(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241111BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20241111BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241111BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/04 111
G03G21/16 161
B41J2/47 101M
(21)【出願番号】P 2020153953
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敦史
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-088413(JP,A)
【文献】特開2000-284198(JP,A)
【文献】特開2012-155075(JP,A)
【文献】特開2010-145848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0232804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/04
G03G 21/16
B41J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の像担持体及び第2の像担持体と、
第1の光源及び第2の光源と、複数の反射面を有し前記
第1の光源及び前記第2の光源から出射された光ビームを走査する回転多面鏡と、
前記回転多面鏡によって第1の走査方向に走査される前記第1の光源から出射された前記光ビームを、前記第1の像担持体へと導く第1の光学部材と、前記回転多面鏡によって前記第1の走査方向とは逆の第2の走査方向に走査される前記第2の光源から出射された前記光ビームを、前記第2の像担持体へと導く第2の光学部材と、を有し、前記
第1の像担持体及び前記第2の像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、
前記露光手段により形成された前記静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像手段と、
像担持ベルトと、
前記現像手段により形成された前記トナー像を前記像担持ベルトに転写する転写手段と、
前記転写手段により前記像担持ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検知する
第1の検知手段であって、記録材の搬送方向に略直交する方向における前記記録材の一方の端部に相当する位置であって前記像担持ベルトに対向する位置に配置された第1の検知手段と、
前記転写手段により前記像担持ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検知する第2の検知手段であって、前記搬送方向に略直交する方向における前記記録材の他方の端部に相当する位置であって前記像担持ベルトに対向する位置に配置された第2の検知手段と、
を備え、記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、
前記第1の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第1のトナー像を第1のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果と前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果とに基づく第1の値と、
前記第1の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第2のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果とに基づく第2の値と、
前記第2の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第3のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果とに基づく第3の値と、
前記第2の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第4のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果とに基づく第4の値と、
