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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】表面保護フィルム付き封止調光素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20241111BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158721
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2021056505
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2019178606
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【弁理士】
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】平井 真理子
(72)【発明者】
【氏名】武本 博之
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/190181(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159376(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026349(WO,A1)
【文献】特開2006-195209(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0112426(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13-1/1335
G02F 1/13363
G02F 1/1339-1/1341
G02F 1/1347,1/137-1/141
G09F 9/00
G02B 5/20-5/28,5/30
B32B 1/00-43/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと対向するように配置された第2の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと該第2の透明導電性フィルムとの間に配置された高分子分散型液晶層と、を備えた調光素子と、
基材と該基材の一方の側に設けられた粘着剤層とを備え、該調光素子の少なくとも一方の主面に該粘着剤層を介して積層された表面保護フィルムと、
該調光素子および該表面保護フィルムの端面に設けられた封止層と、を有し、
該封止層の厚みをa(μm)、該表面保護フィルムの基材厚みをb(μm)、該調光素子の厚みをc(μm)としたとき、関係式(1)~(3)を全て満たす、表面保護フィルム付き封止調光素子。
a<0.3c (1)
10<b<150 (2)
a<0.4b (3)
【請求項2】
前記第1の透明導電性フィルムおよび前記第2の透明導電性フィルムがそれぞれ、透明基材と、該透明基材の一方の側に設けられた透明電極層と、を有する、請求項1に記載の表面保護フィルム付き封止調光素子。
【請求項3】
前記封止層が、厚み50μmのフィルムに成形した場合の破断伸度が5%~30%である樹脂を含む、請求項1または2に記載の表面保護フィルム付き封止調光素子。
【請求項4】
端面の一部が、封止層が設けられていない露出部である、請求項1から3のいずれかに記載の表面保護フィルム付き封止調光素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の表面保護フィルム付き封止調光素子が2つ以上積層された積層体であって、
該封止層が、該積層体の端面において、一体的に形成されている、積層体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム付き封止調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の透明導電性フィルムとその間に配置された高分子分散型液晶層とを備える調光素子(以下、PDLC素子とも称する)においては、液晶の漏洩防止、耐久性向上等を目的として、端面に封止構造が設けられる場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
PDLC素子の製造においては、ロール・トゥ・ロールプロセスで作製した大面積の長尺状PDLC素子を所望のサイズに切断することが多く、この場合、所望のサイズへの切断後に端面を封止することが必要となる。
【0004】
また、PDLC素子は、傷や汚れ防止のために、その表面に表面保護フィルムが設けられた状態で出荷され、使用者によって表面保護フィルムが剥離された後に使用に供され得る。この場合、ロール・トゥ・ロールプロセスで長尺状のPDLC素子表面に長尺状の表面保護フィルムを貼り合せた後に、所望のサイズへの切断、次いで、封止処理が行われることから、表面保護フィルムの端面にも封止構造が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-6342号公報
