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特許7584983医用画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/10 100
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020172672
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064132
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】福原 誠
(72)【発明者】
【氏名】稲生 耕久
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和英
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-012599(JP,A)
【文献】特開2021-035409(JP,A)
【文献】特開2018-139717(JP,A)
【文献】特開2019-177032(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、赤外レーザ、赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザのうち少なくとも1つの波長のレーザを用いて取得された少なくとも1つのSLO画像による第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成手段を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
可視光を被検体である被検眼の眼底の任意の領域に照射して取得した色情報を有する眼底画像である第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記可視光の帯域に対して狭い帯域の測定光を用いて得られた眼底画像である第2の医用画像における色情報が補正された眼底画像である第3の医用画像を生成する生成手段を備える、医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の医用画像は、赤外レーザ、赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザのうち少なくとも2つの波長のレーザを用いて取得された少なくとも2つのSLO画像による合成画像である、請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記赤色レーザ、前記緑色レーザ、前記青色レーザの被検体における光の吸収率を較正データとして利用し、前記赤色レーザ、前記緑色レーザ、前記青色レーザで取得する画像の輝度値を補正する補正手段を更に備える、請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
OCTによる複数の断層画像の位置合わせを行うことにより生成された3次元データから、任意の深度情報に基づきOCT正面画像を生成し、撮像深度に伴うOCT信号の減衰特性を較正データとして利用し、前記OCT正面画像の生成の際に利用する前記深度情報に基づいて、前記OCT正面画像の輝度値を補正し、可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記輝度値が補正されたOCT正面画像である第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成手段を備える、医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第2の医用画像と前記第3の医用画像とのうち一方の画像の表示を他方の画像の表示に変更するように表示手段を制御する表示制御手段を更に備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の医用画像が前記任意の領域と同一の領域に対して取得されるように撮影領域の調整を行う撮影領域調整手段を更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の医用画像は、眼底カメラ又はColor-SLOにより取得される画像である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、前記第1の医用画像を教師データとして、前記第2の医用画像と、当該第2の医用画像に対応するOCT干渉信号とを併せて学習することにより得られる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記第2の医用画像における前記色情報の補正は、前記第2の医用画像のカラー化又は色味の補正である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、赤外レーザ、赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザのうち少なくとも1つの波長のレーザを用いて取得された少なくとも1つのSLO画像による第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成ステップを含む、医用画像処理装置の制御方法。
【請求項12】
可視光を被検体である被検眼の眼底の任意の領域に照射して取得した色情報を有する眼底画像である第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記可視光の帯域に対して狭い帯域の測定光を用いて得られた眼底画像である第2の医用画像における色情報が補正された眼底画像である第3の医用画像を生成する生成ステップを含む、医用画像処理装置の制御方法。
【請求項13】
OCTによる複数の断層画像の位置合わせを行うことにより生成された3次元データから、任意の深度情報に基づきOCT正面画像を生成し、撮像深度に伴うOCT信号の減衰特性を較正データとして利用し、前記OCT正面画像の生成の際に利用する前記深度情報に基づいて、前記OCT正面画像の輝度値を補正し、可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記輝度値が補正されたOCT正面画像である第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成ステップを含む、医用画像処理装置の制御方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか一項に記載の医用画像処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底を白色光にて照射し、眼底のカラー画像を取得する眼底カメラが、眼科診療において広く普及している。また、被検眼の眼底画像を取得する別のモダリティとして、レーザ走査により被検眼を撮影する走査レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)を用いた装置が実用化されている。これは、被検眼の表面画像を高解像度で撮影することができる。また、別のモダリティとして、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)があり、網膜層内部の状態を三次元的に観察することが可能である。この断層画像撮影装置は、疾病の診断をより的確に行うのに有用であることから近年普及が進んでいる。OCTの形態として、例えば、高速に画像を取得する方法があり、また、広帯域光源を用いて分光器でインターフェログラムを取得するOCTとして、SD-OCT(Spectral Domain OCT)が知られている。また、光源として、高速波長掃引光源を用いることで、単一チャネル光検出器でスペクトル干渉を計測する手法によるSS-OCT(Swept Source OCT)が知られている。
【0003】
従来、SLOやOCTは、測定光に近赤外光(IR)を用いるのが一般的であり、取得される眼底画像や断層画像はモノクロ表示が主流であったが、近年ではカラー画像を表示できる装置が注目を集めている。例えば、SLOの測定光に可視域の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のレーザ光を用いて眼底を照射し、カラーの眼底画像を取得するColor-SLOが開発されている。また、モノクロで取得される撮影画像に対して画像処理を行い、カラー表示する技術も開示されている。
【0004】
特許文献1では、赤外域に波長帯域を有する光を被検眼に照射するOCT装置において、取得するスペクトル干渉信号の帯域を、疑似的にRGBに対応付けて分割し、周波数空間における波長帯域毎の信号強度に対応する色情報を取得し、色情報に基づいて可視域における色情報を含む画像データを取得する技術が開示されている。また、特許文献2では、OCTの3次元画像とColor-SLO画像を取得する装置において、SLO画像を基準画像としてOCTの所定の深さ領域から生成する正面画像を位置合わせし、可視成分のSLO画像(RGB)に対応する複数のOCT画像を合成することで、カラーのOCT画像を構築する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-134896号公報
【文献】特開2018-139717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、赤外の波長帯域のスペクトル情報から疑似的に色を割り当ててカラー化する手法であるので、可視域との相関関係が弱く、色再現性の観点で課題がある。また、特許文献2に開示されている方法では、Color-SLOの各波長で取得したそれぞれの画像と略一致するOCT正面画像に対し、Color-SLOの波長に相当する色を割り当てて合成するために、測定対象をColor-SLOで撮影する必要がある。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みたものであって、簡単な装置構成で、汎用性が高く、良好な疑似カラー画像を生成することが可能な医用画像処理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る医用画像処理装置は、可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、赤外レーザ、赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザのうち少なくとも1つの波長のレーザを用いて取得された少なくとも1つのSLO画像による第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成手段を備える。
本開示の一実施形態に係る医用画像処理装置は、可視光を被検体である被検眼の眼底の任意の領域に照射して取得した色情報を有する眼底画像である第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記可視光の帯域に対して狭い帯域の測定光を用いて得られた眼底画像である第2の医用画像における色情報が補正された眼底画像である第3の医用画像を生成する生成手段を備える。
本開示の一実施形態に係る医用画像処理装置は、OCTによる複数の断層画像の位置合わせを行うことにより生成された3次元データから、任意の深度情報に基づきOCT正面画像を生成し、撮像深度に伴うOCT信号の減衰特性を較正データとして利用し、前記OCT正面画像の生成の際に利用する前記深度情報に基づいて、前記OCT正面画像の輝度値を補正し、可視光を被検体の任意の領域に照射して取得した色情報を有する第1の医用画像を教師データとして用いることにより得られた学習済みモデルを利用して、前記輝度値が補正されたOCT正面画像である第2の医用画像における色情報が補正された第3の医用画像を生成する生成手段を備える。
また、本開示は、上述した医用画像処理装置の制御方法、及び、上述した医用画像処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な装置構成で、汎用性高く、良好な疑似カラー画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る医用画像処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図2図1に示す制御部の概略構成の一例を示すブロック図である。
