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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】鞍乗型車両及びそのライト制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241111BHJP
   B60Q 1/08 20060101ALI20241111BHJP
   B62J 6/024 20200101ALI20241111BHJP
【FI】
B60Q1/14 G
B60Q1/08
B60Q1/14 H
B62J6/024
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020189969
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079035
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大輔
(72)【発明者】
【氏名】天野 弘章
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152177(JP,A)
【文献】実開昭52-136576(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/08
B62J 6/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドライトを有するライトと、
車両の状況を取得する状況取得部と、
前記ライトによる照明に関する制御を行う制御部と、
前記ヘッドライトの光軸角度を指示するために操作可能な操作部材と、
を備え、
前記操作部材は第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能であり、
前記操作部材が前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第1操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置に戻り、
前記制御部は、第1モードと第2モードとの間で切替可能であり、
前記第1モードでは、前記制御部は、前記操作部材が前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記操作部材が前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとし、
前記第2モードでは、前記制御部は、前記状況取得部により得られた状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記操作部材が前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われ、
前記操作部材の前記第3操作位置での保持時間が前記第1閾値時間未満の場合は、現状のモードを維持することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記第2操作位置は、前記第1操作位置と、前記第3操作位置と、の間に位置することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1操作位置は、前記第2操作位置に対して、前方及び上方のうち少なくとも一方に位置し、
前記第3操作位置は、前記第2操作位置に対して、後方及び下方のうち少なくとも一方に位置することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
ヘッドライトを有するライトと、
車両の状況を取得する状況取得部と、
前記ライトによる照明に関する制御を行う制御部と、
前記ヘッドライトの光軸角度を指示するために操作可能な操作部材と、
を備え、
前記操作部材は第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能であり、
前記操作部材が前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第1操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置に戻り、
前記制御部は、第1モードと第2モードとの間で切替可能であり、
前記第1モードでは、前記制御部は、前記操作部材が前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記操作部材が前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとし、
前記第2モードでは、前記制御部は、前記状況取得部により得られた状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記操作部材が前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われ、
前記制御部は、制御信号が供給された場合には前記ヘッドライトをハイビームとし、制御信号が供給されなかった場合には前記ヘッドライトをロービームとするように構成されており、
前記操作部材が前記第1操作位置にあると、制御信号が前記制御部に供給される状態となり、前記操作部材が前記第2操作位置にあると、制御信号が前記制御部に供給されない状態となる切替装置を備えることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記切替装置は、スイッチを備え、
前記スイッチは、前記操作部材が前記第1操作位置にあるとON状態になり、前記操作部材が前記第2操作位置にあるとOFF状態になることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
ヘッドライトを有するライトと、
車両の状況を取得する状況取得部と、
前記ライトによる照明に関する制御を行う制御部と、
前記ヘッドライトの光軸角度を指示するために操作可能な操作部材と、
を備え、
前記操作部材は第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能であり、
前記操作部材が前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第1操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置で保持され、
前記操作部材が前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置に戻り、
前記制御部は、第1モードと第2モードとの間で切替可能であり、
前記第1モードでは、前記制御部は、前記操作部材が前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記操作部材が前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとし、
前記第2モードでは、前記制御部は、前記状況取得部により得られた状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記操作部材が前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われ、
