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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】活性酸素供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20241111BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20241111BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61L2/20
H05H1/24
A61L2/20 100
C01B13/02 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020181668
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072305
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小熊 徹
(72)【発明者】
【氏名】古川 匠
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅基
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-237733(JP,A)
【文献】特開2003-209108(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032765(WO,A1)
【文献】特表2017-527521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
H05H 1/24
C01B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され
前記筐体の開口部の開口面を、前記開口面と垂直の方向から見た場合、前記遮光板の少なくとも一部が前記開口部を形成する前記筐体と重なるように配置することを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項2】
前記誘起流は前記筐体の開口部に向けて流れていることを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項3】
前記複数のプラズマ発生装置は、前記筐体の内部において開口部の端部が存在する面に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の活性酸素供給装置。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され、
前記遮光板と被処理物との距離は、前記プラズマ発生装置と前記被処理物との距離よりも長いことを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され、
前記複数のプラズマ発生装置は、前記筐体の内部の前記開口部の端部に沿って設けられ、前記開口部を挟んで対向するように設けられることを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記筐体の開口部の開口面に垂直な方向に第1の面と第2の面を備え、前記筐体の開口部の開口面に平行な方向に互いに対向していることを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項7】
前記筐体の開口部の開口面に平行な方向における前記第1の面と前記第2の面の距離は、12cm以下であることを特徴とする請求項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項8】
前記筐体の開口部の形状は矩形であり、
前記複数のプラズマ発生装置は少なくとも第1のプラズマ発生装置と第2のプラズマ発生装置を含み、前記第1のプラズマ発生装置は前記筐体の開口部の第1の長辺の端部に沿って設けられ、前記第2のプラズマ発生装置は前記筐体の開口部の第2の長辺の端部に沿って設けられ、前記第1のプラズマ発生装置と前記第2のプラズマ発生装置は、前記開口部を挟んで対向していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項9】
前記筐体の開口部の形状は円形であり、
前記複数のプラズマ発生装置は少なくとも第1のプラズマ発生装置と第2のプラズマ発生装置を含み、前記第1のプラズマ発生装置と前記第2のプラズマ発生装置は、前記開口部の端部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
閉じた位置と開いた位置とが切り替わるシャッタと、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され、
