IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図1
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図2
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図3
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図4
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図5
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図6
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図7
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図8
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図9
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図10
  • 特許-超音波診断装置、及び検査方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】超音波診断装置、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020165947
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2021058583
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019183746
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 智久
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-322840(JP,A)
【文献】特開2001-137243(JP,A)
【文献】特開2010-253193(JP,A)
【文献】特開2004-209087(JP,A)
【文献】特開2009-232947(JP,A)
【文献】特開2015-084979(JP,A)
【文献】特開2016-087302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0203104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向群に属する複数の方向に超音波を送信して当該第1の方向群に対応する受信信号を取得する第1の超音波スキャンと当該第1の超音波スキャンとの間で所定の時間差を隔てて、第2の方向群に属する複数の方向に超音波を送信して当該第2の方向群に対応する受信信号を取得する第2の超音波スキャンとを実行する送受信部と、
前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号にウォールフィルタを適用させるフィルタリング部と、
前記ウォールフィルタが適用された後の前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号に基づいて、前記第1及び第2の方向群に属する各方向とは異なる複数の方向を表す第3の方向群に対応する信号を生成する合成部と、
前記第3の方向群に対応する信号に基づき血流情報を取得する演算部
具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記演算部により取得された前記血流情報に基づき、画像データを生成する画像生成部をさらに具備する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第1の方向群の互いに隣り合う一対の方向の間に、前記第2の方向群に属する一の方向が含まれ、
前記合成部は、前記ウォールフィルタが適用された後の前記第2の方向群に属する一の方向に対応する受信信号と、前記ウォールフィルタが適用された後の前記第1の方向群の一対の方向の一方に対応する受信信号とに基づいて、前記第2の方向群に属する一の方向と、前記第1の方向群の一対の方向の一方との間の方向に対応する信号を、前記第3の方向群に対応する信号の一部として生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送受信部は、前記第1の超音波スキャンの実行によって、前記第1の方向群に属する複数の方向それぞれに超音波を複数回送信し、前記第2の超音波スキャンの実行によって、前記第2の方向群に属する複数の方向それぞれに超音波を複数回送信する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記合成部は、前記ウォールフィルタが適用された後の前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号に所定の重みを掛け、当該所定の重みを掛けた当該受信信号に基づいて、前記第3の方向群に対応する信号を生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記フィルタリング部は、前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号に応じ、前記ウォールフィルタのフィルタ係数を適応的に決定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記ウォールフィルタが適用された後の前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号と、前記第3の方向群に対応する信号とに基づき、前記血流情報を取得する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
事前スキャンで取得された受信信号に基づき、前記第1の方向群、及び前記第2の方向群のうち少なくともいずれか、並びに、前記時間を決定する事前制御部をさらに具備する請求項1乃至のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
事前スキャンで取得された受信信号に基づき、少なくとも血流信号強度が空間的に均一でない領域への方向を含む方向群を、前記第1の方向群、又は前記第2の方向群として決定し、かつ、前記時間を決定する事前制御部をさらに具備する請求項1乃至のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記事前スキャンは、予め設定された周期で実行される請求項又はに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
第1の方向群に属する複数の方向に超音波を送信して当該第1の方向群に対応する受信信号を取得する第1の超音波スキャンと、当該第1の超音波スキャンとの間で所定の時間差を隔てて、第2の方向群に属する複数の方向に超音波を送信して当該第2の方向群に対応する受信信号を取得する第2の超音波スキャンとを実行し
前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号にウォールフィルタを適用させ、
前記ウォールフィルタが適用された後の前記第1及び第2の方向群に対応する受信信号に基づいて、前記第1及び第2の方向群に属する各方向とは異なる複数の方向を表す第3の方向群に対応する信号を生成し、
前記第3の方向群に対応する信号に基づき血流情報を取得する検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラードプラ法に代表されるドプライメージングは、超音波を用いた血流映像化技術として広く知られている。ドプライメージングでは、超音波診断装置が放射した超音波パルスの反射波信号が血流や心臓壁等の移動体で反射される際に受ける周波数偏移を解析することで、血流画像が生成される。血流からの反射波の強度は、血流以外の組織からの反射波の強度よりも弱いため、周波数偏移の小さい信号を低減させるフィルタ処理(いわゆる、ウォールモーションフィルタリング)により、血流以外の組織からの信号成分を抑圧するようにしている。
【0003】
ところで、反射波信号が受ける周波数偏移は、超音波伝搬方向の速度成分に依存する。そのため、超音波伝搬方向の速度成分が小さい血流、例えば、超音波伝搬方向に直交して流れる血流で反射される反射波信号は、フィルタ処理により抑圧されてしまう。
