(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】記録装置、記録方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020162162
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】西岡 真吾
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】神田 英彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 芳紀
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】永井 肇
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】栗山 恵司
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043643(JP,A)
【文献】特開2002-019210(JP,A)
【文献】特開2012-011664(JP,A)
【文献】特開2007-047744(JP,A)
【文献】特開平10-329381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出することにより記録媒体上に画像を記録する記録手段と、
前記記録手段を走査方向に走査させる走査手段と、
前記走査手段を加速させ、走査速度を一定に保って走査した後に減速させることにより前記走査手段による1回の記録走査を実行するように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、
記録媒体上に記録された所定の調整パターンの記録結果に基づいて、前記記録手段による記録位置を調整する調整手段と、
を備え、
前記制御手段は、第1の記録モードと、定速領域の長さが前記第1の記録モードよりも短い第2の記録モードを含む複数の記録モードの中から選択された記録モードに基づいて制御し、
前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、
前記第2の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され
、
前記第2の記録モードの定速領域は、前記第1の記録モードの定速領域の範囲内に位置し、
前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査方向における第2の記録モードの定速領域の範囲内に記録されることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の記録モードにおいて走査速度を一定に保って走査するときの速度は、前記第2の記録モードにおいて走査速度を一定に保って走査するときの速度よりも遅いことを特徴とする請求項
1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1の記録モードにおいて前記走査手段が走査を開始してから一定で走査する走査速度に到達するまでに移動する距離は、前記第2の記録モードにおいてにおいて前記走査手段が走査を開始してから一定で走査する走査速度に到達するまでに移動する距離よりも短いことを特徴とする請求項1
または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記所定の調整パターンは、前記走査方向における往方向走査と復方向走査の記録位置を調整するためのパターンであることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録手段は、インクを吐出するための吐出口が前記走査方向と交差する方向に配列した吐出口列を複数列備え、
前記所定の調整パターンは、前記記録手段に設けられた複数列の吐出口列間の記録位置を調整するためのパターンであることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録手段は、インクを吐出するための吐出口が前記走査方向と交差する方向に配列した吐出口列を複数列備え、
前記記録手段に設けられた複数列の吐出口列間の記録位置を調整するためのパターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内に記録されることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記所定の調整パターンの記録結果を取得する取得手段と、
前記結果に基づいて、記録位置を調整するための調整値を設定する設定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
記録媒体を前記走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送手段であって、前記走査方向における記録媒体の一方の端部を所定の位置に突き当てて搬送する搬送手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
インクを吐出することにより記録媒体上に画像を記録する記録手段と、前記記録手段を走査方向に走査させる走査手段と、を備える記録装置のための記録方法であって、
前記走査手段を加速させ、走査速度を一定に保って走査した後に減速させることにより前記走査手段による1回の記録走査を実行することにより調整パターンを記録する工程と、
記録媒体上に記録された所定の調整パターンの記録結果に基づいて、前記記録手段による記録位置を調整する工程と、
を備え、
第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、