図3図2に示す信号処理部の概略構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る医用画像処理装置の撮影処理の流れと撮影画像を着色する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る撮影画面の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態において構築する着色モデルの構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係るレポート画面の一例を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る医用画像処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る医用画像処理装置の撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る医用画像処理装置で撮影を行う際の撮影画面の一例を示す図である。
図11】第3の実施形態に係る医用画像処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図12】第3の実施形態に係る信号処理部の概略構成の一例を示すブロック図である。
図13】第3の実施形態に係る医用画像処理装置の撮影処理の流れと撮影画像を着色する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】第3の実施形態に係る撮影画面の一例を示す図である。
図15】第3の実施形態に係る3次元データ生成方法の説明図である。
図16】第3の実施形態に係る医用画像処理装置におけるOCT信号特性の一例であるRolloff特性の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る医用画像処理装置は、機械学習モデルを用いて、色情報を持たない画像に対して色情報を付与し(色情報補正)、疑似カラー画像を生成する。
【0012】
機械学習モデルとは、任意の機械学習アルゴリズムに対して、適切な教師データ(学習データ)を用いてトレーニング(学習)を行ったモデル(学習が完了した学習済みモデル)である。教師データは、1つ以上の、入力データと出力データとのペア群で構成される。なお、教師データを構成するペア群の入力データと出力データの形式や組み合わせは、一方が画像で他方が数値であったり、一方が複数の画像群で構成され他方が文字列であったり、双方が画像であったりする等、所望の構成に適したものであってよい。具体的には、例えば、OCTによって取得された画像と、該画像に対応する撮影部位ラベルとのペア群によって構成された教師データ(以下、第1の教師データ)が挙げられる。なお、撮影部位ラベルは部位を表すユニークな数値や文字列である。また、その他の教師データの例として、OCTの通常撮影によって取得されたノイズの多い低画質画像と、OCTにより複数回撮影して高画質化処理した高画質画像とのペア群によって構成されている教師データ(以下、第2の教師データ)等が挙げられる。
【0013】
機械学習モデルに入力データを入力すると、該機械学習モデルの設計に従った出力データが出力される。機械学習モデルは、例えば、教師データを用いてトレーニングされた傾向に従って、入力データに対応する可能性の高い出力データを出力する。また、機械学習モデルは、例えば、教師データを用いてトレーニングされた傾向に従って、出力データの種類のそれぞれについて、入力データに対応する可能性を数値として出力することができる。具体的には、例えば、第1の教師データでトレーニングされた機械学習モデルにOCTによって取得された画像を入力すると、機械学習モデルは、当該画像に撮影されている撮影部位の撮影部位ラベルを出力したり、撮影部位ラベル毎の確率を出力したりする。また、例えば、第2の教師データでトレーニングされた機械学習モデルにOCTの通常撮影によって取得されたノイズの多い低画質画像を入力すると、機械学習モデルは、OCTにより複数回撮影して高画質化処理された画像相当の高画質画像を出力する。
【0014】
また、機械学習アルゴリズムは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等のディープラーニングに関する手法を含む。ディープラーニングに関する手法においては、ニューラルネットワークを構成する層群やノード群に対するパラメータの設定が異なると、教師データを用いてトレーニングされた傾向を出力データに再現することのできる程度が異なる場合がある。例えば、第1の教師データを用いたディープラーニングの機械学習モデルにおいては、より適切なパラメータが設定されていると、正しい撮影部位ラベルを出力する確率が高くなる場合がある。また、例えば、第2の教師データを用いたディープラーニングの機械学習モデルにおいては、より適切なパラメータが設定されていると、より高画質な画像を出力できる場合がある。
【0015】
具体的には、CNNにおけるパラメータは、例えば、畳み込み層に対して設定される、フィルタのカーネルサイズ、フィルタの数、ストライドの値、及びダイレーションの値、並びに全結合層の出力するノードの数等を含むことができる。なお、パラメータ群やトレーニングのエポック数は、教師データに基づいて、機械学習モデルの利用形態に好ましい値に設定することができる。例えば、教師データに基づいて、正しい撮影部位ラベルをより高い確率で出力したり、より高画質な画像を出力したりできるパラメータ群やエポック数を設定することができる。
【0016】
このようなパラメータ群やエポック数の決定方法の1つを例示する。まず、教師データを構成するペア群の7割をトレーニング用とし、残りの3割を評価用としてランダムに設定する。次に、トレーニング用のペア群を用いて機械学習モデルのトレーニングを行い、トレーニングの各エポックの終了時に、評価用のペア群を用いてトレーニング評価値を算出する。トレーニング評価値とは、例えば、各ペアを構成する入力データをトレーニング中の機械学習モデルに入力したときの出力と、入力データに対応する出力データとを損失関数によって評価した値群の平均値である。最後に、最もトレーニング評価値が小さくなったときのパラメータ群及びエポック数を、当該機械学習モデルのパラメータ群やエポック数として決定する。なお、このように、教師データを構成するペア群をトレーニング用と評価用とに分けてエポック数の決定を行うことによって、機械学習モデルがトレーニング用のペア群に対して過学習してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
上述のとおり、本発明の実施形態に係る医用画像処理装置又はプログラムは、SLOやOCTで撮影し生成するモノクロ画像や疑似カラー画像に対して学習モデルを適用し、画像をカラー化したり、画像の色味を補正したりする。更に、カラー化に際し、眼底カメラやColor-SLOで取得されたカラー眼底画像を教師データとして参照し、取得画像を学習することでカラー化するモデルを構築することを特徴とする。ここで、教師データは、別のモダリティによって撮影された同一の撮影領域における過去の測定データであってもよいし、新規撮影によって取得されてもよい。なお、取得画像は、教師データに対して減色の関係にある。ここで、減色の関係とは、例えば、眼底カメラで用いる白色光に対する、Color-SLOで用いるRGB光の関係や、Color-SLOのRGB光に対する、近赤外のSLO(以後、IR-SLOと呼称する)の光やOCTの光の関係を指す。即ち、カラー化を施す画像の撮影に用いられた測定光の帯域に対し、広い帯域の測定光で測定された画像を教師データとして学習することで、実際の測定光では表現できない色情報を付与し、画像をカラー化する。
【0018】
したがって、本発明に係る医用画像処理装置としては、例えば単独のモダリティとしては、Color-SLOやIR-SLO、OCT等がある。また、教師データを新規に取得する装置構成としては、教師データ取得用に眼底カメラやColor-SLOを備え、カラー化する画像の取得用にColor-SLOやIR-SLO、OCTを備える複合機構成の装置が挙げられる。その一例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、IR-SLOで眼底正面画像を取得し、眼底カメラ画像、又はColor-SLO画像を教師データとして画像を着色する(すなわちカラー化する)方法について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の概略構成の一例を示す図である。以下の説明においては、図1に示す第1の実施形態に係る医用画像処理装置100を「医用画像処理装置100-1」と記載する。また、図1では、医用画像処理装置100-1として、SLO装置を適用した例を示している。医用画像処理装置100-1は、専用の光源120、被検眼Eの眼底Efからの反射光を得るためのSLO光学系80、制御部200、内部固視灯110、医用画像処理装置100-1の所謂アライメントに用いる前眼部画像を得るための前眼部撮影部90、画像を表示する表示部300を備えている。制御部200は、医用画像処理装置100-1の各種可動部の制御を行う他、検出信号の取得を行い、取得された検出信号を内部の信号処理部(後述する図2の信号処理部220)に伝送する。後述する図2の信号処理部220は、伝送された検出信号に基づいて、画像の生成、位置合わせ、学習、着色を行う。なお、本実施形態では被検査物である被写体を人眼(被検眼E)としているが、本発明はこれに限るものではない。また、図1には、被検眼Eにおける深さ方向を示すz軸方向、及び、当該z軸方向と直交し且つ相互に直交するx軸方向及びy軸方向を示す、xyz座標系を図示している。
【0021】
<SLO測定系の構成>
SLO光源120から出射された照明光は、光ファイバーを介してSLO光学系80に導かれる。SLO光学系80には、光源120側から順に、コリメータ81、穴あきミラー101、レンズ82、X走査スキャナー83、レンズ84,85、Y走査スキャナー86及びダイクロイックミラー102が配置される。
【0022】
より具体的には、照明光は、コリメータ81から平行光として空間へ出射され、穴あきミラー101の穴あき部を通過し、レンズ82を介し、当該照明光を図1のx軸方向に走査するX走査スキャナー83、レンズ84,85、当該照明光を図1のy軸方向に走査するY走査スキャナー86に至る。Y走査スキャナーを経た照明光は、ダイクロイックミラー102に到達する。ここで、X走査スキャナー83、Y走査スキャナー86は、ガルバノミラーから構成されており、駆動制御部230により制御され、眼底Efで所望の範囲の領域を測定光により走査することができる。
【0023】
ダイクロイックミラー102は、760nm~800nmを反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー102にて反射された照明光は、レンズ57、フォーカスレンズ58及び対物レンズ106を経由し、被検眼Eの眼底Efに到達する。フォーカスレンズ58はフォーカスステージ59に対して固定され、当該フォーカスステージ59を駆動制御部230が駆動することによって、図中矢印で示す光軸方向に移動可能とされている。被検眼Eの眼底Efを照射したSLO測定光は、眼底Efで反射・散乱され、上述の光学経路をたどり穴あきミラー101に達する。穴あきミラー101で反射された光は、レンズ87を介し、アバランシェフォトダイオード(以下、APDともいう)等の受光素子88で受光され、電気信号に変換されて、制御部200を介して、後述する図2の信号処理部220に伝送される。なお、受光素子には、PMT(Photomultiplier Tube)又はMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)等を適用してもよい。ここで、穴あきミラー101の位置は、被検眼の瞳孔位置と共役となっており、眼底Efに照射された測定光が反射・散乱された光のうち、瞳孔周辺部を通った光が、穴あきミラー101によって反射される。
【0024】
<前眼部撮像部90>
前眼部撮像部90の構成の一例について説明する。前眼部撮像部90は、レンズ91、92、93及び前眼部カメラ94を備える。例えば、波長850nmの照明光を発するLED95-a、95-bから成る照明光源95は、前眼部に光を照射する。前眼部で反射された光は、レンズ106を介し、ダイクロイックミラー105に達する。ダイクロイックミラー105は、例えば820nm~900nmの光を反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー105で反射された光は、レンズ91,92,93を介し、前眼部カメラ94で受光される。前眼部カメラ94で受光された光は、電気信号に変換され、制御部200を介して、後述する図2の信号処理部220に伝送される。
