(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241111BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241111BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20241111BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20241111BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241111BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241111BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241111BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20241111BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241111BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241111BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20241111BHJP
H01L 21/322 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/91 C
H01L29/91 J
H01L29/78 658H
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 655F
H01L29/06 301F
H01L29/78 658A
H01L29/78 652C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/50 B
H01L29/50 M
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L21/322 K
H01L21/322 L
(21)【出願番号】P 2020153851
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】本田 成人
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-043890(JP,A)
【文献】特開2012-043891(JP,A)
【文献】特開2013-008779(JP,A)
【文献】特開2013-021240(JP,A)
【文献】特開2020-072137(JP,A)
【文献】特開2020-120121(JP,A)
【文献】特開2009-272550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/417
H01L 21/8234
H01L 21/322
H01L 27/06
H01L 27/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタとダイオードとが共通の半導体基体に形成された半導体装置であって、
前記半導体基体は、
一方主面および他方主面としての第1主面および第2主面と、
前記トランジスタが形成されたトランジスタ領域と、
前記ダイオードが形成されたダイオード領域と、を有し、
前記トランジスタ領域は、
前記半導体基体の前記第2主面側に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層よりも前記半導体基体の前記第1主面側に設けられた第1導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられた第2導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層に電気的に接続された第2電極と、
前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、を備え、
前記ダイオード領域は、
前記半導体基体の前記第2主面側に設けられた第2導電型の第5半導体層と、
前記第5半導体層上に設けられた前記第2半導体層と、
前記第2半導体層よりも前記半導体基体の前記第1主面側に設けられた第1導電型の第6半導体層と、
前記第6半導体層上に設けられ前記第6半導体層よりも第1導電型の不純物濃度が高い第1導電型の第7半導体層と、
前記第7半導体層に電気的に接続された前記第2電極と、
前記第5半導体層に電気的に接続された前記第1電極と、を備え、
第1再結合領域が、前記第6半導体層のうち、前記第7半導体層の前記第2主面側であり前記第7半導体層と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域が、前記第6半導体層のうち前記第7半導体層の前記第2主面側の表面と接する領域、に少なくとも設けられている、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域が、前記第7半導体層の前記第2主面側の表面であって前記第6半導体層と接する表面を含み、前記第6半導体層および前記第7半導体層にまたがるように、設けられている、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域は、少なくとも、前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域からの平面視での距離が前記半導体基体の厚さよりも小さい領域に、形成されている、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域は、前記第7半導体層と平面視で重なる領域にのみ形成されている、
半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域と前記第7半導体層とは、平面視で同じ領域に形成されている、
半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域の平面視での面積は、前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積の20%以上である、
半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1再結合領域は、前記第6半導体層のうち第1導電型の不純物濃度が1.0E+16/cm
3以下の領域、には形成されていない、
半導体装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記ダイオード領域は前記半導体基体の前記第1主面側の表面から前記第2半導体層に達するトレンチゲートにより複数のユニットセル領域に区切られており、
前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域と隣接する前記ユニットセル領域での、前記第1再結合領域の平面視での面積の前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積に対する割合、は、前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域と隣接しない前記ユニットセル領域での、前記第1再結合領域の平面視での面積の前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積に対する割合、より高い、
半導体装置。
【請求項10】
トランジスタとダイオードとが共通の半導体基体に形成された半導体装置であって、
前記半導体基体は、
一方主面および他方主面としての第1主面および第2主面と、
前記トランジスタが形成されたトランジスタ領域と、
前記ダイオードが形成されたダイオード領域と、を有し、
前記トランジスタ領域は、
前記半導体基体の前記第2主面側に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層よりも前記半導体基体の前記第1主面側に設けられた第1導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられた第2導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層に電気的に接続された第2電極と、
前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、を備え、
前記ダイオード領域は、
前記半導体基体の前記第2主面側に設けられた第2導電型の第5半導体層と、
前記第5半導体層上に設けられた前記第2半導体層と、
前記第2半導体層よりも前記半導体基体の前記第1主面側に設けられた第1導電型の第6半導体層と、
前記第6半導体層上に設けられ前記第6半導体層よりも第1導電型の不純物濃度が高い第1導電型の第7半導体層と、
前記第7半導体層に電気的に接続された前記第2電極と、
前記第5半導体層に電気的に接続された前記第1電極と、を備え、
第1結晶欠陥領域が、前記第6半導体層のうち、前記第7半導体層の前記第2主面側であり前記第7半導体層と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている、
半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域が、前記第6半導体層のうち前記第7半導体層の前記第2主面側の表面と接する領域、に少なくとも設けられている、
半導体装置。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域が、前記第7半導体層の前記第2主面側の表面であって前記第6半導体層と接する表面を含み、前記第6半導体層および前記第7半導体層にまたがるように、設けられている、
半導体装置。
【請求項13】
請求項10から12のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域はAr(アルゴン)を含む、
半導体装置。
【請求項14】
請求項10から12のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域はN(窒素)を含む、
半導体装置。
【請求項15】
請求項10から12のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域はHe(ヘリウム)を含む、
半導体装置。
【請求項16】
請求項10から12のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域はH(水素)を含む、
半導体装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域は、少なくとも、前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域からの平面視での距離が前記半導体基体の厚さよりも小さい領域に、形成されている、
半導体装置。
【請求項18】
請求項10から17のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域は、前記第7半導体層と平面視で重なる領域にのみ形成されている、
半導体装置。
【請求項19】
請求項10から18のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域と前記第7半導体層とは、平面視で同じ領域に形成されている、
半導体装置。
【請求項20】
請求項10から19のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域の平面視での面積は、前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積の20%以上である、
半導体装置。
【請求項21】
請求項10から20のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1結晶欠陥領域は、前記第6半導体層のうち第1導電型の不純物濃度が1.0E+16/cm
3以下の領域、には形成されていない、
半導体装置。
【請求項22】
請求項10から21のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記ダイオード領域は前記半導体基体の前記第1主面側の表面から前記第2半導体層に達するトレンチゲートにより複数のユニットセル領域に区切られており、
前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域と隣接する前記ユニットセル領域での、前記第1結晶欠陥領域の平面視での面積の前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積に対する割合、は、前記ダイオード領域のうち前記トランジスタ領域と隣接しない前記ユニットセル領域での、前記第1結晶欠陥領域の平面視での面積の前記第6半導体層と前記第7半導体層を合わせた領域の平面視での面積に対する割合、より高い、
半導体装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第6半導体層および前記第7半導体層は前記
第2半導体層よりも前記半導体基体の前記第1主面側に設けられた第1導電型の不純物を含む第10半導体層に含まれる、
半導体装置。
【請求項24】
請求項1から9のいずれかに記載の半導体装置を製造する方法である半導体装置の製造方法であって、
前記第1再結合領域を第1イオン注入を通して形成し、
前記第7半導体層を第2イオン注入を通して形成し、
前記第1イオン注入と前記第2イオン注入で同一のマスクを用いる、
半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項10から22のいずれかに記載の半導体装置を製造する方法である半導体装置の製造方法であって、
前記第1結晶欠陥領域を第1イオン注入を通して形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第7半導体層を第2イオン注入を通して形成し、
前記第1イオン注入と前記第2イオン注入で同一のマスクを用いる、
半導体装置の製造方法。
【請求項27】
請求項25または26に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1イオン注入でAr(アルゴン)のイオン注入を行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項28】
請求項25または26に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1イオン注入でN(窒素)のイオン注入を行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項29】
請求項25または26に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1イオン注入でHe(ヘリウム)のイオン注入を行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項30】
請求項25または26に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1イオン注入でH(水素)のイオン注入を行う、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にパワーデバイスには、耐圧保持能力、動作時に素子が破壊に至らないための安全動作領域の保証など様々な要求があるが、その中の大きな一つに低損失化がある。パワーデバイスの低損失化は装置の小型化、軽量化などの効果があり、広い意味ではエネルギー消費低減による地球環境への配慮へつながる効果がある。さらに、これらの特性を、出来る限り低コストで実現することが要求されている。
【0003】
上記の問題を解決する一つの手段としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードの特性を一つの構造で形成する逆導通IGBT(RC-IGBT、Reverse-Conducting IGBT)が提案されている。
【0004】
この逆導通IGBTには幾つかの技術的課題があり、その一つはダイオード動作時のリカバリ損失が大きい点である。特許文献1では、ダイオード動作時のリカバリ損失を改善するために、ダイオード領域のp+型コンタクト層の面積比率を少なくする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ダイオード領域のp+型コンタクト層の面積比率を少なくしてダイオード動作時のリカバリ損失を低減させる手段を取ると、リカバリ損失が低減する代わりに順方向電圧降下が悪化するというトレードオフがある。逆導通IGBTの性能改善においては、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係の改善が重要である。
【0007】