前記制御部は、前記操作部材が前記第1操作位置にある場合に供給される制御信号と、前記操作部材が第3操作位置にある場合に供給される制御信号とを同時に検知した場合に、現在の状態が異常状態であると判断することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項6に記載の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常対応モードを実行し、
前記異常対応モードでは、前記制御部は、前記ヘッドライトをロービームとし、前記操作部材の操作にかかわらず、前記ヘッドライトをロービームに維持するように制御することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常状態が発生したことを記憶装置に記憶することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の鞍乗型車両であって、
前記切替装置は、前記操作部材が前記第3操作位置にあると、制御信号が前記制御部に供給される状態となることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項10】
リターダ式のパッシングスイッチと、
ライトによる照明に関する制御を行う制御部と、
を備え
前記パッシングスイッチは、第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能であり、
前記パッシングスイッチが前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第1操作位置で保持され、
前記パッシングスイッチが前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第2操作位置で保持され、
前記パッシングスイッチが前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第2操作位置に戻る鞍乗型車両のライト制御方法であって、
前記パッシングスイッチの操作を含む予め定められた切替条件が満足するかどうかが判断される判断ステップと、
前記判断ステップの判断結果に応じて、前記ライトに設定されるモードが切り替えられるモード切替ステップと、
を含み、
前記モード切替ステップでは、前記ライトに設定されるモードを、運転者の操作でヘッドライトの照射態様を変化させる第1モードと、前記制御部が車両の状況に基づいて前記ヘッドライトの照射態様を変化させる第2モードと、の間で切り替え、
前記第1モードでは、前記制御部は、前記パッシングスイッチが前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記パッシングスイッチが前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとし、
前記第2モードでは、前記制御部は、前記車両の状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記パッシングスイッチが前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われ、
前記パッシングスイッチの前記第3操作位置での保持時間が前記第1閾値時間未満の場合は、現状のモードを維持することを特徴とする鞍乗型車両のライト制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両及びそのライト制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の鞍乗型車両は、運転者がハンドルスイッチ装置に所定の操作を行うことで、ヘッドライトがハイビームとロービームとの間で切り替えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-74246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイビームとロービームの切替以外のライト照射態様を変更する場合には、モード切替操作が猥雑となる。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ライトの照明態様に関するモードの切替操作の簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の鞍乗型車両が提供される。即ち、この鞍乗型車両は、ライトと、状況取得部と、制御部と、操作部材と、を備える。前記ライトは、ヘッドライトを有する。前記状況取得部は、車両の状況を取得する。前記制御部は、前記ライトによる照明に関する制御を行う。前記操作部材は、前記ヘッドライトの光軸角度を指示するために操作可能である。前記操作部材は、第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能である。前記操作部材が前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第1操作位置で保持される。前記操作部材が前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置で保持される。前記操作部材が前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記操作部材は前記第2操作位置に戻る。前記制御部は、第1モードと第2モードとの間で切替可能である。前記第1モードでは、前記制御部は、前記操作部材が前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記操作部材が前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとする。前記第2モードでは、前記制御部は、前記状況取得部により得られた状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行う。前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記操作部材が前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われる。前記操作部材の前記第3操作位置での保持時間が前記第1閾値時間未満の場合は、現状のモードを維持する。
【0008】
