IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】無機酸化物二次粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/34 20060101AFI20241111BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20241111BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C01B13/34
C01B33/12 A
C01B35/12 D
C08K7/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020163600
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055901
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三崎 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】末松 諒一
(72)【発明者】
【氏名】館山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267613(JP,A)
【文献】Biosensors and Bioelectronics,2019年,132,pp.286-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子からなる無機酸化物粒子により構成され、
低比重無機酸化物粒子は、周期表第1族元素酸化物、周期表第2族元素酸化物、周期表第13族元素酸化物及び周期表第14族元素酸化物を含み、かつ乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が0.79g/cm3以下であり、
高比重無機酸化物粒子は、周期表第2族元素酸化物、周期表第13族元素酸化物及び周期表第14族元素酸化物を含み、かつ乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が1.80~3.1g/cm3であり、
低比重無機酸化物粒子、高比重無機酸化物粒子及び無機酸化物二次粒子の形状が球状である、
無機酸化物二次粒子。
【請求項2】
(α)低比重無機酸化物粒子と(β)高比重無機酸化物粒子との質量比[(α)/(β)]が5/95~95/5である、請求項1記載の無機酸化物二次粒子。
【請求項3】
高比重無機酸化物粒子は、低比重無機酸化物粒子よりも平均粒子径が小さい、請求項1又は2記載の無機酸化物二次粒子。
【請求項4】
周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第13族元素及び周期表第14族元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が0.79g/cm3以下の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有する低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と、
周期表第2族元素、周期表第13族元素及び周期表第14族元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が1.80~3.1g/cm3の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有する高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と
を熱分解炉内に噴霧して熱分解し、球状低比重無機酸化物粒子と球状高比重無機酸化物粒子を形成させ、球状低比重無機酸化物粒子と球状高比重無機酸化物粒子を凝集させる、球状無機酸化物二次粒子の製造方法。
【請求項5】
周期表第1族元素酸化物、周期表第2族元素酸化物、周期表第13族元素酸化物及び周期表第14族元素酸化物を含み、かつ乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が0.79g/cm3以下である球状低比重無機酸化物粒子と、
周期表第2族元素酸化物、周期表第13族元素酸化物及び周期表第14族元素酸化物を含み、かつ乾式自動密度計を用いて定容積膨張法により測定される粒子密度が1.80~3.1g/cm3である球状高比重無機酸化物粒子と
を含む球状無機酸化物粒子を二次粒子の形態で媒体と混合する、密度差のある球状無機酸化物粒子の媒体への分散性改善方法。
【請求項6】
媒体が樹脂、塗料、ゴム又は溶剤である、請求項5記載の分散性改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸化物二次粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化が急速に進んでおり、電子機器に用いられる塗膜、樹脂製品やフィルム製品は、薄膜化の要望が高く、これら製品に用いられるフィラーは、より粒子径の小さいものが望まれている。
また、フィラーを塗料や樹脂等への練り込む際に、中実粒子と中空粒子とを添加することが行われている。例えば、低圧鋳造金型の塗型剤として、中空セラミック粉末と中実セラミック粉末を添加することで、塗膜の強度が向上し、塗膜の割れ・剥離が抑制され、鋳物の鋳肌不良や、チル及び湯廻り不良等の鋳物欠陥を抑制できることや(特許文献1)、金属キャビティ―内壁面の断熱層を、中空セラミック粒子、中実セラミック粒子及び粘結材により構成することで、過度の急冷を防止し、チル晶の生成や鋳造欠陥を抑制できることが報告されている(特許文献2)。また、半導体装置の封止用のエポキシ樹脂組成物に、中実無機充填材と中空無機充填材を添加することで、硬化収縮時や硬化時の応力を低減し、耐ヒートサイクル性が向上することも報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-169440号公報
