IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】含フッ素ビニル化合物塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/02 20060101AFI20241111BHJP
   C07C 309/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C07C303/02
C07C309/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020176889
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067991
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】長門 康浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176425(WO,A1)
【文献】特公昭47-002083(JP,B1)
【文献】米国特許第03560568(US,A)
【文献】国際公開第2009/151109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J,C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素環状化合物(1)と、
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)、及び/又は
下記一般式(3):
PnX (3)
(式中、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~12であり、Pnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。)
で表される有機塩化合物(3)とを反応させることを含み、
前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記有機塩化合物(3)がテトラブチルアンモニウムフルオリドである
特徴とする、
下記一般式(4):
MSOCFXCFOCF=CFY (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素環状化合物(1)の物質量(α)に対する、前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)の物質量(β)と前記有機塩化合物(3)の物質量(γ)との合計の比率((β+γ)/α)が、0.5~10である、請求項1に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【請求項3】
エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、及びスルホ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加物の存在下、前記含フッ素環状化合物(1)と、前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)及び/又は前記有機塩化合物(3)とを反応させる、請求項1又は2に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【請求項4】
前記エーテル化合物、前記ニトリル化合物、前記アミド化合物、及び前記スルホ化合物が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホランである、請求項に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【請求項5】
前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)の質量(δ)と前記有機塩化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、前記添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))が、0.5~100である、請求項又はに記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ビニル化合物塩の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素環状化合物(1)(以下、「化合物(1)」ともいう。)より、
下記一般式(4):
MSO3CFXCF2OCF=CFY (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニル化合物塩(4)(以下、「化合物(4)」ともいう。)を製造できることが知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では、X=F、Y=Fである含フッ素環状化合物(1)とナトリウムメトキシドとを、脱水エーテルの存在下、室温で終夜反応させ、溶媒除去、乾燥をさせることで、X=F、Y=Fである含フッ素ビニル化合物塩(4)を得る方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、X=F、Y=Fである含フッ素環状化合物(1)と各種のシラノール化合物(例えば、ナトリウムトリメチルシラノラート)とを反応させることで、X=F、Y=Fである含フッ素ビニル化合物塩(4)を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3560568号明細書
【文献】国際公開第2019/176425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、上記のとおり、X=F、Y=Fである含フッ素環状化合物(1)とナトリウムメトキシドとを反応させることにより、目的物であるX=F、Y=Fである含フッ素ビニル化合物塩(4)を得る方法が開示されているものの、特許文献2において、この方法では、X=F、Y=Fである含フッ素ビニル化合物塩(4)の生成量は少ないことが記載されている。
一方、特許文献2に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)を得る方法は、上記のように特許文献1に記載の方法では含フッ素ビニル化合物塩(4)の生成量が少ないことを鑑みれば、発明者の知る限り、収率高く含フッ素ビニル化合物塩(4)を得られる唯一の方法である。
しかしながら、特許文献2で用いられているシラノール化合物は、下記の平衡反応を有することが知られている(J.Am.Chem.Soc.1953,75,5615-5618頁)。
【化2】
(式中、Rはアルキル基である。)
そのため、シラノール化合物の存在する環境によっては、水分によりシラノール化合物が(R3Si)2Oに変質してしまい、シラノール化合物の純度が低下する可能性があった。このことから、シラノール化合物を使用せずに、含フッ素環状化合物(1)から含フッ素ビニル化合物塩(4)を収率よく製造することができる新たな方法の開発が求められてきた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、含フッ素環状化合物(1)から含フッ素ビニル化合物塩(4)を収率よく製造する新規の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素環状化合物(1)と、一般的な入手が容易であり、安定に取り扱うことのできる6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)(以下、「化合物(2)」ともいう。)、及び/又は下記一般式(3):
4PnX (3)
(式中、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~12であり、Pnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。)
で表される有機塩化合物(3)(以下、「化合物(3)」ともいう。)とを反応させることで、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(1):
【化3】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素環状化合物(1)と、
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)、及び/又は
下記一般式(3):
PnX (3)
(式中、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~12であり、Pnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。)
で表される有機塩化合物(3)とを反応させることを含み、
前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記有機塩化合物(3)がテトラブチルアンモニウムフルオリドである
特徴とする、
下記一般式(4):
MSOCFXCFOCF=CFY (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
[2
記含フッ素環状化合物(1)の物質量(α)に対する、前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)の物質量(β)と前記有機塩化合物(3)の物質量(γ)との合計の比率((β+γ)/α)が、0.5~10である、[1]に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。

エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、及びスルホ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加物の存在下、前記含フッ素環状化合物(1)と、前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)及び/又は前記有機塩化合物(3)とを反応させる、[1]又は[2]に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。