これにより、3つの操作位置を有する簡素な操作部材を用いて、操作部材を第3操作位置に所定時間保持する簡単な操作で、第2モードへの切替を制御部に指示することができる。これは、操作の簡素化が強く求められる鞍乗型車両に好適である。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の鞍乗型車両のライト制御方法が提供される。即ち、この鞍乗型車両のライト制御方法では、鞍乗型車両は、リターダ式のパッシングスイッチと、制御部と、を備える。前記制御部は、ライトによる照明に関する制御を行う。前記パッシングスイッチは、第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置の間で切替可能である。前記パッシングスイッチが前記第1操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第1操作位置で保持される。前記パッシングスイッチが前記第2操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第2操作位置で保持される。前記パッシングスイッチが前記第3操作位置にある状態で操作力が解除されると、前記パッシングスイッチは前記第2操作位置に戻る。前記のライト制御方法は、判断ステップと、モード切替ステップと、を含む。前記判断ステップでは、パッシングスイッチの操作を含む予め定められた切替条件が満足するかどうかが判断される。前記モード切替ステップでは、前記判断ステップの判断結果に応じて、ライトに設定されるモードが切り替えられる。前記モード切替ステップでは、前記ライトに設定されるモードを、運転者の操作でヘッドライトの照射態様を変化させる第1モードと、前記制御部が車両の状況に基づいて前記ヘッドライトの照射態様を変化させる第2モードと、の間で切り替える。前記第1モードでは、前記制御部は、前記パッシングスイッチが前記第1操作位置及び前記第3操作位置の何れかの位置にある状態では前記ヘッドライトをハイビームとし、前記パッシングスイッチが前記第2操作位置にある状態では前記ヘッドライトをロービームとする。前記第2モードでは、前記制御部は、前記車両の状況に応じて前記ライトによる照明態様を変化させる制御を行う。前記第1モードから前記第2モードへの切替は、前記パッシングスイッチが前記第3操作位置で第1閾値時間以上保持されることにより行われる。前記パッシングスイッチの前記第3操作位置での保持時間が前記第1閾値時間未満の場合は、現状のモードを維持する。
【0010】
これにより、ライトに設定されるモードが切替可能となる。そして、モードを切り替えるための構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ライトの照明態様に関するモードの切替を可能とし、モードの切替の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る自動2輪車の側面図。
図2】自動2輪車の前部の平面図。
図3】ライトの照明態様の変化に関する電気的な構成を示すブロック図。
図4】切替レバーに対して行われる操作を説明するための図。
図5】ヘッドライトのハイビームとロービームの切替に関する処理を示すフローチャート。
図6】異常状態の発生に関する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る自動2輪車1の概要について説明する。図1は、自動2輪車1の側面図である。図2は、自動2輪車1の前部の平面図である。なお、自動2輪車1は、鞍乗型車両の一例である。
【0014】
以下の説明では、自動2輪車1に乗った運転者から見た方向により、自動2輪車1についての方向を定義する。従って、前後方向は自動2輪車1の車長方向に相当し、左右方向は自動2輪車1の車幅方向に相当する。
【0015】
図1に示すように、自動2輪車1は、車体3と、前輪5と、後輪7と、を備える。
【0016】
車体3の前後方向の中央付近に、エンジン9が設けられている。エンジン9は、自動2輪車1を走行させるための駆動源である。駆動源は、本実施形態ではガソリンエンジンである。駆動源は、特に限定されず、例えば走行用の電動モータであっても良い。エンジン9で発生した動力は、ドライブチェーン等を介して後輪7に伝達される。これにより、自動2輪車1を走行させることができる。
【0017】
車体3の前部には、図2に示すアッパーブラケット11及びロアブラケット13等を介して、フロントフォーク15が取り付けられている。フロントフォーク15は、正面視で前輪5を挟むように左右1対で配置されている。フロントフォーク15の上端の近傍には、ハンドルユニット17が配置されている。運転者がハンドルユニット17を操作することでフロントフォーク15を旋回させ、自動2輪車1の進行方向を変更することができる。
【0018】
図2に示すように、ハンドルユニット17は、ハンドルバー19を備える。ハンドルバー19は、アッパーブラケット11及びフロントフォーク15の少なくとも一方に取り付けられている。本実施形態では、ハンドルバー19は、左のハンドルバー19と、右のハンドルバー19と、を有する。左右のハンドルバー19は、車幅方向において、アッパーブラケット11に対して左右に分かれた状態で配置されている。なお、ハンドルバー19として、アッパーブラケット11に対して車幅方向に延びるように配置される1つのハンドルバーを採用しても良い。
【0019】
左右1対のハンドルバー19には、それぞれ、グリップ21と、レバー23と、ハンドルスイッチ25と、が設けられている。右側のグリップ21は、回動式のスロットルグリップである。左側のレバー23はクラッチレバーである。右側のレバー23はブレーキレバーである。また、左側のハンドルスイッチ25には、ライト操作部27が設けられている。運転者は、ライト操作部27を用いて、自動2輪車1に備えられたライト31の照明(特に、ヘッドライト33の照射)に関する操作を行うことができる。
【0020】
左側のハンドルスイッチ25には、ライト操作部27のほか、方向指示器を動作させる方向指示器操作部、ホーンを動作させるホーン操作部、左右の方向指示器を同時に点滅させるハザードランプ操作部等が設けられても良い。右側のハンドルスイッチ25には、例えば、エンジンを始動させるエンジン始動操作部、運転者が機能を割り当てることができる多機能操作部等が設けられても良い。
【0021】
ライト31は、ヘッドライト33を有する。本実施形態では、ライト31は、コーナリングライト35を更に有する。運転者は、ライト操作部27に対して、ヘッドライト33の照射態様をハイビームとロービームとの間で切り替える操作と、パッシングを行うためのパッシング操作と、モード切替操作と、を行うことができる。
【0022】
ライト操作部27は、切替レバー(操作部材)29を有する。切替レバー29は、ヘッドライト33の光軸の角度を指示することができる。切替レバー29は、左側のグリップ21近傍に配置されている。これにより、自動2輪車1の走行時に、運転者が切替レバー29を操作することができる。
【0023】
ヘッドライト33は、自動2輪車1の前方に光を照射することができるように、車体3の前端部に設けられている。ヘッドライト33の光源は、例えば、HID(High-Intensity Discharge)ランプ、又は、発光ダイオード(LED)である。ヘッドライト33は、本実施形態のように左右で対をなすように設けられても良いし、車幅方向中央部のみに設けられても良い。更に、ヘッドライト33の数は任意である。
【0024】
ヘッドライト33は、その照射態様をロービームとハイビームの間で切り替えることができる。ロービーム及びハイビームの切替は、共通の光源を用いて実現されても良いし、ロービーム専用の光源とハイビーム専用の光源とにより実現されても良い。
【0025】
ロービームは、ヘッドライト33が前輪5付近又は前輪5の若干前方を照らす態様を意味する。ハイビームは、ヘッドライト33が、ロービームの場合と比較して、前輪5から離れた位置まで前方を照らす態様を意味する。ロービーム及びハイビームは、ヘッドライト33の光軸の向きを実質的に変更することで切り替えられる。
【0026】
