10に固定される。
【0040】
遮音材3は、第一支持体11と第二支持体12との間に配置される。より具体的に、本実施形態の遮音材3は、第一支持体11及び第二支持体12の谷底板部の谷底外面間に挟み込まれている。このように遮音材3が第一支持体11と第二支持体12との間に配置されることで、第一支持体11と第二支持体12との間の音の伝達が抑制される。これにより、野縁5,5間の音の伝達が抑制されて、野縁5を介した天井における音の伝達が抑制される。
【0041】
遮音材3は、その一部もしくは全部が、対となる野縁5,5の小口面51,51同士の間に配置されるとよい。このように遮音材3を配置することで、対になる野縁5,5の一方の野縁5から第一支持体11や第二支持体12を介した他方の野縁5への音の伝達(野縁5,5間の音の伝達)を効果的に抑制できる。これにより、野縁5を介した天井における音の伝達が効果的に抑制される。本実施形態では、
図2に示すように、遮音材3の全部が対となる野縁5,5の小口面51,51同士の間に配置されている。すなわち、対になる野縁5,5の長手方向に沿う方向視で見た場合に、野縁5,5の小口面51,51及び遮音材3の板面が重複するように(すなわち、野縁5,5の離間部分に)配置される。
【0042】
本実施形態では、
図2に示すように、2枚の遮音材3,3が、第一支持体11と連結具2の支持板部21との間と、支持板部21と第二支持体12との間と、に挟み込まれている。すなわち、野縁5の長手方向に沿って第一支持体11、遮音材3、支持板部21、遮音材3及び第二支持体12がこの順で配置されている。このように遮音材3を複数枚(2枚以上)重複するように配置することで、野縁5,5間の音の伝達を更に効果的に抑制できる。これにより、野縁5を介した天井における音の伝達が更に効果的に抑制される。
【0043】
第一支持体11、遮音材3、支持板部21、遮音材3及び第二支持体12のそれぞれの貫通孔11a,3a,22a,3a,12aには固定ボルト29が挿通される。このように挿通された固定ボルト29とナット30とが螺合接続されることにより、第一支持体11、遮音材3,3、第二支持体12及び連結具2が、固定ボルト29の頭部とナット30とに挟み込まれて、下地受部材1として一体化される。
【0044】
間仕切壁6は、
図1に示すように、鉛直方向に沿う板面を有し、建物Bの内部の空間Sを水平方向において仕切る内壁である。建物Bでは、間仕切壁6として、異なる世帯の居住する住戸間を仕切る界壁61(戸境壁)と、住戸間内において空間を仕切る住戸内仕切壁(以下、仕切壁62と記載する)とが形成されている。間仕切壁6は、遮音性能を有する部材で構成されることが好ましい。
【0045】
間仕切壁6は、例えば、間仕切壁6の上端部を固定する上部ランナー60と、間仕切壁6の下端部を固定する下部ランナー69とにより、天井側と床側とを固定されて設置される。
【0046】
図1に示すように、上部ランナー60及び下部ランナー69は、例えば鋼材などで形成された長軸状の部材であり、その長手方向に沿う断面の形状が角張ったU字形状(カタカナのコの字型状形状)の溝形鋼により構成されている。上部ランナー60は、U字の谷底板部の内面を下方に向けた状態で、U字の谷底板部の外面を野縁5もしくは天井材83に向けた状態で、谷底板部が野縁5もしくは天井材83にボルトなどで固定される。上部ランナー60のU字の溝空間には間仕切壁6の上端部(例えば、間仕切壁6を構成するスタッド(図示せず)の上端部)が嵌め込まれて保持される。下部ランナー69は、U字の谷底板部の内面を上方に向けた状態で、U字の谷底板部の外面を床下地材72に向けた状態で、谷底板部が床下地材72にボルトなどで固定される。下部ランナー69のU字の溝空間には間仕切壁6の下端部(例えば、間仕切壁6を構成するスタッドの下端部)が嵌め込まれて保持される。上部ランナー60及び下部ランナー69に対する間仕切壁6の固定は、ネジやボルトなどで行うことができる。上部ランナー60及び下部ランナー69の長手方向は、下地受部材1の支持体10の長手方向に沿い配置されている。これにより、間仕切壁6は支持体10の長手方向に沿い立設される。上部ランナー60及び下部ランナー69で固定された間仕切壁6の側面には石膏ボードなどが固定され、更に塗装や壁紙などの装飾が施される。