【文献】特開2017-97221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、図5に示すように、端面に封止層を有する表面保護フィルム付き封止PDLC素子200に関して、表面保護フィルム20をPDLC素子10から剥離する際に、表面保護フィルム20の端面に存在する封止層30の残滓がバリやカスの状態でPDLC素子10の表面に残存する問題が生じることを見出した。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、端面に封止層を有する表面保護フィルム付き封止PDLC素子であって、封止層の残滓がPDLC素子の表面に残存することなく、表面保護フィルムを剥離可能なPDLC素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく試行錯誤を重ねたところ、封止材に用いられる樹脂等の組成の検討では十分な効果が見られず、また、表面保護フィルムの基材や粘着剤層の厚みを薄くすることでは、バリやカスを大きく防ぐことはできない一方で、表面保護フィルムの浮きの問題が生じることが分かった。そこで、本発明者らがさらに検討を進めたところ、封止層の厚み、表面保護フィルムの基材厚みおよびPDLC素子の厚みが特定の関係を満たすように設計することにより、表面保護フィルムをPDLC素子から剥離する際に、バリやカスの発生を良好に抑制でき、さらには、PDLC素子の端面から封止層が剥離すること(図5の「封止取られ」)を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の1つの局面によれば、第1の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと対向するように配置された第2の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと該第2の透明導電性フィルムとの間に配置された高分子分散型液晶層と、を備えた調光素子と;基材と該基材の一方の側に設けられた粘着剤層とを備え、該調光素子の少なくとも一方の主面に該粘着剤層を介して積層された表面保護フィルムと;該調光素子および該表面保護フィルムの端面に設けられた封止層と;を有し、該封止層の厚みをa(μm)、該表面保護フィルムの基材厚みをb(μm)、該調光素子の厚みをc(μm)としたとき、関係式(1)~(3)を全て満たす、表面保護フィルム付き封止調光素子が提供される。
a<0.3c (1)
10<b<150 (2)
a<0.4b (3)
1つの実施形態において、上記第1の透明導電性フィルムおよび上記第2の透明導電性フィルムがそれぞれ、透明基材と、該透明基材の一方の側に設けられた透明電極層と、を有する。
1つの実施形態において、上記封止層が、厚み50μmのフィルムに成形した場合の破断伸度が5%~30%である樹脂を含む。
1つの実施形態において、上記表面保護フィルム付き封止調光素子の端面の一部が、封止層が設けられていない露出部である。
本発明の1つの局面によれば、上記表面保護フィルム付き封止調光素子が2つ以上積層された積層体であって、該封止層が、該積層体の端面において、一体的に形成されている、積層体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、封止層の厚みと表面保護フィルムの基材厚みと調光素子の厚みとを最適化することにより、表面保護フィルムの剥離時に封止層が凝集破壊して封止層の残滓が残らない条件が見出された。よって、本発明によれば、封止層の残滓をPDLC素子の端面に残存させることなく、表面保護フィルムを剥離可能な表面保護フィルム付き封止PDLC素子が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付き封止PDLC素子の概略断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す表面保護フィルム付き封止PDLC素子の概略上面図である。
図2】露出部を有する表面保護フィルム付き封止PDLC素子の一例の概略上面図である。
図3】1つの実施形態による表面保護フィルム付き封止PDLC素子の製造方法を説明する概略図である。
図4】実施例および比較例の表面保護フィルム付き封止PDLC素子において、表面保護フィルムを剥離した際の剥離状態と各パラメータとの関係を示す図である。
図5】表面保護フィルム付き封止PDLC素子から表面保護フィルムを剥離する際に生じ得る問題を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0013】
A.表面保護フィルム付き封止PDLC素子
A-1.表面保護フィルム付き封止PDLC素子の全体構成