コーナリングライト35は、車体3の左右の側部にそれぞれ設けられている。コーナリングライト35の光源は、例えば、HIDランプ、又は、発光ダイオード(LED)である。コーナリングライト35は、自動2輪車1が旋回する際に、車体3の旋回方向内側を照らすことができる。なお、コーナリングライト35は省略されても良い。
【0027】
ハンドルユニット17の前方であって、車幅方向の中央付近には、メータ装置37が配置されている。メータ装置37は、自動2輪車1に関する情報を表示することができる。この情報としては、例えば、現時点での、エンジン回転速度、車速、及びライト31の照明態様(ヘッドライト33の照射態様)に関するモードを挙げることができる。メータ装置37は、キー又はタッチパネルを備える。キー又はタッチパネルの操作により、自動2輪車1に関する設定を変更することができる。後述の手動モードと自動モードの間の切替も、メータ装置37のディスプレイに表示される図略のメニューを選択することで、行うことができる。
【0028】
ハンドルユニット17の後方であって、エンジン9の上方には、燃料タンク41が配置されている。燃料タンク41には、エンジン9に供給するための燃料が貯留される。燃料タンク41の後方には、乗車時に運転者が跨って着座するためのフロントシート43が配置されている。
【0029】
次に、図3又は図4を参照して、ライト31の照明態様(特にヘッドライト33の照射態様)に関するモードについて説明する。図3は、ライト31の照明態様の変化に関する電気的な構成を示すブロック図である。
【0030】
図3に示すように、自動2輪車1は制御装置(制御部)51を備える。制御装置51は、手動モード(第1モード)と、自動モード(第2モード)と、を有している。制御装置51は、手動モードと自動モードとの間で、現在のモードを切替可能である。制御装置51の現在のモードは、制御装置51が備える記憶装置57に記憶される。
【0031】
制御装置51は、検出装置(状況取得部)53と接続されている。検出装置53は車両の状況を検出し、制御装置51に出力する。検出装置53の検出対象である車両の状況については後述する。
【0032】
制御装置51は、CPU等の演算装置55と、フラッシュメモリ等の記憶装置57と、を備える。制御装置51は、前記の2つのモードに応じたライト31の制御、及び、これらのモードを切り替える制御を行うことができる。制御装置51は、現在のモードに応じてライト31を制御して、例えばヘッドライト33をハイビーム又はロービームとすることができる。制御装置51は、例えばCAN通信によって、メータ装置37及び検出装置53のそれぞれと情報の送受信をすることができる。制御装置51は、ライト31の照明に関する制御のほか、メータ装置37の表示に関する制御を行うことができる。なお、制御装置51は、自動2輪車1における他の制御も実行可能に構成されても良い。
【0033】
検出装置53は、自動2輪車1に関する所定情報を検出して、車両(自動2輪車1)の状況を取得することができる。検出装置53は、車体3の前部に設けられた第1検出部61と、車体3の適宜の箇所に設けられた第2検出部63と、を備える。検出装置53により検出される情報には、第1検出部61により検出される車両の前方周囲についての第1情報と、第2検出部63により検出される車両の内部についての第2情報とが含まれる。第1情報としては、例えば、車両に対して前方周囲に存在する前方対象物(先行車、対向車、及び歩行者等)の位置、及び周囲の明るさを挙げることができる。第2情報としては、例えば、車速を挙げることができる。
【0034】
本実施形態において、第1検出部61は、前方の映像を取得するカメラである。第1検出部61が取得した映像は、制御装置51に入力される。制御装置51は、第1検出部61から取得した映像を解析して、車両の外部の状況を認識する。例えば、制御装置51は、先行車の位置を先行車のテールライトに基づいて認識することができる。なお、第1検出部61は、カメラに限られず、超音波センサ又はレーダ装置であっても良い。また、第1検出部61は、映像ではなく明るさ(光強度)のみを検出するセンサであっても良い。第2検出部63としては、例えば、公知の車速センサを採用することができる。
【0035】
手動モードは、自動2輪車1の運転者がライト操作部27の切替レバー29を操作することで(即ち手動で)、ヘッドライト33の照射態様を変化させるモードである。手動モードでは、切替レバー29の操作に基づく指示が制御装置51に与えられて、制御装置51が、ヘッドライト33をロービーム又はハイビームとする。
【0036】
自動モードは、制御装置51が車両の状況を判断して(即ち自動で)、ライト31の照明態様を変化させるモードである。ライト31の照明態様は、ヘッドライト33の照射態様、及び、コーナリングライトの照射態様を含むが、以下ではヘッドライト33の照射態様について説明する。
【0037】
自動モードでは、制御装置51が、検出装置53により取得された車両の状況に応じて、ヘッドライト33の照射態様を変化させる制御を行う。具体的には、制御装置51が、検出装置53により取得された車両の状況に応じて、ヘッドライト33をロービーム又はハイビームとする。例えば、自動2輪車1の走行開始時では、制御装置51は、車速が所定値(例えば約20km/h)未満であればヘッドライト33をロービームとし、車速が所定値以上であればハイビームとする。通常の走行時では、制御装置51は、ヘッドライト33をハイビームとし、対向車若しくは先行車を認識した場合、又は、街灯等の照明を認識した場合には、ロービームとする。なお、自動モードでヘッドライト33の照射態様を変化させる条件は、特に限定されない。
【0038】
次に、図3及び図4を参照して、運転者が切替レバー29に対して行う操作について説明する。図4は、切替レバー29に対して行われる操作を説明するための図である。
【0039】
切替レバー29に対して行われる操作は、ライト切替操作と、パッシング操作と、モード切替操作と、を含む。ライト切替操作は、手動モードにおいて、ヘッドライト33のハイビームとロービームとを切り替える操作である。パッシング操作は、パッシングを行うための操作である。パッシングは、ヘッドライト33をロービームとしている場合に一時的に(瞬間的に)ハイビームとすることである。モード切替操作は、手動モードと自動モードとを切り替える操作である。
【0040】
本実施形態では、ライト切替操作、パッシング操作、及びモード切替操作を、切替レバー29を用いて行うことができる。
【0041】
図3に示すように、切替レバー29は、操作力が与えられると、第1方向又は及び第2方向に移動(基端部付近を中心として揺動)可能となっている。第1方向と第2方向とは、向きが逆である。切替レバー29は、第1操作位置P1、第2操作位置P2、第3操作位置P3の何れかの操作位置に移動するように、その操作位置を切り替えることができる。
【0042】
3つの操作位置のうち第2操作位置P2は、第1操作位置P1と第3操作位置P3との間にある。第1操作位置P1は、第2操作位置P2に対して第1方向側にある。第3操作位置P3は、第2操作位置P2に対して第2方向側にある。
【0043】
切替レバー29は、第1操作位置P1にある状態で当該切替レバー29に対する操作力が解除されると、第1操作位置P1で保持される。切替レバー29は、第2操作位置にある状態で当該切替レバー29に対する操作力が解除されると、第2操作位置P2で保持される。切替レバー29は、第3操作位置P3にある状態で操作力が解除されると、第2操作位置P2に戻る。
【0044】
