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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】炭酸エアゾール皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20241111BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241111BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241111BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241111BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/19
A61Q19/00
A61K9/12
A61K31/17
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/02
A61P17/00
A61P17/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167998
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022060026
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 匡史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 篤人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 めぐみ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0175793(US,A1)
【文献】特開2003-012511(JP,A)
【文献】特開2005-001994(JP,A)
【文献】特開2005-179262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-31/327
A61K47/00-47/69
A61P1/00-43/00
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C)を含有するエアゾール原液と成分(D)を含有する噴射剤からなる炭酸エアゾール皮膚外用剤であって、
(A) 尿素
(B) 水溶性高分子
(C) 水
(D) 炭酸ガス
前記成分(B)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体から選ばれる1種以上の水溶性高分子を含み、
前記エアゾール原液中における成分(B)の含有量が、0.075質量%以上0.75質量%以下である、
炭酸エアゾール皮膚外用剤
【請求項2】
エアゾール原液中における成分(A)の含有量が、1質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(B)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体から選ばれる1種以上の水溶性高分子を含む請求項1又は2に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【請求項4】
吐出直後のpHが7.0以下である請求項1~のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【請求項5】
泡状で吐出される請求項1~のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸エアゾール皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素は、角質の水分保持量を増加させ、乾燥性角化症における角質層の水分保有力の低下を改善させたり、角質を溶解剥離させる作用を有するほか、皮膚透過性亢進作用、殺菌作用、創傷治癒作用、細胞賦活作用、乾燥による掻痒の止痒作用などを有することが知られている。また、保湿作用、角質軟化作用又は鎮痒作用を有する皮膚外用剤に広く用いられている。このような効果を得るためには、尿素を製剤中にある一定濃度以上配合する必要があり、水溶性であるため水を担体として製剤中に尿素を溶解保持させるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、尿素は水溶液中では不安定であり、加水分解によってアンモニアと二酸化炭素に分解する。その結果、尿素による効果が低下するのみならず、分解によって製剤のpHが変化するために製剤の変色(着色)やアンモニア臭の発生を引き起こし、商品価値が著しく低下してしまう。そこで、皮膚外用剤等において、尿素の安定化を図る方法が種々検討されている。特に、尿素をエアゾール組成物に使用する場合には、噴射剤の揮散に伴い、尿素の分解による僅かなアンモニアの臭気も悪臭として感じられることから、より十分な安定化が必要である。
【0004】
原液に尿素を含有するエアゾール組成物における尿素の安定化を目的とした技術として、例えば、原液に尿素と水を配合し、原液中の水配合比率や噴射剤と原液の比率を調整したエアゾール組成物(特許文献1)、原液に尿素、水、及び尿素に対し一定のモル当量比のpH調整剤を配合し、炭酸ガスを噴射剤とするエアゾール組成物(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-12511号公報
【文献】特開2005-179262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1及び2に記載の技術においても、尿素の安定化は未だ十分といえるものではなかった。また、尿素を含有するエアゾール組成物のなかでも、特に炭酸ガスを噴射剤としたエアゾール組成物を高温環境下で保存した場合には、内容液に溶解した炭酸ガスに由来して生ずる重炭酸イオンが尿素の加水分解を促進すると共に、吐出後の剤からの炭酸ガスの揮発に伴い、分解した尿素に由来するアンモニアの揮散が促進され、前述のアンモニア臭の問題がより顕著となることが判明した。また、乾皮症などひび割れや肥厚化といった乾燥症状が認められる患部には、より塗り伸ばしやすい製剤が望まれている。
【0007】
したがって本発明は、高温で保存した場合においても、吐出後の剤からのアンモニア臭が少なく、かつ患部に塗り伸ばしやすい尿素含有炭酸エアゾール皮膚外用剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、炭酸ガスを噴射剤とするエアゾール皮膚外用剤において、原液中に尿素と共に水溶性高分子を含有させることによって、吐出後の剤からの炭酸ガスの揮散を抑制してpHを弱酸性に維持することでアンモニアの揮散を抑制することができ、更には塗布性も向上することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)~(C)を含有するエアゾール原液と成分(D)を含有する噴射剤からなる炭酸エアゾール皮膚外用剤を提供するものである。
(A) 尿素
(B) 水溶性高分子
(C) 水
(D) 炭酸ガス
【発明の効果】
【0010】
本発明の尿素含有炭酸エアゾール皮膚外用剤は、高温で保存した場合においても、吐出後の剤からのアンモニア臭が少なく、かつ患部に塗り伸ばしやすい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