【0047】
界壁61を固定する上部ランナー60は、野縁5の下面部に固定されている。すなわち、界壁61は、その上端部が上部ランナー60を介し、天井材83を挟み込まない状態で野縁5に直接的に固定されている(いわゆる壁勝ち天井負けの納まり)。また、界壁61を固定する下部ランナー69は、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に上部ランナー60と重複する位置に配置され、且つ床下地材72に固定されている。すなわち、界壁61は、下部ランナー69を介して、その下端部が床下地材72に固定されている。これらにより、住戸間を仕切る界壁61が強固に固定される。
【0048】
仕切壁62を固定する上部ランナー60は、天井材83の下面に当接した状態で野縁5の下面部に固定されている。すなわち、仕切壁62は、その上端部が上部ランナー60と天井材83とを介して野縁5に固定されており、仕切壁62の上端部と野縁5とは、上部ランナー60と天井材83とを挟み込んだ状態になっている(いわゆる壁負け天井勝ちの納まり)。また、仕切壁62を固定する下部ランナー69は、界壁61の場合と同様に、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に上部ランナー60と重複する位置に配置され、且つ床下地材72に固定されている。すなわち、仕切壁62は、下部ランナー69を介して、その下端部が床下地材72に固定されている。これらにより、住戸間内での仕切壁62の設置を簡易なものとすることができる。
【0049】
図1、
図2及び
図5に示すように、間仕切壁6(界壁61及び仕切壁62)は、野縁5の長手方向において最も近い距離にある支持体10に沿い立設されている。これにより、間仕切壁6が遮音構造100に近い位置に配置され、野縁5を介した音の伝達であって、間仕切壁6で隣り合う空間Sの音の伝達(以下では、間仕切壁6をまたぐ音の伝達と記載する)が抑制される。本実施形態では、間仕切壁6は更に、野縁5の長手方向において最も近い距離にある支持体10が支持されている梁部80(以下、近接梁部と記載する)に沿い立設されている。これにより、間仕切壁6が遮音構造100(特に、野縁5,5の離間部分)にできるだけ近い位置に配置され、間仕切壁6をまたぐ音の伝達が抑制される。
【0050】
本実施形態では、
図1、
図2に示すように、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に近接梁部と重複する位置に、界壁61が配置されている。界壁61は、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に支持体10と重複していない。これにより、界壁61は、野縁5に上端部を固定された状態で自然と遮音構造100に近い位置に配置されることになる。そのため、野縁5を介した音の伝達であって、界壁61で隣り合う空間Sの音の伝達(以下では、界壁61をまたぐ音の伝達と記載する)を適切に抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、
図1、
図5に示すように、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に支持体10と重複する位置に、仕切壁62が配置されている。これにより、仕切壁62は、野縁5に上端部を固定された状態で自然と遮音構造100(特に、野縁5,5の離間部分)に最も近い位置に配置されることになる。そのため、野縁5を介した音の伝達であって、仕切壁62で隣り合う空間Sの音の伝達(以下では、仕切壁62をまたぐ音の伝達と記載する)を最も効果的に抑制することができる。
【0052】
以上のようにして、建物内の遮音性の向上を実現する遮音構造及び遮音性が向上された建物を提供することができる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、下地受部材1の連結具2は、板面が鉛直方向に沿い配置される支持板部21と、支持板部21の板面と交差する方向(水平方向)に沿い板面が配置される固定板部22とを有し、連結具2は、固定板部22を梁部80に固定されて、梁部80に支持されている場合を説明した。しかし、連結具2が梁部80に支持される態様はこれに限られない。