本開示はこのような問題を改善するためのものであり、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係が改善された逆導通IGBTを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の半導体装置は、トランジスタとダイオードとが共通の半導体基体に形成された半導体装置であって、半導体基体は、一方主面および他方主面としての第1主面および第2主面と、トランジスタが形成されたトランジスタ領域と、ダイオードが形成されたダイオード領域と、を有し、トランジスタ領域は、半導体基体の第2主面側に設けられた第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、第2半導体層よりも半導体基体の第1主面側に設けられた第1導電型の第3半導体層と、第3半導体層上に設けられた第2導電型の第4半導体層と、第4半導体層に電気的に接続された第2電極と、第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、を備え、ダイオード領域は、半導体基体の第2主面側に設けられた第2導電型の第5半導体層と、第5半導体層上に設けられた第2半導体層と、第2半導体層よりも半導体基体の第1主面側に設けられた第1導電型の第6半導体層と、第6半導体層上に設けられ第6半導体層よりも第1導電型の不純物濃度が高い第1導電型の第7半導体層と、第7半導体層に電気的に接続された第2電極と、第5半導体層に電気的に接続された第1電極と、を備え、第1再結合領域が、第6半導体層のうち、第7半導体層の第2主面側であり第7半導体層と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている、半導体装置、である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の半導体装置では、第1再結合領域が、第6半導体層のうち、第7半導体層の第2主面側であり第7半導体層と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている。これにより、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1のストライプ型の半導体装置の全体平面図である。
【
図2】実施の形態1のアイランド型の半導体装置の全体平面図である。
【
図3】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の平面図である。
【
図4】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図5】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図6】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域と外周領域の境界部分の断面図である。
【
図7】実施の形態1の半導体装置のダイオード領域と外周領域の境界部分の断面図である。
【
図8】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図9】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図10】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図11】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図12】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図13】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図14】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図15】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図16】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図17】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図18】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図19】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図20】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図21】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図22】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図23】実施の形態1の半導体装置の欠陥領域の面積比率とリカバリ電流ピーク値の関係を説明する図である。
【
図24】実施の形態2の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図25】実施の形態2の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図26】実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図27】実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図28】実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図29】実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図30】実施の形態3の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図31】実施の形態3の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図32】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図33】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図34】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図35】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図36】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図37】実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図38】実施の形態4の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図39】実施の形態4の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図40】実施の形態4の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図41】実施の形態4の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図42】実施の形態4の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図43】実施の形態4の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図44】実施の形態5の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図45】実施の形態5の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図46】実施の形態5の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図47】実施の形態5の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図48】実施の形態5の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図49】実施の形態5の半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【
図50】実施の形態6の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の平面図である。
【
図51】実施の形態6の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図52】実施の形態6の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図53】実施の形態7の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の平面図である。
【
図54】実施の形態7の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図55】実施の形態7の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図56】実施の形態8の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の平面図である。
【
図57】実施の形態8の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図58】実施の形態8の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図59】実施の形態9の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図60】実施の形態9の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図61】実施の形態10の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図62】実施の形態10の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図63】実施の形態11の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図64】実施の形態11の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図65】実施の形態12の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の平面図である。
【
図66】実施の形態12の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図67】実施の形態12の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図68】実施の形態13の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【
図69】比較例の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<はじめに>
以下の説明において、n型およびp型は半導体の導電型を示し、本開示においては、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明するが、第1導電型をn型、第2導電型をp型としてもよい。また、n-型は不純物濃度がn型よりも低濃度であることを示し、n+型は不純物濃度がn型よりも高濃度であることを示す。同様に、p-型は不純物濃度がp型よりも低濃度であることを示し、p+型は不純物濃度がp型よりも高濃度であることを示す。
【0012】
また、図面は模式的に示されたものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されたものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称および機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0013】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「おもて」および「裏」などの特定の位置および方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0014】
<比較例>
実施の形態の説明の前に、比較例を
図69に示す。本比較例の半導体装置1000は、実施の形態1で説明する
図1または
図2に示す半導体装置200または半導体装置201と比べ、
図4に示すp
+型コンタクト層6の配置が異なる。また、半導体装置1000は、半導体装置200または半導体装置201と比べ、欠陥領域15が設けられていない。半導体装置1000は、その他の点は半導体装置200または半導体装置201と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0015】
半導体装置1000の構成は、ダイオード領域102にp+型コンタクト層6を設けて順方向の電圧降下の悪化を抑えつつ、p+型コンタクト層6の面積比率を少なくすることでダイオード領域102のp型アノード層5とp+型コンタクト層6で構成されるアノード領域におけるp型不純物の実効濃度を下げてダイオードのリカバリ損失を抑制する事を目的にしているものである。
【0016】
しかし,p+型コンタクト層6の面積比率が高すぎると、ダイオードのリカバリ損失を十分に低減できない。p+型コンタクト層6の面積比率を低くする場合、面積比率が低くなるにつれ、エミッタ電極13とのオーミック抵抗が増大するため、順方向電圧降下(Vf)が大きくなる。このように、Vfとリカバリ損失との間にトレードオフが存在する。
【0017】
また、p+型コンタクト層6の面積比率を低くする場合でも、面積比率ゼロの状態よりリカバリ損失を低減することはできないためリカバリ損失を低減するには限界があり、それ以上のリカバリ損失改善には別の手法を用いる必要がある。
【0018】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図1は、実施の形態1に係るRC-IGBTである半導体装置200を示す平面図である。また、
図2は、実施の形態1の他の構成のRC-IGBTである半導体装置201を示す平面図である。
図1に示す半導体装置200は、IGBT領域101とダイオード領域102とがストライプ状に並んで設けられたものであり、単に「ストライプ型」と呼んでよい。
図2に示す半導体装置201は、ダイオード領域102が縦方向と横方向に複数設けられ、ダイオード領域102の周囲にIGBT領域101が設けられたものであり、単に「アイランド型」と呼んでよい。ストライプ型およびアイランド型の詳細な平面構造については後述する。
【0019】
図1に示すように、ストライプ型の半導体装置200は、1つの半導体装置内にIGBT領域101とダイオード領域102とを備えている。IGBT領域101およびダイオード領域102は、半導体装置200の一端側から他端側に延伸し、IGBT領域101およびダイオード領域102の延伸方向と直交する方向に交互にストライプ状に設けられている。
図1では、IGBT領域101が3個、ダイオード領域102が2個で、全てのダイオード領域102がIGBT領域101で挟まれた構成が示されているが、IGBT領域101とダイオード領域102の数はこれに限るものでなく、IGBT領域101の数は3個以上でも3個以下でもよく、ダイオード領域102の数も2個以上でも2個以下でもよい。また、
図1のIGBT領域101とダイオード領域102の場所を入れ替えた構成であってもよく、全てのIGBT領域101がダイオード領域102に挟まれた構成であってもよい。また、IGBT領域101とダイオード領域102とがそれぞれ1つずつ互いに隣り合って設けられた構成であってもよい。
【0020】
図2に示すように、アイランド型の半導体装置201は、1つの半導体装置内にIGBT領域101とダイオード領域102とを備えている。ダイオード領域102は、半導体装置201内に平面視で縦方向および横方向にそれぞれ複数並んで配置されており、ダイオード領域102は周囲をIGBT領域101に取り囲まれている。つまり、IGBT領域101内に複数のダイオード領域102がアイランド状に設けられている。
図2では、ダイオード領域102は紙面左右方向に4列、紙面上下方向に2行のマトリクス状に設けられた構成で示されているが、ダイオード領域102の個数および配置はこれに限るものではなく、IGBT領域101内に1つまたは複数のダイオード領域102が点在して設けられ、それぞれのダイオード領域102が周囲をIGBT領域101に囲まれた構成であればよい。
【0021】
図1または