前記シャッタが閉じた位置にある場合、前記開口部が覆われる状態となり、前記シャッタが開いた位置にある場合、前記開口部が露出する状態となることを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項11】
前記シャッタが開いた位置にある場合、前記複数のプラズマ発生装置が駆動することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項12】
前記シャッタが開いた位置となり前記複数のプラズマ発生装置が駆動してから、所定の時間が経過することにより、前記シャッタが閉じた位置となり前記複数のプラズマ発生装置の駆動が停止することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項13】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
前記開口部と前記筐体の外部において活性酸素が供給される被処理物との距離を検知する近接検知手段と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され、
前記近接検知手段は、前記開口部と前記被処理物との距離が所定の距離よりも短くなることにより、前記複数のプラズマ発生装置を駆動させることを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項14】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
前記開口部と人体との距離を検知する人体検知手段と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給され、
前記人体検知手段は、前記開口部と前記人体との距離が所定の距離よりも短くなることにより、前記複数のプラズマ発生装置の駆動を停止させることを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項15】
前記筐体において前記紫外光を遮断する材質であり、前記紫外光光源が駆動していることを視認可能である窓部を有することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項16】
前記筐体において前記紫外光光源により前記紫外光が照射されていることを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素供給装置。
【請求項17】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
前記活性酸素供給装置の加速度を検知する加速度検知手段と
前記加速度検知手段による検知結果に応じて、前記活性酸素供給装置が所定の速度の範囲内で動かされているか否かを判定し、判定結果を報知する速度報知手段と、を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給されることを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項18】
請求項1乃至1のいずれか一項に記載の前記活性酸素供給装置を移動させる第1の移動手段を有し、
前記第1の移動手段により、前記開口部と前記筐体の外部において活性酸素が供給される被処理物の表面とが平行となる状態で、前記被処理物の表面に沿って前記活性酸素供給装置を移動させることにより前記被処理物の表面に活性酸素を供給することを特徴とする活性酸素供給処理装置。
【請求項19】
前記筐体の外部において活性酸素が供給される被処理物の位置を、請求項1乃至1のいずれか一項に記載の前記活性酸素供給装置に対して移動させる第2の移動手段を有し、
前記第2の移動手段により、前記開口部と前記被処理物の表面とが平行となる状態で、前記活性酸素供給装置の前記開口部に沿って前記被処理物を移動させることにより前記被処理物の表面に活性酸素を供給することを特徴とする活性酸素供給処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品等の除菌を行う手段として、紫外線、及び、オゾンが知られている。従来の方法では、紫外線による除菌を行う場合、被処理物のうち紫外線が照射される部分しか除菌されないという課題があった。特許文献1は、オゾン供給装置と紫外線発生ランプと撹拌装置とを有する除菌装置を用いて、紫外線発生ランプにより紫外線をオゾンに照射することによって活性酸素を生成する。生成した活性酸素を撹拌して被処理物の紫外線が照射されない影の部分も除菌する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-25865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る除菌装置においては、除菌装置内部に被処理物を配置せねばならず、除菌装置が大型化してしまう。
【0005】