【文献】特開2004-223608号公報
【文献】特開昭62-252418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中実粒子と中空粒子には密度差があるため、両者を塗料や樹脂といった媒体に均一に混合することは難しい。そのため、中実粒子と中空粒子を媒体に混合する際には、事前に適切な混合装置で処理する等の操作が必要になるが、混合する際の圧力や剪断力が強いと、中空粒子が破壊され、両者を混合するメリットを享受できない。他方、混合できたとしても、密度差があるため中実粒子と中空粒子が媒体中で容易に分離してしまう。そのため、充填材として中実粒子と中空粒子を添加した製品の性能にばらつきを生ずるおそれがある。加えて、粒径の小さな中空粒子と中実粒子とを別々に塗料や樹脂に添加した場合、両者を均一に分散させることが難しいといった課題もある。
本発明の課題は、媒体への分散性を改善可能な無機酸化物二次粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、密度差のある無機酸化物一次粒子を媒体中に混合した際に、これら一次粒子が密度差により分離することなく、均一に分散させる手段について詳細に検討したところ、密度差のある無機酸化物の一次粒子を二次粒子化し、それを媒体と混合することで、意外なことに、無機酸化物の二次粒子が一次粒子となって媒体中に拡散し、これらを密度差により分離することなく、均一に分散させることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔10〕を提供するものである。
〔1〕低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子からなる無機酸化物粒子により構成される、無機酸化物二次粒子。
〔2〕低比重無機酸化物粒子は、粒子密度が0.79g/cm3以下であり、高比重無機酸化物粒子は、粒子密度が1.80~3.1g/cm3である、前記〔1〕記載の無機酸化物二次粒子。
〔3〕(α)低比重無機酸化物粒子と(β)高比重無機酸化物粒子との質量比[(α)/(β)]が5/95~95/5である、前記〔1〕又は〔2〕記載の無機酸化物二次粒子。
〔4〕高比重無機酸化物粒子は、低比重無機酸化物粒子よりも平均粒子径が小さい、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の無機酸化物二次粒子。
〔5〕低比重無機酸化物粒子、高比重無機酸化物粒子及び無機酸化物二次粒子の形状が球状である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の無機酸化物二次粒子。
〔6〕低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を熱分解炉内に噴霧して熱分解し、低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子を形成させ、低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子を凝集させる、無機酸化物二次粒子の製造方法。
〔7〕低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液が、周期表第1族元素~周期表第17族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が0.79g/cm3以下の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有する溶液であり、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液が、周期表第1族元素~周期表第17族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が1.80~3.1g/cm3の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有する溶液である、前記〔6〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔8〕密度差のある無機酸化物粒子を二次粒子の形態で媒体と混合する、密度差のある無機酸化物粒子の媒体への分散性改善方法。
〔9〕密度差のある無機酸化物粒子は、粒子密度が0.79g/cm3以下である低比重無機酸化物粒子と、粒子密度が1.80~3.1g/cm3である高比重無機酸化物粒子を含むものである、前記〔8〕記載の分散性改善方法。
〔10〕媒体が樹脂、塗料、ゴム又は溶剤である、前記〔8〕又は〔9〕記載の分散性改善方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の無機酸化物二次粒子を用いれば、媒体と混合したとしても、無機酸化物の二次粒子が一次粒子となって媒体中に拡散するため、これらが密度差により分離することなく、均一に分散させることができる。したがって、本発明の無機酸化物二次粒子は、塗料用フィラー、断熱材料、遮熱材料、触媒担体、建築材料、電子材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔無機酸化物二次粒子〕
本発明の無機酸化物二次粒子は、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を含む無機酸化物粒子により構成されるものである。
ここで、本明細書において「無機酸化物二次粒子」とは、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を含む無機酸化物粒子が凝集したものをいう。ここでいう「凝集」は、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を含む無機酸化物粒子が見掛け上1個の粒子として振る舞う集合体を形成していればよく、その集合方式は特に限定されず、合体成長、固結等のいずれでも構わない。また、本明細書において「低比重無機酸化物粒子」とは、20℃のエタノール〔JIS K 8101:エタノール(99.5)(試薬) 、比重0.79〕に浮遊する無機酸化物一次粒子をいう。更に、本明細書において「高比重無機酸化物粒子」とは、25℃の56質量%ポリタングステン酸ナトリウム水溶液(比重1.80)に沈降する無機酸化物一次粒子をいう。