に基づいて、前記露光手段の寿命を判断する判断手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記第2の値が前記第1の値よりも大きく、かつ、前記第3の値が前記第4の値よりも大きく、かつ、前記第2の値及び前記第3の値が所定の閾値よりも大きい場合に、前記回転多面鏡の前記反射面の汚れであると判断し、前記露光手段の寿命であると判断することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判断手段により前記露光手段の寿命であると判断された場合に、前記露光手段の交換を促す情報をユーザに報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、例えば、複写機やレーザビームプリンタといった電子写真技術を用いる走査光学装置の劣化状態の検知が可能なカラー画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いた画像形成装置に使用される走査光学装置内の回転多面鏡は高速で回転しているため、レーザ光を反射する反射面は空気中の塵や埃により汚れる。回転多面鏡の反射面において、特に回転方向先頭のエッジ部の汚れが著しく、汚れを起因として主走査方向の画像端部の濃度が低下し、画像不良となる。この反射面の汚れを検知する手段として、例えば特許文献1のように回転多面鏡の反射面で反射されたレーザ光の強さをパワー検知用の光検知素子で検知する方法がある。また、例えば特許文献2にはカラー画像形成装置に使用される対向走査型の走査光学装置の回転多面鏡の反射面が汚れた場合の画像劣化に対する走査光学装置の延命手段について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-284198号公報
【文献】特開2007-083708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例では次のような課題がある。近年、画像形成装置の稼働期間を通しての安定した画質への要求が高まってきており、特に潜像形成を担う走査光学装置の機能低下は画像品質に直結する。このため、正確なタイミングで速やかに走査光学装置の劣化状態を検知することが必要となる。パワー検知用の光検知素子を用いる方法では、光検知素子が回転多面鏡の反射面の画像形成領域外で反射されるレーザ光を受光する。このため、より正確に走査光学装置の機能低下を検知するには、画像形成領域内に相当する反射面の汚れを検知することが必要となる。また、画像形成装置にレーザ光を検知するための光検知素子を備える必要もある。
【0005】
次に回転多面鏡の反射面の汚れによる画像濃度の低下を生じにくくする技術として、予め複数のシェーディング補正データ記憶しておき、任意のシェーディング補正データを選択する技術が提案されている。しかし、この技術は走査光学装置に起因する画像劣化の延命は可能であるものの、いずれは画像劣化を引き起こすため、印刷枚数が多い長寿命の画像形成装置では走査光学装置の交換が必要になる。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、専用の光学検知素子を使用せず、容易な方法で走査光学装置の回転多面鏡の汚れを精度よく検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の像担持体及び第2の像担持体と、第1の光源及び第2の光源と、複数の反射面を有し前記第1の光源及び前記第2の光源から出射された光ビームを走査する回転多面鏡と、前記回転多面鏡によって第1の走査方向に走査される前記第1の光源から出射された前記光ビームを、前記第1の像担持体へと導く第1の光学部材と、前記回転多面鏡によって前記第1の走査方向とは逆の第2の走査方向に走査される前記第2の光源から出射された前記光ビームを、前記第2の像担持体へと導く第2の光学部材と、を有し、前記第1の像担持体及び前記第2の像担持体に静電潜像を形成する露光手段と、前記露光手段により形成された前記静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像手段と、像担持ベルトと、前記現像手段により形成された前記トナー像を前記像担持ベルトに転写する転写手段と、前記転写手段により前記像担持ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検知する第1の検知手段であって、記録材の搬