【0025】
<内部固視灯110>
内部固視灯110は、固視灯表示部111、レンズ112で構成される。固視灯表示部111としては、例えば複数の発光ダイオード(LED)がマトリックス状に配置されたものを用いる。それぞれのLED素子は、非図示のRGB用の3色のチップと色を変更するコントロール部を備え、後述する図2の駆動制御部230からの制御により、表示色を変更することが可能である。また、内部固視灯の点灯位置は、制御部200の制御により、撮像したい部位に合わせて変更される。以上の構成により、所望のパターンと色に調整された固視灯表示部111からの光は、レンズ112を介し、被検眼Eに導かれる。
【0026】
<制御部200>
図2は、図1に示す制御部200の概略構成の一例を示すブロック図である。制御部200は、図2に示すように、取得部210、信号処理部220、駆動制御部230及び記憶部240を有する。
【0027】
取得部210は、APD88及び前眼部カメラ94と接続され、これらから出力される各種信号を取得する。取得部210が取得する信号はデジタルでもアナログでもよく、取得部210は、アナログ信号を取得した場合には、これをデジタル信号に変換してもよい。
【0028】
信号処理部220は、APD88から伝送される信号に基づき、撮影画像を生成する。また、信号処理部220は、記憶部240内に保存されている色情報を有する同一の被検眼Eの参照画像を参照し、生成された撮影画像と共に学習することで、撮影画像の着色モデルを学習する。更に、学習が完了したモデル(学習済みモデル)を用いて前記撮影画像を着色する。また、信号処理部220は、撮影画像を解析し、解析結果の可視化情報の生成を行う。なお、画像の生成や学習方法の詳細については後述する。
【0029】
駆動制御部230は、上述のとおり各部を制御する。
【0030】
記憶部240は、医用画像処理装置100-1とは異なるモダリティの装置で予め取得された、被検者を同定するための被検者識別番号や、被検眼Eの色情報を有する画像を記憶する。また、記憶部240は、信号処理部220により生成される撮影画像と、後述する図3の学習部223によって構築される着色モデルを更に記憶する。なお、本実施形態では、記憶部240を医用画像処理装置100-1内の構成として説明をするが、必ずしも医用画像処理装置100-1に内蔵される必要はなく、例えば匿名化が施された患者情報や撮影情報がデーターベースとして集約される基幹ネットワークであってもよい。
【0031】
<信号処理部220>
図3は、図2に示す信号処理部220の概略構成の一例を示すブロック図である。信号処理部220は、図3に示すように、画像参照部221、位置合わせ部222、学習部223及び着色部224を有する。前述したように、信号処理部220内にある画像参照部221によって、医用画像処理装置100-1とは異なるモダリティの装置で予め取得された、被検眼Eの色情報を有する参照画像が参照される。位置合わせ部222は、信号処理部220が生成する撮影画像に対して、画像参照部221が参照する参照画像の位置合わせを行う。学習部223は、画像参照部221によって参照され、位置合わせ部222によって位置合わせされた、色情報を有する参照画像を教師データとして撮影画像を学習し、撮影画像を着色するモデルを構築する。着色部224は、学習部223によって構築される着色モデルを適用して、撮影画像に色情報を与えてカラー化する。
【0032】
<表示部300>
表示部300は、例えば、液晶等のディスプレイである。表示部300は、制御部200の制御の下、後述するように種々の情報を表示する。なお、制御部200からの画像データは、表示部300に有線で送信されてもよいし、無線で送信されてもよい。
【0033】
次に、図4図5を参照して、本実施形態の撮影と信号処理手順を示す。図4は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100-1の撮影処理の流れと撮影画像を着色する処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、図5は、第1の実施形態に係る撮影画面の一例を示す図である。
【0034】
<ステップS401>
ステップS401では、医用画像処理装置100-1は、被検眼Eと当該装置のアライメントを行う。アライメントは、内部固視灯110を点灯して被検眼に注視させた状態で、前眼撮像部90により観察される被検眼の前眼部画像(図5の前眼表示領域510に表示される前眼部画像)に基づいて、操作者によって入力された情報に基づいてなされてもよいし、医用画像処理装置100-1が自動で行ってもよい。
【0035】
具体的には、医用画像処理装置100-1の前に配置された被検眼Eの前眼部は、前眼部照明光源のLED95-a、95-bの発した光により照明される。このように照明された前眼部の像は、対物レンズ106を通り、ダイクロイックミラー105で反射され、レンズ93により、撮像素子94の撮像面に結像する。撮像素子94からの映像信号は、取得部210に入力される。取得部210に入力された映像信号に基づき、制御部200は前眼部画像を生成し、図5の前眼表示領域510に表示する。
【0036】
医用画像処理装置100-1の光学系は、非図示のステージ上に配置されている。制御部200は、ステージ内の駆動部を制御し、上下左右前後に駆動する。また、光学系の光軸は、撮像面の中心と一致するように調整されている。このため、前眼撮像部90で撮影された前眼部画像の瞳孔中心と撮像中心との偏心量が、被検眼Eと光学系の偏心量に相当する。
【0037】
医用画像処理装置100-1は、操作者によって入力された情報に基づいて、或いは自動で被検眼Eの瞳孔中心と光軸が一致するように位置調整を行う。具体的には、制御部200は、被検眼の前眼部画像のうちの特に虹彩の模様によって、被検眼Eの偏心及びフォーカスの状態を判定する。そして、制御部200は、瞳孔中心と光軸が一致するようにステージ内の駆動部を制御して位置を調整し、虹彩の模様のコントラストが最も高くなるように光軸方向の位置調整を行う。これにより、制御部200は、虹彩と同一面である被検眼Eの瞳孔と光学系の対物レンズ106との距離(ワーキングディスタンス)を一定に保つ。操作者は、図5の前眼表示領域510に表示された前眼部画像を確認することにより、光軸偏心を確認することができる。
【0038】
<ステップS402>
ステップS402では、制御部200が、参照画像を教師として撮影画像を着色するモデルを学習するかどうかの判定を行う。モデル学習の設定は、設定ファイルを装置に読み込ませることによってなされてもよいし、GUI上に設けられた設定ボタンを介して任意に切り替えられてもよい(非図示)。このステップS402の判定の結果、着色するモデルを学習しない場合には(S402/n)、プロセスは、そのままステップS405の撮影パラメータ調整のステップへ進む。一方、ステップS402の判定の結果、着色するモデルの学習を行う場合には(S402/y)、プロセスは次のステップS403へ進む。
【0039】
<ステップS403>
ステップS403では、画像参照部221が、被検眼Eの色情報を有する参照画像を参照する。なお、被検眼の同定は、記憶部240が記憶する被検者識別番号に基づいて行われ、画像参照部221は、記憶部240が保持している当該被検眼に関する情報を取得する。参照画像は、図5の撮影画面500に表示されてもよく、例えば参照画像520のように表示される。
【0040】
<ステップS404>
ステップS404では、制御部200が撮影領域の指定を行う。制御部200は、例えば、図5の参照画像520に重畳表示する注目領域521を拡縮・移動して、SLOで撮影する領域を指定する(領域指定)。なお、撮影領域の指定は、上述のGUIによる指定の他、記憶部240に保存される撮影情報に基づいてなされてもよい。例えば、記憶部240は、当該被検眼の過去撮影時の撮影範囲、内部固視灯位置、フォーカス情報等を記憶し、制御部200は、これらのいずれかの情報に基づいて、医用画像処理装置100-1における撮影領域を指定してもよい。
【0041】
<ステップS405>
ステップS405では、医用画像処理装置100-1が、被検眼Eをスキャンしてプレビュー表示を開始し、各種撮影パラメータを調整する。プレビュー表示は、操作者が非図示のスキャン開始ボタンを押下することによって開始されてもよいし、医用画像処理装置100-1に設けられる非図示のスイッチを介して開始されてもよい。スキャン開始が選択されると、制御部200は、駆動制御部230を制御し、ガルバノミラーを動作させて、図5に示す撮影画像530のプレビュー表示を行う。操作者は、プレビュー表示を確認しながら、撮影のための各種撮影パラメータの調整を行うことができる。具体的には、少なくとも、撮影範囲、内部固視灯の位置、フォーカスが設定される。駆動制御部230は、固視灯表示部111の発光ダイオードを制御して、黄斑部や視神経乳頭部など所望の箇所で撮影を行うように、内部固視灯110の位置を制御する。撮影範囲の調整や内部固視灯の位置は、非図示のユーザーインターフェースを用いて操作者が設定できるものとする。また、フォーカスの調整は、撮影画像530の画像の輝度値が高くなるように、図5に示すフォーカス調整用のスライダー531を用いて設定することができる。
【0042】
着色モデルの学習を行う場合は、ステップS404で記載したように、撮影範囲は、図5の参照画像520に重畳表示される注目領域521によって指定される。撮影範囲が指定された後、プロセスは本ステップに移行し、医用画像処理装置100-1が図5に示す撮影画像530のプレビュー表示を行う。このとき、参照画像と同じ範囲を撮影するように、制御部200は駆動制御部230を制御し、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86の走査位置を調整する。具体的には、位置合わせ部222が、図5に示す注目領域521に含まれる参照画像と撮影画像530の位置合わせを行い、最も相関が高くなる走査範囲を算出して、スキャナー駆動に反映させることで撮影範囲を自動調整する。なお、位置合わせは、例えば位相限定相関法などを用いるが、手法はこれに限らず、画像間の相対的な位置関係が算出できるものであれば何でもよい。参照画像として用いる画像の周縁部が、例えば鏡筒や睫毛などによって暗い場合には、閾値処理によって計算対象から除外してもよい。また、処理の高速化を図るために、予め参照画像と撮影画像のそれぞれに平滑フィルタを適用して、高周波成分を除去してもよい。なお、設定で本ステップの自動調整を非実行としてもよく、また、本ステップで自動的に撮影範囲が設定された後、上述のとおり、ユーザーインターフェースを用いて手動で撮影範囲が修正されてもよい。
【0043】
<ステップS406>
ステップS405までの一連の撮影領域調整を終えた後、ステップS406において、医用画像処理装置100-1は、操作者が図5の撮影ボタン532を押下すると、撮影を開始する。なお、撮影開始は、医用画像処理装置100-1に設けられる非図示のスイッチが担ってもよい。
【0044】
<ステップS407>
ステップS407では、ステップS402と同様、制御部200が、参照画像を教師として撮影画像を着色するモデルを学習するかどうかの判定を行う。このステップS407の判定の結果、着色するモデルを学習しない場合には(S407/n)、そのままステップS410の着色モデル適用の判定ステップへ進む。一方、ステップS407の判定の結果、着色するモデルの学習を行う場合には(S407/y)、次のステップS408へ進む。
【0045】
<ステップS408>
ステップS408では、位置合わせ部222が、参照画像と撮影画像の位置合わせを行う。位置合わせの前処理として、位置合わせ部222は、参照画像をグレースケールに変換する。グレースケールへの変換は輝度に関して行い、例えば、以下の(1)式を用いてRGB色空間からYCbCr色空間へ変換を行う際のYの値を参照すればよい。なお、変換式は必ずしもこれに限らず、設計に応じて係数は適応的に変化させてもよい。
【数1】
【0046】
