(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】給電経路ユニット、画像形成装置、および給電経路ユニットの組立方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20241111BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241111BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20241111BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20241111BHJP
H01R 4/48 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
G03G21/16 152
G03G15/00 680
B41J29/00 B
H05K7/00 F
B41J29/00 C
H01R4/48 C
(21)【出願番号】P 2020156946
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河角 良一
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-242070(JP,A)
【文献】特開2016-012066(JP,A)
【文献】特開2017-194630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0295336(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0009173(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/06
G03G 13/34
G03G 13/14 -13/16
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/06
G03G 15/14 -15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/04
G03G 21/10 -21/12
G03G 21/14
G03G 21/16 -21/18
G03G 21/20
B41J 29/00 -29/70
H01F 41/06 -41/079
H01F 41/082-41/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面を有し、自動組立工具を用いて前記複数の面に導電線材を配設して電気的な接続経路を構成する給電経路ユニットであって、
前記導電線材の一部を固定するための線材固定部と、
前記複数の面を経由して連続的に形成され、前記線材固定部に固定された導電線材を配設するための経路を形成する溝部と、
前記導電線材の前記溝部に配設された部分の
前記接続経路における両側で、
それぞれ前記導電線材に接するように、
前記複数の面の第1の面の側に配置された第1の接点および
前記複数の面の前記第1の面に対して所定の角度をなす第2の面の側に配置された第2の接点と、
を備えることを特徴とする給電経路ユニット。
【請求項2】
前記線材固定部は、前記給電経路ユニットの縁周部に形成された第1の係止部を有し、
前記線材固定部への前記導電線材の固定は、前記導電線材を前記第1の係止部に巻き付けることでなされることを特徴とする請求項1に記載の給電経路ユニット。
【請求項3】
前記線材固定部は、前記給電経路ユニットの縁周部に形成された第1の係止部と第2の係止部とを有し、
前記線材固定部への前記導電線材の固定は、前記導電線材を前記第1の係止部に巻き付け、さらに前記巻き付けた導電線材を前記第2の係止部を経由して前記第1の係止部への巻き付け方向とは反対方向に配線することでなされることを特徴とする請求項1に記載の給電経路ユニット。
【請求項4】
前記第1の係止部は、前記面に形成された軸形状または平板形状の突起であることを特徴とする請求項2または3に記載の給電経路ユニット。
【請求項5】
前記複数の面のうちの、前記線材固定部が設けられた
前記第1の面に設けられ、前記第1の接点を取り付けるための第1の取付部と、
前記複数の面のうちの、
前記第2の面に設けられ、前記第2の接点を取り付けるための第2の取付部と、
を備え、
前記第1の取付部と前記第2の取付部は、前記線材固定部に固定された導電線材を配線した際の前記導電線材の経路となる2つのスリットを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の給電経路ユニット。