送方向に略直交する方向における前記記録材の一方の端部に相当する位置であって前記像担持ベルトに対向する位置に配置された第1の検知手段と、前記転写手段により前記像担持ベルトに形成された前記トナー像の濃度を検知する第2の検知手段であって、前記搬送方向に略直交する方向における前記記録材の他方の端部に相当する位置であって前記像担持ベルトに対向する位置に配置された第2の検知手段と、を備え、記録材に画像形成を行う画像形成装置であって、前記第1の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第1のトナー像を第1のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果と前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果とに基づく第1の値と、前記第1の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第2のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果とに基づく第2の値と、前記第2の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第3のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第1の検知手段により検知した結果とに基づく第3の値と、前記第2の像担持体に形成されたトナー像に対応する前記像担持ベルト上の第4のトナー像を前記第1のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果と前記第2のタイミングにおいて前記第2の検知手段により検知した結果とに基づく第4の値と、に基づいて、前記露光手段の寿命を判断する判断手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、専用の光学検知素子を使用せず、容易な方法で走査光学装置の回転多面鏡の汚れを精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例の走査光学装置の構成を説明する斜視図
【
図4】実施例の回転多面鏡の反射面の汚れを説明する図
【
図6】実施例の濃度検知実行から検知結果の記憶までの処理を示すフローチャート
【
図7】実施例の中間転写ベルト上の濃度検知の説明図、濃度検知結果の説明図
【
図8】実施例の初期濃度と通紙後の濃度の検知結果の説明図
【
図9】実施例の濃度検知実行から寿命判断までの処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例】
【0011】
(カラー画像形成装置)
図1は本実施例の走査光学装置3を内包する画像形成装置100の構成を示す断面説明図である。画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の現像剤(トナー)を備え、記録材10上にトナー像を形成する電子写真方式のカラー画像形成装置である。なお、以下の説明において、特定の色に対応する部材を指す場合を除き、添え字Y、M、C、Kを省略する。帯電手段である帯電ローラ2により一様に帯電された像担持体である感光ドラム1の表面には光ビームであるレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは、画像データ入力部(不図示)から入力された画像データに基づいて、露光手段である走査光学装置3が有する、各色に対応した光源(不図示)から出射される。これにより感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に対して現像手段である現像装置4内の現像ローラ6から各色のトナーが供給されて現像され、各感光ドラム1の表面に各色のトナー像が形成される。感光ドラム1に対向して像担持ベルトである中間転写ベルト8が張架して配置されている。各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面に形成された各色のトナー像は中間転写ベルト8の外周面に順次、重畳して転写され、カラーのトナー像となる(以下、1次転写という)。1次転写は、中間転写ベルト8の内周面側に配置された1次転写手段である1次転写ローラ7Y、7M、7C、7Kに1次転写電圧が印加されることにより行われる。
【0012】