図1(a)は、本発明の1つの実施形態による表面保護フィルム付き封止PDLC素子の概略断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す表面保護フィルム付き封止PDLC素子の概略上面図である。表面保護フィルム付き封止PDLC素子100aは、第1の透明導電性フィルム11と、第1の透明導電性フィルム11と対向するように配置された第2の透明導電性フィルム12と、第1の透明導電性フィルム11と第2の透明導電性フィルム12との間に配置された高分子分散型液晶層13と、を備えたPDLC素子10と;基材21と基材21の一方の側に設けられた粘着剤層22とを備え、PDLC素子10の両方の主面に粘着剤層22を介して積層された(貼り合せられた)表面保護フィルム20a、20bと;PDLC素子10および表面保護フィルム20a、20bの端面の全面に設けられた封止層30と;を有する。
【0014】
図1に示す表面保護フィルム付き封止PDLC素子100aにおいて、表面保護フィルム20aおよび20bのいずれか一方は、目的に応じて省略されてもよい。また、図示しないが、表面保護フィルム付き封止PDLC素子100aの最表面には、例えば出荷までの間、汚れや傷を防止するための汚れ防止フィルムがさらに設けられていてもよく、その場合、封止層は、汚れ防止フィルムの端面も覆うように設けられ得る。
【0015】
上記表面保護フィルム付き封止PDLC素子100aにおいて、封止層30の厚み(図1(b)中、符号“t”で示される)をa(μm)、表面保護フィルム20a、20bの基材21の厚みをb(μm)、PDLC素子10の厚みをc(μm)としたとき、a、b、およびcは、関係式(1)~(3)を全て満たす(ただし、表面保護フィルム20aの基材厚みと表面保護フィルム20bの基材厚みとが異なる場合、それぞれの基材厚みに関して、関係式(1)~(3)が全て満たされる。)。
a<0.3c (1)
10<b<150 (2)
a<0.4b (3)
【0016】
上記封止層30の厚み(a:μm)、表面保護フィルム20a、20bの基材21の厚み(b:μm)およびPDLC素子10の厚み(c:μm)が上記関係式(1)~(3)を全て満たす場合、封止層の薄手化および表面保護フィルム基材の厚手化等に起因して、封止層の破断力が適度に低下するとともに、封止層と表面保護フィルムとの密着力が適度に増大し得る。その結果、封止層をバリやカスの状態でPDLC素子の表面に残存させることなく、また、封止取られの問題を生じさせることなく、表面保護フィルムをPDLC素子から剥離することができる。
【0017】
上記封止層30の厚み(a:μm)、表面保護フィルム20a、20bの基材21の厚み(b:μm)およびPDLC素子10の厚み(c:μm)は、好ましくは関係式(1’)~(3’)のいずれか1つを満たし、より好ましくはいずれか2つを満たし、さらに好ましくは全て満たす(表面保護フィルム20aの基材厚みと表面保護フィルム20bの基材厚みとが異なる場合、それぞれの基材厚みに関して、好ましくは関係式(1’)~(3’)のいずれか1つが満たされ、より好ましくはいずれか2つが満たされ、さらに好ましくは全て満たされる)。
a≦0.2c (1’)
30≦b≦130 (2’)
a≦0.3b (3’)
【0018】
1つの実施形態においては、表面保護フィルム付き封止PDLC素子は、その端面の一部が、封止層が設けられていない露出部とされ得る。露出部は、剥離のきっかけとして機能し得ることから、表面保護フィルムをPDLC素子から剥離する際の操作性が向上され得る。
【0019】
図2は、露出部を有する表面保護フィルム付き封止PDLC素子の一例の概略上面図である。表面保護フィルム付き封止PDLC素子100bは、上面視において、矩形状のPDLC素子本体(PDLC素子として機能する本体部分)110とPDLC素子本体110に駆動電圧を印加するための取出し電極部112、114とを有し、取出し電極部112、114を除く外周端面に封止層30が設けられている。図示例において、取出し電極部112は、PDLC素子本体110を構成する第1の透明導電性フィルムの一部を本体110から外方に延出させることによって形成され、取出し電極部114は、PDLC素子本体110を構成する第2の透明導電性フィルムの一部を本体110から外方に延出させることによって形成され得る。なお、露出部は、図示例とは異なり、取出し電極部以外の任意の適切な箇所に設けられ得る。例えば、上面視矩形状に形成された表面保護フィルム付き封止PDLC素子の1つ以上の角部の端面を露出部とすることができる。
【0020】
A-2.PDLC素子
PDLC素子は、第1の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと対向するように配置された第2の透明導電性フィルムと、該第1の透明導電性フィルムと該第2の透明導電性フィルムとの間に配置された高分子分散型液晶層と、を備える。
【0021】