続いて、位置合わせ部222は、位相限定相関法などを用いて位置合わせを行い、図5に示す撮影画像530に対して、グレースケール化された参照画像520を変形する。変形の際は、Yの値だけでなく、CbやCrの値もYの値の変化に応じて修正を行う。例えば、変形によって、ある画素のYの値に、隣接画素のYの値が代入される場合には、同様にCr、Cbの値も代入する。なお、ステップS405と同様、参照画像として用いる画像の周縁部が、例えば鏡筒や睫毛などによって暗い場合には、閾値処理によって相関計算の対象から除外してもよい。また、位置合わせ部は、参照画像と撮影画像の解像度が等しくなるように、参照画像の画素を補間又は平均してリスケールする。最後に、以下の(2)式に示す変換式により、参照画像を再びカラー画像へ変換する。また、上記変換式と同様、変換式は必ずしもこれに限らず、設計に応じて係数は適応的に変化させてもよい。
【数2】
【0047】
<ステップS409>
ステップS409では、学習部223が、位置合わせされた参照画像520を教師データとし、撮影により取得した撮影画像530を学習データとして、撮影画像530を着色する着色モデルの学習を行う。図6は、第1の実施形態において、構築する着色モデルの構成の一例を示す図である。
【0048】
図6で示す構成は、入力値群を加工して出力する処理を担う、複数の層群によって構成される。なお、前記構成に含まれる層の種類としては、図6に示すように、畳み込み(Convolution)層、ダウンサンプリング(Downsampling)層、アップサンプリング(Upsampling)層、合成(Merger)層がある。畳み込み層は、設定されたフィルタのカーネルサイズ、フィルタの数、ストライドの値、ダイレーションの値等のパラメータに従い、入力値群に対して畳み込み処理を行う層である。なお、入力される画像の次元数に応じて、前記フィルタのカーネルサイズの次元数も変化してよい。ダウンサンプリング層は、入力値群を間引いたり、合成したりすることによって、出力値群の数を入力値群の数よりも少なくする処理を行う層である。処理の具体例としては、Max Pooling処理がある。アップサンプリング層は、入力値群を複製したり、入力値群から補間した値を追加したりすることによって、出力値群の数を入力値群の数よりも多くする処理を行う層である。処理の具体例としては、線形補間処理がある。合成層は、ある層の出力値群や画像を構成する画素値群といった値群を、複数のソースから入力し、それらを連結したり、加算したりして合成する処理を行う層である。このような構成では、入力された画像601を構成する画素値群が畳み込み処理ブロックを経て出力された値群と、入力された画像601を構成する画素値群が、合成層で合成される。その後、合成された画素値群は最後の畳み込み層で推論画像602に成形される。
【0049】
なお、図示はしないが、CNNの構成の変更例として、例えば、畳み込み層の後にバッチ正規化(Batch Normalization)層や、正規化線形関数(Rectifier Linear Unit)を用いた活性化層を組み込む等をしてもよい。また、CNNの構築には学習用に大量の画像データが必要となるが、とりわけ、医療分野においては画像データを大量に用意することが困難である。そこで、例えば、新しいデータを生成する敵対的生成ネットワークであるGenerative Adversarial Network(GAN)を利用する方法も有効である。
【0050】
本実施形態の学習部223における推論処理は、上述のとおり、図5の参照画像520と撮影画像530とをペアで学習する。ステップS408において、参照画像520は撮影画像530に対して位置合わせがされているので、2つの画像をペアで学習することで、輝度情報のみを有するIR-SLOの撮影画像に対して、対応するカラーの参照画像から色情報を推定することができる。着色モデルの構築が完了した後、制御部200は、着色モデルを記憶部240に記憶する。
【0051】
<ステップS410>
ステップS410では、制御部200が、記憶部240に記憶されている学習モデル(着色モデル)を、撮影画像に対して適用し、画像をカラー化するかどうかの判定を行う。モデル適用の設定は、設定ファイルを医用画像処理装置100-1に読み込ませることによってなされてもよいし、GUI上に設けられた設定ボタンを介して任意に切り替えられてもよい(非図示)。このステップS410の判定の結果、着色モデルを適用する場合には(S410/y)、プロセスは、次のステップS411へ進む。一方、ステップS410の判定の結果、着色モデルを適用しない場合には(S410/n)、プロセスは、一連の処理を終了する。
【0052】
<ステップS411>
ステップS411では、着色部224が、学習した着色モデルを適用し、撮影画像530をカラー化する。着色部224は、記憶部240に保存されている既習の着色モデルを読み込み、実行して、撮影画像530をカラー化した疑似カラー画像710を生成する。
【0053】
<ステップS412>
ステップS412では、制御部200が、ステップS411で生成した疑似カラー画像710をレポート画面700に表示する。図7は、第1の実施形態に係るレポート画面の一例を示す図である。レポート画面700には、IR-SLOで撮影された撮影画像530がデフォルトで表示される(非図示)。ここで、操作者は、ユーザーインターフェースとして設けられるColorizationボタン711を押下することで、撮影画像530に対して着色モデルを適用して着色した疑似カラー画像710を切り替えて表示するように表示制御することができる。なお、表示の形態はこれに限らず、例えば撮影画像530と疑似カラー画像710が並べて表示されてもよい。疑似カラー画像710は、レポートデータとして記憶部240に保存されてもよいし、レポート表示の都度、最新の着色モデルを適用して表示されてもよい。
【0054】
ステップS412の処理を完了すると、制御部200は、IR-SLOで取得した撮影画像を利用して着色モデルを学習する処理と、該撮影画像に着色モデルを適用してカラー化する一連の処理を終了する。
【0055】
以上に述べた構成によれば、異なるモダリティで撮影された色情報を有する参照画像とIR-SLOで取得した撮影画像をペアで学習し、着色するモデルを生成することができる。また、生成した着色モデルを適用させることで、IR-SLOで取得した撮影画像をカラー化することができる。それにより、実際に用いる測定光では表現できない色情報を付与し、撮影画像をカラー化することができる。
【0056】
なお、着色モデルを適用することで、過去に取得されたIR-SLO画像をカラー化することも可能である。この場合は、処理プログラムのバージョンアップ対応として、既存の装置に付随のソフト、或いは表示専用ソフトを更新することで本実施形態の処理を実行することが可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る医用画像処理装置は、Color-SLOで眼底正面画像を取得し、眼底カメラ画像とペアで機械学習にかけることで、画像の色味を補正するモデルを構築する。また、当該構築したモデルを使用して、Color-SLO画像の色味を補正することを特徴とする。以下に詳細を説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明において、第1の実施形態で説明した構成や処理と同様の内容については、詳細な説明を省略する。
【0058】
図8は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100の概略構成の一例を示す図である。以下の説明においては、図8に示す第2の実施形態に係る医用画像処理装置100を「医用画像処理装置100-2」と記載する。図8に示す医用画像処理装置100-2では、図1に示す医用画像処理装置100-1の光源120に替えて、Color-SLO光源800を用いるものである。図8に示すColor-SLO光源800は、赤外光を出力する赤外レーザ光源801IR、赤色波長域の光を出力する赤色レーザ光源801R、緑色波長域の光を出力する緑色レーザ光源801G、青色波長域の光を出力する青色レーザ光源801Bを備える。出力波長は、例えば、赤外光が1060nm、赤色が640nm、緑色が532nm、青色が447nmの光源を利用するが、選択する波長はこれに限定されない。また、Color-SLO光源800内には、赤外レーザ光を反射する反射ミラー802IR、赤色レーザ光を分岐する波長分岐ミラー802R、緑色レーザ光を分岐する波長分岐ミラー802G、青色レーザ光を分岐する波長分岐ミラー802Bが配置される。また、Color-SLO光源800内には、赤外レーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ803IR、赤色レーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ803R、緑色レーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ803G、青色レーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ803Bが配置される。なお、光出力部の構成はこれに限らず、少なくとも2種類の異なる波長域を持つレーザ光を出力できればよい。
【0059】
Color-SLO光源800から出力された光は、ファイバー805を介してコリメータ81に導かれ、上述した第1の実施形態と同様に、SLO光学系を介して被検眼Eの眼底Efに達する。更に、眼底Efで反射された光は、眼底入射時と同一の光路を戻り、レンズ87、波長カットフィルタ89-a、受光素子88に達する。なお、第1の実施形態と同様に、受光素子88にはAPDの他、PMTやMPPC等を適用してもよい。眼底Efから反射された光は受光素子88で電気信号に変換されて、制御部200を介して信号処理部220に伝送される。
【0060】
図8では、波長カットフィルタ89-aが光路上に配置されているが、波長カットフィルタ89-aと光路外に配置されている波長カットフィルタ89-bは、駆動制御部駆動部230によって選択的に光路に配置可能に構成されている。波長カットフィルタ89-aと波長カットフィルタ89-bは、それぞれ異なる波長の光を遮断する特性を有する。なお、本実施形態に係る医用画像処理装置100-2の前眼部撮影部90や内部固視灯110は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100-1と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0061】
<制御部200>
次に、本実施形態に係る医用画像処理装置100-2を制御する制御部200について説明する。本実施形態の制御部200は、図2に示す第1の実施形態と同様の構成であり、取得部210、信号処理部220、駆動制御部230及び記憶部240を有する。ただし、本実施形態の駆動制御部230は、赤外レーザ光源の他、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源、青色レーザ光源を制御する。また、制御部200は、上述したとおり、波長カットフィルタ89-aと波長カットフィルタ89-bを光路に選択的に配置するように駆動制御を行う。
【0062】
<撮影シーケンス>
次に、本実施形態に係る医用画像処理装置100-2を用いて、被検眼Eの眼底Efを撮影する方法について説明する。撮影シーケンスは、図4で示す第1の実施形態のフローチャートと基本的に同様であるので、同図を用いて、差分のみに関して詳細を説明する。
【0063】
<撮影パラメータ調整>
ステップS405において、駆動制御部230は、赤外レーザ光源801IRを点灯する。このとき、赤色レーザ光源801R、緑色レーザ光源801G、青色レーザ光源801Bは消灯し、赤外レーザのみを用いて被検眼Eのプレビューが行われる。
【0064】
なお、本実施形態ではカラー撮影を行うので、受光素子88は、赤外から青色までの波長の光を検出可能な帯域幅を有する。固視灯の光も検出帯域に含まれるので、受光素子88が検出しないようにフィルタでカットする必要がある。そこで、駆動制御部230は、受光素子88へ入射する光路上に波長カットフィルタ89-aを挿入する。波長カットフィルタ89-aは、内部固視に用いる520nm前後の波長帯の光を遮断し、それ以外の波長を透過する特性を有する。これにより、眼底観察画像に、内部固視灯の光がノイズとして映り込むことを防ぐ。
【0065】
受光素子88から出力される光強度信号は、非図示のA/D変換器でデジタル信号にリアルタイムに変換された後、検出部210に入力される。デジタル信号は信号処理部220へ伝送され、信号処理部220は、入力されたデジタル信号から撮影画像を生成する。そして、制御部200は、生成した撮影画像を撮影画像530として撮影画面500上に表示する。
【0066】
<撮影>