一方、給送カセット9には記録材10が積載されており、記録材10は、給送ローラ11により搬送路へと給送された後、搬送ローラ12により搬送される。その後、記録材10は、所定のタイミングで、中間転写ベルト8と2次転写手段である2次転写ローラ13とのニップ部である2次転写部14へ搬送される。そして、2次転写ローラ13に2次転写電圧が印加されることで、中間転写ベルト8の外周面上のカラーのトナー像が記録材10に転写される(以下、2次転写という)。その後、記録材10は、2次転写部14の2次転写ローラ13と中間転写ベルト8とに挟持搬送されて、定着手段である定着装置15に送られる。記録材10は、定着装置15により加熱及び加圧されて未定着のトナー像が定着され、排出ローラ16によって画像形成装置100外に搬送される。画像形成装置100は、制御手段である制御部200を備えている。制御部200は、例えばCPU、ROM、RAMを有しており、ROMに記憶されている各種のプログラムを読み出し、RAMを作業領域として使用しながら読み出したプログラムを実行することで、画像形成に関する各種の処理を制御している。なお、画像形成装置100は、後述する検知手段である濃度センサ(
図1には不図示)を少なくとも2つ備えている。
【0013】
(走査光学装置)
図2、
図3は、走査光学装置3の全体構成を説明する図である。
図2は、本実施例の走査光学装置3の内部を示す斜視図(カバー部材は不図示)である。
図3は、走査光学系について説明するための要部説明図であり、
図2におけるA-A断面図である。走査光学装置3は、イエローに対応する静電潜像を形成するための第1の光源である半導体レーザ30Y、マゼンタに対応する静電潜像を形成するための半導体レーザ30Mを有している。さらに走査光学装置3は、シアンに対応する静電潜像を形成するための半導体レーザ30C、ブラックに対応する静電潜像を形成するための第2の光源である半導体レーザ30Kを有している。符号の添え字Y、M、C、Kはこれまでと同様に省略する場合もある。回路基板35aは、半導体レーザ30Y、30Mを駆動するための各種の素子が実装された基板である。回路基板35bは、半導体レーザ30C、30Kを駆動するための各種の素子が実装された基板である。回路基板35a、35bによって駆動制御される半導体レーザ30Y、30M、30C、30Kからは、発散光のレーザ光LY、LM、LC、LKがそれぞれ出射される。各レーザ光Lは、各コリメータレンズ31によって平行光化されたレーザ光束に変換される。レーザ光LY、LMは、シリンドリカルレンズ32aを透過することによって、副走査方向にのみ収束され、レーザ光LC、LKは、シリンドリカルレンズ32bを透過することによって、副走査方向にのみ収束される。ここで副走査方向とは感光ドラム1の回転方向をいう。その後、各レーザ光Lは回転多面鏡33の反射面上に線像として結像する。なお、本実施例では、回転多面鏡33は例えば4つの反射面を有する。なお、回転多面鏡33は複数の反射面を有していればよく、他の面数の反射面を有していてもよい。
【0014】
次に走査光学系について
図2、
図3を用いて説明する。回転多面鏡33はスキャナモータ34によって回転駆動され、レーザ光LY、LM、LC、LKをそれぞれ偏向する。回転多面鏡33によって偏向されたレーザ光LY、LMは、第1の走査レンズ36aを透過する。その後、レーザ光LYは第2の走査レンズ37bを透過し、折り返しミラー38cで反射された後、感光ドラム1Yにスポット像として結像する。一方、レーザ光LMは、折り返しミラー38bで反射された後、第2の走査レンズ37aを透過し、折り返しミラー38aで反射され、感光ドラム1Mにスポット像として結像する。同様に、レーザ光LK、LCは、第1の走査レンズ36bを透過する。その後、レーザ光LKは第2の走査レンズ37dを透過し、折り返しミラー38fで反射された後、感光ドラム1Kにスポット像として結像する。一方、レーザ光LCは、折り返しミラー38eで反射された後、第2の走査レンズ37cを透過し、折り返しミラー38dで反射され、感光ドラム1Cにスポット像として結像する。
【0015】
また、レーザ光LY、LMが回転多面鏡33で偏向される方向は、
図2に示した第1の走査方向である矢印S1方向である。一方、レーザ光LC、LKが回転多面鏡33で偏向される方向は、
図2に示した矢印S1とは逆の方向の第2の走査方向である矢印S2方向である。矢印S1、S2の方向を主走査方向ともいい、主走査方向は副走査方向に略直交する方向である。すなわち、回転多面鏡33は、
図2の上(カバー部材(不図示)によって閉塞される筐体の開口側)から見たときに、時計回り方向に回転する。走査光学装置3は回転多面鏡33を挟んで、