後述のA-2-3項で説明するとおり、PDLC素子は、電圧の印加に応じて光の拡散度合い(結果として、ヘイズ)が変化する。1つの実施形態においては、PDLC素子のヘイズが所定の値以上(例えば30%以上、好ましくは50%以上)である場合を散乱状態とし、該ヘイズが所定の値未満(例えば30%未満、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)である場合を透明状態ということができる。光の拡散度合いを制御するためにPDLC素子に印加される電圧(駆動電圧)は、例えば100V以下、好ましくは50V以下である。
【0022】
上記PDLC素子の厚みは、上記式(1)を満たす範囲に設定される。PDLC素子の厚みは、例えば30μm~250μm、好ましくは50μm~200μmである。
【0023】
A-2-1.第1の透明導電性フィルム
第1の透明導電性フィルムは、代表的には、第1の透明基材と、第1の透明基材の一方の側に設けられた第1の透明電極層とを有し、第1の透明電極層が高分子分散型液晶層側となるように配置される。第1の透明導電性フィルムは、目的に応じて任意の適切な機能層(屈折率調整層、反射防止層、ハードコート層等)をさらに有していてもよい。
【0024】
第1の透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.1Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.5Ω/□~300Ω/□であり、さらに好ましくは1Ω/□~200Ω/□である。
【0025】
第1の透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0026】
第1の透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0027】
第1の透明電極層は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)等の金属酸化物を用いて形成され得る。この場合、金属酸化物は、アモルファス金属酸化物であってもよく、結晶化金属酸化物であってもよい。あるいは、第1の透明電極層は、銀ナノワイヤー(AgNW)等の金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ(CNT)、有機導電膜、金属層またはこれらの積層体によって形成され得る。第1の透明電極層は、目的に応じて、所望の形状にパターニングされ得る。
【0028】
第1の透明電極層の厚みは、好ましくは0.01μm~0.10μmであり、より好ましくは0.01μm~0.045μmである。
【0029】
第1の透明電極層は、代表的には、スパッタ等の方法を用いて、第1の透明基材の一方の面に設けられ得る。
【0030】
第1の透明基材は、任意の適切な材料から形成される。具体的には、ガラス基材または高分子基材が好ましく用いられ、高分子基材がより好ましい。
【0031】
上記高分子基材は、代表的には熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;セルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも、シクロオレフィン系樹脂またはポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられ得る。上記熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
第1の透明基材の厚みは、好ましくは10μm~100μmであり、より好ましくは20μm~80μmである。
【0033】
A-2-2.第2の透明導電性フィルム
第2の透明導電性フィルムは、代表的には、第2の透明基材と、第2の透明基材の一方の側に設けられた第2の透明電極層とを有し、第2の透明電極層が高分子分散型液晶層側となるように配置される。第2の透明導電性フィルムは、目的に応じて任意の適切な機能層(屈折率調整層、反射防止層、ハードコート層等)をさらに有していてもよい。
【0034】
第2の透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.1Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.5Ω/□~300Ω/□であり、さらに好ましくは1Ω/□~200Ω/□である。
【0035】
第2の透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0036】
第2の透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0037】
第2の透明電極層および第2の透明基材についてはそれぞれ、第1の透明電極層および第1の透明基材と同様の説明を適用することができる。第1の透明導電性フィルムと第2の透明導電性フィルムとは、同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0038】
A-2-3.高分子分散型液晶層
高分子分散型液晶(PDLC)層は、代表的には、樹脂マトリクス中に液晶化合物が分散した構造を有する。PDLC層においては、電圧の印加量に対応する液晶化合物の配向度の変化を介して透過光の散乱度合いを変化させ、これにより、透明状態と散乱状態とを切り替えることができる。