本出願に係る発明は、活性酸素を供給する除菌装置が被処理物の大きさによって大型化してしまうことを抑制し、被処理物を除菌することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0007】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、オゾンを含む誘起流を発生させる複数のプラズマ発生装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記オゾンを含む誘起流に紫外光を照射する紫外光光源と、
前記筐体の内部に設けられ、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に照射される前記紫外光を遮る遮光板と、
を有し、
前記紫外光光源によって前記オゾンを含む誘起流に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、前記筐体の開口部から前記筐体の外部に供給されることを特徴とする活性酸素供給装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、活性酸素を供給する除菌装置の大型化を抑制し、被処理物を除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る活性酸素供給装置101の断面図。
図2】(a)実施例1に係る活性酸素供給装置101の透視図。(b)実施例1に係る活性酸素供給装置101の投影図。
図3】プラズマ発生装置103の構成の一例を示す図。
図4】実施例1に係る活性酸素供給装置101の使用形態の一例を示す図。
図5】実施例1に係る活性酸素供給装置101の変形例を示す断面図。
図6】実施例2に係る活性酸素供給装置101において、シャッタ120を設けた構成の一例を示す断面図。
図7】実施例3に係る活性酸素供給装置101において、開口部107の近傍に近接センサ130および人感センサ131を設けた構成の一例を示す斜視図。
図8】実施例4に係る活性酸素供給装置101において、筐体110の一部に透明な窓部材140を設けた構成の一例を示す斜視図。
図9】実施例5に係る活性酸素供給装置101において、加速度センサ150とインジケータ151を設けられた構成の一例を示す斜視図。
図10】実施例6に係る活性酸素供給装置161において、筐体160が円筒形となっている構成の一例を示す斜視図。
図11】実施例7に係る処理装置170において、活性酸素供給装置171と、被処理物104との位置を相対的に移動させる移動手段172と、を設けた構成の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を、具体的に例示する。ただし、この形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、本発明が適用される部材の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、本発明の範囲を以下の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
また、本発明において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0012】
さらに、以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中に同一の番号を付し、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0013】
図1図5は本発明の実施例1に係る活性酸素供給装置101の構成を示す図である。図1は活性酸素供給装置101の断面図である。図2(a)は活性酸素供給装置101の透視図であり、図2(b)は活性酸素供給装置101の投影図である。図3はプラズマ発生装置103の構成の一例を示す図である。図4は活性酸素供給装置101の使用形態の一例を示す図である。図5は実施例1に係る活性酸素供給装置101の変形例を示す図である。
【0014】
<全体の構成>
図1および図2に示すように、本実施例の活性酸素供給装置101は、筐体110と、筐体110の内部に設けられた紫外光光源102、プラズマ発生装置103、遮光板108、および、不図示の電源回路、基盤等から構成される。また、本実施例の活性酸素供給装置101は、長手方向と短手方向と、を有する筒状の装置である。
【0015】
筐体110には、図1および図2に示すように、開口部107がある。開口部107は、図2に示すように長手方向と短手方向と、を有する。本実施例では、開口部107の形状は例えば矩形であっても良い。
【0016】