図2に示すように、半導体装置200または半導体装置201において、ゲートパッド領域104がIGBT領域101に隣接して設けられている。ゲートパッド領域104はゲートパッド(以下、ゲートパッド104aとする)が設けられている領域である。ゲートパッド104aは、半導体装置200または半導体装置201をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加される制御パッドである。ゲートパッド104aは後述するIGBT領域101の埋め込みゲート電極8に電気的に接続される。また、半導体装置200または半導体装置201には、ゲートパッド104aの他に、半導体装置200または半導体装置201のセル領域に流れる電流を検知するための制御パッドである電流センスパッド、後述するIGBT領域101のp型チャネルドープ層2に電気的に接続され半導体装置200または半導体装置201をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加されるケルビンエミッタパッド、半導体装置200または半導体装置201の温度を測定するための温度センスダイオードパッド、等が設けられていてもよい。
【0022】
半導体装置200または半導体装置201において、IGBT領域101およびダイオード領域102を合わせてセル領域と呼ぶ。セル領域およびゲートパッド領域104を合わせた領域の周囲には半導体装置200または半導体装置201の耐圧保持のために外周領域103が設けられている。外周領域103には、周知の耐圧保持構造を適宜選択して設けることができる。耐圧保持構造は、例えば、半導体装置200または半導体装置201のおもて面側である第1主面側に、p型半導体のp型終端ウェル層でセル領域を囲ったFLR(Field Limitting Ring)や濃度勾配をつけたp型ウェル層でセル領域を囲ったVLD(Variation of Lateral Doping)を設けて構成してよく、FLRに用いられるリング状のp型終端ウェル層の数やVLDに用いられる濃度分布は、半導体装置200または半導体装置201の耐圧設計によって適宜選択してよい。半導体装置200または半導体装置201の第1主面側は
図4,5の矢印Cで示される方向であり、第2主面側は
図4,5の矢印Dで示される方向である。
【0023】
<A-1-1.部分平面構成>
図3は、RC-IGBTである本実施の形態の半導体装置のIGBT領域101およびダイオード領域102の構成を示す拡大平面図であり、
図1に示した半導体装置200または
図2に示した半導体装置201における破線82で囲った領域を拡大して示した図である。また、
図3は、半導体基体120の第1主面における構成を示す。
【0024】
図3に示すように、IGBT領域101およびダイオード領域102には、トレンチゲート50がストライプ状に設けられている。半導体装置200では、トレンチゲート50はIGBT領域101およびダイオード領域102の長手方向に延伸しておりIGBT領域101およびダイオード領域102の長手方向がトレンチゲート50の長手方向となっている。一方、半導体装置201では、IGBT領域101およびダイオード領域102に長手方向と短手方向の区別が特段になく、
図2において紙面左右方向をトレンチゲート50の長手方向としてもよく、紙面上下方向をトレンチゲート50の長手方向としてもよいが、以下ではトレンチゲート50は線E-Eと垂直な方向に延伸しているとする。
【0025】
トレンチゲート50は、半導体基板に形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜7を介して埋め込みゲート電極8が設けられて構成されている。トレンチゲート50の埋め込みゲート電極8は、ゲートパッド104aに電気的に接続される。
【0026】
IGBT領域101においては、隣接する2つのトレンチゲート50の間の領域に、n+型エミッタ層3、p+型コンタクト層4が設けられる。n+型エミッタ層3およびp+型コンタクト層4はそれぞれトレンチゲート50の延伸方向と同じ方向に延伸して設けられる。n+型エミッタ層3はトレンチゲート50のゲート絶縁膜7と接して、p+型コンタクト層4はトレンチゲート50のゲート絶縁膜7と離間して設けられる。n+型エミッタ層3は、n型不純物として例えばAs(ヒ素)またはP(リン)等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+17/cm3~1.0E+20/cm3である。p+型コンタクト層4は、p型不純物として例えばB(ボロン)またはAl(アルミ)等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は5.0E+18/cm3~1.0E+20/cm3である。
【0027】
ダイオード領域102においては、隣接する2つのトレンチゲート50の間の領域に、p型アノード層5およびp+型コンタクト層6が設けられている。p型アノード層5とp+型コンタクト層6とはトレンチゲート50の長手方向に交互に設けられている。p型アノード層5は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~5.0E+18/cm3である。p+型コンタクト層6は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は5.0E+18/cm3~1.0E+20/cm3である。
【0028】
<A-1-2.断面構成>
図4は、半導体装置200または半導体装置201の、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図5は、半導体装置200または半導体装置201の、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0029】
半導体装置200または半導体装置201は、n-型ドリフト層1(第2半導体層)を有している。n-型ドリフト層1は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~1.0E+15/cm3である。ダイオード領域102のn-型ドリフト層1とIGBT領域101のn-型ドリフト層1とは連続して一体的に構成されたものであり、同一の半導体基板によって構成されている。
【0030】
半導体基体120、つまり、
図4および
図5のIGBT領域101においては、n
+型エミッタ層3(第4半導体層)およびp
+型コンタクト層4(第9半導体層)からp型コレクタ層11(第1半導体層)までの範囲、
図4のダイオード領域102においては、p
+型コンタクト層6(第7半導体層)からn
+型カソード層12(第5半導体層)までの範囲、
図5のダイオード領域102においては、p型アノード層5(第6半導体層)からn
+型カソード層12までの範囲、のp型あるいはn型の半導体層は、半導体基板に不純物イオンを導入し、その後熱処理などによって半導体基板内に拡散させることで形成される。
【0031】
図4においてn
+型エミッタ層3およびp
+型コンタクト層4およびp+型コンタクト層6のエミッタ電極13側の端を半導体基体120の第1主面、p型コレクタ層11およびn+型カソード層12のコレクタ電極14側の端を半導体基体120の第2主面と呼ぶ。
図5においてn
+型エミッタ層3およびp
+型コンタクト層4およびp型アノード層5のエミッタ電極13側の端を半導体基体120の第1主面、p型コレクタ層11およびn+型カソード層12のコレクタ電極14側の端を半導体基体120の第2主面と呼ぶ。半導体基体120の第1主面は、半導体装置200または半導体装置201のおもて面側の主面であり、半導体基体120の第2主面は、半導体装置200または半導体装置201の裏面側の主面である。製造方法の説明または製造方法的観点からの説明においては、半導体基体120を形成する際に用いられる半導体基板についても、半導体基体120の第1主面側に対応する半導体基板の主面を半導体基板の第1主面、半導体基体120の第2主面側に対応する半導体基板の主面を半導体基板の第2主面と呼ぶ。半導体装置200または半導体装置201は、IGBT領域101およびダイオード領域102において、第1主面と第1主面に対向する第2主面との間にn
-型ドリフト層1を有している。
【0032】
<A-1-2-1.IGBT領域の断面構成>
図4および
図5に示されるように、IGBT領域101において、n
-型ドリフト層1の第1主面側には、p型チャネルドープ層2(第3半導体層)が設けられている。p型チャネルドープ層2は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm
3~5.0E+18/cm
3である。p型チャネルドープ層2はトレンチゲート50のゲート絶縁膜7に接している。p型チャネルドープ層2の第1主面側には、トレンチゲート50のゲート絶縁膜7に接してn
+型エミッタ層3が設けられ、残りの領域にp
+型コンタクト層4が設けられている。n
+型エミッタ層3およびp
+型コンタクト層4は半導体基体120の第1主面の一部を構成している。
【0033】
図4および
図5に示されるように、半導体装置200または半導体装置201のIGBT領域101において、n
-型ドリフト層1の第2主面側に、n
-型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型バッファ層10が設けられている。n型バッファ層10は、半導体装置200または半導体装置201がオフ状態のときにp型チャネルドープ層2から第2主面側に伸びる空乏層がパンチスルーするのを抑制するために設けられる。n型バッファ層10は、例えば、リンあるいはプロトンを注入して形成してよく、リンおよびプロトンの両方を注入して形成してもよい。n型バッファ層10のn型不純物の濃度は1.0E+12/cm
3~1.0E+18/cm
3である。
【0034】
なお、半導体装置200または半導体装置201は、n型バッファ層10が設けられずに、
図4および
図5で示したn型バッファ層10の領域にもn
-型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。n型バッファ層10とn
-型ドリフト層1とを合わせてドリフト層(第2半導体層)と呼んでもよい。
【0035】
半導体装置200または半導体装置201は、IGBT領域101において、n型バッファ層10の第2主面側に、p型コレクタ層11が設けられている。すなわち、n
-型ドリフト層1と第2主面との間に、p型コレクタ層11が設けられている。p型コレクタ層11は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+16/cm
3~1.0E+20/cm
3である。p型コレクタ層11は半導体基体120の第2主面の一部を構成している。p型コレクタ層11は、IGBT領域101だけでなく、外周領域103にも設けられており、p型コレクタ層11のうち外周領域103に設けられた部分はp型終端コレクタ層11a(
図6、
図7参照)を構成している。また、p型コレクタ層11は、IGBT領域101からダイオード領域102に一部がはみ出して設けられてもよい。
【0036】
図4および
図5に示されるように、半導体装置200または半導体装置201は、IGBT領域101では、半導体基体120の第1主面からp型チャネルドープ層2を貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。トレンチ内にゲート絶縁膜7を介して埋め込みゲート電極8が設けられることでトレンチゲート50が構成されている。埋め込みゲート電極8は、ゲート絶縁膜7を介してn
-型ドリフト層1に対向している。IGBT領域101のトレンチゲート50のゲート絶縁膜7は、p型チャネルドープ層2およびn
+型エミッタ層3に接している。埋め込みゲート電極8にゲート駆動電圧が印加されると、トレンチゲート50のゲート絶縁膜7に接するp型チャネルドープ層2にチャネルが形成される。
【0037】
図4および
図5に示すように、IGBT領域101のトレンチゲート50の埋め込みゲート電極8の上には層間絶縁膜9が設けられている。半導体基体120の第1主面の層間絶縁膜9が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜9の上にはエミッタ電極13が設けられている。エミッタ電極13は、IGBT領域101においてn
+型エミッタ層3およびp
+型コンタクト層4にオーミック接触し、n
+型エミッタ層3およびp
+型コンタクト層4と電気的に接続されている。エミッタ電極13は、例えば、アルミニウムシリコン合金(Al―Si系合金)などのアルミ合金で形成してもよく、アルミ合金で形成した電極上に、無電解めっき、あるいは電解めっきでめっき膜を形成した複数層の金属膜からなる電極であってもよい。無電解めっき、あるいは電解めっきで形成するめっき膜は、例えば、ニッケル(Ni)めっき膜であってよい。また、隣接する層間絶縁膜9間等の微細な領域であって、エミッタ電極13では良好な埋め込みが得られない領域がある場合には、エミッタ電極13よりも埋込性が良好なタングステンを微細な領域に配置して、タングステンの上にエミッタ電極13を設けてもよい。
【0038】
半導体基体120の第1主面の層間絶縁膜9が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜9の上にバリアメタルを形成し、当該バリアメタルの上にエミッタ電極13を設けてもよい(以下、当該バリアメタルをバリアメタル27とする)。バリアメタル27は、例えば、チタン(Ti)を含む導電体であってよく、例えば、窒化チタンであってよく、チタンとシリコン(Si)を合金化させたTiSiであってよい。また、バリアメタル27を形成する場合、バリアメタル27は、n+型エミッタ層3およびp+型コンタクト層4にオーミック接触し、n+型エミッタ層3およびp+型コンタクト層4と電気的に接続される。バリアメタル27とエミッタ電極13とを合わせてエミッタ電極と呼んでよい。また、n+型エミッタ層3などのn型の半導体層の上のみにバリアメタル27を設けてもよい。
【0039】
p型コレクタ層11の第2主面側には、コレクタ電極14が設けられる。コレクタ電極14は、エミッタ電極13と同様、アルミ合金やアルミ合金とめっき膜とで構成されていてもよい。また、コレクタ電極14はエミッタ電極13と異なる構成であってもよい。コレクタ電極14は、p型コレクタ層11にオーミック接触し、p型コレクタ層11と電気的に接続されている。
【0040】
<A-1-2-2.ダイオード領域の断面構成>
図4および
図5に示すように、ダイオード領域102においてもIGBT領域101と同様に、n
-型ドリフト層1の第2主面側にn型バッファ層10が設けられている。ダイオード領域102に設けられるn型バッファ層10は、IGBT領域101に設けられるn型バッファ層10と同一の構成である。また、IGBT領域101と同じく、n
-型ドリフト層1およびn型バッファ層10を合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0041】
ダイオード領域102において、n-型ドリフト層1の第1主面側には、p型アノード層5が設けられている。p型アノード層5は、n-型ドリフト層1と第1主面との間に設けられている。p型アノード層5は、IGBT領域101のp型チャネルドープ層2とp型不純物の濃度を同じ濃度にして、p型アノード層5とp型チャネルドープ層2とを同時に形成してもよい。また、p型アノード層5のp型不純物の濃度を、IGBT領域101のp型チャネルドープ層2のp型不純物の濃度よりも低くして、ダイオード動作時にn-型ドリフト層1に流入する正孔の量を減少させるように構成してもよい。ダイオード動作時にn-型ドリフト層1に流入する正孔の量を減少させることでダイオード動作時のリカバリ損失を低減することができる。
【0042】
図4に示される断面のダイオード領域102において、p型アノード層5の第1主面側には、p
+型コンタクト層6が設けられている。p
+型コンタクト層6のp型不純物の濃度は、IGBT領域101のp
+型コンタクト層4のp型不純物と同じ濃度としてよく、異なる濃度としてもよい。p
+型コンタクト層6は半導体基体120の第1主面の一部を構成している。なお、p
+型コンタクト層6は、p型アノード層5よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、アノード領域のうちp型不純物濃度が5.0E+18/cm
3以上の領域である。また、p型アノード層5はp型不純物濃度が5.0E+18/cm
3より小さい領域である。
【0043】
図4に示されるように、p型アノード層5に欠陥領域15(第1結晶欠陥領域)が形成されている。欠陥領域15は、p型アノード層5のうち、p
+型コンタクト層6の第2主面側でありp
+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている。欠陥領域15は、p型アノード層5のうちp
+型コンタクト層6の第2主面側の表面と接する領域に設けられてもよいし、p
+型コンタクト層6の第2主面側の表面であってp型アノード層5と接する表面を含み、p型アノード層5およびp
+型コンタクト層6にまたがるように、設けられていてもよい。欠陥領域15はp
+型コンタクト層6と離間して設けられてもよいが、p
+型コンタクト層6の第2主面側の表面と接する領域に、またはp
+型コンタクト層6にもまたがって設けられることで、n
-型ドリフト層1に流入する正孔の量がより効果的に抑制される。本実施の形態では、特に、欠陥領域15とp
+型コンタクト層6とが同じマスクを用いたイオン注入を通して形成され平面視で同じ領域に形成されている場合について説明する。ただし、欠陥領域15とp
+型コンタクト層6とが平面視で同じ領域に形成されているというのは、<A-2.製造方法>で後述するように同一のマスクを用いたイオン注入およびその後の熱処理により実現される程度に同じという意味であり、これらの処理により通常想定されるずれがある場合も、欠陥領域15とp