【0004】
また、血液は超音波波長以下のサイズの散乱体の集合であるため、散乱体での反射波信号が干渉を受けるおそれがある。このため、血液からの散乱信号は、スペックルパタンと呼ばれる空間的にムラのある、すなわち局所的に振幅が落ちる振幅分布となる。さらに超音波の周波数が局所的に変動するため、血流の速度、及び超音波パルスの伝搬方向が同一であっても観測される周波数偏移量に差異が生じ、受信信号の振幅に差が生じることがある。
【0005】
以上のように、ドプライメージングでは、血流の流れの方向、及び/又は血液中の散乱体の存在等が要因となり、血流画像中に輝度ムラが発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-320399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、血流画像における輝度ムラを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、超音波診断装置は、送受信部、フィルタリング部、演算部、及び画像生成部を有する。送受信部は、第1の方向群に属する複数の方向へ第1の送信ビームを形成し、前記第1の送信ビーム毎に少なくとも1つの第1の受信ビームを形成し、前記第1の方向群へのスキャンから所定の時間が経過した後、第2の方向群に属する複数の方向へ第2の送信ビームを形成し、前記第2の送信ビーム毎に少なくとも1つの第2の受信ビームを形成する。フィルタリング部は、前記第1及び第2の受信ビームで得られた受信信号にウォールフィルタを適用させる。演算部は、前記フィルタリングされた信号に基づき、血流情報を算出する。画像生成部は、前記算出された血流情報に基づき、画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を表すブロック図である。
図2図2は、図1に示される超音波送信回路により形成される送信ビームの形成方向を表す図である。
図3図3は、図1に示される超音波診断装置の表示装置に超音波画像が表示される際の処理回路の動作を表すフローチャートである。
図4図4は、方向パターンA,Bの送受信ビームと、方向パターンA,Bの信号に基づいて模擬的に作成される方向パターンCの送受信ビームを表す図である。
図5図5は、方向パターンA,B,Cの送受信ビームにより実現される走査線方向を表す図である。
図6図6は、ウォールフィルタが適応型のフィルタである場合の処理回路の動作を表すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の機能構成を表すブロック図である。
図8図8は、図7に示される超音波診断装置の表示装置に超音波画像が表示される際の処理回路の動作を表すフローチャートである。
図9図9は、第1の変形例における、方向パターンA,Bの信号に基づいてリアルタイムに作成される方向パターンCの送受信ビームを表す図である。
図10図10は、第2の変形例における、方向パターンA,Bの信号に基づいてリアルタイムに作成される方向パターンCの送受信ビームを表す図である。
図11図11は、第3の変形例における、送信ビームの形成方向を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の機能構成の一例を表すブロック図である。図1に示される超音波診断装置1は、装置本体10と、超音波プローブ20とを有している。装置本体10は、入力装置30及び表示装置40と接続されている。また、装置本体10は、ネットワークNWを介して外部装置50と接続されている。
【0012】
超音波プローブ20は、例えば、装置本体10からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ20は、例えば、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、及び圧電振動子から後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ20は、装置本体10と着脱自在に接続される。超音波プローブ20には、オフセット処理、及び超音波画像のフリーズ等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0013】
超音波プローブ20は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された1Dアレイリニアプローブ、複数の圧電振動子がマトリックス状に配列された2Dアレイプローブ、又は圧電振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なメカニカル4Dプローブ等である。
【0014】
複数の圧電振動子は、装置本体10が有する後述の超音波送信回路11から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ20から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ20から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流又は心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ20は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0015】
なお、図1には、超音波スキャンに用いられる超音波プローブ20と装置本体10との接続関係のみを例示している。しかしながら、装置本体10には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、切り替え操作によって任意に選択することができる。
【0016】
装置本体10は、超音波プローブ20により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、超音波送信回路11、超音波受信回路12、内部記憶回路13、画像メモリ14、入力インタフェース15、出力インタフェース16、通信インタフェース17、及び処理回路18を有している。
【0017】
超音波送信回路11は、超音波プローブ20に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路11は、例えば、パルス発生器、送信遅延回路、及びパルサ回路により実現される。パルス発生器は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ20から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対して与える。送信方向又は送信方向を決定する送信遅延時間は、内部記憶回路13に記憶されており、送信時に参照される。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ20に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信遅延回路により各レートパルスに対して与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0018】
超音波送信回路11は、処理回路18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧を変更する機能は、例えば、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0019】
超音波受信回路12は、超音波プローブ20が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路12は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、及びビームフォーマにより実現される。
【0020】
プリアンプは、超音波プローブ20が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。このとき、プリアンプは、例えば、予め決められた時間応答に従ってゲイン値を変化させる。プリアンプにおいて受信信号にかけられたゲインの時間応答は、内部記憶回路13に記憶される。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調することで、ディジタル信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。ビームフォーマは、I信号及びQ信号(以下では、IQ信号と称する)に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。ビームフォーマは、遅延時間を与えたIQ信号を加算する。ビームフォーマの処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0021】