ステップS406において行われる撮影処理のフローチャートの詳細について、図9を用いて説明する。図9は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100-2の撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、制御部200は、ユーザによって撮影ボタン532が押下されたことを検出して、撮影を開始する。
【0067】
<ステップS901>
ステップS901では、駆動制御部230は、プレビュー用に点灯していた赤外レーザ光源801IRを消灯する。また、駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御して、撮影開始位置に移動させる。赤外レーザ光源801IRの消灯するタイミングと、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を撮影開始位置に移動させるタイミングは、任意でよい。例えば、撮影ボタン532が押下されたことを検出した直後でもよいし、撮影ボタン532が押下された後のプレビューによる1フレーム分の走査が終わった後でもよい。
【0068】
<ステップS902>
ステップS902では、駆動制御部230は、赤色レーザ光源801Rを点灯させる。駆動制御部230は、XYの両スキャナーが所定の走査位置に移動したことを検出した後、赤色レーザ光源801Rを点灯する。また、駆動制御部230は、青色レーザ光源801Bが点灯していたら消灯する。
【0069】
<ステップS903>
ステップS903では、駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御して、赤色レーザ光で1フレーム分の走査を行う。これにより、1フレーム分だけ被検眼Eの眼底Efに赤色レーザ光が照射され、受光素子88には赤色レーザ光による戻り光が導かれる。また、このとき、駆動制御部230は、操作者が指定した位置に応じて内部固視灯を表示するように、内部固視灯110を点灯している。ただし、被検眼Eの眼底Efで反射された緑色の光は、波長カットフィルタ89-aで遮断され、受光素子88では赤色レーザ光による戻り光のみが受光される。これにより、赤色レーザ光による撮影画像に、内部固視灯の光がノイズとして映り込むことを防いでいる。また、撮影波長と異なる波長の光で固視灯を表示しているので、固視灯の視認性を向上させるのに有利になる。そして、受光素子88から出力される光強度信号はデジタル信号に変換された後、検出部210に入力される。これによって、検出部210は、赤色レーザ光における1フレーム分のデジタル信号を取得する。駆動制御部230は、赤色レーザ光による1フレーム分の走査が完了したら、赤色レーザ光源801Rを消灯する。
【0070】
<ステップS904>
ステップS904において、駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御し、赤色レーザ光の走査開始位置と同じ位置に移動させる。そして、駆動制御部230は、該両スキャナーが所定の位置に移動したことを検出したら、青色レーザ光源801Bを点灯する。
【0071】
<ステップS905>
ステップS905において、駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御して、青色レーザ光で1フレーム分の走査を行う。これにより、1フレーム分だけ被検眼Eの眼底Efに青色レーザ光が照射され、受光素子88には青色レーザ光による戻り光が導かれる。また、このとき、緑色レーザ光源801Gは、操作者が指定した位置に応じて内部固視灯を表示するように、点灯タイミングを制御されて点灯している。具体的には、青色レーザ光が1フレーム撮影される間点灯し続けるのに対し、緑色レーザ光はより短い周期でオンオフを制御されて、操作者が指定した位置に内部固視灯を表示する。被検眼Eの眼底Efで反射された緑色レーザ光は、波長カットフィルタ89-aで遮断され、受光素子88では青色レーザ光による戻り光のみが受光される。これにより、青色レーザ光による撮影画像に、内部固視灯の光がノイズとして映り込むことを防いでいる。また、撮影波長と異なる波長の光で固視灯を表示しているので、固視灯の視認性を向上させるのに有利になる。そして、受光素子88から出力される光強度信号はデジタル信号に変換された後、検出部210に入力される。これによって、検出部210は、青色レーザ光における1フレーム分のデジタル信号を取得する。駆動制御部230は、青色レーザ光による1フレーム分の走査が完了したら、青色レーザ光源801Bを消灯する。
【0072】
<ステップS906>
ステップS906では、駆動制御部230は、受光素子88へ入射する光路から、波長カットフィルタ89-aを脱出させ、赤色レーザ光源801Rの波長を遮断する波長カットフィルタ89-bを光路に挿入する。
【0073】
<ステップS907>
ステップS907では、緑色レーザ光源801Gを点灯させる。駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御し、青色レーザ光の走査開始位置と同じ位置に移動させる。そして、駆動制御部230は、該両スキャナーが所定の位置に移動したことを検出したら、緑色レーザ光源801Gを点灯する。
【0074】
<ステップS908>
ステップS908では、駆動制御部230は、X走査スキャナー83とY走査スキャナー86を制御し、緑色レーザ光で1フレーム分の走査を行う。これにより、1フレーム分だけ被検眼Eの眼底Efに緑色レーザ光が照射され、受光素子88には緑色レーザ光による戻り光が導かれる。また、このとき、駆動制御部230の制御により、内部固視灯に配置されるLED素子は、緑色から赤色に発光色を変更し、操作者が指定した位置に応じて内部固視灯を表示するように点灯している。被検眼Eの眼底Efで反射された赤色の固視灯の光は、波長カットフィルタ89-bで遮断され、受光素子88では緑色レーザ光による戻り光のみが受光される。これにより、緑色レーザ光による撮影画像に、内部固視灯の光がノイズとして映り込むことを防いでいる。また、撮影波長と異なる波長の光で固視灯を表示しているので、固視灯の視認性を向上させるのに有利になる。そして、受光素子88から出力される光強度信号は、デジタル信号に変換された後、検出部210に入力される。これによって、検出部210は、緑色レーザ光における1フレーム分のデジタル信号を取得する。駆動制御部230は、緑色レーザ光による1フレーム分の走査が完了したら、緑色レーザ光源801Gを消灯する。
【0075】
上述したステップS902からステップS908の動作を行うことによって、制御部200は、同じ走査位置1フレーム分の赤色レーザ光でのデジタル信号、緑色レーザ光でのデジタル信号、青色レーザ光でのデジタル信号を取得する。
【0076】
なお、上述した例では赤色レーザ光源、青色レーザ光源、緑色レーザ光源の順に1フレーム分のデジタル信号を取得しているが、必ずしもこの順番で切り替えなくてもよい。また、赤色レーザ光と青色レーザ光のフレームでは緑色に制御された光で内部固視灯を表示し、緑色レーザ光のフレームでは赤色に制御された光で内部固視灯を表示しているが、必ずしもこれに限らない。Color-SLO光源800で出力される波長のうち、撮影光の波長と異なる可視波長の光であればよい。
【0077】
<ステップS909>
ステップS909では、制御部200は、所定のフレーム数だけ撮影画像が取得できたかどうかを判断する。制御部200は、RGB画像が所定のフレーム数だけ取得できたと判断したら、撮影を終了する。このとき撮影するフレーム数は、撮影前に予め操作者の入力によって設定されてもよいし、撮影された画像を処理した結果のコントラスト等の画質評価指標から定められてもよい。撮影終了後、駆動制御部230は、観察光として赤外レーザ光源801IRを点灯する。
【0078】
撮影が終了したら、信号処理部220は、赤色レーザ光における所定のフレーム数分のデジタル信号から赤色眼底画像を生成し、緑色レーザ光における所定のフレーム数分のデジタル信号から緑色眼底画像を生成し、青色レーザ光における所定のフレーム数分のデジタル信号から青色眼底画像を生成する。そして、位置合わせ部222が、赤色眼底画像、緑色眼底画像、青色眼底画像の位置ずれ補正を行った後に合成処理し、合成カラー画像を生成する。位置ずれ補正は、例えば被検眼Eの赤色眼底画像、緑色眼底画像、青色眼底画像のそれぞれから視神経乳頭や眼底血管を特徴点として抽出し、差分値を求めることで位置ずれ補正量を導出できる。
【0079】
合成画像生成の際には、生体における赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザの光吸収の差を補正して、合成カラー画像を生成してもよい。700nmよりも短波長の光は血中に含まれるヘモグロビンの光吸収が強く、一方で1200nmよりも長波長の光は水による光吸収が強いので、一般に生体計測に用いられる光の波長は、700nm~1200nm程度が望ましい。この領域の光は比較的生体深部まで到達することができるので、深部の情報を得ることができる。上述のとおり、本実施形態の医用画像処理装置100-2で用いる光は、赤色の640nm、緑色の532nm、青色の447nmであり、いずれもヘモグロビンによって吸収される程度が比較的大きい波長帯域である。また、短波長になるほど光の吸収率が高くなるので、制御部200は、波長に応じた吸収率の比を較正データとして持っておき、色を合成する際に、較正データに基づいて輝度を補正してもよい。
【0080】
以上の制御を行うことにより、内部固視灯を表示して固視状態を保ちながら、赤色レーザ光のデジタル信号、緑色レーザ光のデジタル信号、青色レーザ光のデジタル信号を取得することができる。これによって、撮影中の被検眼の動きを抑えられ、各色眼底画像内及び各色眼底画像間の位置ずれを低減することができる。
【0081】
<色補正モデルの学習>
ここで再び、図4を用いた説明に戻る。ステップS408、ステップS409では、制御部200は、眼底カメラで取得された参照画像を教師として、上記の撮影フローにより生成された合成カラー画像の色味を補正するモデルを学習する。まず、ステップS408では、位置合わせ部222は、参照画像と合成カラー画像の位置合わせを行う。位置合わせの前処理として、位置合わせ部222は、(1)式に基づいて参照画像と合成カラー画像をグレースケールに変換する。グレースケールへの変換は、第1の実施形態と同様であるので、詳細の説明は省略する。
【0082】
続いて、位置合わせ部222は、例えば、位相限定相関法などを用いて参照画像の位置合わせを行い、グレースケールに変換された合成カラー画像に対して、参照画像を変形する。また、位置合わせ部222は、画像の解像度が等しくなるように、参照画像の画素を補間又は平均してリスケールする。最後に、位置合わせ部222は、(2)式に基づいて、グレースケールに変換された参照画像と合成カラー画像をカラー画像に再変換する。
【0083】
<ステップS409>
ステップS409では、学習部223が、位置合わせされた参照画像520を教師データとし、撮影により取得し生成された合成カラー画像を学習データとして、合成カラー画像の色味を補正する色補正モデルの学習を行う。学習の方法は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0084】
ステップS409の処理を完了すると、制御部200は、Color-SLOで取得した撮影画像に対して、眼底カラー画像を教師とする色補正モデルを学習する処理を終了する。上述した第1の実施形態と同様に、該撮影画像に色補正モデルを適用してカラー化し、表示することも可能であり、当該処理はステップS410、ステップS411と同様である。
【0085】
以上で述べた構成によれば、本実施形態では、眼底カラー画像の色情報を有する参照画像とColor-SLOで取得した撮影画像をペアで学習し、色を補正するモデルを生成することができる。また、生成した補正モデルを適用させることで、Color-SLOで取得した撮影画像の色味を補正することができる。それにより、実際に用いる測定光では表現できない色情報を付与し、撮影画像の色味を補正することができる。
【0086】
本実施形態では、赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザを用いて画像を取得し、合成することでColor-SLO画像を構築する例を挙げたが、画像の構築はこの例に限らない。例えば、上記レーザの中のいずれか2つの光源の組み合わせから構成されるColor-SLO画像であってもよいし、赤外レーザと組み合わせて合成される画像であってもよい。
【0087】