【請求項6】
前記第1の接点と前記第2の接点は、円筒形状の圧縮バネであり、
前記第1の取付部と前記第2の取付部は、前記圧縮バネを取り付けるための円筒部であることを特徴とする請求項5に記載の給電経路ユニット。
【請求項7】
前記給電経路ユニットは、前記複数の面を経由して連続的に形成された前記溝部を複数備えており、前記線材固定部を前記溝部ごとに備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の給電経路ユニット。
【請求項8】
画像形成ユニットが取り外し可能に装着される装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記装置本体に装着された画像形成ユニットに電圧を供給するための高圧ユニットと、
前記装置本体に設けられ、前記高圧ユニットと前記画像形成ユニットとを電気的に接続し前記高圧ユニットから前記画像形成ユニットへ電圧を供給する経路を構成する給電経路ユニットと、
を備え、
前記給電経路ユニットとして、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の給電経路ユニットを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
自動組立工具を用いて給電経路ユニットに導電線材を配設して電気的な接続経路を構成する給電経路ユニットの組立方法であって、
前記自動組立工具が有するアームにより前記自動組立工具が有する固定台に固定された前記給電経路ユニットが有する線材固定部に導電線材を巻き付けて固定する工程と、
前記アームが前記線材固定部に固定された導電線材を前記給電経路ユニットが有する複数の面のうちの第1の面に配線する工程と、
前記給電経路ユニットが有する複数の面のうちの前記第1の面に対して所定の角度をなす第2の面を前記アームに対向させるために前記固定台を前記所定の角度だけ回転させる工程と、
前記アームが前記線材固定部に固定された導電線材を前記第1の面から前記第2の面に連続的に配線する工程と、
前記第1の面に配線された前記導電線材に第1の接点を接触させ、前記第2の面に配線された前記導電線材に第2の接点を接触させる工程と、
を経て、前記給電経路ユニットに前記導電線材を配設して電気的な接続経路を構成することを特徴とする給電経路ユニットの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続経路を構成する給電経路ユニット、これを備えた複写機、プリンタ等の画像形成装置、および給電経路ユニットの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧を必要とする被供給ユニットへ給電する構成として、高電圧の供給源から被供給ユニットまで、高電圧に耐えうるシールドを備えたケーブルを接続する構成が一般的であった。
【0003】
しかし、近年の電子写真方式の画像形成装置における高電圧の給電構成は、前述のケーブルではなく、線バネ等の導電線材を用いた構成が主流となっている。具体的には、高電圧の供給源から被供給ユニットまでの間に、給電経路ユニットを設けた構成が知られている。
【0004】
特許文献1には、給電経路ユニット上に導電線材である線バネとその線バネの両端に接続された圧縮バネとを備え、一方の圧縮バネを供給源に接続し、他方の圧縮バネを被供給ユニットに接続することで、高電圧の給電経路を構成する仕組みが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の画像形成装置においては、小サイズ・低コスト・組立の生産性向上を可能とする部品やユニット構成が求められている。
【0007】
この結果として、近年主流の給電構成においては、小サイズに収めるために線バネ等の導電線材が給電経路ユニットの複数の面を経由するとともに、線材の形状の複雑化が進みつつある。
【0008】