【0009】
低比重無機酸化物粒子は、20℃のエタノールに浮遊すればよく、例えば、粒子密度は、通常0.79g/cm3以下であるが、分散性の観点から、0.03~0.79g/cm3が好ましく、0.10~0.79g/cm3がより好ましく、0.25~0.79g/cm3が更に好ましい。
また、高比重無機酸化物粒子は、25℃の56質量%ポリタングステン酸ナトリウム水溶液に沈降すればよく、例えば、粒子密度は、通常1.80g/cm3以上であるが、分散性の観点から、1.80~3.1g/cm3が好ましく、1.80~2.8g/cm3がより好ましく、1.80~2.6g/cm3が更に好ましい。
ここで、本明細書において「粒子密度」は、乾式自動密度計を用いて、定容積膨張法により測定するものとする。なお、「定容積膨張法」とは、セル内に試料を投入した後、これに不活性ガスを充填して試料の体積を測定し、この体積と、予め測定しておいた試料の質量とから粒子密度を求める方法をいう。乾式自動密度計として、例えば、乾式自動密度計「アキュピック(島津製作所製)」を使用することができる。
【0010】
(α)低比重無機酸化物粒子と(β)高比重無機酸化物粒子との割合は、分散性の観点から、質量比[(α)/(β)]として5/95~95/5が好ましく、90/10~10/90がより好ましく、80/20~20/80が更に好ましく、75/25~25/75が更に好ましく、65/35~35/65がより更に好ましい。
【0011】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を構成する無機化合物は、無機酸化物を構成する元素を含むものであれば特に限定されないが、例えば、周期表第1族元素~周期表第17族元素を含む酸化物を挙げることができる。なお、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子は、1又は2以上の無機酸化物を含有していてもよく、単一の無機酸化物には、1又は2以上の元素が含まれていてもよい。
【0012】
周期表第1族元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。周期表第2族元素としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。周期表第3族元素としては、例えばイットリウムが挙げられる。周期表第4族元素としては、例えば、チタン、ジルコニウムが挙げられる。周期表第5族元素としては、例えば、ニオブ、タンタルが挙げられる。周期表第6族元素としては、例えば、クロム、モリブデン、タングステンが挙げられる。周期表第7族元素としては、例えば、マンガンが挙げられる。周期表第8族元素としては、例えば、鉄、ルテニウムが挙げられる。周期表第9族元素としては、例えば、コバルト、ロジウム、イリジウムが挙げられる。周期表第10族元素としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金が挙げられる。周期表第11族元素としては、例えば、銅、銀、金が挙げられる。周期表第12族元素としては、例えば、亜鉛、カドミウムが挙げられる。周期表第13族元素としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられる。周期表第14族元素としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられる。周期表第15族元素としては、例えば、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマスが挙げられる。周期表第16族元素としては、例えば、酸素、硫黄、セレンが挙げられる。周期表第17族元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0013】
無機化合物の具体例としては、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化白金、酸化銅、酸化銀、酸化金、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛、酸化リン、酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス、硫黄酸化物、酸化セレン、アルミノシリケート、カルシウムシリケート、アルミノホウケイ酸、バリウムホウケイ酸等を挙げることができる。
【0014】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子は、上記した元素を含む酸化物よって密度差を生ずるように構成されたものであればよい。
低比重無機酸化物粒子は、20℃のエタノールに浮遊するように、比重が0.79以下である無機酸化物を選択すればよく、例えば、周期表第1族元素~周期表第17族元素 から選択される1又は2以上の元素を含む無機酸化物であって、粒子密度が0.79g/cm3以下である無機酸化物を含有することができる。低比重無機酸化物粒子を構成する無機酸化物は、1又は2以上含まれていてもよい。中でも、分散性の観点から、少なくなくとも周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第4族元素、周期表第13族元素、周期表第14族元素及び周期表第15族元素から選択される1又は2以上の元素を含む無機酸化物であって、粒子密度が0.79g/cm3以下である無機酸化物を含有することが好ましい。
【0015】