補正モデルを適用することで、過去に取得されたColor-SLO画像の色味を補正することも可能である。この場合は、処理プログラムのバージョンアップ対応として、Color-SLO装置に付随のソフト、或いは表示専用ソフトを更新することで本実施形態の処理を実行することが可能となる。
【0088】
次に、本実施形態に係る医用画像処理装置100-2を用いて撮影を行う際の、フォーカス調整方法の派生例について説明する。Color-SLOでは、各々が異なる波長の赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザを用いて撮影を行い、画像を合成することで疑似カラー画像を生成するが、異なる波長を用いることにより、焦点がシフトする問題が生じる。そこで、ここでは、各波長のレーザを用いて取得する画像から、赤色レーザ使用時、緑色レーザ使用時、青色レーザ使用時に最適なフォーカス位置を求めて撮影する方法について説明する。
【0089】
図10は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置100-2で撮影を行う際の撮影画面の一例を示す図である。フォーカス調整は、撮影フローにおけるステップS405において実施される。まず、操作者が非図示のスキャン開始ボタンを押下するか、医用画像処理装置100-2に設けられる非図示のスイッチを押下して、プレビューを開始する。プレビューが開始されると、制御部200は駆動制御部230を制御して、赤外レーザ光源801IRを点灯し、ガルバノミラーを動作させて撮影画像530のプレビュー表示を行う。操作者は、プレビュー表示を確認しながら、撮影のための各種撮影パラメータの調整を行うことができる。具体的には、少なくとも、撮影範囲、内部固視灯の位置、フォーカスが設定される。このうち、まずは撮影範囲と内部固視灯の位置が調整される。駆動制御部230は、固視灯表示部111の発光ダイオードを制御して、黄斑部や視神経乳頭部など所望の箇所で撮影を行うように内部固視灯110の位置を制御する。撮影範囲の調整や内部固視灯の位置は、非図示のユーザーインターフェースを用いて操作者が設定できるものとする。
【0090】
撮影範囲と内部固視灯の位置設定を終えたら、駆動制御部230は、Color-SLO光源800を制御して、赤色、緑色、青色のレーザを画像毎に順次切り替えながらスキャンを行い、画像の取得を行う。次に、赤色、緑色、青色のレーザでスキャンして得る画像の各々(以下、R画像、G画像、B画像と呼称する)に対して、フォーカスの調整が実施される。具体的には、図10のR画像1001、G画像1002、B画像1003とこれらの合成画像1010を参照画像1020と比較しながら、R画像フォーカス制御器1004、G画像フォーカス制御器1005、B画像フォーカス制御器1006を調整する。ここで、合成画像1010は、R画像、G画像、B画像を位置合わせし、加算することでグレースケールの画像として生成されてもよいし、位置合わせの後、疑似カラー画像として生成されてもよい。フォーカスの調整は、操作者が合成画像1010と参照画像1020を比較しながら手動で行ってもよいし、信号処理部220が合成画像1010と参照画像1020の類似度を計算して、相関値が最も高くなるように自動的に行ってもよい。類似度を計算し、自動的に各フォーカス位置を調整する場合には、信号処理部220は、グレースケールの合成画像を生成し、参照画像を(1)式に基づいてグレースケールに変換する。なお、眼底カメラで取得される参照画像1020は周縁部が鏡筒により暗いので、例えば、合成画像1010と参照画像1020で同一の領域を示す注目領域1011、1021を設けて、この領域内の画像について類似度を計算してもよい。或いは、前述のとおり閾値処理によって計算対象から除外してもよい。
【0091】
また、合成画像1010と参照画像の表示は、カラー表示とグレースケール表示のどちらであってもよい。GUIに設けられる非図示の切り替えボタンによって表示を切り替える構成としてもよい。
【0092】
赤色レーザ、緑色レーザ、青色レーザは赤外レーザと異なり視認できるので、繰り返しプレビューを行いながらフォーカス調整を行うと、被検者への負担が増加してしまう。加えて、プレビューによって被検眼の瞳孔が小さくなると、撮影画質の劣化につながる。よって、プレビュー画像の取得回数は少ない方が好ましい。したがって、各レーザで取得する画像のそれぞれについて、フォーカスを数ステップ自動で振った画像を予め撮影しておき、撮影の終了後、ポスト処理により取得した画像から最適なフォーカス位置を選択してもよい。また、被検眼の視度と、IR画像、R画像、G画像、B画像のフォーカス位置を、記憶部240がテーブルとして記憶し、例えば視度の類似する被検眼を撮影する場合には、記憶したテーブルを参照して撮影の設定を行う構成としてもよい。
【0093】
以上の調整により、異なる波長を用いることで生じる焦点シフトの影響を軽減し、撮影画像と参照画像の画質を近づけることが可能となる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る医用画像処理装置は、OCTで取得する眼底のボリュームデータから眼底の正面画像を生成し、眼底カメラ画像やColor-SLO画像とペアで機械学習にかけることで、OCT正面画像をカラー化するモデルを構築する。また、当該構築したモデルを使用して、OCT正面画像をカラー化することを特徴とする。以下に詳細を説明する。なお、以下に記載する第3の実施形態の説明において、第1及び第2の実施形態で説明した構成や処理と同様の内容については、詳細な説明を省略する。
【0095】
図11は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置100の概略構成の一例を示す図である。以下の説明においては、図11に示す第3の実施形態に係る医用画像処理装置100を「医用画像処理装置100-3」と記載する。また、図11では、医用画像処理装置100-3として、OCTとColor-SLOが複合構成された装置を適用した例を示している。医用画像処理装置100-3は、OCT光源11、干渉光を生成するOCT干渉部20、干渉光を検出するOCT検出部30、被検眼Eの眼底EfへOCT測定光を導くOCT測定光学系50、OCT測定光と干渉させるための参照光を生成するためのOCT参照光学系60を有している。また、本実施形態において必須ではないが、更に、医用画像処理装置100-3は、Color-SLO光源800、眼底からのSLO反射光を得るためのSLO光学系80を備えている。更に、医用画像処理装置100-3は、制御部200、内部固視灯110、医用画像処理装置100-3の所謂アライメントに用いる前眼部画像を得るための前眼部撮影部90、画像を表示する表示部300を備えている。なお、本実施形態では、SS-OCTの構成例を示すが、装置構成はこれに限らず、SD-OCTの装置構成であってもよい。
【0096】
<OCT測定系の構成>
OCT干渉部20は、カプラ21、22を有している。まず、カプラ21は、波長掃引光源11から射出された光を眼底へ照射する測定光と参照光とに分岐する。この実施形態において、分岐比は2:8程度であり、測定光:参照光=2:8とする。測定光は、測定アーム50を経由して被検眼Eの眼底Efに照射される。より具体的には、測定アーム50に入射した照射光は、偏光コントローラ51で偏光状態を整えられた後、コリメータ52から空間光として射出される。その後、照射光は、X走査スキャナー53、レンズ54、55、Y走査スキャナー56、ダイクロイックミラー103、レンズ57、フォーカスステージ59に固定されたフォーカスレンズ58、対物レンズ106を介して被検眼Eの眼底Efに照射される。なお、X走査スキャナー53、Y走査スキャナー56は眼底を照射光で走査する機能を有する走査部である。走査部によって、測定光の眼底への照射位置が変えられる。また、ダイクロイックミラー103は、波長1000nm~1100nmの光を反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。また、フォーカスステージ59は駆動制御部230によって光軸方向に移動し、被検眼の目的とする眼底部位に対して、OCT測定光が集光するように調整される。そして、眼底からの後方散乱光(反射光)は、再び上述の光学経路をたどり測定アーム50から射出される。そして、カプラ21を経由してカプラ22に入射する。前記の分岐比に従い、眼底からの戻り光の8割がカプラ22に導かれる。
【0097】
一方、参照光は参照アーム60を経由し、カプラ22に入射する。より具体的には、参照アーム60に入射した参照光は、偏光コントローラ61で偏光状態を整えられた後、コリメータ62から空間光として射出される。その後、参照光は分散補償ガラス63、光路長調整光学系64、分散調整プリズムペア65を通り、コリメータレンズ66を介して光ファイバーに入射され、参照アーム60から射出されてカプラ22に入射する。
【0098】
カプラ22で、測定アーム50を経由した被検眼Eの反射光と、参照アーム60を通った光とが干渉する。このとき、駆動制御部230を介して光路長調整光学系64を光軸方向に沿って前後に移動させ、眼底部からの戻り光と参照光との光路長差が調整された干渉信号を取得する。そして、その干渉光を検出部30で検出する。検出部30は、差動検出器31とA/D変換器32を有している。まず、検出部30では、カプラ22で干渉光を発生させた後すぐに分波された干渉光を差動検出器31で検出する。
【0099】
そして、差動検出器31で電気信号に変換されたOCT干渉信号をA/D変換器32でデジタル信号に変換している。ここで、図11の医用画像処理装置100-3では、干渉光のサンプリングは、波長掃引光源11の中に組み込まれたkクロック発生部が発信するkクロック信号に基づいて等光周波数(等波数)間隔に行われる。A/D変換器32が出力したデジタル信号は、取得部210に伝送される。
【0100】
以上は、被検体のある1点における断層に関する情報の取得のプロセスであり、このように、被検体の奥行き方向の断層に関する情報を取得することを、A-scanと呼ぶ。また、A-scanと直交する方向で被検体の断層に関する情報、すなわち2次元画像を取得するための走査方向をB-scanと呼び、更にA-scan及びB-scanのいずれの走査方向とも直交する方向に走査することをC-scanと呼ぶ。これは、3次元断層像を取得する際に眼底面内に2次元ラスター走査する場合、高速な走査方向がB-scan、B-scanをその直交方向に並べて走査する低速な走査方向をC-scanと呼ぶ。A-scan及びB-scanを行うことで2次元の断層像が得られ、A-scan、B-scan及びC-scanを行うことで、3次元の断層像を得ることができる。B-scan、C-scanは、上述したX走査スキャナー53、Y走査スキャナー54により行われる。
【0101】
なお、X走査スキャナー53、Y走査スキャナー56は、それぞれ回転軸が互いに直交するよう配置された偏向ミラーで構成されている。X走査スキャナー53は、X軸方向の走査を行い、Y走査スキャナー56は、Y軸方向の走査を行う。X軸方向、Y軸方向の各方向は、眼球の眼軸方向に対して垂直な方向で、互いに垂直な方向である。また、B-scan、C-scanのようなライン走査方向と、X軸方向又はY軸方向とは、一致していなくてもよい。このため、B-scan、C-scanのライン走査方向は、撮像したい2次元の断層像又は3次元の断層像に応じて、適宜決めることができる。
【0102】
<SLO測定系の構成>
本実施形態の医用画像処理装置100-3は、OCT測定系とは別に、Color-SLO測定系を備える。上述のとおり本実施形態の必須構成要件ではないが、一例としてColor-SLO測定系を医用画像処理装置100-3に含める構成で説明する。なお、Color-SLO測定系は、第2の実施形態と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0103】
<制御部200>
本実施形態の制御部200は、図2に示す取得部210、図2に示す信号処理部220に対応する信号処理部260、図2に示す駆動制御部230及び図2に示す記憶部240を有する。
【0104】
取得部210は、A/D変換器32、APD88及び前眼部カメラ94と接続され、これらから出力される各種信号を取得する。
【0105】
信号処理部260は、A/D変換器32やAPD88から伝送される信号に基づき、撮影画像を生成する。また、記憶部240内に保存されている色情報を有する同一の被検眼Eの参照画像を参照し、生成された撮影画像やOCT干渉信号と共に学習することで、撮影画像の着色モデルを学習する。更に、学習したモデルを用いて前記撮影画像を着色する。また、撮影画像を解析し、解析結果の可視化情報の生成を行う。なお、画像の生成や学習方法の詳細については後述する。