また、筐体110は、図2に示すように、開口部107の開口面に垂直な方向に設けられ、開口部107の開口面に平行な方向に互いに対向している第1の面と第2の面を備える。このとき筐体110は、開口部107の開口面に平行な方向における第1の面と第2の面の間の距離であり、且つ、紫外光光源102の軸方向に対して直交する方向の距離が、12cm以下となる部分を有している。この時の第1の面と第2の面は、使用者によって把持される把持部として機能する。なお、この時の距離を12cm以下としたのは、使用者によって把持されやすい長さとするためである。さらに、本実施例において、第1の面と第2の面は、図2に示すように平面であるとしたが、第1の面と第2の面の形状は必ずしも平面でなくても良い。例えば、曲面や凸凹面であっても良い。また、第1の面と第2の面のうち、使用者によって把持される領域の素材は、筐体110を形成する素材と異なっても良く、例えばゴム等の素材を用いても良い。
【0017】
筐体110は、図1に示すように、第1の面と第2の面を連結する面であり開口部107の開口面に対向する連結面を有する。本実施例において、連結面は、図1に示すように平面であるとしたが、連結面の形状は必ずしも平面でなくても良い。例えば、曲面や凸凹面であっても良い。
【0018】
なお、本実施例において、活性酸素供給装置101は、被処理物104の除菌を行う。
【0019】
本実施例の複数のプラズマ発生装置103(プラズマアクチュエータとも称する)は、図2(a)、図2(b)に示すように、紫外光光源102と平行に並んでいる。また、プラズマ発生装置103は、筐体110の内部のうち開口部107の両端に、開口部107に沿って配置されている。本実施例では、筐体110の開口部107の一方の端部に沿ってプラズマ発生装置103-1~103-4が配置されており、筐体110の開口部107を挟んだ他方の端部に沿ってプラズマ発生装置103-5~103-8が配置されている。このとき、筐体110の開口部107の一方の端部に沿って設けられているプラズマ発生装置103を第1のプラズマ発生装置、筐体110の開口部107の他方の端部に沿って設けられているプラズマ発生装置103を第2のプラズマ発生装置とも称する。また、第1のプラズマ発生装置と第2のプラズマ発生装置の配置の順番は逆であっても良い。さらに、筐体110の開口部107の一方の端部を第1の長辺の端部、筐体110の開口部107の他方の端部を第2の長辺の端部とも称する。第1の長辺の端部と第2の長辺の端部の配置の順番は逆であっても良い。プラズマ発生装置103-1~103-4は電気的に直列に接続されている。同様に、プラズマ発生装置103-5~103-8は電気的に直列に接続されている。また、開口部107と紫外光光源102とプラズマ発生装置103に囲まれた位置に、筐体110とは別体である遮光板108が設けられている。遮光板108は、紫外光光源102によって照射される紫外光を遮光する。なお、遮光板108は筐体110と一体となっていても良い。
【0020】
<プラズマ発生装置>
図3は、プラズマ発生装置の構成の一例を示す模式図である。プラズマ発生装置103は、図3に示すように、誘電体201の一方の表面(以降、「第1の表面」ともいう)に第1の電極203、第1の表面とは反対側の表面(以降、「第2の表面」ともいう)に第2の電極205が設けられている。プラズマ発生装置103-1~103-8はいずれも同じ構造となっている。
【0021】
プラズマ発生装置103-1~103-8はシート状の構造である。第1の電極203と第2の電極205は、誘電体201を挟んで斜向かいにずれて配置されており、誘電体基板206の上に重なるように設けられている。電源207は、第1の電極203と第2の電極205に電圧を印加することにより、第1の電極203から第2の電極205に向けてプラズマ202を発生させる。第1の電極203から第2の電極205に向けてプラズマ202が発生すると、第1の電極203の縁部204から誘電体201の第1の表面の露出部(第1の電極203で被覆されていない部分)201-1に沿ってプラズマ202による噴流状の流れが誘起される。また同時に、空間中の空気が電極に向かう、空気の吸い込み流れも発生する。プラズマ202中の電子は、空気中の酸素分子に衝突し、該酸素分子を解離させ、酸素原子を生じさせる。生じた酸素原子は未解離の酸素分子と衝突して、オゾンが発生する。したがって、プラズマ202による噴流状の流れと空気の吸い込み流れとの作用により、第1の電極203の縁部204から誘電体201の表面に沿って、高濃度のオゾンを含む誘起流105が発生する。
【0022】
また、プラズマ発生装置103は、第1の電極203と第2の電極205の最短距離が短いほどプラズマが発生しやすい。そのため誘電体201の膜厚は電気絶縁破壊しない範囲であれば薄膜であるほど好ましく、10μm~1000μm、好ましくは10μm~200μmとすることができる。また、第1の電極203と第2の電極205の最短距離は、200μm以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本実施例では、プラズマ発生装置103によって誘起された、高濃度のオゾンを含む誘起流105が、開口部107に向けて流れるように、プラズマ発生装置103は開口部107の端部に沿って設けられている。なお、プラズマ発生装置103が設けられる位置は必ずしも開口部107の端部に沿っていなくても良い。プラズマ発生装置103は、筐体110の内部において開口部107の端部が存在する面に設けられており、誘起流105が開口部107に向けて流れるのであれば、この配置に限らない。