+型コンタクト層6とは平面視で同じ領域に形成されていると扱う。
【0044】
ダイオード領域102には、n型バッファ層10の第2主面側に、n
+型カソード層12が設けられている。n
+型カソード層12は、n
-型ドリフト層1と第2主面との間に設けられている。n
+型カソード層12は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+16/cm
3~1.0E+21/cm
3である。
図4、
図5で示したように、n
+型カソード層12は、ダイオード領域102の一部または全部に設けられる。n
+型カソード層12は半導体基体120の第2主面の一部を構成している。なお、図示していないが、上述のようにn
+型カソード層12を形成した領域に、さらにp型不純物を選択的に注入して、n
+型カソード層12を形成した領域の一部をp型半導体としてp型カソード層を設けてもよい。
【0045】
図4、
図5において、半導体装置200または半導体装置201のダイオード領域102には、半導体基体120の第1主面からp型アノード層5を貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。ダイオード領域102においてもIGBT領域101と同様、トレンチ内にゲート絶縁膜7を介して埋め込みゲート電極8が設けられることでトレンチゲート50が構成されている。ダイオード領域102の埋め込みゲート電極8はゲート絶縁膜7を介してn
-型ドリフト層1に対向している。
【0046】
図4に示すように、ダイオード領域102のトレンチゲート50の埋め込みゲート電極8の上には層間絶縁膜9が設けられている。半導体基体120の第1主面の層間絶縁膜9が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜9の上にはエミッタ電極13が設けられている。エミッタ電極13はp
+型コンタクト層6にオーミック接触し、p
+型コンタクト層6と電気的に接続されている。また、ダイオード領域102のトレンチゲート50の埋め込みゲート電極8とエミッタ電極13とは、
図4に示される断面とは別の断面において電気的に接続されている。ダイオード領域102に設けられるエミッタ電極13は、IGBT領域101に設けられたエミッタ電極13と連続して形成されている。
図4では、ダイオード領域102のトレンチゲート50の埋め込みゲート電極8の上にも層間絶縁膜9が設けられている図を示したが、ダイオード領域102のトレンチゲート50の埋め込みゲート電極8の上には層間絶縁膜9を設けなくてもよい。
【0047】
ダイオード領域102においても、IGBT領域101同様、半導体基体120の第1主面の層間絶縁膜9が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜9の上にバリアメタル27を形成し、バリアメタル27の上にエミッタ電極13を設けてもよい。ダイオード領域102にバリアメタル27を設ける場合、当該バリアメタル27は、IGBT領域101に設けてもよいとしたバリアメタル27と同一の構成であってよい。ダイオード領域102にバリアメタル27を設ける場合、バリアメタル27は、p+型コンタクト層6にオーミック接触し、p+型コンタクト層6と電気的に接続される。バリアメタル27とエミッタ電極13とを合わせてエミッタ電極と呼んでよい。
【0048】
n+型カソード層12の第2主面側には、コレクタ電極14が設けられる。エミッタ電極13と同様、ダイオード領域102のコレクタ電極14は、IGBT領域101に設けられたコレクタ電極14と連続して形成されている。コレクタ電極14は、n+型カソード層12にオーミック接触し、n+型カソード層12に電気的に接続されている。
【0049】
図5のダイオード領域102は、
図4のダイオード領域102と比べ、p
+型コンタクト層6が設けられておらず、p型アノード層5が半導体基体120の第1主面の一部を構成している点が異なる。つまり、
図4で示したp
+型コンタクト層6は、p型アノード層5の第1主面側に選択的に設けられている。その他の点は、
図5の断面は、
図4の断面と同様である。
【0050】
<A-1-3.外周領域の構造>
図6と
図7はRC-IGBTである本実施の形態の半導体装置の外周領域の構成を示す断面図である。
図6は、
図1または
図2における破線E-Eでの断面図であり、IGBT領域101から外周領域103にかけての断面図である。また、
図7は、
図1における破線F-Fでの断面図であり、ダイオード領域102から外周領域103にかけての断面図である。
【0051】
図6および
図7に示すように、半導体装置200または半導体装置201の外周領域103は、半導体基体120の第1主面と第2主面との間にn
-型ドリフト層1を有している。外周領域103の第1主面および第2主面は、それぞれIGBT領域101およびダイオード領域102の第1主面および第2主面と同一面である。また、外周領域103のn
-型ドリフト層1は、それぞれIGBT領域101およびダイオード領域102のn
-型ドリフト層1と同一構成であり連続して一体的に形成されている。
【0052】
n-型ドリフト層1の第1主面側、すなわち半導体基体120の第1主面とn-型ドリフト層1との間にp型終端ウェル層31が設けられている。p型終端ウェル層31は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+14/cm3~1.0E+19/cm3である。p型終端ウェル層31は、IGBT領域101およびダイオード領域102が含まれるセル領域を取り囲んで設けられている。p型終端ウェル層31は複数のリング状に設けられており、p型終端ウェル層31が設けられる数は、半導体装置200または半導体装置201の耐圧設計によって適宜選択される。また、p型終端ウェル層31のさらに外縁側にはn+型チャネルストッパ層32が設けられており、n+型チャネルストッパ層32はp型終端ウェル層31を取り囲んでいる。
【0053】
n
-型ドリフト層1と半導体基体120の第2主面との間には、p型終端コレクタ層11aが設けられている。p型終端コレクタ層11aは、セル領域に設けられるp型コレクタ層11と連続して一体的に形成されている。従って、p型終端コレクタ層11aを含めてp型コレクタ層11と呼んでもよい。また、
図1に示した半導体装置200のようにダイオード領域102が外周領域103と隣接して設けられる構成では、
図7に示すように、p型終端コレクタ層11aは、ダイオード領域102側の端部が距離U2だけダイオード領域102にはみ出して設けられている。このように、p型終端コレクタ層11aをダイオード領域102にはみ出して設けることにより、ダイオード領域102のn
+型カソード層12とp型終端ウェル層31との距離を大きくすることができ、p型終端ウェル層31がダイオードのアノードとして動作するのを抑制することができる。距離U2は、例えば100μmであってよい。
【0054】
半導体基体120の第2主面上にはコレクタ電極14が設けられている。コレクタ電極14は、IGBT領域101およびダイオード領域102を含むセル領域から外周領域103まで連続して一体的に形成されている。一方、外周領域103の半導体基体120の第1主面上にはセル領域から連続しているエミッタ電極13と、エミッタ電極13とは分離された終端電極13aとが設けられる。
【0055】
エミッタ電極13と終端電極13aとは、半絶縁性膜33を介して電気的に接続されている。半絶縁性膜33は、例えば、sinSiN(semi-insulating Silicon Nitride:半絶縁性シリコン窒化膜)であってよい。終端電極13aとp型終端ウェル層31およびn+型チャネルストッパ層32とは、外周領域103の第1主面上に設けられた層間絶縁膜9に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。また、外周領域103には、エミッタ電極13、終端電極13aおよび半絶縁性膜33を覆って終端保護膜34が設けられている。終端保護膜34は、例えば、ポリイミドで形成してよい。
【0056】
<A-1-4.構成のまとめ>
半導体装置200または半導体装置201は、IGBTとダイオードとが共通の半導体基体120に形成された半導体装置である。半導体基体120は、一方主面および他方主面としての第1主面および第2主面と、IGBTが形成されたIGBT領域101と、ダイオードが形成されたダイオード領域102と、を有する。IGBT領域101は、半導体基体120の第2主面側に設けられたp型コレクタ層11と、p型コレクタ層11上に設けられたn-型ドリフト層1と、n-型ドリフト層1よりも半導体基体120の第1主面側に設けられたp型チャネルドープ層2と、p型チャネルドープ層2上に設けられたn+型エミッタ層3と、n+型エミッタ層3に電気的に接続されたエミッタ電極13と、p型コレクタ層11に電気的に接続されたコレクタ電極14と、を備える。ダイオード領域102は、半導体基体120の第2主面側に設けられたn+型カソード層12と、n+型カソード層12上に設けられたn-型ドリフト層と、n-型ドリフト層よりも半導体基体120の第1主面側に設けられたp型アノード層5と、p型アノード層5上に設けられp型アノード層5よりもp型の不純物濃度が高いp+型コンタクト層6と、p+型コンタクト層6に電気的に接続されたエミッタ電極13と、n+型カソード層12に電気的に接続されたコレクタ電極14と、を備える。また、欠陥領域15が、p型アノード層5のうち、p+型コンタクト層6の第2主面側でありp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられている。
【0057】
半導体装置200または半導体装置201において、IGBT領域101では、n-型ドリフト層1、p型チャネルドープ層2、n+型エミッタ層3とゲート絶縁膜7、埋め込みゲート電極8で形成されるnチャネルMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)構造が形成されている。さらに、当該MOSFETにp型コレクタ層11を含めてIGBT構造が形成されている。
【0058】
半導体装置200または半導体装置201において、ダイオード領域102では、p型アノード層5とp+型コンタクト層6、n-型ドリフト層1およびn+型カソード層12でダイオード構造が形成されている。
【0059】
また、半導体装置200または半導体装置201は以下の特徴を有する。
【0060】
第1の特徴は、欠陥領域15は、ダイオード領域102に形成されたp型アノード層5の領域のうちp+型コンタクト層6の第2主面側でありp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に設けられていることである。さらに、欠陥領域15とp+型コンタクト層6とは平面視で同じ領域に形成されている。欠陥領域15の存在は、加速した電子を試料に照射した際に生じる発光であるカソードルミネセンスから物性を評価するカソードルミネセンス法により確認することができる。
【0061】
第2の特徴は、欠陥領域15はAr(アルゴン)、N(窒素)、H(水素)、He(ヘリウム)のいずれかの軽イオンを含み、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかのイオン注入で形成された結晶欠陥領域であることである。
【0062】
第3の特徴は、欠陥領域15はp+型コンタクト層6を表面に選択的に形成する工程で、同じマスクを用いて形成されることである。
【0063】
第4の特徴は、欠陥領域15は、p+型コンタクト層6またはp型アノード層5の中のp型の不純物濃度が1.0E+16/cm3以上の領域に形成されていることである。
【0064】
第5の特徴は、第1主面において、p型アノード層5とp+型コンタクト層6はトレンチゲート50の長手方向に交互に形成されており、p型アノード層5とp+型コンタクト層6を合わせた領域の平面視での面積に対する、p+型コンタクト層6の平面視での面積(つまりは、欠陥領域15の面積)の割合が、20%以上に設定されていることである。
【0065】
第6の特徴は、欠陥領域15は、少なくとも、ダイオード領域102のうちIGBT領域101に接する領域を含むように形成されていることである。例えば、欠陥領域15は、少なくとも、ダイオード領域102のうちIGBT領域101からの平面視での距離が半導体基体の厚さよりも小さい領域に、形成されている。
【0066】
<A-2.製造方法>
半導体装置200または半導体装置201の製造方法の一例について説明する。以下では
図3に示されたA-A線における断面(
図4)を想定して説明する。
図3に示されたB-B線における断面(
図5)の構造も、
図15から
図17に至る工程で当該断面に欠陥領域15とp
+型コンタクト層6が形成されないことを除けば、
図3に示されたA-A線における断面と同様に形成される。
【0067】
まず、
図8に示すようにn
-型ドリフト層1を構成する半導体基板を準備する。半導体基板がシリコン基板である場合を想定して説明するが、SiC基板等であってもよい。半導体基板には、例えば、FZ(Floating Zone)法で作製された、いわゆるFZウエハや、MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法で作製された、いわゆるMCZウエハ、を用いてよく、半導体基板はn型不純物を含むn型ウエハであってよい。半導体基板に含まれるn型不純物の濃度は、作製される半導体装置の耐圧によって適宜選択され、例えば、耐圧が1200Vの半導体装置では、半導体基板を構成するn
-型ドリフト層1の比抵抗が40~120Ω・cm程度となるようにn型不純物の濃度が調整される。
図8に示すように、半導体基板を準備する工程では、半導体基板の全体がn
-型ドリフト層1となっているが、このような半導体基板の第1主面側または第2主面側から、p型あるいはn型の不純物イオンを注入し、その後熱処理などによって半導体基板内に拡散させることで、p型あるいはn型の半導体層を形成し、半導体装置200または半導体装置201は製造される。
【0068】
図8に示すように、n
-型ドリフト層1を構成する半導体基板は、IGBT領域101およびダイオード領域102になる領域を備えている。また、図示しないがIGBT領域101およびダイオード領域102になる領域の周囲には外周領域103となる領域を備えている。以下では、半導体装置200または半導体装置201のIGBT領域101およびダイオード領域102の構成の製造方法について主として説明するが、半導体装置200または半導体装置201の外周領域103については周知の製造方法により作製してよい。例えば、外周領域103に耐圧保持構造としてp型終端ウェル層31を有するFLRを形成する場合、半導体装置200または半導体装置201のIGBT領域101およびダイオード領域102を加工する前にp型不純物イオンを注入して形成してもよく、半導体装置200または半導体装置201のIGBT領域101あるいはダイオード領域102にp型不純物をイオン注入する際に同時にp型不純物イオンを注入して形成してもよい。
【0069】
次に、
図9に示すように、半導体基板の第1主面側からボロンなどのp型不純物を注入してp型チャネルドープ層2およびp型アノード層5を形成する。p型チャネルドープ層2およびp型アノード層5は、半導体基板内に不純物イオンを注入した後、熱処理により不純物イオンを拡散させることで形成される。n型不純物およびp型不純物は、半導体基板の第1主面上にマスク処理を施した後イオン注入されるため、半導体基板の第1主面側に選択的に形成される。p型チャネルドープ層2およびp型アノード層5は、IGBT領域101およびダイオード領域102に形成され、外周領域103でp型終端ウェル層31に接続される。なお、マスク処理とは、半導体基板上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いてレジストの所定の領域に開口を形成し、開口を介して半導体基板の所定の領域にイオン注入を施したり、エッチングを施したりするために、半導体基板上にマスクを形成する処理を言う。
【0070】
p型チャネルドープ層2およびp型アノード層5は、同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型チャネルドープ層2とp型アノード層5の深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成となる。また、マスク処理によりp型チャネルドープ層2とp型アノード層5とに別々にp型不純物をイオン注入することで、p型チャネルドープ層2とp型アノード層5の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。
【0071】
また、別の断面において形成されるp型終端ウェル層31は、p型アノード層5と同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型終端ウェル層31とp型アノード層5との深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成とすることが可能である。また、p型終端ウェル層31とp型アノード層5とを同時にp型不純物をイオン注入して形成して、p型終端ウェル層31とp型アノード層5とのp型不純物濃度を異なる濃度とすることも可能である。この場合、いずれか一方または双方のマスクをメッシュ状のマスクとして、開口率を変更すれば良い。
【0072】
