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特許7584993楽音生成装置及び楽音生成装置の制御方法
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  • 特許-楽音生成装置及び楽音生成装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】楽音生成装置及び楽音生成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 7/02 20060101AFI20241111BHJP
   G06F 11/10 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G10H7/02
G06F11/10 604
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020180836
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071726
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲也
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197550(JP,A)
【文献】特開2016-181090(JP,A)
【文献】特開2010-224077(JP,A)
【文献】特開2009-290686(JP,A)
【文献】特開2010-009548(JP,A)
【文献】特開平09-160728(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G06F 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽音波形データを記憶する不揮発性記憶デバイスと、
揮発性記憶デバイスと、
電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御し、楽音再生が指示された場合、前記揮発性記憶デバイスから楽音波形データを読み出し、前記読み出した楽音波形データのエラーが検出され、前記エラーが訂正可能な場合は、前記エラーが検出された楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、前記エラーが訂正できない場合は、前記エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御する制御手段と
を有することを特徴とする楽音生成装置。
【請求項2】
前記不揮発性記憶デバイスは、楽音波形データと前記楽音波形データに対応するエラー訂正符号を記憶し、
前記制御手段は、電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データと前記楽音波形データに対応するエラー訂正符号を転送するように制御し、楽音再生が指示された場合、前記エラー訂正符号を用いて前記読み出した楽音波形データにエラーがあるか否かを検出し、前記読み出した楽音波形データにエラーがある場合、前記エラー訂正符号を用いて前記エラーがある楽音波形データを訂正することを特徴とする請求項1に記載の楽音生成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスに記憶されている楽音波形データを基に前記楽音波形データに対応するエラー訂正符号を生成し、前記楽音波形データと前記楽音波形データに対応するエラー訂正符号を前記揮発性記憶デバイスに書き込み、楽音再生が指示された場合、前記エラー訂正符号を用いて前記読み出した楽音波形データにエラーがあるか否かを検出し、前記読み出した楽音波形データにエラーがある場合、前記エラー訂正符号を用いて前記エラーがある楽音波形データを訂正することを特徴とする請求項1に記載の楽音生成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数以下のビット数のエラーがある場合、前記エラーがある楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーがある場合、前記エラーがある楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の楽音生成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数以下のビット数のエラーがある場合、前記エラーがある楽音波形データを訂正した楽音波形データの再生処理を行い、前記読み出した楽音波形データにエラーがない場合、前記読み出した楽音波形データの再生処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の楽音生成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーがある場合、前記不揮発性記憶デバイスの最小転送ワード数と前記揮発性記憶デバイスの最小転送ワード数との最小公倍数のワード数単位で、前記エラーがある楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御することを特徴とする請求項4又は5に記載の楽音生成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、電源起動時、第1のワード数単位で、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御し、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーがある場合、前記第