【0024】
<紫外光光源および紫外光>
続いて、紫外光光源102について説明する。紫外光光源102は、プラズマ発生装置103によって発生する、オゾンを含む誘起流105に紫外光を照射する。紫外光光源102によってオゾンを含む誘起流105に紫外光が照射されると、誘起流105に含まれるオゾンが励起され、活性酸素が生成される。このとき、オゾンの光吸収スペクトルのピーク値が260nmであることから、紫外光光源102によって照射される紫外光のピーク波長は、220nm~310nmであることが好ましい。さらに、効率よく活性酸素を生成させるために、紫外光光源102の紫外光のピーク波長は、253nm~285nmであることがより好ましく、253nm~266nmであることがさらに好ましい。
【0025】
紫外光光源102に用いる具体的な紫外光光源としては、石英ガラス内にアルゴンやネオン等の不活性ガスと共に水銀が封入されてなる低圧水銀ランプや、冷陰極管紫外光ランプ(UV-CCL)、紫外LEDなどが使用できる。低圧水銀ランプや冷陰極管紫外光ランプの波長は、254nmなどから選択するとよい。一方、紫外LEDの波長は、出力性能の観点から、265nm、275nm、280nmなどから選択するとよい。なお、本実施例における紫外光光源102については、活性酸素を生成することができる紫外光を照射できるものであれば上記の構成に限定されない。
【0026】
<プラズマ発生装置103、紫外光光源102および被処理物104の配置>
続いて、活性酸素供給装置101におけるプラズマ発生装置103、紫外光光源102および被処理物104の配置について説明する。活性酸素供給装置101においてオゾンを含む誘起流105を発生させるプラズマ発生装置103は、前述のように、誘起流105が開口部107に向けて流れるように、筐体110の開口部107の端部に沿って設けられている。また、誘起流105において発生した活性酸素が分解される前に開口部107から被処理物104に供給されるのであれば、この配置に限らない。
【0027】
さらに、図3において、プラズマ発生装置103の第1の電極の縁部204から誘電体の第1の表面の露出部201-1に沿う方向の延長線が、被処理物104の処理表面104-1に対して所定の角度となるように設けられる。つまり、図1において誘起流105として示した点線矢印が、被処理物104の処理表面104-1に対して所定の角度となるように設けられる。このときの所定の角度は、0°~90°であることが好ましく、さらに0°~45°であることがより好ましい。
【0028】
上記のように配置することによって、紫外光光源102によってオゾンを含む誘起流105に対して紫外光が照射されることにより発生した活性酸素は、開口部107から被処理物104に供給される。また、ある程度の流速を有する、活性酸素を含む誘起流105を、被処理物104の処理表面104-1に局所的に供給することができる。
【0029】
<作用>
本実施例の活性酸素供給装置101は、紫外光光源102によってオゾンを含む誘起流105に紫外光を照射し、誘起流105において活性酸素を発生させる。そして、誘起流105において発生した活性酸素を、被処理物104の処理表面104-1、或いは、例えば処理表面104-1から高さ1mm程度までの空間領域に供給することができる。そのため、生成した活性酸素が酸素及び水に分解される前に、活性酸素を被処理物104の処理表面104-1に供給することができる。その結果として、被処理物104の処理表面104-1は、活性酸素によって除菌される。
【0030】
<使用形態>
次に、本実施例における活性酸素供給装置101の使用形態の一例について説明する。図4では、開口部107が下向きになるように被処理物104の上に置かれている。図4に示すように、使用者は、活性酸素供給装置101のうち、上述のような第1の面と第2の面を把持する。使用者は、活性酸素供給装置101の開口部107(破線で示す)を被処理物104の処理表面104-1に向け、開口部107と処理表面104-1とが平行となる状態で、活性酸素供給装置101を駆動させる。処理表面104-1の面積が開口部107の面積よりも大きい場合、使用者は、開口部107によって処理表面104-1をスキャンするように、活性酸素供給装置101を処理表面104-1に沿って矢印Sの方向に動かす。使用者は、このように活性酸素供給装置101を動かすことにより、処理表面104-1全体を除菌することができる。 また、本実施例の活性酸素供給装置101は図1に示すように、遮光板108が設けられている。遮光板108は、筐体110の開口部107と紫外光光源102の間に配置され、筐体110の開口部107から筐体110の外部に照射される紫外光を遮る。