定速領域の長さが前記第1の記録モードよりも短い第2の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され
、
前記第2の記録モードの定速領域は、前記第1の記録モードの定速領域の範囲内に位置し、
前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査方向における第2の記録モードの定速領域の範囲内に記録されることを特徴とする記録方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の記録方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
インクを吐出することにより記録媒体上に画像を記録する記録手段と、
前記記録手段を走査方向に走査させる走査手段と、
前記走査手段を加速させ、走査速度を一定に保って走査した後に減速させることにより前記走査手段による1回の記録走査を実行するように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、
記録媒体上に記録された所定の調整パターンの記録結果に基づいて、前記記録手段による記録位置を調整する調整手段と、
を備え、
前記制御手段は、第1の記録モードと、定速領域の長さが前記第1の記録モードよりも短い第2の記録モードを含む複数の記録モードの中から選択された記録モードに基づいて制御し、
前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、
前記第2の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、
前記記録手段は、インクを吐出するための吐出口が前記走査方向と交差する方向に配列した吐出口列を複数列備え、
前記記録手段に設けられた複数列の吐出口列間の記録位置を調整するためのパターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内に記録されることを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するための記録装置、記録方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に対して所定方向に移動するとともに、移動の方向と交差する方向に記録素子としてのインクの吐出口が配列された記録ヘッドを用いて画像を記録する記録装置が知られている。このような記録装置において、記録ヘッドの製造時の吐出口形成位置のずれや記録ヘッドの装着位置のずれ等に起因して、吐出口列間のドットの記録位置にずれが生じる場合がある。また、複数の記録ヘッドを用いる場合にも、記録ヘッド間の相対的位置のずれによってドットの記録位置にずれが生じる場合がある。さらには、同一の吐出口に関しても、往復移動の走査の双方向で記録する場合に往方向走査と復方向走査のドット記録位置にずれが生じる場合がある。このようなドットの記録位置のずれによって記録される画像の品位が低下してしまう。これに対し、ドットの記録位置を調整する処理(以下、レジストレーション処理とも称する)が知られている。
【0003】
レジストレーション処理は、例えば、1つの吐出口列を基準とし、その吐出口列によるドット記録位置に対する他の吐出口列によるドット記録位置の相対的なずれを求め、ずれ量に基づいてインク滴を吐出するタイミングを調整することによって実現される。また、双方向記録時のドット記録位置のずれについても、同様に吐出タイミングを調整することによっても、レジストレーション処理を実現することができる。
【0004】
特許文献1には、インクジェット記録装置のキャリッジに搭載されたセンサを用い、記録媒体上を走査させて調整パターンを光学的に読み取り、調整値を決定する構成が開示されている。
【0005】
ところで、近年では画質を重視した印刷や生産性を重視した印刷など、ユーザが求めるプリント物が多様化している。印刷速度を向上させる一つの手法として、より高速にキャリッジを走査させて画像を記録する方法が実施されている。しかしながら、高速走査による記録は、インク滴の着弾が乱れやすく、画質が低下する傾向にある。そのため、画質を重視した記録モードに加え、より高速にキャリッジ走査を行う生産性を重視した記録モードを備えるなど、ユーザが複数の記録モードから選択可能な構成が採用されている。
【0006】
より生産性を高めた高速なキャリッジ走査のためには、加速または減速時の距離を広げる必要があるが、記録装置本体の幅を大きくすることなくこれらの距離を広げるために、加減速中にもインクを付与する記録動作が実施可能な構成が取られている。このような加減速記録時には、一定速度での記録(以下、定速記録と呼ぶ)と比較してキャリッジの速度や位置を正確に検出して吐出タイミングを決定することが難しく、インク滴の着弾位置精度が低下する傾向にある。この着弾位置精度を向上させるため、特許文献2には、キャリッジのエンコーダ信号の時間間隔の変化から吐出タイミングを設定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-329381号公報
【文献】特開2003-72056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているような調整方法を実行する場合、着弾位置ずれ量がキャリッジの走査速度に依存して変化することがあり、記録条件に応じて記録位置を調整する必要がある。また、加減速記録時の着弾位置ずれの量が走査手段の走査速度に依存するため、加減速時に調整パターンが記録されると、記録位置の調整には誤差が含まれてしまう。昨今、生産性向上への要求の高まりとともに、より高速な走査での記録が求められており、走査速度に依存して変化する着弾位置ずれ量の変化も大きく、記録位置の調整精度への影響は看過できないものとなっている。