1のワード数より少ない第2のワード数単位で、前記正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御することを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の楽音生成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、電源起動時、第1のワード数単位で、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御し、前記読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーがある場合、前記第1のワード数単位で、前記正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御することを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の楽音生成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記読み出した楽音波形データのエラーが検出された場合、前記エラーが検出された楽音波形データのアドレスを記録し、前記エラーが検出された楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、又は、前記エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の楽音生成装置。
【請求項10】
楽音波形データを記憶する不揮発性記憶デバイスと、
揮発性記憶デバイスとを有する楽音生成装置の制御方法であって、
電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御するステップと、
楽音再生が指示された場合、前記揮発性記憶デバイスから楽音波形データを読み出すステップと、
前記読み出した楽音波形データのエラーが検出され、前記エラーが訂正可能な場合は、前記エラーが検出された楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、前記エラーが訂正できない場合は、前記エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御するステップと
を有することを特徴とする楽音生成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音生成装置及び楽音生成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、NAND型フラッシュメモリに波形データを格納しておき、そこから波形データをバッファ経由で波形メモリに読出しつつ再生を行う楽音生成装置が記載されている。CPUへの割り込み無しで、NAND型フラッシュメモリに格納した波形データのページ単位での読出しを行い、波形メモリのバッファにサンプル補充ができるようにする。一連の波形データを、高速ページアクセス可能なNAND型フラッシュメモリの連続するページに記憶する。最初に読出すべきページ番号を設定し、そのページはバッファに読込んでおく。その読出しが終了する前に、次に読出すべきページをバッファに読出す。以後は、1ページ分の読出しを終了するごとにページ番号を+1し、該ページ番号のサンプルをバッファに読込みつつ再生を続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-224077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソフトエラーは、宇宙線粒子の電離作用によって揮発性記憶デバイスのデータが書き換わってしまうエラーである。エラー訂正符号(ECC)は、データエラーを訂正するための符号である。しかし、ECCのエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーが発生すると、データを訂正することができない。
【0005】
電源起動時に、不揮発性記憶デバイスから揮発性記憶デバイスにすべての楽音波形データを転送する楽音生成装置では、ソフトエラーにより、ECCのエラー訂正可能ビット数より多いビット数のエラーが発生すると、電源を起動し直して、再び、不揮発性記憶デバイスから揮発性記憶デバイスにすべての楽音波形データを転送しなければ、適正な楽音波形データを再生することができない。
【0006】
本発明の目的は、ソフトエラーが発生した場合、電源を起動し直さなくても、正常な楽音波形データを再生することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の楽音生成装置は、楽音波形データを記憶する不揮発性記憶デバイスと、揮発性記憶デバイスと、電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御し、楽音再生が指示された場合、前記揮発性記憶デバイスから楽音波形データを読み出し、前記読み出した楽音波形データのエラーが検出され、前記エラーが訂正可能な場合は、前記エラーが検出された楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、前記エラーが訂正できない場合は、前記エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御する制御手段とを有する。
【0008】