図3で示す場合、左右に走査光学系を有するいわゆる対面走査光学系である。便宜上、レーザ光LY、LMが偏向走査されるときに寄与する第1の光学部材である光学系を第1の走査光学系、レーザ光LC、LKが偏向走査されるときに寄与する第2の光学部材である光学系を第2の走査光学系という。画像形成装置100はこのような走査光学系により、4つの感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に走査光を導いて画像記録を行っている。
【0016】
(回転多面鏡の反射面の汚れについて)
次に
図4、
図5を用いて画像形成装置100の稼働、言い換えれば走査光学装置3の使用が進んだときの回転多面鏡33の反射面の状態と、そのときのレーザ光Lの感光ドラム1上のレーザ光量について説明する。
図4は回転多面鏡33の反射面33aの汚れの様子を表している。回転多面鏡33は、約40000rpmの高速で回転しているため、空気中に浮遊する埃や塵などにより反射面33aが汚れる。特に、各反射面33aの回転方向の下流側(
図4で示す反射面33aの左側)は、反射面33aの角部の影になるため負圧となり埃や塵を巻き込み易い。そのため、反射面33aの他の領域、すなわち回転方向の下流側を除く領域(回転方向の上流側(右側)や中央部)よりも汚れ易い。
【0017】
図5は、横軸に感光ドラム1上の主走査方向における位置(像高ともいう)(mm)を示し、縦軸に第1のタイミングである初期のレーザ光量に対する、第2のタイミングである所定の時期におけるレーザ光量の比を示す。なお、感光ドラム1の像高について、プラス側は記録材10の右側に対応し、マイナス側は記録材10の左側に対応している。初期に対して感光ドラム1上のレーザ光量が低下していなければ、縦軸は「1.0」を示し、レーザ光量が低下するほど縦軸の値は小さくなる。
図5(a)は第1の走査光学系の第1の像担持体である感光ドラム1Yでのレーザ光量比を示し、(b)は第2の走査光学系の第2の像担持体である感光ドラム1Kのレーザ光量比を示す。
【0018】
各グラフにおいて、反射面33aの汚れた箇所に相当する側の像高において、レーザ光量比が低下していることがわかる。すなわち、(a)では反射面33aの汚れた箇所に相当するプラス側の像高(記録材10の右端に相当)の感光ドラム1Y面上のレーザ光量が初期に対して低下している。(b)では反射面33aの汚れた箇所に相当するマイナス側の像高(記録材10の左端に相当)の感光ドラム1K面上のレーザ光量が初期に対して低下している。ともに、レーザ光Lの書き出し側の像高の光量低下が大きい。なお、記録材10の左端とは、搬送方向に略直交する方向における一方の端部であり、右端とは、搬送方向に略直交する方向における他方の端部である。
【0019】
本実施例の走査光学装置3のように、回転多面鏡33を挟んで左右に走査光学系を有する場合、次のような特徴がある。すなわち、
図4のように反射面33aが汚れたときの感光ドラム1上のレーザ光量の低下の最大の特徴は、
図5に示すように左右の走査光学系で、光量の大きく低下する像高が逆転することである。これは反射面33aが汚れている回転多面鏡33を、左右の走査光学系で共有しているからである。また、イエローと同じ第1の走査光学系を用いるマゼンタ、ブラックと同じ第2の走査光学系を用いるシアンも、それぞれの走査光学系と同じ像高側のレーザ光量が初期に対して大きく低下する。具体的には、マゼンタではイエローと同様にプラス側の像高において初期に対するレーザ光量の低下が大きくなる。シアンではブラックと同様にマイナス側の像高において初期に対するレーザ光量の低下が大きくなる。
【0020】
(濃度センサによる濃度検知と検知結果)
続いて
図6~
図9を用いて対面走査光学系の走査光学装置3の劣化状態の検知について説明する。劣化状態の検知は、専用の光学検知素子を用いず、画像形成装置100ならば画像の濃度を補正するために搭載されている、少なくとも2つの濃度検知手段から得られる画像濃度結果を比較することによって行う。
【0021】
まず、
図6、
図7を用いて画像濃度検知について説明する。
図6は濃度検知実行から検知結果の記憶までの処理を示すフローチャート、
図7(a)は濃度検知に関する説明図、
図7(b)は濃度検知結果の一例の説明図である。
図6において、濃度検知が実行されると、制御部200は、ステップ(以下、Sとする)1以降の処理を実行する。S1で制御部200は、中間転写ベルト8の駆動モータ(不図示)により、
図7(a)に示すように矢印B方向に中間転写ベルト8を回動させる。これにより、移動する中間転写ベルト8上(像担持ベルト上)に、