【0009】
このような課題に対し、本発明は、走査手段が走査させる走査速度に応じてより高精度な調整を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、インクを吐出することにより記録媒体上に画像を記録する記録手段と、前記記録手段を走査方向に走査させる走査手段と、前記走査手段を加速させ、走査速度を一定に保って走査した後に減速させることにより前記走査手段による1回の記録走査を実行するように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、記録媒体上に記録された所定の調整パターンの記録結果に基づいて、前記記録手段による記録位置を調整する調整手段と、を備え、前記制御手段は、第1の記録モードと、定速領域の長さが前記第1の記録モードよりも短い第2の記録モードを含む複数の記録モードの中から選択された記録モードに基づいて制御し、前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、前記第2の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査手段が加速または減速しながら走査する加減速領域の範囲内には記録されずに、前記走査手段が一定の速度で走査する定速領域の範囲内に記録され、前記第2の記録モードの定速領域は、前記第1の記録モードの定速領域の範囲内に位置し、前記第1の記録モードに対応する前記所定の調整パターンは、前記走査方向における第2の記録モードの定速領域の範囲内に記録されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、走査手段が走査させる走査速度に応じた、より高精度な調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】光学センサで濃度検知する場合のレジ調整方法の説明図
【
図6】光学センサで濃度検知する場合のレジ調整方法の説明図
【
図7】レジ調整パターンから検知される光学反射率と近似曲線を表すグラフ
【
図8】第1の記録モードのキャリッジ走査速度とキャリッジ位置の関係を示す図
【
図9】第2の記録モードのキャリッジ走査速度とキャリッジ位置の関係を示す図
【
図10】各記録モードの記録領域と記録位置調整パターンの配置を示す図
【
図11】各記録モードの記録領域と記録位置調整パターンの配置を示す図
【
図12】第1の実施形態の記録位置調整方法を示すフローチャート
【
図13】各記録モードの記録領域と記録位置調整パターンの配置を示す図
【
図14】第2の実施形態の記録位置調整方法を示すフローチャート
【
図15】各記録モードの記録領域と記録位置調整パターンの配置を示す図
【
図16】第3の実施形態の記録位置調整方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る記録装置の外観を示す図である。本実施形態の記録装置は、インク滴を吐出して画像を記録するインクジェットプリンタであり、いわゆるシリアル走査型のプリンタである。記録媒体Pの搬送方向(以下、Y方向とも称する)に対して交差する走査方向(以下、X方向とも称する)に、記録ヘッド105が搭載されたキャリッジユニット102を走査して画像を記録する。記録ヘッド105には、インク滴を吐出するための複数の吐出口が設けられており、キャリッジユニット102に対して着脱可能である。本実施形態の記録装置は、記録媒体を給紙・搬送する位置を図中-X方向の位置に寄せて搬送する、いわゆる片寄搬送を行う記録装置である。片寄搬送が行われる場合、記録媒体PのX方向の幅によらず、記録媒体Pの一方の端部を所定の突き当て位置に突き当てて搬送される。
【0015】
図2は、インクジェット記録装置における制御回路の構成例を説明するためのブロック図である。
図1及び
図2を用いてこのインクジェット記録装置の構成及び記録時の動作の概略を説明する。
【0016】
まず、不図示の搬送モータによりギヤを介して駆動される搬送ローラによって、記録媒体Pを保持しているスプール101より、記録媒体PがY方向に搬送される。一方、所定の搬送位置において不図示の主走査モータにより、X方向に延在するガイドシャフト103に沿って、+X方向の往路と-X方向の復路にキャリッジユニット102を往復走査させる。そして、この走査の過程で、主走査方向のエンコーダ106によって得られる位置信号に基づいたタイミングと同期がとられ、キャリッジユニット102に搭載された記録ヘッド105から吐出動作が行われる。これにより、記録媒体Pに画像が記録される。
【0017】
また、キャリッジユニット102には、記録媒体Pと記録ヘッドの吐出口が設けられた吐出口面との間の距離(以下、紙間距離とも称する)を取得可能な反射型光学センサ107が取り付けられている。記録ヘッド105と同様に往復走査の過程でエンコーダ106によって得られる位置信号に基づいたタイミングと同期がとられ、キャリッジユニット102の位置に対応した検出信号が処理される。なお、主走査モータからキャリッジユニット102への駆動力の伝達には、キャリッジベルトが用いられる。キャリッジベルトの替わりに、例えば、主走査モータにより回転駆動され、X方向に延在するリードスクリュと、キャリッジユニット102に設けられリードスクリュの溝に係合する係合部とを備えたものなど、他の駆動方式を用いることも可能である。
【0018】