本発明の楽音生成装置の制御方法は、楽音波形データを記憶する不揮発性記憶デバイスと、揮発性記憶デバイスとを有する楽音生成装置の制御方法であって、電源起動時、前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに楽音波形データを転送するように制御するステップと、楽音再生が指示された場合、前記揮発性記憶デバイスから楽音波形データを読み出すステップと、前記読み出した楽音波形データのエラーが検出され、前記エラーが訂正可能な場合は、前記エラーが検出された楽音波形データを訂正した楽音波形データを前記揮発性記憶デバイスに上書きし、前記エラーが訂正できない場合は、前記エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを前記不揮発性記憶デバイスから前記揮発性記憶デバイスに転送するように制御するステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ソフトエラーが発生した場合、電源を起動し直さなくても、正常な楽音波形データを再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態による楽音生成装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態による楽音生成装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態による楽音生成装置100の構成例を示すブロック図である。楽音生成装置100は、CPU101と、音源LSI102と、不揮発性記憶デバイス103と、揮発性記憶デバイス104と、鍵盤105と、ディジタル/アナログコンバータ106と、オーディオシステム107と、操作子108と、表示器109と、プログラムROM110と、ワークRAM111と、バス112を有する。楽音生成装置100は、例えば、電子楽器である。
【0012】
CPU101は、中央処理ユニットである。プログラムROM(リードオンリーメモリ)102は、プログラムを記憶する。ワークRAM(ランダムアクセスメモリ)103は、CPU101のワーク領域として機能する。CPU101は、プログラムROM110に記憶されているプログラムをワークRAM111に展開し、ワークRAM111に展開されたプログラムを実行することにより、音源LSI102を制御する。音源LSI102は、制御部の一種である。
【0013】
鍵盤105は、複数の白鍵と複数の黒鍵を有し、演奏者の押鍵操作によりノートオンメッセージを音源LSI102に出力する。ノートオンメッセージは、楽音再生指示信号であり、ノートナンバとベロシティを有する。ノートナンバは、音高を示す。ベロシティは、押鍵速度に基づく音の強さを示す。
【0014】
操作子108は、電源スイッチと、音量調整ボタンと、音色選択ボタン等を有する。表示器109は、楽音生成装置100の設定パラメータ等を表示する。
【0015】
不揮発性記憶デバイス103は、例えば、eMMC(embedded Multi Media Card)等のフラッシュメモリである。不揮発性記憶デバイス103は、楽音波形データとその楽音波形データに対応するエラー訂正符号(以下、ECCという)を記憶する。64ビット(1ワード)の楽音波形データ毎に、8ビットのECCが設けられる。8ビットのECCは、64ビットの楽音波形データに対して、エラー訂正可能ビット数以下のエラーを訂正することができる。エラー訂正可能ビット数は、例えば、1ビットである。
【0016】
なお、不揮発性記憶デバイス103は、楽音波形データのみを記憶し、音源LSI102が不揮発性記憶デバイス103に記憶されている楽音波形データを基にECCを生成してもよい。
【0017】
揮発性記憶デバイス104は、例えば、DDR SDRAM(同期式動的ランダムアクセスメモリ)であり、DRAM(動的ランダムアクセスメモリ)の一種である。なお、揮発性記憶デバイス104は、SRAM(静的ランダムアクセスメモリ)でもよい。音源LSI102は、揮発性記憶デバイス104に対して、2以上であるバースト長のワード数の楽音波形データとECCをバースト転送可能である。すなわち、音源LSI102は、揮発性記憶デバイス104に対して、1つのアドレス情報を基に、バースト長のワード数の楽音波形データとECCを連続して高速に転送する。バースト長は、例えば、4ワード又は8ワードである。
【0018】
操作子108の電源スイッチのオンによる電源起動時、音源LSI102は、不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に楽音波形データとECCを転送するように制御する。
【0019】
音源LSI102は、鍵盤105からノートオンメッセージを入力すると、揮発性記憶デバイス104から楽音波形データとECCを読み出す。そして、音源LSI102は、ECCを基に、楽音波形データにエラーがあるか否かを検出する。音源LSI102は、楽音波形データにエラーがある場合には、ECCを基に、エラーが検出された楽音波形データを訂正し、訂正した楽音波形データをディジタル/アナログコンバータ106に出力する。また、音源LSI102は、楽音波形データにエラーがない場合には、読み出した楽音波形データをディジタル/アナログコンバータ106に出力する。
【0020】
ディジタル/アナログコンバータ106は、音源LSI102から入力したディジタルの楽音波形データをアナログの楽音波形信号に変換し、アナログの楽音波形信号をオーディオシステム107に出力する。
【0021】
オーディオシステム107は、アンプとスピーカを有し、アンプによりアナログの楽音波形信号を増幅し、その増幅した楽音波形信号をスピーカにより発音させる。
【0022】
図2は、楽音生成装置100の制御方法を示すフローチャートである。ステップS201では、音源LSI102は、操作子108の電源スイッチのオンによる電源起動時、不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に楽音波形データとその楽音波形データに対応するECCを転送するように制御する。揮発性記憶デバイス104は、楽音波形データとECCを記憶する。