図1で説明した1次転写までの動作により各色の濃度を検知するためのパターン(以下、濃度検知パターンという)PL、PRが形成される。なお、濃度検知パターンに関する情報は、例えば制御部200が有するROM等に予め記憶され、制御部200はROMから読み出した情報に基づいて中間転写ベルト8上に濃度検知パターンを形成するものとする。なお、濃度検知パターンPLのYは第1のトナー像に相当し、濃度検知パターンPRのYは第2のトナー像に相当する。濃度検知パターンPLのKは第3のトナー像に相当し、濃度検知パターンPRのKは第4のトナー像に相当する。
【0022】
図7(a)に示すように、各色の濃度検知パターンPL、PRは、中間転写ベルト8の両端部(移動方向(矢印B方向)に略平行な2つの端部)に移動方向に沿って形成される。また、移動方向の先頭からイエローの濃度検知パターン1~10、マゼンタの濃度検知パターン1~10、シアンの濃度検知パターン1~10、ブラックの濃度検知パターン1~10の順に形成される。
図7(a)の左側の濃度検知パターンを総称して濃度検知パターンPL、右側の濃度検知パターンを総称して濃度検知パターンPRとしている。濃度検知パターンPL、PRは、例えば各色の濃度検知パターン1の濃度をもっとも薄くし、各色の濃度検知パターン10でベタ濃度になるように、1から10に向かって徐々に濃度が濃くなるよう出力されている。
【0023】
ここで、中間転写ベルト8の濃度検知パターンPLに対向するように第1の検知手段である濃度センサ39Lが配置されており、中間転写ベルト8の濃度検知パターンPRに対向するように第2の検知手段である濃度センサ39Rが配置されている。濃度センサ39L、39Rを総称して濃度センサ39ともいう。ここで、中間転写ベルト8の両端部は、記録材10の搬送方向に直交する方向の両端部に対応している。すなわち、濃度センサ39L、39Rは、それぞれ、記録材10の印刷領域内における左端近傍、右端近傍に相当する位置に配置されていることになる。濃度センサ39L、39Rは、例えば発光素子及び受光素子を有している。発光素子から照射された光は濃度検知パターンPL、PR又は中間転写ベルト8によって反射され、反射された光は受光素子によって受光される。濃度センサ39L、39Rは、受光した光量に応じた電圧(以下、検知結果という)を制御部200に出力する。なお、濃度センサ39L、39Rの構成は他の構成であってもよい。また、濃度検知パターンの構成も他の構成であってもよい。
【0024】
図6の説明に戻る。S2で制御部200は、濃度センサ39L、39Rによって濃度検知パターンPL、PRを検知する。ここで、濃度検知パターンPLは、濃度センサ39Lを通過する際に濃度センサ39Lによって各色の濃度が検知される。濃度検知パターンPRは、濃度センサ39Rを通過する際に濃度センサ39Rによって各色の濃度が検知される。S3で制御部200は、S2で得られた中間転写ベルト8上の10段階の各色の濃度(以下、画像濃度ともいう)の検知結果とそれらに対応する画像データ濃度とを、各色分、RAM等の記憶部に保存し、処理を終了する。また、保存するデータとしては、
図7(b)に示すような横軸に10段階の画像データ濃度、縦軸に画像データ濃度に対応する濃度センサ39によって得られた画像濃度の検知結果をプロットしたときのグラフを1次式に近似した場合の傾きの値でもよい。傾きの値であれば記憶部に保存するデータ数を減らすことができるため記憶部の記憶領域を圧迫しない。
【0025】
走査光学装置3の回転多面鏡33の汚れによる劣化状態を検知するには、回転多面鏡33が汚れていない状態の画像濃度の検知結果を初期データとして予め記憶部に記憶しておく必要がある。初期データは、例えば工場出荷時や画像形成装置100のユーザの使用場所への設置時、走査光学装置3の交換時など、走査光学装置3の稼働が少ない状態での検知結果を記憶部に記憶しておけばよい。
【0026】
(走査光学装置の劣化状態の検知と寿命について)
続いて、2つの濃度センサ39L、39Rから得られる検知結果(以下、濃度データという)の比較、及び走査光学装置3の寿命の判断について
図8、
図9を用いて説明する。
図8は濃度の初期データと、走査光学装置3の使用が進み回転多面鏡33の反射面33aが汚れたときの濃度データとの違いを説明するグラフである。
図9は走査光学装置3の寿命判断処理を示すフローチャートである。
図8(a)は濃度検知パターンPL(左端)中のイエローのパターンの濃度センサ39Lによる濃度の検知結果を示すグラフであり、横軸に画像データ濃度を示し、縦軸に検知結果を示す。