超音波送信回路11、及び超音波受信回路12は、送受信部の一例である。
【0022】
なお、超音波送信回路11、及び超音波受信回路12は、少なくとも一部が共通化されていてもよい。また、反射波信号を用いてソフトウェアビームフォーミングを行う場合、例えば上述の超音波受信回路12の機能のうち少なくとも一部(例えば、受信ビームフォーミングに係る機能)を後述の処理回路18に代行させてもよい。つまり、処理回路18も送受信部の一例になり得る。
【0023】
また、超音波送信回路11、及び超音波受信回路12の少なくとも一部は、超音波プローブ20に設けられても構わない。
【0024】
内部記憶回路13は、例えば、磁気的若しくは光学的記憶媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路13は、例えば、超音波送受信を実現するためのプログラムを記憶している。また、内部記憶回路13は、診断情報、スキャンシーケンス、診断プロトコル、超音波送受信条件、信号処理条件、画像生成条件、画像処理条件、ボディマーク生成プログラム、表示条件、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位毎に予め設定する変換テーブル等の各種データを記憶している。プログラム、及び各種データは、例えば、内部記憶回路13に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路13にインストールされてもよい。
【0025】
また、内部記憶回路13は、入力インタフェース15を介して入力される操作に従い、超音波受信回路12で生成される受信信号、及び処理回路18で生成される各種超音波画像データ等を記憶する。内部記憶回路13は、記憶しているデータを、通信インタフェース17を介して外部装置50等に転送することも可能である。
【0026】
内部記憶回路13は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路13は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置50に記憶させることも可能である。
【0027】
画像メモリ14は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ14は、入力インタフェース15を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ14に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0028】
内部記憶回路13、及び画像メモリ14は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路13、及び画像メモリ14が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路13、及び画像メモリ14のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0029】
入力インタフェース15は、入力装置30を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置30は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、及びタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース15は、例えばバスを介して処理回路18に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路18へ出力する。なお、入力インタフェース15は、マウス及びキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路18へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0030】
出力インタフェース16は、例えば処理回路18からの電気信号を表示装置40へ出力するためのインタフェースである。表示装置40は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力インタフェース16は、例えばバスを介して処理回路18に接続され、処理回路18からの電気信号を表示装置に出力する。
【0031】
通信インタフェース17は、例えばネットワークNWを介して外部装置50と接続され、外部装置50との間でデータ通信を行う。
【0032】
処理回路18は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路18は、内部記憶回路13に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路18は、例えば、送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、及び表示制御機能185を有している。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、及び表示制御機能185が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、及び表示制御機能185を実現しても構わない。また、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
【0033】
送受信機能181は、超音波送信回路11、及び超音波受信回路12を制御することで、超音波プローブ20に超音波スキャンを実行させる機能である。送受信機能181において処理回路18は、内部記憶回路13から読み出した情報に基づき、超音波送信回路11による超音波の送信、及び超音波受信回路12による反射波信号の受信を制御する。
【0034】
具体的には、処理回路18は、超音波送信回路11が各超音波振動子に対して、各々の遅延時間が与えられた駆動信号を印加するように、超音波送信回路11を制御する。各超音波振動子は、与えられた遅延時間に従うタイミングで超音波を送信する。各超音波振動子から送信された超音波が合成された結果として送信ビームが形成される。
【0035】
また、処理回路18は、スキャン領域に設定されるイメージングROI(Region Of Interest:関心領域)内において、送信ビームの形成方向が所定の時間差を隔てて複数パターン存在するように、超音波送信回路11を制御する。具体的には、例えば、処理回路18は、複数の方向が属する方向パターンAへ送信ビームを形成し、所定の時間差を隔てた後、複数の方向が属する方向パターンBへ送信ビームを形成するように、超音波送信回路11を制御する。方向パターンAに含まれる方向と、方向パターンBに含まれる方向とは、それぞれ異なる方向である。なお、方向パターンは、方向群と称してもよい。所定の時間差とは、例えば、血液中に含まれる散乱体の分布状態がおおよそ入れ替わる程度の時間である。
【0036】
図2は、図1に示される超音波送信回路11により形成される送信ビームの形成方向の例を表す模式図である。図2によれば、方向パターンAに属する第1の方向から第5の方向まで、送信ビームが順次形成される。また、方向パターンBに属する第1の方向から第4の方向まで、送信ビームが順次形成される。方向パターンAに属する5つの方向と、方向パターンBに属する4つの方向とは、それぞれ異なっている。また、方向パターンAに属する最後の方向、つまり、方向パターンAの第5の方向へ形成した送信ビームに対する反射波信号を受信してから、方向パターンBに属する最初の方向、つまり、方向パターンBの第1の方向へ送信ビームを形成するまでに、Δtの待機期間が存在している。なお、図2では、セクタ型電子スキャンにおける送信ビームを例に説明しているが、これに限定されない。本実施形態に係るスキャンは、コンベックススキャン、又はリニアスキャンであっても構わない。また、送信ビームは、平面波、又は拡散波のような非集束超音波ビームであってもよい。
【0037】