また、マスク処理によりp型終端ウェル層31とp型アノード層5とに別々にp型不純物をイオン注入することで、p型終端ウェル層31およびp型アノード層5の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。
【0073】
p型終端ウェル層31、p型チャネルドープ層2、およびp型アノード層5に同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。
【0074】
次に、
図10に示すように、マスク処理によりIGBT領域101のp型チャネルドープ層2の第1主面側に選択的にn型不純物を注入してn
+型エミッタ層3を形成する。注入するn型不純物は、例えば、ヒ素またはリンであってよい。
【0075】
次に、
図11に示すように、半導体基板の第1主面側からn
+型エミッタ層3およびp型チャネルドープ層2とp型アノード層5を貫通し、n
-型ドリフト層1に達するトレンチ51を形成する。IGBT領域101において、n
+型エミッタ層3を貫通するトレンチ51は、側壁がn
+型エミッタ層3の一部を構成する。トレンチ51は、半導体基板上にSiO
2などの酸化膜を堆積させた後、マスク処理によってトレンチ51を形成する部分の酸化膜に開口を形成し、開口を形成した酸化膜をマスクとして半導体基板をエッチングすることで形成してよい。
図11では,IGBT領域101とダイオード領域102とでトレンチ51のピッチを同じにして形成しているが、IGBT領域101とダイオード領域102とでトレンチ51のピッチを異ならせてもよい。トレンチ51のピッチおよび平面視におけるパターンは、マスク処理のマスクパターンにより適宜変更することができる。
【0076】
次に、
図12に示すように、酸素を含む雰囲気中で半導体基板を加熱してトレンチ51の内壁および半導体基板の第1主面に酸化膜を形成する。ここでトレンチ51の内壁に形成された酸化膜がトレンチゲート50のゲート絶縁膜7であり、半導体基板の第1主面に形成された酸化膜が酸化膜90である。酸化膜90は後の工程で除去される。
【0077】
次に、
図13に示すように、内壁にゲート絶縁膜7を形成したトレンチ51内に、CVD(chemical vapor deposition)などによってn型またはp型の不純物をドープしたポリシリコンを堆積させて、埋め込みゲート電極8を形成する。
【0078】
次に、半導体基板の第1主面に形成された酸化膜90を除去する。
【0079】
次に、
図14に示すように、当該IGBT領域101に選択的に不純物イオンを注入し、熱処理により不純物イオンを拡散させることで、p
+型コンタクト層4を形成する。不純物イオンを注入する際は、マスク処理によりp
+型コンタクト層4に対応する領域を除いてマスクを形成しておく。
【0080】
次に、p+型コンタクト層4を形成する際に用いたマスクを取り除いた後、マスク処理によりダイオード領域102のp+型コンタクト層6に対応する領域以外を覆うフォトレジスト16を形成する。
【0081】
次に、
図15に示すように、フォトレジスト16をマスクとして用いてイオン注入を行い、ダイオード領域102のp
+型コンタクト層6に対応する領域にp型不純物を導入し、p型不純物導入領域17を形成する。
【0082】
次に、
図16に示すように、p型不純物導入領域17を形成する際に用いたのと同一のフォトレジスト16を用いて、p型不純物導入領域17より深い位置に、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかの元素を導入し、結晶欠陥導入領域18を形成する。窒素は、SiC等の素材ではn型の半導体層を形成するのに用いられるが、ここで想定しているシリコン素材の半導体基板に対しては結晶欠陥層を形成するのに用いられる。
【0083】
次に、
図17に示すように、フォトレジスト16を除去し、熱処理により、ダイオード領域102のアノード領域の構造を形成することができる。
【0084】
本実施の形態では、欠陥領域15を形成するために、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかを用いている。これらの元素は一般的なイオン注入機で注入が可能であり、これらの元素を用いることで安価に欠陥領域15を形成することができる。
【0085】
次に、
図18に示すように、トレンチゲート50の埋め込みゲート電極8上に層間絶縁膜9を形成する。層間絶縁膜9は、例えば、SiO
2であってよい。また、層間絶縁膜9は、埋め込みゲート電極8以外の上も含め半導体基板上に堆積された後、マスク処理により不要な部分が取り除かれコンタクトホールが形成される。
【0086】
次に、
図19に示すように、半導体基板の第1主面および層間絶縁膜9上にエミッタ電極13を形成する。半導体基板の第1主面および層間絶縁膜9上にバリアメタルを形成し、当該バリアメタルの上にエミッタ電極13を形成してもよい。当該バリアメタルは、窒化チタンをPDV(physical vapor deposition)やCVDによって製膜することで形成される。
【0087】
エミッタ電極13は、例えば、スパッタリングや蒸着などのPVDによってアルミシリコン合金(Al-Si系合金)を、半導体基板の第1主面および層間絶縁膜9上に堆積させて形成してよい。また、形成したアルミシリコン合金の上に、無電解めっきや電解めっきでニッケル合金(Ni合金)をさらに形成してエミッタ電極13としてもよい。エミッタ電極13をめっきで形成すると、エミッタ電極13として厚い金属膜を容易に形成することができるので、エミッタ電極13の熱容量を増加させて耐熱性を向上させることができる。なお、PVDでアルミシリコン合金からなるエミッタ電極13を形成した後に、めっき処理でニッケル合金をさらに形成する場合、ニッケル合金を形成するためのめっき処理は半導体基板の第2主面側の加工を行った後に実施してもよい。
【0088】
次に、
図20に示すように半導体基板の第2主面側を研削し、半導体基板を設計した厚さに薄板化する。
図20では、半導体基板を構成するn
-型ドリフト層1が薄板化されている。研削後の半導体基板の厚さは、例えば、80μm~200μmであってよい。
【0089】
次に、
図21に示すように、半導体基板の第2主面側からn型不純物を注入しn型バッファ層10を形成する。さらに、半導体基板の第2主面側からp型不純物を注入しp型コレクタ層11を形成する。n型バッファ層10は、IGBT領域101、ダイオード領域102および外周領域103に形成してよく、IGBT領域101またはダイオード領域102のみに形成してもよい。
【0090】
n型バッファ層10は、例えば、リンイオンを注入して形成してよい。また、プロトンを注入して形成してよい。さらに、プロトンとリンの両方を注入して形成してよい。プロトンは比較的低い加速エネルギーで半導体基板の第2主面から深い位置にまで注入することができる。また、加速エネルギーを変えることでプロトンを注入する深さを比較的容易に変更することができる。このため、n型バッファ層10をプロトンで形成する際に、加速エネルギーを変更しながら複数回注入すると、リンで形成するよりも半導体基板の厚さ方向に幅が広いn型バッファ層10を形成することができる。
【0091】
また、リンはプロトンに比較してn型不純物としての活性化率を高くすることができるので、リンでn型バッファ層10を形成することにより、薄板化した半導体基板であってもより確実に空乏層がパンチスルーするのを抑制することができる。半導体基板をより一層薄板化するには、プロトンとリンの両方を注入してn型バッファ層10を形成するのが好ましく、この際には、プロトンはリンよりも第2主面から深い位置に注入される。
【0092】
p型コレクタ層11は、例えば、ボロンを注入して形成してよい。p型コレクタ層11は、外周領域103にも形成され、外周領域103のp型コレクタ層11がp型終端コレクタ層11aとなる。半導体基板の第2主面側からイオン注入した後に、第2主面にレーザーを照射してレーザーアニールすることで、注入したボロンが活性化しp型コレクタ層11が形成される。この際、半導体基板の第2主面から比較的浅い位置に注入されたn型バッファ層10のためのリンも同時に活性化される。一方、プロトンは380℃~420℃といった比較的低いアニール温度で活性化されるので、プロトンを注入した後はプロトンの活性化のための工程以外で、半導体基板全体が380℃~420℃より高い温度にならないように留意する必要がある。レーザーアニールは、半導体基板の第2主面近傍のみを高温にできるため、プロトンを注入した後であってもn型不純物やp型不純物の活性化に用いることができる。
【0093】
次に、
図22に示すように、ダイオード領域102にn
+型カソード層12を形成する。n
+型カソード層12は、例えば、リンを注入して形成してよい。n
+型カソード層12を形成するためのn型不純物の注入量は、p型コレクタ層11を形成するためのp型不純物の注入量より多い。
図22では、第2主面からのp型コレクタ層11とn
+型カソード層12の深さを同じに示しているが、n
+型カソード層12の深さはp型コレクタ層11の深さ以上である。n
+型カソード層12が形成される領域は、p型不純物が注入された領域にn型不純物を注入してn型半導体にする必要があるので、n
+型カソード層12が形成される領域の全てで、注入されたn型不純物の濃度をp型不純物の濃度より高くする。
【0094】
次に、
図4に示すように、半導体基板の第2主面上にコレクタ電極14を形成する。コレクタ電極14は、第2主面のIGBT領域101、ダイオード領域102および外周領域103の全面に亘って形成される。また、コレクタ電極14は、半導体基板であるn型ウエハの第2主面の全面に亘って形成してよい。コレクタ電極14は、スパッタリングや蒸着などのPVDによって、アルミシリコン合金(Ai-Si系合金)やチタン(Ti)などを堆積させて形成してよく、アルミシリコン合金、チタン、ニッケルあるいは金など複数の金属を積層させて形成してもよい。さらには、PVDで形成した金属膜上に無電解めっきや電解めっきでさらに金属膜を形成してコレクタ電極14としてもよい。
【0095】
以上のような工程により半導体装置200または半導体装置201は作製される。半導体装置200または半導体装置201は、1枚のn型ウエハにマトリクス状に複数作製されるので、レーザーダイシングやブレードダイシングにより個々の半導体装置200または半導体装置201に切り分けることで半導体装置200または半導体装置201は完成する。
【0096】
<A-3.動作>
本実施の形態の半導体装置200または半導体装置201ではp型アノード層5とp+型コンタクト層6、n-型ドリフト層1およびn+型カソード層12でダイオードが形成されている。ダイオードのオン状態は、対となるIGBTがオフの状態で、エミッタ電極13がコレクタ電極14より電位が高い状態である。ダイオードのオン状態では、n-型ドリフト層1に、p型アノード層5とp+型コンタクト層6で構成されるアノード領域から正孔が流入し、n+型カソード層12で構成されるカソード領域から電子が流入することで、導電率変調が起こりダイオードの導通状態になる。
【0097】
本実施の形態では、欠陥領域15がp型アノード層5のうちp+型コンタクト層6の下側の部分に形成されており、p+型コンタクト層6からn-型ドリフト層1に流入する正孔は欠陥領域15を通過することになる。この欠陥領域15で正孔が再結合をするため、n-型ドリフト層1に流入する正孔は少なくなる。このため、導電率変調の程度が下がり、ダイオードの導通状態でアノード領域近傍のキャリア濃度は欠陥領域15が無い場合に比べて低くなる。
【0098】
次にこの状態からダイオードがリカバリ状態を通して遮断状態に移行する際の動作について説明する。ダイオードがオンの状態から、エミッタ電極13がコレクタ電極14より電位が低くなり、対となるIGBTがオン状態に代わると、n-型ドリフト層1の正孔がp型アノード層5とp+型コンタクト層6からエミッタ電極13に抜けてゆき、電子がn+型カソード層12からコレクタ電極14に抜けてゆく。ダイオードが遮断状態になるためには過剰キャリアを排出する必要があり、過剰キャリアが多いと、排出される過剰キャリアが増える分だけ逆回復電流が増え、逆回復ピーク電流(Irr)やリカバリ損失(Err)も多くなる。
【0099】
本実施の形態では、前述のように、欠陥領域15が無い場合と比べ、ダイオードのオン状態でアノード領域近傍のキャリア濃度が低い。そのため、従来例より、ダイオード動作における逆回復ピーク電流(Irr)やリカバリ損失(Err)を下げることができる。
【0100】
次にIGBTの動作について説明する。IGBTのオン状態は、埋め込みゲート電極8およびコレクタ電極14がエミッタ電極13より高い電位であり、対となるダイオードが遮断状態である。IGBTのオン状態では、n-型ドリフト層1に、p型コレクタ層11から正孔が流入し、n+型エミッタ層3から電子が流入し、導電率変調が起こる。コレクタ電極14がエミッタ電極13より高い電位のまま、埋め込みゲート電極8がエミッタ電極13より低い電位になると、n+型エミッタ層3、p型チャネルドープ層2、n-型ドリフト層1で形成されるMOSチャネルが閉じ、n-型ドリフト層1の過剰キャリアが、正孔はエミッタ電極13から、電子はコレクタ電極14から排出されることでIGBTのオフ状態に移行する。
【0101】
RC-IGBTである本実施の形態の半導体装置200または半導体装置201では、IGBT領域101とダイオード領域102が隣り合って形成されている。このため、ダイオード領域102の近傍に形成されているIGBT領域101に対応するp型コレクタ層11からの電流は、IGBT領域101のn-型ドリフト層1を通ってエミッタ電極13に流れる成分に加え、一部はダイオード領域102内部のn-型ドリフト層1を通ってエミッタ電極13に流れる成分を含み、IGBT動作時で導電率変調を起こした状態ではダイオード領域102内部にも過剰キャリアが存在する状態となる。
【0102】
このダイオード領域102内部の過剰キャリアも排出しないとIGBTのオフ状態へ移行できないため、ダイオード領域102内部の過剰キャリアは、IGBT動作時のターンオフ損失の悪化や、IGBT領域101のうちダイオード領域102近傍部分に電流集中することによる逆バイアス安全動作領域(Reverse Bias Safe Operating Area、RBSOA)の悪化という問題が生じる原因となる。
【0103】
本実施の形態では、上述の<A-1-4>の第6の特徴の通り、ダイオード領域102のうちIGBT領域に接する領域に欠陥領域15が形成されていることから過剰キャリアがダイオード領域102に流れやすくなり、電流を分散してIGBT領域101のうちダイオード領域102近傍部分への電流集中を抑制することができ、IGBT動作時のターンオフ損失の悪化やRBSOAの悪化という問題を抑制することができる。
【0104】
欠陥領域15はp型アノード層5とp+型コンタクト層6の中で、p型の不純物濃度が概ね1.0E+16/cm3以上の部位に形成するのが効果的である。
【0105】
欠陥領域15は少数キャリアの再結合中心となるため電流経路に形成することが好ましいが、ダイオードのオフ時(耐圧保持時)に空乏層が欠陥領域15に到達するとリーク電流が増加する問題が起こる。このため、耐圧保持時に空乏層が到達しない領域に欠陥領域15を形成するのが効果的である。耐圧保持時に空乏層が到達しない領域はアノード領域の深さと濃度分布に依存するが、p型の不純物濃度が1.0E+16/cm3以下の領域を含まないように欠陥領域15を形成することで、耐圧保持時に空乏層が欠陥領域15に到達することを抑制できる。これにより、耐圧保持時のリーク電流を抑え、かつ、リカバリ電流を効果的に低減することができる。
【0106】
本実施の形態におけるダイオード領域102におけるp
+型コンタクト層6の面積比率とダイオード動作時のリカバリピーク電流(Irr)の関係をシミュレーションで検証した結果を
図23に示す。ダイオード領域102におけるp
+型コンタクト層6の面積比率は、ダイオード領域102のp
+型コンタクト層6の平面視での面積の、ダイオード領域102のp型アノード層5およびp
+型コンタクト層6を合わせた領域の平面視での面積に対する比率である。
【0107】
図23中の条件1と条件2は本実施の形態において欠陥領域15の欠陥密度を変えたものであり、条件2は条件1より欠陥密度が高く、条件1より欠陥領域15で再結合する確率が高くなっている。条件1と条件2において、欠陥領域15は、p
+型コンタクト層6には設けられず、p型アノード層5のうち、p
+型コンタクト層6の第2主面側でありp
+型コンタクト層6と平面視で同じ領域、に、p
+型コンタクト層6の第2主面側表面と接して設けられている。また、
図23中の比較例は条件1または条件2から欠陥領域15を無くしたものである。つまり、
図23に示される条件1と条件2と比較例は、p
+型コンタクト層6の面積比率が同じであれば、欠陥領域15以外の構成は同じであり、特に、p型アノード層5とp
+型コンタクト層6の配置は同じである。
図23に示されるシミュレーションでは、p
+型コンタクト層6はトレンチゲート50の延伸方向に沿って延伸している構成とし、条件1と条件2も、
図69に示される比較例のように、p
+型コンタクト層6のトレンチゲート50の延伸方向と垂直な方向の幅を変えることでp
+型コンタクト層6の面積比率を変更したが、トレンチゲート50の延伸方向の幅を変えても同様な結果になると考えられる。
【0108】