【0039】
1つの実施形態において、PDLC層は、電圧が印加されることにより透明状態となり、電圧が印加されていない状態で散乱状態となる(ノーマルモード)。この実施形態においては、電圧無印加時においては液晶化合物が配向していないために散乱状態となり、電圧の印加によって液晶化合物が配向して液晶化合物の屈折率と樹脂マトリクスの屈折率とが揃う結果、透明状態となる。
【0040】
別の実施形態において、PDLC層は、電圧が印加されることにより散乱状態となり、電圧が印加されていない状態で透明状態となる(リバースモード)。この実施形態においては、透明電極層表面に設けられた配向膜によって電圧無印加時に液晶化合物が配向して透明状態となり、電圧の印加によって液晶化合物の配向が乱れて散乱状態となる。
【0041】
上記液晶化合物としては、非重合型の任意の適切な液晶化合物が用いられる。例えば、ネマティック型、スメクティック型、コレステリック型液晶化合物が挙げられる。透過モードにおいて優れた透明性を実現する観点からは、ネマティック型液晶化合物を用いることが好ましい。上記ネマティック型液晶化合物としては、ビフェニル系化合物、フェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルベンゼン系化合物、アゾキシベンゼン系化合物、アゾベンゼン系化合物、アゾメチン系化合物、ターフェニル系化合物、ビフェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルビフェニル系化合物、フェニルピリジン系化合物、シクロヘキシルピリミジン系化合物、コレステロール系化合物等が挙げられる。
【0042】
PDLC層における液晶化合物の含有割合は、例えば10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。該含有割合は、例えば90重量%以下、好ましくは70重量%以下である。
【0043】
上記樹脂マトリクスを形成する樹脂としては、光透過率、上記液晶化合物の屈折率、透明導電性フィルムとの密着力等に応じて適切に選択され得る。例えば、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂等の水溶性樹脂または水分散性樹脂および液晶ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド樹脂等の硬化型樹脂が挙げられる。
【0044】
PDLC層におけるマトリクス形成用樹脂の含有割合は、例えば90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。また、該含有割合は、例えば10重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0045】
PDLC層の厚みは、例えば50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。PDLC層の厚みの下限は、例えば5μmとすることができる。
【0046】
PDLC層は、任意の適切な方法で作製され得る。具体例としては、エマルション方式および相分離方式の作製方法が挙げられる。
【0047】
エマルション方式のPDLC層の作製方法は、例えば、一方の透明導電性フィルムの透明電極層面に、マトリクス形成用樹脂と液晶化合物とを含むエマルション塗工液を塗工して塗工層を形成すること、および、該塗工層を乾燥させて該マトリクス形成用樹脂に樹脂マトリクスを形成させること、を含む。該エマルション塗工液は、好ましくはマトリクス形成用樹脂と塗工溶剤の混合液を連続相に含み、液晶化合物を分散相に含むエマルションである。エマルション化された塗工液を塗工および乾燥することにより、樹脂マトリクス中に液晶化合物が分散された構成を有するPDLC層が形成され得る。代表的には、PDLC層上に他方の透明導電性フィルムを積層することにより、PDLC素子が得られる。
【0048】
相分離方式のPDLC層の作製方法は、例えば、一方の透明導電性フィルムの透明電極層面に、放射線硬化型のマトリクス形成用樹脂と液晶化合物とを含む塗工液を塗工して塗工層を形成すること、塗工層上に他方の透明導電性フィルムを積層して積層体を形成すること、および、該積層体に放射線を照射してマトリクス形成用樹脂を重合させることにより樹脂マトリクスと液晶化合物とを相分離させること、を含み、これにより、PDLC素子が得られる。塗工液は、好ましくは均一相状態である。代替的には、スペーサーを介して積層された第1の透明導電性フィルムと第2の透明導電性フィルムとの間に塗工液を充填し、その後、放射線照射による相分離が行われ得る。
【0049】
A-3.表面保護フィルム
表面保護フィルムは、基材と該基材の一方の側に設けられた粘着剤層とを備える。表面保護フィルムは、PDLC素子表面の傷や汚れ防止のために設けられるものであり、通常は、PDLC素子の使用前に剥離除去される。なお、PDLC素子の両面に表面保護フィルムが設けられる場合、同じ構成の表面保護フィルムを用いてもよく、異なる構成の表面保護フィルムを用いてもよい。