送給された記録媒体Pは、給紙ローラとピンチローラとに挟持搬送され、プラテン104上の記録位置(記録ヘッドの走査領域)に導かれる。通常、休止状態では記録ヘッド105のフェイス面は、不図示のキャップにより封止されている。記録に先立ってキャップを開放し、記録ヘッド105及びキャリッジユニット102を走査可能な状態にする。その後、1走査分のデータがバッファに蓄積された後、主走査モータによりキャリッジユニット102を走査させ、上述のような画像の記録動作を実行する。
【0019】
主制御部としてのコントローラ200は、例えば、マイクロ・コンピュータ形態のCPU201、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納するROM202、及び画像データを展開する領域や作業用の領域等が設けられるRAM203を有する。後述する制御を行うためのプログラムも、ROM202に格納される。ホスト装置210は画像データの供給源であり、記録に係る画像等のデータの作成及び処理等を行うコンピュータの形態の他、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい。画像データ、その他のコマンド、及びステータス信号等は、インタフェース(I/F)211を介してコントローラ200と送受信される。電源スイッチ212にてインクジェット記録装置の電源ON・OFFが実施される。主走査モータドライバ205は、主走査モータ208を駆動するためのドライバである。副走査モータ209は、記録媒体Pを搬送方向へと搬送するために用いられるモータであり、副走査モータドライバ206は、それを駆動するためのドライバである。ヘッドドライバ204は、記録データ等に応じて記録ヘッド105を駆動するドライバである。ヘッドドライバ204は、記録データを吐出口300に対応させて整列させるシフトレジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、及び駆動タイミング信号に同期して吐出口毎に配置されている不図示の吐出ヒータを作動させる論理回路素子を含む。
【0020】
CPU201は、エンコーダ106からの位置信号と反射型光学センサ107からの紙間距離情報に基づいて記録位置調整のための調整値をRAM203に格納する。CPU201は、RAM203に格納された調整値を用い、ヘッドドライバ204を介して記録ヘッド105によるインク滴吐出タイミングを制御し記録位置を調整する。
【0021】
図3は、記録ヘッド105の吐出口が設けられた吐出口面(フェイス面)を示す模式図である。本実施形態の記録ヘッド105は、インクを吐出するための複数の吐出口300が並ぶ吐出口列が2列設けられている。吐出口列301、302は、記録媒体Pが搬送されるY方向に延在する。吐出口300は、吐出口列301、302のそれぞれにおいて、600dpiに相当する間隔をピッチPyとして、640個ずつ形成されている。また、吐出口列301の吐出口300と吐出口列302の吐出口300は、Y方向に1200dpiに相当する半ピッチ(Py/2)ずれて配置されている。吐出口列301には、Y方向において偶数番目に位置する偶数吐出口が配列され、吐出口列302には、奇数番目に位置する奇数吐出口列が配列されている。前述のように、記録ヘッド105は±X方向に往復移動する。これら2列の吐出口列に設けられた計1280個の吐出口300から、同色のインク滴を吐出することにより、Y方向におけるドット密度、すなわち記録解像度が1200dpiである画像を記録することができる。吐出口列の全体長をLとし、吐出口の番号は+Y方向から#0、#1、#2、#3・・・・・、#1278、#1279とする。
【0022】
尚、本実施形態の記録装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを吐出することができ、記録ヘッド105は、
図3に示す複数列の吐出口列が、各インク色について設けられている。
【0023】
図4は、
図1に示した反射型光学センサ107を説明するための模式図である。反射型光学センサ107は、発光部401と受光部402とを有し、上述したようにキャリッジユニット102に取り付けられている。発光部401から照射された光403が記録媒体Pにおいて反射され、その反射光404が受光部402によって検出される。反射光404の検出信号(アナログ信号)は、不図示のフレキシブルケーブルを介して記録装置の電気基板上の制御回路に伝えられる。そして、制御回路におけるA/D変換器によってディジタル信号に変換されると、記録ヘッド105の吐出口面と記録媒体Pとの紙間距離を示す紙間距離情報としてRAM203に格納される。
【0024】
本実施形態のレジストレーション処理では、まず記録媒体Pに複数の調整パターンを記録する。各調整パターンは第1のパターンと第2のパターンとから構成され、第1のパターンの記録位置に対する第2のパターンの記録位置を相対的に異ならせる。
【0025】
図5は、反射型光学センサ107を用いて調整パターンの濃度を検知して調整値を算出するレジ調整方法について説明するための図である。本図に示す調整パターンは、l画素×n画素の長方形パターンが周期的に繰り返され、各長方形パターンの間にm画素の空白領域が設けられている。基準パターン501(第1のパターン)に対し、ずらしパターン502(第2のパターン)の記録位置が所定の画素数aずれている。説明のため、本図では基準パターン501とずらしパターン502の位置を図の縦方向にずらしているが、実際の調整パターンにおいては、l画素の基準パターン501とずらしパターン502の縦方向の位置は同じである。尚、調整パターンの解像度やずらし量は、記録装置の記録解像度に応じて決定される。本実施形態では、記録解像度は1200dpiとする。
【0026】
図6は、調整パターンの模式図である。
図5に示した調整パターンを複数並べたものであり、基準パターン501に対するずらしパターン502のずらし量aを、-3画素から+3画素まで1画素ずつ変えて記録したものである。1つのずらし量(例えば-3画素)について、基準パターン501とずらしパターン502の組み合わせが4組記録されている。尚、ずらし量aによって記録媒体上でのインクの面積率が変わることにより、検知される各パターンの濃度が異なる。