また更に、このような導電線材を人の手で組み付けることは、組立の生産性低下から高コストとなることが考えられ、それに対する対策として人の手に依らず、例えば導電線材の配設を自動組立工具により行える構成が望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、給電経路ユニットの複数の面を経由した導電線材の配設を自動組立工具により行えるようにし、給電経路ユニットの低コスト化・組立の生産性向上を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の代表的な構成は、複数の面を有し、自動組立工具を用いて前記複数の面に導電線材を配設して電気的な接続経路を構成する給電経路ユニットであって、前記導電線材の一部を固定するための線材固定部と、前記複数の面を経由して連続的に形成され、前記線材固定部に固定された導電線材を配設するための経路を形成する溝部と、前記導電線材の前記溝部に配設された部分の前記接続経路における両側で、それぞれ前記導電線材に接するように、前記複数の面の第1の面の側に配置された第1の接点および前記複数の面の前記第1の面に対して所定の角度をなす第2の面の側に配置された第2の接点と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電経路ユニットの複数の面を経由した導電線材の配設を自動組立工具で行うことができ、給電経路ユニットの低コスト化・高生産性化を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1における画像形成装置のA-A矢視断面の模式図である。
【
図7】
図6における給電経路ユニットの部分拡大図である。
【
図9】
図8における給電経路ユニットの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、各図に共通する部材、部分には同一の符号を記すものとする。
【0014】
(画像形成装置)
まず
図1を用いて本実施例における画像形成装置について説明する。
図1は本実施例における画像形成装置100の縦断正面模式図である。
【0015】
この画像形成装置100は、電子写真プロセスを用いたタンデム方式-中間転写方式の4色フルカラーのレーザープリンタであり、パソコン等の外部ホスト装置(不図示)から制御回路部(不図示)に入力した画像情報に基づいてシートSにトナー画像形成を行う。
【0016】
画像形成装置本体(以下、装置本体と記す)100Aの内部の画像形成部として、第1~第4の4つの作像ユニットUを有する。第1~第4の作像ユニットUは、イエロー(Y)色,マゼンタ(M)色,シアン(C)色と、これにブラック(K)色を加えた4色のトナー像をそれぞれ形成する。第1~第4の作像ユニットUは、装置本体100Aに対して取り外し可能に装着される画像形成ユニットである。
【0017】
第1の作像ユニットUYはイエロー(Y)色のトナー像を形成する。第2の作像ユニットUMはマゼンタ(M)色のトナー像を形成する。第3の作像ユニットUCはシアン(C)色のトナー像を形成する。第4の作像ユニットUKはブラック(K)色のトナー像を形成する。各作像ユニットUは、像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)2を有する。また各作像ユニットUは、ドラム2に作用するプロセス手段としての、帯電ローラ3、レーザースキャナ(露光器)4、現像器5、1次転写ローラ6、ドラムクリーナ7を有する。
【0018】
なお、図の煩雑を避けるために、第1の作像ユニットUY以外の作像ユニットUM,UC,UKにおけるこれらの機器に対する符号の記入は省略する。
【0019】
また、装置本体100Aの第1~第4の作像ユニットUの上側に中間転写ベルトユニット8を有する。また、装置本体100Aの第1~第4の作像ユニットUの下側にシートカセット11を有する。更に、23Y,23M,23C,23Kはそれぞれ第1~第4の作像ユニットUに対する補充用トナーを収容している着脱交換可能なトナーボトルであり、中間転写ベルトユニット8の上側に配設されている。各作像ユニットUY,UM,UC,UKが備える現像器5に対し、それぞれ対応するトナーボトル23Y,23M,23C,23Kからトナー補給機構(不図示)により、適時適量のトナー補給がなされる。
【0020】
画像形成動作は、これら第1~第4の作像ユニットUのドラム2に潜像を形成する必要がある。その準備動作として、ドラム2に圧接された帯電ローラ3に高電圧をかけ、ドラム2の回転に従ってその表面を均一に帯電させる。
【0021】
次に、現像器5の内部の現像スリーブ5Aに、帯電ローラ3とは異なる経路で高電圧をかけ、現像器5内部の電化を帯びたトナーを現像スリーブ5Aの表面に一律にコートさせる。
【0022】
そしてレーザースキャナ4のレーザー走査により、ドラム2の表面の電位変化による潜像が形成され、現像スリーブ5Aのトナーがドラム2の潜像をトナー像として現像する。
【0023】
このドラム2上のトナー像が、中間転写ベルト(中間転写体)9の回転に応じ、上記各色の順でベルト9の表面に1次転写される。これにより、ベルト9上にY+M+C+Kの4色重畳のトナー像が形成される。
【0024】