【0050】
表面保護フィルムの厚みは、例えば15μm~200μm、好ましくは30μm~150μmである。
【0051】
上記基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。
【0052】
上記基材の厚みは、上記式(2)および(3)を満たす範囲に設定される。基材の厚みは、例えば10μmを超え150μm未満であり、好ましくは30μm~130μmであり、より好ましくは30μm~100μmである。表面保護フィルムの基材厚みが上記範囲であることにより、封止取られ等の問題を防止して、表面保護フィルムを好適にPDLC素子から剥離することができる。
【0053】
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤組成物によって形成される。粘着剤組成物の具体例としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとする粘着剤組成物が挙げられる。なかでも、透明性、耐候性、耐熱性等の観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤組成物が好ましい。
【0054】
粘着剤層の厚みは、例えば3μm~100μm、好ましくは4μm~80μm、より好ましくは5μm~60μmである。
【0055】
A-4.封止層
封止層は、液晶化合物の漏洩防止、耐久性向上等を目的として、PDLC素子および表面保護フィルムの端面に設けられる。1つの実施形態において、封止層の形成材料として有機材料を用いることができる。有機材料の具体例としては、UV硬化型樹脂(例えば、UV硬化型アクリル樹脂)、熱硬化型樹脂(例えば、熱硬化型のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂およびこれらの混合物)等の硬化型樹脂が挙げられる。硬化型樹脂としては、PDLC層の樹脂マトリクス形成用樹脂と同様の硬化型樹脂を用いることができる。また、蒸着(蒸着重合を含む)によって成膜可能な有機材料を用いることもできる。このような有機材料としては、例えば、蒸着重合によってパリレン膜を形成可能なダイマー(ジ-p-キシレン)、ポリウレタン膜を形成可能なモノマー(ジオールとジイソシアネート)、ポリイミド膜を形成可能なモノマー(ジアミンと酸無水物)、ポリ尿素膜を形成可能なモノマー(ジアミンとジイソシアナート)等が挙げられる。蒸着膜を用いる場合、緻密性が高い封止層が得られ得る。別の実施形態において、封止層の形成材料として無機材料を用いることができる。無機材料の具体例としては、亜鉛、アルミニウム、チタン、銅、マグネシウム等の金属またはケイ素、ビスマス、ゲルマニウム等の半金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物等が挙げられる。また、封止層は、無機微粒子等の無機材料を含む樹脂を用いて形成されてもよく、あるいは、樹脂層と無機層との積層構造を含んでもよい。
【0056】
封止層は、代表的には、表面保護フィルム付きPDLC素子の端面に封止層の形成材料(例えば、上記硬化型樹脂および/または無機材料を含む組成物)を塗布し、硬化させることによって形成され得る。塗布方法としては、スプレー塗布、ディスペンサ塗工、刷毛塗り、スクリーン印刷、ディッピング、蒸着等が挙げられる。
【0057】
上記硬化型樹脂を含む樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤(例えば、BASF社製「イルガキュアTPO」等)を含むことができる。また、密着性向上の観点から、シランカップリング剤(例えば、信越シリコーン社製「KBM903」等)、密着補助剤(例えば、日本化薬社製「KAYAMER(登録商標)PM-2」等)を用いてもよい。
【0058】
上記封止層の厚みは、上記式(1)および(3)を満たす範囲で設定される。有機材料で形成される場合の封止層の厚みは、例えば、2μm~50μm、好ましくは3μm~40μmであり、より好ましくは4μm~30μmである。なかでも、封止層が有機蒸着膜である場合、その厚みは、好ましくは0.05μm~5μm、より好ましくは0.2μm~1μmであり得る。また、無機材料で形成される場合の封止層の厚みは、例えば、0.1μm~5μm、好ましくは0.2μm~3μmであり、より好ましくは0.2μm~2μmである。
【0059】
封止層を形成する材料の破断伸度(封止層を形成する材料を50μmの厚みに成膜して得られるフィルムの破断伸度)は、本発明の効果が得られるかぎり、特に限定されないが、下限は通常1%以上であり、一方で、上限は通常30%以下である。可撓性の観点から、当該破断伸度の上限は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下である。一方で、当該破断伸度の下限は、好ましくは5%以上である。本発明において封止層を形成する材料の破断伸度は、以下の手順で測定される。