【0027】
図7は、各ずらし量に対応する調整パターン毎の記録結果を示すグラフであり、光学反射率の測定結果である。記録された基準パターン501とずらしパターン502のずれが小さいほど、記録媒体上の被覆率が低くなるため、結果としてパターンの濃度が低くなる。濃度と光学反射率は反比例の関係にある。このことから、複数のノズル列それぞれの記録位置を一致させるためには、調整パターンの濃度が最も低くなるずらし量に対応した吐出タイミングとなるように補正すれば良い。
図7においては、濃度が最も低くなるずらし量、すなわち光学反射率が最も高い値を示しているずらし量である「0」が、位置ずれ量を低減する吐出タイミングである。調整パターンの数やその要素の数は、レジストレーション処理精度の要求を満たすために必要な相対的記録位置のずらし単位や、装置の機械的公差から要求される調整範囲により適宜定めることができる。
【0028】
図8及び
図9は、本実施形態の記録装置が備える複数の記録モードにおけるキャリッジユニット102の走査速度を説明するための図である。本実施形態においては、記録モードとして、画質を重視した第1の記録モードと、生産性を重視した第2の記録モードを備える。いずれのモードにおいても、キャリッジユニット102の停止位置から走査を開始して徐々に加速し、目標速度に到達すると、目標速度を一定に保ったまま、走査を続ける。そして、所定の位置で、減速し、キャリッジユニット102を停止させるように制御することにより、1回の記録走査が行われる。以後、キャリッジユニット102が一定速度で走査する際の速度のことを、その記録モードでの走査速度と称する。本実施形態において、第2の記録モードでのキャリッジユニット102の走査速度(903)は、第1の記録モードのキャリッジユニット102の走査速度(802)よりも速い。また、第2の記録モードにおいてキャリッジユニット102の走査を開始してから目標速度に達するまでの移動距離(加速記録領域)は、第1の記録モードにおける移動距離よりも長い。減速記録領域の長さも、同様の関係にある。
【0029】
図8は、第1の記録モードにおける、キャリッジ位置に対するキャリッジ走査速度と記録領域の関係を示した模式図である。走査速度は、キャリッジの中央の位置に対する速度を示している。本図においてキャリッジユニット102とガイドシャフト103が示されており、+X方向の往路と-X方向の復路にキャリッジユニット102が往復走査する間にインクが付与され、記録媒体Pに画像が記録される。第1の記録モードにおいては、キャリッジユニット102は、走査の開始と同時に加速し、記録媒体Pの一方の端部に対向する位置に移動する前に、所定の走査速度(図中802)に到達する。そして、走査速度を一定(802)に保ったまま記録媒体P上を走査し、記録媒体Pの他方の端部と対向しない位置まで走査した後に減速する。図中、記録媒体P上の領域801は、キャリッジユニット102が定速で走査しながらインク滴を吐出する、定速記録領域(定速領域)である。このように、第1の記録モードでは、記録媒体Pの全域、すなわち領域801の範囲内においてキャリッジユニット102の速度が一定のまま、画像が記録される。
【0030】
図9は、第2の記録モードにおける同様の関係を示したものである。第1の記録モードとは異なり、キャリッジユニット102は、走査開始と同時に加速するが、記録媒体Pの一方の端部と対向する位置まで移動しても、まだ目標速度(走査速度903)に到達しておらず、記録媒体P上を走査しながら加速を続ける。そして、走査速度903に到達した後、速度を一定に保って走査し、記録媒体Pの他方の端部に到達する前に減速を開始する。図中、記録媒体上の領域901は、キャリッジユニット102が定速で走査しながらインク滴を吐出する、定速記録領域である。領域902は、キャリッジユニット102が加速または減速しながらインク滴を吐出する、加減速記録領域(加減速領域)である。このように、第2の記録モードでは、記録媒体Pの端部の領域においてキャリッジユニット102が加速または減速しながら画像が記録される。
【0031】
ここで、
図10及び
図11を用いて、記録位置調整のための調整パターンを記録する領域として加減速記録領域を含む場合と含まない場合について説明する。本実施形態では、複数の記録モードにそれぞれ対応する調整パターンを1枚の記録媒体に記録し、キャリッジユニット102の同一の走査で記録することで、パターン記録時間を短縮する。このため、複数の調整パターンは、記録モード毎にY方向に配置され、且つ、同じ記録モードでの記録される調整パターンは、X方向に並んで配置される。また、記録媒体Pに対して-X方向に寄せてパターンが配置される。本実施形態の記録装置は、前述したように記録媒体を片側に寄せて搬送する構成であり、ユーザが使用する記録媒体の幅が比較的小さい場合であっても、同様の調整が実施可能である。
【0032】
(従来の方法で記録された調整パターン例)
図10は、記録位置調整のための調整パターンを記録する領域として加減速記録領域を含む場合の模式図であり、第1及び第2の記録モードにおける定速記録領域、加減速記録領域と、記録位置調整パターンとの位置関係について示している。パターン群1001及びパターン群1002は、第1の記録モードでの記録位置を調整するためのパターン群である。同様に、パターン群1003及びパターン群1004は、第2の記録モードでの記録位置を調整するためのパターン群である。
【0033】