また、処理回路18は、例えば、超音波プローブ20により受信された反射波信号に対して受信指向性を考慮した遅延時間を与え、遅延時間を与えた反射波信号を加算することで少なくとも1つの受信信号を発生させるように、超音波受信回路12を制御する。これにより、1つの送信ビームに対し、少なくとも1つの受信ビームが形成される。なお、1つの送信ビームに対して形成される受信ビームの数は、1つに限定されず、複数であっても構わない。
【0038】
Bモード処理機能182は、超音波受信回路12から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。具体的には、Bモード処理機能182において処理回路18は、例えば、超音波受信回路12から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0039】
ドプラ処理機能183は、超音波受信回路12から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるイメージングROI内にある移動体のドプラ効果に基づく血流情報に関するデータ(ドプラデータ)を生成する機能である。血流情報は、被検体における血流の平均速度、分散、パワー、又はこれらの組み合わせを含む。生成されたドプラデータは、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0040】
具体的には、ドプラ処理機能183において処理回路18は、例えば、フィルタ処理、合成処理、自己相関処理、演算処理等を実行する。
【0041】
フィルタ処理では、同一位置から連続して反射される反射波信号に関するデータ列に対し、ウォールフィルタが適用される。フィルタ処理は、フィルタリング部の一例である。これにより、静止している組織、又は、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)が抑制され、血流に由来する信号が抽出される。ウォールフィルタとしては、例えば、MTI(Moving Target Indicator)フィルタが用いられる。MTIフィルタとしては、例えば、フィルタ係数が固定された、バタワース型のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ、又は多項式回帰フィルタ等が用いられる。
【0042】
合成処理では、フィルタ処理が施された信号が、方向パターン毎に重みを付けて合成される。合成処理は、合成部の一例である。これにより、実際にスキャンされた方向パターンとは異なる方向パターンの信号が生成される。
【0043】
自己相関処理では、フィルタ処理が施された信号、及び合成された信号に対して自己相関演算が行われる。具体的には、例えば、処理回路18は、クラッタ信号が除去された最新パルスのIQ信号と、1パルス前のIQ信号との複素共役をとることで自己相関値を算出する。
【0044】
演算処理では、上記処理が施された信号に基づき、血流情報が算出される。演算処理は、演算部の一例である。具体的には、例えば、処理回路18は、自己相関処理で算出された自己相関値から、平均速度、及び分散を算出する。また、処理回路18は、IQ信号の実数部の絶対値の2乗と、虚数部の絶対値の2乗とを加算し、パワーを算出する。
【0045】
なお、ドプラ処理機能183において処理回路18が実施する処理は、フィルタ処理、合成処理、自己相関処理、演算処理に限定されない。処理回路18は、これらの処理に加え、例えば、ブランク処理、空間平滑化処理、及び時間方向平滑化処理等を実行しても構わない。また、方向パターンを模擬的に増加させない場合には、合成処理を実施しなくても構わない。
【0046】
画像生成機能184は、Bモード処理機能182、及び/又はドプラ処理機能183により生成されたデータに基づき、各種超音波画像データを生成する機能であり、画像生成部の一例である。具体的には、画像生成機能184において処理回路18は、例えば、RAWデータメモリに記憶されているBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ20による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成されるBモード画像データを生成する。
【0047】
また、処理回路18は、例えば、RAWデータメモリに記憶されているドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又はこれらを組み合わせた画像データである。
【0048】
表示制御機能185は、画像生成機能184により生成された各種超音波画像データに基づく画像を表示装置40に表示させる機能である。具体的には、例えば、表示制御機能185において処理回路18は、画像生成機能184により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む超音波画像データに基づく画像の表示装置40における表示を制御する。
【0049】
表示制御機能185において処理回路18は、例えば、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像データを生成する。また、処理回路18は、表示用画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、及びγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行してもよい。また、処理回路18は、表示用画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。また、処理回路18は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIを表示装置40に表示させてもよい。
【0050】
次に、以上のように構成された超音波診断装置1による計測処理の一例について説明する。
【0051】
図3は、図1に示される超音波診断装置1の表示装置40に超音波画像が表示される際の処理回路18の動作の例を表すフローチャートである。図3の説明では、入力インタフェース15を介し、ドプラ画像データを生成するためのイメージングROIがスキャン領域に設定されているものとする。
【0052】
まず、入力インタフェース15を介して操作者から、例えば、血流イメージングモードが選択され、選択された血流イメージングモードを開始する開始指示が入力される。血流イメージングモードを開始する開始指示が入力されると、処理回路18は、送受信機能181を実行する。送受信機能181において処理回路18は、例えば、血流イメージングモードについてのスキャンシーケンスを内部記憶回路13から読み出す。処理回路18は、読み出したスキャンシーケンスに基づいてスキャンを実行する。
【0053】
例えば、処理回路18は、スキャンシーケンスに基づき、カラードプラ法用の超音波送受信条件を内部記憶回路13から読み出す。図3についての説明では、超音波送受信条件に、例えば、送信ビームを方向パターンA,Bに形成させるための情報、及び方向パターンAについて実行するスキャンと、方向パターンBについて実行するスキャンとの間の時間差についての情報等が含まれている。処理回路18は、読み出した超音波送受信条件を超音波送信回路11に設定する。
【0054】
超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンAについての超音波スキャンを実行する(ステップS31)。
【0055】
具体的には、超音波送信回路11は、例えば、図2で示される方向パターンAの第1の方向へ超音波パルスを複数回送信する。超音波プローブ20から被検体Pへ送信された超音波パルスは、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面、及び血流等で次々と反射される。超音波パルスの反射波信号は、血流や心臓壁等の移動体の速度成分に由来する周波数偏移を受ける。反射波信号は、超音波プローブ20で受信される。
【0056】
超音波受信回路12は、超音波プローブ20が受信した反射波信号に対し、例えば、方向パターンAの第1の方向へ指向性を合わせた処理を実施して受信信号を生成する。生成された受信信号は、例えば、バッファ(図示せず)で保持される。
【0057】