封止層を形成する材料が水溶性樹脂の場合は、封止層を形成する樹脂組成物の水溶液を調製し、離型処理を施したポリエステルフィルム上に塗布し、室温で1時間静置後、70℃で3時間乾燥し、厚み50μmの樹脂フィルムを作成する。当該樹脂フィルムより、幅10mm、長さ50mmのフィルムの試料を切り出す。オートグラフAGS-X(島津製作所社製)を用いて、チャック間30mm、引張速度200mm/minで引張試験を行い、破断時の伸度を測定する。
封止層を形成する材料が脂溶性樹脂の場合は、任意の有機溶媒を用いて樹脂組成物の溶解液を調製し、上記と同様にして、樹脂フィルムを作成する。封止層を形成する材料が紫外線硬化樹脂等のエネルギー活性線硬化樹脂の場合には、任意のエネルギー活性線硬化樹脂の溶液を調製し、ポリエステルフィルム上に塗布し、紫外線照射等のエネルギー活性線の照射を行い、樹脂フィルムを作成する。あるいは、蒸着等の他の任意の方法によって、50μmの厚みを有するフィルムを成膜してもよい。これらのフィルムについても上記と同様にして破断伸度を測定することができる。
【0060】
B.製造方法
A項に記載の表面保護フィルム付き封止PDLC素子は、任意の適切な製造方法で製造され得る。1つの実施形態における上記表面保護フィルム付き封止PDLC素子の製造方法は、長尺状に作製したPDLC素子の一方または両方の表面に長尺状の表面保護フィルムをロール・トゥ・ロール形式で貼り合せて長尺状の表面保護フィルム付きPDLC素子を得ること、長尺状の表面保護フィルム付きPDLC素子を所望の形状に切断して枚葉状の表面保護フィルム付きPDLC素子を得ること、および、枚葉状の表面保護フィルム付きPDLC素子の端面の全面に、または、一部(露出部)を除いて封止層を形成すること、を含む。必要に応じて、封止層を形成する前の表面保護フィルム付きPDLC素子の端面に表面処理を施してもよい。表面処理を施すことにより、処理面の表面張力を下げるとともに、微少な異物(例えば、有機物)の除去や処理面の平滑化を行うことができ、結果として、PDLC素子の端面と封止層との密着強度を向上させることができる。このような表面処理としては、易接着材料のコーティング、UVオゾン処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0061】
封止層の形成は、所望の形状に切断された表面保護フィルム付きPDLC素子に対して個別に行ってもよく、複数の表面保護フィルム付きPDLC素子の積層体に対して一括して行ってもよい。複数の表面保護フィルム付きPDLC素子の積層体に対して一括して封止層を形成することにより、封止処理の効率を顕著に向上でき、結果として、高い製造効率で表面保護フィルム付き封止PDLC素子を得ることができる。
【0062】
図3は、表面保護フィルム付きPDLC素子の積層体に対して一括して封止層を形成する場合の製造方法の一例を説明する概略図である。図3に示される製造方法は、長尺状に作製したPDLC素子10の両面に長尺状の表面保護フィルム20a、20bをロール・トゥ・ロール形式で貼り合せて長尺状の表面保護フィルム付きPDLC素子50を得ること(貼り合せ)、長尺状の表面保護フィルム付きPDLC素子50を所望の形状に切断して枚葉状の表面保護フィルム付きPDLC素子50aを得ること(打ち抜き)、枚葉状の表面保護フィルム付きPDLC素子50aを複数枚積層して積層体50bを得ること(積層体作製)、積層体50bの端面に封止層60を一体的に形成すること(封止処理)、および、封止層が形成された積層体50cを個々の表面保護フィルム付き封止PDLC素子100に分離すること(枚葉化)を含む。図示しないが、長尺状の表面保護フィルム付きPDLC素子50の一方または両方の表面に長尺状の汚れ防止フィルムをロール・トゥ・ロール形式で貼り合せた後に、打ち抜き以降の処理を行ってもよい。また、図示例では、積層体50bの端面の全面に封止層60を形成しているが、図示例とは異なり、積層体50bの端面の一部(例えば、取出し電極部の端面)には封止層を形成せずに露出部としてもよい。
【0063】
表面保護フィルム付き封止調光素子が2つ以上積層された積層体であって、封止層が積層体端面において一体的に形成されている(換言すれば、封止層が積層体の積層方向に連続的に形成されている)積層体50cを個々の表面保護フィルム付き封止PDLC素子100に分離する方法としては、例えば、ヘラ等の剥離具を隣り合う表面保護フィルム付き封止PDLC素子間に挿入して分離すること、露出部をきっかけとして表面保護フィルム付き封止PDLC素子を隣接する素子から剥離して分離すること等が挙げられる。
【0064】
上記積層体50bに含まれる枚葉状の表面保護フィルム付きPDLC素子50aの数は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限されず、好ましくは3以上、より好ましくは10~200、さらに好ましくは50~100であり得る。
【0065】