●エアゾール原液
本発明の炭酸エアゾール皮膚外用剤におけるエアゾール原液は、次の成分(A)~(C)を含有する。
【0012】
〔成分(A):尿素〕
エアゾール原液中における成分(A)の含有量は、保湿性及び安定性の向上、皮膚刺激性の低減の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。エアゾール原液中における成分(A)の含有量の具体的範囲は、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~30質量%、更に好ましくは5~20質量%である。
【0013】
〔成分(B):水溶性高分子〕
成分(B)の水溶性高分子としては、通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば制限されず、植物系高分子、微生物系高分子、ムコ多糖類、セルロース系高分子、デンプン系高分子、ビニル系高分子、アクリル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子等が挙げられる。成分(B)の水溶性高分子の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましい。重量平均分子量は、標準物質をポリエチレンオキシドとするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)-多角度レーザー光散乱検出装置(MALLS)システムを用いることにより測定される。
【0014】
また、成分(B)の2質量%水溶液の20℃における粘度は、吐出後の剤に炭酸ガスを保持させ、皮膚への浸透性を向上させる観点から、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは20mPa・s以上であり、また、吐出性向上の観点から、好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・s以下、更に好ましくは5000mPa・s以下である。なお、粘度はB型粘度計(例えば、VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)を用い、20℃で測定した。
【0015】
植物系高分子としては、アラビアゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)等が挙げられ、微生物系高分子としては、キサンタンガム、ジェランガム等が挙げられる。ムコ多糖としては、ヒアルロン酸、チューベロース多糖体、シロキクラゲ多糖体等が挙げられる。セルロース系高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。デンプン系高分子としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等が挙げられる。ビニル系高分子としては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、等が挙げられる。アクリル系高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アミド、アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレートクロスポリマー-6、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ポリオキシエチレン系高分子としては、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0016】
これらのうち、アンモニア臭の抑制、塗布性と向上の観点から、微生物系高分子、セルロース系高分子、アクリル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子が好ましく、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、カルボキシビニルポリマー、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリエチレンオキサイドがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が更に好ましい。
【0017】
エアゾール原液中における成分(B)の含有量は、アンモニア臭の抑制、塗布性の向上の観点から、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、更に好ましくは0.050質量%以上、更に好ましくは0.075質量%以上であり、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.75質量%以下である。エアゾール原液中における成分(B)の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.010~5.0質量%、より好ましくは0.025~2.0質量%、更に好ましくは0.050~1.0質量%、更に好ましくは0.075~0.75質量%である。
【0018】
エアゾール原液中における成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)は、アンモニア臭の抑制、泡質、塗り伸ばし易さ及び保湿性の向上の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは400以下、更に好ましくは300以下である。エアゾール原液中における成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)の具体的範囲は、好ましくは4~2000、より好ましくは10~800、更に好ましくは20~400、更に好ましくは25~300である。
【0019】
〔成分(C):水〕
エアゾール原液中における成分(C)の水の含有量は、尿素の溶解性、炭酸ガスの溶解性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。エアゾール原液中における成分(C)の含有量の具体的範囲は、好ましくは50~98質量%、より好ましくは55~90質量%、更に好ましくは60~80質量%である。
【0020】
〔pH調整剤〕
エアゾール原液は、更に、有機酸、有機酸塩、アミノ酸、アミノ酸塩、アミン、及び無機酸、無機酸塩、及び無機塩基からなる群より選ばれる1種以上のpH調整剤を含有することができる。有機酸としては、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等が挙げられ、その塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン等が挙げられ、その塩としては、ナトリウム塩、塩酸塩、コハク酸塩等が挙げられる。アミンとしては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の脂肪族アミンが挙げられる。無機酸としては、リン酸が挙げられ、無機酸塩としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0021】
なお、pH調整剤は、吐出直後の剤のpHが後述する範囲内となるように含有することができる。
【0022】