【0023】
なお、不揮発性記憶デバイス103が楽音波形データのみを記憶する場合、音源LSI102は、不揮発性記憶デバイス103に記憶されている楽音波形データを基に、その楽音波形データに対応するECCを生成し、楽音波形データとその楽音波形データに対応するECCを揮発性記憶デバイス104に書き込む。
【0024】
次に、ステップS202では、音源LSI102は、鍵盤105の押鍵操作に基づく楽音再生指示がされたか否かを判定する。音源LSI102は、楽音再生指示がされるまで待機し、楽音再生指示がされた場合には、ステップS203に進む。
【0025】
次に、ステップS203では、音源LSI102は、揮発性記憶デバイス104から楽音波形データとその楽音波形データに対応するECCを読み出す。
【0026】
次に、ステップS204では、音源LSI102は、その読み出したECCを用いて、その読み出した楽音波形データにエラーがあるか否かを検出する。揮発性記憶デバイス104に記憶されている楽音波形データは、ソフトエラーが発生する可能性がある。例えば、音源LSI102は、8ビットのECCを用いて、64ビットの楽音波形データに対して2ビット以下のエラーがあるか否かを検出することができる。楽音波形データに1ビットエラーがある場合、音源LSI102は、8ビットのECCを用いて、64ビットの楽音波形データの1ビットエラーを訂正することができる。楽音波形データに2ビットエラーがある場合、音源LSI102は、8ビットのECCを用いて、64ビットの楽音波形データの1ビットエラーを訂正することができない。
【0027】
音源LSI102は、その読み出した楽音波形データにエラーがない場合には、ステップS2006に進む。ステップS2006では、音源LSI102は、、その読み出した楽音波形データの再生処理を行う。具体的には、音源LSI102は、その読み出した楽音波形データをディジタル/アナログコンバータ106に出力する。ディジタル/アナログコンバータ106は、音源LSI102から入力したディジタルの楽音波形データをアナログの楽音波形信号に変換し、アナログの楽音波形信号をオーディオシステム107に出力する。オーディオシステム107は、アンプによりアナログの楽音波形信号を増幅し、その増幅した楽音波形信号をスピーカにより発音させる。その後、音源LSI102は、ステップS202に戻る。
【0028】
また、ステップS204において、音源LSI102は、その読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数(1ビット)以下のビット数のエラーがある場合には、ステップS205に進む。また、音源LSI102は、その読み出した楽音波形データにエラー訂正可能ビット数(1ビット)より多いビット数のエラーがある場合には、ステップS209に進む。
【0029】
ステップS205では、音源LSI102は、その読み出したECCを用いて、そのエラーがある楽音波形データを訂正し、ステップS206及びS207に進む。
【0030】
ステップS206では、その訂正した楽音波形データの再生処理を行う。具体的には、音源LSI102は、その訂正した楽音波形データをディジタル/アナログコンバータ106に出力する。ディジタル/アナログコンバータ106は、音源LSI102から入力したディジタルの楽音波形データをアナログの楽音波形信号に変換し、アナログの楽音波形信号をオーディオシステム107に出力する。オーディオシステム107は、アンプによりアナログの楽音波形信号を増幅し、その増幅した楽音波形信号をスピーカにより発音させる。その後、音源LSI102は、ステップS202に戻る。
【0031】
ステップS207では、音源LSI102は、そのエラーが検出された楽音波形データの揮発性記憶デバイス104上のアドレスを記録し、ステップS208に進む。
【0032】
ステップS208では、音源LSI102は、その記録された揮発性記憶デバイス104上のアドレスを基に、上記の訂正した楽音波形データとその楽音波形データに対応するECCを揮発性記憶デバイス104に上書きし、ステップS202に戻る。
【0033】
仮に、音源LSI102がステップS207及びS208の処理を行わない場合、揮発性記憶デバイス104に記憶されている64ビットの楽音波形データは、訂正されないので、1ビットエラーのままである。そのまま放置すれば、同じ64ビットの楽音波形データ内の他のビットのエラーが発生し、合計2ビットのエラーが発生するかもしれない。そうなると、音源LSI102は、楽音波形データの訂正が不可能となり、致命的なノイズを発生させかねない。
【0034】
そこで、音源LSI102は、同じ64ビットの楽音波形データ内のビットエラーの蓄積を防止するために、1ビットエラーを検出すると、ステップS207で、そのエラーが発生したアドレスを記録し、ステップS208で、楽音波形データのエラーを訂正し、訂正した楽音波形データを揮発性記憶デバイス104に上書きする。なお、ステップS207で、エラーのアドレスを記録するのは、音源LSI102が、立て続けにエラーを検出した場合に、それらのエラーのアドレスを一時記憶して貯めておき、そのアドレスを基に、順番に、訂正した楽音波形データを上書きし、処理が追い付かない事態を回避するためである。
【0035】
ステップS209では、音源LSI102は、代替の楽音波形データを生成し、ステップS206及びS210に進む。代替の楽音波形データは、例えば、以下の第1~第4の方法により生成可能である。第1の方法では、音源LSI102は、ステップS203で読み出した2ビットエラーの楽音波形データをそのまま代替の楽音波形データとして生成する。第2の方法では、音源LSI102は、前回のステップS206で再生処理した楽音波形データを今回の代替の楽音波形データとして生成する。第3の方法では、音源LSI102は、前回のステップS206で再生処理した楽音波形データと、次回のステップS206で再生処理する予定の楽音波形データとの補間データを、今回の代替の楽音波形データとして生成する。第4の方法では、音源LSI102は、前回以前のステップS206で再生処理した複数の楽音波形データを基に予測演算した楽音波形データを今回の代替の楽音波形データとして生成する。