装置本体100Aの内部の右側にはシートSを下から上へ搬送する上行き搬送路12(
図1中の点線)が配設されている。この搬送路12には下側から上側に順に、繰り出しローラ13、レジストローラ対14a,14b、2次転写ローラ16、定着器(定着装置)19、排出ローラ21が配設されている。2次転写ローラ16は中間転写ベルトユニット8の右側のベルト懸回ローラ10に対してベルト9を介して所定の押圧力で当接して、ベルト9と2次転写ニップ部17を形成している。
【0025】
所定の制御タイミングにて繰り出しローラ13が駆動されることでシートカセット11からシート(記録材、用紙)Sが1枚分離給送され、搬送路12に導入される。そして分離給送されたシートSは、レジストローラ対14a,14bにより所定の制御タイミングにて2次転写ニップ部17に導入されて挟持搬送される。これにより、2次転写ニップ部17にて、ベルト9上の4色重畳のトナー像が一括してシートSに2次転写され、未定着のトナー像がシートS上に形成される。
【0026】
2次転写ニップ部17を出たシートSは、定着器19に導入されて熱と圧力によるトナー像の定着処理を受ける。定着器19を出たシートSは、画像形成物として排出ローラ21により装置本体100Aの上面部である排出トレイ22に排出される。
【0027】
(給電経路構成)
ここで給電経路の構成を詳細に説明する。
図2は
図1における画像形成装置のA-A矢視断面を表した模式図である。
【0028】
画像形成装置100の装置本体100Aには、高圧ユニット70と、給電経路ユニット60が設けられている。高圧ユニット70は、装置本体100Aに装着された作像ユニットUに電圧を供給するための供給源である。給電経路ユニット60は、高圧ユニット70と作像ユニットUとを電気的に接続し、供給源である高圧ユニット70から被供給ユニットである作像ユニットUへ電圧を供給する経路を構成する給電経路ユニットである。
【0029】
図2において、作像ユニットUは、装置本体100Aの枠体を構成する前側板50と後側板51の間に支持されている。同様に、中間転写ベルトユニット8は、装置本体100Aの枠体を構成する前側板50と後側板51の間に支持されている。作像ユニットUに高電圧を供給する供給源である高圧ユニット70は、高電圧基板71を備えており、後側板51の裏面に配置されている。
【0030】
給電経路ユニット60は、後側板51の裏面に配置されている。給電経路ユニット60は、装置本体100Aに装着される作像ユニットUと装置本体100Aに配置された高圧ユニット70との間に設けられている。高圧ユニット70から作像ユニットUへの高電圧の供給は、給電経路ユニット60を介して行われる。
【0031】
給電経路ユニット60は、高圧ユニット70における高電圧基板71との経路である基板接点83と、作像ユニットUの帯電ローラ3へ高電圧を供給する帯電接点81と、現像スリーブ5Aへ高電圧を供給する現像接点82と、を備える。帯電接点81、現像接点82、基板接点83は、円筒形状の圧縮バネにより構成されており、給電経路ユニット60において給電経路を形成すると共に、ユニット間の位置ばらつきを吸収する役目も担っている。
【0032】
後側板51の裏面の空間は高圧ユニット70以外にも各種のユニットが配置されるため、装置本体100Aの小サイズ化のためには、ユニットが専有する空間が最小となるよう効率よく配置しなければならない。そこで、給電経路ユニット60においては、所定の角度をなす複数の面を用いることで、装置本体の高さ方向(鉛直方向)のサイズの最小化を狙っている。具体的には、給電経路ユニット60は、高圧ユニット70に対向する第1の面(裏側面)に基板接点83を配置している。また給電経路ユニット60は、第1の面に対して所定の角度(ここでは180°)をなす第2の面(表側面)であって、作像ユニットUに対向する第2の面に帯電接点81と現像接点82を配置している。
【0033】
図3は作像ユニットUを接点側(給電経路ユニット60の接点が当接する側)から見た斜視図である。作像ユニットUのユニット筐体には、給電経路ユニット60の帯電接点81が当接する接点板U1と、現像接点82が当接する接点板U2が配置されている。接点板U1,U2は、作像ユニットUにおいて、作像ユニットUの長手方向の一方の端部側であって、装置本体100Aの枠体をなす後側板51に配置された給電経路ユニット60と対向する側に配置されている。作像ユニットUにおいて、接点板U1は給電経路ユニット60の帯電接点81に対応する位置に配置され、接点板U2は給電経路ユニット60の現像接点82に対応する位置に配置されている。作像ユニットUの接点板U1,U2の周囲には筒状のガイド形状が形成されており、給電経路ユニット60の帯電接点81と現像接点82を各接点板U1,U2に確実に導くよう構成されている。