【0106】
駆動制御部230は、上述のとおり各部を制御する。
【0107】
記憶部240は、被検者を同定するための被検者識別番号や、被検眼Eの色情報を有する画像を記憶する。また、記憶部240は、取得部210が取得するOCT干渉信号、信号処理部260により生成される撮影画像と、学習部223によって構築される着色モデルを更に記憶する。なお、本実施形体では、記憶部240は装置の構成として説明をするが、必ずしも装置に内蔵される必要はなく、例えば匿名化が施された患者情報や撮影情報がデーターベースとして集約される基幹ネットワークであってもよい。
【0108】
<信号処理部260>
図12は、第3の実施形態に係る信号処理部260の概略構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の信号処理部260は、図12に示すように、画像参照部261、再構成部262、位置合わせ部263、データ生成部264、検出部265、抽出部266、学習部267及び着色部268から成る。
【0109】
画像参照部261は、被検眼Eの色情報を有する参照画像を参照する。なお、参照画像は、医用画像処理装置100-3の構成に含まれるColor-SLOで取得されてもよいし、事前に異なる装置で取得された画像であってもよい。
【0110】
再構成部262は、検出部210に伝送される干渉信号に対して、一般的な再構成処理を行うことで、断層画像を生成する。ここで、一般に再構成処理は、ノイズ除去、位相補正、分散補償、フーリエ変換、輝度変換、対数変換、階調処理を含む。
【0111】
位置合わせ部263は、隣接する断層画像の位置合わせを行い、3次元データの歪みを抑制する。また、位置合わせ部263は、後述するOCT正面画像と、画像参照部261が参照する参照画像の位置合わせを行う。
【0112】
データ生成部264は、OCT測定光をスキャンして取得した断層画像を3次元空間に配置・統合したデータに基づいて、3次元データの構築を行う。
【0113】
検出部265は、網膜の境界線を検出する。検出された境界線は、断層画像の位置合わせや正面画像の生成に利用される。
【0114】
抽出部266は、3次元データからサブセットを抽出して、サブセットデータにおける深さ方向のデータを積算することで、OCTの正面画像を抽出する。ここで、抽出部266は、生成されるOCT正面画像と参照画像の類似度を参照し、画像の比較を行いながら、サブセットとして抽出する領域の修正を行う。
【0115】
学習部267は、画像参照部261によって参照され、位置合わせ部263によって位置合わせされた、色情報を有する参照画像を教師データとして撮影画像を学習し、撮影画像を着色するモデルを構築する。
【0116】
着色部268は、学習部267によって構築される着色モデルを適用して、撮影画像に色情報を与えてカラー化する。
【0117】
次に、図13を用いて本実施形態におけるデータ処理の流れを説明する。図13は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置100-3の撮影処理の流れと撮影画像を着色する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0118】
<ステップS1301>
ステップS1301では、非図示の被検眼情報取得部が、被検眼を同定する情報として被検者識別番号を生成する。或いは、眼底カメラやColor-SLOによって既に取得された画像を参照画像として読み込む場合には、被検眼情報取得部は、参照画像に紐づく被検者識別番号を読み込む。そして、被検者識別番号に基づいて、非図示の外部記憶部が保持している当該被検眼に関する情報を取得して非図示の記憶部に記憶する。
【0119】
<ステップS1302>
ステップS1302では、医用画像処理装置100-3は、被検眼Eをスキャンして撮影を行う。図14は、第3の実施形態に係る撮影画面の一例を示す図である。
【0120】
まず、操作者は、前眼部画像1410を見ながら、被検眼Eと装置とのアライメントを行う。アライメントを終えた後、操作者が非図示のスキャン開始を選択すると、医用画像処理装置100-3は、駆動制御部230を制御し、ガルバノミラーを動作させてSLOとOCTのスキャンを行い、SLO画像1420、OCT断層画像1430を撮影画面1400上に表示する。
【0121】
次に、撮影を行うにあたり、各種撮影パラメータの調整が実施される。具体的には、少なくとも、内部固視灯の位置、スキャン範囲、スキャンパターン、コヒーレンスゲート位置、フォーカスが設定される。駆動制御部230は、固視灯表示部111の発光ダイオードを制御して、黄斑部や視神経乳頭部など所望の箇所で撮影を行うように内部固視灯110の点灯位置を制御する。内部固視灯の位置は、非図示のユーザーインターフェースを用いて操作者が設定できるものとする。本実施形態においてスキャンパターンは、ラスタスキャンのパターンを設定する。SLOとOCTのフォーカスは、例えば独立に調整が可能であり、それぞれSLOフォーカス調整器1421、OCTフォーカス調整器1431を用いる。なお、SLOとOCTのフォーカス調整は独立でなくてもよく、例えばSLOとOCTの相対的なフォーカス位置をテーブルとして管理し、いずれか一方の調整を行うことで、双方の画像のフォーカスが調整されるようにしてもよい。コヒーレンスゲートの調整は、コヒーレンゲート調整器1432を用いて行い、眼底EfがOCT断層画像1430の所望の位置に表示されるように調整する。また、フォーカス調整やコヒーレンスゲート調整は全て自動で行われてもよい。この場合、制御部200が例えば画像の輝度値をモニタして行い、SLO画像1420とOCT断層画像1430の輝度積算値が最大となるように、各々のフォーカスが調整される。また、コヒーレンスゲートは、OCT断層画像1430の輝度積算値が最大となる位置がゼロディレイ位置に相当するので、輝度値が最大となる位置から所定量のオフセットを行うことで、位置を自動調整する。これら撮影パラメータの調整終了後、操作者が非図示の撮影開始を選択することで撮影を行う。
【0122】
撮影は、まず、OCTの撮影を実行し(断層画像取得)、次にColor-SLOの撮影を実行するのがよい。これは、OCTで利用する光の波長帯が赤外域であり、不可視であるからである。すなわち、被検眼Eは、OCTで撮影された際に眩しさを感じず、可視光を入射させる場合と比較して負担を感じにくい。また、眩しさを感じないので、瞳孔の収縮が起こらず、続けて行われるSLO撮影においても、被検眼Eへの入射光が瞳孔によって遮られにくいといった利点がある。
【0123】
<ステップS1303>
ステップS1303では、再構成部262が、検出部210から伝送された干渉信号に対して、一般的な再構成処理を行うことで、断層画像を生成する。
【0124】
まず、再構成部262は、干渉信号から固定パターンノイズ除去を行う。固定パターンノイズ除去は、例えば検出した複数のAスキャン信号を平均することで固定パターンノイズを抽出し、これを入力した干渉信号から減算することで行われる。次に、再構成部262は、例えば、予め取得した較正信号に基づき、干渉信号の位相補正と分散補償を行う。続いて、再構成部262は、有限区間でフーリエ変換した場合にトレードオフの関係となる、深さ分解能とダイナミックレンジとを最適化するために、所望の窓関数処理を行う。次に、FFT処理を行い、振幅を抽出し、対数変換、階調変換を経る事によって、断層画像を生成する。
【0125】
<ステップS1304>
ステップS1304では、断層画像の位置合わせを行うために、検出部265が網膜の境界線を検出する。位置合わせを行うための層として、例えば、図14におけるL1(ILMとNFLとの境界)と、L2(ISOS)を検出する。検出部265は、処理対象とする断層画像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して画像を作成する(以下、メディアン画像、Sobel画像とする)。次に、作成したメディアン画像とSobel画像から、Aスキャン毎にプロファイルを作成する。メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、Sobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、網膜層の各領域の境界線を検出する。
【0126】
<ステップS1305>
ステップS1305において、位置合わせ部263がOCTの断層画像を位置合わせし、データ生成部264が3次元データを生成する。眼は、撮影している間にも動いているので、まず、位置合わせ部263が隣接する断層画像の位置合わせを行う。XY面内の移動に関しては、リアルタイムにトラッキングを行いながら撮影を行うので、撮影時にほとんど位置合わせができている。しかし、深さ方向に関してはリアルタイムトラッキングをしていないので、データ内部でも位置合わせを行う必要がある。そのため、ここではラスタスキャンデータ内の位置合わせに関して、図15を用いて説明をする。具体的に、図15は、第3の実施形態に係る3次元データ生成方法の説明図である。図15(a)は、位置合わせに用いる境界線の例を示している。本実施形態においては、境界線L1(ILM)を用いる場合について説明をする。なお、本実施形態においては、境界線L1を使用する例について説明を行うが、境界線の種類はこれに限らない。他の境界線でもよいし、複数の境界線を組み合わせてもよい。
【0127】
図15(a)において、基準データをIndexc、対象データをIndexc-1としている。なお、最初の基準データはラスタスキャンで最初に取得される断層画像とし、対象データは基準データに隣接する断層画像とする。
【0128】
図15(b)に、説明のために、基準データの境界線L1と位置合わせ対象の境界線L1'とを同時に表示する。図15(b)において、境界線を縦方向に12分割している。本実施形態では分割数を12として説明をする。それぞれの領域はArea0~Area11とする。なお、図15(b)において、画像中心部に分割領域を描画していないが、実際には画像全体を領域分割している。そして、上下矢印Difference1は、L1とL1'との差を表す。これらの差は、それぞれの領域Area0~Area11それぞれで求める。これらの分割数は横方向の画像サイズに応じて変更してもよい。或いは、共通して検出した境界線の横幅のサイズに応じて変更してもよい。本実施形態では簡単のために、横方向の境界線サイズを同じで表示しているが、実際には、網膜層が画像の上方向にずれ(Z軸で0の方向)、網膜層の一部領域が画像から欠損する場合がある。その場合には、画像全体で境界線が検出できない。そのため、境界線同士の位置合わせにおいては、基準データの境界線L1と位置合わせ対象の境界線L1'との境界線が検出できている範囲を分割して位置合わせをすることが望ましい。
【0129】
図15(b)において、各領域のDifference1の平均をそれぞれD0~D11とする。すなわち、ILMの差の平均をその領域の差分の代表値とする。次に、各領域で求めた代表値D0~D11を小さい順にソートする。そして、ソートした代表値を小さい順から8個用いて、平均と分散を計算する。なお、本実施形態では選択数は8個とする。しかし、数はこれに限定されない。選択する数は分割数よりも小さければよい。平均と分散の計算は、ソートした代表値を1つずつずらして計算する。すなわち、本実施形態では12個に分割した領域のうち8個の代表値を用いて計算をするので、全部で5種類の平均値と分散値が求まる。
【0130】
次に、求めた5種類の分散値の中で最小となる分散値を算出した際の8個の差分の代表値を用いて、深さ方向のシフト値と傾きを求める。これについて、図15(c)と以下の(3)式を用いて説明をする。図15(c)は、横軸に分割領域の中心x座標、縦軸に差分の代表値としたグラフである。図15(c)において、黒丸は分散値が最小となった組み合わせの差分の代表値の例であり、黒三角は選択されなかった差分の代表値の例を示している。以下の(3)式は、分散値が最小となった組み合わせの差分の代表値(図15(c)における黒丸)を用いて計算をする。
【0131】
【数3】
【0132】
(3)式においてDが深さ方向のシフト値であり、xは図11に示すx軸方向のx座標、すなわちAスキャン位置である。(3)式におけるaとbに関して、(4)式と(5)式に示す。(4)式、(5)式において、xiは選択された分割領域の中心x座標、Diは選択された差分の代表値であり、nは選択した代表値の数であるので、本実施形態においてnは8となる。(3)式により、各Aスキャンの深さ方向のシフト値が求まる。