また、高比重無機酸化物粒子は、25℃の56質量%ポリタングステン酸ナトリウム水溶液に沈降するように、比重が1.80以上である無機酸化物を選択すればよく、例えば、周期表第1族元素~周期表第17族元素から選択される1又は2以上の元素を含む無機酸化物であって、粒子密度が1.80~3.1g/cm3である無機酸化物を含有することができる。低比重無機酸化物粒子を構成する無機酸化物は、1又は2以上含まれていてもよい。中でも、分散性の観点から、少なくなくとも周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第4族元素、周期表第13族元素、周期表第14族元素及び周期表第15族元素から選択される1又は2以上の元素を含む無機酸化物であって、粒子密度が1.80~3.1g/cm3である無機酸化物を含有することが好ましい。
【0016】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子は、それぞれ中実粒子、多孔質粒子及び中空粒子のいずれでもよく、これら2以上の混合物でも構わない。ここで、本明細書において「中実粒子」とは、内部に空洞を有さない構造の粒子をいい、例えば、単一の層からなる粒子、及び、コア(内核とも言われる)とシェル層(外殻とも言われる)を有する粒子を挙げることができる。また、「中空粒子」とは、内部に空洞(中空部)を有する構造のものであり、外殻に包囲された空洞を有する粒子をいう。空洞の数は、単数でも複数でもよい。更に、「多孔質粒子」とは、粒子表面から内部まで連結した貫通孔を多数有する粒子をいう。貫通孔の大きさや形状は、特に限定されない。また、粒子内部に閉気孔を有していてもよい。
【0017】
中でも、低比重無機酸化物粒子は、分散性の観点から、内部に空隙の多い粒子、中空粒子であることが好ましく、中空粒子であることが更に好ましい。
また、高比重無機酸化物粒子は、分散性の観点から、内部に空隙の少ない粒子、中実粒子であることが好ましく、中実粒子であることが更に好ましい。
【0018】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子の平均粒子径は特に限定されないが、分散性の観点から、高比重無機酸化物粒子の平均粒子径は、低比重無機酸化物粒子よりも小さいことが好ましい。
より具体的には、高比重無機酸化物粒子の平均粒子径は、低比重無機酸化物粒子よりも小さければ特に限定されないが、通常100μm以下であり、好ましくは0.1~50μmであり、更に好ましくは0.1~30μmである。
また、低比重無機酸化物粒子の平均粒子径は、高比重無機酸化物粒子よりも大きければ特に限定されないが、通常0.1μm以上であり、好ましくは0.1~70μmであり、更に好ましくは1~50μmである。
更に、無機酸化物二次粒子の平均粒子径は、通常1000μm以下であり、好ましくは1~1000μmであり、より好ましくは3~500μmであり、更に好ましくは5~300μmである。
ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、JIS R 1629に準拠して試料の粒度分布を体積基準で作成したときに積算分布曲線の50%に相当する粒子径(d50)を意味する。なお、粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用することができる。
【0019】
低比重無機酸化物粒子、高比重無機酸化物粒子及び無機酸化物二次粒子の形状は特に限定されないが、分散性の観点から、球状であることが好ましい。球状は、真球状、扁楕円体や長楕円体等の略球状のいずれであっても構わないが、分散性の観点から、平均円形度が、0.85以上であることが好ましく、0.90以上が更に好ましい。ここで、「円形度」は、走査型電子顕微鏡写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定し、周囲長(PM)に対する真円の面積を(B)とすると、その粒子の円形度はA/Bとして表される。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円の周囲長及び面積は、それぞれPM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、この粒子の円形度は、円形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出される。100個の粒子について円形度を測定し、その平均値でもって平均円形度とする。また、電子顕微鏡により観察し、粒子の形状を確認することも可能である。なお、電子顕微鏡として、例えば、「JSM-7001F(日本電子製)」を使用することができる。
【0020】
本発明の無機酸化物二次粒子は、媒体への分散性に優れることから、塗料用フィラー、断熱材料、遮熱材料、触媒担体、建築材料、電子材料等として有用である。
【0021】
本発明の無機酸化物二次粒子の製造方法は、上記構成を有する無機酸化物二次粒子を得ることができれば特に限定されないが、例えば、低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を熱分解炉内に噴霧して熱分解し、低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子を形成させ、そして低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子を凝集させればよい。低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液は、同一熱分解炉内の別個独立の噴霧装置から噴霧することが、一次粒子を形成しやすく、一次粒子を凝集しやすい点で好ましい。なお、各原料溶液を噴霧する噴霧装置は、1基又は2基以上設置することができる。
【0022】
低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を構成する原料化合物としては、上記した無機酸化物を構成する元素を1又は2以上含むアルコキシド又は無機塩を挙げることができる。無機塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物を挙げることができる。原料化合物は、1又は2以上使用することができる。