前記エーテル化合物、前記ニトリル化合物、前記アミド化合物、及び前記スルホ化合物が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホランである、[]に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。

前記6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)の質量(δ)と前記有機塩化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、前記添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))が、0.5~100である、[]又は[]に記載の含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収率よく含フッ素環状化合物(1)から含フッ素ビニル化合物塩(4)を製造することができる新規の方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施形態の製造方法は、
下記一般式(1):
【化5】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される含フッ素環状化合物(1)と、
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)、及び/又は
下記一般式(3):
4PnX (3)
(式中、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~12であり、Pnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。)
で表される有機塩化合物(3)とを反応させることを特徴とする、
下記一般式(4):
MSO3CFXCF2OCF=CFY (4)
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、Mは、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニル化合物塩(4)の製造方法である。
【0013】
以下、化合物(1)、(2)、及び(3)、並びに化合物(1)から化合物(4)を製造する際の反応条件等の詳細について説明する。
【0014】
<含フッ素環状化合物(1)(化合物(1))>
含フッ素環状化合物(1)は、下記一般式(1):
【化6】
(式中、Xは、フッ素原子、塩素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)
で表される。
化合物(1)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
Xとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましく、同様の観点からフッ素原子がより好ましい。
Yとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子塩素原子が好ましく、同様の観点からフッ素原子がより好ましい。
XとYの組み合わせとしては、いずれもフッ素原子(X=F、Y=F)であることが、特に好ましい。
【0016】
化合物(1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、X=F、Y=Fである化合物(1)は、国際公開第2019/176425号に記載の方法により、製造することができる。また、化合物(1)は、例えば、Synquest Laboratories社から購入することもできる。
【0017】
<6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)(化合物(2))>
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)は、特に限定されないが、例示するならば、以下の一般式(5)~(7)で表される構造以下、「構造(5)~(7)」ともいう。)のいずれかの1つを含む化合物が挙げられる。
【化7】
前記構造(5)~(7)の中でも、化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、構造(5)であることが好ましい。
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)を具体的に例示するならば、1,2-ジメチルー1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、4-モルホリノピリジン、N,N-ジプロピルピリジン-4-アミン、N,N-ジブチルピリジン-4-アミン、4-(1-ピペリジニル)ピリジン、4-(4-メチルピペリジニル)ピリジン、2-フルオロ-N,N-ジメチルピリジン-4-アミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンがより好ましく、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンがさらに好ましい。
【0019】
<有機塩化合物(3)(化合物(3))>
有機塩化合物(3)は、下記一般式(3):
4PnX (3)
(式中、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、炭素数は1~12であり、Pnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子であり、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。)
で表される。
有機塩化合物(3)は、1種単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
化合物(3)のRは、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。
置換基としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトリル基(-CN)、エーテル基(-O-)、カーボネート基(-OCO2-)、エステル基(-CO2-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド基(-S-)、スルホキシド基(-SO-)、スルホン基(-SO2-)、及びウレタン基(-NHCO2-)等が挙げられる。
Rとしては、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、置換又は無置換のいずれでもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、無置換の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0021】
化合物(3)のRの炭素数は、1~12である。化合物(1)と化合物(2)との反応性が高まる傾向にあることから、Rの炭素数は、1以上であり、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、Rの炭素数は12以下であり、6以下がより好ましい。化合物(3)のRの炭素数は、4であることが特に好ましい。
【0022】
化合物(3)のPnは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、又はビスマス原子である。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、窒素原子、リン原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
【0023】
化合物(3)のXは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はOHである。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、フッ素原子、塩素原子、又はOHであることが好ましい。化合物(1)と化合物(3)との反応性が高まる傾向にあることから、フッ素原子、OHであることがより好ましい。
【0024】
化合物(3)は、具体的に例示するならば、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、
テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムアイオダイド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムアイオダイド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムアイオダイド、テトラデシルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムブロミド、テトラドデシルアンモニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、プロピルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、ペンチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘプチルトリフェニルホスホニウムブロミド、オクチルトリフェニルホスホニウムブロミド、デシルトリフェニルホスホニウムブロミド、ドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、シクロヘキシルメチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド、ペンタメチレンビス(トリフェニルホスホニウム)ブロミド等が挙げられる。