本実施形態では、切替レバー29に付勢部材が取り付けられている。この付勢部材は、第2操作位置P2と第3操作位置P3の間で、当該切替レバー29を第1方向に付勢する。付勢部材は、例えばバネとして構成することができる。これにより、切替レバー29は、第3操作位置P3から第2操作位置P2に戻ることができる。このように、切替レバー29は、第3操作位置P3から第2操作位置P2に自動的に戻る復帰型の操作子(リターダ式のパッシングスイッチ)として構成されている。
【0045】
切替レバー29の基端部には切替装置65が設けられている。切替装置65は、切替レバー29の操作位置に応じて異なる制御信号を制御装置51に供給する(送信する)。制御装置51は、供給された(受信した)制御信号に基づいて、切替レバー29が何れの操作位置にあるかを検知することができる。また、制御装置51は、現在のモードが手動モードであれば、制御信号の供給状態に基づいて、ヘッドライト33の照射態様を変化させる。具体的には、制御装置51は、手動モードにおいて、制御信号が切替装置65から供給された場合にはヘッドライト33をハイビームとし、制御信号が切替装置65から供給されなかった場合にはヘッドライトをロービームとする。
【0046】
本実施形態において、切替装置65は、第1スイッチ67と、第2スイッチ69と、を備える。第1スイッチ67及び第2スイッチ69は、それぞれ、切替レバー29の操作位置に応じて、制御装置51への制御信号の供給が行われるON状態と、制御装置51への制御信号の供給が行われないOFF状態と、の間で状態を切り替えることができる。ON状態は第1状態に対応し、OFF状態は第2状態に対応する。切替装置65における2つのスイッチの状態の組合せで、切替レバー29の3つの操作位置が表現される。
【0047】
第1スイッチ67及び第2スイッチ69のそれぞれの構成は、特に限定されない。第1スイッチ67及び第2スイッチ69は、それぞれ、物理的なスイッチであっても良いし、半導体スイッチであっても良い。
【0048】
手動モードで切替レバー29が第1操作位置P1にある場合、第1スイッチ67がON状態となり、かつ、第2スイッチ69がOFF状態となるので、第1スイッチ67から制御信号が制御装置51に供給される。この場合、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1にあることを検知して、ヘッドライト33をハイビームとする。
【0049】
手動モードで切替レバー29が第2操作位置P2にある場合、第1スイッチ67がOFF状態となり、かつ、第2スイッチ69がOFF状態となって、何れのスイッチからも制御装置51に対して制御信号が供給されない。この場合、制御装置51は、切替レバー29が第2操作位置P2にあることを検知して、ヘッドライト33をロービームとする。
【0050】
切替レバー29が第3操作位置P3にある場合、第1スイッチ67がOFF状態となり、かつ、第2スイッチ69がON状態となって、第2スイッチ69から制御信号が制御装置51に供給される。この場合、制御装置51は、切替レバー29が第3操作位置P3にあることを検知して、ヘッドライト33をハイビームとする。
【0051】
このように、切替レバー29の操作位置を第1操作位置P1、第2操作位置P2、及び第3操作位置P3の間で切り替えることによって、ライト切替操作、パッシング操作、及びモード切替操作の何れかの操作を行うことができる。ライト切替操作は、図4で示すように、手動モードでヘッドライト33をハイビームとするための第1操作と、手動モードでヘッドライト33をロービームとするための第2操作と、を含む。
【0052】
第1操作は、第2操作位置P2にある切替レバー29に第1方向の操作力を加えて、切替レバー29を第2操作位置P2から第1操作位置P1に移動させる操作である。第1操作が行われた後、操作力が解除されても、切替レバー29は第1操作位置P1で保持される。第1操作が行われるときに切替レバー29を移動させる方向は、第1方向となっている。第1方向は、本実施形態では、前方及び上方の少なくとも一方である。
【0053】
第2操作は、第1操作位置P1にある切替レバー29に第2方向の操作力を加えて、切替レバー29を第1操作位置P1から第2操作位置P2に移動させる操作である。第2操作が行われた後、操作力が解除されても、切替レバー29は第2操作位置P2で保持される。第2操作が行われるときに切替レバー29を移動させる方向は、第2方向となっている。第2方向は、本実施形態では、後方及び下方の少なくとも一方である。
【0054】
制御装置51は、切替レバー29が何れの操作位置にあるかを検知可能であるため、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を行うことができる。制御装置51は、第1操作が行われたと判定した場合、手動モードでヘッドライト33をハイビームとする。制御装置51は、第2操作が行われたと判定した場合、手動モードでヘッドライト33をロービームとする。
【0055】
パッシング操作は、第2操作位置P2にある切替レバー29に第2方向の操作力を加えて、切替レバー29を第2操作位置P2から第3操作位置P3に移動させた後、操作時間が第1閾値時間T1を超える前に操作力を解除して、切替レバー29を第2操作位置P2に戻らせる操作である。第3操作位置P3から第2操作位置P2へ、切替レバー29に運転者が操作力を加えて戻しても良い。言い換えれば、パッシング操作は、切替レバー29を一時的に(瞬間的に)第3操作位置P3に位置させるように移動させる操作である。
【0056】
ここで、操作時間は、切替レバー29が第2操作位置P2から離れて第3操作位置P3にある時間である。操作時間を得るために、切替レバー29が第2操作位置P2から離れた瞬間に操作時間のカウントが開始されても良いし、第3操作位置P3に到達したタイミングで操作時間のカウントが開始されても良い。
【0057】
制御装置51は、パッシング操作が行われたと判定した場合、ヘッドライト33を一時的にハイビームとする。具体的には、制御装置51は、切替レバー29が第3操作位置P3にある間のみヘッドライト33をハイビームとする。そして、切替レバー29が第3操作位置P3から離れたとき(第2操作位置P2に向かって移動を開始したとき)、切替装置65からの制御信号の供給が停止されるので、制御装置51は、ヘッドライト33をロービームとする。
【0058】
モード切替操作は、ライト31の照明態様(特にヘッドライト33の照射態様)に関するモードを切り替えるための操作である。図4の右下に示すように、モード切替操作は、第2操作位置P2にある切替レバー29に第2方向の操作力を加えて、切替レバー29を第3操作位置P3に移動させた後、操作時間が第1閾値時間T1以上となるまで第3操作位置P3に保持する操作である。
【0059】
制御装置51は、操作時間の相違に基づいて、パッシング操作とモード切替操作とを区別する。制御装置51は、モード切替操作が行われたと判定する毎に、手動モードと自動モードとを切り替える。言い換えれば、制御装置51は、モード切替操作が行われたと判定した場合、現在のモードに応じて、手動モードから自動モードに切り替える処理、又は、自動モードから手動モードに切り替える処理を行う。
【0060】
このように、自動2輪車1では、モード切替操作を行うために切替レバー29が用いられ、専用の操作部材を不要とする構成が採用されている。従って、部品点数を減らすことができる。
【0061】