〔その他の任意成分〕
エアゾール原液中には、更に、25℃で液状の油剤、多価アルコール、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、粉体、エタノール、酸化防止剤、色素、香料、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、美白剤、抗炎症剤、皮膚賦活剤等を含有することができる。なお、これらの各剤は、各剤としての用途に限られず、目的に応じて他の用途に転用したり、他の用途と兼用したりすることもできる。例えば、制汗剤を香料として使用しても、制汗剤と香料の効果を奏するものとして使用してもよい。
【0023】
25℃で液状の油剤としては、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、エーテル油、フッ素油等が挙げられ、泡の均一な塗布性、組成物の保存安定性を向上させる観点から、炭化水素油、エステル油及びシリコーン油が好ましく、炭化水素油、モノエステル油、トリエステル油、シリコーン油がより好ましく、モノエステル油、トリエステル油、シリコーン油がさらに好ましい。具体的には、例えば、軽質イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、シクロメチコン、ジメチコン、トリシロキサンメチルトリメチコン、エチルトリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、安息香酸と炭素数12~15の脂肪族アルコールとのエステルである安息香酸アルキル(C12-15)等のモノエステル油、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のジエステル油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、2-エチルヘキサン酸トリグリセリル等のトリエステル油;アルキル-1,3-ジメチルブチルエーテル、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルエーテル等のエーテル油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油などが挙げられる。これらは植物等天然由来のものであってもよい。なお、液状の紫外線吸収剤も25℃で液状の油剤に含まれる。
【0024】
エアゾール原液中における25℃で液状の油剤の含有量は、使用感を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。エアゾール原液中における25℃で液状の油剤の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.05~3.0質量%、更に好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0025】
多価アルコールとしては、通常の化粧料に用いられるものであればよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価の多価アルコール;グリセリン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0026】
●噴射剤
〔成分(D):炭酸ガス〕
本発明においては、噴射剤として成分(D)の炭酸ガスを含有する。噴射剤としては、炭酸ガスに加え、他の噴射剤を組み合わせて用いることもできる。炭酸ガス以外の噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(エタン、プロパン、エチレン、イソブタン、ノルマルブタン、プロピレン等、これらの混合ガス(例えば、イソブタンとプロパン、プロパンとブタンの混合ガス等))、エーテル系噴射剤(ジメチルエーテル等)、フロロカーボン(フロロカーボン、クロロフロロカーボン、ブロモクロロフロロカーボン等)、圧縮ガス(窒素、空気、これらの混合ガス等)、フロンガス(モノクロロジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等)が挙げられ、なかでも窒素、ジメチルエーテル、液化石油ガスが好ましい。成分(D)の炭酸ガスと共に他の噴射剤を併用する場合、いずれかを単独で又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0027】
噴射剤として成分(D)の炭酸ガス以外の噴射剤を併用する場合、炭酸ガスによる効果を損なわない観点から、全噴射剤中における成分(D)の炭酸ガスの比率は、気体状態(1013.25hPa、25℃)の容積基準で、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0028】
●炭酸エアゾール皮膚外用剤
本発明の炭酸エアゾール皮膚外用剤は、成分(A)~(C)を含むエアゾール原液を調製して、成分(D)を含む噴射剤と共に耐圧容器に充填することによって、製造することができる。その噴射の形態としては、泡状にして吐出するフォームタイプとするのが好ましい。
【0029】
エアゾール原液100質量部に対する(D)炭酸ガスの比率は、エアゾール原液に対する炭酸ガスの溶解性、泡粘度、噴射性の向上の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.125質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0030】
本発明の炭酸エアゾール皮膚外用剤を吐出した直後のpHは、アンモニア臭抑制の観点から、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは6.0以下である。また、皮膚刺激性の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは4.0以上である。なお、本発明において吐出直後のpHとは、25℃環境下、エアゾール容器から吐出後、1分後に測定したpHをいうものとする。
【0031】
本発明の炭酸エアゾール皮膚外用剤がフォームタイプである場合、吐出された泡の粘度は、アンモニア臭抑制、塗布性の向上の観点から、好ましくは0.2Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、より好ましくは2.0Pa・s以上、更に好ましくは5.0Pa・s以上であり、また、好ましくは30Pa・s以下、より好ましくは20Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下である。
【0032】
〔使用方法〕
本発明の炭酸エアゾール皮膚外用剤は、皮膚、なかでも頭皮を除く全身の皮膚、好ましくは、顔、身体、四肢等のいずれか、より好ましくは手足の皮膚に適量を塗布するが、手に取って対象部位に塗り伸ばしても、対象部位に直接吐出してもよい。フォームタイプの場合、手に取って泡をつぶさないように塗布するのが好ましい。特に、手、足、それらの指、踵、肘、膝等の角層が厚く、乾燥しやすい部位に塗布して使用することが好ましい。塗布量は両手であれば約1gが好ましい。
【0033】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0034】
<1> 次の成分(A)~(C)を含有するエアゾール原液と成分(D)を含有する噴射剤からなる炭酸エアゾール皮膚外用剤。
(A) 尿素
(B) 水溶性高分子