超音波送信回路11は、方向パターンAの第2の方向から第5の方向それぞれへも同様に超音波パルスを複数回ずつ送信する。超音波受信回路12は、超音波プローブ20を介し、送信された超音波パルスの反射波信号を受信する。超音波受信回路12は、受信した第2の方向から第5の方向の反射波信号に対し、例えば、方向パターンAの第2の方向から第5の方向へ指向性をそれぞれ合わせた処理を実施して受信信号を生成する。方向パターンAの第2の方向から第5の方向について生成された受信信号は、例えば、バッファに保持される。
【0058】
方向パターンAの第5の方向へのスキャンを実行し、待機時間Δtが経過すると、超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンBについての超音波スキャンを実行する(ステップS32)。
【0059】
具体的には、超音波送信回路11は、例えば、図2で示される方向パターンBの第1の方向から第4の方向それぞれへ超音波パルスを複数回ずつ順次送信する。超音波受信回路12は、超音波プローブ20を介し、送信された超音波パルスの反射波信号を受信する。超音波受信回路12は、受信した第1の方向から第4の方向の反射波信号に対し、例えば、方向パターンBの第1の方向から第4の方向へ指向性をそれぞれ合わせた処理を実施して受信信号を生成する。方向パターンBの第1の方向から第4の方向について生成された受信信号は、例えば、バッファに保持される。
【0060】
カラードプラ法のためのスキャンが実行されると、処理回路18は、ドプラ処理機能183を実行する(ステップS33)。
【0061】
具体的には、例えば、ドプラ処理機能183において処理回路18は、方向パターンAの第1の方向について生成された受信信号に対し、ウォールフィルタを掛けることで、静止している組織、又は、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制し、血流に由来する信号を抽出する。処理回路18は、フィルタ処理が施された信号に対して自己相関処理を実施し、自己相関値を算出する。処理回路18は、算出した自己相関値から、方向パターンAの第1の方向のサンプル点毎の平均速度、及び分散を算出する。また、処理回路18は、フィルタ処理が施された信号から、方向パターンAの第1の方向のサンプル点毎のパワーを算出する。これにより、方向パターンAの第1の方向についてのドプラRAWデータが生成される。
【0062】
処理回路18は、方向パターンAの第2の方向から第5の方向それぞれについて生成された受信信号に対しても同様の処理を実行する。これにより、方向パターンAの第2の方向から第5の方向それぞれについてのドプラRAWデータが生成される。
【0063】
また、処理回路18は、方向パターンBの第1の方向から第4の方向それぞれについて生成された受信信号に対しても同様の処理を実行する。これにより、方向パターンBの第1の方向から第4の方向それぞれについてのドプラRAWデータが生成される。
【0064】
また、処理回路18は、フィルタ処理が施された方向パターンAの信号と、方向パターンBの信号とを、それぞれに所定の重みを掛けて合成する。例えば、処理回路18は、方向パターンAの第1の方向の信号と、方向パターンBの第1の方向の信号とを、それぞれに所定の重みを掛けて合成する。これにより、方向パターンAの第1の方向と、方向パターンBの第1の方向との間の方向からの信号が算出される。同様に、例えば、処理回路18は、方向パターンAのその他の方向の信号と、方向パターンBのその他の方向の信号とを、それぞれに所定の重みを掛けて合成する。これにより、方向パターンA,Bとは異なる方向パターンCからの信号が算出される。処理回路18は、方向パターンCに属する方向それぞれについて生成された受信信号に対して、自己相関処理、及び演算処理を実行し、方向パターンCに属する各方向のサンプル点毎の平均速度、分散、及びパワーを算出する。これにより、方向パターンCに属する各方向についてのドプラRAWデータが生成される。
【0065】
図4は、方向パターンA,Bの送受信ビームと、方向パターンA,Bの信号に基づいて模擬的に作成される方向パターンCの送受信ビームとの例を表す模式図である。図4に示されるように、方向パターンAに属する複数の方向へ送受信ビームが形成され、方向パターンBに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、方向パターンA,Bに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。このことは、つまり、図4の太い実線で表される方向パターンCの送受信ビームが形成されたと換言可能である。
【0066】
方向パターンA,B,CについてのドプラRAWデータが生成されると、処理回路18は、画像生成機能184を実行する(ステップS34)。
【0067】
具体的には、例えば、画像生成機能184において処理回路18は、方向パターンA,B,CについてのドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、イメージングROIにおける血流情報についてのドプラ画像データを生成する。
【0068】
図5は、方向パターンA,B,Cの送受信ビームにより実現される走査線方向の例を表す模式図である。このように、方向パターンA,Bのみで送受信ビームを形成するよりも高い密度で検査を実施することが可能となる。
【0069】
血流イメージングモードでは、例えば、カラードプラスキャンと並行して、Bモードスキャンが実施されている。例えば、処理回路18は、スキャンシーケンスに基づき、Bモードスキャン用の超音波送受信条件を内部記憶回路13から読み出す。処理回路18は、読み出した超音波送受信条件を超音波送信回路11に設定する。超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、超音波プローブ20から被検体Pに超音波を送信する。
【0070】
超音波プローブ20から被検体Pへ送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ20で受信される。超音波受信回路12は、超音波プローブ20が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成する。生成された受信信号は、例えば、バッファで保持される。
【0071】
Bモードスキャンが実行されると、処理回路18は、Bモード処理機能182により、バッファで保持される受信信号に基づき、スキャン領域についてのBモードデータを生成する。
【0072】
Bモードデータを生成すると、処理回路18は、画像生成機能184により、Bモードデータに基づいてBモード画像データを生成する。処理回路18は、ドプラ画像データと、Bモード画像データとを生成すると、これらの画像データを合成した超音波画像データを生成する。
【0073】
超音波画像データを生成すると、処理回路18は、表示制御機能185により、生成した超音波画像データに基づく画像を表示装置40に表示させる(ステップS35)。
【0074】
続いて、処理回路18は、計測を続行するか否かを判断する(ステップS36)。例えば、処理回路18は、入力インタフェース15を介して操作者から計測を終了させる旨の指示を受けると、又は、超音波プローブ20に対して計測を終了させる旨の動作が入力されると(ステップS36のNo)、処理を終了させる。上記のような入力がない場合(ステップS36のYes)、処理回路18は、処理をステップS31から繰り返す。
【0075】
以上のように、第1の実施形態では、超音波送信回路11は、方向パターン(方向群)Aに属する複数の方向へ送信ビームを形成する。超音波送信回路11は、方向パターンAへのスキャンから所定の時間が経過した後、方向パターンBに属する複数の方向へ送信ビームを形成する。超音波受信回路12は、送信ビーム毎に少なくとも1つの受信ビームを形成する。処理回路18は、方向パターンA,Bへのスキャンで得られた受信信号にウォールフィルタを適用させ、フィルタリングした信号に基づき、血流情報を算出する。そして、処理回路18は、算出した血流情報に基づき、画像データを生成するようにしている。これにより、方向パターンA,Bで異なる方向の送信ビームを形成することが可能となるため、血流の流れる方向に応じて発生し得る感度差を抑制することが可能となる。また、方向パターンAのスキャンと、方向パターンBのスキャンとに所定の時間差があり、血液中の散乱体の配置が変化するため、血液中の散乱体の配置パタンによる受信超音波信号の空間的な振幅変動の影響が抑えられるようになる。
【0076】
なお、第1の実施形態では、フィルタ処理におけるウォールフィルタのフィルタ係数が固定されている場合を例に説明した。しかしながら、ウォールフィルタのフィルタ係数は、固定されていなくても構わない。例えば、ウォールフィルタは、固有値分解、又は特異値分解等を用いて入力信号に応じて係数を変化させる適応型のフィルタであってもよい。