工業的な取扱い性により優れる傾向にあることや、入手が容易であり、化合物(4)を製造する方法の経済性に優れる傾向にあることから、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムアイオダイド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイドが好ましく、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドがより好ましい。化合物(1)と化合物(3)との反応性が高まる傾向にあることから、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドがさらに好ましく、テトラブチルアンモニウムフルオリドが特に好ましい。
【0025】
化合物(2)と化合物(3)は、単独でも、組み合わせて用いてもよい。化合物(4)の収率が高まる傾向にあることから、化合物(2)を単独で用いることが好ましい。
【0026】
<添加物>
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応において、化合物(2)及び/又は化合物(3)の種類によっては、化合物(2)及び/又は化合物(3)を溶解させることにより、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応を促進できることから、さらに添加物を利用することもできる。
添加物としては、例えば、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホ化合物、飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、及び水等が挙げられる。これらの中でも、化合物(2)及び/又は化合物(3)に高い溶解性を有する傾向があることから、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホ化合物が好ましく、エーテル化合物、ニトリル化合物がより好ましい。
添加物は、1種単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
添加物は、具体的に例示するならば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、及びアジポニトリル等のニトリル化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホラン等のスルホ化合物、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、及びビフェニル等の芳香族炭化水素化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタリン等のハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコール等のアルコール化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、及び酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物が挙げられる。
【0028】
化合物(2)、及び/又は化合物(3)に高い溶解性を有する傾向があることから、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホランが好ましい。
同様の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドがより好ましい。さらに好ましくは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリルである。特に好ましくは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリルである。
【0029】
含水量がより少ない添加物を用いることで、化合物(4)の収率がより高まる傾向にあることから、含水量が少ない添加物を用いることが好ましい。
含水量が少ない添加物は、購入することもできるし、添加物の含水量を減少させる方法を利用することもできる。添加物の含水量を減少させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、例えば、脱水剤を利用する方法、蒸留する方法などが挙げられる。
脱水剤としては、一般的に用いられる脱水剤であれば特に限定されないが、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、及びモレキュラーシーブなどが挙げられる。脱水剤を用いた場合、化合物(1)と化合物(2)との反応に影響がなければ脱水剤を含んだ添加物を利用してもよいし、ろ過などにより脱水剤を含まない添加物を利用してもよい。
【0030】
<化合物(1)の物質量(α)に対する、化合物(2)の物質量(β)と化合物(3)の物質量(γ)との合計の比率((β+γ)/α)>
化合物(1)の物質量(α)に対する、化合物(2)の物質量(β)と化合物(3)の物質量(γ)との合計の比率((β+γ)/α)は、化合物(4)の収率がより高まる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
【0031】
また、化合物(1)の物質量(α)に対する、化合物(2)の物質量(β)と化合物(3)の物質量(γ)との合計の比率((β+γ)/α)の上限は、特に限定されないが、化合物(2)及び/又は化合物(3)の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、(β+γ)/αが10以下であることが好ましく、同様の観点から、(β+γ)/αが7以下であることが好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
【0032】
<化合物(2)の質量(δ)と化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))>
化合物(2)の質量(δ)と化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))は、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)とが反応する範囲であれば特に限定さない。化合物(2)の質量(δ)と化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))は、化合物(2)及び/又は化合物(3)の種類によっては、化合物(2)及び/又は化合物(3)を溶解させることにより、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応が促進できることから、ζ/(δ+ε)が0.5以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましい。
【0033】
化合物(2)の質量(δ)と化合物(3)の質量(ε)との合計に対する、添加物の質量(ζ)の比率(ζ/(δ+ε))の上限は、特に限定されないが、添加物の使用量が低減され、化合物(4)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、ζ/(δ+ε)が100以下であることが好ましく、50以下であることが好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0034】
<化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応>
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応温度は、一般的に用いられる反応温度であれば特に限定されないが、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応性が高まる傾向にあることから、-20℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、20℃以上であることがさらに好ましい。
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応温度の上限は、特に限定されないが、化合物(1)、化合物(2)、及び/又は添加物の種類によっては、揮発を抑制できる傾向にあり、化合物(4)の収率がより高まる傾向にあること、また、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応の副反応を抑制できる傾向にあることから、100℃以下であることが好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0035】
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(4)の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。過剰な反応時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
【0036】
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、化合物(1)及び/又は添加剤の種類によっては、標準状態での蒸気圧が低いため、化合物(1)及び/又は添加剤を液化させ、再利用しない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。化合物(1)及び/又は添加剤を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0037】
化合物(1)と、化合物(2)、及び/又は化合物(3)との反応の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がよりに好ましい。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)とを添加する順序は特に限定されないが、化合物(1)と、化合物(2)及び/又は化合物(3)との反応は発熱反応であり、特に化合物(1)、(2)、(3)の使用量が多い場合には、副反応を抑制できる傾向にあることから、化合物(1)へ化合物(2)及び/又は化合物(3)を徐々に添加する方法、化合物(2)及び/又は化合物(3)へ化合物(1)を徐々に添加する方法等が好ましく、化合物(1)へ化合物(2)及び/又は化合物(3)を徐々に添加する方法がより好ましい。
【0039】