【0054】
連結具2は間接的に梁部80に支持されてもよい。例えば、下地受部材1は、梁部80に直接的もしくは間接的に支持されており、連結具2の吊下げ高さを調節可能とする高さ調整部などの他の吊下げ具(例えば、スタッドボルト)や、梁部80に直接的もしくは間接的に支持されており、連結具2の振動を抑制する制振装置(例えば、防振ゴム)を備えてもよい。連結具2が高さ調整部を介して梁部80に間接的に支持される場合、連結具2は、その吊下げ高さを調整可能とされる。連結具2が制振装置を介して梁部80に間接的に支持される場合、下地受部材1は、制振装置で音の振動を減衰させて野縁5,5間の音の伝達を更に抑制可能となる。
【0055】
(2)上記実施形態では、遮音材3は、少なくともその一部が、対となる野縁5,5の小口面51,51同士の間に配置される場合を説明した。しかし、遮音材3は必ずしも小口面51,51同士の間に配置しなくてもよい。遮音材3は、第一支持体11と第二支持体12との間に配置されていれば、野縁5,5間の音の伝達を抑制できる。
【0056】
(3)上記実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12が、それぞれのU字状形状の対底内面に野縁5,5の小口面51,51が対向する状態で、U字の溝空間に野縁5,5の端部を嵌め込んで、野縁5,5をその端部で支持している場合を説明した。しかし、第一支持体11及び第二支持体12が野縁5,5の端部を支持する態様はこれに限られない。例えば、U字状形状の第一支持体11及び第二支持体12のそれぞれの鉛直方向下側に位置する側板部の下面に、野縁5,5の端部の小端を対向させた状態で、ボルトなどで当該側板部に野縁5,5の端部を固定して支持してもよい。この場合でも、小口面51,51を離間させていれば、野縁5,5間の音の振動の伝達は抑制できる。
【0057】
(4)上記実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12は、その長手方向に対する垂直断面の断面形状が角張ったU字状形状(カタカナのコの字型状形状)に形成されており、第一支持体11及び第二支持体12が、それぞれのU字状形状の谷底内面に野縁5,5の小口面51,51が対向する状態で、U字の溝空間に野縁5,5の端部を嵌め込んで、野縁5,5をその端部で支持している場合を説明した。しかし、第一支持体11及び第二支持体12の長手方向に対する垂直断面の断面形状は、角張ったU字状形状に形成される場合に限られない。
【0058】
第一支持体11及び第二支持体12は、例えば平板状に形成されてもよい。この場合は、第一支持体11及び第二支持体12の板面に野縁5,5の小口面51,51を当接させて、当該板面を貫通させてボルトやネジなどで第一支持体11及び第二支持体12と野縁5,5とを接続し、野縁5,5をその端部で支持してもよい。この場合でも、小口面51,51同士を離間させていれば、野縁5,5間の音の振動の伝達は抑制できる。
【0059】
(5)上記実施形態では、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に近接梁部と重複する位置に、界壁61が配置されている場合を説明したが、界壁61は、必ずしも近接梁部と重複する位置に配置さていなくてもよい。界壁61が遮音構造100に近い位置に配置されていれば、界壁61をまたぐ音の伝達が適切に抑制される。
【0060】
(6)上記実施形態では、下地受部材1において、2枚の遮音材3,3が、第一支持体11と連結具2の支持板部21との間と、支持板部21と第二支持体12との間と、に挟み込まれている場合を説明した。しかし、下地受部材1においては2枚の遮音材3,3が用いられる場合に限られない。下地受部材1は、少なくとも1枚の遮音材3を第一支持体11と第二支持体12との間に配置されていれば、野縁5,5間の音の伝達を遮音材3で抑制できる。
【0061】