【0077】
図6は、ウォールフィルタが適応型のフィルタである場合の処理回路18の動作の例を表すフローチャートである。図6において、方向パターンAへの超音波スキャンが実行されると(ステップS31)、処理回路18は、このスキャンで生成された受信信号についてのフィルタ係数を決定する(ステップS61)。例えば、処理回路18は、受信信号についての相関行列から固有ベクトルを計算し、計算した固有ベクトルから、ウォールフィルタに用いる係数を算出する。
【0078】
方向パターンBへの超音波スキャンが実行されると(ステップS32)、処理回路18は、このスキャンで生成された受信信号についてのフィルタ係数を決定する(ステップS62)。
【0079】
方向パターンBの受信信号についてのフィルタ係数を決定すると、処理回路18は、決定したフィルタ係数を用い、ステップS33のドプラ処理機能183を実行する。
【0080】
このように、ウォールフィルタをフィルタ係数が変化可能な適応型とすることで、より効率的にクラッタ信号を抑制することが可能となる。また、送信方向パタンの異なる受信信号群についてそれぞれに適応するフィルタ係数を求めることで、速度域値に差異が生じる等血流ドプラ信号の間の独立性が高くなり、したがって、これら受信信号を合成することで干渉による血流信号の振幅ムラの抑制効果を高めることができる。
【0081】
また、第1の実施形態では、方向パターンAの信号と、方向パターンBの信号とに基づき、方向パターンA,Bとは異なる方向パターンCの信号が生成される場合を例に説明した。しかしながら、方向パターンCの信号は生成されなくても構わない。
【0082】
方向パターンCの信号が生成されない場合、例えば、処理回路18は、画像生成機能184により、方向パターンA,BについてのドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、イメージングROIにおける血流情報についてのドプラ画像データを生成する。
【0083】
また、方向パターンCの信号が生成されない場合、例えば、処理回路18は、ドプラ処理機能183により、方向パターンAの信号と、方向パターンBの信号との間で、平滑化フィルタリング処理を実行してもよい。具体的には、例えば、処理回路18は、注目サンプル点についての値を、方向パターンA,Bのサンプル点を含む周辺データの加重平均を用いて求める。このとき、平滑化フィルタのフィルタ係数は、必要に応じて設定可能である。例えば、平滑化フィルタは、ガウシアンフィルタであっても構わない。
【0084】
また、第1の実施形態では、方向パターンA,B,CについてのドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報についてのドプラ画像データを生成する例について説明した。しかしながら、ドプラ画像データは、方向パターンA,B,CについてのドプラRAWデータに基づくものに限定されない。例えば、処理回路18は、方向パターンCについてのドプラRAWデータに基づいてドプラ画像データを生成してもよい。具体的には、例えば、処理回路18は、図3のステップS34において、方向パターンCについてのドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、イメージングROIにおける血流情報についてのドプラ画像データを生成する。
【0085】
また、第1の実施形態では、ドプラ処理機能183で方向パターンA,Bについての信号が合成され、方向パターンCについての信号が生成される場合を例に説明した。しかしながら、方向パターンA,Bについての信号が合成されるのは、ドプラ処理機能183に限定されない。方向パターンA,Bについての信号の合成は、いつなされても構わない。例えば、画像生成機能184で合成されてもよい。
【0086】
具体的には、例えば、画像生成機能184において処理回路18は、方向パターンA,BについてのドプラRAWデータを合成することで、方向パターンA,Bとは異なる方向パターンCについてのドプラRAWデータを算出する。つまり、画像生成機能184も、合成部の一例となり得る。処理回路18は、方向パターンA,B,CについてのドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、イメージングROIにおける血流情報についてのドプラ画像データを生成する。
【0087】
また、方向パターンA,Bについての信号の合成は、ディジタル信号に限定されない。例えば、RF信号、ベースバンド信号、又は包絡線検波後信号が合成されてもよい。
【0088】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、方向パターン、及び時間差Δtが予め設定されている場合を例に説明した。第2の実施形態では、方向パターン、及び時間差Δtが事前のスキャンにより決定される場合について説明する。
【0089】
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1aの機能構成の一例を表すブロック図である。図7に示される超音波診断装置1aは、装置本体10aと、超音波プローブ20とを有している。装置本体10aは、入力装置30及び表示装置40と接続されている。また、装置本体10aは、ネットワークNWを介して外部装置50と接続されている。
【0090】
装置本体10aは、超音波プローブ20により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10aは、超音波送信回路11、超音波受信回路12、内部記憶回路13、画像メモリ14、入力インタフェース15、出力インタフェース16、通信インタフェース17、及び処理回路18aを有している。
【0091】
処理回路18aは、例えば、超音波診断装置1aの中枢として機能するプロセッサである。処理回路18aは、内部記憶回路13に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路18aは、例えば、送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、表示制御機能185、及びプリスキャン機能186を有している。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、表示制御機能185、及びプリスキャン機能186が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより送受信機能181、Bモード処理機能182、ドプラ処理機能183、画像生成機能184、表示制御機能185、及びプリスキャン機能186を実現しても構わない。また、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
【0092】
プリスキャン機能186は、方向パターン、及び時間差Δtを事前に決定するためのスキャンを制御する機能であり、事前制御部の一例である。プリスキャン機能186において処理回路18は、内部記憶回路13から読み出したプリスキャンのための情報に基づき、超音波送信回路11による超音波の送信、及び超音波受信回路12による反射波信号の受信を制御する。処理回路18は、プリスキャンで取得された受信信号に基づいて方向パターン、及び時間差Δtを決定する。
【0093】
次に、以上のように構成された超音波診断装置1aによる計測処理の一例について説明する。
【0094】
図8は、図7に示される超音波診断装置1aの表示装置40に超音波画像が表示される際の処理回路18aの動作の例を表すフローチャートである。図8の説明では、入力インタフェース15を介し、ドプラ画像データを生成するためのイメージングROIがスキャン領域に設定されているものとする。
【0095】
まず、入力インタフェース15を介して操作者から、例えば、血流イメージングモードが選択され、選択された血流イメージングモードを開始する開始指示が入力される。血流イメージングモードを開始する開始指示が入力されると、処理回路18aは、プリスキャン機能186を実行する。
【0096】
プリスキャン機能186において処理回路18aは、まず、イメージングROIのスキャンを実行する(ステップS81)。具体的には、例えば、処理回路18aは、プリスキャンについての超音波送受信条件を内部記憶回路13から読み出す。図8についての説明では、超音波送受信条件に、例えば、送信ビームをデフォルトとしての方向パターンAに形成させるための情報等が含まれている。処理回路18は、読み出した超音波送受信条件を超音波送信回路11に設定する。