以上のように、本発明は、一般的な入手が容易であり、安定に取り扱うことのできる6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)及び/又は有機塩化合物(3)を用いることで、アルカリ金属アルコキシド及びシラノール化合物を用いずに、含フッ素環状化合物(1)から含フッ素ビニル化合物塩(4)を収率よく製造することができる。
【実施例
【0040】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例において使用された分析方法は、以下のとおりである。
【0042】
<核磁気共鳴分析(NMR):19F-NMRによる分子構造解析>
実施例及び比較例で得られた生成物について、19F-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:19
溶媒:重クロロホルム
基準物質:CFCl3(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(1H)
パルス幅:6.5μ秒
待ち時間:2秒
積算回数:16回
【0043】
実施例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
【0044】
(含フッ素環状化合物(1))
国際公開第2019/176425号に記載の方法に従い、下記一般式(8)で表される含フッ素環状化合物(8)を製造した。
【化8】
【0045】
(6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2))
・1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(Aldrich社製、純度≧99%。以下、「DBU」ともいう。)
・1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(Aldrich社製、純度≧98%。以下、「DBN」ともいう。)
・4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「DMAP」ともいう。)
・1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Aldrich社製、ReagentPlus。以下、「DABCO」ともいう。)
【0046】
(有機塩化合物(3))
・テトラブチルアンモニウムフルオリド・テトラヒドロフラン溶液(約1mol/L)(富士フィルム和光純薬株式会社製、有機合成用。以下、「TBAF-THF」ともいう。23質量%のテトラブチルアンモニウムフルオリドと、77質量%のテトラヒドロフランとを含む溶液である。)
【0047】
(添加物)
・4-メチルテトラヒドロピラン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「MTHP」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
・シクロペンチルメチルエーテル(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「CPME」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
・メチルtert-ブチルエーテル(東京化成工業株式会社製。以下、「MTBE」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
・テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬株式会社製、超脱水、安定剤不含。以下、「THF」ともいう。)
・2-メチルテトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「2MTHF」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
・1,2-ジメトキシエタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「DME」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
・アセトニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「ACN」ともいう。乾燥したモレキュラーシーブ4A 1/16(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、脱水し、モレキュラーシーブ4A 1/16を除去することにより調整した。)
【0048】
(その他)
・炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級)を用い、20質量%水溶液に調整した。)
・ベンゾトリフルオリド(東京化成工業株式会社製。以下、「BTF」ともいう。)
・トリエチルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「TEA」ともいう。)
・ジイソプロピルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「DIPA」ともいう。)
・t-ブチルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級。以下、「TBA」ともいう。)
【0049】
[実施例1]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.14g。DBU(0.56g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(9)で示される含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.89g、生成物質量:2.96mmol、生成率:83.0%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.8であった。
CF=CF2OCF2CF2SO3Na (9)
19F-NMR:δ(ppm)-84.67(2F)、-116.41(1F)、-118.20(2F)、-123.72(1F)、-134.78(1F)
【0050】
[実施例2]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBN(2.28g)、MTHP(7.90g)を入れ、攪拌し、DBN溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBN溶液(2.04g。DBN(0.46g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.87g、生成物質量:2.90mmol、生成率:81.2%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は3.5であった。
【0051】
[実施例3]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DMAP(2.25g)、MTHP(7.90g)を入れ、攪拌し、DBN溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDMAP溶液(2.03g。DMAP(0.45g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.77g、生成物質量:2.57mmol、生成率:72.0%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は3.5であった。
【0052】
[実施例4]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DABCO(2.06g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、DABCO溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDABCO溶液(1.99g。DABCO(0.41g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.75g、生成物質量:2.50mmol、生成率:70.1%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は3.8であった。
【0053】
[実施例5]
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。TBAF-THF(4.24g。23質量%のテトラブチルアンモニウムフルオリド(0.96g、3.68mmol)と、77質量%のテトラヒドロフラン(3.27g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.70g、生成物質量:2.33mmol、生成率:65.3%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は3.4であった。
【0054】
[実施例6]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(13.6g)、MTHP(38.4g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(10.4g。DBU(2.72g、17.9mmol)とMTHP(7.68g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.88g、生成物質量:2.93mmol、生成率:82.2%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは5.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.8であった。
【0055】