【0034】
図4、
図5は給電経路ユニット60の斜視図である。
図4には基板接点83を配置された給電経路ユニット60の裏側面、
図5には帯電接点81と現像接点82を配置された給電経路ユニット60の表側面が示されている。
【0035】
給電経路ユニット60は、所定の角度をなす複数の面を有している。ここでは、給電経路ユニット60は、所定の角度をなす複数の面として、高圧ユニット70に対向する裏側面61と、作像ユニットUに対向する表側面62と、を有している。裏側面61を第1の面とした場合、表側面62は裏側面61に対して所定の角度(ここでは180°)をなす第2の面となる。なお、給電経路ユニット60が有する複数の面は前述の裏側面と表側面に限定されるものではなく、また複数の面がなす所定の角度も前述の180°に限定されるものではない。
【0036】
給電経路ユニット60は、導電線材である導電線200の端部を固定するための線材固定部63と、複数の面61,62を経由して連続的に形成され、線材固定部63に固定された導電線200を配設するための経路を形成する溝部64と、を備えている。線材固定部63(
図8参照)については後述する。
【0037】
給電経路ユニット60は、第2の面となる表側面62に帯電接点81および現像接点82を備え、第1の面となる裏側面61に基板接点83を備えている。給電経路ユニット60の帯電接点81と現像接点82は、それぞれ各作像ユニットUの接点板U1,U2に対応し、合計で8個が配置されている。また、基板接点83も同様に、帯電接点81と現像接点82に対応し、合計で8個が配置されている。給電経路ユニット60は、裏側面61から表側面62に連続的に形成された溝部64を複数備えている。ここでは、溝部64として、基板接点83と帯電接点81とをつなぐ溝部64と、基板接点83と現像接点82とをつなぐ溝部64を、合計で8本備えている。
【0038】
給電経路ユニット60は、第1の円筒部65(
図7参照)と、第2の円筒部66(
図9参照)と、を備えている。第1の円筒部65と第2の円筒部66は、円筒形状の圧縮バネである接点を取り付けるための取付部である。第1の円筒部65は、第1の接点である基板接点83を取り付けるための第1の取付部である。第1の円筒部65は、前記線材固定部63が設けられた第1の面である裏側面61に設けられている。第2の円筒部66は、第2の接点である帯電接点81、現像接点82を取り付けるための第2の取付部である。第2の円筒部66は、裏側面61に対して所定の角度(ここでは180°)をなす第2の面である表側面62に設けられている。
【0039】
各基板接点83からは、
図5に示す溝部64に這わされた8本の導電線を介して、帯電接点81及び現像接点82までの給電経路が形成されている。各溝部64は、断面がコの字の溝形状となるよう形成された経路である。各溝部64の溝の底面に導電線が配設されている。導電線は、ジャンパー線等のシールドや被膜の無い鋼線からなる導電線材である。
【0040】
ここで導電線は、線バネの両端に接点である圧縮バネを一体に構成することも可能であるが、形状が複雑となるため、部品コストが高くなる。更に、組立が困難となるために人の手で組むしかなく、8本と数も多いために組立費用もまた高くなる。よって、このような給電経路ユニット60で低コスト化を実現するには、導電線と端部の圧縮バネを分割し、更に導電線は人の手に依らず、ロボットアーム等を活用した自動組立工具で組むのが望ましいことが分かる。
【0041】
そこで、本実施例における給電経路ユニット60は、後述する自動組立工具400を用いて前記複数の面61,62に導電線材である導電線200を配設して電気的な接続経路を構成する。
【0042】
(導電線の自動組立工具)
次に、導電線の自動組立工具に関し詳細に説明する。
図6は給電経路ユニット60を装着した状態の自動組立工具400を示す斜視図である。
【0043】
図6において、給電経路ユニット60は
図4に示される裏側面61を上面として自動組立工具400に装着されている。また自動組立工具400は、ユニット固定台320、及び固定台回転軸310A,310Bを備える。更に回転軸310A上に配置された回転ギア311と、駆動ギア312、及び導電線を配設するアーム301を備える。
【0044】
アーム301は中空になっており、外部の導電線供給装置300から供給された導電線がその内部を通り、アーム301の先端のノズル口まで続いている。
【0045】