なお、遮光板108と被処理物104との距離は、プラズマ発生装置103と被処理物104との距離よりも長くなるように配置される。このように、遮光板108を設けることによって、使用者が活性酸素供給装置101を使用する際に、紫外光光源102によって照射される紫外光を直視することや、使用者の肌が紫外光に曝されることを抑制できる。なお、遮光板108は、図5に示すように、開口部107の開口面を、開口面と垂直の方向(矢印Aの方向)から見た場合に、遮光板108の一部(矢印Bで示す)が、開口部107を形成する筐体110と重なるように配置してもよい。このように配置することにより、使用者が紫外光に曝されることをさらに抑制できる。また、遮光板108を配置することにより、誘起流105において発生した活性酸素が、誘起流105によってプラズマ発生装置103と遮光板108の間へ流れ、被処理物104に供給される。このため、誘起流105において発生した活性酸素が筐体110に滞留することを抑制でき、活性酸素を効率的に処理表面104-1に供給することができる。
【実施例2】
【0031】
次に実施例2の構成について図6を用いて説明する。図6は、本実施例の活性酸素供給装置101においてシャッタ120を設けた構成の一例である。シャッタ120は筐体110に設けられ、閉じた位置と開いた位置とを切り替える。シャッタ120が閉じた位置にある場合(図6(a))開口部107が覆われる状態となり、シャッタ120が開いた位置にある場合(図6(b))開口部107が露出する状態となる。また、シャッタ120は不図示の付勢部材によって閉じた位置となるように付勢されている。
【0032】
本実施例では、使用者が活性酸素供給装置101を使用する場合、シャッタ120が開いた位置に保持される。使用者が活性酸素供給装置101を使用した後、開いた位置に保持されていたシャッタ120は、閉じた位置に戻る。このように、使用後にシャッタ120が閉じた位置に戻ることにより、活性酸素供給装置101において発生した活性酸素やオゾンが装置外に流出することを抑制できる。これにより使用者が活性酸素やオゾンに曝されることを抑制できる。なお、シャッタ120は、使用者が不図示のスイッチを押すことにより開閉させても良い。
【0033】
また、シャッタ120の開閉と活性酸素供給装置101を駆動させるスイッチのON/OFFを連動させても良い。このとき、シャッタ120が開いた位置となるとスイッチがONとなり、活性酸素供給装置101が駆動される。シャッタ120が閉じた位置となるとスイッチがOFFとなり、活性酸素供給装置101の駆動が停止する。また、活性酸素供給装置101にタイマーを設け、シャッタ120が開いた位置となりスイッチがONとなってから所定の時間が経過すると、シャッタ120が閉じた位置となり、スイッチがOFFとなってもよい。
【0034】
このように制御することにより操作性を向上させることができるとともに、使用者が活性酸素や紫外光、オゾンに曝されることを抑制できる。
【実施例3】
【0035】
次に実施例3の構成について図7を用いて説明する。図7は、本実施例の活性酸素供給装置101において、開口部107の近傍に近接センサ130および人感センサ131を設けた構成の一例である。なお、近接センサ130は近接検知手段とも称し、人感センサ131は人体検知手段とも称する。近接センサ130は活性酸素供給装置101と被処理物104との距離を検出する。そして、活性酸素供給装置101は、近接センサ130による検知結果に応じて、被処理物104との距離が所定の距離以下である場合に活性酸素供給装置101のスイッチをONにする。このとき、被処理物104として人が近づく場合、肌が活性酸素に曝されてしまう虞がある。このような場合を鑑みて、人感センサ131は活性酸素供給装置101と人体との距離を検出する。そして、活性酸素供給装置101は、人感センサ131による検知結果に応じて、人体との距離が所定の距離以上である場合に、活性酸素供給装置101のスイッチをONにする。これにより、活性酸素供給装置101によって発生させた活性酸素を、除菌したい被処理物104の処理表面104-1に確実に供給することができる。また、人が活性酸素に曝されることを抑制できる。
【実施例4】
【0036】
次に実施例4の構成について図8を用いて説明する。図8は、本実施例の活性酸素供給装置101において、筐体110の一部に透明な窓部140を設けた構成の一例である。筐体110の一部に、紫外光を遮断する材質を用いた窓部140が設けられることにより、使用者は、紫外光光源102が紫外光を照射していることを視認可能となり、活性酸素供給装置101が作動していることを確認できる。窓部材140は、透明色でなくてもよく、半透明や淡色の材料としてもよい。これにより、使用者が紫外光に曝されることを抑制しつつ視認性を確保することができる。なお、紫外光光源102により紫外光が照射されていることを報知する報知手段が筐体101に設けられても良い。
【実施例5】
【0037】