図8(b)は濃度検知パターンPR(右端)中のイエローのパターンの濃度センサ39Rによる濃度の検知結果を示すグラフであり、横軸に画像データ濃度を示し、縦軸に検知結果を示す。
図8(c)は濃度検知パターンPL(左端)中のブラックのパターンの濃度センサ39Lによる濃度の検知結果を示すグラフであり、横軸に画像データ濃度を示し、縦軸に検知結果を示す。
図8(d)は濃度検知パターンPR(右端)中のブラックのパターンの濃度センサ39Rによる濃度の検知結果を示すグラフであり、横軸に画像データ濃度を示し、縦軸に検知結果を示す。いずれも、破線は初期データ、実線は走査光学装置3の使用が進み回転多面鏡33の反射面33aが汚れたとき(以下、通紙後という)のデータ(以下、通紙後データという)を示している。
【0027】
図8において、走査光学装置3の使用が進むと回転多面鏡33の反射面33aが汚れる。このため、画像濃度データ(横軸)に対し実際の画像濃度(縦軸)は薄くなり小さい値となって検知される。そのため、通紙後データ(実線)は、初期データ(破線)の下側にプロットされる。言い換えれば、初期データの傾きよりも通紙後データの傾きは小さくなる。ここで、初期に対して、通紙後の濃度の低下率(以下、濃度低下率という)を定義する。
図8(a)において、例えば、画像データ濃度(横軸)が5のときの初期の検知結果をDs、通紙後の検知結果をDeとする。このとき、濃度低下率は((Ds-De)/Ds)×100(単位%)と表す。濃度低下率の数字が大きいほど初期に対して濃度が低下している、すなわち、走査光学装置3が劣化した状態となっていることを表している。例えば、Ds=5とすると、初期では、De=Dsであり、濃度低下率は0%、通紙後例えばDs=2とすると濃度低下率は60%となる。
【0028】
また、
図8(a)と
図8(b)を比較すると、(b)の方が(a)よりも濃度低下率が大きいことがグラフからわかる。言い換えれば、Dsに対してDeの下がり幅が(b)のほうが(a)よりも大きい。これは、
図5(a)で説明したように、回転多面鏡33の反射面33aの回転方向側が汚れ易いため、イエローは記録材10の左端よりも右端側の光量がより低下するからである。同様の理由により、ブラックの濃度低下率はイエローと異なり(逆になる)記録材10の左端側のほうが大きい(
図8(c))。この関係、つまり第1の走査光学系(イエロー)と第2の走査光学系(ブラック)では濃度低下率の大きい像高が逆になる(左右が逆になる)ことが、対面走査光学系の大きな特徴である。
【0029】
(走査光学装置の劣化状態の検知処理)
続いて
図9のフローチャートを用いて走査光学装置3の寿命の判断について説明する。
図9に示す走査光学装置3の寿命を判断する処理は、中間転写ベルト8に濃度検知パターンPL、PRを形成するため、記録材10への画像形成が行われていない第1のタイミングよりも後の第2のタイミングで実行される。説明に先立ち、上述で説明した各色、各濃度センサ39での濃度低下率について、以下のように定義する。
D1L:第1の走査光学系(Y、M)の左端側(濃度センサ39L)の濃度低下率
D1R:第1の走査光学系(Y、M)の右端側(濃度センサ39R)の濃度低下率
D2L:第2の走査光学系(K、C)の左端側(濃度センサ39L)の濃度低下率
D2R:第2の走査光学系(K、C)の右端側(濃度センサ39R)の濃度低下率
【0030】
図9において、S1~S3までは
図6のS1~S3と同様の処理であるため説明を省略し、S4と一点鎖線で囲んだ比較部における各濃度低下率の比較について説明する。また、制御部200は、上述した初期のタイミングで濃度検知パターンPL、PRを濃度センサ39L、39Rによって検知し、検知結果を記憶部に記憶しているものとする。S4で制御部200は、予め記憶部に記憶されている初期の濃度の検知結果と、S1からS3で検知した今回の濃度の検知結果とを比較する。制御部200は、初期に対する今回の濃度低下率D1L(第1の値)、D1R(第2の値)、D2L(第3の値)、D2R(第4の値)を算出する。
【0031】
S5で制御部200は、第1の走査光学系の左端の濃度低下率D1Lが第1の走査光学系の右端の濃度低下率D1Rよりも大きく、かつ、第2の走査光学系の左端の濃度低下率D2Lが第2の走査光学系の右端の濃度低下率D2Rよりも小さいか否かを判断する。S5で制御部200は、D1L>D1RかつD2L<D2Rであると判断した場合、処理をS6に進め、D1L>D1RかつD2L<D2Rではないと判断した場合、処理をS7に進める。S6で制御部200は、S5で大きくなった方の濃度低下率D1L、D2Rのいずれか一方が、寿命と判断する所定の閾値である濃度低下率REFよりも大きいか否かを判断する。S6で制御部200は、D1L、D2Rのいずれか一方がREFよりも大きいと判断した場合、処理をS9に進め、D1L、D2RともにREF以下である判断した場合、処理をS10に進める。S9で制御部200は、走査光学装置3の寿命であると判断し処理を終了する。S10で制御部200は、走査光学装置3の寿命と判断せず、走査光学装置3を継続して稼働させ、処理を終了する。