制御装置51は、手動モードと自動モードとが切り替えられた場合、切替後の現在のモードを運転手が確認することができるように、メータ装置37の表示を変化させるメータ表示処理を行う。この処理により、現在のモードが手動モードであるか自動モードであるかに応じて、メータの表示が変化する。メータ表示処理は、手動モードと自動モードとで互いに異なる表示を行うものであっても良いし、現在のモードが手動モードであるときには何も表示させず、現在のモードが自動モードであるときには自動モードである旨を表示させるものであっても良い。
【0062】
次に、図5を参照して、ライト31の照射態様に関する処理(ライト制御方法)について説明する。図5は、ヘッドライト33のハイビームとロービームの切替に関する処理を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは一例であり、別の処理が追加されたり、処理順序が変更されたり、一部の処理が省略されたりしても良い。
【0063】
処理が開始されると、制御装置51は、切替レバー29が第3操作位置P3にあるか否かを判定する(ステップS101)。
【0064】
切替レバー29が第3操作位置P3にあると判定した場合、制御装置51は、ヘッドライト33をハイビームにする(ステップS102)。更に、制御装置51は、第2操作位置P2から第3操作位置P3へ切替レバー29が直近に移動したタイミングからの時間(操作時間)が、第1閾値時間T1以上であるか否かを判定する(ステップS103、判断ステップ)。このステップS103で用いられる条件が、予め定められた条件に相当する。
【0065】
操作時間が第1閾値時間T1以上であると判定した場合、制御装置51は、モード切替操作が行われたと判断し、現在のモードを別のモードに切り替える(ステップS104、モード切替ステップ)。これにより、自動モードから手動モードへ、又は、手動モードから自動モードへの切替が行われる。操作時間が第1閾値時間T1以上ではないと判定した場合、ステップS104の処理はスキップされる。何れの場合も、処理はステップS101に戻る。
【0066】
ステップS101の判断で、切替レバー29が第3操作位置P3にないと判定した場合、現在のモードが手動モードであるか否かを判定する(ステップS105)。
【0067】
手動モードであると判定した場合、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1にあるか否かを判定する(ステップS106)。切替レバー29が第1操作位置P1にあると判定した場合、制御装置51は、ヘッドライト33をハイビームとする(ステップS107)。続いて、制御装置51は、切替レバー29が第2操作位置P2にあるか否かを判定する(ステップS108)。切替レバー29が第2操作位置P2にあると判定した場合、制御装置51は、ヘッドライト33をロービームとする(ステップS109)。これにより、手動モードでのヘッドライト33の制御が実現される。その後、処理はステップS101に戻る。
【0068】
ステップS105の判断で、手動モードでないと判定した場合、制御装置51は、車両の状況に応じて、ヘッドライト33をロービームとハイビームの間で自動的に切り替える(ステップS110)。これにより、自動モードでのヘッドライト33の制御が実現される。その後、処理はステップS101に戻る。
【0069】
なお、本実施形態に係る処理では、モードの切替のために予め定められた切替条件を、切替レバー29の第3操作位置P3への操作時間が第1閾値時間T1以上であること(切替レバー29の第2方向への長押し操作)としている。しかし、このような処理を行う場合、切替条件を、切替レバー29を所定の時間範囲内で第3操作位置に複数回移動させることにしても良いし、切替レバー29とは別の操作子が操作されることとしても良い。
【0070】
制御装置51の現在のモードは、記憶装置57に対し、不揮発的に記憶される。図示しないイグニッションスイッチをOFFとし、再びONにした場合、制御装置51は、イグニッションスイッチがOFFされる前と同一のモードで動作する。
【0071】
次に、切替レバー29及び切替装置65に関する異常状態の発生について説明する。
【0072】
切替レバー29が3つのうち何れの操作位置にあっても、第1スイッチ67及び第2スイッチ69のうち、制御信号の供給を行うON状態になるスイッチの数は1以下である。言い換えれば、2つのスイッチがともにON状態となる状況は生じない。従って、2つのスイッチの両方から制御信号が同時に供給された場合は、何れかのスイッチに何らかの異常が生じていることを意味する。
【0073】
そこで、制御装置51は、第1スイッチ67からの制御信号と第2スイッチ69からの制御信号を同時に検知すると、異常が発生したと判断する。言い換えれば、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1にある場合に供給される制御信号と、切替レバー29が第3操作位置P3にある場合に供給される制御信号と、を同時に検知した場合に、切替レバー29及び切替装置65に関して現在の状態が異常状態であると判断する。
【0074】
現在の状態が異常状態であると制御装置51が判断すると、制御装置51は、異常状態の発生を運転者に知らせる等の処理を行う。この処理は特に限定されない。例えば、制御装置51は、ライト操作部27(切替レバー29)に関する異常状態が発生している旨をメータ装置37に表示させることができる。
【0075】
また、制御装置51は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常対応モードに移行する。異常対応モードでは、制御装置51は、ヘッドライト33を強制的にロービームとするように制御する。その後、制御装置51は、切替レバー29の操作位置にかかわらず(言い換えれば、2つのスイッチからの制御信号の有無にかかわらず)、ヘッドライト33をロービームに維持するように制御を行う。異常対応モードでは、切替レバー29が何れの操作位置に移動したとしても、制御装置51は、ヘッドライト33をロービームとした状態から変化させない。
【0076】
よって、現在の状態が異常状態であると制御装置51が判断した場合、ヘッドライト33がロービームとされた状態が固定されることになる。従って、対向車等への幻惑を低減することができる。
【0077】
制御装置51は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常状態が発生したことを記憶装置57に記憶する。例えば、切替装置65のスイッチに異常があったことを示す、事前に定められたコードを、異常履歴として記憶することが考えられる。記憶装置57の記憶内容を後で適宜の方法で取得することで、異常状態の原因究明等のために活用することができる。
【0078】
異常対応モードになった後、第1スイッチ67からの制御信号と第2スイッチ69からの制御信号を同時に検知する状況が、何らかの理由で解消される可能性もある。しかし、明らかに異常な状態が過去に検知された以上、その状態が解消しても、スイッチ等の動作を信頼することに対して慎重であることが好ましい。そこで、制御装置51は異常対応モードを解除せず、ロービームを継続して維持する。異常対応モードは、特別な操作(例えば、図示しないイグニッションスイッチをいったんOFFし、再びONする操作)が行われ、かつ、その時点で異常が検知されていない場合に、解除される。