前述したように、記録位置調整は、基準パターンに対するずらしパターンのずらし量が互いに異なる、複数の調整パターンの濃度変化を読み取ることによって行われる。パターン群1001及びパターン群1003は、往方向(+X方向)への記録走査での記録位置と、復方向(-X方向)への記録走査での記録位置のずれを調整するためのパターン群であり、それぞれずらし量の異なる複数のパターンを含む。パターン群1002及びパターン群1004は、
図3に示した吐出口列301での記録位置と吐出口列302での記録位置のずれを調整するためのパターン群であり、それぞれずらし量の異なる複数のパターンを含む。
【0034】
ここで、第2の記録モード用の調整パターンであるパターン群1003及びパターン群1004は、第2の記録モードの加減速記録領域の範囲内に複数パターンの一部あるいは全部が記録される。しかしながら、加減速記録領域では速度毎に異なる記録位置のずれ量を適切に取得することができない。特に、パターン群1004のように記録媒体の端部により近い領域においては、定速記録領域での走査速度と加減速領域での走査速度との速度差が大きい。定速記録領域での走査側がより高速になり、加減速領域が広がったことによってこのような課題が生じ、この速度差に起因して、取得される位置ずれ量に含まれる誤差がより大きくなってしまう。
【0035】
(本実施形態の構成で記録された調整パターン例)
図11は、本実施形態における記録位置調整のための調整パターンと、第1及び第2の記録モードにおける定速記録領域、加減速記録領域と、記録位置調整パターンとの位置関係について示す図である。パターン群1101は、第1の記録モードでの往復走査の記録位置を調整するためのパターン群であり、パターン群1102は、第1の記録モードでの2列の吐出口列間の記録位置を調整するためのパターン群である。同様に、パターン群1103は、第2の記録モードでの往復走査の記録位置を調整するためのパターン群であり、パターン群1104は、第2の記録モードでの2列の吐出口列間の記録位置を調整するためのパターン群である。各パターン群は、それぞれずらし量の異なる複数のパターンを含む。
【0036】
図10に示した従来の方法とは異なり、パターン群1103及びパターン群1104は、複数パターンの全てが第2の記録モードの定速記録領域の範囲内であって、加減速記録領域の範囲外に記録されるように配置されている。一方、パターン群1101及びパターン群1102については、記録媒体上の記録位置に関わらず、第1の記録モードの定速記録領域の範囲内に記録される。このように、記録モードによって加減速記録領域及び定速記録領域が異なる場合には、キャリッジユニット102が定速で走査している間に記録位置調整パターンが記録されるよう、定速記録領域の範囲内に設定する。これにより、キャリッジユニット102が加速もしくは減速している間に記録位置調整パターンが記録されることによる調整精度の低下を抑制することができる。
【0037】
図12は、本実施形態における記録位置調整方法を示すフローチャートである。ステップS1201において、記録モードが選択される。本実施形態では、画質を優先する第1の記録モードと、生産性を優先する第2の記録モードのいずれかが選択される。次に、ステップS1202において、選択された記録モードの定速記録領域の範囲が取得される。ステップS1203において、取得された定速記録領域に調整パターンが記録される。ステップS1204において、調整パターンの濃度が検知される。ステップS1205において、設定された位置ずれ量と検知された濃度の変化とに基づき、記録位置の調整値が算出される。その後、ステップS1206において、調整が実施される全記録モードの調整が終了したか否かを判定し、終了していればステップS1207に進み、調整値が保存され、処理が終了する。全記録モードの調整が終了していない場合には、ステップS1201に戻り、調整が終了していない記録モードが選択され、全記録モードの調整が終了するまでフローが継続される。
【0038】
このように、本実施形態では、各記録モードについてキャリッジユニット102が一定の速度で走査する定速記録領域の範囲を取得し、取得した定速記録領域の範囲内に記録位置調整のための調整パターンを配置する。これにより、キャリッジユニット102が加速及び減速する加減速記録領域の範囲に調整パターンが記録されず、記録位置調整精度の低下を抑制することが可能となる。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第1の記録モードの定速記録領域の範囲と第2の記録モードの定速記録領域の範囲が異なる場合であっても、各記録モードの定速記録領域の範囲内に調整パターンを記録する例について説明した。ユーザが求める画質と生産性のバランスとしては、より多くのキャリッジ走査速度に対応した複数の記録モードを備えることも可能である。本実施形態では、これらの記録モードに対する記録位置調整について説明する。
【0040】
図13は、本実施形態における記録位置調整に用いる記録位置調整パターンの配置を説明するための図であり、第1~第4の記録モードで記録された調整パターンである。
【0041】
パターン群1301~1312は、それぞれ複数の調整パターンを含むパターン群を示している。パターン群1301は、+X方向の走査と-X方向の走査との記録位置を調整する、所謂双方向レジのための粗調整パターンであり、後述の双方向レジのための微調整パターンよりもずらし量aの振幅が大きい。すなわち、粗調整パターンの調整値の1段階の変化量は、微調正パターンの調整値の1段階の変化量よりも大きく、記録位置を調整するための単位が大きい。尚、本実施形態の記録装置は、このパターン群1301を記録した後、反射型光学センサ107を用いてパターン群1301を読み取った後、パターン群1302~1312を記録する。
【0042】