【0023】
原料溶液は、原料化合物を水又はエタノール等の有機溶媒と混合して調製できる。なお、原料化合物の配合割合は、上記した組成の無機酸化物粒子となるように、原料化合物の種類に応じて適宜調整すればよいが、例えば、低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液の組成は、熱分解温度を指標に原料化合物の種類や配合割合を調整することができる。より具体的には、低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液は、熱分解温度より融点が高くなるように原料化合物の種類や配合割合を調整すればよく、また高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液は、熱分解温度で溶融するように原料化合物の種類や配合割合を調整すればよい。
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液は、例えば、周期表第1族元素~周期表第17族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が0.79g/cm3以下の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有することが好ましく、少なくなくとも周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第4族元素、周期表第13族元素、周期表第14族元素及び周期表第15族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が0.79g/cm3以下の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有することが更に好ましい。なお、アルコキシド及び無機塩は、1又は2以上含有することができる。
また、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液は、例えば、周期表第1族元素~周期表第17族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が1.80~3.1g/cm3の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有することが好ましく、少なくなくとも周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第4族元素、周期表第13族元素、周期表第14族元素及び周期表第15族元素から選択される1又は2以上の元素を含むアルコキシド又は無機塩であって、酸化したときに粒子密度が1.80~3.1g/cm3の無機酸化物となるアルコキシド又は無機塩を含有することが更に好ましい。なお、アルコキシド及び無機塩は、1又は2以上含有することができる。
【0024】
各原料溶液中の原料化合物濃度は、各元素の総量として、0.01mol/L~2.0mol/Lが好ましく、0.1mol/L~1.0mol/Lがより好ましい。
【0025】
噴霧熱分解装置は、熱分解炉の形状が堅型円筒状であることが好ましく、熱分解炉の大きさは、製造スケールにより適宜選択することができる。
【0026】
噴霧装置としては、例えば、2流体ノズル、3流体ノズル、4流体ノズル等の流体ノズルを挙げることができる。ここで、流体ノズルの方式には、気体と原料溶液とをノズル内部で混合する内部混合方式と、ノズル外部で気体と原料溶液を混合する外部混合方式があるが、いずれも採用できる。ノズルに供給する気体としては、例えば、空気や、窒素、アルゴン等の不活性ガス等を使用することができる。中でも、経済性の観点から、空気が好ましい。
【0027】
各原料溶液の流量は、通常1~100L/hであり、好ましくは3~80L/hであり、更に好ましくは5~60L/hである。
【0028】
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液の液滴(ミスト)を加熱装置により加熱して低比重無機酸化物一次粒子を形成させ、また高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液の液滴(ミスト)を加熱装置により加熱して高比重無機酸化物一次粒子を形成させ、そしてこれら一次粒子を凝集させて無機酸化物二次粒子を形成させる。
【0029】
各原料溶液の液滴(ミスト)の噴出速度は、通常1~50m/sであり、好ましくは5~35m/sであり、更に好ましくは10~20m/sである。
【0030】
加熱装置は、例えば、燃焼バーナー、熱風ヒータ、電気ヒータ等を挙げることができる。加熱装置は、1基又は2基以上設置することが可能である。なお、燃焼バーナー、熱風ヒータ及び電気ヒータは、一般的に販売されているものあれば、いずれも使用することができる。
加熱装置の温度は、400~1800℃が好ましく、600~1500℃がより好ましく、700~1400℃が更に好ましく、800~1200℃がより更に好ましい。このような温度であれば、熱分解が十分となり、また粒子が熱分解炉外に排出されたときに粒子同士が凝集し難くなる。
【0031】
無機酸化物二次粒子は、熱分解炉の下流側から回収される。無機酸化物二次粒子の回収は、高性能サイクロン粉体回収機やバグフィルターを用いた粉体回収装置を用いることができる。
【0032】
〔媒体への分散性改善方法〕
本発明の媒体への分散性改善方法は、密度差のある無機酸化物粒子を二次粒子の形態で媒体と混合するものである。これにより、無機酸化物粒子の二次粒子が一次粒子となって媒体中に拡散するため、無機酸化物粒子の一次粒子が密度差により分離することなく、均一に分散させることができる。
【0033】
密度差のある無機酸化物粒子は、上記した低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を含むことが好ましく、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子の粒子密度、平均粒子径、割合等の具体的構成は、上記において説明したとおりである。また、無機酸化物二次粒子の具体的構成も、上記において説明したとおりである。