【0079】
次に、図6を参照して、異常状態の発生に関する処理の流れについて説明する。図6は、異常状態の発生に関する処理のフローチャートである。図6に示すフローチャートは一例であり、別の処理が追加されたり、処理順序が変更されたり、一部の処理が省略されたりしても良い。
【0080】
制御装置51は、現在の状態が異常状態であるか否かを判定する(ステップS201)。本実施形態では、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1にある場合に供給される制御信号と、切替レバー29が第3操作位置P3にある場合に供給される制御信号とが同時に検知されたか否かに基づいて判定を行う。
【0081】
現在が異常状態であると判定した場合、制御装置51は、現在のモードを異常対応モードに切り替える(ステップS202)。制御装置51は、異常状態の発生を記憶装置57に記憶する(ステップS203)。制御装置は、異常状態の発生を運転手に報知する(ステップS204)。報知を行うための方法は、特に限定されず、例えば、メータ装置37によるメータ表示を採用することができる。制御装置51は、ヘッドライト33を、第1スイッチ67及び第2スイッチ69のそれぞれから制御信号が供給されるか否かにかかわらず、強制的にロービームに維持する(ステップS205)。
【0082】
以上に説明したように、本実施形態の自動2輪車(鞍乗型車両)1は、ライト31と、検出装置(状況取得部)53と、制御装置(制御部)51と、切替レバー(操作部材)29と、を備える。ライト31は、ヘッドライト33を有する。検出装置53は、自動2輪車1の状況を取得する。制御装置51は、ライト31による照明に関する制御を行う。切替レバー29は、ヘッドライト33の光軸角度を指示するために操作可能である。切替レバー29は、第1操作位置P1、第2操作位置P2、及び第3操作位置P3の間で操作位置を切替可能である。切替レバー29が第1操作位置P1にある状態で当該切替レバー29に対する操作力が解除されると、切替レバー29は第1操作位置P1で保持される。切替レバー29が第2操作位置P2にある状態で当該切替レバー29に対する操作力が解除されると、切替レバー29は第2操作位置P2で保持される。切替レバー29が第3操作位置P3にある状態で当該切替レバー29に対する操作力が解除されると、切替レバー29は第2操作位置P2に戻る。制御装置51は、手動モード(第1モード)と自動モード(第2モード)との間で切替可能である。手動モードでは、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1及び第3操作位置P3の何れかの位置にある状態ではヘッドライト33をハイビームとし、切替レバー29が第2操作位置P2にある状態ではヘッドライト33をロービームとする。自動モードでは、制御装置51は、検出装置53により得られた状況に応じてライト31による照明態様を変化させる制御を行う。手動モードから自動モードへの切替は、切替レバー29が第3操作位置P3で第1閾値時間T1以上保持されることにより行われる。
【0083】
これにより、3つの操作位置を有する簡素な切替レバー29を用いて、切替レバー29を第3操作位置P3に所定時間保持する簡単な操作で、手動モードから自動モードへの切替を制御装置51に指示することができる。これは、操作の簡素化が強く求められる鞍乗型車両に好適である。
【0084】
また、本実施形態の自動2輪車1において、自動モードでは、制御装置51は、検出装置53により得られた状況に応じて、ヘッドライト33の照射態様を変化させる制御を行う。
【0085】
これにより、ヘッドライト33の照射態様の切替が簡単になる。
【0086】
また、本実施形態の自動2輪車1において、制御装置51は、制御信号が供給された場合(制御信号を受信した場合)にヘッドライト33をハイビームとし、制御信号が供給されなかった場合にヘッドライトをロービームとするように構成される。この自動2輪車1は、切替装置65を備える。切替装置65は、切替レバー29が第1操作位置P1にあると、制御信号が制御装置51に供給される状態となり、第2操作位置P2にあると、制御信号が制御装置51に供給されない状態となる。
【0087】
この構成では、切替装置65に関する電気回路が断線した場合、手動モードで、ヘッドライト33がロービームとされた状態が固定されることになる。従って、電気回路が断線して照射態様の切り替えが制御できない場合でも、対向車の搭乗者等への幻惑を低減することができる。
【0088】
また、本実施形態の自動2輪車1において、切替装置65は、切替レバー29が第3操作位置P3にあると、制御信号が制御装置51に供給される状態となる。
【0089】
手動モードにおいては切替装置65から制御装置51へ制御信号が供給されたことを条件にヘッドライトがハイビームとされる構成で、切替装置65に関して電気回路が断線した場合には、手動モードで、ヘッドライト33がロービームとされた状態が固定されることになる。従って、電気回路が断線して照射態様の切替えが制御できない場合でも、対向車の搭乗者等への幻惑を低減することができる。
【0090】
また、本実施形態の自動2輪車1において、制御装置51は、切替レバー29が第1操作位置P1にある場合に供給される制御信号と、切替レバー29が第3操作位置P3にある場合に供給される制御信号とを同時に検知した場合に、現在の状態が異常状態であると判断する。
【0091】
2つの制御信号が制御装置51に同時に供給される状況は、何らかの異常を示している。異常とは、例えば、制御信号ケーブルの短絡である。制御装置51は、2つの制御信号を検知することで、現在の状態が異常状態であると判断するので、異常の発生を運転者に知らせる等の適切な対応を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態の自動2輪車1において、制御装置51は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常対応モードを実行する。異常対応モードでは、制御装置51は、ヘッドライト33をロービームとし、切替レバー29の操作にかかわらず、ヘッドライト33をロービームに維持するように制御する。
【0093】
切替装置65に異常が発生している場合には、ヘッドライト33がロービームに維持される。従って、対向車の搭乗者等への幻惑を低減することができる。
【0094】
また、本実施形態の自動2輪車1において、制御装置51は、現在の状態が異常状態であると判断した場合、異常状態が発生したことを記憶装置に記憶する。
【0095】
これにより、記憶装置57に記憶内容を適宜の方法で取得することで、異常の原因究明等のために活用することができる。
【0096】
また、本実施形態の自動2輪車1において、制御装置51は、手動モードであるか自動モードであるかに応じてメータへの表示を異ならせる。
【0097】
これにより、運転者は、メータ装置37を視認することで、現在のモードが手動モードであるか自動モードであるかを把握することができる。
【0098】
また、本実施形態の自動2輪車1のライト制御方法において、自動2輪車1は、切替レバー29(リターダ式のパッシングスイッチ)を備える。このライト制御方法は、判断ステップと、モード切替ステップと、を含む。判断ステップでは、切替レバー29の操作を含む予め定められた切替条件が満足するかどうかが判断される。モード切替ステップでは、判断ステップの判断結果に応じて、ライト31に設定されるモードが切り替えられる。