【0097】
超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンAに属する方向それぞれへ超音波パルスを複数回ずつ順次送信する。超音波受信回路12は、超音波プローブ20を介し、送信された超音波パルスの反射波信号を受信する。超音波受信回路12は、受信した各方向の反射波信号に対し、例えば、方向パターンAの各方向へ指向性をそれぞれ合わせた処理を実施して受信信号を生成する。
【0098】
スキャンが実行されると、処理回路18aは、ドプラ処理機能183により、生成された受信信号からドプラデータを生成する。ドプラデータを生成すると、処理回路18aは、画像生成機能184により、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。
【0099】
処理回路18aは、生成されたドプラ画像データを解析し、ドプラ画像データに含まれる輝度ムラを検出する。具体的には、処理回路18aは、例えば、生成されたドプラ画像データを解析し、輝度ムラを検出するための指標を算出する。輝度ムラは、周囲の輝度に対して輝度が不自然に低下している領域を表す。輝度ムラを検出するための指標は、血流信号強度の空間的な均一性を評価するための指標であり、例えば、輝度の分散/平均が用いられる。この指標によれば、指標値が高いことは、画像内の輝度ムラが大きいことを表す。なお、指標はこれに限定されない。
【0100】
処理回路18aは、算出した指標に基づき、方向パターン、及び時間差を決定する(ステップS82)。具体的には、例えば、処理回路18aは、指標値が高い領域を通過し、指標値の高さに応じた密度で送信ビームが形成されるように方向パターンを決定する。また、処理回路18aは、指標値の高さに応じた時間差を決定する。方向パターン、及び時間差は、指標値、及び指標値の高い領域の位置と関連付けられて、内部記憶回路13に複数の候補データが予め記憶されていてもよい。また、算出された指標値、及び指標値の高い領域の位置に応じ、適切な方向パターン、及び時間差が生成されてもよい。
【0101】
方向パターン、及び時間差が決定されると、処理回路18aは、送受信機能181を実行する。送受信機能181において処理回路18aは、例えば、血流イメージングモードについてのスキャンシーケンスを内部記憶回路13から読み出す。処理回路18aは、読み出したスキャンシーケンスに基づいてスキャンを実行する。
【0102】
例えば、処理回路18aは、スキャンシーケンスに基づき、カラードプラ法用の超音波送受信条件を内部記憶回路13から読み出す。図8についての説明では、超音波送受信条件に、例えば、送信ビームをデフォルトとしての方向パターンAに形成させるための情報が含まれている。また、超音波送受信条件には、例えば、プリスキャンで決定した方向パターンB’に送信ビームを形成させるための情報、及びプリスキャンで決定した時間差についての情報等が含まれている。処理回路18aは、読み出した超音波送受信条件を超音波送信回路11に設定する。
【0103】
超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンAについての超音波スキャンを実行する(ステップS31)。
【0104】
具体的には、例えば、超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンAに属する方向それぞれへ超音波パルスを複数回ずつ順次送信する。超音波受信回路12は、超音波プローブ20を介し、送信された超音波パルスの反射波信号を受信する。超音波受信回路12は、受信した各方向の反射波信号に対し、例えば、方向パターンAの各方向へ指向性をそれぞれ合わせた処理を実施して受信信号を生成する。
【0105】
方向パターンAへのスキャンを実行し、決定された時間Δt’が経過すると、超音波送信回路11は、設定された超音波送受信条件に基づき、イメージングROI内の、方向パターンB’についての超音波スキャンを実行する(ステップS83)。
【0106】
具体的には、超音波送信回路11は、例えば、方向パターンB’に属する方向それぞれへ超音波パルスを複数回ずつ順次送信する。超音波受信回路12は、超音波プローブ20を介し、送信された超音波パルスの反射波信号を受信する。超音波受信回路12は、受信した各方向の反射波信号に対し、例えば、方向パターンB’の各方向へ指向性をそれぞれ合わせた処理を実施して受信信号を生成する。
【0107】
カラードプラ法のためのスキャンが実行されると、処理回路18aは、ドプラ処理機能183を実行し(ステップS33)、方向パターンA,B’に属する各方向についてのドプラRAWデータを生成する。また、処理回路18aは、方向パターンAの信号と、方向パターンB’の信号とを、それぞれに所定の重みを掛けて合成することで、方向パターンA,B’とは異なる方向パターンC’からの信号を算出する。処理回路18aは、方向パターンC’に属する方向それぞれについて生成された受信信号に対して、自己相関処理、及び演算処理を実行し、方向パターンC’に属する各方向についてのドプラRAWデータを生成する。
【0108】
方向パターンA,B’,C’についてのドプラRAWデータが生成されると、処理回路18aは、画像生成機能184を実行し(ステップS34)、方向パターンA,B’,C’についてのドプラRAWデータに基づき、イメージングROIにおけるドプラ画像データを生成する。処理回路18aは、カラードプラスキャンと並行して実行されるBモードスキャンによりBモード画像データが生成されると、ドプラ画像データと、Bモード画像データとを合成した超音波画像データを生成する。
【0109】
超音波画像データを生成すると、処理回路18aは、表示制御機能185により、生成した超音波画像データに基づく画像を表示装置40に表示させる(ステップS35)。
【0110】
続いて、処理回路18aは、計測を続行するか否かを判断し(ステップS36)、計測を終了させる旨の指示等がある場合(ステップS36のNo)、処理を終了させる。計測を終了させる旨の指示等がない場合(ステップS36のYes)、処理回路18aは、処理をステップS31から繰り返す。
【0111】
以上のように、第2の実施形態では、処理回路18aは、プリスキャン機能186により、事前スキャンで取得された受信信号に基づき、方向パターン、及び時間差を決定するようにしている。これにより、血流信号強度が空間的に均一でない領域がある場合には、当該領域に適した方向パターン、及び時間差を採用できるようになるため、血流の流れる方向に応じて発生し得る感度差の影響と、血液中の散乱体による超音波の散乱の影響とをより効率的に抑えることが可能となる。
【0112】
なお、第2の実施形態では、プリスキャンにおいて1つの方向パターンが決定される場合を例に説明した。しかしながら、プリスキャンで決定される方向パターンは1つに限定されない。例えば、2つ以上の方向パターンが決定されてもよい。
【0113】
例えば、2つの方向パターンが決定された場合、処理回路18aは、最初の超音波スキャンにおいて、決定された一方の方向パターンに属する方向へ送受信ビームを形成する。そして、処理回路18aは、次の超音波スキャンにおいて、決定された他方の方向パターンに属する方向へ送受信ビームを形成する。
【0114】
また、第2の実施形態では、プリスキャンで決定された1つの方向パターンが、2回目の超音波スキャンにおいて利用される場合を例に説明した。しかしながら、プリスキャンで決定された方向パターンが利用されるのは、最初の超音波スキャンであっても構わない。
【0115】
また、第2の実施形態では、プリスキャンが、デフォルトとして設定されている方向パターンAを利用した最初の超音波スキャンから独立したスキャンであるとして説明した。しかしながら、プリスキャンは、最初の超音波スキャンの少なくとも一部であっても構わない。例えば、処理回路18aは、図8に示されるステップS31で取得される受信信号に基づいて生成されるドプラ画像データを解析し、血流信号強度の空間的な均一性を評価するための指標を算出してもよい。そして、処理回路18aは、算出した指標に基づき、方向パターン、及び時間差を決定する。なお、プリスキャンは、方向パターンAを利用した超音波スキャンが実行される度に実行されてもよいし、所定周期で実行されてもよい。
【0116】