【0034】
媒体としては特に限定されないが、本発明の効果を享受しやすい点で、例えば、樹脂、塗料、ゴム、溶剤を挙げることができる。溶剤としては、有機溶剤が好適に使用され、有機溶剤の種類は特に限定されない。
【0035】
媒体として樹脂を用いた場合には、電子材料、例えば、配線回路基板や半導体封止材等の形成用樹脂組成物として有用である。
樹脂としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂、アクリロニトリル-エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン樹脂が挙げられる。樹脂は、1種又は2種以上含有することができる。
【0036】
樹脂組成物中の無機酸化物二次粒子の含有量は、その用途により適宜選択可能であるが、通常1~97質量%であり、好ましくは5~60質量%であり、更に好ましくは15~40質量%である。
【0037】
また、樹脂組成物は、有機溶媒に溶解又は分散したワニスの形態であってもよく、該ワニスを基材に含浸させてプリプレグとすることもできる。
ワニス中の固形分(不揮発分)濃度は、その用途に応じて適宜選択可能であるが、通常5~80質量%であり、好ましくは10~70質量%である。
ワニスを含浸させる基材としては、例えば、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Qガラス等の無機繊維;芳香族ポリアミド、ポリイミド、芳香族ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;炭素繊維等が挙げられる。含浸は、浸漬(ディッピング)や塗布等によって行うことができる。
【0038】
更に、例えば、金属箔付基板上に、上記したワニスを塗布した後、加熱・硬化を行って金属箔付基板上に樹脂層を形成した後、金属箔をエッチングにより除去して導体パターンを形成することにより配線回路基板を製造することもできる。なお、ワニスを基材上に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。
【0039】
媒体と無機酸化物二次粒子との混合方法は特に限定されないが、例えば、各成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等を用いて混練すればよい。なお、混合条件は、混合方法により適宜設定することができる。
【実施例
【0040】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
製造例1
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液の調製
水1Lあたり硝酸アルミニウム九水和物を0.04mol、オルトケイ酸テトラエチルを0.82 mol、硝酸カルシウム四水和物を0.07mol、硝酸カリウムを0.02molを溶解させて調製した(合計:0.95mol/L)。
【0042】
製造例2
高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液の調製
水1Lあたり硝酸アルミニウム九水和物を0.004mol、オルトケイ酸テトラエチルを0.34mol、硝酸マグネシウム六水和物を0.08mol、硝酸カルシウム四水和物を0.08mol、四ほう酸ナトリウム十水和物を0.16molを溶解させて調製した(合計:0.664mol/L)。
【0043】
実施例1
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を、それぞれ噴霧ノズル1基から表1に示す量で噴霧されたミストを1400℃の噴霧熱分解装置の炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解し、低比重無機酸化物一次粒子及び高比重無機酸化物一次粒子を生成させ、両者を凝集させて無機酸化物二次粒子を製造した。そして、得られた無機酸化物二次粒子を回収した。得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が38μmであった。
【0044】
実施例2~4
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液と高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を、それぞれ表1に示す量で炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解したこと以外は、実施例1と同様の操作により無機酸化物二次粒子を製造し、回収した。実施例2で得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が31μmであり、実施例3で得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が27μmであり、実施例4で得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が22μmであった。
【0045】
実施例5
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を噴霧ノズル1基から、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を噴霧ノズル2基から、それぞれ表1に示す量で炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解したこと以外は、実施例1と同様の操作により無機酸化物二次粒子を製造し、回収した。得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が15μmであった。
【0046】
実施例6