【0099】
これにより、ライトに設定されるモードが切替可能となる。そして、モードを切り替えるための構成を簡素化することができる。
【0100】
上記の実施形態で示した異常対応モードは、例えば、以下のような場合にも実行可能である。
【0101】
即ち、制御装置51は、第2スイッチ69が第2閾値時間以上ON状態であることによって、第2スイッチ69に異常が発生し、現在の状態が異常状態であると判断することもできる。このような場合、制御装置51は、異常対応モードを実行することができる。
【0102】
制御装置51は、第2閾値時間以上にわたって制御信号が入力されると、第2スイッチ69に関する異常が発生していると判断する。第2閾値時間の長さは、第1閾値時間を上回っている限り任意である。ただし、第2閾値時間は、モード切替操作が行われたとは想定することができない程度に長く設定されることが好ましい。例えば、第2閾値時間を第1閾値時間の10倍以上とすることが考えられる。
【0103】
第3操作位置P3は、パッシング操作を行うための位置であり、かつ、モード切替操作を行うための位置であるので、切替レバー29が第3操作位置P3に長時間保持されていることは考えにくい。そこで、第2スイッチ69のON状態が第2閾値時間以上継続して検知された場合に、前記と同様に、制御装置51は、現在の状態が異常状態であることを運転者に知らせる等の適切な対応を行うことができる。
【0104】
第2スイッチ69が第2閾値時間以上ON状態であったことによる異常対応モードでは、制御装置51は、ヘッドライト33を強制的にロービームとするように制御する。その後、制御装置51は、第1スイッチ67から制御信号が供給されるか否かにかかわらずロービームを維持するように制御を行う。
【0105】
第2スイッチ69に異常がないものの、運転者が切替レバー29を第3操作位置P3に相当の長時間にわたって操作し続けていたために、異常対応モードに移行する場合もあり得る。この場合は、運転者が切替レバー29の操作をやめることで、切替レバー29が第2操作位置P2に戻ることになる。第2スイッチ69が第2閾値時間以上ON状態であったことによる異常対応モードでは、第2スイッチ69のOFF状態が検出された場合、制御装置51は、異常対応モードを自動的に解除する。制御装置51は、現在のモードを、異常対応モードが開始された直前のモード(手動モード又は自動モード)とする。
【0106】
このように、第2閾値時間以上ON状態だった第2スイッチ69がOFF状態に変化した場合には、第2スイッチ69に実際には異常は生じておらず、運転者により切替レバー29が第3操作位置P3に長時間保持された後に第2操作位置P2に戻されただけと考えられる。制御装置51は、この場合に異常対応モードを解除することで、運転者の利便性の低下を回避することができる。
【0107】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0108】
自動2輪車1では、自動モードが実行される場合、制御装置51により、ライト31の照明態様が変化させられる。上記の実施形態では、ライト31の照明態様の変化の例としてヘッドライト33の照射態様の変化を説明している。しかし、ライト31の照明態様の変化は、コーナリングライト35の照射態様の変化を含むものであっても良い。
【0109】
自動2輪車1に備えるヘッドライトとして、ADB(Adaptive Driving Beam)を採用することもできる。この構成では、制御装置51は、自動モードで、先行車等の前方対象物を例えばカメラで検出した場合に、その前方対象物へ向かうヘッドライト33の光量を低減する制御を行うことができる。この場合、対向車若しくは走行車の搭乗者、又は車両の前方周囲にいる歩行者を眩惑させにくくすることができる。
【0110】
自動2輪車1では、ヘッドライト33が常時点灯させられる。運転者によっては、日中と日没後でヘッドライト33の照射態様に関するモードを変更したいと考える可能性もある。そのため、制御装置51は、例えば時刻及び周囲の明るさの少なくとも一方に基づいて、日中であることが特定できた場合、予め定めたモードを実行させ、日没であることが特定できた場合、予め定めた別のモードを実行させるようにしても良い。
【0111】
自動2輪車1は、車体3を旋回方向内側に傾斜させて旋回を行う。車体3が傾斜することで、ヘッドライト33の高さが低くなるとともに、ヘッドライト33の向きも変化する。そのため、車体3の傾斜角に応じて、ヘッドライト33の光の照射範囲(照射距離と水平方向の広がり)も変化する。従って、制御装置51は、自動モードでヘッドライト33の照射態様を決定する際に、自動2輪車1の傾倒角を用いても良い。自動2輪車1の傾倒角は、詳細には前後方向を回動軸方向とした自動2輪車1の傾倒角度(いわゆるバンク角)である。この傾倒角は、例えば、自動2輪車1に設けられた傾斜センサにより検出することができる。
【0112】
上記の実施形態の切替レバー29の形状及び構成は一例であり、任意に変更可能である。例えば、切替レバー29は、押圧箇所が2つあり、1つの押圧箇所が復帰型のボタン等の操作子であっても良い。
【0113】
ロービームになる状況が前述の自動モードと比較して頻繁に生じるように制御感度を変更した第2自動モードを、制御装置51が有するように構成しても良い。前述の自動モードとは異なる操作(例えば、切替レバー29とイグニッションスイッチの複合的な操作)によって、制御装置51は第2自動モードに切り替えられる。第2自動モードと自動モードとで、メータ装置37の表示が異なることが好ましい。一例として、制御装置51が第2自動モードであるときに、切替レバー29の第3操作位置P3への長押しが行われると、手動モードに切り替えられる。制御装置51が第2自動モードであるときに、イグニッションスイッチがOFFされ、再びONされると、制御装置51は手動モードに切り替えられる。
【0114】
CAN通信等の通信障害、ハードウェア故障、温度異常、第1検出部61としてのカメラの視野が塞がれていること等によっても、制御装置51が異常対応モードに切り替えられるように構成することができる。この場合、一例として、切替レバー29に対して何らかの操作が行われることで、制御装置51は異常対応モードから手動モードに切り替えられる。イグニッションスイッチがOFFされ、再びONされると、制御装置51は異常対応モードから手動モードに切り替えられる。
【0115】
ライト31を制御する制御装置51の機能は、他のハードウェア(例えば、検出装置53の第1検出部61であるカメラ)の制御コンピュータによって実現することもできる。
【0116】
上記実施形態では、鞍乗型車両の例として、自動2輪車1を挙げたが、別の車両にも本発明を適用することができる。例えば、別の車両としては、車輪の数が2つではなく、3つの車両を挙げることができる。
【0117】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0118】
1 自動2輪車(鞍乗型車両)
29 切替レバー(操作部材)
31 ライト
33 ヘッドライト
51 制御装置(制御部)
53 検出装置(状況取得部)
65 切替装置
P1 第1操作位置
P2 第2操作位置
P3 第3操作位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6