【0036】
ステップS206では、その代替の楽音波形データの再生処理を行う。具体的には、音源LSI102は、その代替の楽音波形データをディジタル/アナログコンバータ106に出力する。ディジタル/アナログコンバータ106は、音源LSI102から入力したディジタルの楽音波形データをアナログの楽音波形信号に変換し、アナログの楽音波形信号をオーディオシステム107に出力する。オーディオシステム107は、アンプによりアナログの楽音波形信号を増幅し、その増幅した楽音波形信号をスピーカにより発音させる。その後、音源LSI102は、ステップS202に戻る。
【0037】
ステップS210では、音源LSI102は、そのエラーが検出された楽音波形データの揮発性記憶デバイス104上のアドレスを記録し、ステップS211に進む。
【0038】
ステップS211では、音源LSI102は、その記録された揮発性記憶デバイス104上のアドレスを基に、エラーが検出された楽音波形データに対応する正常な楽音波形データとその楽音波形データに対応するECCを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御し、ステップS202に戻る。揮発性記憶デバイス104は、エラーがない楽音波形データとECCを記憶する。
【0039】
なお、不揮発性記憶デバイス103が楽音波形データのみを記憶する場合、音源LSI102は、不揮発性記憶デバイス103に記憶されている楽音波形データを基にECCを生成し、楽音波形データとECCを揮発性記憶デバイス104に書き込む。
【0040】
不揮発性記憶デバイス103又は揮発性記憶デバイス104が複数ワード数単位でバースト転送するタイプの場合、エラーがある1ワードの楽音データに対応する正常な1ワードの楽音波形データのみを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送することは難しい。
【0041】
そこで、ステップS211では、音源LSI102は、不揮発性記憶デバイス103の最小転送ワード数と揮発性記憶デバイス104の最小転送ワード数との最小公倍数のワード数単位で、エラーがある楽音波形データに対応する正常な楽音波形データを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御する。例えば、不揮発性記憶デバイス103が3ワード単位で出力し、揮発性記憶デバイス104が2ワード単位で入力する場合、3ワードと2ワードの最小公倍数は、6ワードである。音源LSI102は、6ワード単位で、正常な楽音波形データを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御する。
【0042】
ステップS201では、音源LSI102は、電源起動時、大量の楽音波形データを逸早く転送するため、比較的多い第1のワード数単位で、不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に楽音波形データとECCを転送するように制御する。これに対し、ステップS211では、音源LSI102は、少量の楽音波形データを高速に転送するため、第1のワード数より少ない第2のワード数単位で、正常な楽音波形データを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御する。
【0043】
なお、ステップS211では、音源LSI102は、第1のワード数単位で、正常な楽音波形データを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御してもよい。ステップS201及びS211では、音源LSI102は、同じ第1のワード数単位で転送することにより、転送方法を統一し、転送制御を単純化し、コストダウンを図ることができる。
【0044】
また、ステップS208では、音源LSI102は、ステップS211と同様の処理を行ってもよい。
【0045】
また、音源LSI102は、ステップS208及びS211の処理を、ステップS206の再生処理を妨げないタイミングで行う。これにより、再生のリアルタイム処理が可能になる。
【0046】
以上のように、揮発性記憶デバイス104に記憶されている楽音波形データは、ソフトエラーが発生する可能性がある。音源LSI102は、揮発性記憶デバイス104に記憶されている楽音波形データに1ビットのエラーが検出された場合には、その楽音波形データを訂正し、訂正した楽音波形データを揮発性記憶デバイス104に上書きするため、楽音再生は常に正しく行われる。また、音源LSI102は、揮発性記憶デバイス104に記憶されている楽音波形データに2ビットのエラーが検出された場合には、エラーを訂正できないが、電源を入れ直さなくても、エラーの楽音波形データを不揮発性記憶デバイス103から揮発性記憶デバイス104に転送するように制御するので、その後、正常に楽音再生処理を行うことができる。
【0047】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 楽音生成装置
101 CPU
102 音源LSI
103 不揮発性記憶デバイス
104 揮発性記憶デバイス
105 鍵盤
106 ディジタル/アナログコンバータ
107 オーディオシステム
108 操作子
109 表示器
110 プログラムROM
111 ワークRAM
112 バス
図1
図2