(C) 水
(D) 炭酸ガス
【0035】
<2> エアゾール原液中における成分(A)の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である<1>に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0036】
<3> 成分(B)が。好ましくは植物系高分子、微生物系高分子、ムコ多糖類、セルロース系高分子、デンプン系高分子、ビニル系高分子、アクリル系高分子及びポリオキシエチレン系高分子から選ばれる1種以上、より好ましくは微生物系高分子、セルロース系高分子、アクリル系高分子及びポリオキシエチレン系高分子から選ばれる1種以上、更に好ましくはキサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、カルボキシビニルポリマー、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種以上、更に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体から選ばれる1種以上である<1>又は<2>に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0037】
<4> 成分(B)の分子量が、好ましくは10,000以上である<1>~<3>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0038】
<5> 成分(B)の2質量%水溶液の20℃における粘度が、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは20mPa・s以上であり、また、好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは8000mPa・s以下、更に好ましくは5000mPa・s以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0039】
<6> エアゾール原液中における成分(B)の含有量が、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、更に好ましくは0.050質量%以上、更に好ましくは0.075質量%以上であり、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.75質量%以下である<1>~<5>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0040】
<7> エアゾール原液中における成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)が、好ましくは4以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上であり、また、好ましくは2000以下、より好ましくは800以下、更に好ましくは400以下、更に好ましくは300以下である<1>~<6>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0041】
<8> エアゾール原液中における成分(C)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0042】
<9> エアゾール原液100質量部に対する成分(D)の比率が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.125質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である<1>~<8>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0043】
<10> 吐出した直後のpHが、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは6.0以下であり、また、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは4.0以上である<1>~<9>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【0044】
<11> 好ましくは、泡状で吐出される<1>~<10>のいずれか1項に記載の炭酸エアゾール皮膚外用剤。
【実施例
【0045】
実施例1~36、比較例1~8
表1~5に示す処方でエアゾール原液を調製し、噴射剤(炭酸ガス)と共に耐圧容器(エアゾール用ガラス試験瓶100mL)に充填し、エアゾール皮膚外用剤を製造した。
これらのエアゾール皮膚化粧料について、以下の方法及び基準に従って吐出後のアンモニア臭、吐出直後のpH、pHの持続性、泡質、塗り伸ばし易さ、及び塗布後のしっとり感を評価した。
【0046】
<アンモニア臭評価>
エアゾール皮膚外用剤を45℃の恒温槽で3か月間保存後、アンモニア臭を評価した。耐圧容器から吐出した剤を100mLビーカーに0.33g秤量し、プラスチックフィルムで密閉した。スターラーを用いて200rpmで2分間攪拌後、ビーカー中のアンモニア濃度(ppm)を、アンモニア検知管と気体測定器(ガステック社)を用い測定した。
【0047】
<吐出直後のpHの測定>
25℃環境下、エアゾール皮膚外用剤を耐圧容器から吐出して20mLプラスチックカップに約5g量り入れ、吐出1分後に、pHメーター(LAQUA F-74)を用いて測定した。
【0048】
<pHの持続性の評価>
25℃環境下、エアゾール皮膚外用剤を耐圧容器から吐出して20mLプラスチックカップに約5g量り入れ、スターラーで200rpmにて5分間攪拌後、pHメーター(LAQUA F-74)を用いて測定した。本測定値と吐出直後のpHとの差分をΔpHと定義し、以下のように判定した。
A:ΔpH≦0.5
B:0.5<ΔpH≦1.0
C:1.0<ΔpH≦1.5
D:1.5<ΔpH
【0049】
<外観(泡質)の評価>
エアゾール皮膚外用剤を手の平に約1g吐出し、10秒後の剤の外観について、5名の専門パネラーにより下記基準に従って評価し、評価点の合計を表に示した。
2:キメ細かい泡
1:キメが粗い泡
0:泡にならない
【0050】
<塗り伸ばし易さ>
エアゾール皮膚外用剤を上腕内側部に約1g吐出し、手のひらで塗り伸ばしたときの塗り伸ばしやすさについて、5名の専門パネラーにより下記基準に従って評価し、評価点の合計を表に示した。
2:塗り伸ばしやすい
1:やや塗り伸ばしやすい
0:塗り伸ばしにくい
【0051】
<塗布後のしっとり感>
エアゾール皮膚外用剤を上腕内側部に約1g吐出し、手のひらで塗り伸ばしたときの、塗布後のしっとり感を5名の専門パネラーにより、下記基準に従って評価し、評価点の合計を表に示した。
2:とてもしっとりする
1:しっとりする
0:あまりしっとりしない
-1:しっとりしない
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
*1:LIPIDURE-PMB(日油社製)
*2:メトローズ90SH-15000(信越化学工業社製)
*3:サンジェロース90L(大同化成工業社製)
*4:カーボポール980(Lubrizol Advanced Materials社製)
*5:PEMUREN TR1(Lubrizol Advanced Materials社製)
*6:ケルデント(DSP五協フード&ケミカル社製)