【0133】
ここで示すように、境界線位置合わせ時に領域を分割し、分割した領域の差分値の組み合わせにおいて最もバラつきが小さくなる値を用いることで、境界線検出に誤りがあったとしても、それらの領域の値は使用されない。そのため、安定して深さ方向のシフト値を計算することができる。なお、各領域の深さ方向の代表値として平均値を用いたが中央値でもよく、代表的な値を用いることができればよい。さらに、バラつきの値として分散値を用いたが標準偏差でもよく、値のバラつきを評価できる指標であればよい。
【0134】
この処理に関して、基準データと対象データを変えながら全ての隣接するデータに関して位置合わせを行い、深さ方向に位置の揃った3次元データを生成する。
【0135】
<ステップS1306>
ステップS1306において、信号処理部260は、参照画像を教師としてOCT正面画像を着色するモデルを学習するかどうかの判定を行う。モデル学習の設定は、設定ファイルを医用画像処理装置100-3に読み込ませることによってなされてもよいし、GUI上に設けられた設定ボタンを介して任意に切り替えられてもよい(非図示)。ステップS1306の判定の結果、着色するモデルを学習しない場合には(S1306/n)、プロセスは、ステップS1307のOCT正面画像生成のステップへ進む。一方、ステップS1306の判定の結果、着色するモデルの学習を行う場合には(S1306/y)、プロセスは次のステップS1308へ進む。
【0136】
<ステップS1307>
ステップS1307では、信号処理部260は、与えられる深度情報に基づいて、OCTの3次元データから部分的な深さ領域に切り出されたサブセットを生成し、サブセットを深さ方向に積算することでOCTの正面画像を生成する。深度情報は任意に設定が可能であり、全ての断層画像で共通の、浅層と深層を示す2つの固定値であったり、断層画像毎に求めるXZ座標系における多項式や指数関数であったり、ステップS1304で求める層の座標情報であってもよい。
【0137】
<ステップS1308>
ステップS1308では、信号処理部260は、参照画像の読み込みを行う。参照画像は、予め異なる装置で取得された、被検眼Eの色情報を有する眼底画像であってもよいし、或いは、医用画像処理装置100-3の撮影において、OCT画像に続いて取得されるColor-SLO画像であってもよい。
【0138】
<ステップS1309>
ステップS1309では、信号処理部260は、ステップS1308で読み込んだ参照画像をグレースケールに変換する。実施形態1、2と同様に、グレースケールへの変換は、式(1)に基づきRGB色空間からYCbCr空間へ変換した際の、Yの値を利用する。
【0139】
<ステップS1310>
ステップS1310では、信号処理部260は、異なる2つの深度情報を用いて、ステップS1305で生成したOCTの3次元データからサブセットを抽出する。深度情報は任意に設定が可能であり、全ての断層画像で共通の、浅層と深層を示す2つの固定値であったり、断層画像毎に求めるXZ座標系における多項式や指数関数であったり、ステップS1304で求める層の座標情報であってもよい。
【0140】
例えば、本実施形態では、ステップS1304で検出した網膜各層から、2層が選択される。選択する2層の組み合わせは複数設定することが可能であり、ループ処理により組み合わせを順次変更することで、次のステップS1309で生成する正面画像が順次更新されていく。例えば、選択する層として、ILM、OPL、ISOS、RPE、BMの5層の中から2層を選択する場合、層の組み合わせとしては10通りとなり、ループ処理により全ての組み合わせを計算する。固定値や関数で深度情報を指定する場合は、例えば、Z方向に所定のオフセットを所定回数実行し、選択する層の候補を生成することで、複数の正面画像を生成してもよい。
【0141】
<ステップS1311>
ステップS1311では、抽出部266が、ステップS1310で指定された2つの層情報に基づいて、OCT3次元データのサブセットを深さ方向に積算して正面画像を生成する。
【0142】
<ステップS1312>
ステップS1312において、位置合わせ部263は、ステップS1308で読み込む参照画像と、生成したOCTの正面画像の位置合わせを行う。位置合わせは、例えば位相限定相関法などを用いるが、手法はこれに限らず、画像間の相対的な位置関係が算出できるものであれば何でもよい。位置合わせにより、OCT正面画像に対して、グレースケール化された参照画像を変形する。変形の際は、Yの値だけでなく、CbやCrの値もYの値の変化に応じて修正を行う。参照画像として用いる画像の周縁部が、例えば鏡筒や睫毛などによって暗い場合には、閾値処理によって相関計算の対象から除外してもよい。また、位置合わせ部は、参照画像と撮影画像の解像度が等しくなるように、参照画像の画素を補間又は平均してリスケールする。なお、位置合わせ部263は、参照画像とOCT正面画像の位置合わせを実施する際、画像間の類似度を算出する。最後に、位置合わせ部263は式(2)に基づいてグレースケールに変換された参照画像をカラー画像に再変換する。
【0143】
<ステップS1313>
ステップS1313において、信号処理部260は、全てのOCT正面画像に対して、類似度が算出されたどうかを判定する。全てのOCT正面画像について類似度が算出されていなければステップS1311へ戻り処理を繰り返し、全ての類似度が算出されていれば次のステップS1314へ移行する。
【0144】
<ステップS1314>
ステップS1314では、信号処理部260は、毎回のループにおいてステップS1312で算出される全ての類似度を比較し、参照画像に対して最も類似度の高いOCTの正面画像を選択する。
【0145】
<ステップS1315>
ステップS1315では、信号処理部260は、参照画像を教師データとして、選択されたOCT正面画像を着色するモデルを学習する。なお、実施形態1、2と同様に、教師データに用いる参照画像は、位置合わせにより変形されたグレースケールの画像を、再びカラー画像へ再変換したものを用いる。本実施形態の学習部267における推論処理は、実施形態1、2と同様に、参照画像とOCT正面画像とをペアで学習する。2つの画像をペアで学習することで、輝度情報のみを有するOCT正面画像に対して、対応するカラーの参照画像から色情報を推定することができる。また、更に本実施形態に係る学習では、OCTの干渉信号を併せて学習してもよい。干渉信号は所謂スペクトル情報であり、参照画像と紐づけて学習することで、より精度良く着色モデルを構築することができる。着色モデルの構築が完了した後、制御部200は着色モデルを記憶部240に記憶する。
【0146】
<ステップS1316>
ステップS1316では、信号処理部260は、記憶部240に記憶されている学習モデル(着色モデル)を、OCT正面画像に対して適用し、画像をカラー化するかどうかの判定を行う。なお、モデル適用の設定は、設定ファイルを管理して医用画像処理装置100-3に読み込ませてもよいし、GUI上に設定ボタンを設け、任意に切り替えてもよい(非図示)。このステップS1316の判定の結果、着色モデルを適用する場合には(S1316/y)、プロセスは、次のステップS1317へ進、む。一方、ステップS1316の判定の結果、着色モデルを適用しない場合には(S1316/n)、プロセスは、一連の処理を終了する。
【0147】
<ステップS1317>
ステップS1317では、着色部268は、学習した着色モデルを適用し、OCT正面画像をカラー化する。着色部268は、記憶部240に保存されている既習の着色モデルを読み込み、実行して、OCT正面画像をカラー化した疑似カラー画像を生成する。
【0148】
<ステップS1318>
ステップS1318では、信号処理部260は、ステップS1317で生成した疑似カラー化されたOCT正面画像を、非図示のレポート画面に表示する。レポート画面には、OCT正面画像がデフォルトで表示される。ここで、操作者はユーザーインターフェースとして設けられるColorizationボタンを押下することで、OCT正面画像に対して着色モデルを適用して着色した疑似カラー画像を切り替えて表示することができる。表示の形態はこれに限らず、例えばOCT正面画像と疑似カラー画像を並べて表示してもよい。疑似カラー画像はレポートデータとして記憶部240に保存されてもよいし、レポート表示の都度、最新の着色モデルを適用して表示してもよい。
【0149】
ステップS1318の処理を完了すると、信号処理部260は、OCTで取得・生成した正面画像を利用して着色モデルを学習する処理と、該正面画像に着色モデルを適用してカラー化する一連の処理を終了する。
【0150】
なお、本実施形態の医用画像処理装置100-3は、SS-OCTの構成で説明したが、前述のとおりSD-OCTの構成であってもよい。ただし、SD-OCTで用いられる分光器は、回折格子によって干渉光を空間で分光するので、ラインセンサの隣接する画素間で干渉光のクロストークが発生しやすい。深さ位置Z=Z0に位置する反射面からの干渉光は、波数kに対してZ0/πの周波数で振動するので、Z0が大きくなる(すなわちコヒーレンスゲート位置から遠く離れる)に従って、干渉光の振動周波数は高くなり、ラインセンサの隣接する画素間での干渉光のクロストークの影響が大きくなる。これによって、SD-OCTでは、より深い位置を撮像しようとすると、感度低下が顕著となる。一方、分光器を用いないSS-OCTは、SD-OCTよりも、深い位置での断層画像の撮像が有利となる。
【0151】
また、SD-OCTの分光器では、回折格子による干渉光の損失がある。一方、SS-OCTでは、分光器を用いずに干渉光を差動検出する構成とすることで感度向上が容易である。よって、SS-OCTは、SD-OCTと同等の感度で高速化が可能となり、この高速性を活かして、広画角の断層画像を取得することが可能となる。
【0152】
図16は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置100-3におけるOCT信号特性の一例であるRolloff特性の一例を示す説明図である。具体的に、図16は、OCTの撮像深度と減衰特性の関係を示すものである。上述のとおり、SD-OCTで深い位置を撮像しようとすると、減衰が生じるので、SD-OCTのRolloff特性1602は、一般にSS-OCTのRolloff特性1601と比較して悪くなる。そのため、例えば、OCT正面画像を生成する際の深度情報に基づき、Rolloff特性を反映させて輝度補正を行ってもよい。具体的には、正面画像を生成する際に利用する深度情報とRolloff特性を用いて、深さ位置Z=Z0の位置に相当する輝度値を換算して正面画像を生成してもよい。深さ位置は、例えば正面画像を生成する深度位置Z=Z1、Z=Z2のいずれかであったり、2つの深度情報の平均値であったりしてもよい。Rolloff特性は、例えば予め装置の較正データとして取得されてもよく、各装置の組み立て構成時などに取得される。
【0153】
以上の方法によって、OCTで利用する方式や正面画像生成で利用する深度情報に依らず、安定して同一輝度レベルのOCT正面画像が生成できる。
【0154】
以上に述べた構成によれば、同一装置構成であるColoro-SLOで取得した画像を参照画像とするか、異なる装置で撮影された色情報を有する画像を参照画像とし、OCTで取得した撮影画像をペアで学習し、着色するモデルを生成することができる。更に、学習データにOCT干渉信号を用いることで、色再現精度を高めることができる。また、生成した着色モデルを適用させることで、OCTで取得した撮影画像をカラー化することができる。それにより、実際に用いる測定光では表現できない色情報を付与し、撮影画像をカラー化することができる。
【0155】
着色モデルを適用することで、過去に取得されたOCT画像をカラー化することも可能である。この場合は、処理プログラムのバージョンアップ対応として、既存の装置に付随のソフト、或いは表示専用ソフトを更新することで、本実施形態の処理を実行することが可能となる。
【0156】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。以上、実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0157】
200:制御部、210:取得部、220:信号処理部、230:駆動制御部、240:記憶部、221:画像参照部、222:位置合わせ部、223:学習部、224:着色部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図15
図16