(7)上記実施形態では、第一支持体11及び第二支持体12の谷底内面と、対となる野縁5,5の小口面51,51とは離間している場合を説明したがこれに限られない。第一支持体11及び第二支持体12の谷底内面と、対となる野縁5,5の小口面51,51とが当接している場合でも、対となる野縁5,5の小口面51,51同士を離間させていれば、野縁5,5間の音の振動の伝達は抑制できる。また、遮音材3が第一支持体11と第二支持体12との間に配置されていれば、野縁5,5間の音の伝達を遮音材3で抑制できる。
【0062】
(8)上記実施形態では、鉛直方向に沿う方向視で見た場合に支持体10と重複する位置に、仕切壁62が配置されている場合を説明したが、仕切壁62は、必ずしも支持体10と重複する位置に配置さていなくてもよい。仕切壁62が遮音構造100に近い位置に配置されていれば、仕切壁62をまたぐ音の伝達が抑制される。
【0063】
(9)上記実施形態では、界壁61を固定する上部ランナー60は、天井材83を介さずに直接的に、野縁5の下面部に固定されている場合を説明した。しかし、界壁61を固定する上部ランナー60を、天井材83の下面に当接した状態で、天井材83を介して間接的に野縁5の下面部に固定してもよい。この場合、仕切壁62よりも天井材83の敷設を先に施工することが可能となり、天井材83の加工手間を削減できるため好ましい。なお、この場合は更に、仕切壁62の上部近傍の天井材83に、上部ランナー60の長手方向に沿う隙間を形成してもよい。当該隙間により、天井材83の音の振動の伝達を抑制できるため、天井材83を介した仕切壁62をまたぐ音の伝達を更に抑制することができる。
【0064】
(10)上記実施形態では、仕切壁62を固定する上部ランナー60は、天井材83の下面に当接した状態で、天井材83を介して間接的に、野縁5の下面部に固定されている場合を説明した。しかし、仕切壁62を固定する上部ランナー60を、天井材83を挟み込まない状態で直接的に野縁5に固定してもよい。これにより、界壁61をまたいで隣接する天井材83,83が上部ランナー60で離間(分断)されるため、天井材83を介した界壁61をまたぐ音の伝達を更に抑制することができる。
【0065】
(11)上記実施形態では、建物Bが遮音構造100を採用しており、遮音構造100が対になる野縁5,5と、下地受部材1とを含み、間仕切壁6が下地受部材1の支持体10に沿い立設されている場合を説明した。そして、下地受部材1が、支持体10として、対になる野縁5,5の一方を支持する第一支持体11と、対になる野縁5,5の他方を支持する第二支持体12とを有し、野縁5,5の小口面51,51同士が離間しており、第一支持体11と第二支持体12との間に遮音材3が配置されている場合を説明した。しかし、建物Bはこのような遮音構造100を含む場合に限られない。建物Bは、必ずしも遮音材3や第一支持体11及び第二支持体12を要しない。建物Bは支持体10が小口面51,51同士を離間した状態で野縁5,5の端部を支持しており、間仕切壁6が支持体10の長手方向に沿い立設されていれば、野縁5,5の離間部分の存在により、間仕切壁6をまたぐ音の伝達が抑制されて、遮音性が向上される。
【0066】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、遮音構造及び建物に適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 :下地受部材
2 :連結具(連結部)
3 :遮音材
3a :貫通孔
4 :固定具
5 :野縁(天井下地部材)
6 :間仕切壁
10 :支持体
11 :第一支持体
11a :貫通孔
12 :第二支持体
12a :貫通孔
21 :支持板部
21a :貫通孔
22 :固定板部
22a :貫通孔
29 :固定ボルト
30 :ナット
40 :本体部分
41 :凹部
42 :スタッドボルト
42a :ナット
51 :小口面
60 :上部ランナー
61 :界壁
62 :仕切壁(住戸内仕切壁)
69 :下部ランナー
71 :床スラブ
72 :床下地材
73 :床材
80 :梁部
81 :天井スラブ
83 :天井材
84 :吸音材
100 :遮音構造
B :建物
S :空間