前述の通り、本実施の形態ではp+型コンタクト層6と平面視で同じ領域に欠陥領域15が形成されている。つまり、欠陥領域15は理想的にはp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域にのみ形成されている。このため、流入効率が高い部分からの正孔の流入を効率的に抑えることができる。平面視でp+型コンタクト層6と重ならずp型アノード層5のみと重なる部分には欠陥領域15が形成されていないため、順方向電圧降下Vfの増加を抑えつつ、電流の流れやすさの面内の均一性を上げることができる。
【0109】
図23からわかる通り、条件1と2の違いによらず、本実施の形態の構成であれば、欠陥領域15により、p
+型コンタクト層6の面積比率が同じ比較例に比べてリカバリピーク電流(Irr)を下げることができ、これによりリカバリ損失を下げることができる。p
+型コンタクト層6の面積比率(欠陥領域15の面積比率)が20%以上あれば、概ね同一面積比率の従来例に比べてリカバリピーク電流(Irr)を5%以上低減できる効果がみられる結果となっている。
【0110】
さらに、条件2ではp
+型コンタクト層6の面積比率(欠陥領域15の面積比率)が高まるほどリカバリピーク電流(Irr)とリカバリ損失(Err)を下げることができる結果が得られている。条件2では、欠陥領域15が無い場合に到達できる最小の損失(
図23中でp
+型コンタクト層6の面積比率が0%の場合の損失)より損失を下げることができることが分かる。
【0111】
つまり、欠陥領域15が無い場合には、リカバリ損失を低減するためにp+型コンタクト層6の面積を減らすと、副作用としてオーミック抵抗の増大による順方向電圧降下の増大が発生していたが、本実施の形態では欠陥領域15によりオーミック抵抗を増大させることなくリカバリ損失の低減を実現できるため、リカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係を改善できる。
【0112】
さらに、条件2のように欠陥領域15の欠陥密度を高くすれば、p+型コンタクト層6と欠陥領域15の面積比率を増やすことで、オーミック抵抗の低減を実現でき、かつ、リカバリ電流やリカバリ損失の低減を実現できる。
【0113】
<A-4.効果>
以上のように、本実施の形態の半導体装置200または半導体装置201では、p型アノード層5部分のうちp+型コンタクト層6と平面視で重なる部分に欠陥領域15が形成されている。欠陥領域15が形成されている領域はダイオードのオン状態における通電経路に当たり、欠陥領域15が形成されていることにより、ダイオードのオン状態でp+型コンタクト層6からn-型ドリフト層1に流入する正孔の量を低減できるため、ダイオードのリカバリ電流の低減とリカバリ損失の低減が実現できる。
【0114】
欠陥領域15はアルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかを含み、一般的なイオン注入機を用いて安価に半導体装置200または半導体装置201を製造できる。
【0115】
さらに、欠陥領域15を形成するためのイオン注入では、p+型コンタクト層6を形成するためのイオン注入で用いるものと同じマスクを用いることができるため、工程数の増加を最小限にとどめ、欠陥領域15を形成することができる。
【0116】
欠陥領域15はp型アノード層5のうちp型不純物の濃度が1.0E+16/cm3以下の領域を含まないように形成されている。ダイオードのオン状態での電流経路であって、かつ、ダイオードの遮断状態で空乏層が到達しない領域、に欠陥領域15が形成されているため、ダイオードの遮断状態でのリーク電流の増大を抑えつつ、リカバリ損失を低減できる。
【0117】
さらに、p型アノード層5とp+型コンタクト層6を合わせた領域の平面視での面積に対する、p+型コンタクト層6および欠陥領域15の平面視での面積の割合が、20%以上に設定されており、アノード領域とエミッタ電極13との間のオーミック抵抗を低減させつつ、ダイオードのリカバリ損失を、欠陥領域15が無い場合より低減することが可能である。
【0118】
<B.実施の形態2>
<B-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200bの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201bの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200bまたは
図2に示した半導体装置201bにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0119】
図24は、半導体装置200bまたは半導体装置201bの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図25は、半導体装置200bまたは半導体装置201bの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0120】
本実施の形態では、実施の形態1の半導体装置200または半導体装置201と比べ、欠陥領域15が無く、代わりに、
図24に示されるように、p
+型コンタクト層6の第2主面側に、n型半導体層19(第8半導体層)が形成されている。つまり、p型アノード層5の第1主面側の表面上に選択的にn型半導体層19が形成されており、n型半導体層19の第1主面側の表面上にp
+型コンタクト層6が形成されている。n型半導体層19とp
+型コンタクト層6とは平面視で同じ領域に形成されている。これらの点を除けば、半導体装置200bまたは半導体装置201bの構成は、半導体装置200または半導体装置201とそれぞれ同様である。ただし、本実施の形態では、アノード領域においてn型半導体層19の第1主面側の領域がn型半導体層19の第2主面側の領域よりもp型の不純物濃度が高ければ、n型半導体層19の第1主面側をp
+型コンタクト層6、n型半導体層19の第2主面側をp型アノード層5と思ってよい。
【0121】
本実施の形態では、<B-2.製造方法>で説明するように、n型半導体層19は、p型の領域にn型の不純物を導入し、全体としてn型の領域となるように形成されている。n型半導体層19が全体としてn型になっていることは、走査型静電容量顕微鏡法(SCM、Scanning Capacitance Microscopy)または広がり抵抗測定法(SRP、Spreading Resistance Profiler)により判定できる。
【0122】
<B-2.製造方法>
図26~
図29に本実施の形態の製造方法の一例を示す。
【0123】
【0124】
図26の状態から、マスク処理によりダイオード領域102の一部以外をフォトレジスト16で覆い、ダイオード領域102の当該一部にn型不純物を導入する(
図27)。本実施の形態では、リン、または、ヒ素を導入することで、n型不純物導入領域20を形成する。
【0125】
さらに、その次の工程では、同一のフォトレジスト16で半導体基板が部分的に被覆されている状態で、n型不純物導入領域20より浅い位置に、p型不純物を導入し、p型不純物導入領域17を形成する(
図28)。
【0126】
次の工程では、フォトレジスト16を除去し、熱処理を行うことで、p型不純物導入領域17をp
+型コンタクト層6に、n型不純物導入領域20をn型半導体層19とし、ダイオード領域102の構造を形成することができる(
図29)。
【0127】
本実施の形態の半導体装置の製造方法におけるp型不純物導入領域17とn型不純物導入領域20の形成は一般的なイオン注入機を用いたイオン注入で行うことができ、安価にp型不純物導入領域17とn型不純物導入領域20を形成できる。
【0128】
また、p型不純物導入領域17を形成する際とn型不純物導入領域20を形成する際とで同じマスクを用いることができるため、n型不純物導入領域20を形成することによるコストの増加を抑えられる。
【0129】
図29以降の工程は実施の形態1の
図17以降の工程と同様のため、省略する。
【0130】
<B-3.動作>
本実施の形態の半導体装置200bまたは半導体装置201bにおいては、p型アノード層5とp+型コンタクト層6、n-型ドリフト層1およびn+型カソード層12でダイオード構造が形成されており、ダイオードの導通状態ではp型アノード層5とp+型コンタクト層6から正孔がn-型ドリフト層1に流入する。
【0131】
n型半導体層19はp+型コンタクト層6からn-型ドリフト層1へ流れる電流の経路上に形成されている。n型半導体層19は、p+型コンタクト層6からn-型ドリフト層1へ流れる正孔への電位的なバリア層として働き、また、正孔はn型半導体層19で再結合するため、n-型ドリフト層1へ流入する正孔は少なくなる。このため、導電率変調の程度が下がり、ダイオードの導通状態でアノード領域近傍のキャリア濃度は、n型半導体層19が無い場合に対して低くなる。
【0132】
本実施の形態では前述のようにダイオードの導通状態でアノード領域近傍のキャリア濃度はn型半導体層19が無い場合に対して低くなるよう設計されているため、n型半導体層19が無い場合と比べ、p+型コンタクト層6の面積比率を減らさずに、リカバリ動作時のリカバリピーク電流の低減や、リカバリ損失の低減の効果を得ることができる。このように、n型半導体層19により、リカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係を改善できる。
【0133】
ダイオードの遮断状態でのリーク電流の増加を防ぐため、n型半導体層19は耐圧保持時に空乏層が到達しない領域が望ましい。n型半導体層19がp型アノード層5のうちp型の不純物濃度が1.0E+16/cm3以下の領域を含まないように、n型半導体層19を形成すればよい。
【0134】
また、p+型コンタクト層6の平面視での面積(つまりは、n型半導体層19の面積)の割合が20%以上に設定されていることで、十分にリカバリ損失を低減できる。
【0135】
<C.実施の形態3>
<C-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200cの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201cの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200cまたは
図2に示した半導体装置201cにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0136】
図30は、半導体装置200cまたは半導体装置201cの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図31は、半導体装置200cまたは半導体装置201cの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0137】
本実施の形態の半導体装置200cまたは半導体装置201cでは、アノード領域のうち、p+型コンタクト層6と平面視で重なる部分に欠陥領域15を形成するのに加え、p+型コンタクト層6と平面視で重ならない部分にも欠陥領域21を形成する。欠陥領域21を形成する点を除けば、半導体装置200cまたは半導体装置201cの構成は、半導体装置200または半導体装置201とそれぞれ同じである。
【0138】
以下では欠陥領域15と欠陥領域21を合わせた領域(第1結晶欠陥領域)が平面視でp型アノード層5の全体を占めるとして説明するが、平面視でp型アノード層5の部分的な領域を占めていてもよい。例えば、欠陥領域21は、平面視で、p型アノード領域でp+型コンタクト層6と平面視で重ならない部分のうち一部のみを占めていてもよい。
【0139】
<C-2.製造方法>
本実施の形態の半導体装置の製造方法の一例について
図32から
図37を参照して説明する。
【0140】
図32から
図34は、A-A断面およびB-B断面で共通である。
【0141】
図32までの製造工程は、実施の形態1の
図14までと比べ、p型アノード層5が形成されていない点が異なる。この違いは、マスク処理により実現できる。その他は実施の形態1の
図14までと同様である。
【0142】
図32の状態から、マスク処理によりダイオード領域102の一部以外をフォトレジスト16で覆い、ダイオード領域102の当該一部にp型不純物を導入し、p型不純物導入領域22を形成する(
図33)。
【0143】
次に、同一のフォトレジスト16で半導体基板が部分的に被覆されている状態で、p型不純物導入領域22より深い位置に、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかの元素を導入し、結晶欠陥導入領域18を形成する(
図34)。
【0144】
その次の工程では、フォトレジスト16を除去し、熱処理により、p型不純物導入領域22の不純物を拡散させp型アノード層5を形成する(A-A断面:
図35、B-B断面:
図36)。
【0145】
その後、一般的なマスク処理、イオン注入技術、および、拡散技術を用いて、ダイオード領域102にp
+型コンタクト層6を選択的に形成する。これにより、A-A断面は
図37に示される状態になる。B-B断面は
図36の状態のままである。
【0146】
図36以降の工程は実施の形態1の
図17以降の工程と同様のため、省略する。
【0147】
<C-3.動作>
本実施の形態の半導体装置200cまたは半導体装置201cの動作は、実施の形態1の半導体装置200または半導体装置201と同様である。つまり、半導体装置200cまたは半導体装置201cでは、ダイオードのオン状態でn-型ドリフト層1に流入する正孔の量を欠陥領域15および欠陥領域21により減少させることで、オーミック抵抗を増大させずにダイオード動作における逆回復ピーク電流(Irr)やリカバリ損失(Err)を下げることができ、リカバリ損失と順方向電圧降下のトレードオフを改善できる。
【0148】
本実施の形態ではダイオード領域102のエミッタ電極13とn-型ドリフト層1の間の電流経路すべてが欠陥領域15または欠陥領域21を通過するため、実施の形態1よりダイオードのオン状態の順方向電圧降下(Vf)が高くなる半面、リカバリ損失は低減される。実施の形態1と本実施の形態を用途に応じて使い分けすることができる。
【0149】
欠陥領域15および欠陥領域21をp型の不純物濃度が1.0E+16/cm3以下の領域を含まないように形成することで、耐圧保持時に空乏層が欠陥領域15および欠陥領域21に到達することを抑制して耐圧時のリーク電流を抑制し、かつ、リカバリ電流を低減することができる。
【0150】
また、本実施の形態では実施の形態1と比べ欠陥領域21が新たに形成されており、ダイオード領域102のエミッタ電極13とn
-型ドリフト層1の間の電流経路すべてが欠陥領域15または欠陥領域21を通過する。そのため、欠陥領域15の欠陥密度を
図23中の条件1または条件2での欠陥領域15の欠陥密度とし、p
+型コンタクト層6が配置された面積比率を20%以上に設定すれば、欠陥領域15および欠陥領域21が無い場合に比べて5%以上リカバリ損失を低減することができる。さらに、p
+型コンタクト層6の面積比率を適切に設定することで、ダイオード領域102のアノード領域のオーミック抵抗が増大するのを防ぐことができる。
【0151】
<D.実施の形態4>
<D-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200dの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201dの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200dまたは
図2に示した半導体装置201dにおける破線82で囲った領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0152】
図38は、半導体装置200dまたは半導体装置201dの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図39は、半導体装置200dまたは半導体装置201dの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0153】
本実施の形態は、IGBT領域101のp型チャネルドープ層2のうちp+型コンタクト層4の第2主面側の部分に欠陥領域23(第2結晶欠陥領域)が形成されている点が実施の形態1の場合と異なる。本実施の形態は、その他の点は、実施の形態1と同様である。例えば、本実施の形態における欠陥領域15の配置は、実施の形態1の欠陥領域15の配置と同じである。
【0154】
欠陥領域23は、p型チャネルドープ層2のうちp+型コンタクト層4の第2主面側であって平面視でp+型コンタクト層4と重なる領域に、少なくとも形成されている。欠陥領域23は、p型チャネルドープ層2の一部に設けられp+型コンタクト層4と離間して設けられていてもよいし、p型チャネルドープ層2のうちp+型コンタクト層4の第2主面側の表面と接する領域に設けられていてもよいし、p+型コンタクト層4の第2主面側の表面であってp型チャネルドープ層2とを含みp型チャネルドープ層2とp+型コンタクト層4にまたがるよう設けられていてもよい。本実施の形態では、欠陥領域23とp+型コンタクト層4とは平面視で同じ領域に形成されている。
【0155】
<D-2.製造方法>
本実施の形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
【0156】
図40は、IGBT領域101とダイオード領域102のA-A断面の製造工程図である。実施の形態1同様に
図13までの工程を行い、酸化膜90を除去することで、
図40の状態が得られる。
【0157】