アーム301は、6軸程度の所定の自由度を備えた多関節ロボットアームであって、導電線の配設対象である給電経路ユニット60に設けられた経路に沿って、3次元的に移動可能になっている。
【0046】
導電線の配設は、給電経路ユニット60の経路に沿ってアーム301の先端のノズルを移動させることで行われる。しかし、ただノズルを移動させるだけでは狙った位置への配設は出来ず、まず導電線の配設開始点近傍を固定した上で、ノズルの移動に従い、導電線を繰り出していく必要がある。
【0047】
給電経路ユニット60における各経路への導電線の配設開始は、
図6における位置Bから行われる。位置Bとは、
図4における基板接点83の配置の近傍であり、その拡大図を
図7に示す。
【0048】
給電経路ユニット60は、複数の面を経由して形成された溝部64(
図5参照)、第1の円筒部65(
図7参照)、第2の円筒部66(
図9参照)のほかに、導電線材である導電線200の端部を固定するための線材固定部63を備えている。
図7において、導電線200が給電経路ユニット60の裏側面61に配設されており、配設の開始点でもある導電線200の先端が201で示されている。
【0049】
線材固定部63は、第1の係止部である軸部63aと第2の係止部である引っ掛け部63bとを有している。線材固定部63としての軸部63a、引っ掛け部63bは、給電経路ユニット60の縁周部に形成されている。導電線200の固定は、導電線200を軸部63aに巻き付け、さらに巻き付けた導電線200を引っ掛け部63bを経由して軸部63aへの巻き付け方向とは反対方向に配線することでなされる。
【0050】
第1の円筒部65は、第1の接点である基板接点83(
図4参照)を取り付けるための第1の取付部である。第1の円筒部65は、線材固定部63が設けられた裏側面61に設けられている。基板接点83は円筒形状の圧縮バネであり、第1の円筒部65は導電線200の経路となる2つのスリットを有している。第2の円筒部66(
図9参照)については後述する。
【0051】
第1の円筒部65は、2つのスリットを通して導電線200が配設された後、その内周に沿って、円筒形状の圧縮バネである基板接点83が落とし込まれる。そして、高圧ユニット70で基板接点83を付勢することで、高電圧基板71→基板接点83→導電線200の給電経路が形成される。接点間の接触はバネの反力によって保証されるため、ユニットの位置ばらつきが生じても、接点間が浮いて給電経路が途切れたりすることはない。
【0052】
導電線200の配設に必要な配設開始点近傍での固定は、軸部63aに導電線200を巻き付けることで行われる。
図6においては、導電線200の固定および配設は、時計回り方向に3巻き程度の巻き付けがなされており、その後、引っ掛け部63bの下を通し、ついで第1の円筒部65を通る経路となっている。
【0053】
導電線200を線材固定部63に固定することにより、アーム301のノズルの移動で導電線200が内部から引き出され、経路の終端まで配設することができる。
【0054】
軸部63aへの巻き付け数は、3巻きに限定されず、多くても少なくても良いが、多い場合は巻き付けのみで十分な固定が期待できるため、引っ掛け部63bを経由することなく第1の円筒部65を通らせて良い。すなわち、線材固定部63は、給電経路ユニットの縁周部に形成された第1の係止部としての軸部63aのみを有し、導電線200の固定は、導電線200を軸部63aに巻き付けることでなされる構成としても良い。しかし、巻き付け数が少ない場合は、導電線200を確実に固定するために、引っ掛け部63bを経由する構成が望ましい。引っ掛け部63bを経由する際は、引っ掛けた後の導電線の配設方向を、軸部63aへの巻き付け方向とは反対方向にすることで、ノズル移動に伴って導電線200にかかる張力が軸部63aへの巻き付けを締め付ける方向に働き、確実な固定効果が得られる。
【0055】
第1の円筒部65を経由した後の導電線200の経路は、
図6に示すスリット64aから給電経路ユニット60の表側面62(
図5に示す面)へと移る。
【0056】
ここで、表側面62に対する導電線200の配設は、
図6に示す状態では困難であることが自明であるため、アーム301に対する給電経路ユニット60の相対配置を変更する必要がある。
【0057】
自動組立工具400においては、給電経路ユニット60を回転させることで行われる。
図6に示す駆動ギア312を回転させて、駆動ギア312と噛み合っている回転ギア311を矢印X方向へと回転させることで、給電経路ユニット60が固定されたユニット固定台320を、回転軸310周りに回転させることができる。
【0058】