[実施例7]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、MTHP(27.2g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(5.99g。DBU(0.56g、3.68mmol)とMTHP(5.43g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(5g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.89g、生成物質量:2.97mmol、生成率:83.2%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は9.7であった。
【0056】
[実施例8]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を60℃に設定した。前記のDBU溶液(2.14g。DABCO(0.56g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応液に、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.86g、生成物質量:2.86mmol、生成率:80.1%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.8であった。
【0057】
[実施例9]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、CPME(7.91g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.14g。DBU(0.56g、3.68mmol)とCPME(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.87g、生成物質量:2.90mmol、生成率:81.1%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.8であった。
【0058】
[実施例10]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、MTBE(6.85g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(1.93g。DBU(0.56g、3.68mmol)とMTBE(1.37g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.86g、生成物質量:2.87mmol、生成率:80.3%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.4であった。
【0059】
[実施例11]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、THF(8.17g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.19g。DBU(0.56g、3.68mmol)とTHF(1.63g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.86g、生成物質量:2.88mmol、生成率:80.6%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.9であった。
【0060】
[実施例12]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、2MTHF(7.85g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.13g。DBU(0.56g、3.68mmol)と2MTHF(1.57g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.86g、生成物質量:2.87mmol、生成率:80.4%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.8であった。
【0061】
[実施例13]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、DME(8.00g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.16g。DBU(0.56g、3.68mmol)とDME(1.60g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.84g、生成物質量:2.80mmol、生成率:78.3%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.9であった。
【0062】
[実施例14]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DBU(2.80g)、ACN(7.23g)を入れ、攪拌し、DBU溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDBU溶液(2.00g。DBU(0.56g、3.68mmol)とACN(1.45g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)が生成していた(生成量:0.81g、生成物質量:2.69mmol、生成率:75.4%)。なお、分析においては、BTFの質量、BTFのCF3及び含フッ素ビニル化合物塩(9)のCF3の積分値より、含フッ素ビニル化合物塩(9)の生成量等を算出した。
また、本実施例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は2.6であった。
【0063】
[比較例1]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、TEA(1.86g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、TEA溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のTEA溶液(1.95g。TEA(0.37g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)は検出されなかった。
また、本比較例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は4.3であった。
【0064】
[比較例2]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DIPA(1.86g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、TEA溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDIPA溶液(1.95g。DIPA(0.37g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)は検出されなかった。
また、本比較例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は4.3であった。
【0065】
[比較例3]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、TBA(1.34g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、TEA溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のTBA溶液(1.85g。TBA(0.27g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)は検出されなかった。
また、本比較例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は5.9であった。
【0066】
[比較例4]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DIPA(9.03g)、MTHP(38.4g)を入れ、攪拌し、DIPA溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を20℃に設定した。前記のDIPA溶液(9.48g。DIPA(1.81g、17.9mmol)とMTHP(7.67g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)は検出されなかった。
また、本比較例では、(β+γ)/αは5.0であり、(ζ/(δ+ε))は4.2であった。
【0067】
[比較例5]
窒素雰囲気としたフラスコに、攪拌子、DIPA(1.86g)、MTHP(7.91g)を入れ、攪拌し、TEA溶液を調整した。
窒素雰囲気とした試験管(Radley Discovery Technologies社製、RP98059、RP98062)に、攪拌子と含フッ素環状化合物(8)(1.00g、3.57mmol)を入れ、加熱冷却攪拌装置(東京理化器械株式会社製、PPM-5512型、冷却する際には外部より冷却水を循環させた)に設置し、加熱冷却攪拌装置を60℃に設定した。前記のDIPA溶液(1.95g。DIPA(0.37g、3.68mmol)とMTHP(1.58g)とを含む。)を10分かけて滴下し、さらに1時間攪拌した後、BTF(0.3g)、MTHP(8g)、及び炭酸ナトリウム水溶液(4g)を加え、攪拌し、静置した。静置により得られたMTHP相を19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニル化合物塩(9)は検出されなかった。
また、本比較例では、(β+γ)/αは1.0であり、(ζ/(δ+ε))は4.3であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、一般的な入手が容易であり、安定に取り扱うことのできる6員環構造を有する窒素含有環状化合物(2)及び/又は有機塩化合物(3)を利用することで、含フッ素環状化合物(1)から含フッ素ビニル化合物塩(4)を収率よく製造することができるため、各種フッ素含有化合物、イオン交換樹脂、イオン交換膜、食塩電解膜、燃料電池膜、レドックスフロー電池用膜、水電解用膜等の原料の製造において好適に用いることができる。