図40の状態から、マスク処理により、IGBT領域101でp
+型コンタクト層4を形成する領域と、ダイオード領域102でp
+型コンタクト層6を形成する領域を除いてフォトレジスト16で覆い、IGBT領域101とダイオード領域102の一部にp型不純物を導入し、p型不純物導入領域17を形成する(
図41)。
【0158】
次に、同一のフォトレジスト16で半導体基板が部分的に被覆されている状態で、p型不純物導入領域17より深い位置に、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかの元素を導入し、結晶欠陥導入領域18を形成する(
図42)。
【0159】
その次の工程では、フォトレジスト16を除去し、熱処理により、p型不純物導入領域17をp
+型コンタクト層4またはp
+型コンタクト層6とし、IGBT領域101およびダイオード領域102のアノード領域の構造を形成する(
図43)。
【0160】
図43以降の工程は実施の形態1の
図17以降の工程と同様のため、省略する。
【0161】
本実施の形態では、欠陥領域15および欠陥領域23の形成に、アルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかを用いている。これらの元素は一般的なイオン注入機で注入が可能であり、安価に欠陥領域を形成することができる。
【0162】
さらに、本実施の形態では、p+型コンタクト層4とp+型コンタクト層6を同じイオン注入プロセスを通して形成し、さらに、欠陥領域15と欠陥領域23を同じイオン注入プロセスを通して形成する。また、p+型コンタクト層4およびp+型コンタクト層6を形成するためのイオン注入と、欠陥領域15および欠陥領域23を形成するためのイオン注入とで、同一のフォトレジスト16を用いる。これらにより、本実施の形態では、コストの増加を抑えて、必要な機能を実現することができる。
【0163】
<D-3.動作>
本実施の形態のダイオード領域102の構造は実施の形態1の場合と同じため、ダイオード領域102に注目した動作の説明については割愛し、IGBT領域101と関連する動作について説明する。
【0164】
IGBT領域101はエミッタ電極13およびコレクタ電極14とつながっているため、p型チャネルドープ層2、p+型コンタクト層4、n-型ドリフト層1およびn+型カソード層12で寄生のダイオードが形成される。このため,ダイオードのオン状態でp型チャネルドープ層2およびp+型コンタクト層4からn-型ドリフト層1に流入する正孔は、ダイオード動作時に素子全体のリカバリ損失を増加させる1要因となりえる。
【0165】
本実施の形態では、欠陥領域23は、p型チャネルドープ層2のうちp+型コンタクト層4の第2主面側であって平面視でp+型コンタクト層4と重なる領域に、少なくとも形成されている。欠陥領域23は、高濃度の不純物層であるp+型コンタクト層4からn-型ドリフト層1に正孔が流れ込む経路上に位置しているため、ダイオード動作時のオン状態においてIGBT領域101のp型チャネルドープ層2近傍のn-型ドリフト層1のキャリア濃度を低下させる効果がある。このため、実施の形態1でダイオード動作時のリカバリ損失を低減できると説明したのと同様に、p型チャネルドープ層2、p+型コンタクト層4、n-型ドリフト層1およびn+型カソード層12で形成される寄生のダイオードのリカバリ損失を低減でき、総合的に半導体装置200dまたは半導体装置201d全体のダイオード動作のリカバリ損失を低減できる。
【0166】
リーク電流を抑制するためには、実施の形態1の場合同様、欠陥領域15と欠陥領域23をp型の不純物濃度が1.0E+16/cm3以下の領域を含まないように形成するのが効果的である。
【0167】
また、p+型コンタクト層6と欠陥領域15の面積比率とリカバリ損失の低減の関係などについては、実施の形態1と同じ条件で実施の形態1と同じかそれ以上の効果が得られるため、詳細は割愛する。
【0168】
以上のように、本実施の形態では、ダイオード領域102において、欠陥領域15は、p型アノード層5のうち、p+型コンタクト層6の第2主面側でありp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に設けられている。このように欠陥領域15を形成することで、アノード領域とエミッタ電極13の間のオーミック抵抗の上昇を伴わずに、n-型ドリフト層1に流入する正孔を減らすことができ、これにより、リカバリ損失を低減することができる。また、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係を改善できる。
【0169】
さらに、同様に、p型チャネルドープ層2のうちp+型コンタクト層4の第2主面側の部分に欠陥領域23が形成されているので、IGBT領域101とダイオード領域102にまたがって形成される寄生ダイオ―ドによるリカバリ損失を抑制することができ、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係を改善できる。より効率的に寄生ダイオ―ドによるリカバリ損失を抑制するために、欠陥領域23は、ダイオード領域102からの平面視での距離が半導体基体の厚さよりも小さい領域に形成されていることが望ましい。
【0170】
また、欠陥領域23が、p+型コンタクト層4と平面視で重なる領域のみに形成されていれば、IGBTのオン状態の特性に与える影響を抑えつつ、寄生ダイオ―ドによるリカバリ損失を抑制できる。
【0171】
<E.実施の形態5>
<E-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200eの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201eの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200eまたは
図2に示した半導体装置201eにおける破線82で囲った領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0172】
図44は、半導体装置200eまたは半導体装置201eの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図45は、半導体装置200eまたは半導体装置201eの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0173】
本実施の形態の半導体装置200eまたは半導体装置201eでは、IGBT領域101のp型チャネルドープ層2のうち、欠陥領域23が形成されている領域は、p+型コンタクト層4およびn+型エミッタ層3と平面視で重なる領域全体に、つまりp型チャネルドープ層2の面内方向の全体に渡る。また、欠陥領域23はp+型コンタクト層4の第2主面側の表面であってp型チャネルドープ層2と接する表面を含み、p型チャネルドープ層2およびp+型コンタクト層4にまたがるように形成されている。その他の点は、実施の形態3の半導体装置200cまたは半導体装置201cと同様である。つまり、本実施の形態では、平面視において、欠陥領域23、欠陥領域15、欠陥領域21を合わせた領域は、p型チャネルドープ層2全体およびp型アノード層5全体と重なる。
【0174】
<E-2.製造方法>
本実施の形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
【0175】
図46は、IGBT領域101とダイオード領域102のA-A断面の製造工程図である。
図47は、IGBT領域101とダイオード領域102のB-B断面の製造工程図である。実施の形態1と同様に
図13までの工程を行い、p
+型コンタクト層4を形成する際に同時にA-A断面のp
+型コンタクト層6を形成することで、
図46および
図47の状態が得られる。
【0176】
次に、マスク処理によりトレンチゲート50を覆うフォトレジスト16を形成し、イオン注入によりアルゴン、窒素、ヘリウム、水素のいずれかの元素を導入し、欠陥領域23、欠陥領域15、欠陥領域21を形成する(A-A断面:
図48、B-B断面:
図49)。
【0177】
【0178】
<E-3.動作>
本実施の形態の半導体装置200eまたは半導体装置201eの構成は、実施の形態1、3、および4を組み合わせた構成である。ダイオード動作時に、ダイオード領域102のダイオードの電流経路と、IGBT領域101とダイオード領域102にまたがって存在する寄生ダイオードの電流経路は欠陥領域23、欠陥領域15、欠陥領域21のいずれかを通る。このため、オーミック抵抗の上昇を伴わずにダイオード動作時のリカバリ損失を低減することが可能となる。また、これにより、順方向電圧降下Vfとリカバリ損失との間のトレードオフを改善できる。
【0179】
<F.実施の形態6>
<F-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200fの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201fの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200fまたは
図2に示した半導体装置201fにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図50に示される。
【0180】
図51は、半導体装置200fまたは半導体装置201fの、
図50に示されたG-G線における断面図である。
図52は、半導体装置200fまたは半導体装置201fの、
図50に示されたH-H線における断面図である。
【0181】
図50、
図51、
図52において、境界セル領域105は、ダイオード領域102のうちIGBT領域101と接する部分のユニットセルの領域である。標準セル領域106は、ダイオード領域102のうち、境界セル領域105以外の領域を指す。ユニットセルは、トレンチゲート50により区切られたそれぞれの領域を指す。
【0182】
本実施の形態では、p+型コンタクト層4と平面視で同じ領域に、p+型コンタクト層4とp型チャネルドープ層2にまたがって欠陥領域23が形成されている。また、p+型コンタクト層6と平面視で同じ領域に、p+型コンタクト層6とp型アノード層5にまたがって、欠陥領域15が形成されている。
【0183】
本実施の形態では、
図50に示されるように、境界セル領域105でのp
+型コンタクト層6の面積比率が、標準セル領域106でのp
+型コンタクト層6の面積比率よりも高い。
【0184】
ダイオード領域の中のある領域でのp+型コンタクト層6の面積比率は、当該領域の中でのp+型コンタクト層6の平面視での面積の、当該領域の中でのp型アノード層5およびp+型コンタクト層6を合わせた領域の平面視での面積に対する比率である。同様に、ダイオード領域の中のある領域での欠陥領域15の面積比率は、当該領域の中での欠陥領域15の平面視での面積の、当該領域の中でのp型アノード層5およびp+型コンタクト層6を合わせた領域の平面視での面積に対する比率である。
【0185】
本実施の形態では、欠陥領域15は、p
+型コンタクト層6と平面視で同じ領域に形成されている場合を想定しているので、ダイオード領域の中のある領域でのp
+型コンタクト層6の面積比率は、当該ある領域での欠陥領域15の面積比率ともみなすことができる。つまり、本実施の形態では、
図50に示されるように、境界セル領域105での欠陥領域15の面積比率が、標準セル領域106での欠陥領域15の面積比率よりも高い。
【0186】
さらに、境界セル領域105での欠陥領域15は、
図23で示した実施の形態1の条件2の場合のように、p
+型コンタクト層6および欠陥領域15の面積が増えるほどリカバリピーク電流が下がるような条件に設定されている。例えば、境界セル領域105と標準セル領域106の欠陥領域15の欠陥密度は、両方とも、
図23で示した条件2のように設定されている。また、例えば、境界セル領域105の欠陥領域15の欠陥密度は、
図23で示した条件2のように設定されている一方、標準セル領域106の欠陥領域15の欠陥密度は、
図23で示した条件1のように設定されていて、境界セル領域105の欠陥領域15の欠陥密度は、標準セル領域106の欠陥領域15の欠陥密度より高い。
【0187】
以上説明した、p+型コンタクト層6および欠陥領域15の平面視での配置と、欠陥領域15の欠陥濃度の条件と、以外の点は、本実施の形態の半導体装置200fまたは半導体装置201fの構成は、実施の形態4の半導体装置200dまたは半導体装置201dの構成と同様である。
【0188】
<F-2.製造方法>
半導体装置200fまたは半導体装置201fの製造方法は、半導体装置200dまたは半導体装置201dの製造方法と同様である。本実施の形態のp+型コンタクト層6および欠陥領域15の配置は、マスク処理の写真製版時のパターンニング位置を変えることで実現できる。
【0189】
<F-3.動作>
境界セル領域105は、隣接する標準セル領域106と比べ、欠陥領域15の面積比率が高く、ダイオードのリカバリ損失が低いように設定されている。
【0190】
さらに、標準セル領域106にくらべて、境界セル領域105とその近辺のIGBT領域101では、ダイオードのオン状態で、p型アノード層5近傍の過剰キャリアが少なくなる。このため、IGBT領域101とダイオード領域102にまたがる寄生ダイオードの経路で流れるリカバリ電流を抑えることができる。過剰キャリアは必ずしも寄生ダイオードにより注入されたものとは限らないが、寄生ダイオードの経路で流れるリカバリ電流による損失を単に寄生ダイオードのリカバリ損失と呼ぶ。寄生ダイオードは経路が長く損失も大きいため、寄生ダイオードのリカバリ損失を抑えることで、素子全体のリカバリ損失を効果的に抑えることができる。
【0191】
本実施の形態では境界セル領域105を1つのユニットセルで形成しているが、IGBT領域101に近い側の複数のユニットセルで境界セル領域105を形成し、境界セル領域105の欠陥領域15の面積比率を高くしてもよい。この場合、さらに効果的に、寄生ダイオードの経路で流れるリカバリ電流を抑え、リカバリ損失を低減することができる。
【0192】
<G.実施の形態7>
<G-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200gの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201gの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200gまたは
図2に示した半導体装置201gにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図53に示される。
【0193】
図54は、半導体装置200gまたは半導体装置201gの、
図53に示されたI-I線における断面図である。
図55は、半導体装置200gまたは半導体装置201gの、
図53に示されたJ-J線における断面図である。
【0194】
図53、
図54、
図55において、境界セル領域107は、IGBT領域101のユニットセルのうち、ダイオード領域102との境界にあるユニットセルの領域である。また、標準セル領域108は、IGBT領域101のうち境界セル領域107以外の領域である。
【0195】
本実施の形態では、p+型コンタクト層4と平面視で同じ領域に、p+型コンタクト層4とp型チャネルドープ層2にまたがって欠陥領域23が形成されている。また、p+型コンタクト層6と平面視で同じ領域に、p+型コンタクト層6とp型アノード層5にまたがって、欠陥領域15が形成されている。
【0196】
半導体装置200gまたは半導体装置201gのIGBT領域101では、
図53に示されるように、第1主面において、n
+型エミッタ層3とp
+型コンタクト層4が、トレンチゲート50の延伸方向に交互に配置されている。n
+型エミッタ層3とp
+型コンタクト層4は、本実施の形態においても実施の形態1から6と同様に配置されていてもよい。つまり、n
+型エミッタ層3とp
+型コンタクト層4はそれぞれトレンチゲート50の延伸方向に延伸し、n
+型エミッタ層3はトレンチゲート50のゲート絶縁膜7と接して、p
+型コンタクト層4はトレンチゲート50のゲート絶縁膜7と離間して設けられていてもよい。また、実施の形態1から6においても、本実施の形態のように、n
+型エミッタ層3とp
+型コンタクト層4が、トレンチゲート50の延伸方向に交互に配置されていてもよい。
【0197】
本実施の形態の半導体装置200gまたは半導体装置201gは、
図53に示されるように、境界セル領域107でのp
+型コンタクト層4の面積比率が、標準セル領域108でのp
+型コンタクト層4の面積比率よりも高い。また、境界セル領域107での欠陥領域23の面積比率が、標準セル領域108での欠陥領域23の面積比率よりも高い。
【0198】
IGBT領域の中のある領域でのp+型コンタクト層4の面積比率は、当該領域の中でのp+型コンタクト層4の平面視での面積の、当該領域の中でのn+型エミッタ層3およびp+型コンタクト層4を合わせた領域の平面視での面積に対する比率である。
【0199】
また、IGBT領域の中のある領域での欠陥領域23の面積比率は、当該領域の中での欠陥領域23の平面視での面積の、当該領域の中でのp型チャネルドープ層2およびn+型エミッタ層3およびp+型コンタクト層4を合わせた領域の平面視での面積に対する比率である。
【0200】
<G-2.製造方法>