なお、導電線200を固定するための固定部であるが、必ずしも給電経路ユニット60に設ける必要はなく、配設の開始点近傍である自動組立工具400側に設けることも可能である。但しその場合は、給電経路ユニット60を自動組立工具400から取り外す際に、導電線200の固定を自動組立工具400から解除しなければならないため、固定部のみならず固定解除の機構も必要となる。これは、上述の給電経路ユニット60を回転させる際に、自動組立工具400側に設けた固定部および固定解除機構も共に回転させる必要があるということである。この場合、自動組立工具の構成規模の肥大化を招き、治具のコストや、メンテナンスにかかるコストも不利となる。
【0059】
これらのことから、導電線200を固定するための固定部は給電経路ユニット60の上への配置が有利であることが分かる。
【0060】
図8に、給電経路ユニット60を180°回転させた状態の自動組立工具400を示す。
図8に示す通り、回転によって給電経路ユニット60は、
図5に示される表側面62を上面として装着されている。
図8におけるアーム301は、導電線200の配設が終了した位置にあり、この状態の給電経路ユニット60の部分拡大図を
図9に示す。
【0061】
図9においては、スリット64aを経由した導電線200が溝部64の中を通り、第2の円筒部66を経由して、導電線200の終端である202まで配設されている。
【0062】
第2の円筒部66は、第2の接点である帯電接点81、現像接点82(
図5参照)を取り付けるための第2の取付部である。第2の円筒部66は、第1の面である裏側面61に対して所定の角度をなす第2の面である表側面62に設けられている。帯電接点81、現像接点82は円筒形状の圧縮バネであり、第2の円筒部66は、第1の円筒部65と同様に、導電線200の経路となる2つのスリットを有している。
【0063】
第2の円筒部66は、2つのスリットを通して導電線200が配設された後に、その内周に沿って、円筒形状の圧縮バネである帯電接点81(または現像接点82)が落とし込まれる。そして、作像ユニットUの装置本体100Aへの装着により、作像ユニットUにより帯電接点81(または現像接点82)を付勢する。これにより、高電圧基板71→基板接点83→導電線200→帯電接点81(または現像接点82)→作像ユニットUの給電経路が形成される。接点間の接触はバネの反力によって保証されるため、ユニットの位置ばらつきが生じても、接点間が浮いて給電経路が途切れたりすることはない。
【0064】
導電線200を配線する溝部64の途中には、爪部64b,64cが形成されており、導電線200を爪部64b,64cの下を通して配設することで、ユニットから浮くことがないよう構成されている。
【0065】
終端202の位置まで導電線200を配設した後、アーム301の移動と導電線供給装置300による繰り出しが停止する。その後、ノズル近傍に備えた図示しないカット手段により、導電線200が終端202の位置でカットされ、
図9に示す状態となる。
【0066】
このようにして、自動組立工具400を用いて給電経路ユニット60に導電線200を配設して電気的な接続経路を構成する組立はなされる。すなわち、給電経路ユニット60に導電線200を配設して電気的な接続経路を構成する組立方向は以下の工程を経てなされる。
【0067】
まず第1の工程として、自動組立工具400が有するアーム301により自動組立工具400が有するユニット固定台320に固定された給電経路ユニット60が有する線材固定部63に導電線200を巻き付けて固定する。
【0068】
次に第2の工程として、アーム301が線材固定部63に固定された導電線200を給電経路ユニット60が有する複数の面のうちの裏側面61に配線する。
【0069】
次に第3の工程として、給電経路ユニット60が有する複数の面のうちの裏側面61に対して所定の角度をなす表側面62をアーム301に対向させるために、ユニット固定台320を前記所定の角度だけ回転させる。
【0070】
次に第4の工程として、アーム301が線材固定部63に固定された導電線200を裏側面61から表側面62に連続的に配線する。
【0071】
給電経路ユニット60に導電線200を配設して電気的な接続経路を構成する組立は、これらの工程を経てなされる。
【0072】
給電経路ユニット60における導電線200は8本(8経路)を配設する必要があるため、上記の導電線の組立工程を8回繰り返すことになる。接点から接点までの導電線の組立経路を切り替える際は、アーム301を移動してもよいが、ユニット固定台320を移動させる方が工具として簡易な構成になる。そのため、自動組立工具400においては、
図4に示す移動手段330により長手方向(固定台回転軸310A,310Bの軸線方向)にユニット固定台320を移動して経路切替を行う。