また、第2の実施形態では、検査開始時に一度だけプリスキャンが実行される場合を例に説明した。しかしながら、プリスキャンが実行されるのは、検査開始時の一度のみに限定されない。例えば、処理回路18aは、所定の周期でプリスキャンを実行してもよい。つまり、所定の周期毎に方向パターン、及び時間差が変動し得ることになる。
【0117】
また、第2の実施形態では、プリスキャンにおいて、イメージングROIの全体に渡る方向パターンが決定される場合を例に説明した。しかしながら、プリスキャンにおいて決定される方向パターンは、イメージングROIの全体に渡るものに限定されない。処理回路18aは、血流信号強度が空間的に均一でない領域、つまり、輝度ムラが検出された領域の方向のみを含む方向パターンを決定してもよい。これにより、2回目の超音波スキャンのスキャン範囲が狭くなるため、フレームレートが向上する。
【0118】
(第1の変形例)
上記の第1の実施形態では、方向パターンA,Bの信号に基づいて方向パターンCの送受信ビームを形成する方法について説明した。第1の変形例では、リアルタイムに取得される方向パターンA,Bの信号に基づいて方向パターンCの送受信ビームを順次形成する方法について説明する。
【0119】
図9は、第1の変形例における、方向パターンA,Bの信号に基づいてリアルタイムに作成される方向パターンCの送受信ビームを表す図である。図9に示されるように、第1の時相において、方向パターンAに属する複数の方向へ送受信ビームが形成され、第2の時相において、方向パターンBに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、第1の時相および第2の時相に対応する方向パターンA,Bに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。
【0120】
次に、第3の時相において、方向パターンAに属する複数の方向へ送受信ビームが形成され、第4の時相において、方向パターンBに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、第3の時相および第4の時相に対応する方向パターンA,Bに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。以降、上述の処理が繰り返される。
【0121】
以上のように、第1の変形例では、第1の時相における方向パターンAの信号と、第2の時相における方向パターンBの信号とに基づいて第1の合成が行われ、第3の時相における方向パターンAの信号と、第4の時相における方向パターンBの信号とに基づいて第2の合成が行われる。即ち、第1の変形例では、合成に用いられる方向パターンAの信号と方向パターンBの信号との両方が更新される毎に、方向パターンCの合成が行われる。よって、第1の変形例では、信号の合成がリアルタイムに行うことができる。
【0122】
(第2の変形例)
上記の第1の変形例では、方向パターンCの送受信ビームを形成するために、リアルタイムに取得される方向パターンA,Bの信号の両方を更新させていたが、これに限らない。第2の変形例では、方向パターンCの送受信ビームを形成するために、リアルタイムに取得される方向パターンA,Bの信号の一方を更新させる方法について説明する。
【0123】
図10は、第2の変形例における、方向パターンA,Bの信号に基づいてリアルタイムに作成される方向パターンCの送受信ビームを表す図である。図10に示されるように、第1の時相において、方向パターンAに属する複数の方向へ送受信ビームが形成され、第2の時相において、方向パターンBに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、第1の時相および第2の時相に対応する方向パターンA,Bに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。
【0124】
次に、第3の時相において、方向パターンAに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、第2の時相および第3の時相に対応する方向パターンB,Aに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。
【0125】
更に、第4の時相において、方向パターンBに属する複数の方向へ送受信ビームが形成される。そして、第3の時相および第4の時相に対応する方向パターンA,Bに属する複数の方向についての信号が合成されることで、方向パターンCについての信号が算出される。以降、上述の処理が繰り返される。
【0126】
以上のように、第2の変形例では、第1の時相における方向パターンAの信号と、第2の時相における方向パターンBの信号とに基づいて第1の合成が行われ、第2の時相における方向パターンBの信号と、第3の時相における方向パターンAの信号とに基づいて第2の合成が行われ、第3の時相における方向パターンAの信号と、第4の時相における方向パターンBの信号とに基づいて第3の合成が行われる。即ち、第2の変形例では、合成に用いられる方向パターンA,Bの信号のいずれかが更新される毎に、方向パターンCの合成が行われる。よって、第2の変形例では、第1の変形例よりもフレームレートを向上させることができる。
【0127】
(第3の変形例)
上記の各実施形態および各変形例では、2つの異なる方向パターンから取得した信号を合成する方法について説明したが、これに限らない。例えば、3つ以上の異なる方向パターンから取得した信号を合成してもよい。方向パターンの数は、例えば、事前スキャン(プリスキャン)によって決定されてよい。以下では、例として3つの異なる方向パターンから取得した信号を合成する方法について図11を用いて説明する。
【0128】
図11は、第3の変形例における、送信ビームの形成方向を表す図である。図11によれば、方向パターンaに属する第1の方向から第5の方向まで、送信ビームが順次形成される。また、方向パターンbに属する第1の方向から第4の方向まで、送信ビームが順次形成される。さらに、方向パターンcに属する第1の方向から第4の方向まで、送信ビームが順次形成される。方向パターンaに属する5つの方向と、方向パターンbに属する4つの方向と、方向パターンcに属する4つの方向とは、それぞれ異なっている。
【0129】
なお、方向パターンa,b,cのそれぞれに属する複数の方向の数は、上記に限らない。例えば、方向パターンa,b,cのそれぞれに属する複数の方向の数は、全て同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、方向パターンa,b,cのそれぞれに属する複数の方向は、フレームレートに応じて増減されてよい。
【0130】
また、方向パターンaに属する最後の方向、つまり、方向パターンaの第5の方向へ形成した送信ビームに対する反射波信号を受信してから、方向パターンbに属する最初の方向、つまり、方向パターンbの第1の方向への送信ビームを形成するまでに、Δt1の待機期間が存在している。さらに、方向パターンbに属する最後の方向、つまり、方向パターンbの第4の方向へ形成した送信ビームに対する反射波信号を受信してから、方向パターンcに属する最初の方向、つまり、方向パターンcの第1の方向への送信ビームを形成するまでに、Δt2の待機期間が存在している。
【0131】
なお、時間差Δt1および時間差Δt2は、同じ値、或いは異なる値であってもよいし、予め設定されていてもよいし、事前スキャン(プリスキャン)により決定されてもよい。
【0132】
以上のように、第3の変形例では、3つの異なる方向パターンから取得した信号を合成することができる。よって、第3の変形例では、上記の各実施形態および各変形例よりも、撮像条件を柔軟に決定することができる。
【0133】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、超音波診断装置1,1aは、血流画像における輝度ムラを抑えることができる。
【0134】
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0136】
1,1a…超音波診断装置
10,10a…装置本体
11…超音波送信回路
12…超音波受信回路
13…内部記憶回路
14…画像メモリ
15…入力インタフェース
16…出力インタフェース
17…通信インタフェース
18,18a…処理回路
181…送受信機能
182…Bモード処理機能
183…ドプラ処理機能
184…画像生成機能
185…表示制御機能
186…プリスキャン機能
20…超音波プローブ
30…入力装置
40…表示装置
50…外部装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11