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を噴霧ノズル2基から、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液を噴霧ノズル1基から、それぞれ表1に示す量で炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解したこと以外は、実施例1と同様の操作により無機酸化物二次粒子を製造し、回収した。得られた無機酸化物二次粒子は、平均粒子径が40μmであった。
【0047】
【表1】
【0048】
各実施例で得られた無機酸化物二次粒子について、次の分析を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
1.粒子密度の測定
粒子密度は、「JIS R 1620」に準拠して、乾式自動密度計(アキュピック1340、島津製作所製)を用いて、定容積膨張法により測定する。
【0050】
2.平均粒子径の測定
平均粒子径は、粒子径分布測定装置(MT3000II、マイクロトラックベル社製)を用い、「JIS R 1629」に準拠して体積基準の粒度分布を作成し、積算分布曲線の50%に相当する粒子径(d50)を求める。
【0051】
3.円形度の測定
円形度は、走査型電子顕微鏡写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定し、周囲長(PM)に対する真円の面積を(B)とすると、その粒子の円形度はA/Bとして表される。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円の周囲長及び面積は、それぞれPM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、この粒子の円形度は、円形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出される。100個の粒子について円形度を測定し、その平均値でもって平均円形度とする。
【0052】
4.低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子の重量割合の算出
得られた無機酸化物粒子15gを20℃のエタノール(比重:0.79g/cm3)300mLに混ぜて10分間超音波で分散した後、24時間静置させて浮遊粒子と沈降粒子に分離し、回収する。エタノールの浮遊粒子は、乾燥を行い、重量を測定する。
次いで、エタノールの沈降粒子を乾燥し、25℃のポリタングステン酸ナトリウム56%水溶液(比重:1.80g/cm3)300mLに混ぜた後、24時間静置させて浮遊粒子と沈降粒子に分離し、回収する。
次いで、回収したポリタングステン酸ナトリウム56%水溶液の浮遊粒子と沈降粒子は、水で洗浄後、乾燥を行い、重量を測定し、低比重球状粒子と高比重球状粒子の重量割合を算出する。この操作を5回行い、各重量割合の平均値を求める。
各実施例で得られた無機酸化物二次粒子について上記操作を行ったところ、いずれもポリタングステン酸ナトリウム56%水溶液の浮遊粒子はなく、すべて沈降粒子であった。
【0053】
5.無機酸化物二次粒子の形状確認
電子顕微鏡(JSM-7001F、日本電子製)により観察する。
各実施例で得られた無機酸化物二次粒子について電子顕微鏡観察したところ、いずれも低比重無機酸化物粒子の周囲に高比重無機酸化物粒子が凝集した球状無機酸化物二次粒子であることが確認された。
【0054】
【表2】
【0055】
分散性の検討
実施例7
実施例2で得られた球状無機酸化物二次粒子を、アクリル製パイプ(内径10cm、高さ50cm)に高さ30cmになるように入れ、上下に20回振った後、粒子の高さの変化がなくなるまで、アクリル製パイプを横から叩いた。
次いで、アクリル製パイプの上端から5cm(上部)、中央付近の5cm(中央部)、アクリル製パイプの下端から5cm(下部)の粒子を取り出し、球状低比重無機酸化物一次粒子と球状高比重無機酸化物一次粒子の重量割合を、上記した方法により算出した。その結果を表3に示す。
【0056】
比較例1
低比重無機酸化物粒子形成用原料溶液のみを噴霧ノズル1基から噴霧量30L/hrで、1400℃の噴霧熱分解装置の炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解して生成した球状低比重無機酸化物一次粒子を回収した。また、高比重無機酸化物粒子形成用原料溶液のみを噴霧ノズル1基から噴霧量30L/hrで、1400℃の噴霧熱分解装置の炉内に吹き込み、ミストを炉内で熱分解して生成した球状高比重無機酸化物一次粒子を回収した。次いで、球状低比重無機酸化物一次粒子と球状高比重無機酸化物一次粒子を50質量%ずつ混合して、混合球状無機酸化物一次粒子を製造した。
そして、実施例2で得られた球状無機酸化物二次粒子に代えて、混合球状無機酸化物一次粒子を用い、実施例7と同様の操作により、球状低比重無機酸化物一次粒子と球状高比重無機酸化物一次粒子の重量割合を、上記した「低比重無機酸化物粒子と高比重無機酸化物粒子の重量割合の算出」方法により求めた。その結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3から、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子を含む無機酸化物粒子により構成される無機酸化物二次粒子は、無機酸化物の二次粒子が一次粒子となって拡散し、一次粒子が密度差により分離することなく、均一に分散することがわかる。
【0059】
実施例8
樹脂中の分散性についての検討
ポリプロピレン樹脂80体積%に実施例2で得られた球状無機酸化物二次粒子20体積%を混合・混練後、型枠に流し込み、板状に成型した。硬化後、ポリプロピレン樹脂硬化体を型枠から取り出し、切断して、切断面を顕微鏡で観察を行った。その結果、低比重無機酸化物粒子及び高比重無機酸化物粒子が、それぞれ一次粒子となって拡散し、それらが密度差により分離することなく、樹脂硬化体中に均一に分散していることが確認された。