半導体装置200gまたは半導体装置201gは、実施の形態6の半導体装置200fまたは半導体装置201fと同様に製造できる。実施の形態6との違いは、マスク処理の写真製版時のパターンニング位置を変えることで実現できるため、詳細な説明を省略する。
【0201】
<G-3.動作>
境界セル領域107内部に形成される寄生のダイオードは、n+型カソード層12に近いため、標準セル領域108内部に形成される寄生のダイオードと比べ、素子全体におけるリカバリ損失悪化への影響が大きい。
【0202】
本実施の形態では、リカバリ損失悪化への影響が大きい境界セル領域107は、標準セル領域108と比べて欠陥領域23の面積比率が高く、リカバリ損失が抑制されやすいような設定となっている。このため、寄生ダイオードによるリカバリ損失が効果的に抑制され、結果として素子全体のリカバリ損失を効果的に下げることができる。
【0203】
本実施の形態では境界セル領域107を1つのユニットセルで形成しているが、ダイオード領域102に近い側の複数のユニットセルで境界セル領域107を形成し、境界セル領域107の欠陥領域23の面積比率を高くしてもよい。この場合、さらに効果的に寄生ダイオードによるリカバリ損失を低減することができる。
【0204】
<H.実施の形態8>
<H-1.構成>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200hの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201hの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200hまたは
図2に示した半導体装置201hにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図56に示される。
【0205】
図57は、半導体装置200hまたは半導体装置201hの、
図56に示されたK-K線における断面図である。
図58は、半導体装置200hまたは半導体装置201hの、
図56に示されたL-L線における断面図である。
【0206】
本実施の形態の特徴の1つは、実施の形態6と実施の形態7の特徴を組み合わせたものであり、境界セル領域105の欠陥領域15の面積比率が標準セル領域106の欠陥領域15の配置面積比率より高く、境界セル領域107の欠陥領域23の面積比率が標準セル領域108の欠陥領域23の面積比率より高い、というものである。
【0207】
本実施の形態の特徴のもう一つの特徴は、
図57または
図58に示すように、p型コレクタ層11とn
+型カソード層12の境界が、IGBT領域101とダイオード領域102の境界よりもダイオード領域102側に距離U1だけ寄っていることである。このように、p型コレクタ層11をダイオード領域102にはみ出して設けることにより、ダイオード領域102のn
+型カソード層12とIGBT領域101のトレンチゲート50との距離を大きくすることができる。これにより、ダイオードのオン動作時にIGBT領域101の埋め込みゲート電極8にゲート駆動電圧が印加された場合であっても、IGBT領域101のトレンチゲート50に隣接して形成されるチャネルからn
+型カソード層12に電流が流れるのを抑制することができる。距離U1は、例えば100μmであってよい。なお、RC-IGBTである半導体装置200hまたは半導体装置201hの用途によっては、距離U1がゼロまたは100μmより小さい距離であってもよい。また、他の実施の形態においても同様に、用途に応じて距離U1を設定してよい。
【0208】
<H-2.製造方法>
半導体装置200hまたは半導体装置201hは、実施の形態6の半導体装置200fまたは半導体装置201f、もしくは、実施の形態7の半導体装置200gまたは半導体装置201g、と同様に製造できる。実施の形態6または実施の形態7との違いは、表面と裏面形成時の写真製版時のパターンニング位置を変えることで実現できるため、詳細な説明は省略する。
【0209】
<H-3.動作>
本実施の形態では、境界セル領域105の欠陥領域15の面積比率が標準セル領域106の欠陥領域15の配置面積比率より高く、境界セル領域107の欠陥領域23の面積比率が標準セル領域108の欠陥領域23の面積比率より高いように設定されており、素子のダイオード動作時において、境界セル領域105,107全体の過剰キャリア密度が大きく下がる。これにより、IGBT領域101とダイオード領域102にまたがって、特に境界セル領域105とダイオード領域102にまたがって形成されている寄生ダイオードのリカバリ損失が下がる。このため,素子全体のリカバリ損失を下げることができる。
【0210】
さらに、本実施の形態では、p型コレクタ層11とn+型カソード層12の境界が、IGBT領域101とダイオード領域102の境界よりもダイオード領域102側に寄って配置されていることから、IGBT領域101の寄生ダイオードのアノード領域(p型チャネルドープ層2)とn+型カソード層12の距離が大きくなる。実効的にn-型ドリフト層1が厚くなるのと同じ効果があり、IGBT領域101とダイオード領域102にまたがる寄生ダイオードの領域近傍の過剰キャリア濃度が減少する。このため、寄生ダイオードのリカバリ損失がさらに低減する。
【0211】
<I.実施の形態9>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200iの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201iの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200iまたは
図2に示した半導体装置201iにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0212】
図59は、半導体装置200iまたは半導体装置201iの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図60は、半導体装置200iまたは半導体装置201iの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0213】
半導体装置200iまたは半導体装置201iは、欠陥領域15が、p型アノード層5のうちp+型コンタクト層6の第2主面側でありp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に設けられている点は、実施の形態1の半導体装置200または半導体装置201と同じである。一方、半導体装置200iまたは半導体装置201iでは、欠陥領域15が設けられている領域は、平面視において、p+型コンタクト層6と平面視で重なる領域の全体ではなく一部分である。また、欠陥領域15はp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域にのみ形成されている。その他の点は、半導体装置200iまたは半導体装置201iは、半導体装置200または半導体装置201と同様である。
【0214】
半導体装置200iまたは半導体装置201iにおいても、欠陥領域15で正孔が再結合するため、ダイオード動作時のオン状態においてn-型ドリフト層1に流入する正孔の数は欠陥領域15が無い場合と比べ少なくなり、リカバリ損失を低減できる。
【0215】
<J.実施の形態10>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200jの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201jの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200jまたは
図2に示した半導体装置201jにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0216】
図61は、半導体装置200jまたは半導体装置201jの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図62は、半導体装置200jまたは半導体装置201jの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0217】
本実施の形態は、CSTBT(登録商標、Carrier Stored Trench-Gate Bipolar Transistor:キャリア蓄積型バイポーラトランジスタ)と呼ばれるデバイスに、実施の形態1の構成を組み合わせたものである。
【0218】
CSTBTにおいては、p型チャネルドープ層2の第2主面側、p型チャネルドープ層2とn-型ドリフト層1の間に、n型キャリアストア層25が形成されている。CSTBTは、n型キャリアストア層25を有する構造により、IGBTのオン状態での定常損失を下げることができるデバイスである。
【0219】
n型キャリアストア層25を有することを除けば、半導体装置200jまたは半導体装置201jは、実施の形態1の半導体装置200または半導体装置201と同じ構造である。
【0220】
本実施の形態においても、欠陥領域15が、p型アノード層5のうち、p+型コンタクト層6の第2主面側でありp+型コンタクト層6と平面視で重なる領域、に少なくとも設けられていることで、実施の形態1と同じく、ダイオードのリカバリ特性を改善することができる。オーミック抵抗を増大させることなくリカバリ損失の低減を実現できるため、リカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係を改善できる。
【0221】
<K.実施の形態11>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200kの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201kの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200kまたは
図2に示した半導体装置201kにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0222】
図63は、半導体装置200kまたは半導体装置201kの、
図3に示されたA-A線における断面図である。
図64は、半導体装置200kまたは半導体装置201kの、
図3に示されたB-B線における断面図である。
【0223】
本実施の形態では、
図63、
図64に示されるように、実施の形態1と比べ、ゲート絶縁膜7が厚膜ゲート絶縁膜26となっている。また、対応して、埋め込みゲート電極8の形状が変わっている。厚膜ゲート絶縁膜26は、第2主面側の部分が第1主面側の部分より厚い。第2主面側の部分を厚くすることで、ゲート容量が低減され、高速動作が可能となる。このような厚膜ゲート絶縁膜26の効果と、欠陥領域15のダイオード動作時の過剰キャリアを減らしリカバリ損失を減らす効果とを合わせることで、さらに高速化が可能となる。
【0224】
<L.実施の形態12>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200lの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201lの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200lまたは
図2に示した半導体装置201lにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図65に示される。
【0225】
図66は、半導体装置200lまたは半導体装置201lの、
図65に示されたM-M線における断面図である。
図67は、半導体装置200lまたは半導体装置201lの、
図3に示されたN-N線における断面図である。
【0226】
本実施の形態では、IGBT領域101に、ダミートレンチゲート50bが設けられている。
図66、
図67に示される断面ではダミートレンチゲート50b上に層間絶縁膜9が設けられているが、ダミートレンチゲート50bは別の断面においてエミッタ電極13に電気的に接続される。ダミートレンチゲート50b上に層間絶縁膜9が設けられなくてもよい。
図65、
図66、
図67に示されるように、ダミートレンチゲート50bに挟まれた領域では、第1主面側に、p
+型コンタクト層4が設けられる。本実施の形態では、ダイオード領域102の構造は、実施の形態1のダイオード領域102の構造と同様であり、本実施の形態においても、欠陥領域15により、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係が改善される。
【0227】
<M.実施の形態13>
本実施の形態のストライプ型のRC-IGBTである半導体装置200mの平面図は
図1に示される。本実施の形態のアイランド型のRC-IGBTである半導体装置201mの平面図は
図2に示される。
図1に示した半導体装置200mまたは
図2に示した半導体装置201mにおける破線82で囲まれた領域を拡大して示した拡大平面図は
図3に示される。
【0228】
図68は、半導体装置200lまたは半導体装置201mの、
図3に示されたA-A線における断面図である。半導体装置200mまたは半導体装置201mの、
図3に示されたB-B線における断面図は
図5に示される。
【0229】
本実施の形態では、実施の形態4と比べ、ダイオード領域102の欠陥領域15が形成されていない点が異なる。その他の点は、実施の形態4と同様である。本実施の形態によっても、実施の形態4で説明したように、
図68に示される欠陥領域23により寄生のダイオードのリカバリ損失が低減され、総合的に半導体装置200mまたは半導体装置201m全体のダイオード動作のリカバリ損失が低減され、ダイオード動作時のリカバリ損失と順方向電圧降下の間のトレードオフの関係が改善される。より効率的に寄生ダイオ―ドによるリカバリ損失を抑制するために、欠陥領域23は、ダイオード領域102に接する領域を含むように形成されることが望ましい。例えばダイオード領域102からの平面視での距離が半導体基体の厚さよりも小さい領域に形成されていることが望ましい。
【0230】
<N.実施の形態14>
実施の形態1、3~12において、欠陥領域15または欠陥領域21またはその両方は、正孔が高い再結合の度合いを有する再結合領域(第1再結合領域)であれば、各実施の形態で説明したものと同様の効果が得られる。また、実施の形態2のn型半導体層19を再結合領域と見做すこともできる。実施の形態2を実施の形態6~9のいずれかと組み合わせ、実施の形態6~9いずれかの欠陥領域15を、n型半導体層19に置き換えてもよい。
【0231】
また、実施の形態4~8、13において、欠陥領域23は、正孔が高い再結合の度合いを有する再結合領域(第2再結合領域)であれば各実施の形態で説明したものと同様の効果が得られる。欠陥領域23の代わりに、p型チャネルドープ層2とp+型コンタクト層4の第2主面側の間に、n型半導体層28(第11半導体層)が設けられていてもよい。n型半導体層28が設けられる領域は例えば平面視でp+型コンタクト層4の部分的な領域であり、p型チャネルドープ層2とp+型コンタクト層4の間の境界の部分的な領域に設けられる。これによっても、p+型コンタクト層4からn-型ドリフト層1に流入する正孔が減り、寄生のダイオードのリカバリ損失が低減され、半導体装置全体のダイオード動作のリカバリ損失が低減される。
【0232】
各実施の形態でRC-IGBTについて説明をしたが、各実施の形態をMOSFETなどと組み合わせることも可能である。
【0233】
また、製造方法の一例としてSi基板を用いた製造方法を説明したが、SiCなど素材の異なる半導体基板を用いることも可能である。
【0234】
IGBT領域101のエミッタ電極13近傍のセル構造として、トレンチゲート50が1方向に延びるストライプ状のセル構造を例示したが、トレンチゲートが縦横に伸びるメッシュ型と言われるセル構造と組み合わせることも可能であり、トレンチ型以外のセル構造(プレーナー型と呼ばれる構造)と組み合わせることも可能である。
【0235】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0236】
1 n-型ドリフト層、2 p型チャネルドープ層、3 n+型エミッタ層、4 p+型コンタクト層、5 p型アノード層、6 p+型コンタクト層、7 ゲート絶縁膜、8 埋め込みゲート電極、9 層間絶縁膜、10 n型バッファ層、11 p型コレクタ層、11a p型終端コレクタ層、12 n+型カソード層、13 エミッタ電極、13a 終端電極、14 コレクタ電極、15,21,23 欠陥領域、16 フォトレジスト、17,22 p型不純物導入領域、18 結晶欠陥導入領域、19,28 n型半導体層、20 n型不純物導入領域、25 n型キャリアストア層、26 厚膜ゲート絶縁膜、31 p型終端ウェル層、32 n+型チャネルストッパ層、33 半絶縁性膜、34 終端保護膜、50 トレンチゲート、50b ダミートレンチゲート、51 トレンチ、101 IGBT領域、102 ダイオード領域、103 外周領域、104 ゲートパッド領域、104a ゲートパッド、105,107 境界セル領域、106,108 標準セル領域、120 半導体基体、200,200b,200c,200d,200e,200f,200g,200h,200i,200j,200k,200l,200m,201,201b,201c,201d,201e,201f,201g,201h,201i,201j,201k,201l,201m,1000 半導体装置。