次に実施例5の構成について図9を用いて説明する。図9は、本実施例の活性酸素供給装置101において、加速度センサ150とインジケータ151が設けられた構成の一例である。なお、加速度センサ150は加速度検知手段とも称し、インジケータ151は速度報知手段とも称する。活性酸素供給装置101は、使用者によって速い速度で動かされると、被処理物104に所定の量あるいは所定の濃度の活性酸素が供給されない場合がある。また、活性酸素供給装置101は、使用者によって速い速度で動かされることにより発生する空気の流れによって、誘起流105の流れに影響が及ぶ場合がある。このような場合を鑑みて、本実施例の活性酸素供給装置101は、加速度センサ150を有する。加速度センサ150は活性酸素供給装置101が動かされたことを検出する。活性酸素供給装置101は加速度センサ150の検出値に基づいて活性酸素供給装置101を動かす速さが所定の速度の範囲内であるか否かを判定し、判定結果をインジケータ151によって使用者に通知する。このとき、例えば、活性酸素供給装置101が所定の速度の範囲内で動かされた場合、インジケータ151を点灯する。なお、活性酸素供給装置101が所定の速度の範囲外で動かされた場合に、警告としてインジケータ151を点灯しても良い。このような構成により、使用者は、インジケータ151の点灯状態を目視し、動かす速さを調節しながら活性酸素供給装置101を操作することができる。これにより、活性酸素供給装置101が速い速度で動かされることにより被処理物104に所定の量あるいは所定の濃度の活性酸素が供給されなくなることを抑制できる。また、本実施例では、活性酸素供給装置101が速い速度で動かされることにより発生する空気の流れによって、誘起流105の流れに影響が及ぶことを抑制できる。
【実施例6】
【0038】
次に実施例6の構成について図10を用いて説明する。図10は、本実施例の活性酸素供給装置161において、筐体160が円筒形となっている構成の一例であり、中心で切断した状態を示している。実施例1における活性酸素供給装置101は、図2に示すように長手方向と短手方向を有する筒状の装置であった。また、活性酸素供給装置101の開口部107も長手方向と短手方向を有し、使用者が活性酸素供給装置101を長手方向に動かす場合と、使用者が活性酸素供給装置101を短手方向に動かす場合とでは、除菌できる範囲が異なる。このような、装置を動かす方向に応じて除菌できる範囲が異なる場合を鑑みて、本実施例においては、筐体160が円筒形となっている。プラズマ発生装置163(図中163-1~163-5)は、円形の開口部167を挟んで対向するように、開口部167の周囲に放射状に配置されている。また、開口部167と紫外光光源162の間には遮光板168が設けられている。本実施例の構成によれば、どの方向に動かしても実施例1における除菌と同様の除菌効果が得られる。
【実施例7】
【0039】
次に実施例7の構成について図11を用いて説明する。図11は、本実施例の処理装置170であり、活性酸素供給装置171と、被処理物104との位置を相対的に移動させる移動手段172と、を設けた構成の一例である。なお、処理装置170は、活性酸素供給処理装置とも称する。移動手段172は、図11(a)に示すように、被処理物104に対して活性酸素供給装置171を動かす構成としてもよい。この場合の移動手段172を第1の移動手段とも称する。移動手段172は、図11(b)に示すように、活性酸素供給装置171に対して被処理物104を動かす構成としてもよい。この場合の移動手段172を第2の移動手段とも称する。本実施例の構成によれば、被処理物104を処理装置170の所定の位置に置くことで、活性酸素供給装置171または被処理物104が移動し、自動的に除菌処理が行われる。このため、使用者が活性酸素供給装置171を動かす負担を低減することができる。また、最適な速さで活性酸素供給装置171を移動することで、確実に処理効果を得ることができる。なお、本実施例においては、図11に示すように、筐体173が活性酸素供給装置171や移動手段172などを覆う構成としている。筐体173を配置することにより、使用者が紫外光に曝されることを抑制できる。このため、実施例1で説明した遮光板108を設けなくともよい。
【0040】
なお、以上の実施例における活性酸素供給装置101の用途は、被処理物104の除菌に限らない。例えば、被処理物104に活性酸素を供給することにより、被処理物104の消臭、被処理物104の漂白、被処理物104の親水化表面処理等も、実行することができる。
【符号の説明】
【0041】
101 活性酸素供給装置
102 紫外光光源
103 プラズマ発生装置
103-1~103-8 プラズマ発生装置
104 被処理物
104-1 処理表面
105 誘起流
107 開口部
108 遮光板
110 筐体
201 誘電体
201-1 露出部
202 プラズマ
203 第1の電極
204 縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11