積層体50bに対する封止層の形成は、例えば、積層体50bの端面の全面または露出部を除いた部分に任意に表面処理を施し、次いで、上記封止層の形成材料(例えば、上記硬化型樹脂および/または無機材料または有機材料を含む組成物)を塗布し、必要に応じて硬化させることによって行われ得る。塗布方法としては、A-4項で例示された塗布方法が挙げられ、なかでもスプレー塗布または蒸着が好ましい。
【実施例
【0066】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0067】
[実施例1]
(PDLC素子の作製)
透明基材(ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、製品名「ZF-16」)、厚み:40μm)の一方の面に、スパッタ法により0.08μm厚みの透明電極層(ITO層)を形成し、その後150℃でアニールし結晶化させた。こうして、[COP基材/透明電極層]の構成を有する第1および第2の透明導電性フィルムを得た。
第1の透明導電性フィルムの透明電極層側表面に、液晶化合物(HCCH社製、製品名「HPC854600-100」、複屈折Δn=0.232)40部と、UV硬化型樹脂(Norland社製、製品名「NOA65」)60部(固形分)とを含む塗工液を塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布層上に、透明電極層が塗布層に対向するように第2の透明導電性フィルムを積層した。得られた積層体に紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させ、これにより、20μmの厚みを有するPDLC層を形成した。以上のようにして、PDLC素子(厚み100μm)を得た。
【0068】
(表面保護フィルム付きPDLC素子の作製)
上記PDLC素子の両面にPET系樹脂基材(38μm)とその片側に設けられたアクリル系粘着剤層(21μm)とを有する表面保護フィルム(日東電工社製、製品名「RP207」)を貼り合せて、表面保護フィルム付きPDLC素子を得た。
【0069】
(封止処理)
上記表面保護フィルム付きPDLC素子の端面の全面に封止層形成用樹脂組成物を塗布し、70℃3時間加熱乾燥することによって硬化させて厚みが10μmの封止層を形成した。なお、封止層形成用樹脂組成物の塗布液としては、アクリル樹脂エマルション水溶液、ポリオレフィン樹脂およびイソシアネート系硬化剤を、厚みが50μmとなるように形成したフィルムの破断伸度が10%となるように配合および混合したものを用いた。
【0070】
以上のようにして表面保護フィルム付き封止PDLC素子を得た。
【0071】
[実施例2~8、比較例1~5]
PDLC素子、封止層および/または表面保護フィルムの基材厚みを表1に記載のように変化させたこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルム付き封止PDLC素子を得た。
【0072】
[実施例9]
(PDLC素子の作製)
実施例1と同様にして、PDLC素子(厚み100μm)を得た。
(表面保護フィルム付きPDLC素子の作製)
上記PDLC素子の両面にPET系樹脂基材(30μm)とその片側に設けられたアクリル系粘着剤層(10μm)とを有する表面保護フィルムを貼り合せて、表面保護フィルム付きPDLC素子を得た。
(封止処理)
上記表面保護フィルム付きPDLC素子の端面の全面にプラズマ処理を行った。パリレン原料(Kisco社製、製品名「dixC」)を用いた真空蒸着法により、プラズマ処理面に厚み5μmのパリレンコーティング層(封止層)を形成した。
【0073】
[比較例6]
封止層の厚みを15μmにしたこと以外は実施例9と同様にして、表面保護フィルム付き封止PDLC素子を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
上記実施例および比較例で得られた表面保護フィルム付き封止PDLC素子において、剥離具を用いて一方の表面保護フィルムをPDLC素子から剥離した。剥離後のPDLC素子の端部を顕微鏡観察し、「バリ」および「封止取られ」の有無を評価した。結果を表2および図4に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2および図4に示されるとおり、実施例の表面保護フィルム付き封止PDLC素子によれば、封止層の残滓をPDLC素子の表面に残存させることなく、表面保護フィルムをPDLC素子から好適に剥離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の表面保護フィルム付き封止調光素子は、調光機能を有する表示装置、光シャッター機能を有する光学部材等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0079】
100 表面保護フィルム付き封止調光素子
10 調光素子
11 第1の透明導電性フィルム
12 第2の透明導電性フィルム
13 高分子分散型液晶層
20 表面保護フィルム
21 基材
22 粘着剤層
30 封止層
図1
図2
図3
図4
図5