パターン群1302~1304は、キャリッジの定速走査時の走査速度が第1の速度で、記録ヘッドのフェイス面と記録媒体との距離(所謂紙間距離)が第1の距離である第1の記録モードで記録されるパターン群である。同様に、パターン群1305~1307は、キャリッジの定速走査時の走査速度が第1の速度よりも速い第2の速度で、紙間距離が第1の距離である第2の記録モードで記録されるパターン群である。パターン群1308~1310は、キャリッジの定速走査時の走査速度が第1の速度で、紙間距離が第1の距離よりも大きい第2の距離である第3の記録モードで記録されるパターン群である。パターン群1311~1312は、キャリッジの定速走査時の走査速度が第2の速度で、紙間距離が第2の距離である第4の記録モードで記録されるパターン群である。
【0043】
パターン群1302、パターン群1305、パターン群1308及びパターン群1311は、異なる色のインク色間の吐出口列の記録位置のずれを調整するための複数のパターンが含まれるパターン群である。パターン群1303、パターン群1306及びパターン群1309は、同じインク色の2列の吐出口列間の記録位置のずれを調整するための複数のパターンが含まれるパターン群である。パターン群1304、パターン群1307、パターン群1310及びパターン群1312は、+X方向における往方向走査と-X方向における復方向走査での記録位置のずれを微調整するための複数のパターンが含まれるパターン群である。これらの微調整パターン群は、前述の粗調整パターンであるパターン群1301の読み取った結果に基づいて決定されたずらし量を用いて記録される。
【0044】
ここで、第1の記録モード及び第3の記録モードはキャリッジの定速走査時の走査速度が第1の速度であり、本実施形態の記録装置が実行可能な複数の記録モードのうち、キャリッジの定速走査時の走査速度が最も低速である記録モードである。一方、第2の記録モード及び第4の記録モードのキャリッジの定速走査時の走査速度が第2の速度であり、本実施形態の記録装置が実行可能な複数の記録モードのうち、キャリッジの定速走査時の走査速度が最も高速である記録モードである。すなわち、第2の記録モード及びは、複数の記録モードのうち、加減速記録領域の範囲が最も大きく、定速記録領域の範囲が最も狭い記録モードである。そして、本実施形態では、定速記録領域の範囲が最も狭い記録モードに合わせて、図のX方向の位置(座標)を揃えて調整パターンを配置する。
【0045】
さらに、本実施形態では、キャリッジの定速走査時の走査速度が3種類以上ある場合において、全ての記録モードの記録位置の調整を実施せず、補間演算で調整値を算出する。全ての記録モードで記録位置の調整を実行することが望ましいが、記録位置の調整に必要な時間や、消費する記録媒体の量、インクの量を鑑みると、項目は最小限とすることが好ましい。従って、本実施形態では、キャリッジの定速走査時の走査速度が最も低速である記録モード(第1及び第3の記録モード)と、キャリッジの定速走査時の走査速度が最も高速である記録モード(第2及び第4の記録モード)とで記録位置の調整を実行する。そして、キャリッジの定速走査時の走査速度が、第1の速度と第2の速度の中間である記録モードについては、記録位置の調整を実行せず、キャリッジの定速走査時の走査速度の比率に応じて、調整値を補間して記録する。
【0046】
例えば、本実施形態の第1の速度が60inch/sec、第2の速度が30inch/secである場合、キャリッジの定速走査時の走査速度が45inch/secで且つ紙間距離が第1の距離である第5の記録モードの調整値は、第1の記録モードの調整値と第2の記録モードの調整値から補間演算で求める。上記例の場合は、第1の記録モードの調整値と第2の記録モードの調整値の中間値である。
【0047】
通常、キャリッジユニット102が記録媒体上を走査する際、ガイドシャフトにより記録ヘッドと記録媒体の距離は一定に保たれる。しかしながら製造上の公差により、この距離は少なからず誤差が生じる。第1の実施形態で示したように、それぞれの記録モードの定速記録領域にパターン群を記録する場合には、走査方向に異なる位置にパターン群が配置される。これにより、記録ヘッドのフェイス面と記録媒体間の紙間距離が異なる状態で調整値が取得される。往復走査での記録位置のずれ、あるいは吐出口列間の記録位置のずれは、キャリッジ走査速度に加えて、紙間距離にも強く依存する傾向にある。従って、紙間距離が異なる状態で取得された調整値から、補間演算によって調整値を求める場合には、紙間距離の変動量に応じた誤差が含まれてしまう。これに対し、本実施形態では第1~第4の記録モードの調整パターン群を、最も定速記録領域の狭い記録モードに合わせ、各調整パターン群のX方向の位置を略同一に配置することにより、調整値の補間精度の低下を抑制することができる。
【0048】
図14は、本実施形態における記録位置調整方法を示すフローチャートである。ステップS1401において、記録モードが選択される。ステップS1402において、調整が実施される記録モードのうち、定速記録領域が最も狭い記録モードの定速記録領域の範囲を取得する。ステップS1403において、取得された定速記録領域の範囲内に各記録モードの調整パターンを記録する。以下のステップは第1の実施形態と同様であるが、調整パターンを記録していないモードについては、上述のように補完演算にて調整値を決定する。
【0049】
このように、調整パターンを記録する記録モードのうち、最も定速記録領域が狭い記録モードの定速記録領域の範囲を取得し、当該領域内に、記録位置調整を実施する全モードの調整パターンを記録する。また、記録位置調整を実施する記録モードの調整値から、記録位置調整を実施しない記録モードの調整値を補間して求める。これにより、記録位置調整の精度の低下を抑制することができる。
【0050】