【0032】
S7で制御部200は、第1の走査光学系の左端の濃度低下率D1Lが第1の走査光学系の右端の濃度低下率D1Rよりも小さく、かつ、第2の走査光学系の左端の濃度低下率D2Lが第2の走査光学系の右端の濃度低下率D2Rよりも大きいか否かを判断する。S7で制御部200は、D1L<D1RかつD2L>D2Rであると判断した場合、処理をS8に進め、D1L<D1RかつD2L>D2Rではないと判断した場合、処理をS11に進める。S11で制御部200は、回転多面鏡33の反射面33aの汚れによる濃度低下とは合致しないため、走査光学装置3の寿命とは判断せず、走査光学装置3を継続して稼働させ、処理を終了する。
【0033】
S8で制御部200は、S7で大きくなった方の濃度低下率D1R、D2Lのいずれか一方が、寿命と判断する濃度低下率REFよりも大きいか否かを判断する。S8でD1R、D2Lのいずれか一方がREFよりも大きいと判断した場合、処理をS12に進め、D1R、D2LともにREF以下であると判断した場合、処理をS11に進める。S12で制御部200は、回転多面鏡33の反射面33aの汚れによる濃度低下であると判断し、走査光学装置3の寿命であると判断して、処理を終了する。制御部200は、走査光学装置3の寿命を判断する判断手段としても機能する。なお本実施例では、濃度低下率REFの値は例えば30%を設定している。濃度低下率REFの値は、例えば、回転多面鏡33の反射面33aの汚れについて、濃度低下率がその値以上に低下すると、記録材10に形成される画像の品質が損なわれるような値に設定することが考えられる。なお、本実施例では、S6の濃度低下率REFとS8の濃度低下率REFとを同じ値としたが、異なる値にしてもよい。また、制御部200は、S6及びS8の判断処理において、濃度低下率が2つともREFより大きくなったと判断した場合に寿命と判断してもよい。本実施例の制御部200は、以上の処理により走査光学装置3の寿命を判断している。走査光学装置3の寿命と判断された場合は、ユーザに走査光学装置3の交換を促す情報を例えば画像形成装置100が有する報知手段である操作パネル(不図示)上に表示してもよい。以上のように、画像形成装置に使用される走査光学装置の回転多面鏡の汚れによる劣化状態の検知を、専用の光学検知素子を用いず、少なくとも2つの画像濃度検知手段の結果を比較することで、容易な手段で正確に行うことが可能となる。
【0034】
(他の実施例)
本実施例では1つの回転多面鏡33で4色分のレーザ光Lを走査している。しかし、例えば
図10の示すように、1つの回転多面鏡33で2色分のレーザ光を走査する形態を2セット有する走査光学装置40でも同様の寿命の判断が可能である。
図10において
図2、
図3の走査光学装置3と同様の機能を有する部位には同様の符号を記す。この場合は、イエローとシアンが第1の走査光学系、マゼンタとブラックが第2の走査光学系となる。
なお、本実施例では濃度低下率の算出に特定の画像データ「5」での検知結果を用いたが、これに限定するものではない。
また、濃度低下率として
図8でプロットしたグラフの傾きから濃度低下率を算出しても寿命の判断は可能である。傾きから算出する場合は、初期の傾きをDs’、通紙後の傾きをDe’としたときに、濃度低下率は((Ds’-De’)/Ds’)×100(単位%)となる。
以上説明したように、本実施例によれば、専用の光学素子を用いずに、カラーの画像形成装置に使用される走査光学装置の回転多面鏡の汚れによる劣化状態を検知することができる。本実施例では、画像印刷領域内に配置された少なくとも2つの画像濃度を検知する濃度センサの結果を比較することで、容易な手段で正確に行い、走査光学装置の寿命を判断することができる。以上、本実施例によれば、専用の光学検知素子を使用せず、容易な方法で走査光学装置の回転多面鏡の汚れを精度よく検知することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 感光ドラム
3 走査光学装置
33 回転多面鏡
33a 反射面
39L、39R 濃度センサ
200 制御部