【0073】
導電線200の配設を自動組立工具400により行うことで、人の手で導電線を組み立てるよりも早く、正確にユニット化することが可能となる。
【0074】
上述したように、本実施例によれば、給電経路ユニット60の複数の面61,62に跨って導電線200が配設される場合であっても、自動組立工具400を肥大化させることなく、工具による組立を行えることが分かる。
【0075】
すなわち、本実施例によれば、給電経路ユニット60の複数の面61,62を経由した導電線200の配設を自動組立工具400で行うことができる。また、組立にかかる時間を短縮し、更に組立ミスも減らすことができる。これにより、給電経路ユニット60の低コスト化・高生産性化が可能となる。
【0076】
なお、前述した実施例では、給電経路ユニット60への導電線200の固定は軸部63aへの巻き付けで行っているが、これに限定されるものではない。給電経路ユニット60に設けられた第1の係止部は、軸形状に限らず、平板形状の突起であってもよい。
【0077】
また前述した実施例では、給電経路ユニット60において、導電線200の経路は両面を使用しているために自動組立工具400で180°の回転を行っているが、これに限定されるものではない。自動組立工具の回転量は一定値である必要はなく、例えば、直交する2つの面を導電線の経路としている場合は、それに応じて90°を回転させればよい。すなわち複数の面がなす所定の角度に応じて回転させればよい。
【0078】
また前述した実施例では、画像形成装置における画像形成部として、感光体とこれに作用するプロセス手段を有する作像ユニットが4つ装着される構成を例示したが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0079】
また前述した実施例では、露光手段としてレーザースキャナを使用したが、これに限定されるものではなく、例えばLEDアレイ等を使用しても良い。
【0080】
また前述した実施例では、画像形成装置本体に対して着脱自在な作像ユニット(カートリッジ)として、感光体と、該感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示した。しかし、これに限定されるものではない。感光体の他に、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち、いずれか1つを一体に有するカートリッジであっても良い。
【0081】
更に前述した実施例では、感光体を含むユニットが画像形成装置本体に対して着脱自在な構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば感光体と、感光体に作用する各プロセス手段がそれぞれ着脱可能な構成であっても良い。
【0082】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。また中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像をシートに一括して転写する画像形成装置に限定されるものではない。シート担持体を使用し、該シート担持体に担持されたシートに各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に用いられる給電経路ユニットに本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0083】
また前述した実施例では、記録方式として電子写真方式を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばインクジェット方式等の他の記録方式であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
S …シート
U,UY,UM,UC,UK …作像ユニット
U1,U2 …接点板
50 …前側板
51 …後側板
60 …給電経路ユニット
61 …裏側面
62 …表側面
63 …線材固定部
63a …軸部
63b …引っ掛け部
64 …溝部
64a …スリット
64b,64c …爪部
65 …第1の円筒部
66 …第2の円筒部
70 …高圧ユニット
71 …高電圧基板
81 …帯電接点
82 …現像接点
83 …基板接点
100 …画像形成装置
100A …装置本体
200 …導電線
301 …アーム
310A,310B …固定台回転軸
311 …回転ギア
312 …駆動ギア
320 …ユニット固定台
330 …移動手段
400 …自動組立工具