尚、本実施形態において、双方向レジのための粗調整パターンであるパターン群1301及び微調整パターンであるパターン群1304、1307、1310及び1312は、いずれも定速記録領域に記録される形態を示した。しかし、粗調整の段階では、必ずしも定速記録領域に記録する必要がない場合もあり、粗調整のパターン群1301は加減速記録領域に記録する形態であってもよい。双方向レジの微調整パターンであるパターン群については、定速記録領域に記録することにより、より高精度に調整を行うことができる。
【0051】
(第3の実施形態)
これまで述べた実施形態においては、調整パターンを定速記録領域に配置する構成について説明した。これは、加減速記録領域に調整パターンを記録した場合に、調整値が走査速度に依存して誤差が生じるためである。一方、往復走査の記録位置のずれ量は、キャリッジの走査速度に対して大きく影響を受けるが、吐出口列間の記録位置ずれ量は、キャリッジの走査速度に対する影響は相対的に小さい。往復走査ではインク滴の吐出方向、すなわちインク滴が記録媒体へ向かう速度とキャリッジ走査速度との合成速度によって記録位置ずれが生じるため、キャリッジの走査速度の影響が大きい。一方、吐出口列間の記録位置ずれは、主には記録ヘッドの製造公差として吐出口列間距離の所望の間隔に対する誤差によって生じるため、キャリッジの走査速度の影響は小さい。本実施形態では、これらを鑑みて、吐出口列間の記録位置の調整パターンは、必ずしも定速記録領域に配置しない構成とする。
【0052】
図15は、本実施形態における記録位置調整パターンの配置の説明図である。パターン群1501~1504の記録モード、調整項目は、第1の実施形態と同様である。パターン群1501及び1502は、往復走査の記録位置調整パターンであり、パターン群1503及び1504は、吐出口列間距離の調整パターンであり、本実施形態では、加減速記録領域に配置される。このような構成により、各調整項目において必要な調整精度を確保しつつ、記録位置調整に必要な記録媒体の幅を小さくすることができる。
【0053】
図16は、本実施形態における記録位置調整方法のフローチャートである。ステップS1601において、調整を行う記録モード及び調整項目を選択する。ステップS1602において、調整項目が往復記録位置調整であるかどうかを判断し、往復記録位置調整である場合にはステップS1603に進み、それ以外の調整項目である場合にはステップS1605へ進む。ステップS1603~S1608では前述の実施形態と同様に定速記録領域が最も狭い記録モードの定速記録領域の範囲内に調整パターンを記録し、調整値を算出する。ステップS1605では、調整項目が往復記録位置調整ではないため、加減速記録領域と定速記録領域を含めた記録可能領域を取得し、ステップS1606にて取得した領域の範囲内にパターンを記録し、ステップS1607に進む。ステップS1609において、調整を実施すべき全ての記録モード及び調整項目の調整が終了しているか判定し、終了していなければステップS1601に戻り、全記録モード、調整項目の調整が終了するまでフローを継続する。
【0054】
このように、調整項目の特性に合わせて記録位置調整パターンを適切に配置することができる。これにより、記録位置調整精度の低下を抑制しつつ、調整に必要な記録媒体の幅を小さくすることができる。本実施形態では、加減速記録領域への記録が許容できる記録位置調整パターンとして2列の吐出口列間の記録位置の調整パターンを挙げて説明したが、他の条件での記録位置を調整するための調整パターンであってもよく、走査速度に応じて決定することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
前述した実施形態において、ノズル列ないし記録ヘッドの構成や個数などは例示したものに限定されず、適宜採用可能である。例えば、2列の吐出口列が配列された記録ヘッドの形態を示したが、さらに複数の吐出口列を備える形態でもよく、それらの記録ヘッドを複数搭載可能なキャリッジを備える形態であってもよい。また、第3の実施形態においては、加減速記録領域に吐出口列の調整するための調整パターンを配置する例を示したが、それら複数の記録ヘッド間の調整や、吐出口列の上端に位置する吐出口と下端に位置する吐出口の記録位置についても同様に適用可能である。
【0056】
また、調整パターンのずれを検知する方法として、光学センサによる濃度の検知の例を示したが、必ずしもこれに限られない。ユーザが目視で最適なパターンを選択し、選択したパターンを入力することで調整値を取得する構成であってもよい。
【0057】
また、定速記録領域の範囲内に調整パターンを配置したが、定速記録領域内においてパターンを配置する場合には、プリンタの構成に応じて好適に設定されることが望ましい。既に述べたように、記録媒体をプリンタ本体の片側に寄せて搬送を行う構成とする場合には、より小さな記録媒体の幅でも調整が可能となるように、定速記録領域内において紙端に近い位置が好ましいと考えられる。また、記録媒体の安定した搬送のために、プラテン上に記録媒体を吸引する穴を設けている場合、記録媒体がこれらの穴に落ち込み、記録ヘッドと記録媒体間の距離が相対的に広がることが考えられる。このような領域に調整パターンを記録すると調整精度の低下が生じうる。従って、定速記録領域であっても、それらの位置は避けることが望ましい。このように、調整パターンの位置は実施例で述べた配置を適用しつつ、調整が適切に実施されるように設定することが可能である。これらの配置については、パターンの記録時に決定するようにしても良いし、あらかじめ決定した配置をROMに格納し、記録時に読み出すようにしても良い。
【0058】
また、中央位置に合わせて記録媒体を搬送する、いわゆるセンター給紙の構成であっても本発明を適用可能である。片寄搬送の場合と同様に、定速記録領域と加減速記録領域を取得して、定速記録領域で記録すべき調整パターンを配置すればよい。
【符号の説明】
【0059】
102 キャリッジユニット
105 記録ヘッド
107 反射型光学センサ
200 コントローラ